(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】オイルレベル制御装置の液位設定検出装置及びオイルレベル制御装置
(51)【国際特許分類】
G01F 23/292 20060101AFI20221011BHJP
G01M 15/02 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G01F23/292 C
G01M15/02
(21)【出願番号】P 2019045403
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】小栗 光貴
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/064502(WO,A1)
【文献】特開2003-214989(JP,A)
【文献】特開平03-267516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定置式の被試験エンジンにおけるオイルパンのオイルレベルを検知し、該オイルパンのオイルレベルを基準内で維持するためのオイルレベル制御装置の液位設定検出装置であって、
それぞれ上下に延びる円筒状をなす複数の透明パイプと、
一端側が前記被試験エンジンのオイルキャップに接続されるとともに、他端側が複数の前記透明パイプの各上部に分岐して接続され、前記被試験エンジンの内圧及び前記透明パイプの内圧を均一とするための均圧管と、
一端側が前記オイルパンに接続されるとともに、他端側が複数の前記透明パイプにおける各下部に分岐して接続され、前記オイルパンから前記透明パイプ内へとオイルを導入するためのオイル導入管と、
前記各透明パイプに対し取付けられるとともに、光を照射可能な投光部及び該投光部と相対向し該投光部からの光を検知可能な受光部を有し、かつ、前記投光部及び前記受光部の相対位置が一定となるように構成された、前記透明パイプ内のオイルレベルを検知するための液面検知センサと、
前記各液面検知センサに取付けられており、前記透明パイプの外周面に巻き付けられることによって前記透明パイプの外周面に対し前記液面検知センサを取付けるためのバンドとを備え、
前記液面検知センサが前記透明パイプの外周面に取付けられた状態において、前記投光部及び前記受光部の間に前記透明パイプが配置されるとともに、前記投光部から照射される光の光軸が前記透明パイプのうちのその外壁肉部のみを通るように構成され、
前記光軸を含む断面において前記透明パイプ内にオイルがない場合には前記投光部から照射され前記外壁肉部に入った光が前記透明パイプの内周面で反射して前記受光部へと到達する一方、前記断面において前記透明パイプ内にオイルがある場合には前記投光部から照射され前記外壁肉部に入った光が前記透明パイプの内周面で反射せず前記受光部へと到達しなくなるように構成され、
前記透明パイプに対する前記バンドの巻き付けを解除することにより、前記液面検知センサを上下に移動させて、前記透明パイプの外周面に対する前記液面検知センサの取付位置を変更可能であることを特徴とするオイルレベル制御装置の液位設定検出装置。
【請求項2】
複数の前記透明パイプのうちの少なくとも1本に対し、前記液面検知センサが複数取付けられるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルレベル制御装置の液位設定検出装置。
【請求項3】
複数の前記液面検知センサとして、
前記透明パイプ内のオイルレベルが所定の上限レベルを上回るか否かを検知可能な第一液面検知センサと、
前記透明パイプ内のオイルレベルが前記上限レベルよりも低く設定される下限レベルを下回るか否かを検知可能な第二液面検知センサと、
前記透明パイプ内のオイルレベルが前記上限レベルよりも高く設定される上上限レベルを上回るか否かを検知可能な第三液面検知センサと、
前記透明パイプ内のオイルレベルが前記下限レベルよりも低く設定される下下限レベルを下回るか否かを検知可能な第四液面検知センサと、
が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のオイルレベル制御装置の液位設定検出装置。
【請求項4】
複数の前記透明パイプのうちの1本に対し、前記第三液面検知センサ及び前記第四液面検知センサが取付けられるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載のオイルレベル制御装置の液位設定検出装置。
【請求項5】
潤滑用のオイル温調装置を少なくとも備える内燃機関の環境試験装置において、前記オイル温調装置とオイル量調節装置とを有し、
前記オイル温調装置は、オイルを、前記オイルパンから導出し、熱交換器及びヒータを介して循環ポンプにより搬送して再び前記オイルパンへ導入する循環路を備え、
前記オイル量調節装置は、前記循環路から一部のオイルを第一開閉バルブを介して抜き取るオイル抜取路と、オイル補給タンクと、前記オイル補給タンクから第二開閉バルブ及びオイル供給路を介して前記オイルパンへオイルを送出する送出ポンプと、を備え、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液位設定検出装置から発せられる液位信号に基づいて、前記第一開閉バルブと前記第二開閉バルブと前記送出ポンプとを制御する制御装置を備えることを特徴とするオイルレベル制御装置。
【請求項6】
潤滑用のオイル温調装置を少なくとも備える内燃機関の環境試験装置において、前記オイル温調装置とオイル量調節装置とを有し、
前記オイル温調装置は、オイルを、前記オイルパンから導出し、熱交換器及びヒータを介して循環ポンプにより搬送して再び前記オイルパンへ導入する循環路を備え、
前記オイル量調節装置は、前記循環路にある前記循環ポンプの吸い込み側に第二開閉バルブを介して接続する、送出ポンプを有するオイル供給路と、前記循環路にある前記循環ポンプの吐出側に第一開閉バルブを介して接続するオイル抜取路と、を備え、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液位設定検出装置から発せられる液位信号に基づいて、前記第一開閉バルブと前記第二開閉バルブと前記送出ポンプとを制御する制御装置を備えることを特徴とするオイルレベル制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験に供される定置式の被試験エンジンにおけるオイルパンのオイルレベルを基準内で維持するためのオイルレベル制御装置及びその液位設定検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、自動二輪、鉄道車両、農業機械等の輸送機械などの内燃機関(エンジン)等に関する性能や機能を検証するために、ユーティリティを供給しながら所定の条件下でエンジン部を移動させずに静置しながら試験する、定置式の被試験エンジンに対する動作試験を行うことがある。このような動作試験には、高温場低温場や高地などを再現して所定の条件を作り出すために環境試験装置が用いられる。内燃機関の動作に必要なユーティリティとして燃料、冷却水、潤滑油であるエンジンオイル、電気などは、被試験エンジンに供給されることとなる。
【0003】
環境試験装置としてのエンジンオイル供給系としては、被試験エンジンのオイルパンから導出されたオイルをヒータや熱交換器などで温度調節した上で前記オイルパンへと戻すように構成されたオイル温調装置や、オイルパンに対するオイルの供給や抜き取りを行うためのオイル量調節装置などを備えたオイルレベル制御装置がある。
【0004】
ところで、被試験エンジンの動作試験にあたっては、環境試験装置としてエンジン外にオイルを取り出してオイルを温調したりオイル量の調節をしたりする系統において、エンジンの下部に内蔵されるオイルパンがどうしても開放系(大気開放)となっていて、そのオイルレベルは所定液位で維持する必要が生じる。エンジンにおいて、エンジンの至る所の摺動部にオイルの膜を施して摩擦抵抗や摩擦発熱を低減する(少なくする)ために、流れ落ちるオイルを最下部のオイルパンで受け止めてオイルパンからエンジン内蔵のエンジン回転で駆動されるオイルポンプで各摺動部へ供給し、また流れ落ちる機構はエンジンオイル潤滑機構であり、通常のエンジンでは、最下部にオイルパンがある。開放されるオイルパンにおけるオイルレベルを基準内で維持する必要は以下の事柄からわかる。
【0005】
すなわち、オイルパンのオイルレベルが過度に高い場合には、クランクシャフトの一部がオイルに沈み、コンロッドとともに空中の空気抵抗を受けるだけの状態で回転していたクランクシャフトがエンジンオイルの液中動作の抵抗を受けて急制動され、コンロッドやピストン、クランクシャフトの弱いところが破壊されるおそれがある。一方、オイルパンのオイルレベルが過度に低い場合には、オイルポンプの吸込み液位低下でキャビテーション発生のおそれが生じ、キャビテーションが発生した場合、エンジン各所の摺動部へのオイル供給に不足を来し、エンジンの焼き付けを起こすおそれがある。このように被試験エンジンの故障や試験条件の不安定化といった不具合が生じないようにエンジンオイル液位を基準内に維持する必要がある。ここで、通常オイルパンのオイル液面が装置系で唯一の開放部となるが、オイルの温度調節に伴う環境試験装置を含めた全ての保有オイルの体積変化は非常に大きなものとなるため、この体積変化をオイルパンのみで吸収してオイルパンのオイルレベルを基準内で維持することは極めて困難である。例えば低温始動から定常高負荷運転するような試験の場合、例えばエンジンオイルが始動時マイナス10℃から高負荷時120℃などと温度変化する場合、ユーティリティとしてのエンジンオイル供給系全体のオイル保有量の温度変化に係るオイルの体積変化をオイルパンのみで吸収しようとすると、例えばオイルレベルが十数cm変動することもある。このような液位変動があると上記の被試験エンジンの故障を避けるのは難しい。
【0006】
そこで、オイルパンのオイルレベルを検知し、検知結果に基づきオイルパンのオイル量を調節することで、オイルパンのオイルレベルを基準内で維持するオイルレベル制御装置が必要となる。
【0007】
オイルレベル制御装置としては、複数の円筒状のシリンダユニットと、オイルパンのオイルをシリンダユニット内へと導入するためのオイル導入管と、シリンダユニットの内圧を被試験エンジンの内圧と均一にするための均圧管と、各シリンダユニットを収容するとともに上下方向に沿った設置位置を調節可能なシリンダボックスと、シリンダユニット内のオイルレベルを検知するための液面フロートスイッチとを液位設定検出装置として備え、エンジン試験時に、エンジンへの外部からのエンジンオイル補給とエンジンから外部へのエンジンオイル抜取りにかかる制御出力を行うものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。オイルパン内の液位を外部に持ち出す(伝える)ためのオイル導入管は、一端側がオイルパンに接続され、他端側が液位設定検出装置の各シリンダユニットの下部に分岐接続されている。均圧管は、一端側が被試験エンジンのオイルキャップに接続され、他端側が液位設定検出装置の各シリンダユニットの上部に分岐接続されている。液面フロートスイッチは、液位設定検出装置の各シリンダユニットに内蔵されており、シリンダユニット内のオイルレベルに応じてオン信号又はオフ信号を出力する。
【0008】
このオイルレベル制御装置では、液面フロートスイッチから出力されるオン信号又はオフ信号に応じてオイルパンに対するオイルの供給や抜き取りが行われることで、オイルパンのオイルレベルが基準内で維持される。また、被試験エンジンの変更などに伴いオイルパンのオイルレベルの基準位置が変更される場合には、液位設定検出装置のシリンダボックスを、収容されたシリンダユニットごと上下動させてその設置位置を変更することで、前記基準位置の変更に対応することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、液面フロートスイッチは、液面の波打ちなどに伴う出力信号の頻繁な切換えを防止すべく、本体構造上数mm程度のオン-オフ応差(出力信号がオフ信号からオン信号に切換わるときのレベル、及び、出力信号がオン信号からオフ信号に切換わるときのレベルの差)を持っている。そのため、オイルレベルの変化を精度よく検知することができず、応答遅れが生じるおそれがある。
【0011】
また、シリンダユニットに液面フロートスイッチが内蔵される構造であるため、シリンダユニットを大径とせざるを得ないが、この大径のシリンダユニットと均圧管及びオイル導入管とを十分な気密性をもって接続することは容易ではない。さらに、シリンダユニットに液面フロートスイッチを内蔵する構成では、液面フロートスイッチの取付箇所などにおける気密性の低下が生じやすい。そのため、シリンダユニットの内圧と被試験エンジンの内圧とを均一にすることが容易ではない。
【0012】
加えて、シリンダボックスを上下動させることでオイルレベルの基準位置の変更に対応する構成では、定盤上で各種ユーティリティを接続してエンジン試験する定置式の環境試験装置において被試験エンジンを別の機種に変更すると、エンジン外部から適切なエンジンオイル液位レベルを水平に定盤外という遠距離に展開することが難しく、また、液位設定検出装置側のシリンダボックスには設定位置の移動機構もガイドもないので、シリンダボックスの移動作業に手間や時間がかかり、基準位置の変更に対し容易に対応することができない。さらに、シリンダボックスの設置位置を変更するにあたっては、オイル導入管や均圧管における少なくともシリンダユニットとの接続部を伸縮可能なフレキシブル機構とする必要があり、装置の複雑化及び大型化やコストの増大を招くおそれがある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、応答遅れの発生防止や良好な気密性の確保などを図ることができるオイルレベル制御装置及びその液位設定検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0015】
手段1.定置式の被試験エンジンにおけるオイルパンのオイルレベルを検知し、該オイルパンのオイルレベルを基準内で維持するためのオイルレベル制御装置の液位設定検出装置であって、
それぞれ上下に延びる円筒状をなす複数の透明パイプと、
一端側が前記被試験エンジンのオイルキャップに接続されるとともに、他端側が複数の前記透明パイプの各上部に分岐して接続され、前記被試験エンジンの内圧及び前記透明パイプの内圧を均一とするための均圧管と、
一端側が前記オイルパンに接続されるとともに、他端側が複数の前記透明パイプにおける各下部に分岐して接続され、前記オイルパンから前記透明パイプ内へとオイルを導入するためのオイル導入管と、
前記各透明パイプに対し取付けられるとともに、光を照射可能な投光部及び該投光部と相対向し該投光部からの光を検知可能な受光部を有し、かつ、前記投光部及び前記受光部の相対位置が一定となるように構成された、前記透明パイプ内のオイルレベルを検知するための液面検知センサと、
前記各液面検知センサに取付けられており、前記透明パイプの外周面に巻き付けられることによって前記透明パイプの外周面に対し前記液面検知センサを取付けるためのバンドとを備え、
前記液面検知センサが前記透明パイプの外周面に取付けられた状態において、前記投光部及び前記受光部の間に前記透明パイプが配置されるとともに、前記投光部から照射される光の光軸が前記透明パイプのうちのその外壁肉部のみを通るように構成され、
前記光軸を含む断面において前記透明パイプ内にオイルがない場合には前記投光部から照射され前記外壁肉部に入った光が前記透明パイプの内周面で反射して前記受光部へと到達する一方、前記断面において前記透明パイプ内にオイルがある場合には前記投光部から照射され前記外壁肉部に入った光が前記透明パイプの内周面で反射せず前記受光部へと到達しなくなるように構成され、
前記透明パイプに対する前記バンドの巻き付けを解除することにより、前記液面検知センサを上下に移動させて、前記透明パイプの外周面に対する前記液面検知センサの取付位置を変更可能であることを特徴とするオイルレベル制御装置の液位設定検出装置。
【0016】
上記手段1によれば、液面検知センサは、投光部及び受光部を有する光軸センサ(光電センサ)により構成されている。光軸センサは、液面フロートスイッチのようなオン-オフ応差を持たず、光とオイル液面との位置関係でオイルレベルを検知することができる。そのため、オイルレベルの変化を精度よく検知することができ、応答遅れの発生をより確実に防止することができる。
【0017】
また、液面検知センサは、投光部及び受光部の相対位置が一定となるように(相対位置が変動しないように)構成されているため、投光部及び受光部が分離され両者の相対位置を変更可能なセンサと比較して、投光部及び受光部の相対位置関係の調整に係る設定ミスをなくすことができる。そのため、設定ミスに伴うオイルレベルの検知不良をより確実に防ぐことができる。
【0018】
さらに、透明パイプの外周面に液面検知センサを取付けた状態において、投光部から照射される光の光軸が透明パイプのうちのその外壁肉部のみを通り、かつ、透明パイプ内にオイルがない場合に外壁肉部に入った光が透明パイプの内周面で反射して受光部へと到達する一方、透明パイプ内にオイルがある場合に外壁肉部に入った光が透明パイプの内周面で反射せず受光部へと到達しない状態とされる。すなわち、液面検知センサは、透明パイプの内周面における1回の反射の有無を利用して、透明パイプ内におけるオイルレベルを検知可能とされる。ここで、光軸が透明パイプの内部空間(例えば内部空間の中心)を通るように設定して、投光部からの光が透明パイプの外壁肉部を2回通過して受光部に到達するか否かに基づきオイルレベルを検知する構成とした場合には、透明パイプの内周面を光が2回通ることになることから透明パイプの内周面に付着したオイル液滴や気泡による光の乱反射等が生じやすくなり、また、透明パイプ内部におけるオイルの影響を受けやすくなり、オイルレベルの検知精度が低下するおそれがある。これに対し、上記手段1によれば、透明パイプの内周面における1回の反射の有無を利用してオイルレベルを検知するため、オイル液滴などによる光の乱反射等をより生じにくくすることができ、オイルレベルの検知精度をより高めることができる。
【0019】
加えて、上記手段1によれば、液面検知センサは透明パイプの外部に設置されるため、液面検知センサを内蔵するために透明パイプを大径とする必要はなく、透明パイプを比較的小径とすることができる。そのため、透明パイプと均圧管及びオイル導入管とを十分な気密性をもって接続することが容易に可能となる。また、液面検知センサは透明パイプの外部からオイルレベルを検知するため、透明パイプに液面検知センサを内蔵する場合と比較して、気密性の低下に繋がるような箇所を透明パイプに極力設けずに済む。これらの結果、透明パイプの内圧と被試験エンジンの内圧とをより確実に均一とすることができ、オイルパンのオイルレベルと透明パイプ内のオイルレベルとをより正確に一致させることができる。
【0020】
さらに、上記手段1によれば、透明パイプに対するバンドの巻き付けを解除することで、液面検知センサを上下に移動させてその取付位置を変更することができる。そのため、被試験エンジンの変更などに伴いオイルレベルの基準位置が変更される場合に、この基準位置の変更への対応作業を極めて容易に行うことができる。その結果、作業者等における利便性をより高めることができる。さらに、複数の液面検知センサの配置位置を別々に調節することも可能である。
【0021】
また、オイルレベルの基準位置変更への対応にあたっては、液面検知センサのみを移動させればよく、透明パイプを移動させる必要はない。従って、均圧管やオイル導入管を伸縮可能なフレキシブル機構とする必要はなく、装置の簡素化及び小型化やコストの低減を図ることができる。
【0022】
手段2.複数の前記透明パイプのうちの少なくとも1本に対し、前記液面検知センサが複数取付けられるように構成されていることを特徴とする手段1に記載のオイルレベル制御装置の液位設定検出装置。
【0023】
上記手段2によれば、1本の透明パイプに対し複数の液面検知センサが取付けられるため、各透明パイプに対し液面検知センサを1つずつ取付ける場合と比べて、装置の簡素化や小型化等をより効果的に図ることができる。
【0024】
手段3.複数の前記液面検知センサとして、
前記透明パイプ内のオイルレベルが所定の上限レベルを上回るか否かを検知可能な第一液面検知センサと、
前記透明パイプ内のオイルレベルが前記上限レベルよりも低く設定される下限レベルを下回るか否かを検知可能な第二液面検知センサと、
前記透明パイプ内のオイルレベルが前記上限レベルよりも高く設定される上上限レベルを上回るか否かを検知可能な第三液面検知センサと、
前記透明パイプ内のオイルレベルが前記下限レベルよりも低く設定される下下限レベルを下回るか否かを検知可能な第四液面検知センサと、
が設けられることを特徴とする手段1又は2に記載のオイルレベル制御装置の液位設定検出装置。
【0025】
上記手段3によれば、透明パイプ内のオイルレベルをより正確に把握することができ、ひいては把握されたオイルレベルに応じた各種動作を行うことができる。例えば、オイルレベルが上上限レベルを上回る又は下下限レベルを下回る場合には警告を発する動作を行い、オイルレベルが上限レベルを上回る場合にはオイルパンからオイルを抜き取る動作を行い、オイルレベルが下限レベルを下回る場合にはオイルパンへとオイルを供給する動作を行う、といったことができる。
【0026】
また、各液面検知センサの配置位置を別々に調節することが可能であるため、被試験エンジンや試験条件などに応じて、上限レベルなどの各レベルをそれぞれ別々に細かに設定することができる。
【0027】
手段4.複数の前記透明パイプのうちの1本に対し、前記第三液面検知センサ及び前記第四液面検知センサが取付けられるように構成されていることを特徴とする手段3に記載のオイルレベル制御装置の液位設定検出装置。
【0028】
第一~第四液面検知センサの相互の間隔については、第三液面検知センサ及び第四液面検知センサの間隔が最も大きなものとなる。そのため、上記手段4のように、1本の透明パイプに第三液面検知センサ及び第四液面検知センサを取付ける構成とすることで、オイルレベルの検知の点で、一方の液面検知センサが他方の液面検知センサに影響を与えることをより確実に防止できる。その結果、1本の透明パイプに複数の液面検知センサを取付けることで装置の簡素化や小型化等を効果的に図りつつ、検知精度の低下防止等をより確実に図ることができる。
【0029】
手段5.潤滑用のオイル温調装置を少なくとも備える内燃機関の環境試験装置において、前記オイル温調装置とオイル量調節装置とを有し、
前記オイル温調装置は、オイルを、前記オイルパンから導出し、熱交換器及びヒータを介して循環ポンプにより搬送して再び前記オイルパンへ導入する循環路を備え、
前記オイル量調節装置は、前記循環路から一部のオイルを第一開閉バルブを介して抜き取るオイル抜取路と、オイル補給タンクと、前記オイル補給タンクから第二開閉バルブ及びオイル供給路を介して前記オイルパンへオイルを送出する送出ポンプと、を備え、
手段1乃至4のいずれかに記載の液位設定検出装置から発せられる液位信号に基づいて、前記第一開閉バルブと前記第二開閉バルブと前記送出ポンプとを制御する制御装置を備えることを特徴とするオイルレベル制御装置。
【0030】
上記手段5によれば、上記手段1から上記手段4までに記載の液位設定検出装置からの信号に基づき、オイル液位を実際に制御できる装置を提供できる。
【0031】
手段6.潤滑用のオイル温調装置を少なくとも備える内燃機関の環境試験装置において、前記オイル温調装置とオイル量調節装置とを有し、
前記オイル温調装置は、オイルを、前記オイルパンから導出し、熱交換器及びヒータを介して循環ポンプにより搬送して再び前記オイルパンへ導入する循環路を備え、
前記オイル量調節装置は、前記循環路にある前記循環ポンプの吸い込み側に第二開閉バルブを介して接続する、送出ポンプを有するオイル供給路と、前記循環路にある前記循環ポンプの吐出側に第一開閉バルブを介して接続するオイル抜取路と、を備え、
手段1乃至4のいずれかに記載の液位設定検出装置から発せられる液位信号に基づいて、前記第一開閉バルブと前記第二開閉バルブと前記送出ポンプとを制御する制御装置を備えることを特徴とするオイルレベル制御装置。
【0032】
上記手段5では、オイルパンに対する循環路の接続部は2つ(温調用オイル導出口及び温調オイル導入口)となり、オイルパンに対するオイル供給路の接続部は1つ(補給オイル導入口)となるため、オイルパンに対するオイルの温調及び供給に係る接続部は計3つとなるが、上記手段6によれば、補給オイル導入口を省略できる装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】オイルレベル制御装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】被試験エンジン及び液位設定検出装置の概略構成を示す模式図である。
【
図4】透明パイプの外周面に取付けられた液面検知センサを示す斜視模式図である。
【
図5】液面検知センサ及びバンドの斜視模式図である。
【
図6】投光部から照射される光の光軸と透明パイプとの位置関係を示す断面模式図である。
【
図7】透明パイプ内にオイルがない場合における投光部から照射された光などを示す断面模式図である。
【
図8】透明パイプ内にオイルがある場合における投光部から照射された光などを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、オイル温調装置を備えたオイルレベル制御装置1は、オイル温調装置2、オイル量調節装置3及び液位設定検出装置4を備えており、所定の条件下で定置式の被試験エンジン10に対する動作試験を行うためのものである。
【0035】
オイル温調装置2は、被試験エンジン10に供給されるオイルの温度調節を行うための装置であり、循環路21並びに該循環路21に介在設置された循環ポンプ22、ヒータ23及び熱交換器24を備えている。循環路21は、被試験エンジン10のオイルパン11における温調用オイル導出口11aから出て、該オイルパン11における温調オイル導入口11bに戻るオイルの循環流路である。循環ポンプ22は、オイルに圧力を加えることで、オイルを循環路21にて循環させる。ヒータ23は、循環路21を流れるオイルを加熱し、熱交換器24は、循環路21を流れるオイルの加熱又は冷却を行う。循環路21にてオイルを循環させつつ、該オイルに対しヒータ23や熱交換器24による温度調節を施すことで、被試験エンジン10の温調オイル導入口11b、ひいてはオイルパン11のオイル温度を所望の温度に調節することができる。本実施形態では、例えば、オイル温度を-15℃から+120℃までの範囲で調節可能である。
【0036】
オイル量調節装置3は、オイルパン11に対するオイルの供給やオイルパン11からのオイルの抜取りを行うことで、オイルパン11のオイルレベルを調節するためのものである。オイル量調節装置3は、オイル抜取路31並びに該オイル抜取路31に介在設置された第一開閉バルブ32及び第一流量調整バルブ33と、オイル補給タンク34と、オイル供給路35並びに該オイル供給路35に介在設置された送出ポンプ36、第二開閉バルブ37及び第二流量調整バルブ38とを備えている。
【0037】
オイル抜取路31は、循環路21における前記ヒータ23の下流側とオイル補給タンク34の上部とに接続されている。オイル抜取路31を介して、循環路21から抜取られたオイルがオイル補給タンク34内へと送られるようになっている。第一開閉バルブ32は、オイル抜取路31の開閉状態、すなわちオイルパン11からのオイルの抜取りの可否を切換えるために用いられる。第一流量調整バルブ33は、オイル抜取路31を流れるオイルの流量、すなわちオイルパン11からのオイルの抜取量を調整するために用いられる。
【0038】
オイル補給タンク34は、オイルパン11に対するオイルの供給及びオイルパン11からのオイルの抜取りに対応するためのオイルの貯留用容器である。例えば、被試験エンジン10のオイル保有液量と、循環路21、ヒータ23、熱交換器24及びオイル供給路35全体の保有液量と、オイル補給タンク34の通常貯留液量との合算であるオイル系統の全保有量を上回る容積をオイル補給タンク34は保有している。
【0039】
オイル供給路35は、オイル補給タンク34の底部に設けられたオイル供給口34aとオイルパン11の底部に設けられた補給オイル導入口11cとに接続されている。送出ポンプ36の動作により、オイル供給路35を介して、オイル補給タンク34のオイルがオイルパン11へと送られるようになっている。第二開閉バルブ37は、オイル供給路35の開閉状態、すなわちオイルパン11に対するオイルの供給の可否を切換えるために用いられる。第二流量調整バルブ38は、オイル供給路35を流れるオイルの流量、すなわちオイルパン11に対するオイルの供給量を調整するために用いられる。
【0040】
また、オイル量調節装置3は、タンク循環路39及び該タンク循環路39に介在設置されたバイパスバルブ39aを備えている。タンク循環路39は、オイル供給路35における送出ポンプ36の下流側とオイル補給タンク34の上部とに接続されており、オイル補給タンク34に貯留されたオイルの局所的な循環流路を形成する。バイパスバルブ39aは、タンク循環路39の開閉状態を切換えるために用いられる。被試験エンジン10の動作試験時において、常には、オイル抜取路31及びオイル供給路35が閉状態となるように第一開閉バルブ32及び第二開閉バルブ37が制御される一方、タンク循環路39が開状態となるようにバイパスバルブ39aが制御され、オイルパン11に対するオイル供給に備えて、試験と並行してタンク循環路39を通過するオイルの循環が行われるようになっている。
【0041】
液位設定検出装置4は、オイルパン11の各液位を設定し、設定液位であるオイルレベルを検知し、オイルパン11のオイルレベルを基準内で維持するように、次述する液位設定検出部43から発せられた信号を演算処理するための装置である。液位設定検出装置4は、
図2に示すように、均圧管主部41、導入管主部42、複数(本実施形態では3本)の透明パイプ432などを有する液位設定検出部43及び制御装置44を備えている。このうち液位設定検出部43は、オイルパン11の各液位を設定し、設定液位であるオイルレベルを検知し、オイルパン11のオイルレベルを基準内で維持するように信号を発するための装置である。
【0042】
均圧管主部41は、一端側が被試験エンジン10のオイルキャップ12と接続され、他端側が後述する上部ソケット部431aに接続されている。均圧管主部41は、均圧管45の一部を構成する。
【0043】
導入管主部42は、一端側がオイルパン11における液面検知用オイル導出口11dと接続され、他端側が後述する下部ソケット部433aに接続されている。導入管主部42は、オイル導入管46の一部を構成する。
【0044】
液位設定検出部43は、透明パイプ432における任意に設定されたオイルレベルL2を検知することで、オイルパン11のオイルレベルL1を検知するためのものである。液位設定検出部43は、
図3に示すように、均圧管分岐部431、複数の透明パイプ432、導入管分岐部433、バイパス管434及び液面検知センサ435と、これらを収容する収容ボックス436と備えている。
【0045】
均圧管分岐部431は、例えば所定の金属や耐熱性樹脂等により形成されており、一端側に均圧管主部41との接続部を構成する上部ソケット部431aを有している。また、均圧管分岐部431の他端側部位は、複数本(本実施形態では4本)に分岐する構成となっており、透明パイプ432の各上部に接続されている。本実施形態では、上部ソケット部431aに接続された均圧管主部41と、均圧管分岐部431とによって均圧管45が構成されている。また、本実施形態では、例えば均圧管分岐部431の他端側部位の内周面と透明パイプ432の上部外周面との間に図示しないシール部材を設置すること等により、均圧管45及び透明パイプ432の各上部が良好な気密性を確保した状態で接続されている。均圧管45によって、被試験エンジン10の内圧及び透明パイプ432の内圧が均一とされ、その結果、後述するオイル導入管46を介して連通するオイルパン11及び透明パイプ432における各オイルレベルL1,L2が等しい状態となっている(
図2参照)。
【0046】
各透明パイプ432は、比較的小径(例えばφ10~20mmであり、本実施形態ではφ16mm)の円筒状をなしており、透明かつ耐熱性に優れる樹脂により形成されている。各透明パイプ432は、上下方向に延びるとともに平行に並んだ状態で設置されている。尚、本実施形態では、便宜上、並列設置された3本の透明パイプ432のうち、上部ソケット部431a側に位置にあるもの(
図3の左側に位置するもの)を「第一透明パイプ4321」と称し、中央に位置するものを「第二透明パイプ4322」と称し、上部ソケット部431aから最も離間した側にあるもの(
図3の右側に位置するもの)を「第三透明パイプ4323」と称することがある。
【0047】
導入管分岐部433は、例えば所定の金属や耐熱性樹脂等により形成されており、一端側に導入管主部42との接続部を構成する下部ソケット部433aを有している。また、導入管分岐部433の他端側部位は、複数本(本実施形態では4本)に分岐した構成となっており、透明パイプ432の各下部に接続されている。本実施形態では、下部ソケット部433aに接続された導入管主部42と、導入管分岐部433とによってオイル導入管46が構成されている。また、本実施形態では、例えば導入管分岐部433の他端側部位の内周面と透明パイプ432の下部外周面との間に図示しないシール部材を設置すること等により、オイル導入管46及び透明パイプ432の各下部が良好な気密性を確保した状態で接続されている。オイル導入管46によって、オイルパン11から透明パイプ432内へとオイルが導入される。
【0048】
バイパス管434は、透明パイプ432と並行に設置されており、透明パイプ432と同様、上部が均圧管45(均圧管分岐部431)に接続され、下部がオイル導入管46(導入管分岐部433)に接続されている。
【0049】
液面検知センサ435は、透明パイプ432内のオイルレベルL2を検知するためのものであり、各透明パイプ432に取付けられている。液面検知センサ435は、
図4及び
図5に示すように、本体部435aと、該本体部435aに設けられた投光部435b、受光部435c、パイプ接触部435d及びバンド取付部435eとを備えている。
【0050】
投光部435bは、例えばLED等の発光手段を備えており、所定の光を受光部435cに向けて照射する。
【0051】
受光部435cは、本体部435aにおける投光部435bと相対向する位置に配設されており、所定の受光素子を備えている。受光部435cは、前記受光素子によって、投光部435bからの光が受光部435cへと到達したか否かを把握することが可能に構成されている。そして、液面検知センサ435は、投光部435bからの光が受光部435cに到達した場合、所定のオフ信号(つまり、オイルがないことを示す信号)を制御装置44へと出力し、投光部435bからの光が受光部435cに到達しない場合、所定のオン信号(つまり、オイルがあることを示す信号)を制御装置44へと出力する。
【0052】
パイプ接触部435dは、液面検知センサ435を透明パイプ432に取付けた状態において、該透明パイプ432の外周面と接触する部位である。パイプ接触部435dにおける透明パイプ432との接触部位は円弧状をなしており、その結果、透明パイプ432に対し液面検知センサ435を安定した状態で取付可能となっている。尚、パイプ接触部435dを、投光部435bからの光の光軸AXと直交し、該光軸AXに対し接近又は離間する方向に沿って前記本体部435aに対しスライド移動可能に構成してもよい。この場合には、前記光軸AXと透明パイプ432との相対位置関係を容易に調節可能となる。
【0053】
バンド取付部435eは、液面検知センサ435の上部及び下部に1つずつ設けられており、所定のバンド挿通孔435fが貫通形成されている。バンド挿通孔435fは、次述するバンド437が挿通される部位であり、液面検知センサ435に対するバンド437の取付に利用される。
【0054】
さらに、液面検知センサ435には、所定の樹脂等からなる細長い帯状のバンド437が取付けられている。バンド437は、透明パイプ432に対する液面検知センサ435の取付に用いられるものであり、前記バンド挿通孔435fを通過した状態とされることで、液面検知センサ435に取付けられている。本実施形態において、バンド437は、液面検知センサ435の上部及び下部のそれぞれに取付けられている。
【0055】
また、バンド437の一端部には、所定の締結孔437bの形成されたヘッド部437aが設けられている。本実施形態では、締結孔437bに対しバンド437の他端側部位を挿通することにより、該締結孔437bからのバンド437の抜止めがされ、バンド437が輪状で保持されるようになっている。また、本実施形態では、前記締結孔437bにバンド437の他端側部位を挿通し、透明パイプ432の外周面にバンド437を巻き付けた状態とすることで、透明パイプ432の外周面に対し液面検知センサ435が取付けられている。
【0056】
加えて、液面検知センサ435が透明パイプ432の外周面に取付けられた状態においては、
図6に示すように、投光部435b及び受光部435c間に透明パイプ432が配置され、かつ、投光部435bから照射される光の光軸AXが、水平方向に延びるとともに透明パイプ432のうちのその外壁肉部432a(透明パイプ432のうち、その内周面及びその外周面間に位置する肉部)のみを通るように構成される。
【0057】
さらに、液面検知センサ435が透明パイプ432の外周面に取付けられた状態では、
図7に示すように、前記光軸AXを含む断面において透明パイプ432内にオイルがない場合に、投光部435bから照射されて透明パイプ432の外周面で屈折し外壁肉部432aに入った光が、透明パイプ432の内周面で反射して受光部435cへと到達するように構成される。尚、
図7,8では、投光部435bから照射される光を太線矢印で示す。
【0058】
一方、
図8に示すように、前記断面において透明パイプ432内にオイルがある場合には、投光部435bから照射されて透明パイプ432の外周面で屈折し外壁肉部432aに入った光が、透明パイプ432の内周面で反射せず受光部435cへと到達しなくなるように構成される。
【0059】
本実施形態では、投光部435bから照射される光の光軸AXを基準として、透明パイプ432内におけるオイルレベルL2が、前記基準(光軸AX)よりも低い位置にある場合に、投光部435bからの光が受光部435cへと到達し、その結果、液面検知センサ435から制御装置44へとオフ信号が出力される。一方、透明パイプ432内におけるオイルレベルL2が、前記基準(光軸AX)よりも高い位置にある場合〔前記基準(光軸AX)と同じ高さにある場合を含む〕、投光部435bからの光が受光部435cへと到達せず、液面検知センサ435から制御装置44へとオン信号が出力される。
【0060】
さらに、透明パイプ432に対するバンド437の巻き付けを解除することにより、液面検知センサ435を上下に移動させて、透明パイプ432の外周面に対する液面検知センサ435の取付位置を変更することが可能とされている。本実施形態では、はさみ等によりバンド437を切断することで、透明パイプ432に対するバンド437の巻き付けを解除可能となっている。尚、新たなバンド437を液面検知センサ435に取付けた上で、該バンド437を透明パイプ432の外周面に巻き付けた状態とすることにより、新たな取付位置に液面検知センサ435を設置可能、つまり液位の設定が任意で可能である。
【0061】
また、本実施形態では、液面検知センサ435として、第一液面検知センサ4351、第二液面検知センサ4352、第三液面検知センサ4353及び第四液面検知センサ4354の計4つが設けられている(
図3参照)。これら液面検知センサ4351~4354はそれぞれ本体部435a等を備えており、同様の構成を有するものである。
【0062】
第一液面検知センサ4351は、透明パイプ432内のオイルレベルL2が所定の上限レベルを上回るか否かを検知するためのものであり、前記第二透明パイプ4322(
図3における中央の透明パイプ432)に取付けられている。第一液面検知センサ4351は、オイルレベルL2が前記上限レベルを下回るときにオフ信号を出力し、オイルレベルL2が前記上限レベルを上回るとき(オイルレベルL2が前記上限レベルと等しいときを含む)にオン信号を出力する。
【0063】
第二液面検知センサ4352は、オイルレベルL2が前記上限レベルよりも低く設定される下限レベルを下回るか否かを検知するためのものであり、前記第一透明パイプ4321(
図3における左側の透明パイプ432)に取付けられている。第二液面検知センサ4352は、オイルレベルL2が前記下限レベルを下回るときにオフ信号を出力し、オイルレベルL2が前記下限レベルを上回るとき(オイルレベルL2が前記下限レベルと等しいときを含む)にオン信号を出力する。
【0064】
第三液面検知センサ4353は、オイルレベルL2が前記上限レベルよりも高く設定される上上限レベルを上回るか否かを検知するためのものである。第三液面検知センサ4353は、オイルレベルL2が前記上上限レベルを下回るときにオフ信号を出力し、オイルレベルL2が前記上上限レベルを上回るとき(オイルレベルL2が前記上上限レベルと等しいときを含む)にオン信号を出力する。
【0065】
第四液面検知センサ4354は、オイルレベルL2が前記下限レベルよりも低く設定される下下限レベルを下回るか否かを検知するためのものである。第四液面検知センサ4354は、オイルレベルL2が前記下下限レベルを下回るときにオフ信号を出力し、オイルレベルL2が前記下下限レベルを上回るとき(オイルレベルL2が前記下下限レベルと等しいときを含む)にオン信号を出力する。
【0066】
また、第三液面検知センサ4353及び第四液面検知センサ4354は、それぞれ前記第三透明パイプ4323(
図3における右側の透明パイプ432)に取付けられている。すなわち、複数の透明パイプ432のうちの1本に対し、第三液面検知センサ4353及び第四液面検知センサ4354が取付けられている。
【0067】
図2に戻り、制御装置44は、液面検知センサ435からの出力信号に応じて、図示しない報知手段や前記開閉バルブ32,37等を制御することで、警告を発したり、オイルパン11に対するオイルの供給やオイルパン11からのオイルの抜取りを行ったりする。
【0068】
より詳しくは、第一液面検知センサ4351からオン信号が入力された場合、つまりオイルレベルL2が前記上限レベルを上回る場合、制御装置44は、第一開閉バルブ32を制御することで、オイルパン11からオイルを抜取る。
【0069】
また、第二液面検知センサ4352からオフ信号が入力された場合、つまりオイルレベルL2が前記下限レベルを下回る場合、制御装置44は、第二開閉バルブ37を制御することで、オイルパン11に対しオイルを供給する。
【0070】
さらに、制御装置44は、第三液面検知センサ4353からオン信号が入力された場合又は第四液面検知センサ4354からオフ信号が入力された場合、つまりオイルレベルL2が前記上上限レベルを上回る又は前記下下限レベルを下回る場合、前記報知手段を制御することで、オイルパン11のオイルレベルL1の維持に関し異常が生じている旨の警告を発する。
【0071】
以上詳述したように、本実施形態によれば、液面検知センサ435は、投光部435b及び受光部435cを有する光軸センサ(光電センサ)により構成されている。光軸センサは、液面フロートスイッチのようなオン-オフ応差を持たず、光とオイル液面との位置関係でオイルレベルを検知することができる。そのため、透明パイプ432のオイルレベルL2の変化を精度よく検知することができ、応答遅れの発生をより確実に防止することができる。
【0072】
また、液面検知センサ435は、投光部435b及び受光部435cの相対位置が一定となるように(相対位置が変動しないように)構成されているため、投光部435b及び受光部435cが分離され両者の相対位置を変更可能なセンサと比較して、投光部435b及び受光部435cの相対位置関係の調整に係る設定ミスをなくすことができる。そのため、設定ミスに伴うオイルレベルL2の検知不良をより確実に防ぐことができる。
【0073】
さらに、本実施形態において、液面検知センサ435は、透明パイプ432の内周面における1回の反射の有無を利用して、透明パイプ432内におけるオイルレベルL2を検知可能とされている。従って、透明パイプ432の内周面を光が2回通るように光軸センサを設定した場合と比較して、透明パイプ432の内周面に付着したオイル液滴や気泡、透明パイプ432内のオイルの影響を受けにくくなり、オイルレベルL2の検知精度をより高めることができる。
【0074】
加えて、液面検知センサ435は透明パイプ432の外部に設置されるため、センサ内蔵のために透明パイプ432を大径にするといった必要性はなく、透明パイプ432を比較的小径とすることができる。そのため、透明パイプ432と均圧管45及びオイル導入管46とを十分な気密性をもって接続することが容易に可能となる。また、液面検知センサ435は透明パイプ432の外部からオイルレベルL2を検知するため、透明パイプ432にセンサを内蔵する場合と比較して、気密性の低下に繋がるような箇所を透明パイプ432に極力設けずに済む。これらの結果、透明パイプ432の内圧と被試験エンジン10の内圧とをより確実に均一とすることができ、オイルパン11のオイルレベルL1と透明パイプ内のオイルレベルL2とをより正確に一致させることができる。
【0075】
さらに、透明パイプ432に対するバンド437の巻き付けを解除することで、液面検知センサ435を上下に移動させてその取付位置を変更することができる。そのため、被試験エンジン10の変更などに伴いオイルレベルL2の基準位置が変更される場合に、この基準位置の変更への対応作業を極めて容易に行うことができる。その結果、作業者等における利便性をより高めることができる。さらに、複数の液面検知センサ435の配置位置を別々に調節することも可能である。
【0076】
また、オイルレベルL2の基準位置変更への対応にあたっては、液面検知センサ435のみを移動させればよく、透明パイプ432を移動させる必要はない。従って、均圧管45やオイル導入管46を伸縮可能なフレキシブル機構とする必要はなく、装置の簡素化及び小型化やコストの低減を図ることができる。
【0077】
加えて、1本の透明パイプ432に対し複数の液面検知センサ435が取付けられるため、各透明パイプ432に対し液面検知センサ435を1つずつ取付ける場合と比べて、装置の簡素化や小型化等をより効果的に図ることができる。
【0078】
特に本実施形態では、1本の透明パイプ432に対し、最も離間した状態で配置される第三液面検知センサ4353及び第四液面検知センサ4354が取付けられるため、オイルレベルの検知の点で、一方の液面検知センサ435が他方の液面検知センサ435に影響を与えることをより確実に防止できる。その結果、1本の透明パイプ432に複数の液面検知センサ435を取付けることで装置の簡素化や小型化等を効果的に図りつつ、検知精度の低下防止等をより確実に図ることができる。
【0079】
さらに、上限レベル、下限レベル、上上限レベル及び下下限レベルに対応するようにして、第一~第四液面検知センサ4351~4354が設けられているため、透明パイプ432内のオイルレベルL2をより正確に把握することができ、ひいては把握されたオイルレベルL2に応じて、オイルパン11に対するオイルの供給などの各種動作を行うことができる。
【0080】
また、第一~第四液面検知センサ4351~4354の配置位置を別々に調節することが可能であるため、被試験エンジン10や試験条件などに応じて、上限レベルなどの各レベルをそれぞれ別々に細かに設定することができる。
【0081】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0082】
(a)上記実施形態において、透明パイプ432は3本設けられているが、透明パイプ432を2本又は4本以上設けることとしてもよい。
【0083】
(b)上記実施形態において、液面検知センサ435は4つ設けられているが、液面検知センサ435の数を適宜変更してもよい。例えば、上限レベル及び下限レベルのみを基準としてオイルレベルL1の適否を検知する構成である場合、液面検知センサを2つのみ設けることとしてもよい。また、例えば上限レベルから下限レベルまでの間に複数段階のレベルを設定し、各レベルに対応して液面検知センサを設けるような場合には、液面検知センサを3つ以上設けることとしてもよい。
【0084】
(c)上記実施形態において、1本の透明パイプ432に取付けられる液面検知センサ435の数は最大2つとされているが、1本の透明パイプ432に対し3つ以上の液面検知センサ435を取付けることとしてもよい。
【0085】
(d)上記実施形態では、バンド437を切断することによって、液面検知センサ435を上下に移動させて、透明パイプ432の外周面に対する液面検知センサ435の取付位置を変更可能に構成されている。これに対し、透明パイプ432に対する巻締め及び巻緩めが自在となるようにバンドを構成し、該バンドの巻緩めにより、透明パイプ432の外周面に対する液面検知センサ435の取付位置が変更可能となり、該バンドの巻締めにより、透明パイプ432の外周面に液面検知センサ435が取付けられるように構成してもよい。この場合には、バンドを繰り返し使うことができ、取付位置の変更のために新たなバンドを用意する必要がないため、コストや利便性の面で有利である。
【0086】
(e)上記実施形態では、内燃機関のオイルレベル制御装置1において、オイル温調装置2とオイル量調節装置3とを有し、オイル温調装置2は、オイルを、オイルパン11から導出し、熱交換器24及びヒータ23を介して循環ポンプ22により搬送して再びオイルパン11へ導入する循環路21を備え、オイル量調節装置3は、循環路21から一部のオイルを第一開閉バルブ32を介して抜き取るオイル抜取路31と、オイル補給タンク34と、オイル補給タンク34から第二開閉バルブ37及びオイル供給路35を介してオイルパン11へオイルを送出する送出ポンプ36を備え、液位設定検出装置4から発せられる液位信号に基づいて、第一開閉バルブ32と第二開閉バルブ37と送出ポンプ36とを制御するように構成されているが、この配管取り回しに代えて、循環路21にある循環ポンプ22の吸い込み側に送出ポンプ36を有するオイル供給路35を第二開閉バルブ37を介して接続し、循環路21にある循環ポンプ22の吐出側にオイル抜取路31を第一開閉バルブ32を介して接続するように構成してもよい。この構成では、オイルパン11への接続を温調用オイル導出口11a及び温調オイル導入口11bの2本だけとし、補給オイル導入口11cを省略してもよい。
【符号の説明】
【0087】
1…オイルレベル制御装置、4…液位設定検出装置、10…被試験エンジン、11…オイルパン、12…オイルキャップ、44…制御装置、45…均圧管、46…オイル導入管、432…透明パイプ、432a…外壁肉部、435…液面検知センサ、435b…投光部、435c…受光部、437…バンド、4351…第一液面検知センサ、4352…第二液面検知センサ、4353…第三液面検知センサ、4354…第四液面検知センサ、AX…光軸。