IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中外炉工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-炉内点検装置及び炉内点検方法 図1
  • 特許-炉内点検装置及び炉内点検方法 図2
  • 特許-炉内点検装置及び炉内点検方法 図3
  • 特許-炉内点検装置及び炉内点検方法 図4
  • 特許-炉内点検装置及び炉内点検方法 図5
  • 特許-炉内点検装置及び炉内点検方法 図6
  • 特許-炉内点検装置及び炉内点検方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】炉内点検装置及び炉内点検方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 21/02 20060101AFI20221011BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20221011BHJP
   F27B 9/40 20060101ALI20221011BHJP
   C21D 9/56 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F27D21/02
F27D21/00 G
F27B9/40
C21D9/56 101Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019154264
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021032506
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 利生
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-333279(JP,A)
【文献】特開2019-036269(JP,A)
【文献】特開2007-245797(JP,A)
【文献】特開2005-221121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 17/00-99/00
F27B 9/00- 9/40
C21D 9/52- 9/66
B64C 39/00
C10B 1/00-57/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内の状態を点検する炉内点検装置において、炉内を飛行させる回転翼式無人小型飛行体に、炉内を点検するカメラを装着させると共に複数の温度測定器を設け、前記の温度測定器によって測定された温度に基づいて、前記の回転翼式無人小型飛行体における回転翼の回転数を制御して、回転翼式無人小型飛行体の飛行をコントロールするコントローラーを設けたことを特徴とする炉内点検装置。
【請求項2】
請求項1に記載の炉内点検装置において、前記の温度測定器として、広い範囲の温度を測定できる赤外線サーモグラフィーを用いたことを特徴とする炉内点検装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の炉内点検装置において、前記の各温度測定器によって測定された温度に基づいて、炉内の所定位置における空気密度の変化を算出し、この結果に基づいて、前記のコントローラーにより各回転翼の回転数を制御することを特徴とする炉内点検装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の炉内点検装置を用いて炉内の状態を点検する炉内点検方法において、炉内を点検するカメラを装着させると共に複数の温度測定器を設けた前記の回転翼式無人小型飛行体における各温度測定器によって測定された温度に基づいて、前記のコントローラーにより回転翼式無人小型飛行体における各回転翼の回転数を制御しながら、前記の回転翼式無人小型飛行体を炉内の所定位置に飛行させて、回転翼式無人小型飛行体に設けた前記のカメラを通して、炉内の状態を点検することを特徴とする炉内点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の工業炉における炉内の状態、例えば、炉内に設けたラジアントチューブバーナー等の各種の装置の点検を行う炉内点検装置及び炉内点検方法に関するものである。特に、炉内の温度を大幅に低下させない状態であっても、炉壁や炉内に設けたラジアントチューブバーナー等の各種の装置における様々な位置や変形の状態を簡単に点検できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の工業炉を使用し続けた場合において、この工業炉のメンテナンスなどを行うために、炉内の状態、例えば、炉内に設けたラジアントチューブバーナー等の各種の装置の点検を行うようにしている。
【0003】
そして、このように炉内の状態を点検するにあたり、従来においては、工業炉の操業を停止させて、炉内の温度を人が入れる程度の温度まで低下させ、この状態で、人が炉内に設けたラジアントチューブバーナー等の各種の装置の点検を行うようにしていた。
【0004】
しかし、このように炉内の温度を人が入れる程度の温度まで低下させるためには長時間が必要になると共に、人が炉内に設けたラジアントチューブバーナー等の各種の装置を点検することは面倒であると共に危険も伴い、さらに各種の装置を点検してメンテナンスを行った後、炉内の温度を所定温度まで上昇させて操業させるのにも、非常に長い時間を要し、作業効率が非常に悪くなるという問題があった。
【0005】
このため、近年においては、縦型炉内の状態を点検するにあたり、特許文献1に示されるように、全方位カメラと該全方位カメラで縦型炉内狭小部を撮影した画像を送信するアンテナと照明装置とを備えた撮像装置と、この撮像装置を昇降させるウインチワイヤーを巻上げ、巻下げをするウインチと、送信された画像の画像歪を補正する画像処理装置とを設けると共に、前記のウインチに、回転駆動装置の回転速度および停止位置を制御する回転制御装置を設け、前記のウインチワイヤーを縦型炉内に送り込むにあたり、縦型炉の炉頂開口部近辺に配置した支柱、ガイドサポートを経て、前記の炉頂開口部の直下に配置された構造物を避けるように構成するようにしたものが提案されている。
【0006】
ここで、この特許文献1に示されるものにおいては、全方位カメラと該全方位カメラで縦型炉内狭小部を撮影した画像を送信するアンテナと照明装置とを備えた撮像装置をウインチワイヤーに吊下げ、炉頂開口部の直下に配置された構造物を避けるようにして、この状態で、ウインチワイヤーをウインチにより巻上げ又は巻下げて撮像装置を昇降させ、この撮像装置に設けた全方位カメラによって縦型炉内狭小部を撮影した画像をアンテナから画像処理装置に送信し、この画像処理装置により送信された画像の画像歪を補正するようにしている。
【0007】
しかし、この特許文献1に示されるものにおいては、炉頂開口部の直下に配置された構造物を避けるようにして、この状態で、ウインチワイヤーをウインチにより巻上げ又は巻下げて撮像装置を昇降させて、炉内の状態を点検するため、その操作が面倒で時間を要すると共に、また開口部真下からの死角ができてしまい、撮像装置に設けた全方位カメラによって縦型炉内狭小部を撮影した画像を画像処理装置に送信し、この画像処理装置において送信された画像の画像歪を補正するため、このような画像処理を行うための時間やコストが高くつくと共に、炉内全体を正確に点検することも非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-105530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、各種の工業炉における炉内の状態、例えば、炉内に設けたラジアントチューブバーナー等の各種の装置の点検を行う場合における前記のような様々な問題を解決することを課題とするものである。
【0010】
すなわち、本発明は、前記のように工業炉における炉内の状態、例えば、炉内に設けたラジアントチューブバーナー等の各種の装置の点検を行うにあたり、炉内の温度を大幅に低下させない状態で、炉内に設けたラジアントチューブバーナー等の各種の装置における様々な位置や変形の状態を簡単に点検できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る炉内点検装置においては、前記のような課題を解決するため、炉内の状態を点検する炉内点検装置において、炉内を飛行させる回転翼式無人小型飛行体に、炉内を点検するカメラを装着させると共に複数の温度測定器を設け、前記の温度測定器によって測定された温度に基づいて、前記の回転翼式無人小型飛行体における各回転翼の回転数を制御するコントローラーを設けた。ここで、前記の回転翼式無人小型飛行体としては、飛行体本体や回転翼等に耐熱性に優れたチタン等を用いた耐熱性飛行ロボットであるドローンを用いることができる。
【0012】
そして、前記の炉内点検装置において、前記の温度測定器としては、広い範囲の温度を測定できる赤外線サーモグラフィーを用いることが好ましい。また、温度測定器を回転翼式無人小型飛行体に複数設けるにあたっては、この飛行体の上面部、下面部及び複数の側面部に設けることができる。
【0013】
そして、前記の炉内点検装置においては、前記の各温度測定器によって測定された温度に基づいて、炉内の所定位置における空気密度の変化を算出し、この結果に基づいて、前記のコントローラーにより各回転翼の回転数を制御させるようにする。このようにすると、前記の回転翼式無人小型飛行体における浮力などを適切に制御して、回転翼式無人小型飛行体を炉内の所定位置に向けて飛行させることができるようになる。
【0014】
そして、前記のような炉内点検装置を用いて炉内の状態を点検する炉内点検方法においては、炉内を点検するカメラを装着させると共に複数の温度測定器を設けた前記の回転翼式無人小型飛行体における各温度測定器によって測定された温度に基づいて、前記のコントローラーにより回転翼式無人小型飛行体における各回転翼の回転数を制御しながら、前記の回転翼式無人小型飛行体を炉内の所定位置に飛行させ、回転翼式無人小型飛行体に設けた前記のカメラを通して、炉内の状態を点検させるようにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る炉内点検装置のように、炉内を飛行させる回転翼式無人小型飛行体に、炉内を点検するカメラを装着させると共に複数の温度測定器を設け、前記の温度測定器によって測定された温度に基づいて、前記の回転翼式無人小型飛行体における各回転翼の回転数を制御するコントローラーを設けると、炉内に人が入ったりする必要がなく、炉内の温度がある程度高い状態であっても、前記のように回転翼式無人小型飛行体における各温度測定器によって測定された温度に基づいて、前記のコントローラーにより回転翼式無人小型飛行体における各回転翼の回転数を制御しながら、安定した飛行状態で、前記の回転翼式無人小型飛行体を炉内の所定位置に飛行させ、回転翼式無人小型飛行体に設けた前記のカメラを通して、炉内の状態を点検することができるようになる。
【0016】
また、本発明に係る炉内点検装置のように回転翼式無人小型飛行体を飛行させて、回転翼式無人小型飛行体に設けたカメラを通して炉内の状態を点検させるようにすると、前記の特許文献1に示されるものに比べて、炉内の状態を点検するためのカメラの向きや位置の移動などの操作が簡単になると共に、画像処理装置による画像歪の修正の必要も少なくなり、さらに炉内全体を正確に点検するが簡単に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態において、点検を行う工業炉の使用状態を示し、(A)は正面側の断面説明図、(B)は平面側の断面説明図である。
図2】前記の実施形態において、前記の工業炉の炉内を飛行させて炉内の点検を行うのに使用する回転翼式無人小型飛行体を示し、(A)は概略斜視図、(B)は概略平面図である。
図3】前記の実施形態において、前記の回転翼式無人小型飛行体をコントロールするコントローラーの概略説明図である。
図4】前記の実施形態において、前記の回転翼式無人小型飛行体によって炉内の点検を行うにあたり、回転翼式無人小型飛行体をコントローラーにより操作して、回転翼式無人小型飛行体を炉内で飛行させる状態を示した正面側の断面説明図である。
図5】前記の実施形態において、前記の回転翼式無人小型飛行体によって炉内の点検を行うにあたり、回転翼式無人小型飛行体をコントローラーにより操作して、回転翼式無人小型飛行体を炉内で飛行させる状態を示した平面側の断面説明図であり、一方の炉壁に設けられたラジアントチューブバーナーを、便宜上破線で示している。
図6】前記の実施形態において、前記の回転翼式無人小型飛行体によって炉内の点検を行うにあたり、回転翼式無人小型飛行体をコントローラーにより操作して、回転翼式無人小型飛行体を炉内で飛行させる状態を示した側面側の断面説明図である。
図7】前記の実施形態において、前記の回転翼式無人小型飛行体をコントローラーにより操作して、炉内における特定のラジアントチューブバーナーの状態を、回転翼式無人小型飛行体に設けたカメラを通して点検する状態を示した部分説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る炉内点検装置及び炉内点検方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る炉内点検装置及び炉内点検方法は、下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0019】
この実施形態においては、炉内点検を行う工業炉として、図1(A),(B)に示すように、鋼板からなる金属ストリップ1を炉10の一端側の導入口11から炉10内に導入させ、このように炉10内に導入された金属ストリップ1を、炉10内の下部に設けられた複数のボトムローラー12と、炉10内の上部に設けられた複数のトップローラー13とに順々に架け渡して走行させ、炉10の他端側の導出口14を通して炉10内から導き出すようにしている。
【0020】
また、この実施形態においては、前記のように炉10内に導入された金属ストリップ1を、炉10内に設けられた複数のボトムローラー12と複数のトップローラー13とに順々に架け渡して走行させるにあたり、このように走行される金属ストリップ1を炉10内において加熱させるように、前記の走行される金属ストリップ1の両側に炉10外から炉10内に突出するようにU字状になったラジアントチューブバーナー15を金属ストリップ1の走行方向に所要間隔を介して複数設けている。
【0021】
そして、前記のように炉10内に設けた各ラジアントチューブバーナー15等の状態を点検するにあたり、この実施形態においては、図2(A),(B)等に示すように、回転翼式無人小型飛行体20として、飛行体本体21やこの飛行体本体21から対角方向に延出するように設けた4つの回転翼22等に耐熱性に優れたチタン等を用いた耐熱性飛行ロボットであるドローンを用い、この飛行体本体21の下面21cに、炉10内におけるラジアントチューブバーナー15等の点検を行う耐熱性のカメラ23として、赤外線サーモグラフィーカメラを搭載させると共に、図では明確ではないが、この飛行体本体21における4つの側面21aと、上面21bと、下面21cとに、それぞれ温度測定器24として、飛行する回転翼式無人小型飛行体20の周辺の広い範囲の温度を測定するための赤外線サーミスタを設けている。
【0022】
ここで、回転翼式無人小型飛行体20に設ける前記の温度測定器24の数や位置は特に限定されず、回転翼式無人小型飛行体20を所定の位置に飛行させるようにするため、回転翼式無人小型飛行体20の周囲における適当な位置の温度を測定して空気密度を計算し、計算した空気密度に対応させて各回転翼22の回転数を制御できるようになっていればよい。
【0023】
また、この実施形態においては、前記の回転翼式無人小型飛行体20を図3に示すようなコントローラー30によって制御するにあたり、回転翼式無人小型飛行体20に設けられた前記のカメラ23によって撮影された映像や、各温度測定器24によって測定された各位置の温度等を、前記のコントローラー30に設けられたモニター31等に出力させ、このように出力された映像や各位置の温度に基づく空気密度等に基づいて、このコントローラー30に設けられた操作レバー32により、回転翼式無人小型飛行体20における各回転翼22の回転数を制御して、回転翼式無人小型飛行体20の位置やカメラ23の向きを操作するようにしている。
【0024】
ここで、炉10の内部を点検するとき、炉10の操業は停止させており、炉10の内部の温度は低下しているが、操業時の残熱により、温度の高低が生じている。そのため、各回転翼22の回転数が、そのままだと、温度の高い所では、空気密度が小さくなり、揚力が不足して回転翼式無人小型飛行体20は降下し、温度の低い所では、その逆の現象が起き、回転翼式無人小型飛行体20の飛行が不安定になる。
【0025】
そこで、前記の温度測定器24により回転翼式無人小型飛行体20の進行方向の予め検知し、空気密度を計算し、それに合わせて揚力を各回転翼22の回転数によって自動制御して、回転翼式無人小型飛行体20の飛行を安定させる機能が前記のコントローラー30に備わっている。なお、この機能は回転翼式無人小型飛行体20の飛行体本体21に備わっていてもよい。
【0026】
そして、このようにモニター31等に出力された映像や各位置の温度による各位置の空気密度等に基づいて、コントローラー30における操作レバー32を操作し、図4図6に示すように、前記の回転翼式無人小型飛行体20を炉10内で飛行させて、例えば、図7に示すように、炉10内において点検を行う所定位置のラジアントチューブバーナー15に対向する位置に導き、この回転翼式無人小型飛行体20に搭載された前記のカメラ23により、所定位置におけるラジアントチューブバーナー15の状態等を、回転翼式無人小型飛行体20に設けた前記のカメラ23により撮影し、これを前記のモニター31に出力させて、ラジアントチューブバーナー15の状態等を点検するようにする。
【0027】
そして、このような操作を繰り返して炉10内に設けた各ラジアントチューブバーナー15等の状態を点検するようにし、損傷等のラジアントチューブバーナー15が発見された場合には、このラジアントチューブバーナー15を交換させるようにする。
【符号の説明】
【0028】
1 :金属ストリップ
10 :炉
11 :導入口
12 :ボトムローラー
13 :トップローラー
14 :導出口
15 :ラジアントチューブバーナー
20 :回転翼式無人小型飛行体
21 :飛行体本体
21a :側面
21b :上面
21c :下面
22 :回転翼
23 :カメラ
24 :温度測定器
30 :コントローラー
31 :モニター
32 :操作レバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7