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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20221011BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221011BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20221011BHJP
   B29C 33/12 20060101ALI20221011BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221011BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221011BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221011BHJP
   C09D 125/02 20060101ALI20221011BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20221011BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20221011BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/61
C09D5/24
B29C33/12
B32B27/18 J
B32B27/30 A
B32B27/30 B
B32B27/32 Z
C09D125/02
C09D133/06
C08J7/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020213792
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099793
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2022-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小村 克斗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 瑞樹
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/067851(WO,A1)
【文献】特開2010-167662(JP,A)
【文献】国際公開第2020/195938(WO,A1)
【文献】特開2009-019073(JP,A)
【文献】特開2004-245867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
B29C33/00- 51/44
B29C70/00
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、炭素数4~24の炭化水素基を有する重合性不飽和化合物、
(B)1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、水酸基を有する重合性不飽和化合物、
(C)1分子内に2個の重合性不飽和基を有し、かつ、単独重合体のガラス転移温度が100~250℃範囲内である重合性不飽和化合物、
(D)1分子内に3~9個の重合性不飽和基を有し、かつ、エステル結合を含んでいてもよい炭素数の合計が6~14の直鎖状アルキレン基を含有する重合性不飽和化合物、
(E)導電性顔料、及び
(F)重合開始剤を含有する塗料組成物であって、
成分(A)が、ビニル芳香族化合物(a1)及び/又は炭素数4~24の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(a2)を含むことを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
成分(B)が、水酸基含有(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
成分(C)が、脂環式骨格を有する多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(c1)を含む請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
脂環式骨格を有する多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(c1)が、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の塗料組成物。
【請求項5】
成分(C)が、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1ないし4のいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項6】
成分(D)が、多価アルコールと、(メタ)アクリル酸およびε-カプロラクトンのエステル化物であるカプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレート(d1)を含む請求項1ないしのいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項7】
多価アルコールと、(メタ)アクリル酸およびε-カプロラクトンのエステル化物であるカプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレート(d1)が、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の塗料組成物。
【請求項8】
成分(D)が、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1ないし7のいずれか1項記載の塗料組成物。
【請求項9】
成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として、成分(A)の含有量が30~91質量部、成分(B)の含有量が1~40質量部、成分(C)の含有量が5~35質量部、成分(D)の含有量が3~40質量部である請求項1ないしのいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項10】
導電性顔料(E)が、導電カーボンである請求項1ないしのいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項11】
プラスチック材料による成型物表面に、請求項1~10のいずれか1項に記載の塗料組成物による塗膜が形成されている塗装物品。
【請求項12】
プラスチック材料が、ポリオレフィンである請求項11に記載の塗装物品。
【請求項13】
金型内においてプラスチック材料を加熱・成形せしめ、次いで得られた成形物と金型内壁との間に型内被覆塗料組成物を注入し、該型内被覆塗料組成物を硬化させた後、被覆された成形物を金型から取り出す工程を含む型内被覆方法において、型内被覆塗料組成物が、請求項1~10のいずれか1項に記載の塗料組成物である型内被覆方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内被覆用途に好適であり、特に塩素化ポリオレフィンや変性ポリオレフィン等を配合せずともポリオレフィン素材に対する付着性に優れ且つ導電性が付与された塗膜を形成できる塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車部品等において、金属に代わる材料として種々のプラスチック材料が用いられており、成型された部材に種々塗装が行われている。省工程で環境に対する負荷が少ない成型・塗装工法として、金型内で成形したプラスチック成形体の表面と金型面との間に設けた隙間に塗料組成物を注入した後、この塗料組成物を金型内で硬化させて成型品表面に被膜が密着した一体成形体を製造する型内被覆方法(インモールドコート法)が注目されている。本出願人も特許文献1で繊維強化プラスチック材料(FRP)による成型品の型内被覆用に特定組成の熱硬化性樹脂組成物を用いて、付着性及び仕上がり性に優れた塗膜を形成し得る型内被覆方法を提案している。
【0003】
一方、プラスチック材料として多用されているポリオレフィン基材など非極性の熱可塑性プラスチック基材に対して密着性を確保したインモールドコートコーティング組成物には、通常、アクリル変性ポリオレフィンや塩素化ポリオレフィンを配合することが提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3等)。
【0004】
しかしながら、これらの組成物では、ポリオレフィン成分とその他樹脂成分との相溶性が悪く長期貯蔵性に劣るという不具合があり、アクリル変性ポリオレフィンや塩素化ポリオレフィンを配合しなくともポリオレフィン基材に付着する組成物が求められている。
【0005】
これに対し特許文献4では、ポリオレフィン基材に、飽和脂肪族ポリエステルウレタン中間体、飽和脂肪族(メタ)アクリレートまたは飽和シクロ脂肪族(メタ)アクリレートである(メタ)アクリレート、1種以上のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキレンポリオールのポリアクリレートエステル、1種以上のビニル置換芳香族、及びフリーラジカルを発生出来る開始剤を含む熱硬化性塗料組成物を用いることが開示されている。
【0006】
一方、上記のような型内被覆物に上塗り塗装を行なう場合、仕上がり性向上の観点から、型内被覆物が導電性を有することが望ましく、型内被覆成形方法に用いられる導電塗料も既に提案されており、導電材としてカーボンブラックだけでなく、導電性金属酸化物粒子を無機粒子表面に被覆した導電性粒子などを含む型内被覆組成物も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-184307号公報
【文献】特開2002-249680号公報
【文献】特開2003-138165号公報
【文献】特表2004-502570号公報
【文献】特開2010-138248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献4の組成物では、型内被覆用途に用いると、金型からの離型性が不十分で被覆物製造時の歩留まりが悪いという不具合があった。
【0009】
本発明の目的は、各種プラスチック素材に対し適用可能で、特に塩素化ポリオレフィン等を配合せずとも、ポリオレフィン素材に対する付着性に優れ且つ導電性が付与された塗膜を形成できる、型内被覆用途に好適な塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の配合組成とすることにより上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、(A)1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、炭素数4~24の炭化水素基を有する重合性不飽和化合物、(B)1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、水酸基を有する重合性不飽和化合物、(C)1分子内に2個の重合性不飽和基を有し、かつ、単独重合体のガラス転移温度が100~250℃範囲内である重合性不飽和化合物、(D)1分子内に3~9個の重合性不飽和基を有し、かつ、エステル結合を含んでいてもよい炭素数の合計が6~14の直鎖状アルキレン基を含有する重合性不飽和化合物、(E)導電性顔料、及び(F)重合開始剤を含有することを特徴とする塗料組成物、を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、型内被覆用途に好適に使用でき、各種プラスチック素材に対し適用可能で、特に塩素化ポリオレフィン等を配合せずとも、ポリオレフィン素材に対する付着性に優れ且つ導電性が付与された塗膜を形成することができ、さらに上塗り塗装後の仕上り性に優れた塗装物品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の態様について説明する。
【0014】
本発明の塗料組成物は、(A)1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、炭素数4~24の炭化水素基を有する重合性不飽和化合物、(B)1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、水酸基を有する重合性不飽和化合物、(C)1分子内に2個の重合性不飽和基を有し、かつ、単独重合体のガラス転移温度が100~250℃範囲内である重合性不飽和化合物、(D)1分子内に3~9個の重合性不飽和基を有し、かつ、エステル結合を含んでいてもよい炭素数の合計が6~14の直鎖状アルキレン基を含有する重合性不飽和化合物、(E)導電性顔料、及び(F)重合開始剤を含有する。
【0015】
上記重合性不飽和化合物(A)は、1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、炭素数4~24の炭化水素基を有する。重合性不飽和基はラジカル重合しうる不飽和基であって、具体的には、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等を挙げることができる。
【0016】
重合性不飽和化合物(A)としては、ビニル芳香族化合物(a1)及び/又は炭素数4~24の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(a2)を含むことができ、特にポリオレフィン素材への浸透性の点から、ビニル芳香族化合物(a1)を用いることが好適である。
【0017】
ビニル芳香族化合物(a1)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレン等が挙げられる。なかでも、形成される塗膜と基材との付着性の観点から、スチレンが好ましい。
【0018】
本発明の塗料組成物が、ビニル芳香族化合物(a1)を含有する場合、その含有量は、形成される塗膜と基材との密着性等の観点から、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として20~91質量部であることが好ましく、35~65質量部であることがより好ましい。
【0019】
炭素数4~24の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(a2)としては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0020】
本発明の塗料組成物が、炭素数4~24の一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(a2)を含有する場合、その含有量は、形成される塗膜と基材との密着性等の観点から、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として5~40質量部であることが好ましく、10~30質量部であることがより好ましい。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0022】
上記重合性不飽和化合物(A)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
本発明において、重合性不飽和化合物(A)の含有量は、形成される塗膜の柔軟性や基材との密着性等の観点から、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として、20~91質量部であることが好ましく、35~65質量部であることがより好ましい。
【0024】
1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、水酸基を有する重合性不飽和化合物(B)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
本発明において、重合性不飽和化合物(B)の含有量は、形成される塗膜と上塗り塗膜との密着性等の観点から、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として、1~40質量部であることが好ましく、2~25質量部であることがより好ましい。
【0026】
本発明において1分子内に2個の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(C)は、単独重合体のガラス転移温度が100~250℃、好ましくは120~200℃の範囲内の化合物であり、組成物の反応率を高め、特に型内被覆用途において離型性の確保に寄与する成分である。
【0027】
上記化合物のガラス転移温度は、そのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定したときの値を使用する。示差走査熱量計を用いての測定によって、窒素雰囲気下で10℃から350℃まで20℃/分の速度で昇温しガラス転移温度を求める。
【0028】
上記重合性不飽和化合物(C)としては、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
上記重合性不飽和化合物(C)としては、特に脂環式骨格を有する多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(c1)を含むことが好適である。脂環式骨格としては、シクロヘキサン環やトリシクロデカン環などが挙げられ、脂環式骨格を有する多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物(c1)としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
本発明において、重合性不飽和化合物(C)の含有量は、反応率向上や形成される塗膜の離型性確保等の観点から、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として、5~35質量部であり、好ましくは5~25質量部である。
【0031】
本発明において1分子内に3~9個以上の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(D)は、エステル結合を含んでいてもよい炭素数の合計が6~14の直鎖状アルキレン基を含有する化合物であり、組成物の反応率を高め、形成塗膜への靭性や柔軟性の付与に寄与する成分である。
【0032】
上記重合性不飽和化合物(D)としては、例えばペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のアルキル変性物やカプロラクトン変性物、さらにはポリオキシアルキレン変性物等が挙げられる。
【0033】
特に上記重合性不飽和化合物(D)としては、形成塗膜への靭性や柔軟性の付与から、多価アルコールと、(メタ)アクリル酸およびε-カプロラクトンのエステル化物であるカプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレート(d1)を含むことが好適である。カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレート(d1)としては、例えば、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好適に使用できる。
【0034】
本発明において、重合性不飽和化合物(D)の含有量は、形成される塗膜への靭性や柔軟性付与の観点から、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として、3~40質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがより好ましい。
【0035】
本発明において導電性顔料(E)としては、形成される塗膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状のいずれの形状のものでも使用することができる。具体的には、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイルなどの導電性カーボン;銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウムなどの金属粉が挙げられ、さらに、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド、カーボンやグラファイトのウィスカー表面に酸化錫などを被覆した顔料;フレーク状のマイカ表面に酸化錫やアンチモンドープ酸化錫などの導電性金属酸化物を被覆した顔料;二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。これらのうち特に導電性カーボンを好適に使用することができる。
【0036】
本発明において、導電性顔料(E)の含有量は、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として、0.2~200質量部であることが好ましく、0.4~150質量部であることがより好ましい。特に顔料(E)として導電カーボンを用いる場合、導電カーボンの含有量は、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として、0.2~50質量部であることが好ましく、0.4~30質量部であることがより好ましい。
【0037】
本発明において重合開始剤(F)は、熱重合開始剤及び光重合開始剤から選択される重合開始剤である。なかでも、基材の形状に関わらず塗膜を形成できるため、該重合開始剤の少なくとも1種として、熱重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤(F)としては、熱重合開始剤及び光重合開始剤を組み合わせて使用することもできる。
【0038】
熱重合開始剤は、加熱により、フリーラジカル(中間体の形態でも)を発生する化合物又はこれらの化合物の混合物である。熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4、4’-アゾビス(4-シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を挙げることができる。
【0039】
熱重合開始剤の市販品としては、例えば、「VA-044」、「VA-046B」、「V-50」、「VA-057」、「VA-061」、「VA-067」、「VA-086」、「V-60」、「V-70」、「V-65」、「V-601」、「V-59」、「V-40」、「VF-096」、「VAm-110」(以上、和光純薬工業社製、商品名)、「パーブチルH」、「パーブチルZ」、「パーブチルO」、「パーオクタO」(以上、日油社製、商品名)等を挙げることができる。
【0040】
上記重合開始剤(F)は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
本発明において、重合開始剤(F)の含有量は、前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の合計固形分100質量部を基準として、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0042】
本発明の塗料組成物は、1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、炭素数4~24の炭化水素基を有する重合性不飽和化合物(A)、1分子内に1個の重合性不飽和基を有し、かつ、水酸基を有する重合性不飽和化合物(B)、1分子内に2個の重合性不飽和基を有し、かつ、単独重合体のガラス転移温度が100~250℃の範囲内である重合性不飽和化合物(C)、1分子内に3~9個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、エステル結合を含んでいてもよい炭素数の合計が6~14の直鎖状アルキレン基を含有する重合性不飽和化合物(D)、導電性顔料(E)及び重合開始剤(F)を必須として含有するものである。
【0043】
本発明の塗料組成物では、上記に加えさらに紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有することができる。また、必要に応じて、塩素化ポリオレフィン等の樹脂成分や架橋剤、溶媒(有機溶剤、水)、(E)以外の顔料、硬化促進剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、防汚剤、湿潤剤、増粘剤、染料、耐擦り傷性向上剤、ツヤ調整剤等の塗装の分野で通常使用される他の添加成分等を適宜含有することができる。また、本発明の塗料組成物が型内被覆方法により塗装される場合には、離型剤を含有していることが好ましい。
【0044】
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。また、上記紫外線吸収剤は、重合性不飽和基を有するものであってもよい。
【0045】
ベンゾトリアゾール系吸収剤の具体例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0046】
トリアジン系吸収剤の具体例としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0047】
サリチル酸誘導体系吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0048】
ベンゾフェノン系吸収剤の具体例としては、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノントリヒドレート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジベンゾイルレゾルシノール、4,6-ジベンゾイルレゾルシノール、ヒドロキシドデシルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0049】
また、上記紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「TINUVIN 900」、「TINUVIN 928」、「TINUVIN 384-2」、「TINUVIN 479」、「TINUVIN 405」、「TINUVIN 400」、(BASF社製、商品名、TINUVIN/チヌビンは登録商標)、「RUVA 93」(大塚化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0050】
本発明の塗料組成物が、上記紫外線吸収剤を含有する場合、該紫外線吸収剤の含有量は、該塗料組成物の固形分総量に対して、0.5~10質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.8~9質量%、さらに好ましくは1.0~8質量%である。
【0051】
前記光安定剤は、塗膜の劣化過程で生成する活性なラジカル種を捕捉するラジカル連鎖禁止剤として用いられるもので、例えば、ヒンダードアミン化合物の光安定剤等が挙げられる。
【0052】
光安定剤のなかで優れた光安定化作用を示す光安定剤としては、ヒンダードピペリジン化合物が挙げられる。ヒンダードピペリジン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2’,6,6’-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル){[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル}ブチルマロネート等のモノマータイプのもの;ポリ{[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノール]}等のオリゴマータイプのもの;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとコハク酸とのポリエステル化物等のポリエステル結合タイプのもの等が挙げられるが、これらに限ったものではない。光安定剤としては、また、公知の重合性光安定剤も使用することが可能である。
【0053】
前記光安定剤の市販品としては、例えば、「TINUVIN 123」、「TINUVIN 152」、「TINUVIN 292」(BASF社製、商品名、TINUVIN/チヌビンは登録商標)、「HOSTAVIN 3058」(クラリアント社製、商品名、Hostavinは登録商標)、「アデカスタブLA-82」(株式会社ADEKA製、商品名、アデカスタブ/ADKSTAB及びアデカスタブは登録商標)等が挙げられる。
【0054】
本発明の塗料組成物が、上記光安定剤を含有する場合、該光安定剤の含有量は、該塗料組成物の固形分総量に対して、0.5~10質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.8~9質量%、さらに好ましくは1.0~8質量%である。
【0055】
前記溶媒としては、例えば、有機溶剤、水等を使用することができる。該有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、「スワゾール1000」(コスモ石油社製、商品名、高沸点石油系溶剤)等の芳香族系溶剤;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0056】
前記顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料等を挙げることができる。該顔料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0057】
前記硬化促進剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、3-ジメチルアミノ安息香酸などの3級アミン類、4級アンモニウム塩、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸亜鉛、オクチル酸バナジウム等の金属ドライヤー等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0058】
前記離型剤としては、例えば、ステアリン酸や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤;ポリテトラフルオロエチレン、フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエステル及びパーフルオロアルキルエステル塩等のフッ素系化合物;アルキル鎖またはオキシエチレン鎖等を有するリン酸モノエステルおよび/またはリン酸ジエステル等のリン酸エステル化合物;大豆油レシチン、シリコーン油、脂肪酸エステル及び脂肪酸アルコール二塩基酸エステル類を挙げることができ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0059】
本発明の塗料組成物が、上記離型剤を含有する場合、該離型剤の含有量は、形成される塗膜と基材との密着性、耐候性、塗膜硬度の観点から、該塗料組成物中の固形分100質量部を基準として、0.1~10質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.2~7質量部、さらに好ましくは0.3~5質量部である。
【0060】
上記のとおり得られる本発明の塗料組成物は、固形分が90~100質量%を占めることが好ましく、より好ましくは95~100質量%、さらに好ましくは99~100質量%を占める、いわゆる無溶媒型の塗料組成物が好ましく、加熱硬化型の塗料組成物であることがより好ましい。なお本明細書において、固形分とは、塗料組成物を構成する成分のうち溶剤を除くすべての成分をいう。
【0061】
本発明では、上記のとおり得られる塗料組成物を基材上に塗装することによりウェット塗膜(未硬化の塗膜)を形成し、該ウェット塗膜を硬化させることにより、目的の塗膜を形成することができる。基材の材質としては、無機材料若しくは有機材料、または有機材料と無機材料とのハイブリッド材料のいずれであってもよく、特にプラスチック材料による成型物表面に上記塗料組成物による塗膜を形成することができる。
【0062】
プラスチック材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-1、4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1、2-ジフェノキシエタン-4、4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどのようなポリエステル樹脂、エピコート(商品名:油化シェルエポキシ(株)製)などの市販品に代表されるエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-エチレン-スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、各種の繊維強化プラスチック材料(Fiber Reinforced Plastics:以下FRP材料又は単にFRPと略称する場合がある。)等が挙げられ、特に、ポリオレフィンが好適である。
【0063】
本発明の塗料組成物は、高い固形分を有する場合でも比較的低粘度の塗料組成物とすることが出来るので、型内被覆方法(インモールドコート法)による塗装において好適に使用することができる。
【0064】
本発明において型内被覆方法は、金型内においてプラスチック材料を加熱・成形せしめ、次いで得られた成形物と金型内壁との間に本発明の塗料組成物を型内被覆塗料組成物として注入し、該型内被覆塗料組成物を硬化させた後、被覆された成形物を金型から取り出す工程を含むものである。
【0065】
本発明では、本発明の塗料組成物による塗膜面に上塗り塗料を静電塗装することができる。上塗り塗料としては、着色塗料やクリヤー塗料をそれぞれ単独で用いて塗装してもよいし、該着色塗料をベース塗料として用いて、ベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装することもできる。また、上記本発明の塗料組成物による塗膜上に、着色ベース塗膜層として、例えば、白色ベース塗料と干渉パール色ベース塗料とを順次塗装して複層膜を形成してもよい。
【0066】
上記着色塗料としては、それ自体既知のものを使用することができ、通常、水及び/又は有機溶剤を主たる溶媒とし、着色顔料、光輝顔料、染料などの着色成分と、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分を含有するものを用いることができる。
【0067】
上記着色塗料に使用される基体樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、シラノール基のような反応性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの樹脂を挙げることができる。また、架橋剤としては、上記官能基と反応しうる反応性官能基をもつ、メラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂や(ブロック)ポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリカルボン酸などを挙げることができる。
【0068】
上記着色塗料は、必要に応じて、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックス、防腐剤などの塗料用添加剤を含有することができる。
【0069】
上記着色塗料は、前記の未硬化の又は硬化された本発明塗料組成物による塗膜上に、乾燥膜厚で、通常5~50μm、好ましくは5~30μm、さらに好ましくは10~20μmの範囲内となるように塗装し、得られる塗膜面を、必要に応じて室温で1~60分間程度セッティングし、又は約40~約80℃の温度で1~60分間程度予備加熱することができ、あるいは約60~約120℃、好ましくは約80~約120℃の温度で20~40分間程度加熱して硬化させることができる。本発明では、特に、着色ベース塗料を塗装後に硬化させることなく、次いでクリヤー塗装を行なうことが好適である。
【0070】
上記クリヤー塗料としては、例えば、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分と、有機溶剤や水などを含有し、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックスなどの塗料用添加剤を配合してなる有機溶剤系或いは水系の熱硬化性塗料であって、形成されるクリヤー塗膜を通して下層塗膜を視認することができる程度の透明性を有するものを用いることができる。
【0071】
上記基体樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの少なくとも1種の反応性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などの樹脂が挙げられ、特に、水酸基含有アクリル樹脂が好適である。上記架橋剤としては、これらの官能基と反応しうる反応性官能基を有する、メラミン樹脂、尿素樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物などが挙げられ、特に、ポリイソシアネート化合物が好適である。
【0072】
上記クリヤー塗料の塗装は、未硬化の又は硬化された着色ベース塗膜上に、乾燥膜厚で、通常10~50μm、好ましくは20~40μmの範囲内となるように塗装し、得られる塗膜面を、必要に応じて、室温で1~60分間程度セッティングし、又は約40~約80℃の温度で1~60分間程度予備加熱した後、約60~約120℃、好ましくは約70~約120℃の温度で20~40分間程度加熱して硬化させることにより行うことができる。
【実施例
【0073】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
【0074】
塗料組成物の製造
実施例1~10及び比較例1~6
温度計、サーモスタット及び攪拌装置を備えた反応容器に、表1に示す固形分量となるように(A)~(D)の各成分を仕込み、撹拌しながら50℃まで昇温させた後、50℃を保持して3時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、(E)成分である導電カーボン(「ケッチェンブラックEC600JD」、商品名、ライオン株式会社製)を表1に示す固形分量、(F)成分である重合開始剤(「パーブチルO」、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート)を3.5部(固形分量)、さらに例によりステアリン酸亜鉛等を添加し、均一に混合して、固形分99.6%の各塗料組成物(1)~(16)を得た。
【0075】
尚、表1中の導電酸化チタンは「FT-4000」(商品名、石原産業株式会社製)である。
【0076】
【表1】
【0077】
試験板1の作成
100mm×150mm×3.0mmのポリプロピレン板の表面をイソプロピルアルコールで脱脂し、実施例又は比較例で得た塗料組成物を、バーコーターを用いて硬化膜厚が50μmとなるように塗装し、常温で1分間セッティングを行なった。その後、事前に120℃に加熱した200mm×200mm×50mmの「NAK80」(商品名:大同特殊鋼製金属板)を押付け、200kg/cmの圧力で固定した。次いで、120℃で3分間保持して硬化させた後、金属板を取り除くことで試験板1を作成した。
【0078】
試験板2の作成
試験板1の塗板に、上塗り着色ベースコート塗料組成物(商品名「WBC-713T」、関西ペイント株式会社製、アクリル樹脂・アミノ樹脂水性塗料組成物)を、膜厚20μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化塗面上に上塗りクリヤー塗料組成物として「ソフレックス7175クリヤ」(関西ペイント(株)製、商品名、アクリルウレタン系有機溶剤型クリヤ塗料)を膜厚35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した後、120℃で20分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させることにより、試験板2を作成した。
【0079】
得られた各試験板1について、付着性(初期)及び離型性の評価を行ない、試験板2については付着性(初期)、付着性(耐水)及び仕上り性の評価を行った。結果を表1に併せて示す。
【0080】
付着性(初期):
各試験板の塗面に、JIS K 5600-5-6(1990)に準じて2mm×2mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準で付着性を評価した。◎、○、△、×はそれぞれ以下を意味し、◎及び○が合格を意味する。
【0081】
◎:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けなし、
○:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けあり、
△:残存個数/全体個数=90~99個/100個、
×:残存個数/全体個数=0~89個/100個。
【0082】
付着性(耐水):
各試験板を、40℃の温水に沈め240時間後に取り出し、上記付着性(初期)と同様の付着性試験を行い、上記基準にて評価した。
【0083】
離型性:
試験板1を得る際に用いた金属板からの試験板1の剥離し易さを評価した。◎、○、△、×はそれぞれ以下を意味し、◎、○が合格を意味する。
【0084】
◎:試験板1が自重で金属板から剥離した、
〇:試験板1が自重で金属板から直ちに剥離せず、スクレーパーなどを用いて剥離した際に塗膜および基材に欠陥なく剥離した、
△:試験板1が自重で金属板から直ちに剥離せず、スクレーパーなどを用いて剥離した際に塗膜面積の0~10%未満が剥離した、
×:試験板1が金属板から剥離せず、スクレーパーなどを用いて剥離した際に塗膜面積の11%以上および基材のいずれか一方、あるいはその両方に欠陥が生じた。
【0085】
仕上がり性:
試験板2の塗膜面について、「Wave Scan DOI」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるW4値を用いて評価した。W4値が小さいほど塗膜面の鮮映性が高いことを示す。
◎:W4値が10.0未満
○:W4値が10.0~20.0
×:W4値が20.0を超える値。