(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20221011BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F16H45/02 Y
F16F15/134 A
F16F15/134 Z
(21)【出願番号】P 2021179760
(22)【出願日】2021-11-02
(62)【分割の表示】P 2017148772の分割
【原出願日】2017-08-01
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 光治
(72)【発明者】
【氏名】松尾 道憲
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-353691(JP,A)
【文献】特開2004-125074(JP,A)
【文献】特開2006-183776(JP,A)
【文献】特開2007-255636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/02
F16F 15/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の回転軸上で相対回転可能に設けられていると共に、
前記回転軸方向で対向配置されたドライブプレートおよびドリブンプレートと、
前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとを回転伝達可能に連結するスプリングと、
を有し、
前記ドライブプレートは前記スプリングと前記回転軸方向にオーバーラップする位置に規制片を有し、
前記規制片は前記スプリングの外径側で前記回転軸方向の形状に沿ってフロントカバー側に傾斜する形状を成し、
前記ドリブンプレートの内径側を支持すると共に、
前記回転軸上で回転伝達軸に連結された連結部材と、を有すると共に、
駆動源の回転駆動力がクラッチ装置を介して前記ドライブプレートに入力されるダンパ装置であって、
前記連結部材の外周に、前記回転軸の径方向外側に延出する延出壁を設け、
前記ドライブプレートの内径側を、
前記回転軸方向における前記延出壁と前記ドリブンプレートの間に位置させると共に、
前記延出壁の前記径方向の高さを、
前記ドライブプレートの内周端よりも外径側に及ぶ高さに設定
し、
前記ドリブンプレートの内径側には、
当該ドリブンプレートと前記ドライブプレートとの間を内径側に延びる脚部が設けられており、
前記脚部には、前記連結部材に外挿されるボス部が設けられており、
前記ボス部は、前記ドライブプレートの内周端よりも内径側で、
前記延出壁に前記回転軸方向から対向していることを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
前記クラッチ装置は、内径側摩擦板と外径側摩擦板とを有する多板式のクラッチであり、前記駆動源の回転駆動力が入力される回転盤と、前記ドライブプレートとの間に設けられており、
前記ドライブプレートの内径側には、前記内径側摩擦板が外周にスプライン嵌合した内径側支持部材と、前記外径側摩擦板が内周にスプライン嵌合した外径側支持部材のうちの一方が固定されていることを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記スプリングが、前記多板式のクラッチと、前記連結部材に一体回転可能に連結されたタービンとに挟まれた領域の外周側よりも外側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記スプリングが、前記多板式のクラッチと、前記連結部材に一体回転可能に連結されたタービンとに挟まれた領域に位置していることを特徴とする請求項2に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体式トルク伝達装置のロックアップ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
図4に示すように、特許文献1に代表されるこの種のロックアップ装置200には、ダンパ装置220と、クラッチ装置230とを有するものがある。
【0005】
ダンパ装置220は、駆動源の出力回転がクラッチ装置230を介して入力されるドライブプレート221と、トルクコンバータのタービンハブ212に連結されたドリブンプレート222と、を有している。
ドライブプレート221とドリブンプレート222は、共通の回転軸X上で相対回転可能に設けられており、ドライブプレート221とドリブンプレート222は、回転軸X周りの周方向に沿って設けられたスプリングSpを介して、回転伝達可能に連結されている。
【0006】
クラッチ装置230は、回転軸X方向で交互に配置された内径側摩擦板232および外径側摩擦板233と、回転軸X方向にストロークするピストン234と、を有している。
外径側摩擦板233は、フロントカバー211に固定された筒状部材235の内周にスプライン嵌合しており、内径側摩擦板232は、ドライブプレート221にビス留めされた筒状部材236の外周にスプライン嵌合している。
【0007】
ピストン234は、フロントカバー211の近傍に設けられており、フロントカバー211との間の油室Rに駆動油圧が供給されると、ピストン234は、回転軸X方向にストロークする。
そして、回転軸X方向に移動したピストン234により、内径側摩擦板232と外径側摩擦板233とが相対回転不能に締結されると、フロントカバー211の回転が、クラッチ装置230を介して、ドライブプレート221に伝達される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この際に、ドライブプレート221とドリブンプレート222とは、スプリングSpを周方向に圧縮させた状態で回転軸X回りに一体に回転しており、スプリングSpには、回転による遠心力が作用している。
そのため、スプリングSpは、外径側に位置するドライブプレート221の規制片221aと、サイドプレート223の規制片223aに、回転による遠心力で圧接している。
【0009】
薄肉の板状部材であるドライブプレート221は、回転による遠心力が、スプリングSpから外径側の規制片221aに作用すると、筒状部材236との連結部がある内径側が、フロントカバー211に近づく方向に変位することがある(図中、矢印参照)。
そうすると、内径側摩擦板232を支持する筒状部材236もまた、フロントカバー211に近づく方向に変位することになるが、
図4の場合には、筒状部材236のフロントカバー211側に、クラッチ装置230のピストン234が位置している。
【0010】
そのため、クラッチ装置230では、変位した筒状部材236がピストン234に干渉して、ピストン234のストロークが阻害されないようにするために、ピストン234と筒状部材236とを回転軸X方向に隙間CLをあけて配置している。
【0011】
しかし、この隙間CLを必要とする分だけ、ダンパ装置220の回転軸X方向の厚みが厚くなり、ダンパ装置220を収容するトルクコンバータの厚みもまた厚くなってしまう。
そのため、駆動源の回転駆動力がクラッチを介してドライブプレートに入力されるダンパ装置において、ダンパ装置の回転軸方向の厚みを抑えられるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、
共通の回転軸上で相対回転可能に設けられていると共に、
前記回転軸方向で対向配置されたドライブプレートおよびドリブンプレートと、
前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートとを回転伝達可能に連結するスプリングと、を有し、
前記ドライブプレートは前記スプリングと前記回転軸方向にオーバーラップする位置に規制片を有し、
前記規制片は前記スプリングの外径側で前記回転軸方向の形状に沿ってフロントカバー側に傾斜する形状を成し、
前記ドリブンプレートの内径側を支持すると共に、
前記回転軸上で回転伝達軸に連結された連結部材と、を有すると共に、
駆動源の回転駆動力がクラッチ装置を介して前記ドライブプレートに入力されるダンパ装置であって、
前記連結部材の外周に、前記回転軸の径方向外側に延出する延出壁を設け、
前記ドライブプレートの内径側を、
前記回転軸方向における前記延出壁と前記ドリブンプレートの間に位置させると共に、
前記延出壁の前記径方向の高さを、
前記ドライブプレートの内周端よりも外径側に及ぶ高さに設定し、
前記ドリブンプレートの内径側には、
当該ドリブンプレートと前記ドライブプレートとの間を内径側に延びる脚部が設けられており、
前記脚部には、前記連結部材に外挿されるボス部が設けられており、
前記ボス部は、前記ドライブプレートの内周端よりも内径側で、
前記延出壁に前記回転軸方向から対向している構成のダンパ装置とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、連結部材に設けた延出壁により、ドライブプレートのドリブンプレートから離れる方向への変位を規制できる。
これにより、ドライブプレートの変位を考慮してクラッチ装置側に設けていた回転軸方向の隙間をより狭めることができるので、ダンパ装置の回転軸方向の厚みを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態にかかるロックアップ装置を説明する図である。
【
図2】実施形態にかかるロックアップ装置の要部を説明する図である。
【
図3】変形例にかかるロックアップ装置を説明する図である。
【
図4】従来例にかかるロックアップ装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、実施形態にかかるロックアップ装置2を説明する図であって、ロックアップ装置2周りを拡大して示した断面図である。
図2は、ロックアップ装置2の要部を説明する図である。
図2の(a)は、クラッチハブ44とドリブンプレート32との連結部周りを拡大した図であり、
図2の(b)は、規制壁123の作用を説明する図である。
【0016】
図1に示すように、ロックアップ装置2は、トルクコンバータ1のフロントカバー11の内側に設置されており、ダンパ装置3と、クラッチ装置4とを有している。
【0017】
ダンパ装置3は、駆動源(図示せず)の回転駆動力がクラッチ装置4を介して入力されるドライブプレート31と、トルクコンバータ1のタービンハブ12に連結されたドリブンプレート32と、を有している。
ドライブプレート31とドリブンプレート32は、共通の回転軸X上で相対回転可能に設けられており、ドライブプレート31とドリブンプレート32は、回転軸X周りの周方向に沿って設けられたスプリングSpを介して、回転伝達可能に連結されている。
【0018】
ドリブンプレート32は、回転軸X方向から見てリング状を成す板状部材であり、このドリブンプレート32の外径側には、スプリングSpの支持孔320が設けられている。
支持孔320は、回転軸X周りの周方向に所定間隔で複数設けられており、回転軸X方向から見て支持孔320の各々は、回転軸X周りの周方向に沿う弧状を成している。
【0019】
支持孔320では、回転軸X周りの周方向における一方の縁と他方の縁の間で、スプリングSpが把持されており、回転軸X方向から見てスプリングSpは、回転軸周りの周方向に沿う向きで設けられている。
【0020】
ダンパ装置3では、回転軸X方向におけるドリブンプレート32の一方側(フロントカバー11側)に、ドライブプレート31が設けられており、他方側(タービンランナ13側)に、サイドプレート33が設けられている。
これらドライブプレート31とサイドプレート33とにより、支持孔320に配置されたスプリングSpの回転軸X方向への大きな変位と、支持孔320からの脱落が阻止されている。
【0021】
ドリブンプレート32の内径側は、タービンハブ12の連結部121に、相対回転不能に連結されている。
タービンハブ12は、連結部121の内径側に、円筒状の嵌合部122を有しており、この嵌合部122は、図示しない変速機構部の入力軸10の外周にスプライン嵌合している。
【0022】
嵌合部122は、連結部121の内径側から、回転軸Xに沿って連結部121から離れる方向(
図1における右方向)に延びており、連結部121の外周には、タービンランナ13の支持部材15が相対回転不能に連結されている。
【0023】
この支持部材15には、タービンランナ13と共に、サイドプレート33の内径側が、相対回転不能に連結されている。
サイドプレート33は、回転軸X方向から見てリング状を成す板状部材であり、このサイドプレート33の外径側には、スプリングSpの回転軸X方向へ移動を規制するための規制片332、332が設けられている。
【0024】
タービンハブ12の連結部121は、支持部材15のフロントカバー11側に位置しており、この連結部121は、回転軸X方向に所定幅Wを有している(
図2の(a)参照)。
この連結部121では、ドリブンプレート32の内径側の接続部321が、タービンランナ13寄りの位置(図中、右寄りの位置)で支持されている。連結部121では、フロントカバー11側の端部に、規制壁123が設けられている。
規制壁123は、連結部121の外周から径方向外側に直線状に延出している。連結部121では、回転軸X周りの周方向の全周に亘って規制壁123が設けられており、規制壁123は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って所定高さhで形成されている。
【0025】
図2の(a)に示すように、連結部121では、回転軸X方向における規制壁123とドリブンプレート32との間の領域に、円筒状のボス部322aが外挿されている。このボス部322aは、ドリブンプレート32から延びる脚部322の内径側を屈曲させて形成されている。
【0026】
脚部322は、ドリブンプレート32のフロントカバー11側(
図1における左側)への傾きを規制するために設けられている。
ドリブンプレート32の外径側がフロントカバー11に近づく方向に傾くと、ボス部322aを規制壁123に当接させた脚部322から、ドリブンプレート32に反力が入力されて、ドリブンプレート32のフロントカバー11側への変位と、傾きが規制される。
【0027】
脚部322は、ドリブンプレート32の内径側の領域から、ドリブンプレート32とドライブプレート31の間を、内径側(回転軸X側)に延出している。
そのため、ドライブプレート31の連結部311は、脚部322との干渉を避けるために、外径側の円盤部310よりも、ドリブンプレート32から離れた位置を回転軸Xの径方向に直線状に延びている。
連結部311の外径側の円盤部310は、連結部311よりもドリブンプレート32側の位置を、回転軸Xの径方向に直線状に延びている。
よって、ドリブンプレート32の脚部322は、連結部311と円盤部310との境界よりも内径側の位置から、内径側(回転軸X側)に延びている。
【0028】
図2の(a)に示すように、ボス部322aの外径側には、ドライブプレート31の内径側の端部31aが位置している。このドライブプレート31の内周31bは、ボス部322aの外周に間隔をあけて対向している。
【0029】
ドライブプレート31は、回転軸X方向から見てリング状を成す板状部材であり、このドライブプレート31の外径側には、スプリングSpの回転軸X方向へ移動を規制するための規制片312、312が設けられている(
図1参照)。
規制片312、312は、スプリングSpの外径側で回転軸X方向の形状に沿ってフロントカバー11側に傾斜する形状を成している。規制片312、312がスプリングSpの外径側で回転軸X方向の形状に沿ってフロントカバー11側に傾斜する形状を成していることにより、スプリングSpに遠心力がかかった際、ドライブプレート31の傾斜部に分力が発生し、その分力によってクラッチハブ44がフロントカバー11に近づく方向に変位する。
【0030】
ドライブプレート31では、ドリブンプレート32で支持されたスプリングSpに対向する領域に、規制片312、312が設けられている。そして、回転軸X周りの周方向における規制片312、312が設けられた領域の両側部が、スプリングSpの一端および他端との当接部313となっている。
【0031】
規制片312は、後記するクラッチ装置4のクラッチハブ44よりも外径側に位置している。規制片312は、ドライブプレート31の円盤部310からフロントカバー11側(図中左側)に膨出している。
規制片312の先端312aは、クラッチハブ44の円盤部442の径方向外側に位置している。規制片312は、クラッチハブ44との干渉を避けつつ、クラッチハブ44の径方向外側に及ぶ位置まで到達している。これにより、スプリングSpを支持するための回転軸X方向の範囲が確保されている。
【0032】
さらに規制片312がクラッチハブ44の外径側に位置していることにより、ドライブプレート31の円盤部310と、クラッチハブ44の円盤部442とを、回転軸X方向で近づけて配置できるようになっている。
【0033】
ドライブプレート31の内径側には、回転軸Xに直交する方向に略直線状に延びる連結部311が設けられている。この連結部311は、前記した脚部322との干渉を避けるために、円盤部310よりもフロントカバー11側に位置している。連結部311の内径側の端部31aは、前記した規制壁123よりも回転軸X側(図中、下側)に位置している。
すなわち、規制壁123の径方向の高さhは、ドライブプレート31の内周31bよりも外径側に及ぶ高さに設定されている。
【0034】
ドライブプレート31(連結部311)の内径側の端部31aは、規制壁123およびボス部322aとの間に間隔をあけて設けられている。
【0035】
ドライブプレート31の連結部311では、フロントカバー11側(図中、左側)にクラッチ装置4が位置しており、連結部311のフロントカバー11側の面には、クラッチハブ44の連結部442aが連結されている。
【0036】
クラッチ装置4は、内径側摩擦板41と外径側摩擦板42とを有する多板式のクラッチであり、フロントカバー11と、ダンパ装置3(ドライブプレート31)との間に設けられている。
クラッチ装置4は、回転軸X方向で交互に配置された内径側摩擦板41および外径側摩擦板42と、回転軸X方向にストロークするピストン43と、を有している。
【0037】
内径側摩擦板41は、フロントカバー11に固定された円筒状の支持部材45の外周にスプライン嵌合している。
外径側摩擦板42は、クラッチハブ44の円筒状の周壁部441の内周にスプライン嵌合している。
クラッチハブ44では、周壁部441のダンパ装置3側の端部から、円盤部442が内径側(回転軸X側)に延出している。
円盤部442は、周壁部441の端部に接続された壁部442bと、この壁部442bの内径側から回転軸X側に延びる連結部442aと、を有している。
壁部442bは、前記したドライブプレート31の円盤部310との間に間隔Wxをあけて設けられている。
連結部442aは、壁部442bよりもドライブプレート31側に位置しており、長手方向の略全長に亘って、タービンランナ13側の連結部311に接触している。
【0038】
クラッチハブ44とタービンランナ13は、互いに接触させた連結部442aと連結部311の部分が連結されている。クラッチハブ44とドライブプレート31は、一体回転可能に連結されている。
クラッチハブ44の連結部442aとタービンランナ13の連結部311は、規制壁123の径方向外側で互いに連結されている。
この状態において、クラッチハブ44の連結部442aは、前記した規制壁123の外径側に位置している。連結部442aの内周442cは、回転軸Xの径方向で規制壁123の外周との間に間隙Sをあけて対向している。
【0039】
クラッチハブ44は、内径側の連結部442aがドライブプレート31で片持ち支持されている。
この状態においてクラッチハブ44は、周壁部441の先端441aが、フロントカバー11との間に隙間CLをあけて対向している。そのため、回転軸X方向で、ドライブプレート31がフロントカバー11に近づく方向に変位すると、隙間CLが狭まるようになっている。
本実施形態では、前記したドライブプレート31の内径側の端部31aと規制壁123との回転軸X方向の隙間aが、隙間CLよりも狭くなるように設定されている。
【0040】
クラッチ装置4では、内径側摩擦板41と外径側摩擦板42とが、支持部材45と周壁部441との間で、回転軸X方向に交互に設けられている。
これら内径側摩擦板41と外径側摩擦板42から見て、フロントカバー11とは反対側(ダンパ装置3側)にピストン43が設けられている。
【0041】
ピストン43は、当該ピストン43と環状壁46との間の油室R(
図1参照)に駆動油圧が供給されると、内径側摩擦板41と外径側摩擦板42に近づく方向に変位して、内径側摩擦板41と外径側摩擦板42を、フロントカバー11の当接部111に向けて押圧する。
内径側摩擦板41と外径側摩擦板42は、ピストン43の押圧力に応じて、回転軸X回りの相対回転が規制される。内径側摩擦板41と外径側摩擦板42との相対回転が完全に規制されて、クラッチ装置4が締結状態になると、フロントカバー11に入力された駆動源の回転駆動力が、クラッチ装置4を介して、ドライブプレート31に伝達される。
【0042】
ダンパ装置3では、駆動源の回転駆動力がドライブプレート31に入力されると、ドライブプレート31がスプリングSpを、当接部313で周方向に圧縮しながら回転することで、ドライブプレート31の回転が、スプリングSpを介してドリブンプレート32に伝達される。
【0043】
この際に、スプリングSpが弾性的に圧縮されることで、ドライブプレート31からドリブンプレート32に回転が伝達される際のショックが吸収されて、回転伝達に起因するショックが抑制される。
【0044】
かかる構成のロックアップ装置2における規制壁123の作用を説明する。
クラッチ装置4が締結状態になると、ドライブプレート31とドリブンプレート32とが一体に回転する。そうすると、ドリブンプレート32で支持されたスプリングSpは、回転による遠心力で、外径側に位置するドライブプレート31の規制片312と、サイドプレート33の規制片332に圧接する。
【0045】
板状部材であるドライブプレート31は、回転による遠心力が、スプリングSpから外径側の規制片332に作用すると、連結部311が設けられた内径側が、フロントカバー11に近づく方向に変位することがある(
図2の(b)、矢印参照)。
【0046】
前記したように、タービンハブ12の連結部121では、フロントカバー11側の端部に規制壁123が設けられており、ドライブプレート31の内径側の端部31aは、規制壁123よりも内径側(回転軸X)側に位置している。
そのため、ドライブプレート31の内径側(連結部311側)は、クラッチ装置4に近づく方向への変位が、ドライブプレート31の端部31aが規制壁123に回転軸X方向から当接した時点で規制される(
図2の(b)、矢印参照)。
すなわち、ドライブプレート31の内径側(連結部311側)は、ドリブンプレート32から離れる方向への変位が、規制壁123により規制される。
【0047】
ドライブプレート31の内径側の連結部311には、クラッチ装置4のクラッチハブ44が固定されており、このクラッチハブ44の周壁部441の先端441aは、回転軸X方向でフロントカバー11に対向している。
そのため、ドライブプレート31の連結部311側がフロントカバー11に近づく方向に変位すると、連結部311に固定されたクラッチハブ44の周壁部441もまた、フロントカバー11に近づく方向に変位する。
【0048】
本実施形態では、ドライブプレート31の内径側の端部31aが規制壁123に当接した時点を基準として、クラッチハブ44の周壁部441とフロントカバー11との回転軸X方向の隙間CL(基準状態での隙間CL、
図1参照)が設定されている。
そして、端部31aが規制壁123に接触した状態で、周壁部441の先端441aとフロントカバー11との間に隙間CL’が残されるように、基準状態(ドライブプレート31の内径側がフロントカバー11側に変位していない状態)での隙間CLと、ドライブプレート31の内径側の端部31aと規制壁123との回転軸X方向の隙間aが設定されている。
【0049】
そのため、クラッチハブ44を支持するドライブプレート31が回転軸X方向に変位しても、クラッチハブ44の周壁部441が、フロントカバー11に干渉しないようになっている。
そのため、フロントカバー11とドライブプレート31との回転軸X方向の離間距離を、ドライブプレート31の変位量を考慮して、広く確保しておく必要が無い。
よって、ドライブプレート31の変位を考慮してクラッチ装置側に設けていた回転軸X方向の隙間をより狭めることができるので、クラッチ装置4の回転軸X方向の厚みを抑えることができる。
さらに、ダンパ装置3とクラッチ装置4とから構成されるロックアップ装置2の回転軸X方向の厚みを抑えることができる。
【0050】
以下、本実施形態にかかるダンパ装置3の特徴を効果と共に列挙する。
(1)本実施形態にかかるダンパ装置3は、
共通の回転軸X上で相対回転可能に設けられていると共に、回転軸X方向で対向配置されたドライブプレート31およびドリブンプレート32と、
ドライブプレート31とドリブンプレート32とを回転伝達可能に連結するスプリングSpと、
ドリブンプレート32の内径側を支持すると共に、回転軸X上で入力軸10(回転伝達軸)に連結されたタービンハブ12(連結部材)と、を有する。
ダンパ装置3では、駆動源の回転駆動力がクラッチ装置4を介してドライブプレート31に入力される。
タービンハブ12の外周に、回転軸Xの径方向外側に延出する規制壁123(延出壁)が設けられている。
ドライブプレート31の内径側の端部31aを、回転軸X方向における規制壁123とドリブンプレート32の間に位置させている。
規制壁123の径方向の高さhを、ドライブプレート31の内周31bよりも外径側に及ぶ高さに設定した。
【0051】
このように構成すると、タービンハブ12に設けた規制壁123により、ドライブプレート31の内径側のドリブンプレート32から離れる方向への変位を規制できる。
これにより、ドライブプレート31の変位を考慮してクラッチ装置4側に設けていた回転軸X方向の隙間をより狭めることができるので、ダンパ装置3の回転軸X方向の厚みを抑えることができる。
【0052】
(2)クラッチ装置4は、内径側摩擦板41と外径側摩擦板42とを有する多板式のクラッチである。
クラッチ装置4は、トルクコンバータ1のフロントカバー11(回転盤)と、ドライブプレート31との間に設けられている。
フロントカバー11には、駆動源の回転駆動力が入力される
ドライブプレート31の内径側には、外径側摩擦板42が内周にスプライン嵌合したクラッチハブ44(外径側支持部材)が固定されている。
クラッチハブ44は、外径側摩擦板42が内周にスプライン嵌合した周壁部441の先端441aを、回転軸X方向で、フロントカバー11との間に隙間CLをあけて設けられている。
【0053】
このように構成すると、ドライブプレート31の内径側の連結部311が、ドリブンプレート32から離れてフロントカバー11に近づく方向に変位しても、連結部311に固定されたクラッチハブ44の先端441aが、フロントカバー11に干渉しない。
よって、ドライブプレート31の変位を考慮してクラッチ装置4側に設けていた回転軸X方向の隙間をより狭めることができるので、ロックアップ装置2の回転軸X方向の厚みを抑えることができる。
【0054】
(3)回転軸X方向においてダンパ装置3のスプリングSpが、多板式のクラッチ装置4(クラッチ)と、タービンハブ12(連結部材)に一体回転可能に連結されたタービンランナ13(タービン)とに挟まれた領域の外周側よりも外側に位置している。
【0055】
このように構成すると、スプリングSpが、クラッチハブ44の外径側に位置することになる。そうすると、ドライブプレート31の円盤部310と、クラッチハブ44の円盤部442とを、回転軸X方向でより近づけて配置できる。
これにより、ロックアップ装置2の回転軸X方向の厚みを抑えることができる。
【0056】
前記した実施形態では、ドライブプレート31の内径側の連結部311に、クラッチ装置4のクラッチハブ44が連結されている場合を例示したが、連結部311には、クラッチ装置4の円筒状の支持部材45(内径側支持部材)が連結されている構成としても良い。
この場合には、ピストン43がフロントカバー11側に配置されることになり、回転軸X方向におけるピストン43と支持部材45との隙間を狭めることが可能になる。
よって、上記した実施形態の場合と同様に、ドライブプレート31の変位を考慮してクラッチ装置4側に設けていた回転軸X方向の隙間をより狭めることができるので、ロックアップ装置2の回転軸X方向の厚みを抑えることができる。
【0057】
図3は、変形例にかかるロックアップ装置2Aを搭載したトルクコンバータ1Aの要部を説明する図である。
図3の(a)は、ロックアップ装置2A周りを拡大して示した断面図であり、
図3の(b)、(c)は、(a)における規制壁123とクラッチ装置4周りを拡大した図である。
【0058】
図3に示すロックアップ装置2Aは、スプリングSpが、クラッチハブ44の円盤部442と、タービンランナ13との間に配置されているという点において、前記したロックアップ装置2と相違している。
図3の(a)に示すように、ダンパ装置3のスプリングSpは、当該スプリングSpの内周側を、クラッチハブ44の周壁部441よりも内径側に位置させている。
そのため、スプリングSpの回転軸X方向への移動を規制する規制片312、332は、回転軸X方向で周壁部441とタービンランナ13との間に位置している。
【0059】
図3の(b)に示すように、ドライブプレート31では、円盤部310と連結部311とが回転軸X方向に大きくオフセットしている。
円盤部310は、ドリブンプレート32の近傍で、回転軸Xに直交する向きで配置されている。
【0060】
クラッチハブ44の円盤部442では、ドライブプレート31との連結部442aと、壁部442bとが回転軸X方向に大きくオフセットしている。
そのため、クラッチハブ44の壁部442bと、ドライブプレート31の円盤部310との回転軸方向の間隔Wx’が、前記したロックアップ装置2における間隔Wxよりも大きくなっている。
【0061】
ドリブンプレート32を支持する連結部121では、フロントカバー11側の端部に規制壁123が設けられている。
この規制壁123は、連結部121の外周から径方向外側に直線状に延出しており、連結部121において規制壁123は、回転軸X周りの周方向の全周に亘って所定高さhで形成されている。
規制壁123の径方向の高さhは、ドライブプレート31の内周31bよりも外径側に及ぶ高さに設定されている。
【0062】
図3に示すロックアップ装置2Aにおいても、ドライブプレート31の内径側の端部31aが規制壁123に当接した時点を基準として、クラッチハブ44の周壁部441とフロントカバー11との回転軸X方向の隙間CL(基準状態での隙間CL、
図3の(b)参照)が設定されている。
そして、端部31aが規制壁123に接触した状態で、周壁部441の先端441aとフロントカバー11との間に隙間CL’が残されるように、基準状態(ドライブプレート31の内径側がフロントカバー11側に変位していない状態)での隙間CLと、ドライブプレート31の内径側の端部31aと規制壁123との回転軸X方向の隙間aが設定されている。
【0063】
そのため、クラッチハブ44を支持するドライブプレート31が回転軸X方向に変位しても、クラッチハブ44の周壁部441が、フロントカバー11に干渉しないようになっている。
【0064】
ダンパ装置3は、以下の構成を有している。
(4)ダンパ装置3は、
共通の回転軸X上で相対回転可能に設けられていると共に、回転軸X方向で対向配置されたドライブプレート31およびドリブンプレート32と、
ドライブプレート31とドリブンプレート32とを回転伝達可能に連結するスプリングSpと、
ドリブンプレート32の内径側を支持すると共に、回転軸X上で入力軸10(回転伝達軸)に連結されたタービンハブ12(連結部材)と、を有している。
ダンパ装置3では、駆動源の回転駆動力がクラッチ装置4を介してドライブプレート31に入力される。
タービンハブ12の外周に、回転軸Xの径方向外側に延出する規制壁123(延出壁)を設けている。
ドライブプレート31の内径側の端部31aを、回転軸X方向における規制壁123とドリブンプレート32の間に位置させている。
規制壁123の径方向の高さhを、ドライブプレート31の内周31bよりも外径側に及ぶ高さに設定している。
回転軸X方向においてダンパ装置3のスプリングSpが、多板式のクラッチ装置4(クラッチ)と、タービンハブ12(連結部材)に一体回転可能に連結されたタービンランナ13(タービン)とに挟まれた領域に位置している。
【0065】
このように構成すると、タービンハブ12に設けた規制壁123により、ドライブプレート31の内径側のドリブンプレート32から離れる方向への変位を規制できる。
これにより、ドライブプレート31の変位を考慮してクラッチ装置4側に設けていた回転軸X方向の隙間をより狭めることができるので、ダンパ装置3の回転軸X方向の厚みを抑えることができる。
スプリングSpが、クラッチハブ44とタービンハブ12との間に位置している場合であっても、ドライブプレート31の円盤部310と、クラッチハブ44の円盤部442とを、回転軸X方向でより近づけて配置できる。
これにより、ロックアップ装置2Aの回転軸X方向の厚みを抑えることができる。
【0066】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうる様々な変更、改良が含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1、1A トルクコンバータ
10 入力軸(回転伝達軸)
11 フロントカバー(回転盤)
111 当接部
12 タービンハブ(連結部材)
121 連結部
122 嵌合部
123 規制壁(延出壁)
13 タービンランナ
15 支持部材
2、2A ロックアップ装置
3 ダンパ装置
31 ドライブプレート
31a 内径側の端部
31b 内周
311 連結部
312 規制片
313 当接部
32 ドリブンプレート
320 支持孔
321 接続部
322 脚部
322a ボス部
33 サイドプレート
332 規制片
4 クラッチ装置
41 内径側摩擦板
42 外径側摩擦板
43 ピストン
44 クラッチハブ(外径側支持部材)
441 周壁部
441a 先端
442 円盤部
442a 端部
45 支持部材(内径側支持部材)
46 環状壁
CL 隙間
R 油室
S 隙間
Sp スプリング
X 回転軸