(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】熱交換器および熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20221011BHJP
B21D 53/08 20060101ALI20221011BHJP
F28F 1/40 20060101ALI20221011BHJP
F28F 21/08 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F28F1/32 C
B21D53/08 J
F28F1/40 A
F28F21/08 A
(21)【出願番号】P 2017214958
(22)【出願日】2017-11-07
【審査請求日】2020-10-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2016229038
(32)【優先日】2016-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591150797
【氏名又は名称】株式会社デンソーエアクール
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(72)【発明者】
【氏名】柴内 誠
(72)【発明者】
【氏名】今井 信
(72)【発明者】
【氏名】柳田 昭
(72)【発明者】
【氏名】細野 剛史
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】河内 誠
【審判官】松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-144895(JP,A)
【文献】特開2015-150566(JP,A)
【文献】特開平4-3893(JP,A)
【文献】特開平6-234031(JP,A)
【文献】特開平8-271168(JP,A)
【文献】特開2010-29921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32,9/013
B21D 39/20,53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に溝部(26b)を有し、アルミニウム材料で形成され拡管された管(2)と、
前記管が挿通されているフィン孔(42)をそれぞれ有し一方向に並べられた複数のフィン(4)と、
前記複数のフィンのうち前記一方向における端部に位置する前記フィンよりも外側に設けられ、前記管が挿通されている開口部(30)が形成されたサイドプレート(3)と、
を備え、
前記管は、第1外径(d1)を有し、前記フィン孔の内周面と密着する第1部分(21)と、前記第1外径よりも大きい第2外径(d2)を有し、前記開口部の内周面と密着する第2部分(23)と、を有し、
前記第2部分は、前記サイドプレートからの突出寸法が前記サイドプレートの厚さ寸法よりも大きくなるように、前記サイドプレートから前記フィンとは反対側に突出して
おり、
前記第2部分における前記第1部分側の端部が、前記フィンから離れるように前記開口部の内部に設けられている熱交換器。
【請求項2】
前記サイドプレートに隣接する前記フィンは、前記サイドプレートに接触する接触部(41b)を有する請求項
1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記管は、前記第2部分から管口部(240)にかけて裾広がりに拡管されているフレア部(24)をさらに有する請求項1
または請求項
2に記載の熱交換器。
【請求項4】
内周面に溝部(26b)を有し、アルミニウム材料で形成された管(2)と、複数のフィン(4)と、サイドプレート(3)と、を備えた熱交換器の製造方法であって、
孔内径(df)を有するフィン孔がそれぞれ形成された前記複数のフィンと、前記孔内径よりも大きい開口内径(ds)を有する開口部(30)が形成された前記サイドプレートと、を前記サイドプレートを最も外側に配置するように一方向に並べ、前記孔内径よりも小さい素管外径(dt)を有する前記管を前記フィン孔および前記開口部に挿通する配設工程(S10)と、
前記配設工程の後に、前記管の外径を前記孔内径よりも大きく且つ前記開口内径よりも小さい第1外径(d1)に拡管可能な第1拡管子(60)を、前記管の管口部(240)から、前記複数のフィンに挿通されている部分まで前記管の内部に挿し込む第1拡管工程(S20)と、
前記配設工程の後に、前記管の外径を前記開口内径以上の大きさの第2外径(d2)に拡管可能な第2拡管子(61)を、前記サイドプレートに挿通されている前記管の部分の少なくとも一部を拡管するように、且つ前記管において前記第2外径を有する部位が前記サイドプレートから前記フィンとは反対側に突出した突出寸法が前記サイドプレートの厚さ寸法よりも大きくなるように、
且つ前記第2外径を有する部位における前記第1外径を有する部位側の端部が前記フィンから離れて前記開口部の内部に設けられるように、前記管の前記管口部から前記管の内部に挿し込む第2拡管工程(S30;S330)と、を有する熱交換器の製造方法。
【請求項5】
さらに前記配設工程の後に、前記第1拡管工程および前記第2拡管工程とは別個の工程として前記管の前記管口部に向かって内径が拡大するフレア部(24)を形成する第3拡管工程(S340)を有する請求項
4に記載の熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、熱交換器および熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱交換器およびその製造方法が開示されている。この熱交換器は、管と、フィンと、サイドプレートとを有する。この熱交換器を製造するには、まずサイドプレートと複数枚のフィンを所定間隔で並べ、フィンおよびサイドプレートの貫通穴に管を挿し通す。そして、拡管ビレットを先端に有するマンドレルを管口から管内に圧入し、フィンの存在する全長にわたって拡管ビレットで管を拡管する。この拡管によって、管とフィンおよびサイドプレートとが一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、サイドプレートとフィンとを1つの拡管ビレットによって拡管する。一般的に、サイドプレートはフィンよりも厚みが大きいため、サイドプレートを通過する拡管ビレットには大きな荷重がかかる。これにより、拡管ビレットと管と間の摩擦抵抗が大きくなり、管内の摩耗により発生する摩耗粉の量が大きくなる。この状態で拡管を続けると、摩耗粉が拡管ビレットの表面に凝着する。これにより摩耗粉が凝着した拡管ビレットで管の内面が削れてしまうという問題がある。また、サイドプレートとフィンとを1つの拡管ビレットによって拡管するので、管に作用する荷重が大きくなり、管が損傷してしまうという問題がある。以上のように、特許文献1の技術では、拡管によって熱交換器に不具合が生じるという課題がある。
【0005】
開示されるひとつの目的は、拡管によって生じる不具合を抑制可能な熱交換器および熱交換器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された熱交換器のひとつは、内周面に溝部(26b)を有し、アルミニウム材料で形成され拡管された管(2)と、管が挿通されているフィン孔(42)をそれぞれ有し一方向に並べられた複数のフィン(4)と、複数のフィンのうち一方向における端部に位置するフィンの外側に設けられ、管が挿通されている開口部(30)が形成されたサイドプレート(3)と、を備える。管は、第1外径(d1)を有し、フィン孔の内周面と密着する第1部分(21)と、第1外径よりも大きい第2外径(d2)を有し、開口部の内周面と密着する第2部分(23)と、を有し、第2部分は、サイドプレートからの突出寸法がサイドプレートの厚さ寸法よりも大きくなるように、サイドプレートからフィンとは反対側に突出しており、第2部分における第1部分側の端部が、フィンから離れるように開口部の内部に設けられている。
【0008】
この開示によれば、熱交換器は、管において拡管によってサイドプレートと密着する第2部分の第2外径が、拡管によりフィンと密着する第1部分の第1外径よりも大きくなるように形成されている。これにより、管を拡管してフィンおよびサイドプレートに対して固定する際に、第1部分の拡管と第2部分の拡管とをそれぞれ別の工程で行うことができる。このため、拡管時に管に作用する荷重を低減できる。また、このため、管とサイドプレートとを拡管により固定する際に発生したアルミ粉が、管とフィンとを拡管により固定する際に拡管子の拡管ビレットに凝着することを抑制できる。以上により、拡管によって生じる不具合を抑制可能な熱交換器を提供できる。
【0011】
開示された熱交換器の製造方法のひとつは、内周面に溝部(26b)を有し、アルミニウム材料で形成された管(2)と、管が挿通するフィン孔(42)をそれぞれ有する複数のフィン(4)と、管が挿通する開口部(30)を有するサイドプレート(3)と、を備えた熱交換器の製造方法であって、孔内径(df)を有するフィン孔がそれぞれ形成された複数のフィンと、孔内径よりも大きい開口内径(ds)を有する開口部が形成されたサイドプレートと、をサイドプレートが最も外側に配置されるように一方向に並べ、孔内径よりも小さい素管外径(dt)を有する管をフィン孔および開口部に挿通する配設工程(S10)と、配設工程の後に、管の外径を孔内径よりも大きく且つ開口内径よりも小さい第1外径(d1)に拡管可能な第1拡管子(60)を、管の管口部(240)から、複数のフィンに挿通されている部分まで管の内部に挿し込む第1拡管工程(S20)と、配設工程の後に、管の内部に、管の外径を開口内径以上の大きさの第2外径(d2)に拡管可能な第2拡管子(61)を、サイドプレートに挿通されている管の部分の少なくとも一部を拡管するように、且つ管において第2外径を有する部位がサイドプレートからフィンとは反対側に突出した突出寸法がサイドプレートの厚さ寸法よりも大きくなるように、且つ第2外径を有する部位における第1外径を有する部位側の端部がフィンから離れて開口部の内部に設けられるように、管の管口部から管の内部に挿し込む第2拡管工程(S30;S330)と、を有する。
【0012】
この開示によれば、第1拡管子がサイドプレートに挿通された管の部分を通過する際にサイドプレートから荷重を受けることを回避できる。このため、拡管時に管に作用する荷重を低減できるとともに、従来に比べて発生するアルミ粉の量を抑制できる。したがって、第1拡管子がフィンに挿通された管の部分を通過する際に第1拡管子の拡管ビレットにアルミ粉が凝着することを抑制できる。また、サイドプレートから荷重を受ける第2拡管子は、管のフィンに挿通する部分を通過しない。このため、サイドプレートからの荷重によって発生したアルミ粉が付着した第2拡管子が、管のフィンに挿通された部分を通過することを回避することができる。以上により、拡管によって生じる不具合を抑制可能な熱交換器の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る熱交換器の外観図である。
【
図3】サイドプレートおよびフィンと管との関係を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態の熱交換器の製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図8】第1実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図9】第1実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図10】第1実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図11】第1実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図12】第1実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図16】第2実施形態の熱交換器におけるサイドプレートおよびフィンと管との関係を示す断面図である。
【
図17】第2実施形態の熱交換器の製造方法を示すフローチャートである。
【
図18】第2実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図19】第2実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図20】第2実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図21】第2実施形態の熱交換器における
図15とは別の管とサイドプレートおよびフィンとの関係を示す断面図である。
【
図22】第2実施形態の熱交換器の変形例を示す図である。
【
図23】第3実施形態の熱交換器の製造方法を示すフローチャートである。
【
図24】第3実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図25】第3実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図26】第3実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【
図27】第3実施形態の熱交換器の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら複数の実施形態を説明する。各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。以下において、サイドプレート3が複数のフィン4の外側に位置し、複数のフィン4がサイドプレート3の内側にあるとする。
【0017】
(第1実施形態)
図1から
図12を参照しながら第1実施形態の熱交換器1について説明する。熱交換器1は、流体と流体との間で熱交換を提供する。
図1に示すように、熱交換器1は、複数のフィン4と、サイドプレート3と、フィン4およびサイドプレート3に挿通するアルミニウム製の管2とを有する。熱交換器1は、例えば
図2に示すように、フィン4に沿う方向に見て略L字状をしている。熱交換器1は、フィン4およびサイドプレート3を一方向に並べ、フィン孔42および開口部30に管2を挿通し、管2を拡管してフィン孔42と開口部30に密着させることで製造される熱交換器である。管2は、複数設けられている。管2は、流体を導入する入口管、隣接する管2同士を接続するU字管、管2を流通した出口管にそれぞれ接続され、流体が流通する流路を形成している。
【0018】
従来の熱交換器では、製造段階において管とフィン孔との密着、および管と開口部との密着を、共通の拡管子を用いた管の拡管により行っている。一般に、拡管子は、管を押し広げるための拡管ビレットと、拡管ビレットが先端に設けられて拡管ビレットを管内部に挿通するためのマンドレルとを有している。この拡管子を管に挿通することで、拡管ビレットによって管が内側から押し広げられるように拡管され、拡管された管がフィン孔および開口部と密着する。この場合、拡管子が管のサイドプレートに挿通した部分を通過する際に、拡管ビレットと管との摩擦による管の摩耗でアルミ粉が発生し、その後さらに拡管子が管の拡管を続けることで、発生したアルミ粉が拡管子における拡管ビレットの表面に凝着する。このようにアルミ粉が拡管ビレットに凝着すると、様々な問題が発生する。すなわち、アルミ粉の凝着が進行すると、拡管子に作用する拡管荷重が増加する。これにより拡管子を前進するために必要な荷重が増加し、拡管を実施する設備においてコスト増の原因となる。さらに、増加した拡管荷重によって管が座屈することで、熱交換器の形状を形成することができなくなるという問題も発生する。
【0019】
拡管荷重を下げるためには、拡管子に特殊な表面処理、例えばDLC(ダイアモンドライクカーボン)等の拡管子の摩擦抵抗を下げる処理を行うことが考えられる。しかし、特殊な表面処理を施した拡管子を準備するためのコストが増加してしまう。また、拡管油を多量に注入する、あるいは高粘度の拡管油を使用するなどして拡管荷重を下げることも考えられる。しかし、このような方法では拡管後の工程において大規模な脱脂処理が必要となってしまうという問題がある。
【0020】
以上のように、拡管ビレットにアルミ粉が凝着すると様々な問題が発生することが考えられる。第1実施形態の熱交換器1は、アルミ粉の凝着を抑制可能な構成を有する。まず、以下に熱交換器1の各構成要素について説明する。
【0021】
フィン4は、板状のベース部40と、管2が挿通するフィン孔42を形成するカラー部41とを有する。フィン4は、例えばアルミニウム材料によって形成されたプレートフィンである。または、フィン4はアルミニウム以外の金属材料によって形成されていてもよい。カラー部41は、ベース部40から管軸方向に沿うように屈曲して延びる屈曲部41aと、屈曲部41aから径外方向に広がるように形成されたフランジ部41bとを有する。カラー部41はフィン4において管2が挿通されるフィン孔42を形成する部分である。フィン孔42の内周面は、管2の外周面と密着している。この密着によって、フィン4は管2に対して固定されている。したがって、フィン孔42の内径と、管2のフィン孔42に挿通している部分の外径である第1外径d1は、実質的に同じである。フィン4は、複数枚がその板厚方向に所定の間隔だけ離間して並んでいる。フィン4は、例えばフランジ部41bが隣接するフィン4に接触するように並んでいる。
【0022】
サイドプレート3は、金属材料によって形成された板状の部材である。サイドプレート3は、例えばフィン4よりも厚い板厚を有するアルミニウム製、銅製あるいはステンレス製のプレートとして形成される。サイドプレート3は、複数のフィン4のうち、並べられた方向における端部に位置するフィン4よりも外側に配置されている。換言すれば、サイドプレート3は、複数のフィン4のうち、並べられた方向における端部に位置するフィン4よりも外側に配置されている。サイドプレート3は、例えば隣接するフィン4のフランジ部41bに接触するように配置されている。すなわち、フランジ部41bは接触部の一例である。サイドプレート3は、隣接するフィン4と平行に配置されている。サイドプレート3は、管2が挿通する開口部30を有する。開口部30は、例えばサイドプレート3を板厚方向に貫通する貫通穴である。開口部30は、外側の開口端31と、内側の開口端32と、開口端31および開口端32をつなぐ内周面を有する。開口端31は、外側開口端の一例である。内周面は、管2の第2部分23と接触する接触面30aを有する。サイドプレート3は、開口部30の管2との密着によって管2を支持する支持部材である。
【0023】
管2は、アルミニウム材料によって形成されている。管2は、熱交換流体の流路を提供する。管2は、
図4および
図5に示すように、内周面において径内方向に向かって突出する複数の突起部26aを有する。複数の突起部26aの間には、溝部26bが形成されている。複数の溝部26bは、周方向において等間隔に形成されている。複数の溝部26bは、管2の軸方向に沿う螺旋となるように形成された螺旋溝である。溝部26bは、管2の内部を流通する熱交換流体に乱流を生じさせることで熱交換流体と管2との間の熱伝達を促進し、熱交換器1の熱交換性能を向上させる。
図3および
図7から
図12に示した管2の断面図では、簡単のため溝部26bを省略している。管2は、内部を流通する熱交換流体の熱をフィン4に伝達する。
【0024】
図3に示すように、管2は、第1外径d1に形成された第1部分21と、第1外径よりも大きい第2外径d2に形成された第2部分23と、第1部分21と第2部分23とをつなぐテーパ部22とを有する。第1部分21は、複数のフィン4に挿通している管2の部分である。すなわち、第1部分21の外周面は、フィン孔42の内周面と圧着されている。したがって、第1外径d1は、フィン孔42の内径と実質的に同じ大きさである。フィン孔42の内径は内径d1と表記することもできる。第1部分21のテーパ部22側の端部は、開口部30の開口端と、管軸方向においてほぼ同じ位置に位置している。したがって、隣接するフィン4のフィン孔42が、内径d1よりも拡径されないようになっている。第2部分23は、サイドプレート3の開口部30と圧着する部分を有する。すなわち、第2部分23の外周面は、接触面30aに圧着する部分を有する。第2部分23のテーパ部22側の端部は、開口部30の開口端31よりもフィン4側に位置している。
【0025】
第2部分23のテーパ部22側の端部は、サイドプレート3に隣接するフィン4のフィン孔42よりも、外側に位置している。
図3に示す例では、第2部分23のテーパ部22側の端部は、開口端31と開口端32との間に位置している。換言すれば、管2は、開口部30に挿通された部分からフレア部24の基端までの部分が、第2外径d2になるように拡管されている。
【0026】
管口部240は管2の開口端を形成する部分である。フレア部24は、管口部240に向けて第2部分23よりも拡径されたフレア形状に形成されている部分である。管口部240は、U字管と接続されている。フレア部24は、管口部240とU字管とを接続する際の接続作業性を向上する機能を有する。U字管は、隣接する管2と管2とを接続する。または、管口部240は、熱交換流体が導入される入口管と接続されている。または、管口部240は、管2を流通した熱交換流体が流出する出口管と接続されている。管口部240と、U字管、入口管および出口管とは、例えばろう付け接合によって接続される。
【0027】
第1実施形態の熱交換器1は、後述の第2実施形態の熱交換器1と比較して、管2とサイドプレート3における開口部30の内周面と接触している面積が大きい。したがって、管2とサイドプレート3とをより安定して固定することができる。このため、第1実施形態の熱交換器1は、車両などの振動が比較的大きい搭載環境下での使用に適している。
【0028】
第1実施形態の熱交換器1の製造方法について、
図6から
図11を参照して説明する。熱交換器1は、
図6のフローチャートに示すように、配設工程S10と、第1拡管工程S20と、第2拡管工程S30を経て製造される。熱交換器1は、フィン4およびサイドプレート3に挿通する素管外径dtを有する管2を拡管し、フィン4と管2、およびサイドプレート3と管2を圧着させることで製造される。熱交換器1を製造する際には、製造装置として第1拡管子60と第2拡管子61とが用いられる。
【0029】
配設工程S10では、孔内径dfを有するフィン孔42が形成された複数のフィン4と、孔内径dfよりも大きい開口内径dsを有する開口部30が形成されたサイドプレート3とを板厚方向に並べる。このとき、複数のフィン4を、各フィン4のフランジ部41bが、隣接するフィン4に接触するように並べる。複数のフィン4は、カラー部41の突出方向が同じ方向になるように並べる。サイドプレート3は、サイドプレート3に隣接するフィン4のフランジ部41bが接触するようにして、並べられた方向の端部に配置される。このとき、複数のフィン4のフィン孔42およびサイドプレート3の開口部30は同軸上になるように配置される。
【0030】
次に、並べられた複数のフィン4のフィン孔42およびサイドプレート3の開口部30に、孔内径dfよりも小さい素管外径dtを有する管を挿通する。したがって、このときフィン孔42および開口部30の内周面と管2の外周面とは密着していない。管2を挿通した後は、第1拡管工程S20へと進む。
【0031】
第1拡管工程S20では、管口部240から管2の内部に第1拡管子60を挿入する。
図7は、配設工程S10で配置された管2に第1拡管子60を挿入する直前の様子を示す図である。第1拡管子60は、例えば、素管状態の管2の内径よりも大きい外径を有する拡管ビレットと、拡管ビレットを管2の内部に挿通するためのマンドレルとを有している。第1拡管子60は、素管状態の管2の内部に挿通することで管2を拡管可能な拡管子である。第1拡管子60は、管2を拡管することで、管2の外径を素管外径dtから第1外径d1に拡径することができる。
【0032】
管口部240から管2の内部に挿入された第1拡管子60は、管2を拡管しながら前進する。
図8は、管2を拡管しながら前進する第1拡管子の様子を示す図である。第1拡管子60は、フィン孔を第1拡管子60が管2のサイドプレート3に挿通された部分を通過する際、開口部30の開口内径dsは第1外径d1よりも大きく形成されているため、管2とサイドプレート3とは圧着されず、管2はサイドプレート3から拡管荷重を受けることがない。
【0033】
第1拡管子60の拡管ビレットは、
図9に示すように管2の並べられたフィン4に挿通している部分まで挿し込まれる。拡管ビレットは、管2のフィン4に挿通している部分全体にわたって挿通される。フィン孔42の孔内径dfは、第1外径d1よりも小さく形成されているため、フィン孔42は、拡管された管2の外周面と圧着される。このときフィン孔42の内径は、孔内径dfから第1外径d1と実質的に同じ内径まで拡径される。第1拡管子60の拡管ビレットが管2のフィン4に挿通する部分全体にわたって挿通されると、第1拡管子60を管2から引き抜き、第1拡管工程S20を終了する。
【0034】
第1拡管工程S20の後に第2拡管工程S30へと進む。第2拡管工程S30では、管2に第2拡管子61を挿入する。
図10は、管2に第2拡管子61を挿入する直前の様子を示す図である。第2拡管子61は、管2の外径を第2外径d2まで拡管可能な外径を有する拡径部61bと、拡径部61bの端部から第2拡管子61の挿入方向に向かって徐々に縮径するテーパ形状を有する先端部61aとを有する。第2拡管子61は、拡径部61bの先端部61a側と反対側の端部から挿入方向と反対の方向に向かって徐々に拡径するテーパ形状のフレア形成部61cを有する。第2拡管子61は、管口部240に対して先端部61aから挿入することで、管2を拡管可能な拡管子である。
【0035】
第2拡管子61は、第1拡管子60によって拡管された管2をさらに拡管しながら管2の内部を挿通する。第2拡管子61は、開口端31よりも内側における管2の部分が第2外径d2に拡管されるまで挿通される。これにより、第2外径d2に拡径された管2の外周面と、開口部30の内周面とが圧着される。したがって、開口内径dsと第2外径d2は同等の大きさとなる。また、第2外径d2に拡径された管2と接触する開口部30の内周面は、拡管によって開口内径dsよりも拡径されてもよい。この場合は、開口部30における拡管によって拡径された部分の内径、すなわち管2の第2部分23と接触する部分の内径の大きさが第2外径d2と同等になる。
【0036】
図11に示すように、第2拡管子61は、管2において第2外径d2に拡径された部分の端部が、開口端32と、管軸方向においてほぼ同じ位置に位置するまで挿通される。第2拡管子61の挿通は、管2においてフィン孔42に挿通している部分の手前まで行われる。このように第2拡管子161は、サイドプレート3に挿通されている管2の部分の少なくとも一部を拡管する。このとき、管口部240は、第2拡管子61のフレア形成部61cによってフレア形状に拡管されている。したがって、第2拡管子61は、管口部240に向かってフレア形状に拡管される位置まで挿通される、と換言することもできる。このようにして、第2拡管子61は、管口部240に向けて第2部分23よりもフレア形状に拡径されたフレア部24を形成する。その後、
図12に示すように、第2拡管子61を後進して管2の内部から引き抜き、第2拡管工程S30を終了する。これにより、
図3に示すように、管2がフィン4およびサイドプレート3と一体化した熱交換器1を製造することができる。
【0037】
第2拡管工程S30において、第2拡管子61を、管2においてフィン孔42に挿通している部分よりも手前側まで挿し込むとした。これに代えて、熱交換器1の性能に問題が生じない程度に、第2拡管子61が管2のフィン孔42に挿通している部分を第2外径d2まで拡管してもよい。例えば、第2拡管子61を、サイドプレート3に隣接する1枚のフィン4におけるフィン孔42に挿通している管2の部分を第2外径d2に拡管するまで挿入してもよい。または、サイドプレート3に隣接する1枚のフィン4を含む複数枚のフィン4のフィン孔42に挿通されている管2の部分を第2外径d2に拡管するまで第2拡管子61を挿入してもよい。このような構成の場合、例えばフィン孔42が第2拡管子61による拡径に耐えられず破損すること等が考えられるが、製造された熱交換器1が使用上問題を生じなければこうした構成を許容することができる。
【0038】
次に第1実施形態の熱交換器1および熱交換器1の製造方法がもたらす作用効果について説明する。第1実施形態の熱交換器1は、アルミニウム材料で形成され拡管された管2と、管2が挿通されているフィン孔42をそれぞれ有し一方向に並べられた複数のフィン4とを備える。熱交換器1は、複数のフィン4のうち一方向における端部に位置するフィン4の外側に設けられ、管2が挿通されている開口部30が形成されたサイドプレート3を備える。管2は、第1外径d1を有し、フィン孔42の内周面と密着する第1部分21と、第1外径d1よりも大きい第2外径d2を有し、開口部30の内周面と密着する第2部分23とを有する。
【0039】
これによれば、熱交換器1は、サイドプレート3と拡管により密着する管2における第2部分23の第2外径d2が、フィン4と拡管により密着する管2における第1部分21の第1外径d1よりも大きくなるように形成されている。したがって、管2を拡管してフィン4およびサイドプレート3に対して固定する際に、第1部分21の拡管と第2部分23の拡管とをそれぞれ別の工程で行うことができる。このため、拡管時に管に作用する荷重を低減できる。また、このため、管2とサイドプレート3とを拡管により固定する際に発生したアルミ粉が、第1拡管子60の拡管ビレットに凝着することを抑制できる。したがって、管2とフィン4とを拡管により固定する際にアルミ粉の凝着した第1拡管子60によって管2の内面が削れてしまうことを抑制できる。また、第2拡管子61は、管2のサイドプレート3に挿通された部分までを拡管するため、このときにアルミ粉が凝着した第2拡管子61によって管2のフィン4に挿通された部分が拡管されることを抑制することができる。以上により、拡管によって生じる不具合を抑制可能な熱交換器を提供することができる。
【0040】
管2は、第2部分23から管口部240にかけて裾広がりに拡管されているフレア部24をさらに有する。この構成によれば、管2に対して別個の管を内嵌めして接続する接続作業性を向上する機能を持たすことができ、製造性や製品の拡張性を高めることができる熱交換器1が得られる。
【0041】
第1実施形態の熱交換器1の製造方法では、配設工程S10で、孔内径dfを有するフィン孔42がそれぞれ形成された複数のフィン4と、孔内径dfよりも大きい開口内径dsを有する開口部30が形成されたサイドプレート3とを並べる。このときサイドプレート3が最も外側に配置されるようにサイドプレート3とフィン4とを一方向に並べる。そして孔内径dfよりも小さい素管外径dtを有する管2をフィン孔42および開口部30に挿通する。配設工程S10の後に、第1拡管工程S20に移る。第1拡管工程S20では、管2の外径を孔内径dfよりも大きく且つ開口内径dsよりも小さい第1外径d1に拡管可能な第1拡管子60を、管口部240から、管2の複数のフィン4に挿通されている部分まで管2の内部に挿し込む。配設工程S10の後に、第2拡管工程S30に移る。第2拡管工程S30では、管2の外径を開口内径ds以上の大きさの第2外径d2に拡管可能な第2拡管子61を、サイドプレート3に挿通されている管2の部分の少なくとも一部を拡管するように管2の内部に挿し込む。
【0042】
これによれば、第1拡管子60がサイドプレート3に挿通された管2の部分を挿通する際にサイドプレート3から荷重を受けることを回避できる。このため、拡管時に管2に作用する荷重を低減できる。また、このため、従来に比べて発生するアルミ粉の量を抑制できる。したがって、第1拡管子60がフィン4に挿通された管2の部分を挿通する際に拡管ビレットにアルミ粉が凝着することを抑制できる。また、サイドプレート3から荷重を受ける第2拡管子61は、管2のフィン4に挿通する部分を通過しない。このため、サイドプレート3からの荷重によって発生したアルミ粉が付着した第2拡管子61が、管2のフィン4に挿通された部分を挿通することを回避することができる。したがって、アルミ粉が凝着した第2拡管子61によって管2のフィン4に挿通された部分が拡管されることを抑制することができる。以上により、拡管によって生じる不具合を抑制可能な熱交換器の製造方法を提供できる。
【0043】
管2は、内周面に溝部26bを有する。従来の熱交換器では、拡管時に管の内周面に作用する荷重によって溝部を形成する部分が潰れてしまい、溝部による熱交換性能の向上効果が低減してしまうという問題があった。第1実施形態の熱交換器1では、拡管時に管2に作用する荷重が抑制されるため、溝部26bを形成する突起部26aの潰れが抑制され、熱交換性能の向上効果を得ることができる。
【0044】
(第1実施形態の変形例1)
第1実施形態の熱交換器1の変形例1について
図13を参照して説明する。この変形例では、第2拡管工程S30において、管2を管軸方向において開口端32の位置まで拡管する。第2部分23のテーパ部22側の端部は、開口端32と管軸方向においてほぼ同じ位置に位置している。したがって、管2は、開口部30の内周面全体と圧着している。テーパ部22は、サイドプレート3に隣接するフィン4のフィン孔42に挿通している。
【0045】
変形例1の熱交換器1では、管2とサイドプレート3とが開口部30の内周面全体で圧着している。したがって、管2とサイドプレート3とをより安定して固定することができる。
【0046】
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態の熱交換器1の変形例2について
図14を参照して説明する。変形例2では、配設工程S10において、複数のフィン4を、フランジ部41bと隣接するフィン4との間に間隙を有するように並べる。サイドプレート3に隣接するフィン4は、フランジ部41bとサイドプレート3との間に間隙を有するように配置される。変形例2における第2拡管工程S30では、管2を管軸方向において開口端32よりも内側の部分まで拡管するように第2拡管子61が挿通される。第2拡管子61は、サイドプレート3に隣接するフィン孔42の手前まで管2を第2外径d2に拡管する。
【0047】
変形例2の熱交換器1において、第2部分23のテーパ部22側の端部は、開口端32とフィン孔42のサイドプレート3側の端部との間に位置している。したがって、管2は、開口部30の内周面全体と圧着している。テーパ部22は、サイドプレート3に隣接するフィン4のフィン孔42に挿通している。
【0048】
複数のフィン4は、フランジ部41bと隣接するフィン4との間に間隙を有するように並んでいる。このように、熱交換器1は、隣接するフィン4のフランジ部41bと接触せずに離間しているフィン4を有していてもよい。サイドプレート3に隣接するフィン4は、フランジ部41bとサイドプレート3との間に間隙を有するように配置されている。このように、熱交換器1は、フランジ部41bがサイドプレート3と離間しているサイドプレート3に隣接するフィン4を有していてもよい。
【0049】
(第1実施形態の変形例3)
第1実施形態の熱交換器1の変形例3について
図15を参照して説明する。サイドプレート3は、開口部30の開口端32に面取り部33を有する。面取り部33は、開口端32がフィン4側に向かって拡径するようにテーパ状に面取りされた部分である。したがって、面取り部33は、開口部30において、管2の第2部分23と密着していない部分である。
【0050】
第2拡管工程S30で管2を拡管する際、管2と面取り部33とは接触しない。したがって、面取り部33によって、第2拡管工程S30において第2拡管子61がサイドプレート3から受ける荷重を低減することができる。面取り部33は、開口端31に形成されていてもよい。すなわち、面取り部33は、開口端31が外側に向かって拡径されるようにテーパ状に面取りされた部分でもよい。
【0051】
図15において、管2は、管軸方向において開口端32と同じ位置まで第2外径d2に拡管されているが、開口端32よりも多少外側で拡管が停止されていてもよく、また開口端32よりも多少内側まで拡管されていてもよい。換言すれば、第2部分23のテーパ部22側の端部は、管軸方向において開口端32よりも多少外側もしくは内側に位置していてよい。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態における熱交換器1の別の実施形態について説明する。
図16から
図20において第1実施形態の図面中と同一符号を付した構成要素は、同様の構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0053】
管2は、フィン孔42に挿通する第1部分21と、開口部30の内周面と圧着するテーパ部22と、サイドプレート3よりも外側に形成された第2部分23とを有する。テーパ部22は、少なくとも一部が開口部30の内周面と圧着している。テーパ部22は、開口部30の開口端31に圧着するように形成されている。テーパ部22は、管2の外径が第1外径d1から第2外径d2へ変化するように拡径された管2の部分である。テーパ部22は、中間部分の一例である。第2部分23は、テーパ部22側の端部が開口部30の開口端31よりも管口部240側に位置している。管2は、テーパ部22の圧着によってサイドプレート3を管2に対して固定している。管2は、テーパ部22と、サイドプレート3に隣接するフィン4のフランジ部41bとによって、サイドプレート3を挟持している。第2実施形態の熱交換器1は、定置用の熱交換器としての使用に適している。
【0054】
次に、
図17から
図20を参照して第2実施形態の熱交換器1の製造方法について説明する。熱交換器1は、
図17のフローチャートに示すように、配設工程S10と、第1拡管工程S20と、第2拡管工程S230を経て製造される。配設工程S10および第1拡管工程S20は、第1実施形態において
図7から
図9を参照して説明した工程と同様であるため省略する。
【0055】
第1拡管工程S20の後に第2拡管工程S230に移る。第2拡管工程S230では、まず第1拡管子60を挿通して管2とフィン4とを固定した後、
図18に示すように第2拡管子61を管口部240から管2に挿入する。
図19に示すように、第2拡管子61は、管2を第2外径d2に拡径しながら管2を挿通し、開口端31の手前まで第2外径d2に拡径したところで停止する。第2拡管子61は、第2拡管子61によって形成されるテーパ部22が開口端31と接触する位置まで前進される。すなわち開口部30とテーパ部22とが密着して接触し、サイドプレート3と管2とが固定される位置まで第2拡管子61を前進させる。その後
図20に示すように第2拡管子61を後進させて管2から引き抜き、第2拡管工程S230を終了する。これにより、
図16に示すように、管2がフィン4およびサイドプレート3と一体化した熱交換器1を製造することができる。
【0056】
複数の管2のうち1つもしくはいくつかの管2が挿通された部分において、サイドプレート3が管2のテーパ部22とフィン4のフランジ部41bとによって挟持されていなくてもよい。すなわち、
図21に示すように、フィン4のフランジ部41bがサイドプレート3から離間していてもよい。このような場合でも、フランジ部41bがサイドプレート3と離間している部分の管2は、他の管2が挿通された部分においてサイドプレート3が挟持されていれば、サイドプレート3に対して固定することができる。
【0057】
次に第2実施形態の熱交換器1および熱交換器1の製造方法がもたらす作用効果について説明する。第2実施形態の熱交換器1は、アルミニウム材料で形成され拡管された管2を備える。熱交換器1は、管2が挿通されているフィン孔42をそれぞれ有し一方向に並べられた複数のフィン4と、複数のフィン4のうち一方向における端部に位置するフィンの外側に設けられ、管が挿通されている開口部30が形成されたサイドプレート3とを備える。管2は、第1外径d1を有し、フィン孔42の内周面と密着する第1部分21と、第1外径d1よりも大きい第2外径d2を有する第2部分23と、開口部30の内周面と密着し、第1部分21と第2部分23とをつなぐテーパ部22と、を有する。テーパ部22は、少なくとも開口部30の開口端31と密着している。
【0058】
これによれば、熱交換器1は、管2の第1部分21がフィン4と密着し、管2のテーパ部22がサイドプレート3と密着し、管2の第2部分23がサイドプレート3よりも外側に位置している。したがって、管2を拡管してフィン4およびサイドプレート3に対して固定する際に、第1部分21の拡管と第2部分23の拡管とをそれぞれ別の工程で行うことができる。このため、拡管時に管2に作用する荷重を低減できる。また、このため、管2とサイドプレート3とを拡管により固定する際に発生したアルミ粉が、管2とフィン4とを拡管により固定する際に第1拡管子60の拡管ビレットに凝着することを回避できる。以上により、拡管によって生じる不具合を抑制可能な熱交換器を提供できる。
【0059】
第2実施形態の熱交換器1の製造方法では、第2拡管工程S230において、管2の内部に、管2の外径を開口内径dsよりも大きい第2外径d2に拡管可能な第2拡管子61を、管2の外径が第1外径d1から第2外径d2へと拡径される部分であるテーパ部22が開口部30の開口端31に密着する位置まで挿通する。
【0060】
この開示によれば、第1拡管子60がサイドプレート3に挿通された管2の部分を挿通する際にサイドプレート3から荷重を受けることを回避できる。このため、拡管時に管に作用する荷重を低減できる。また、このため、従来に比べて発生するアルミ粉の量を抑制できる。したがって、第1拡管子60がフィン4に挿通された管2の部分を挿通する際に第1拡管子60の拡管ビレットにアルミ粉が凝着することを抑制できる。また、サイドプレート3から荷重を受ける第2拡管子61は、管2のフィン4に挿通する部分を通過しない。このため、サイドプレート3からの荷重によって発生したアルミ粉が付着した第2拡管子61が、管2のフィン4に挿通された部分を挿通することを回避することができる。以上により、拡管によって生じる不具合を抑制可能な熱交換器の製造方法を提供できる。
【0061】
第2実施形態の熱交換器1は、サイドプレート3に隣接するフィン4のフランジ部41bがサイドプレート3に接触している。これにより、サイドプレート3を、管2のテーパ部22とフィン4のフランジ部41bとで挟持して固定することができる。したがって、開口部30の内周面と管2における第2部分23の外周面とが密着するまで第2拡管子61を挿入する必要がない。これによって、第2拡管子61を挿入する際の拡管荷重を抑制することができるため、拡管を実施する設備のコストを低減することが可能となる。
【0062】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の変形例について
図22を参照して説明する。変形例では、サイドプレート3の開口端31に、テーパ状の面取り部31aが形成されている。面取り部31aは、配設工程S10の前にあらかじめサイドプレート3に形成されている。または、第2拡管工程S230の直前までに面取り部31aが形成されてもよい。面取り部31aは、第2拡管工程S230によって管2に形成されるテーパ部22と密着する。このような構成においても、管2のテーパ部22とフィン4のフランジ部41bとによってサイドプレート3が挟持されているため、サイドプレート3と管2とを固定することができる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態では、第1実施形態の熱交換器1の製造方法に関して、他の製造方法を開示する。
図23~
図27において第1実施形態の図面中と同一符号を付したステップや構成要素は、同様のステップや構成要素であり、同様の作用効果を奏するものである。
【0064】
図23~
図27を参照して第3実施形態の熱交換器1の製造方法について説明する。熱交換器1は、
図23に示すように、配設工程S10と、第1拡管工程S20と、第2拡管工程S330と、第3拡管工程S340とによって製造される。配設工程S10および第1拡管工程S20は、第1実施形態において
図7~
図9を参照して説明した工程と同様である。以下、前述の実施形態と相違する内容について説明する。
【0065】
第3実施形態の製造方法は、前述の実施形態における第2拡管工程S30を、第2部分23を形成する第2拡管工程S330とフレア部24を形成する第3拡管工程S340とに分ける方法である。
【0066】
第3実施形態の製造方法によれば、第1拡管工程S20の後に第2拡管工程S330を行う。第2拡管工程S330では、管2に第2拡管子161を挿入する。
図24は、管2に第2拡管子161を挿入する直前の様子を示す図である。第2拡管子161は、管2の外径を第2外径d2まで拡管可能な外径を有する拡径部61bと、拡径部61bの端部から第2拡管子61の挿入方向に向かって徐々に縮径するテーパ形状を有する先端部61aとを有する。第2拡管子161は、管口部240に対して先端部61aから挿入することで、管2を拡管可能な拡管子である。
図25に示すように、第2拡管子161は、前述の第1実施形態と同様に、サイドプレート3に挿通されている管2の部分の少なくとも一部を拡管するように管2の内部に管口部240から挿し込まれる。第2拡管工程S330では、先端部61aによってテーパ部22が形成され、拡径部61bによって第2部分23が形成される。
【0067】
第2拡管工程S330の後に第3拡管工程S340を行う。第3拡管工程S340では、管2に第3拡管子62を挿入する。
図26は、管2に第3拡管子62を挿入する直前の様子を示す図である。第3拡管子62は、円柱状の軸部の端部から第3拡管子62の挿入方向に向かって徐々に縮径するテーパ形状を有するフレア形成部62aを有する。第3拡管子62は、
図25に示すように、管口部240に対して先端部から挿入することで、管口部240を裾広がり状に拡管可能な拡管子である。第3拡管工程S340は、第1拡管工程S20および第2拡管工程Sとは別個の工程として管2の管口部240に向かって内径が拡大するフレア部24を形成する工程である。
【0068】
第3実施形態の第2拡管工程S330は、第2拡管子61を、管2の外径が第1外径d1から第2外径d2へ変化するように拡径される管2の部分が開口部30の外側開口端31に密着する位置まで管2の内部に挿し込む工程に置き換えるようにしてもよい。
【0069】
第3実施形態の熱交換器1の製造方法は、第1拡管工程S20および第2拡管工程S330とは別個の工程として管2の管口部240に向かって内径が拡大するフレア部24を形成する第3拡管工程S340を有する。この製造方法によれば、管2に拡管部分が形成されている第1部分21、第2部分23、フレア部24を別個の工程によって行えるため、これらのうち2つの拡管部分を同時に形成しないため、管2に係る荷重を抑えることができる。したがって、管2の座屈等の不具合を抑制可能な製造方法を提供できる。
【0070】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0071】
上述の実施形態において、第1拡管子60を管2から引き抜いた後、第2拡管子61を挿入するとしたが、第1拡管子60を引き抜かずに第2拡管子61を挿入してもよい。この場合には、例えば、第1拡管子60のマンドレルが挿通可能な、マンドレルと同軸の挿通孔を有する第2拡管子を用いればよい。すなわち、第1拡管子60が管2に挿入された状態で、第2拡管子を、挿通孔にマンドレルを挿通しながら管2に挿入することで、第1拡管子60を引き抜くことなく第2拡管工程へと移行することができる。
【0072】
上述の実施形態において、管2は軸方向に垂直な断面が円形状であるとしたが、断面の形状は円形状に限定されない。例えば、軸方向に垂直な断面が扁平な楕円形状である管2を採用してもよい。
【0073】
上述の実施形態において、第1拡管子60および第2拡管子61は、管2を拡管する前と相似の断面形状である円形状に拡管するとしたが、管2を異なる形状に拡管する拡管子であってもよい。例えば、第1拡管子60および第2拡管子61は、管2の断面が円形状から多角形状になるように拡管する拡管子であってもよい。また、第1拡管子60および第2拡管子61は、管2の断面形状が拡管前の形状から一部が突出するように拡管する拡管子であってもよい。すなわち、第1拡管子60および第2拡管子61は、管2の一部が拡径するように拡管する拡管子であってもよい。
【0074】
上述の実施形態において、カラー部41はベース部40から突出した屈曲部41aと、屈曲部41aから立ち上がる端部によって形成されるとしたが、カラー部41の形状はこれに限定されない。例えば、カラー部41は、フランジ部41bを有さない形状であってもよい。
【0075】
上述の実施形態において、フィン4はカラー部41を有するとしたが、カラー部41を有さない構成であってもよい。すなわち、フィン4のベース部40に直接打ち抜き加工等でフィン孔42が形成された構成であってもよい。
【0076】
上述の実施形態において、第1拡管工程を実施した後に第2拡管工程を実施するとしたが、第2拡管工程を実施した後に第1拡管工程を実施してもよい。
【0077】
上述の実施形態に開示する製造方法は、第1拡管工程、第2拡管工程、第3拡管工程の順に実施するように説明したが、第1拡管工程、第2拡管工程、第3拡管工程の各工程は、配設工程の後に実施するものであればよい。したがって、第1拡管工程、第2拡管工程および第3拡管工程の実施順番は、上述の実施形態に記載の順番に限定するものではない。
【符号の説明】
【0078】
2…管、 21…第1部分、 22…テーパ部(中間部分)、 23…第2部分
24…フレア部、 26b…溝部、3…サイドプレート、 30…開口部
31…開口端(外側開口端)、 4…フィン、 41b…フランジ部(接触部)
42…フィン孔、 60…第1拡管子、 61…第2拡管子、 240…管口部
S10…配設工程、 S20…第1拡管工程、 S30、S230…第2拡管工程
d1…第1外径、 d2…第2外径、 df…孔内径、 ds…開口内径
dt…素管外径