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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】芳香族ポリイミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
C08G73/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017551002
(86)(22)【出願日】2015-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2015080377
(87)【国際公開番号】W WO2016097232
(87)【国際公開日】2016-06-23
【審査請求日】2018-10-09
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】14307086.0
(32)【優先日】2014-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】517215467
【氏名又は名称】アンスティテュ ナシオナル デ シアンス アプリケ ドゥ リヨン
(73)【特許権者】
【識別番号】505041416
【氏名又は名称】セントレ ナショナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】509129233
【氏名又は名称】ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン1
(73)【特許権者】
【識別番号】517125546
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ジャン モネ、サン テティエンヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE JEAN MONNET SAINT ETIENNE
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ロサン, ルネ
(72)【発明者】
【氏名】モレ, ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】パシ, バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】フヌイヨ-ラムランジェ, フランソワーズ
(72)【発明者】
【氏名】ルソー, アラン
【合議体】
【審判長】蔵野 雅昭
【審判官】小出 直也
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526583(JP,A)
【文献】特開2014-526582(JP,A)
【文献】特開2014-526594(JP,A)
【文献】特開2012-92262(JP,A)
【文献】特開2001-98070(JP,A)
【文献】特開昭63-215727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸と1つまたは複数のジアミンとを0.95~1.05の範囲のモル比で反応させることによって1つまたは複数の固体塩を調製する工程と;
(b)固体塩を乾燥させる工程と;
(c)工程(b)に由来する乾燥塩に、1つまたは複数の化合物(C)を添加する工程と;
(d)化合物(C)の存在下での前記固体塩の固相重合の工程と;
を含み、化合物(C)が、フタル酸、ピロメリット酸、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、芳香族ポリイミドの製造方法。
【請求項2】
固体塩が、1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸と1つまたは複数のジアミンとを0.99~1.01の範囲のモル比で反応させることによって調製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体塩が、1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸と1つまたは複数のジアミンとを化学量論量で反応させることによって調製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)に使用される前記芳香族テトラカルボン酸が、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸、および2,2’-ビス(3,4-ビカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ジアミンが、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択的に含む、線状または分岐の、飽和または不飽和の脂肪族、脂環式または芳香族二価炭化水素ベースの基Rを持った式HN-R-NHの分子であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
基Rが、2~50個の炭素原子と、任意選択的に1つまたは複数のヘテロ原子とを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ジアミンが、脂肪族ジアミンから、好ましくは1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、および1,14-ジアミノテトラデカンから選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ジアミンが、脂環式ジアミンから、好ましくはイソホロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)および4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ジアミンが、芳香族ジアミンから、好ましくはm-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、m-キシリレンジアミンおよびp-キシリレンジアミンから選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)へ導入される化合物(C)の量が、工程(a)において使用される芳香族テトラカルボン酸のおよびジアミンの総モル数に対してモル数として0.5%よりも大きい、より優先的にはモル数として0.5~10%の範囲、さらにより優先的にはモル数として1~5%の範囲であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)中に、重合が、次の関係:工程(a)からの塩のTf>T>得られるポリイミドのTg
に従う温度Tで行われることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(d)中に、重合が0.005~1MPaの範囲の絶対圧で行われることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)中に、重合が50℃~250℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)において得られるポリイミドの数平均モル質量Mが、500~50,000g/モル、より優先的には2000~40,000g/モル、さらにより優先的には5000~30,000g/モルの範囲であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族の熱可塑性ポリイミドに、およびそれらの製造に関する。
【0002】
より正確に言えば、本発明は、1つまたは複数のジアミンと1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸とから形成された1つまたは複数の乾燥固体アンモニウムカルボキシレート塩の固相重合による熱可塑性ポリイミドの製造方法に関する。
【0003】
ポリイミド、とりわけ芳香族ポリイミドは、それらの並外れた熱的および/または機械的特性で知られており、それらの特性によって、それらは、宇宙飛行あるいはエレクトロニクス(例えば、プリント回路基板)などの様々な分野での「高性能」用途向けに特に選定されている。
【0004】
それにもかかわらず、これらの芳香族ポリイミドは、熱硬化性で、非可融性であると考えられ、そして芳香族ジアミンおよび芳香族二酸無水物から出発して、有毒であり、とりわけ、ある場合には発癌性または潜在的に発癌性である、および/または環境にやさしくない溶媒中の溶液での合成プロセスの使用を必要とする。最もよく知られた、そして最も幅広いポリイミドの合成方法は、芳香族二酸無水物を、ジメチルアセトアミド、クレゾールあるいはN-メチルピロリドンなどの溶媒中で、芳香族ジアミンと反応させて、ポリアミド酸として知られる中間体を形成するという第1工程を含み、その中間体が、その後温度の上昇によってかまたは化学的脱水によって、第2工程においてポリイミドへ変換される2段階プロセスである。
【0005】
第1工程中に、アミンは、無水物環を開環させ、多くの場合アミド酸官能基と呼ばれる、酸アミド官能基を生じさせる。形成されたポリアミド酸は、合成溶媒に可溶であり、通常不溶性である、ポリイミドへ環化によって変換される。ポリイミドフィルムを製造するために、例えば、ポリ(アミド酸)の溶液が加熱表面上へ注がれる。加熱表面が加熱されるとき、溶媒は蒸発し、環化が起こり、ポリイミドフィルムがそのとき得られる。
【0006】
芳香族ポリイミドを可融性にする、それ故、特に、押出または射出成形の技法による変換に適しているようにするために、Ultemが1つの取引名である、ポリエーテルイミド名称で知られている、200℃に近いガラス遷移温度Tgの非晶質ポリイミドを生み出す、より可撓性の芳香族ジアミンを使用することは公知の慣行である。芳香族二酸無水物と芳香族ジアミンとの、または芳香族テトラカルボン酸と芳香族ジアミンとの直接混合物から、米国特許第3,833,546号明細書におけるような、溶融重合を275~290℃で行う工程を含む方法が開発されている。この場合、試薬の化学量論の制御が最適ではなく、速い分解反応が起こる。1つの欠点は、使用温度がポリイミドのガラス遷移温度Tgよりも高い場合に、ポリイミドが、その非晶質性のせいで、その機械的強度を失うことである。最後に、非晶質ポリマーのように、機械的特性はモル質量に主に依存し、モル質量は、絡み合い間のモル質量よりも大きくなければならず:これらのポリマーについて、これは、かなりのモル質量を有することを暗示し、これには、高い溶融粘度が伴う。これらの可撓性芳香族ポリイミドは、これにもかかわらず、熱可塑性樹脂であると考えられる。
【0007】
半芳香族ポリイミドはまた、それらが、半結晶性であり得るし、熱可塑性樹脂の変換温度に適合する融点(一般に330℃よりも下の融点)を有し得るし、そしてそれ故、優れた耐熱性に恵まれながら、ポリアミドに似た、熱可塑性樹脂に関して知られている加工プロセスによって変換することができるので、興味深いアプローチを表す。
【0008】
芳香ポリイミドについて記載されているような溶液合成から出発する、様々な合成法が存在する。ポリイミド溶液合成の一例は、定期刊行物Polymer 1998年、第39巻、16、3697~3702頁にCor Koningによって記載されている。著者らは、3,3’-4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からおよび4~10個のメチレン基を含有する脂肪族ジアミンから溶液でポリイミドを合成している。得られたポリイミドは330℃よりも下の融点を有する。ポリアミド合成のための公知の方法に従って、脂肪族ジアミンおよびピロメリット酸無水物からの、またはピロメリット二酸無水物ジエステル誘導体からの溶融重合が、米国特許第2,710,853号明細書または米国特許第2,867,609号明細書に記載されている。この技法の主要な欠点は、長い継続時間にわたって、形成されるポリイミドの溶融温度よりも上である、それによって実質的な、かなりの熱分解を引き起こす合成温度の選択をそれが必要とすることである。
【0009】
この問題を克服するために、日本のチーム(Inoue et al.,Macromolecules 1997,30,1921-1928”High Pressure Synthesis of Aliphatic-Aromatic Polyimides via Nylon-Salt-Type Monomers derived from aliphatic diamines and pyromellitic acid and biphenyltetracarboxylic acid”)は、固体状態での芳香族テトラカルボン酸塩と脂肪族ジアミンとを重合させるための方法を特定した。著者らはこうして、ディスクなどの物体を与えるために、数百バールの圧力でプレスされる塩を調製し、その後結果として生じたディスクを様々な圧力下で所与の温度に加熱している。加熱の過程で、反応が起こり、そして反応が起こったこと、かつ非常に速く起こっているであろうことを示す、水を発生させる。
【0010】
これらの著者らによって想定されたこれらの方法の問題は、成形操作の過程で形成される反応水を抽出することが必要であり、そしてこれが成形品に欠陥を生じさせる場合があり、長い変換時間が、過度の変換費用を生じさせるならびに/または気孔率および外観の問題ありの、準最適品質の成形品を生成する可能性があるか、あるいは非反応性ポリマーの使用を意図する装置の改造および/または変更を要求するという事実にある。
【0011】
さらに、既存の方法は、ポリイミドのモル質量および/または粘度を制御するという観点から満足できないと判明する可能性がある。しかしながら、これらのパラメータの制御は、これらのポリマーが意図される用途に特に依存して、特に重要である。
【0012】
さらに、ポリマーが粉末の形態にあることを要求される用途が存在する。これは、とりわけ、レーザー焼結について、または布の粉化または炭素またはガラスモノフィラメントの引き抜き成形による粉末からの連続繊維複合材の製造方法、あるいは他の方法について事実である。ポリマー粉末の公知の製造技術は、ポリマーを溶媒に溶解させ、次に非溶媒からそれを沈澱させること(しかしこれは、有毒な、発癌性溶媒の使用を伴う)、または所望のポリマーの分離を起こすために、ポリマー溶融体を非混和性化学種と混合すること、あるいは調合ポリマーの顆粒を粉砕することのどれかを必要とし、それは、微粒子化および乾燥の追加の工程を強要する。引用されるケースがどんなものであれ、プロセスは複雑であり、高くつく。
【0013】
さらに、先行技術プロセスによって、とりわけ固体および/またはジエステルルートによって得られたポリイミドは、満足できない相対粘度および/または満足できないモル質量を有する可能性がある、ならびに/またはそれらの溶融の前後に、それらの相対粘度におよび/またはモル質量に過度のばらつきを有する可能性がある。
【0014】
これらの様々な問題に対処するために、半芳香族および半結晶性ポリイミド固体粒子の改善された取得方法が、特許出願国際公開第2013/041 528号パンフレットに記載された。それは何よりも先に、塩を得るために少なくとも1つのジアミンを少なくとも1つの芳香族テトラカルボン酸と反応させる。この第1工程は、鎖制限剤のおよび/または過剰のモノマーの1つの存在下で行われてもよい。塩の固相重合が次に、第1工程中に得られた塩の融点よりも下に同時に留まりながら、得られるポリイミドのガラス遷移温度Tgよりも上の温度で行われる。得られた固体ポリイミド粒子のモル質量はとりわけ、第1工程中に導入される鎖制限剤および/または過剰のモノマーの1つの量によって制御される。
【0015】
本出願人は、この合成法が完全に満足できるものではないこと、およびさらにより効率的に芳香族半結晶性ポリイミド固体粒子を製造することが可能であることに気づいた。具体的には、ポリイミドのモル質量のおよび粘度のより微妙な制御は、特に改善された方法によって得られてもよい。
【0016】
得られるポリイミドのモル質量および粘度の制御は、非常に重要である。この理由は、できる限り正確にそれらを制御することが必要であることである。
【0017】
本発明の1つの目的は、上に述べられた問題のすべてを解決するための解決策を提案することである。
【0018】
本発明による芳香族ポリイミドの製造方法は、以下の工程:
(a)1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸と1つまたは複数のジアミンとを0.95~1.05の範囲のモル比で反応させることによって1つまたは複数の固体塩を調製する工程と;
(b)固体塩を乾燥させる工程と;
(c)工程(b)に由来する乾燥塩に、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基およびアシルクロリド基から選択される1つまたは複数の基を含む1つまたは複数の化合物(C)を添加する工程と;
(d)化合物(C)の存在下での前記固体塩の固相重合の工程と
を含む。
【0019】
本発明による方法において、得られた乾燥固体塩に、上に定義されたような特定の化合物(C)が添加されるのは1回のみである。
【0020】
本発明による方法は、様々な用途向けの芳香族ポリイミドの工業的な、効率的な、かつ、安定した製造を可能にする。得られるポリイミドは、その後の変換工程、例えば引く抜き成形、押出成形、または射出成形中に水を放出または吸収しないという特性を持った半結晶性の熱可塑性樹脂である。それらはとりわけ、制御された粒度の粉末の形態で得られてもよい。
【0021】
本発明による方法は、得られるポリイミドのモル質量のおよび粘度の特に効率的な制御を可能にする。
【0022】
これらの粉末はとりわけ、複合品を製造するために、レーザー焼結によって物品を製造するために、コーティングするために、または化粧品部門で使用されてもよい。
【0023】
さらに、固相重合は、発癌性のまたは環境にやさしくない溶媒の使用を回避する。
【0024】
本発明の方法の別の利点は、比較的低い温度で重合を行い、塩のおよび形成されたポリイミドの熱分解を回避する能力である。
【0025】
本発明の他の利点および特性は、以下の詳細な説明を検討するとよりはっきりと明らかになるであろう。
【0026】
本発明による方法によって得られるポリイミドは、熱可塑性であり、半結晶性である。好ましくは、それは、50~350℃の範囲の融点Tfを有する。
【0027】
ポリイミドの融点は好ましくは、10℃/分の速度で20℃から出発してポリイミドを加熱することによって、Perkin Elmer Pyris 1機器を用いる、示差走査熱量測定法(DSC)により測定されるような融解吸熱のピークで求められる。
【0028】
用語「半結晶性ポリイミド」は、非晶相と結晶相とを有する、例えば、1%~85%の結晶化度を有するポリイミドを意味する。
【0029】
本発明による方法によって得られるポリイミドは優先的には、200℃以下、より優先的には150℃以下のガラス遷移温度Tgを有する。
【0030】
用語「熱可塑性ポリイミド」は、その温度を上回ると材料が軟化し、そして融解し、かつその温度を下回ると硬くなる、ある温度を有するポリイミドを意味する。
【0031】
本発明による方法によって得られるポリイミドは、ポリイミドの融解前後で、特に溶融状態で10分後に、より特に溶融状態で20分後に、または溶融状態で実に40分後に比較して、実質的に安定した数平均モル質量を有し得る。用語「実質的に安定した」は、10%以下の変化を意味する。
【0032】
前記ポリイミドは、安定した相対粘度を有し得る。特に、それは、Tf+15℃に等しい温度(これは、ポリイミドの融点よりも15℃上の温度である)で40分後に、10%以下のその相対粘度の変化を有し得る。これは、実施例に記載される方法で測定され得る。
【0033】
本発明は、1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸と1つまたは複数のジアミンとからの芳香族ポリイミドの製造に関する。たった1つのジアミンとたった1つのテトラカルボン酸とから得られるポリマーは、ホモポリイミドとして一般に知られる、ポリイミドである。少なくとも3つの異なるモノマー間の反応、最も具体的には2つのジアミンと1つのテトラカルボン酸との間の、または1つのジアミンと2つのテトラカルボン酸との間の反応は、コポリイミドとして一般に知られる、ポリイミドを生成する。ポリイミドは、各構成モノマーのモル組成によって定義されてもよい。
【0034】
本発明による工程(a)は、1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸と1つまたは複数のジアミンとを0.95~1.05の範囲のモル比で反応させることによって1つまたは複数の固体塩を調製することにある。
【0035】
このようにして調製された塩は、ジアミンおよびテトラカルボン酸化学種が、極性相互作用によって専ら、特にタイプ-COO N-の、共有結合によってではなく連結している塩である。より具体的には、塩は、共有結合していない、芳香族テトラカルボン酸とジアミンとを含む。特に、塩は、Arが芳香族基を表す状態で、次の構造:
を有してもよい。
【0036】
本発明による方法の工程(a)に使用される芳香族テトラカルボン酸は優先的には、それらが一般に、脱水反応によって同じ分子上に2つの酸無水物官能基を形成することを可能にするような位置にカルボン酸官能基を含有する。本発明の芳香族テトラカルボン酸は一般に、2対のカルボン酸官能基を含有し、各対の官能基は、αおよびβ位で、隣接炭素原子に結合している。テトラカルボン酸官能基は、酸無水物官能基の加水分解によって酸二無水物から得られてもよい。芳香族酸二無水物の、および二酸無水物に由来する、芳香族テトラカルボン酸の例は、米国特許第7,932,012号明細書に記載されている。
【0037】
本発明の芳香族テトラカルボン酸はまた、官能基、とりわけ基-SOX(ここで、X=HまたはNa、Li、Zn、Ag、Ca、Al、K、およびMgなどの、カチオンである)を有してもよい。
【0038】
有利には、芳香族テトラカルボン酸は、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸、および2,2’-ビス(3,4-ビカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸から選択される。
【0039】
好ましくは、本発明のジアミンは、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択的に含む、飽和または不飽和の、線状または分岐の脂肪族、脂環式または芳香族二価炭化水素ベースの基Rを持った式HN-R-NHの分子である。
【0040】
基Rは有利には、2~50個の炭素原子、優先的には6~36個の炭素原子を含む。基Rは任意選択的に、O、N、P、またはSなどの、1つまたは複数のヘテロ原子を含有してもよい。基Rは、ヒドロキシル、スルホン、ケトン、エーテル、または他の官能基などの、1つまたは複数の官能基を含んでもよい。
【0041】
好ましくは、アミン官能基は、第一級アミンである。
【0042】
第1実施形態によれば、本発明のジアミンは、脂肪族ジアミンから選択される。
【0043】
ジアミンはとりわけ、15~20個のメチレン基を含有する、αおよびω位におけるジアミンであってもよい。
【0044】
好ましくは、脂肪族ジアミンは、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、および1,14-ジアミノテトラデカンから選択される。
【0045】
本発明の特定の実施形態によれば、ジアミンは、脂環式ジアミンから、好ましくはイソホロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)および4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)から選択される。
【0046】
ポリエーテルジアミンなどの、ヘテロ原子を含有するジアミンの例、例えば、Huntsmanによって販売されるJeffamine(登録商標)およびElastamine(登録商標)製品にまた言及されてもよい。エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはテトラメチレンオキシド単位から構成される、様々なポリエーテルが存在する。
【0047】
第2実施形態によれば、本発明のジアミンは、芳香族ジアミンから選択される。
【0048】
好ましくは、芳香族ジアミンは、6~24個の炭素原子、より優先的には6~18個の炭素原子、さらにより優先的には6~10個の炭素原子を含む芳香族ジアミン、例えばm-キシリレンジアミン(MXDA)である。
【0049】
好ましくは、芳香族ジアミンの芳香族性は、m-フェニレンおよび/またはo-フェニレン基(前記基の総数は1~2の範囲である)の存在に起因する。
【0050】
有利には、芳香族ジアミンは、下に例示されるような、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)、m-キシリレンジアミン(MXDA):
およびp-キシレンジアミン(PXDA、示されていない)から選択される。
【0051】
特に好ましい芳香族ジアミンは、m-キシリレンジアミン(MXDA)である。
【0052】
本方法の工程(a)中に、1つまたは複数の固体塩は、1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸と1つまたは複数のジアミンとを0.95~1.05の範囲のモル比で反応させることによって調製される。これは、一方で、芳香族テトラカルボン酸のモル単位での量と、他方で、ジアミンのモル単位での量との間の比が、0.95~1.05の範囲であることを意味する。
【0053】
有利には、固体塩は、1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸と1つまたは複数のジアミンとを0.99~1.01の範囲のモル比で反応させることによって調製される。
【0054】
特定の実施形態によれば、固体塩は、化学量論量で1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸と1つまたは複数のジアミンとを反応させることによって調製される。
【0055】
用語「化学量論量」は、それ自体公知であるように、芳香族テトラカルボン酸とジアミンとが1の厳密なモル比で加えられることを意味する。
【0056】
そのような塩は、当業者に公知の様々な方法で合成され得る。
【0057】
1つの可能な手順は、例えば、ジアミンを、芳香族テトラカルボン酸を含む溶液に加えることである。別の可能性は、芳香族テトラカルボン酸を、アルコール、例えばエタノールまたはメタノールなどの溶媒に溶解させること、そしてジアミンについても同様にすることである。これらの2つの溶液が次に、撹拌しながら一緒に混合される。形成された塩は、使用される溶媒に不溶性であってもよく、したがって沈澱し得る。
【0058】
ジアミンと芳香族テトラカルボン酸とから形成された塩の溶液を作り、次に熱いままそれを濃縮し、次にそれを冷却することもまた可能である。塩は次に結晶化し、結晶が回収され、乾燥させられる。溶液は、水またはアルコールなどの、溶媒を留去することによって、または別の方法によって、芳香族テトラカルボン酸および/またはジアミンの添加によって濃縮されてもよい。溶液の飽和を行うこと、すなわち、溶液中の塩の濃度を、その結晶化に適合する値まで変更するための方法を行うこともまた可能である。一般に、この濃度は、考慮中の温度での塩の飽和濃度に少なくとも等しく、より優先的には飽和濃度よりも高い。より正確に言えば、この濃度は、塩溶液の過飽和に相当する。溶液を飽和させ、結晶化をもたらすために、水またはアルコールなどの、溶液の溶媒が留去することを可能にする圧力で作業することもまた可能である。さらなる可能性は、塩溶液への芳香族テトラカルボン酸の流れおよびジアミンの流れの逐次または同時添加によって溶液を飽和させることである。
【0059】
例として、芳香族テトラカルボン酸は、第1媒体中の、例えば、エタノーなどの、アルコールに溶解させられる。ジアミンは、別の媒体でアルコールに溶解させられ、2つの媒体が次に撹拌しながら混合される。得られた塩は沈殿する。
【0060】
この合成の終わりに、工程(a)に由来する塩は、回収され、乾燥粉末が得られるように乾燥させられる。
【0061】
塩は、沈澱物の場合には濾過によって回収され、フィルターケーキは、必要であれば、ばらばらにされてもよい。
【0062】
塩が溶液に溶解している場合には、それは、濃縮または過飽和による結晶化プロセスによって、または非溶媒の添加によりそれを沈澱させることによって、回収されてもよい。結晶化した塩は次に、濾過によって回収され、フィルターケーキは、必要ならば、ばらばらにされてもよい。
【0063】
塩の乾燥は好ましくは、150℃までの範囲の温度で真空下にまたは窒素などの不活性ガスでフラッシュすることによって行われる。
【0064】
乾燥塩の分散粒子を回収するための別の方法は、溶液の噴霧、すなわち、特に、分散した塩粒子を回収するために微細な液滴の形態で噴霧される溶媒の急速蒸発の操作である。
【0065】
最後に、例えば篩い分けまたは粉砕によって、塩粒度を選別することが可能である。
【0066】
工程(c)中に、カルボン酸基、酸無水物基、エステル基およびアシルクロリド基から選択される1つまたは複数の基を含む1つまたは複数の化合物(C)が、工程(b)に由来する乾燥塩に添加される。
【0067】
工程(c)において添加される化合物(C)は、ポリイミドの鎖長を制御することを可能にし、こうして鎖制限剤として働く。
【0068】
本発明の一実施形態によれば、化合物(C)は、一酸無水物、一酸、二酸、芳香族テトラカルボン酸および芳香族二酸無水物から選択される。
【0069】
一酸はとりわけ、アルコールと酸無水物とを反応させることによって得られるような酸モノエステルを含む。二酸はとりわけ、アルコールと芳香族二酸無水物とを反応させることによって得られるような芳香族二酸ジエステルを含む。
【0070】
化合物(C)が1つまたは複数の芳香族テトラカルボン酸を含有する場合、それらは、本発明による方法の工程(a)に使用されるものと同一であってもそれとは異なってもよい。
【0071】
好ましくは、化合物(C)は、無水フタル酸、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、1,2-ベンゼンジカルボン酸(つまりオルト-フタル酸)、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ステアリン酸、メリト酸、トリメリット酸、フタル酸、ピロメリット酸、1-ヘキサン酸、1,2,3,4,5-ベンゼンペンタカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸、2,2’-ビス(3,4-ビカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸、トリメリット酸無水物クロリドならびにその酸、エステルおよびジエステル誘導体、ベンゾイルクロリド、トルオイルクロリド、ナフトイルクロリド、テトラメチルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート、トリメチル1,2,4-ピロメリテート、トリメチル1,2,5-ピロメリテート、ジエチル1,2-ピロメリテート、ジエチル1,4-ピロメリテート、ジエチル1,5-ピロメリテート、ジメチル1,2-ピロメリテート、ジメチル1,4-ピロメリテート、ジメチル1,5-ピロメリテート、メチルピロメリテート、エチルピロメリテート、トリメチルトリメリテート、トリエチルトリメリテート、ジメチル1,3-トリメリテート、ジメチル1,4-トリメリテート、ジエチル1,3-トリメリテート、ジエチル1,4-トリメリテート、ジエチル3,4-トリメリテート、メチルトリメリテート、エチルトリメリテート、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸および1,12-ドデカン二酸、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0072】
特に好ましくは、化合物(C)は、ピロメリット酸およびフタル酸、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0073】
工程(c)へ導入される化合物(C)の量は有利には、試薬の総モル数に対して、すなわち、本発明による方法の工程(a)に使用される芳香族テトラカルボン酸のおよびジアミンの総モル数に対してモル数として0.5%よりも大きい。好ましくは、工程(c)へ導入される化合物(C)の量は、試薬の総モル数に対して、モル数として0.5~10%、より優先的にはモル数として1~5%の範囲である。
【0074】
さらに、溶液か、固体状態における塩の含浸によってかのどちらかで、例えばジアミンおよび/または芳香族テトラカルボン酸との混合物として、形成された塩との混合物として、プロセス中の任意の時点で添加される、触媒が使用されてもよい。
【0075】
本発明による方法の工程(d)中に、工程(b)に由来する乾燥固体塩の固相重合が、ポリイミドを得るために化合物(C)の存在下で行われる。
【0076】
本発明の目的のためには、用語「固相重合」は、溶液でまたは溶媒中の懸濁液で、溶融状態でも行われない重合を意味する。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によれば、重合は、次の関係:工程(a)からの塩のTf>T>得られるポリイミドのTgに従う温度Tで行われる。
【0078】
工程(a)に由来する塩のTfは、前記塩の融点を意味する。
【0079】
塩の融点は優先的には、10℃/分の速度で20℃から出発して塩を加熱することによって、Perkin Elmer Pyris 1機器を用いる、示差走査熱量測定法(DSC)により測定されるような吸熱終点温度を測定することによって求められる。
【0080】
有利には、重合は、0.005~1MPaの範囲の、より優先的には0.005MPa~0.2MPaの範囲の絶対圧で行われる。
【0081】
重合は優先的には、50℃~250℃の範囲の温度で行われる。
【0082】
固相重合法は、当業者には公知の従来プロセスに従って行われてもよい。これらの方法の基本的な原理は、工程(b)から得られた乾燥固体塩を、化合物(C)の存在下で、空気下または不活性雰囲気下でまたは真空下で、塩の融点よりも下であるが、重合反応を可能にするのに十分である温度、一般にポリイミドのガラス遷移温度よりも上の温度にすることにある。そのような方法はしたがって、手短に言えば:
a)伝導拡散または対流拡散によるかまたは輻射による生成物の加熱;
b)真空の適用、窒素、CO、または過熱スチームなどの中性ガスでのフラッシング、または正圧の適用による不活性化;
c)蒸発、引き続くキャリアガスでのフラッシングまたは気相の濃縮による縮合副産物の除去;
d)機械撹拌、またはキャリアガスまたは振動での固相の流動化が、伝熱および物質移動を向上させるために、そしてまた分離固体の集塊のいかなるリスクをも防ぐために望ましい場合もある
を含んでもよい。
【0083】
優先的には、ポリイミドを動いている状態に保つための手段が、前記ポリイミドを粒子の形態で得るために、そしてこれらの粒子の凝集を防ぐために工程(d)の過程で用いられる。攪拌機の使用によって、反応器の回転によって、または振動かき混ぜ、またはキャリアガスでの流動化によってなどの、機械撹拌が、これを行うために用いられてもよい。
【0084】
本発明による方法によって得られるポリイミドは有利には、それらの中央径D50が0.01~2mmの範囲である粒子の形態にある。
【0085】
用語「中央径D50」は、容量によって粒度分布の曲線を等面積の2つの部分に分ける中央値を意味する。粒度分析は、2~2000μmの粒度を特性化することを可能にする、Malvern Instruments S.A.製の広い光学ベンチを有するMastersizer Xレーザー回折粒度分析計を用いて行われてもよい。分布は容積によるので、中央径は、粒子の全容積の50%に相当するであろう。さらに、所与の中央径は等価球形の直径に相当し、それは、物体がすべて球形に等価の形状を有すると仮定する。
【0086】
好ましくは、本発明による方法によって得られるポリイミドは白色である。それらはとりわけ、10以下のCIE b*比色特性を有する。
【0087】
好ましくは、本発明によるポリイミドの数平均モル質量Mは、500~50,000g/モル、より優先的には2000~40,000g/モル、さらにより優先的には5000~30,000g/モルの範囲である。
【0088】
本発明における具体的なモル質量は、当業者によく知られている多くの方法によって測定され得る。
【0089】
これらの方法の実例として、とりわけ、末端基の分析に基づくもの、例えばNMRまたは滴定による測定、またはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)としても知られる、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いる測定を求めるものが挙げられてもよい。一般に、ポリイミドのGPC測定を実施するための溶媒の選択は、ポリイミドの構造の関数としてそれ自体よく知られているように行われる。
【0090】
優先的には、末端基の濃度を測定するために、ポリイミドのNMR測定は、溶媒としての重水素化濃硫酸中で採られてもよい。
【0091】
質量分布およびまた平均質量Mnの計算は、市販標準を使用した較正後に、ポリスチレン当量(PST)でまたは絶対質量として行われてもよい。必要ならば、絶対質量測定は、粘度検出によって行われてもよい。本発明との関連で、平均モル質量Mnは、絶対質量として表される。平均モル質量Mnは、全体分布から、または環状オリゴマーの寄与を考慮に入れたくない場合には低質量の切り捨て後に計算されてもよい。
【0092】
工程(d)の終わりに、本発明による方法によって合成されたポリイミドは、好ましくは粒子の形態で回収され、これはとりわけ、追加の機械的粉砕が必要とされることなく行われてもよい。一方、塊になっている可能性がある粒子の解凝集を行うことが有用であることもある。
【0093】
本発明による方法によって得られるポリイミドは、組成物を調製するために使用され得るし、組成物は、ポリイミドを様々な化合物、とりわけ充填材および/または添加剤と混合することによって一般に得られる。本プロセスは、様々な化合物の性質に応じて、多かれ少なかれ高温で、かつ、多かれ少なかれ高い剪断力で行われる。化合物は、同時にかまたは逐次的に導入することができる。一般に、押出装置が用いられ、その装置中で材料は加熱され、次に溶融させられ、剪断力にかけられ、搬送される。特定の実施形態によれば、最終組成物の調製前に、任意選択的に溶融状態で、プレブレンドを調製することが可能である。例えば、マスターバッチを生成するために、例えば、ポリイミドの、樹脂中のプレブレンドを調製することが、例えば、可能である。
【0094】
組成物は、補強材もしくは増量剤とのおよび/または衝撃改質剤とのおよび/または添加剤との、前に記載されたような製造方法によって得られたポリイミドの溶融混合または非溶融混合によって得られてもよい。
【0095】
前記組成物は任意選択的に、1つまたは複数の他のポリマーを含んでもよい。
【0096】
前記組成物は、組成物の総重量に対して、20重量%~90重量%、優先的には20重量%~70重量%、より優先的には35重量%~65重量%の、本発明によるポリイミドを含んでもよい。
【0097】
前記組成物はまた、補強材または増量剤を含んでもよい。補強材または増量剤は、ポリアミドを特にベースとする、熱可塑性組成物の製造のために通常使用される充填材である。ガラス繊維、炭素繊維もしくは有機繊維などの、補強繊維充填材、粒状もしくは層状充填材などの非繊維充填材、および/または剥離性もしくは非剥離性ナノ充填材、例えばアルミナ、カーボンブラック、粘土、リン酸ジルコニウム、カオリン、炭酸カルシウム、銅、珪藻土、黒鉛、雲母、シリカ、二酸化チタン、ゼオライト、タルク、ウォラストナイト、ポリマー充填材、例えば、ジメタクリレート粒子、ガラスビーズまたはガラス粉末が特に挙げられてもよい。ガラス繊維などの、補強繊維を使用することがとりわけ好ましい。
【0098】
前記組成物は、組成物の総重量に対して、5重量%~60重量%、優先的には10重量%~40重量%の補強材または増量剤を含んでもよい。
【0099】
前に定義されたような本発明による方法によって得られたポリイミドを含む、前記組成物は、少なくとも1つの衝撃改質剤、すなわち、ポリイミド組成物の衝撃強度を改善することができる化合物を含んでもよい。これらの衝撃改質剤化合物は優先的には、ポリイミドと反応する官能基を含む。表現「ポリイミドと反応する官能基」は、特に共有結合、イオン相互作用または水素結合相互作用またはファンデルワールス結合によって、ポリイミドの酸無水物、酸またはアミン残留官能基と反応することができるかまたは化学的に相互作用することができる基を意味する。そのような反応性基は、ポリイミドマトリックス中の衝撃改質剤の効果的な分散を確実にする。挙げられてもよい例には、酸無水物、エポキシド、エステル、アミンおよびカルボン酸官能基、ならびにカルボキシレートまたはスルホネート誘導体が含まれる。
【0100】
前記組成物はまた、ポリイミドまたはポリアミド組成物の製造のために一般に使用される添加剤を含んでもよい。こうして、潤滑剤、難燃剤、可塑剤、核形成剤、抗UV剤、触媒、酸化防止剤、帯電防止剤、染料、艶消し剤、成形補助剤または他の従来型添加剤が挙げられてもよい。
【0101】
これらの充填材、衝撃改質剤および/または添加剤は、例えば、造塩中、造塩後、固相重合中に、または溶融混合物として、エンジニアリングプラスチックの分野でよく知られている好適な、通常の手段によってポリイミドに添加されてもよい。
【0102】
ポリイミド組成物は一般に、組成物に含まれる様々な化合物を加熱なしでまたは溶融体でブレンドすることによって得られる。本プロセスは、様々な化合物の性質に応じて、多かれ少なかれ高温で、かつ、多かれ少なかれ高い剪断力で行われる。化合物は同時または逐次的に導入することができる。一般に、押出装置が用いられ、その装置中で材料は加熱され、次に溶融させられ、剪断力にかけられ、搬送される。
【0103】
単一操作中に、例えば押出操作中に溶融相で化合物をすべてブレンドすることが可能である。例えば、ポリマー材料の顆粒または粉末を、それらを溶融させるためにそしてそれらを多かれ少なかれ高い剪断にかけるために、ブレンドすること、それらを押出装置へ導入することが可能である。特有の実施形態によれば、最終組成物の調製前に、溶融体中でまたは溶融体中ではなく、化合物のいくつかをプレブレンドすることが可能である。
【0104】
前に定義されたようなポリイミドまたは様々な組成物は、プラスチック物品の製造のための任意の成形方法に使用され得る。
【0105】
本発明による方法によって製造されるようなポリイミドを含むそのようなプラスチック物品が製造され得る。この目的に向けて、例えば、とりわけ自動車のまたはエレクトロニクスおよび電気の分野での、成形方法、とりわけ射出成形、押出成形、押出-吹込み成形、またはあるいは回転成形などの様々な技法が挙げられてもよい。押出成形方法はとりわけ、紡糸方法またはフィルムの製造方法であってよい。
【0106】
その特に良好な流動性のおかげで、本発明による方法によって得られるポリイミドは、射出成形または溶融押出成形を含む成形操作に特に最適である。
【0107】
連続繊維複合品または含浸布などの物品が製造され得る。これらの物品はとりわけ、布と、本発明による方法によって得られたポリイミド粒子とを固体状態または溶融状態で接触させることによって製造され得る。布は、特に接着剤接合、フェルト化、編み、織りまたはニッティングなどの、任意の方法によって一体化される糸または繊維をアセンブリングすることによって得られる織物面である。これらの布はまた、例えばガラス繊維、炭素繊維などをベースとする、繊維のまたはフィラメントのネットワークとも言われる。それらの構造は、ランダム、一方向性(1D)または多方向性(2D、2.5D、3Dなど)であってもよい。
【0108】
本発明による方法によって得られるポリイミドはまた、ポリマー粉末層の選択的溶融、とりわけ、固相レーザー焼結での迅速プロトタイピングによる物品の製造方法に、粒子の形態で使用されてもよい。層の選択的溶融による製造は、所望の物体を与えるために、粉末形態での材料の層をレイダウンする工程と、層のある部分またはある領域を選択的に溶融させる工程と、粉末の新たな層をレイダウンする工程と、この層のある部分を再び溶融させる工程などとを含む物品の製造方法である。溶融されるべき層の部分の選択性は、例えば、吸収体、阻害剤、またはマスクの使用によって、または集中エネルギー、例えば、レーザービームなどの電磁放射線の入力によって得られる。層の添加による焼結、特にレーザー焼結での迅速プロトタイピングがとりわけ好ましい。
【0109】
特殊言語が、本発明の原理の理解を容易にするために本説明で用いられる。それにもかかわらず、本発明の範囲の限定はこの特殊な言語の使用によってまったく想定されないことが理解されるべきである。変更、改善、および改良が、関連技術分野に精通した者により、その者自身の常識に基づいて特に想定され得る。
【0110】
用語「および/または」は、意味および、または、ならびにこの用語に関連する要素の他の可能な組み合わせをすべて包含する。
【0111】
本発明の他の詳細または利点は、純粋に表示の目的で下に示される実施例に照らし合わせてよりはっきりと明らかになるであろう。
【実施例
【0112】
測定標準
ポリイミドの融点(Tf)および冷却時の結晶点(Tc)は、10℃/分の速度で、TA-Instruments Q20機器を用いる、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定する。ポリイミドについてのTfおよびTc値は、溶融および結晶化ピークの最高部で測定する。ガラス転移温度(Tg)は、40℃/分の速度で同じ機器で測定する(可能な場合、それは、10℃/分で測定し、実施例に明記する)。
【0113】
塩の融点の測定については、塩を10℃/分で加熱することによって測定される吸熱の終了温度を考慮する。
【0114】
ポリイミドの還元溶液粘度(ηred)は、サーモスタットで25℃に維持される浴中でUbbelohde粘度計直径0.4mmを用いる毛管粘度測定法によって測定する。分析用のポリマーの溶液は、溶媒としてのフェノール-オルト-ジクロロベンゼン混合物(質量による50/50)で5g/Lにある。フロー時間は、1試料当たり3回測定する。
【0115】
乾燥塩の化学量論(S)は、Mettler-Toledo T50機器を用いるpHメーター(pH-metric)滴定によって測定する。この滴定は、約0.5gの乾燥塩を含有する40mLの容積の水(それに1モル/Lの濃度での10mLの水酸化ナトリウムを添加する)に関して行う。使用される滴定溶液は、1モル/Lでの塩酸溶液である。第1当量容積(V1)によって特徴づけられる水酸化ナトリウム残留物の滴定は、逆滴定によるピロメリット酸(PMA)の量へのアクセスを提供する。当量容積の差(V2-V1)は、直接滴定によるJeffamine(登録商標)150(J150)の量を測定することを可能にする。測定は、3つの試料に関して行う。塩の化学量論Sはしたがって、テトラ酸のモル数とジアミンのモル数との間のモル比によって定義される。酸鎖制限剤の添加後の、新たな化学量論比、S’は、S’が、テトラ酸のおよび酸鎖制限剤とのモル数の合計と、ジアミンのモル数との間のモル比に等しいように定義される。化学量論比に関する測定の精度は、±0.006である。鎖制限剤がまったく添加されない場合、S=S’である。
【0116】
実施例1:純エタノール中で合成される塩J150PMAの調製
(a)塩の調製
1L反応器に、85.59g(0.33モル)の96%ピロメリット酸(PMA)(Sigma-Aldrich)および800mLの純エタノールを装入する。反応媒体を、窒素で穏やかにフラッシュしながら室温で攪拌する。50.82g(0.34モル)の97%Jeffamine(登録商標)150(J150)(Huntsman)を、室温で200mLの純エタノールに溶解させる。この溶液を次に、1L反応器に連結された滴下漏斗に入れ、ピロメリット酸のエタノール溶液に90分にわたって滴加する。ジアミンとピロメリット酸との接触は塩の形成をもたらし、塩は激しい攪拌下に直ちに沈澱する。反応媒体を、室温でおよび窒素下に2時間激しい攪拌下に維持する。
【0117】
(b)得られた塩の乾燥
塩粉末を、シンター上での真空濾過によって回収し、次にばらばらにし、一晩80℃で真空下に乾燥させる。質量収率は97.8%である。粉末は、微粉であり、白色である。このようにして得られた塩の化学量論比Sは、1.012と、上に記載されたpHメーター法によって測定される。
【0118】
実施例1A(比較):鎖制限剤の添加なしのポリイミドPI J150PMAの製造
(c)実施例1の工程(b)の終わりに得られた乾燥固体塩の粉砕
実施例1の工程(b)の終わりに得られた8.9gの質量の乾燥塩J150PMAを、鎖制限剤の添加なしに乳鉢で細かく粉砕する。
【0119】
(d)鎖制限剤の不在下での乾燥固体塩の固相重合
工程(c)の終わりに得られた8.9gの質量の塩を、機械攪拌および窒素での不活性化付きガラス管反応器に入れる。圧力は大気圧に等しい。デバイスを3時間攪拌しながら220℃で加熱する。得られたPI粉末J150PMAは、白色であり、完全に乾燥している。DSCにより測定される融点は301℃であり、その結晶点は273℃で測定され、10℃/分で測定される、そのガラス遷移温度は、113℃と評価され、その還元粘度は101.9mL/gである。
【0120】
実施例1B(発明): S’=1.050のように鎖制限剤(ピロメリット酸、PMA)の添加ありのポリイミドPI J150PMAの製造
(c)実施例1の工程(b)の終わりに得られた乾燥固体塩への鎖制限剤の添加
0.25gの質量のピロメリット酸(PMA)を、実施例1の工程(b)の終わりに得られた10.001gの乾燥塩J150PMAに添加する。2つの粉末の混合物を乳鉢で細かく粉砕する。このようにして調製された塩の理論化学量論S’は1.050に等しい。
【0121】
(d)工程(c)の終わりに得られた乾燥固体塩の固相重合
工程(c)の終わりに得られた塩を、機械攪拌および窒素での不活性化付きガラス管反応器に入れる。圧力は大気圧に等しい。デバイスを3時間攪拌しながら220℃で加熱する。得られたPI粉末J150PMAは、白色であり、完全に乾燥している。DSCにより測定される融点は299℃であり、その結晶点は270℃で測定され、10℃/分で測定される、そのガラス遷移温度は、110℃と評価され、その還元粘度は49.1mL/gである。
【0122】
実施例1C(発明):S’=1.049のように鎖制限剤(フタル酸、PHTA)の添加ありのポリイミドPI J150PMAの製造
(c)実施例1の工程(b)の終わりに得られた乾燥固体塩への鎖制限剤の添加
0.154gの質量の99%フタル酸(PHTA)(Aldrich)を、実施例1の工程(b)の終わりに得られた10.005gの乾燥塩J150PMAに添加する。2つの粉末の混合物を乳鉢で細かく粉砕する。このようにして調製された塩の理論化学量論S’は1.049に等しい。
【0123】
(d)工程(c)の終わりに得られた乾燥固体塩の固相重合
工程(c)の終わりに得られた塩を、機械攪拌および窒素での不活性化付きガラス管反応器に入れる。圧力は大気圧に等しい。デバイスを3時間攪拌しながら220℃で加熱する。得られたPI粉末J150PMAは、白色であり、完全に乾燥している。DSCにより測定される融点は298℃であり、その結晶点は262℃で測定され、10℃/分で測定される、そのガラス遷移温度は、96℃と評価され、その還元粘度は48.0mL/gである。
【0124】
実施例2(比較):鎖制限剤の添加なしの、S=1.038のような塩の固相重合によるポリイミドPI J150PMAの製造
(a)塩の調製
1L反応器に、27.04g(0.107モル)の96%ピロメリット酸(PMA)(Sigma-Aldrich)および800mLの純エタノールを装入する。反応媒体を、窒素で穏やかにフラッシュしながら室温で攪拌する。15.43g(0.104モル)の97%Jeffamine(登録商標)150(J150)(Huntsman)を、室温で200mLの純エタノールに溶解させる。この溶液を次に、1L反応器に連結された滴下漏斗に入れ、ピロメリット酸のエタノール溶液に90分にわたって滴加する。ジアミンとピロメリット酸との接触は塩の形成をもたらし、塩は激しい攪拌下に直ちに沈澱する。反応媒体を、室温でおよび窒素下に2時間激しい攪拌下に維持する。
【0125】
(b)得られた塩の乾燥
塩粉末を、大気圧で、窒素でフラッシュしながら79℃での回転エバポレーターを用いて溶媒を留去することによって回収する。回収された乾燥塩の質量は、40.6g、すなわち、97.2%の質量収率である。粉末は、微粉であり、白色である。このようにして得られた塩の化学量論比Sは、1.038と、上に記載されたpHメーター法によって測定される。
【0126】
(c)乾燥固体塩の粉砕
工程(b)の終わりに得られた10gの質量の乾燥塩J150PMAを、鎖制限剤の添加なしに乳鉢で細かく粉砕する。
【0127】
(d)工程(c)の終わりに得られた乾燥固体塩の固相重合
工程(c)の終わりに得られた塩を、機械攪拌および窒素での不活性化付きガラス管反応器に入れる。圧力は大気圧に等しい。デバイスを3時間攪拌しながら220℃で加熱する。得られたPI粉末J150PMAは、白色であり、完全に乾燥している。DSCにより測定される融点は300℃であり、その結晶点は262℃で測定され、10℃/分で測定される、そのガラス遷移温度は、111℃と評価され、その還元粘度は60.1mL/gである。
【0128】
実施例3(比較):S’=0.916のように鎖制限剤(オクチルアミン、MAS)の添加ありのポリイミドPI J150PMAの製造
(a)塩の調製
1L反応器に、65.02g(0.256モル)の96%ピロメリット酸(PMA)(Sigma-Aldrich)および800mLの純エタノールを装入する。反応媒体を、窒素で穏やかにフラッシュしながら室温で攪拌する。38.45g(0.252モル)の97%Jeffamine(登録商標)150(J150)(Huntsman)を、室温で200mLの純エタノールに溶解させる。この溶液を次に、1L反応器に連結された滴下漏斗に入れ、ピロメリット酸のエタノール溶液に90分にわたって滴加する。ジアミンとピロメリット酸との接触は塩の形成をもたらし、塩は激しい攪拌下に直ちに沈澱する。反応媒体を、室温でおよび窒素下に2時間激しい攪拌下に維持する。
【0129】
(b)得られた塩の洗浄および乾燥
塩粉末を、シンター上で真空濾過によって回収し、次に3時間攪拌しながら還流エタノール(1.2L)で洗浄する。洗浄された塩粉末を再び、シンター上で真空によって濾過し、次にばらばらにし、一晩80℃で真空下に乾燥させる。質量収率は97%である。粉末は、微粉であり、白色である。このようにして得られた塩の化学量論比Sは、1.008と、上に記載されたpHメーター法によって測定される。
【0130】
(c)工程(b)の終わりに得られた乾燥固体塩への鎖制限剤の添加
0.413gの質量の99%オクチルアミン(MA8)(Aldrich)を、工程(b)の終わりに得られた12gの乾燥塩J150PMAに添加する。塩粉末とオクチルアミンとの混合物を乳鉢で細かく粉砕する。このようにして調製された塩の理論化学量論S’は0.916に等しい。
【0131】
(d)工程(c)の終わりに得られた乾燥固体塩の固相重合
工程(c)の終わりに得られた塩を、機械攪拌および窒素での不活性化付きガラス管反応器に入れる。圧力は大気圧に等しい。デバイスを3時間攪拌しながら220℃で加熱する。得られたPI粉末J150PMAは、白色であり、完全に乾燥している。DSCにより測定される融点は300℃であり、その結晶点は268℃で測定され、10℃/分で測定される、そのガラス遷移温度は、108℃と評価され、その還元粘度は170.8mL/gである。
【0132】
上の実施例において得られた結果をすべて下の表1に順に並べる。
【0133】
【0134】
実施例3は、オクチルアミン(モノアミン)を鎖制限剤として使用する、ポリイミドの製造方法が満足できないことを示す。具体的には、得られたポリイミドは、比較例1Aに開示された方法によって製造されたポリイミドについて得られた101.9mL/gの値よりも十分に上である、170.8mL/gの還元粘度を有する。この実施例3は、オクチルアミンが期待されるように鎖制限剤として働かなかった事実を証明する。
【0135】
実施例1Bおよび1Cは先ず第一に、満足できる粘度のポリイミドがいずれの場合にも得られたので、本発明による方法の効率を実証する。
【0136】
それらはまた、本発明の方法の工程(c)中に、それぞれ、導入されたピロメリット酸(実施例1B)およびフタル酸(実施例1C)が両方とも、得られるポリイミドの鎖長の特に満足できる制御を提供したという事実を実証する。具体的には、得られたポリイミドは、それぞれ、49.1mL/g(実施例1B)のおよび48mL/g(実施例1C)の還元粘度を有する。これらの値は、実施例1Aとの関連で製造されたポリイミドについて得られた101.9mL/gの値よりも非常にはるかに低く、そして実施例2との関連で得られた60.1mL/gの値よりも低い。