(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/12 20060101AFI20221011BHJP
B41J 2/08 20060101ALI20221011BHJP
B41J 2/185 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B41J2/12
B41J2/08
B41J2/185 101
(21)【出願番号】P 2018004083
(22)【出願日】2018-01-15
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】有馬 崇博
(72)【発明者】
【氏名】高岸 毎明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聡
(72)【発明者】
【氏名】岡野 守
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-226016(JP,A)
【文献】特開2014-193568(JP,A)
【文献】特開2005-035210(JP,A)
【文献】特開昭55-103973(JP,A)
【文献】特開2017-042999(JP,A)
【文献】特開2012-162036(JP,A)
【文献】特開昭56-104068(JP,A)
【文献】特開平06-091879(JP,A)
【文献】特開2015-134432(JP,A)
【文献】特開昭57-027762(JP,A)
【文献】特開昭52-037431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0001244(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字対象物に印字をするためのインクが収容されるインク容器と、
前記インク容器に接続され、加圧供給されたインクが吐出されるノズルと、
前記ノズルから吐出されたインク粒子を帯電させる帯電電極と、
該帯電電極に帯電させる帯電信号を発生する帯電信号発生部と、
前記帯電電極で帯電されたインク粒子を偏向する偏向電極と、
印字に使用されないインクを回収するガターと、
全体の動作を制御する制御部と、
を備えたインクジェット記録装置であって、
前記帯電電極と前記偏向電極の間で前記インク粒子の帯電による電荷量を検出する第1の電荷検出手段と、
前記ガター内に流れるインクの電荷量を検出する第2の電荷検出手段を有し、
前記第2の電荷検出手段は、前記インク粒子の前記ガターへの着弾位置よりもインクが回収される流れの下流側に設置され
ており、
前記第1の電荷検出手段は、電荷検出用センサと前記ノズルから吐出されるインクビームとの間に絶縁体を形成し、前記電荷検出用センサの前記絶縁体とは反対側に設置された弾性部材により押圧されることで前記電荷検出用センサが前記絶縁体に接触した状態で固定されていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
印字対象物に印字をするためのインクが収容されるインク容器と、
前記インク容器に接続され、加圧供給されたインクが吐出されるノズルと、
前記ノズルから吐出されたインク粒子を帯電させる帯電電極と、
該帯電電極に帯電させる帯電信号を発生する帯電信号発生部と、
前記帯電電極で帯電されたインク粒子を偏向する偏向電極と、
印字に使用されないインクを回収するガターと、
全体の動作を制御する制御部と、
を備えたインクジェット記録装置であって、
前記帯電電極と前記偏向電極の間で前記インク粒子の帯電による電荷量を検出する第1の電荷検出手段と、
前記ガター内に流れるインクの電荷量を検出する第2の電荷検出手段を有し、
前記第2の電荷検出手段は、前記インク粒子の前記ガターへの着弾位置よりもインクが回収される流れの下流側に設置されており、
前記インク容器から配管を介してインクを吸引し前記ノズルに加圧供給する供給ポンプと、
前記供給ポンプと前記ノズルの間に配置されて配管経路内のインク圧力を調整する調圧弁と、
前記インク圧力を検出するための圧力センサを有し、
前記調圧弁は、圧力調整軸と、前記圧力調整軸と一体となって回転する圧力調整軸歯車と、前記圧力調整軸歯車とかみ合った状態で設置された駆動用歯車と、前記駆動用歯車を回転させるための駆動用モーターとを有していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項
2に記載のインクジェット記録装置であって、
前記圧力調整軸は、前記圧力調整軸歯車の前後を軸受で保持していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項
2又は3に記載のインクジェット記録装置であって、
前記駆動用モーターは、前記圧力センサの検出結果をもとに駆動制御することを特徴と
したインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項
2乃至4の何れか1項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記圧力調整軸歯車は、前記駆動用歯車よりも、前記圧力調整軸の軸方向の厚さを短くしたことを特徴と
したインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のインクジェット記録装置であって、
前記第1の電荷検出手段により検出される前記電荷量は、全ての前記インク粒子に荷電せずに、前記帯電により荷電した前記インク粒子の間に、少なくとも1つの電荷を荷電しないインク粒子を挟むことを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルよりインクを噴出することで印字を行うインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特許文献1(特開平10-264410号公報)がある。特許文献1には、インクを貯蔵するインク容器と、インク容器から記録ヘッドにインクを供給する供給ポンプと、記録ヘッドからインク容器にインクを回収する回収ポンプと、インク容器と記録ヘッドを結ぶインク供給路と回収路を備え、記録ヘッドには前記供給ポンプによって供給されるインクをインク粒子として噴出するノズルと、インク粒子を帯電させる帯電電極と、帯電したインクを静電界によって偏向させる偏向電極と、及び使用されなかったインクを捕集するガターを有する構成のインクジェット記録装置において、回収ポンプを前記記録ヘッド内に設け、ガターで捕集されたインクの帯電量を測定し、その帯電量測定結果に基づき、回収ポンプでの回収量を変化させる手段を有する構成が開示されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2010-12710号公報)がある。特許文献2には、印字用インクを保持するインク容器と、インク容器から配管経路を介してインクを吸引してインク吐出ノズルに加圧供給する供給ポンプと、供給ポンプとインク吐出ノズルの間に配置されて配管経路内のインク圧力を調整する減圧弁とを備えたインクジェット記録装置において、減圧弁は弁体と弁座とを有し、弁体と弁座とを接離させて配管経路内のインクの流量を調節して配管経路内の圧力を調節するとともに、弁体と弁座との当接部に圧縮復元性を持つシール部材を備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-264410号公報
【文献】特開2010-12710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、及び、特許文献2に記載された、いわゆるコンティニュアス方式のインクジェット記録装置においては、インク粒子は、帯電電極により印字内容に応じて荷電され、偏向電極間の静電偏向場を通過する時に飛行方向が変えられて印字に使用される。一方、帯電電極で荷電されなかったインク粒子は偏向電極で偏向されず直進してガターに受け取られ、インク回収ポンプの吸引力によりインク回収経路内を通り、インク容器に戻って再利用するといった循環する機構となっている。
【0006】
そして、ガターには、帯電電極からインク粒子に荷電するのに最適なタイミングを検出するための位相探索を行う位相センサが設置されている。このようなガターに設置された位相センサは、帯電電極とガターとの間に距離ができてしまう為に、インク粒子の飛行時間の分だけ、位相センサでの検出結果を帯電電極の荷電タイミングにフィードバックするのに時間がかかってしまう。その為、環境温度変化時や高速印字対応時など、インク粒子化が不安定になりやすい使用条件では、安定した印字品質を確保することが難しくなる場合があった。
【0007】
また、インク粒子に荷電された電荷は、偏向電極の電界でガター飛び越えないように微弱な電荷量となっているため、顧客使用環境によっては、ノイズの影響で位相センサでの電荷量検出が難しくなり、誤検出してしまう場合があった。
【0008】
本発明の目的は、位相探索結果の信頼性を高めて、安定した印字品質を確保することができるインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、印字対象物に印字をするためのインクが収容されるインク容器と、インク容器に接続され、加圧供給されたインクが吐出されるノズルと、ノズルから吐出されたインク粒子を帯電させる帯電電極と、帯電電極に帯電させる帯電信号を発生する帯電信号発生部と、帯電電極で帯電されたインク粒子を偏向する偏向電極と、印字に使用されないインクを回収するガターと、全体の動作を制御する制御部とを備えたインクジェット記録装置であって、帯電電極と偏向電極の間でインク粒子の帯電による電荷量を検出する第1の電荷検出手段と、ガター内に流れるインクの電荷量を検出する第2の電荷検出手段とを有するように構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、位相探索結果の信頼性を高めて、安定した印字品質を確保することができるインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1におけるインクジェット記録装置の経路構成図である。
【
図2】実施例1におけるインクジェット記録装置の構成ブロック図である。
【
図3】実施例1における励振信号と位相探索用帯電電圧の位相関係を示すタイムチャートである。
【
図4】実施例1における正常時とインク粒子化が悪い場合の位相検出データのサンプルを示す図である。
【
図5】実施例1における異常時の位相検出データを示す図である。
【
図6】実施例1における正常時の位相検出とインク粒子飛行速度測定時の検出データを示す図である。
【
図7】実施例1におけるインク粒子飛行速度測定時の検出データを示す図である。
【
図8】実施例1におけるインク圧力調整後のインク粒子飛行速度測定時の検出データを示す図である。
【
図9】実施例1におけるインク粒子化状態検出及びインク粒子化最適化制御フロー図である。
【
図10】実施例2における印字ヘッドの外観斜視図である。
【
図11】実施例2における印字ヘッドの構成図である。
【
図12】
図11におけるセンサA部及びその付近の構成を拡大した図である。
【
図13】
図11におけるセンサB部及びその付近の構成を拡大した図である。
【
図14】実施例3におけるインクジェット記録装置の調圧弁の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本実施例におけるインクジェット記録装置400の全体の経路構成を示す図である。
図1において、インクジェット記録装置400は、本体1と、外部に印字ヘッド2を備え、本体1と印字ヘッド2は導管4にて接続されている。
【0014】
まず、本実施例におけるインクジェット記録装置400のインク供給経路について説明する。
図1において、本体1には、循環するインク7Aを保持する主インク容器18が備えられており、主インク容器18には、主インク容器18内の液体が内部に保持されるのに適正な量である基準液面レベルに達しているか否かを検知する液面センサ46が備えられている。
【0015】
主インク容器18は、主インク容器18内のインク7Aの粘度を把握するために、経路201を介して粘度測定器43に接続されている。粘度測定器43は経路202を介して経路の開閉を行う電磁弁(供給用)34に接続されており、電磁弁(供給用)34は経路203を介してインク7Aを吸引、圧送するために使用されるポンプ(供給用)24に接続されている。そして、ポンプ(供給用)24は経路204を介してインク7A中に混入している異物を除去するフィルタ(供給用)28に接続されている。
【0016】
フィルタ(供給用)28は、経路205を介してポンプ(供給用)24から圧送されたインク7Aを印字するために適正な圧力に調整する調圧弁33に接続されており、調圧弁33は経路206を介してノズルに供給されるインク7Aの圧力を測定する圧力センサ31が備えられている。圧力センサ31は、導管4内を通る経路207を介して印字ヘッド2内に備えられ、必要に応じてノズル8に供給するインク7Aを加温するヒーター44に接続されている。ヒーター44は、経路208を介してノズル8にインク7Aを供給するかどうかを制御するための切替弁42に接続されている。
【0017】
切替弁42は、経路209を介して、インク7Aを吐出する吐出口を備えたノズル8に接続されている。なお、切替弁42は三方型電磁弁であり、切替弁42にはインク供給用の経路208と洗浄用の経路237が接続されており、ノズル8にインクと溶剤の供給を切り替えることができる。ノズル8吐出口の直進方向には、インク粒子7Cに所定の電荷量を付加するための帯電電極11、飛翔するインク粒子7Cの帯電量(電荷量)を非接触の状態で測定するための第1の電荷検出手段(位相センサA)61、印字に使用するインク粒子7Cを偏向させるための偏向電極12、及び、印字に使用されないために帯電、偏向されずに直進的に飛翔するインク粒子7Cを捕捉するためのガター14が配置されている。
【0018】
次に、インク回収経路について説明する。
図1において、ガター14は、経路211を介して回収したインクの帯電量(電荷量)を測定するための第2の電荷検出手段(位相センサB)69に接続されている。第2の電荷検出手段(位相センサB)69は、導管4内を通る経路212を介して本体1内に配置されているインク中に混入している異物を除去するフィルタ(回収用)29と接続されており、フィルタ(回収用)29は、経路213を介して経路の開閉を行う電磁弁(回収用)35に接続されている。
【0019】
電磁弁(回収用)35は、経路214を介してガター14により捕捉されたインク粒子7Cを吸引するポンプ(回収用)25と接続されている。ポンプ(回収用)25は、経路215を介して主インク容器18と接続されている。また、主インク容器18は、排気経路217と接続されていて、排気経路217は本体1外部と連通した構成をとっている。
【0020】
次に、インク補給経路について説明する。
図1において、本体1には、補充用のインクを保持する補助インク容器19が備えられており、補助インク容器19は、経路221を介して経路の開閉を行う電磁弁36に接続されている。そして、電磁弁36は経路222を介して、インク供給経路203と接続された合流経路223に接続されている。
【0021】
次に、インク循環経路について説明する。印字ヘッド2内に備えられたノズル8には、インク供給用の経路209の他に導管4内を通る経路225を介して本体1内に備えられ、流路の開閉を行う電磁弁37に接続されている。電磁弁37は、経路226を介してノズル8からのインクの吸引を行うポンプ(循環用)26に接続されている。そして、ポンプ(循環用)26は、経路227を介して、インク回収経路215に接続された合流経路228に接続された構成となっている。
【0022】
次に、溶剤補給経路について説明する。
図1において、本体1には、溶剤補給用の溶剤を保持する溶剤容器20が備えられており、溶剤容器20は、経路231を介して溶剤を吸引、圧送するために使用されるポンプ(溶剤用)27に接続されている。ポンプ(溶剤用)27は、経路232を介して流路の開閉を行うために電磁弁(溶剤用)38に接続されており、電磁弁(溶剤用)38は、経路233を介して主インク容器18と接続されている。
【0023】
次に、洗浄経路について説明する。
図1において、ポンプ(溶剤用)27は、経路232にある分岐経路235及び経路236を介して、流路の開閉を行うための電磁弁(洗浄用)39に接続されている。そして、電磁弁(洗浄用)39は、経路237を介してノズル8に洗浄のための溶剤を送るかどうかを制御するための切替弁42に接続された構成となっている。
【0024】
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置400の機能構成について説明する。
図2は、本実施例におけるインクジェット記録装置400の機能ブロック図である。
図2において、320は、インクジェット記録装置400全体を制御する制御部であるマイクロプロセッシングユニット(以下、MPUという)である。321はバスラインであり、MPU320のデータ信号、アドレス信号およびコントロール信号を伝送する。322は、MPU320が動作するのに必要な制御用プログラムおよびデータを記憶する読み出し専用のメモリ(ROM)である。323は、MPU320がプログラム実行中に必要となるデータを一時的に記憶する書き換え可能なメモリ(RAM)である。324は、印字内容や設定値等を入力する入力パネル、325は、入力されたデータおよび印字内容等を表示する表示装置であり、この入力パネル324と表示装置325は、液晶表示画面の表面に透明なタッチスイッチを重合したタッチ入力式表示パネルを使用する。
【0025】
インクジェット記録装置400は、主インク容器18と、インク7Aを吐出するノズル8と、主インク容器18とノズル8を接続したインク供給経路201~209とを備える。そして、インク供給ポンプ24によって加圧して供給されるインク7Aをノズル8からインク柱7B状に噴出し、その先端が分離してインク粒子7Cとなる位置を包囲するように帯電電極11を備える。そして、帯電して飛行するインク粒子7Cの中で微少電荷を帯びたインク粒子7Dの帯電量を非接触で測定するための第1の電荷検出手段(位相センサA)61を備えている。
【0026】
更に、インクジェット記録装置400は、帯電して飛行するインク粒子7Cを帯電量に応じて偏向して被印字物(不図示)に差し向けて印字する偏向電界を発生する偏向電極12(
図2は、12Bがグランド電極、12Aがプラス電極である)する。また、印字に使用しなかったインク粒子7Cを捕捉するガター14と、このガター14で捕捉したインク粒子の中で微少電荷を帯びたインク粒子7Dの帯電量に応じた位相検出信号を発生する第2の電荷検出手段(位相センサB)69を備えている。そして、ガター14で捕捉したインク7Eを主インク容器18に回収するインク回収ポンプ25と、ガター14と主インク容器18とを接続したインク回収経路211~215とを備えている。
【0027】
そして、更に、インクジェット記録装置400は、ノズル8から噴射したインク柱7Bからインク粒子7Cに分離するタイミングに規則性をもたせるためにノズル8に内蔵した電歪素子9(不図示)を励振する励振電圧発生回路341を有する。また、印字用帯電信号発生回路352および位相探索用帯電信号発生回路351を有し、それらから出力されるデジタル信号形態の帯電信号をアナログ形態の電圧信号に変換するD/Aコンバータ353と、D/Aコンバータ353から出力されるアナログ信号形態の電圧信号を増幅して帯電電極11に印加する帯電電圧を発生する増幅回路354を有する。なお、印字用帯電信号発生回路352と位相探索用帯電信号発生回路351を設ける構成に替えて、印字用帯電信号発生回路352のみを用いて制御部による帯電量制御によって実現するようにしてもよい。また、インクジェット記録装置400は、偏向電極12に印加する偏向電圧を発生する偏向電圧発生回路342を備える。
【0028】
また、インクジェット記録装置400は、第1の電荷検出手段(位相センサA)61から出力するアナログ信号形態の位相検出信号を増幅する増幅回路363と、増幅された位相検出信号を入力して帯電良否を判定する位相判定回路A361と、増幅された位相検出信号を入力してA/D変換するA/DコンバータA362を備える。
【0029】
更に、インクジェット記録装置400は、第2の電荷検出手段(位相センサB)69から出力するアナログ信号形態の位相検出信号を増幅する増幅回路373と、増幅された位相検出信号を入力して帯電良否を判定する位相判定回路B371と、増幅された位相検出信号を入力してA/D変換するA/DコンバータB372を備える。
【0030】
次に、
図2において、インクジェット記録装置400のインク供給経路201~209には、主インク容器18からノズル8に供給するためのインク7Aのインク粘度を測定するために設置された粘度測定器43と、インク供給ポンプ24から圧送されるインク7Aを印字するにあたって最適なインク圧力に調整するために設置された調圧弁33と、調圧弁33で調整されたノズル8に供給されるインク圧力を確認するための圧力センサ31と、ノズル8から吐出されるインク7Aを印字するにあたって最適なインク温度に加温するためのヒーター44とを備えている。
【0031】
ここで、粘度測定器43は、内部に粘度測定用温度センサ43A(不図示)を備えており、インク7Aの粘度測定結果と、粘度測定時の温度を照らし合わせることで、インク7Aのインク濃度を算出することが可能となっている。粘度測定器43で測定したインク粘度測定結果は、粘度測定回路331及びMPU320で制御されるようになっており、インク粘度が高いと判断された場合は溶剤容器20から溶剤を補給してインク7Aを希釈し、インク粘度が低いと判断された場合はインク7Aを濃縮するようなインク粘度制御を行う。
【0032】
また、圧力センサ31は、圧力測定結果を圧力検出回路334及びMPU320で圧力測定結果を伝達するようになっており、MPU320及び圧力調整制御回路333は、最適な圧力になるように調圧弁33を調整するような指示を出す。その為、ノズル8に供給されるインク7Aのインク圧力は、一定の範囲に制御され、インクジェット記録装置400の印字結果が安定する。
【0033】
そして、印字ヘッド2は、ノズル8付近の温度を把握するために印字環境測定用温度センサ(不図示)を備えており、ヒーター44は、内部に加温制御用温度センサ(不図示)を備えている。そして、ヒーター44は、印字測定用温度センサの温度測定結果及び加温制御用温度センサの温度測定結果から決められた、ヒーター制御回路335の制御指示内容を反映し、インク7Aの加温制御を行う。
【0034】
このように、インクジェット記録装置400は、安定した印字制御を行うために、インク7Aのインク粘度(又はインク濃度)、インク圧力、インク温度を制御するような構成をとっている。
【0035】
このように構成したインクジェット記録装置400におけるMPU320は、バスライン321を介してポンプ駆動回路332を制御してインク供給ポンプ24とインク回収ポンプ25を運転することにより、主インク容器18内のインク7Aを、吸引、加圧してノズル8に供給する。これによりノズル8からインク柱7B状に噴出させ、ガター14で捕捉したインク粒子7Cを外気と共に吸引して主インク容器18に回収する。この主インク容器18では、回収されたインク7Aは容器下部に溜まり、外気は溶剤成分が溶け込んだ状態で気体21となって容器上部を通過して、排気経路217を通過して本体1の外部に排出される。
【0036】
そして、ノズル8から噴出するインク柱7Bは、その先端が分離してインク粒子7Cとなる。インク柱7Bの先端がインク粒子7Cに分離するタイミングは、励振電圧発生回路341によって励振電圧を発生してノズル8の電歪素子を励振してインク柱7Bを振動させることにより、励振電圧に対して所定の位相に規制することができる。
【0037】
インク粒子7Cの帯電量は、インク柱7Bの先端からからインク粒子7Cが分離するときにインク柱7Bが帯電電極11の電位によって帯電している帯電量に比例する。印字用帯電信号発生回路352は、インク柱7Bの先端がインク粒子7Cに分離するときにインク粒子7Cを所定の位置に偏向するために必要な帯電量となるように帯電電極11に帯電電圧を印加するための印字用帯電信号を発生する。
【0038】
印字用帯電信号に基づいて発生した帯電電圧に応じて帯電したインク粒子7Cは、偏向電極12の間を飛行する間に静電偏向されて被印字物(不図示)の目的の位置に付着する。帯電しなかったインク粒子7Cは、直進してガター14に捕捉されて回収される。
【0039】
MPU320は、適正な位相関係のタイミングで印字用帯電電圧を発生するための位相探索を実行する。
【0040】
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置400の位相探索方法について説明する。
図3は、励振信号と位相探索用帯電電圧の位相関係を示すタイムチャートである。
図3において、(a)は、帯電電圧印加タイミングを検出する例として、粒子化の基準となる励振信号であり、(b)は、励振信号の1周期を拡大した図であり、(c)は、励振信号の1周期を8分割し、各位相から始まる半周期分の帯電信号を印加する場合の各位相における帯電波形である。
【0041】
インクジェット記録装置400においては、最適な帯電電圧印加タイミングを検出するために、印字を行なっていない状態(印字と印字のインターバル等)において、粒子化の基準となる励振信号に対し、帯電位相をずらしてガター14を飛び越えない程度の帯電電圧を印加し、各位相での微少な帯電電荷58の電荷量を検出している。つまり、位相探索用帯電電圧を発生して位相探索を行っている。
【0042】
この位相探索のための位相探索用帯電電圧を発生するために、位相探索用帯電信号発生回路351は、励振電圧に対する位相を変えた複数種類の位相探索用帯電電圧を発生するための帯電信号を発生する。この位相探索用帯電電圧は、この帯電電圧で帯電したインク粒子7Dがガター14を飛び越えない(ガター14で捕捉できる)程度の偏向量となるような大きさとし、この帯電電圧で帯電したインク粒子7Dの微少な帯電電荷58の帯電量に応じて第1の電荷検出手段(位相センサA)61から出力される位相検出信号を増幅回路363を介して位相判定回路A361およびA/DコンバータA362に入力する。
【0043】
増幅回路363から出力する位相検出信号の波形は、例えば、
図4の(a)~(c)に示すように変化する。インクジェット記録装置400が正常な状態にあるときには、位相検出信号の波形は、位相探索用帯電電圧の発生位相の変更に伴って
図4(a)に示すように変化する。
【0044】
位相判定回路A361は、このような位相検出信号を入力し、入力した各位相の位相検出信号をスレッショルドレベルと比較して2値化して、スレッシュドレベルを超えたものを「1」、超えないものを「0」と判定して、MPU320に入力する。MPU320は、2値化された位相検出信号が「0」から「1」になった位相をインク粒子7Cを帯電させる帯電電圧発生に最適な位相であると判断し、その位相でその後の印字用帯電電圧を発生するように印字用帯電信号を発生する。
【0045】
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置400の第1の電荷検出手段(位相センサA)61と第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出結果について、
図4~
図7を用いて説明する。
図4は、正常時とインク粒子化が悪い場合の位相検出データのサンプルを示し、
図5は、異常が発生した場合の運転状態での検出結果を示し、
図6は、正常時の位相検出とインク粒子飛行速度測定時の検出データを示す図であり、
図7は、
図6のM部の経過時間のスケールを拡大してインク粒子飛行速度測定時の検出データを示している。
【0046】
図4では、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定するようになっており、
図4(a)では、スレッシュドレベルを超える位相(判定結果:1)が4位相分(3~5位相程度であれば正常な状態と言える)を検出している。このような状態が、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の検出結果であれば、インク粒子7Cのインク粒子形状は良好であり、帯電電極11からの荷電も正常に出来ていると言える。また、第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出結果であれば、インク粒子7Cはガター14により正常に捕捉することが出来ていることが分かる。
【0047】
図4(b)では、スレッショルドレベルを超えているもの(判定結果:1)は1位相だけであり、全体的に検出値が小さくなっている。このような状態が、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の検出結果であれば、インク粒子7Cのインク粒子形状は悪くなっており、帯電電極11からの荷電が正常に出来ていないと言える。また、第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出結果であれば、センサ出力があるのでインク粒子7Cはガター14により正常に捕捉することが出来ていることが分かる。それに加えて、第1の電荷検出手段(位相センサA)61と第2の電荷検出手段(位相センサB)69との結果を照らし合わせることで、より正確にインク粒子7Cのインク粒子化の状態や、帯電電極11での荷電のタイミングを把握することが出来るようになる。
【0048】
図4(c)では、スレッショルドレベルを超えているもの(判定結果:1)は0位相となっており、微小な帯電電荷58を検出できていない状態となっている。このような状態が、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の検出結果であれば、インク粒子7Cが第1の電荷検出手段(位相センサA)61の上部を通過していない(例えば、ノズル8からインク粒子7Cが噴出していない)ような、異常な状態になっている可能性が想定できる。また、第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出結果であれば、インク粒子7Cはガター14により捕捉することが出来ていないことが分かる。
【0049】
次に、異常が発生した場合の運転状態の検出結果の例について、
図5を用いて説明する。
図5では、帯電電極11の帯電タイミングと、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の検出結果と、第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出結果について、それぞれ経過時間(各位相での測定時間ごと)での検出結果を並べて示している。例えば、経過時間が「2」の場合には、帯電電極11の帯電制御時の位相は「3」となっており、第1の電荷検出手段(位相センサA)61のセンサAでの検出結果(判定結果)は「1」となっており、第2の電荷検出手段(位相センサB)69のセンサBでの検出結果(判定結果)も「1」と同じ判定結果となっている。このように、経過時間「1~9」までは、第1の電荷検出手段(位相センサA)61と第2の電荷検出手段(位相センサB)69で同じ判定結果を示しており、2つのセンサで確認することで、位相探索結果の信頼性が高いと言える。
【0050】
次に、
図5において、経過時間「10~12」では、位相センサ第1の電荷検出手段(位相センサA)61のセンサAでの検出結果(判定結果)は「1」となっているが、第2の電荷検出手段(位相センサB)69のセンサBでの検出結果(判定結果)は「0」となり、異なる判定結果となっている。このような場合、第1の電荷検出手段(位相センサA)61は、経過時間「9」以前と同様に正常な検出状態となっていることから、インク粒子化については問題ないことが分かる。つまり、この状態は、インク粒子化は正常だが、インク粒子7Cがガター14で捕捉していないような状態である可能性が高いことを示している。この検出結果を基に、MPU320は、表示装置325に異常状態を示すように指示して、作業者に異常状態を連絡するようにしている。
【0051】
次に、インク粒子飛行速度の測定方法について、
図6~
図7を用いて説明する。
図6では、帯電電極11の帯電タイミングと、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の検出結果と、第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出結果について、それぞれ経過時間(位相毎)での検出結果を並べて示している。ここで、経過時間(位相毎)「1~14」及び「18~32」では、帯電電極11は帯電電極11での荷電のタイミングを把握するために、インク粒子7Cに位相探索用の電荷を加えるために、「帯電制御時の位相」に示した「0~7」の計8位相でタイミングをずらしながら10[V]の電圧をかける。そして、帯電電極11で印加するタイミングによって、インク粒子7Cには異なる電荷が帯電するようになっており、インク粒子7Cにどの程度の電荷を印加することができたかについて第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69で検出することが出来る。そして、第1の電荷検出手段(位相センサA)61で検出した結果を「センサAの出力」、第2の電荷検出手段(位相センサB)69で検出した結果を「センサBの出力」と表示している。
【0052】
図6では、帯電制御時の位相が「4」のタイミングで印加した場合に、最も第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69での検出値が大きく、帯電電極11で帯電させるのに最適なタイミングであると言える。
【0053】
また、本実施例では、インク粒子7Cの飛行速度についても測定することが可能となっており、
図6では経過時間(位相毎)の「15、16、17」の部分で行っていて、この時の帯電制御時の位相を「A、B、C」とした。経過時間(位相毎)の「15」のタイミングでは一旦、帯電電極11での10[V]の印加を停止するようにしており、経過時間(位相毎)の「16」のタイミングでインク粒子7Cに印加するのに最適なタイミング(例えば位相「4」)にて帯電電極11で10[V]を印加する。そして、経過時間(位相毎)の「17」のタイミングでの帯電電極11での印加を停止するようにしている。このように、経過時間(位相毎)の「15、17」で帯電電極11でのインク粒子7Cへの印加を停止することにより、経過時間(位相毎)の「16」での帯電したインク粒子7Cが、第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69で検出する時間の測定精度を高めることを可能にしている。
【0054】
次に、
図7は、
図6の経過時間(位相毎)の「15~17」の部分を四角枠で囲ったM部を、経過時間のスケールを拡大して示しており、帯電電極11の帯電タイミングと、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の検出結果と、第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出結果について、それぞれ経過時間での検出結果を並べて示している。
図7において、例えば、経過時間が「2」のタイミングで、帯電電極11は印字に用いないインク粒子7Dに、偏向電極12の作成する偏向電界によってガター14を飛び出さない程度の電圧である10[V]を印加する。そして、第1の電荷検出手段(位相センサA)61では、経過時間「3」のタイミングで微少電荷を帯びたインク粒子7Dの通過を検出する、そして更に、第2の電荷検出手段(位相センサB)69は、経過時間「9」のタイミングで微少電荷を帯びたインク粒子7Dがガター14に着弾したことを検出したことを示している。
【0055】
そして、帯電電極11でインク粒子7Dを帯電してから第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69で検出するまでの時間を比較してみることとする。そこで、例えば、第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69で電荷を検出しているタイミングで比較してみると、帯電電極11でインク粒子7Dに印加するタイミングは経過時間「2」の時であり、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の検出しているタイミングは経過時間「3」の時となっている為、第1の電荷検出手段(位相センサA)61については、経過時間「1(=3-2)」で検出できていることになる。それに対して、第2の電荷検出手段(位相センサB)69で検出しているタイミングは経過時間「9」の時となっている為、位相センサA69については、帯電電極11でインク粒子7Dを帯電してから、経過時間「7(=9-2)」で検出できることが分かる。
【0056】
つまり、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の検出結果を基に帯電電極11の荷電タイミングを決定するようにすれば、第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出結果を基にする場合と比較して、荷電タイミングを決めるための位相探索時間を約1/7に短縮することが可能となる。つまり、帯電電極11による位相探索用帯電信号を出した時間から、第1の電荷検出手段(位相センサA)61による位相判定までの時間を大幅に短縮することが可能であるため、高速印字などの使用条件では、印字間隔を短くすることが出来るようになるため、大きなメリットとなる。また更に、インク柱7Bからインク粒子7Cへのインク粒子化の状態が変化し易い温度変化時などの場合には、第1の電荷検出手段(位相センサA)61を使用することにより、早期に最適な荷電タイミングを検出することが可能となるため、より安定した印字品質を確保することが出来る。
【0057】
また、第1の電荷検出手段(位相センサA)61と第2の電荷検出手段(位相センサB)69との検出時間の差を確認することで、インク粒子7Dの飛行速度を算出することが可能となる。印字するにあたって最適なインク粒子化形状については、インク粒子7Cの飛行速度からある程度推定することが可能であるため、インク粒子7Cの飛行速度をMPU320にフィードバックし、調圧弁33によるインク圧力制御や、粘度測定器43によるインク粘度制御、ヒーター44による加温制御、励振電圧発生回路341による励振電圧制御、などを実施するような構成にしてもよい。
【0058】
図8は、第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69により、インク粒子7Dの飛行速度算出結果から調圧弁33を調整して、ノズル8に供給しているインクの圧力を調整した後の検出結果を示している。
図8においては、帯電電極11でインク粒子7Dは経過時間「82」のタイミングで印加するようになっており、第1の電荷検出手段(位相センサA)61での検出しているタイミングは経過時間「83」の時、第2の電荷検出手段(位相センサB)69で検出しているタイミングは経過時間「88」の時となっている為、第2の電荷検出手段(位相センサB)69については、帯電電極11でインク粒子7Dを帯電してから、経過時間「6(=88-82)」で検出できることが分かる。このように、第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出結果から、印字品質が良好となる様な条件に、インク圧力を調整(インク圧力制御)する事が可能となる。
【0059】
本実施例のインクジェット記録装置400においては、短時間でのインク圧力変化(例えば、ポンプ(供給用)24の故障によるインク圧力低下)については、
図5を用いて説明したような位相探索信号、又は、圧力センサ31により検出することが可能となる。
【0060】
その為、上記で述べたようなインク粒子7D飛行速度を検出することでのインク圧力調整制御については、長時間での継時的なインク圧力変化(例えば、環境温度が変化することでインク粘度が変化することによる、インク圧力変動)に対応できるようになっていれば良い。そのような、インク粒子7D飛行速度の検出は、印字対象物への印字を行う間、例えば、印字対象物への印字が完了して、次の印字対象物への印字が開始される前までのインターバル、に実施する。
【0061】
次に、本実施例におけるインクジェット記録装置400における位相探索と、帯電異常判定、最適なインク粒子化の制御方法についてのMPU320の制御処理について、
図9を用いて説明する。
図9は、インク粒子化タイミングの位相探索およびインク粒子化不安定状態から対処までの制御フロー図である。
【0062】
図9において、まず、ステップS801は、使用者が入力パネル324を操作して運転開始を指示したことにより、ノズル8から粒子化されたインク7C噴出が開始された状態を示している。
【0063】
ステップS802は、位相探索を行なうための位相探索用電圧を発生するように位相探索信号発生回路351に指示する。
【0064】
ステップS803は、位相探索用電圧を発生しているときに第2の電荷検出手段(位相センサB)69から出力される検出信号をデジタル信号形態に変換した位相検出データをA/DコンバータB372から取得し、A/DコンバータB372から取得した位相検出データを所定の値(スレッショルドレベル)と比較して2値化する。この2値化データは、位相判定回路B371から入力するように構成しても良い。ここで、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定する。
【0065】
ステップS804は、ステップS803で2値化したもので1周期(8位相)のうち「1」と判定されたものの数をカウントし、「1」が1位相以上あるかどうかを確認する。1位相以上ある場合は、「YES」(ガター14にインク粒子7Cが入っている)と判断され、ステップS821へ進む。もし「1」が0位相の場合は、「NO」(ガター14にインク粒子7Cが入っていない)と判断され、ステップS811に進む。
【0066】
ステップS811では、ガター14にインク粒子7Cが入っていないと判断されたため、装置周囲のインク汚れを低減するために、ノズル8からのインク噴出を停止する動作を指示する。
【0067】
ステップS812は、異常発生を表示装置325に表示し、使用者に連絡を行なう。そして、ステップS813は、ノズル8からのインク噴出が停止した状態になっている。インクジェット記録装置400は、作業者により異常状態を修復され、次の動作指示がされるまで、この状態を維持する。
【0068】
次に、ステップS821は、ノズル8から粒子化されたインク7Cが噴出されており、インク粒子7Cがガター14Bから回収されている状態を示している。
【0069】
ステップS822は、位相探索用電圧を発生しているときに第1の電荷検出手段(位相センサA)61から出力される検出信号をデジタル信号形態に変換した位相検出データをA/DコンバータA362から取得し、A/DコンバータA362から取得した位相検出データを所定の値(スレッショルドレベル)と比較して2値化する。この2値化データは、位相判定回路A361から入力するように構成しても良い。ここで、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定する。
【0070】
ステップS823は、ステップS823で2値化したもので1周期(8位相)のうち「1」と判定されたものの数をカウントし、「1」が3位相以上あるかどうかを確認する。3位相以上ある場合は、「YES」(インク粒子化形状が良いため、インク粒子7Cへの帯電状態が良好)と判断され、ステップS831へと進む。もし「1」が2位相以下の場合は、「NO」(インク粒子化形状が悪いため、インク粒子7Cへの帯電状態が悪い)と判断され、ステップS841に進む。
【0071】
ステップS831は、インク粒子7Cについて、正常なインク粒子化及び位相探索が行なわれていると判断されたため、印字可能状態であることを示す。この後、ステップS821に戻り、ステップS821~S831を繰り返すことで経時的な帯電タイミングの変化を監視する。
【0072】
次に、ステップS841は、インク粒子7Cのインク粒子化形状に影響を与える励振電圧を調整して、最適なインク粒子化形状が得られるように励振電圧発生回路341に指示する。
【0073】
ステップS842は、位相探索用電圧を発生しているときに第1の電荷検出手段(位相センサA)61から出力される検出信号をデジタル信号形態に変換した位相検出データをA/DコンバータA362から取得し、A/DコンバータA362から取得した位相検出データを所定の値(スレッショルドレベル)と比較して2値化する。この2値化データは、位相判定回路A361から入力するように構成しても良い。ここで、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定する。
【0074】
ステップS843は、ステップS842で2値化したもので1周期(8位相)のうち「1」と判定されたものの数をカウントし、「1」が3位相以上あるかどうかを確認する。3位相以上ある場合は、「YES」(インク粒子化形状が良いため、インク粒子7Cへの帯電状態が良好)と判断され、ステップS831へと進む。もし「1」が2位相以下の場合は、「NO」(インク粒子化形状が悪いため、インク粒子7Cへの帯電状態が悪い)と判断され、ステップS851に進む。
【0075】
次に、ステップS851は、圧力センサ31と接続された圧力検出回路334からの情報を基に、MPU320にてインク粒子化に必要なインク圧力を推定して、圧力調整制御回路333に指示する。MPU320は、圧力センサ31の情報だけでは無く、粘度測定器43の測定結果や、ヒーター44の制御内容、印字環境測定用温度センサ50A(不図示)、第1の電荷検出手段(位相センサA)61と第2の電荷検出手段(位相センサB)69の微少電荷検出タイミングの差異、等の情報について考慮しても良い。
【0076】
ステップS852は、位相探索用電圧を発生しているときに第1の電荷検出手段(位相センサA)61から出力される検出信号をデジタル信号形態に変換した位相検出データをA/DコンバータA362から取得し、A/DコンバータA362から取得した位相検出データを所定の値(スレッショルドレベル)と比較して2値化する。この2値化データは、位相判定回路A361から入力するように構成しても良い。ここで、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定する。
【0077】
ステップS853は、ステップS852で2値化したもので1周期(8位相)のうち「1」と判定されたものの数をカウントし、「1」が3位相以上あるかどうかを確認する。3位相以上ある場合は、「YES」(インク粒子化形状が良いため、インク粒子7Cへの帯電状態が良好)と判断され、ステップS831へと進む。もし「1」が2位相以下の場合は、「NO」(インク粒子化形状が悪いため、インク粒子7Cへの帯電状態が悪い)と判断され、ステップS861に進む。
【0078】
ステップS861は、インク粒子7Cについて、正常なインク粒子化及び位相探索が行なわれていないと判断されたため、印字不可能な状態であることを作業者に知らせるために、確認メッセージ(又は、警報メッセージ)を表示する。但し、ステップS861については、ノズル8からのインク噴出は正常に行うことが可能であるため、インク噴出については継続した状態となっている。
【0079】
ステップS862は、MPU320からヒーター制御回路335又は粘度測定回路331に制御指示を出すことで、インク粒子7Cを正常なインク粒子化及び位相探査が可能となるように、ヒーター44による加温制御、又はインク粘度制御を実施する。そして、一定時間経過後に、ステップS821に戻り、ステップS822を実施することで、インク粒子7Cについて、正常なインク粒子化及び位相探査が出来ているかの確認を行う。
【0080】
なお、本実施例では、スレッショルドレベルを超えるものを「1」、超えないものを「0」と判定するとした制御フローを説明したが、スレッショルドレベルを超えるものを「0」、超えないものを「1」として定義し、制御しても構わない。
【0081】
以上のように本実施例によれば、帯電電極11と偏向電極12の間に第1の電荷検出手段(位相センサA)61を設けたことで、インク粒子7Cへの帯電タイミングを短い時間で検出することが可能となるため、より早く最適なタイミングでインク粒子7Cを帯電させることが可能となる。また更に、ガター14の2次側に第2の電荷検出手段(位相センサB)69を設置したことで、インク粒子7Cがガター14で捕捉できているかを検出することが可能となる。すなわち、2つの位相センサ(第1の電荷検出手段(位相センサA)61と第2の電荷検出手段(位相センサB)69)を備えたことにより、使用環境が変化した場合でも早期に最適なタイミングでのインク粒子7Cへの帯電制御が可能となり、位相探索結果の信頼性を高めて、安定した印字品質を確保することができ、また、ガター14でのインク粒子7Cの捕捉状態を把握することが可能となるインクジェット記録装置を提供することができる。
【実施例2】
【0082】
図10は、本実施例における印字ヘッドの外観斜視図である。
図10において、(a)は、印字ヘッド2の外観斜視図を示し、(b)は、ヘッドカバー51を外した状態の印字ヘッド2の斜視図である。
【0083】
図10において、印字ヘッド2は、ヘッドベース50と、本体1と印字ヘッド2を接続した導管4と、ヘッドベース50に設置された部品を保護する目的で組み付けられたヘッド裏カバー53と、ヘッドベース50に設置されたヒーター44と切替弁42を保護する目的で組み付けられた保護カバー52と、ノズルベース71と、ガターベース72と、印字に使用するインク粒子が通過するためのスリット51Aを形成して、ノズルベース71を覆うように組み付けられたヘッドカバー51とを備えている。このような、ヘッドカバー51が組み付けられた状態であれば、ノズルベース71とヘッドカバー51で囲われた空間は、メンテナンス時の衝撃等から保護される。このヘッドカバー51で囲われた部品については、日常作業する作業員がメンテナンスする空間となっており、また、ヘッドベース50と保護カバー52で囲まれた内部エリアと、ヘッドベース50とヘッド裏カバー53で囲まれた内部エリアが、いわゆるサービス員がメンテナンスするエリアとなっている。
【0084】
そして、ノズルベース71には、インク柱7Bを吐出するためのノズル8と、ノズル8から吐出されたインクビームを中心として並行かつ対称に配置された帯電電極11と、インクビームと接触しない程度の距離に配置された第1の電荷検出手段(位相センサA)61と、インクビームの飛行方向で帯電電極11の2次側に配置された2枚(グランド電極12B及びプラス電極12A)で1セットの偏向電極12とが備え付けられている。そして更に、ガターベース72には、インクビームの飛行方向で偏向電極12の2次側に配置されており、インクビームと同軸上に印字に使用しないインク粒子7Cを捕捉するための穴を形成したガター14が備え付けられている。また、ノズル8には、耐溶剤性のあるPTFE材で形成された、供給チューブ75と、循環チューブ76が接続されている。
【0085】
次に、
図11~
図13を用いて、本実施例における印字ヘッドの詳細部分について説明する。
図11は、本実施例における印字ヘッド2の構成を示した断面図であり、
図12は、
図11のA部(第1の電荷検出手段(位相センサA)61の周囲)の拡大図を示し、
図13は、
図11のB部(第2の電荷検出手段(位相センサB)69の周囲)の拡大図を示している。
【0086】
図11~
図13において、ノズル8は、ノズルベース71上に形成されたノズル固定部71Aを介して固定され、帯電電極11は、ノズルベース71上に形成された固定部71Bを介して固定され、偏向電極12は、ノズルベース71上に形成された固定部71Cを介して固定される。ノズルベース71上に形成されたノズル固定部71A、帯電電極固定部71B、偏向電極固定部71Cは、ノズルベース71の表面から段差を設けており、電気的に繋がり難くなるように沿面距離をかせぐような構成となっている。
【0087】
そして、ノズルベース71は、円筒状に形成された位相センサA固定部71Dと、位相センサAの挿入作業性及び組み付け時の位置ずれが起こり難いように形成した位相センサ挿入穴部71Fとを備えている。また、ノズルベース71は、位相センサA固定部71Dの先端に位相センサAカバー62が組み付けられており、ノズルベース71に形成された凹部71Eと、位相センサAカバー62に形成された側壁凸部62Aとが勘合することにより、固定される。ここで、ノズルベース71は、耐溶剤性のある樹脂材料である例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)で樹脂成型により作成され、位相センサAカバー62は、絶縁体であって、材料は例えばポリプロピレン(PP)で生成されており、ノズルベース71を金型にインサートした後に液状の樹脂を流し込むいわゆるインサート樹脂成型により作成される。なお、位相センサAとインクビーム(インク粒子7C)の飛行経路とはなるべく近いほうがセンサの感度は上がるので、位相センサAカバー62は、薄いほうが良く薄膜絶縁体であることが望ましい。
【0088】
また、ノズルベース71は、ノズル8や帯電電極11、及び偏向電極12を配置している面とは反対の面と、位相センサA挿入穴部71Fの面について、表面に導電塗装を施している。これにより、第1の電荷検出手段(位相センサA)61は、偏向電極12や帯電電極11が発する電圧によるノイズの影響を低減できる。
【0089】
ノズルベース71の位相センサA挿入穴部71Fには、円柱形状の第1の電荷検出手段(位相センサA)61が組み付けられており、第1の電荷検出手段(位相センサA)61は、スポンジ、ゴム部材、バネ等の弾性部材63と、固定ネジ65によりノズルベース71に組み付けられたセンサA固定部材64により、固定される。
【0090】
次に、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の詳細構成について説明する。第1の電荷検出手段(位相センサA)61は、円柱形状の中心に微少電荷を帯びたインク粒子7Dが通過すると信号を出力する中央導線61Aを形成し、中央導線61Aの外周に絶縁部材61Bを形成し、外周にノイズ除去の目的のための外周導電部材61Cを形成する構成となっている。また更に、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の中央導線61Aは、中央導線61Aで検出した電荷の信号を伝達するための信号線A66に電気的に接続されており、信号線66には、位相センサ基板77に接続するためのコネクタB66Aが組み付けられている。位相センサ基板77は、基板固定部50Bを介してヘッドベース50に組み付けられている。また更に、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の外周導電部材61Cは、電気的に0Vが維持されるようにGND電位に接続されたGND線67が組み付けられており、GND線67には、位相センサ基板77に接続するためのコネクタC67Aが組み付けられている。
【0091】
ここで、第1の電荷検出手段(位相センサA)61は、弾性部材63により位相センサAカバー62に押し付けられように設置されているため、微少電荷を帯びたインク粒子7Dとの距離精度を安定させることを可能にしている。また、第1の電荷検出手段(位相センサA)61は、微少電荷を帯びたインク粒子7Dとの距離を中心軸に対する位置精度については、位相センサA固定部71Dの形状により確保する。これにより、第1の電荷検出手段(位相センサA)61は、微少電荷を帯びたインク粒子7Dとの位置精度を確保し、安定した位相探索を可能にしている。
【0092】
センサA固定部材64には、信号線66を通過させるための電線用穴A64Aと、GND線67を通過させるための電線用穴B64Bを形成している。また、信号線66のコネクタB66A、及びGND線67のコネクタC67Cは、取り外し及び再取り付けが可能な構成となっており、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の組立及び交換作業性の向上を図っている。また更に、位相センサ基板77には、第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69の検出信号を本体1に伝達するために、コネクタA77Aを介してハーネス77Bに接続されている。ハーネス77Bは、導管4の内側を通り本体1の内部に接続されている。
【0093】
次に、ガター14は、例えばステンレス(SUS)材料のパイプを曲げて生成されており、樹脂(例えば材質はポリブチレンテレフタレート(PBT))で生成されたガターベース72にインサート成型により組み付けられて一体構成の部品となっている。ガターベース72は、ヘッドベース50の側壁部50Cに組み付けられており、ガターベース72の内部には、ガター14内部の流路と接続されたガターベース内流路72Aを形成する。ガターベース内流路72Aは、ガター14で捕捉した微少電荷を帯びたインク粒子7Dの電荷を検出するための第2の電荷検出手段(位相センサB)69と接続されており、第2の電荷検出手段(位相センサB)69は、ガターベース72との接続部から外部にインク7Fが漏れていかないように、ガターベース72に形成されたガターベース溝72Bにはめ込まれたOリング73により、シールする。
【0094】
第2の電荷検出手段(位相センサB)69は、回収チューブ74に接続されており、ガター14で捕捉されたインク粒子7C及び7D及び7Eは、ガター14の内壁に着弾すると、図示した回収経路のインク7Fのような状態となり、ポンプ(回収用)25の吸引力を利用して内壁を伝って本体1の方向に向かって第2の電荷検出手段(位相センサB)69の方向に流れていき、更に本体1内の主インク容器18に回収される。なお、第2の電荷検出手段(位相センサB)69は、インク粒子のガター14への着弾位置よりもインクが回収される流れの下流側に設置されている。これにより、比較的にスペースのある部分に第2の電荷検出手段(位相センサB)69を配置できるという利点がある。
【0095】
また、第2の電荷検出手段(位相センサB)69は、耐溶剤性があり且つ導電性がある材料(例えばステンレス(SUS))で作成されており、また、第2の電荷検出手段(位相センサB)69は、微少な帯電電荷58を検出した場合に信号を伝達するために信号線B70に電気的に接続されており、信号線70には、位相センサ基板77に接続するための取り付け及び取り外しが可能なコネクタD70Aが組み付けられている。
【0096】
インクジェット記録装置400に使用されるインク7Aは、インク組成物質として導電材を使用している。ガター14に捕捉された回収経路のインク7Fは、経路内の内壁を伝って第2の電荷検出手段(位相センサB)69まで電気的に繋がった状態となっている。そのため、微少電荷を帯びたインク粒子7Dがガター14の内壁に着弾すると同時に、微少な帯電電荷58は、回収経路のインク7Fに沿って流れて、第2の電荷検出手段(位相センサB)69に到達した後に信号として検出される。
【0097】
本実施例のインクジェット記録装置400では、ノズル8から噴出したインク柱7Bが切断するタイミングで、印字に使用しないインク粒子7Cについて、帯電電極11により微少な帯電電荷58を荷電された微少な電荷を帯びたインク粒子7Dと、無帯電のインク粒子7Eを交互に作成するようにしている。それにより、微少な帯電電荷58の帯電電極11による荷電精度を向上することが可能となり、また更に、帯電電極11にて荷電するタイミングで発生する可能性のある第1の電荷検出手段(位相センサA)61のノイズの影響を低減させることが可能となる。
【0098】
また、本実施例のインクジェット記録装置400では、帯電電極11で荷電したタイミングから、第1の電荷検出手段(位相センサA)61で微少電荷を帯びたインク粒子7Dの電荷を検出するタイミングを把握することが可能となるため、帯電電極11から第1の電荷検出手段(位相センサA)61までの距離(
図11で図示したL1)をもとに、インク粒子7Cの飛行速度を算出することが可能となる。また更に、インクジェット記録装置400では、微少電荷を帯びたインク粒子7Dが、第1の電荷検出手段(位相センサA)61を通過したタイミングと、ガター14の内壁に着弾したタイミングを検出することが可能となるために、第1の電荷検出手段(位相センサA)61からガター14内壁のインク粒子7Cの着弾位置の距離(
図11で図示したL2)をもとに、インク粒子7Cの飛行速度を算出することについても可能となる。
【0099】
インク粒子7Cの飛行速度は、着弾インク粒子の飛行軌跡に影響を与えるため、各条件ごとに決められたインク粒子7Cの飛行速度になるように調整した方が、インクジェット記録装置400の印字品質が良くなる。その為、インクジェット記録装置400は、第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69で算出したインク粒子7Cの飛行速度をもとに、調圧弁33によるインク圧力調整制御、又はヒーター44による加温制御、又はインク粘度制御を実施する。
【0100】
以上のように本実施例によれば、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の取り付け位置精度を向上することにより、第1の電荷検出手段(位相センサA)61の検出精度を向上することが可能となるために、より正確な位相検出結果をフィードバックした位相探索制御を実施することが可能となるインクジェット記録装置を提供することが出来る。
【0101】
また、本実施例によれば、第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69を用いることにより、インク粒子7Cの飛行速度を算出することが可能となるため、その結果を印字制御にフィードバックすることで、環境変化に柔軟に対応することが可能となるインクジェット記録装置を提供することが出来る。
【0102】
また更に、本実施例によれば、インクジェット記録装置400は、位相センサ61の微少電荷を帯びたインク粒子7Dの電荷を検出するにあたって障害となりえるノイズを低減する構成、及び制御を実施することで、より安定した位相探索制御を行うことも可能となる。それにより、印字に用いるインク粒子7Cの電荷を測定し、帯電電荷の状態を監視することも可能となるインクジェット記録装置を提供することが出来る。
【実施例3】
【0103】
図14は、本実施例におけるインクジェット記録装置の調圧弁33の構成を示した図である。
図14において、調圧弁33は、ポンプ(供給用)24によって加圧されたインク7Aが供給される継手(入口)112と、調圧弁33により圧力調整されたインク7Aをノズル8に供給するための継手(出口)113と、内部に圧力調整機構(不図示)を有した調圧ベース111を備えている。継手(入口)112及び継手(出口)113は、耐溶剤性のあるPTFE材で形成された、チューブ(入口)112A及びチューブ(出口)113Aが接続されている。
【0104】
調圧ベース111は、内部に図示しない圧力調整機構106を備えており、圧力調整機構106は、バネ104の圧縮率により圧力を制御する。バネ104の周辺には、圧力調整機構106にバネ圧縮荷重を伝達すための下部バネ座105と、バネ104に荷重を伝達するために上部バネ座103が設置されている。そして、調圧ベース111には、上部バネ座103と、バネ104と、下部バネ座105を囲むように、調圧部ハウジング101が組み付けられている。
【0105】
調圧部ハウジング101は、圧力調整機構111とは反対側に駆動部ハウジング91が備えられており、調圧部ハウジング101の外周に形成れた上部固定部101Aと、駆動部ハウジング91の外周に形成された下部固定部91Dが勘合するようになっており、その部分を固定用ネジ99を用いて固定するように構成されている。
【0106】
次に、駆動部ハウジング91は、バネ104に荷重を伝達するための圧力調整軸96を備えている。圧力調整軸96は、中心軸がずれないように上部バネ座103に荷重を加えられるように細くした先端部96Cを形成しており、先端部96Cは、上部バネ座103に形成され回転軸先端受け部103Aと勘合する。また、圧力調整軸96は、駆動部ハウジング91の内部に圧力調整軸歯車97を備えており、圧力調整軸歯車97は、圧力調整軸96に形成された段差部96Bと歯車固定部材98により挟まれて固定されている。
【0107】
また、調圧弁33は、圧力調整軸96が回転方向に中心軸がぶれないように、圧力調整軸歯車97の上下を、調圧部ハウジング101の下部圧力調整軸通過穴101Bに組み付けられた下部軸受102と、駆動部ハウジング91の上部圧力調整軸通過穴91Cに組み付けられた上部軸受95とを備えている。駆動部ハウジング91は、モーター固定部91Aを介してモーター92が組み付けられており、モーター92は、回転力を伝達するためのモーター回転軸93を備えている。
【0108】
そして、モーター回転軸93は、駆動部ハウジング91のモーター回転軸通過穴91Bを通り駆動部ハウジング91の内部に、駆動用歯車であるモーター歯車94が組み付けられている。モーター歯車94は、圧力調整軸歯車97と勘合するように組み付けられており、調圧弁33は、モーター92を駆動することで圧力調整軸96が軸方向に上下し、バネ104の圧縮率を変化させることで、ノズル8に供給するインク7Aの圧力を調整する。また、圧力調整軸96は、必要以上にバネ104を圧縮してしまわないように、ストッパー部96Aを形成しており、ストッパー部96Aが駆動部ハウジング91」に接触すると、モーター92が回転トルク不足で停止し、インクジェット記録装置400は、警報を表示して作業者に連絡する。
【0109】
ここで、圧力調整軸歯車97は、モーター歯車94に対して、圧力調整軸96の軸方向の歯車部が短くなっており、それにより駆動部ハウジング101を小さくすることを可能にしている。また、圧力調整用歯車97は、モーター歯車94に対して歯車部の直径を大きくしており、それにより細かな圧力調整が可能となっている。
【0110】
以上のように本実施例によれば、第1の電荷検出手段(位相センサA)61及び第2の電荷検出手段(位相センサB)69の位相探索判定結果、又はインク粒子7Cの飛行速度計算結果より、インク圧力を狙いの値に自動で調整することが可能となるインクジェット記録装置を提供することが出来る。
【0111】
また、本実施例によれば、操作表示部で作業者が入力したインク圧力設定値や、インク種類ごとに制御したいインク圧力制御値に自動で調整することが可能となるインクジェット記録装置を提供することが可能となる。
【0112】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0113】
1…本体、2…印字ヘッド、4…導管、7A…インク(主インク容器18内)、7B…インク柱、7C…インク粒子、7D…微少電荷を帯びたインク粒子、7E…無帯電のインク粒子、7F…回収経路のインク、8…ノズル、11…帯電電極、12…偏向電極、14…ガター、18…主インク容器、31…圧力センサ、33…調圧弁、43…粘度測定器、43A…粘度測定用温度センサ、44…ヒーター、61…第1の電荷検出手段(位相センサA)、63…弾性部材、69…第2の電荷検出手段(位相センサB)、92…モーター、93…モーター回転軸、94…モーター歯車、95…上部軸受、96…圧力調整軸、97…圧力調整軸歯車、102…下部軸受、201~209…経路(インク供給用)、211~215…経路(インク回収用)、331…粘度測定回路、332…ポンプ駆動回路、333…圧力調整制御回路、334…圧力検出回路、335…ヒーター制御回路、341…励振電圧発生回路、342…偏向電圧発生回路、351…位相探索用帯電信号発生回路、352…印字用帯電信号発生回路、361…位相判定回路A、371…位相判定回路B、400…インクジェット記録装置