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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ウォータージェット織機の水噴射装置
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/32 20060101AFI20221011BHJP
   F04B 11/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
D03D47/32
F04B11/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018014917
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131921
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】山内 康史
(72)【発明者】
【氏名】辻本 康一
(72)【発明者】
【氏名】服部 浩一
(72)【発明者】
【氏名】角谷 謙治
(72)【発明者】
【氏名】奥田 泰治郎
【合議体】
【審判長】山崎 勝司
【審判官】柳本 幸雄
【審判官】久保 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-163638(JP,A)
【文献】特開2011-157651(JP,A)
【文献】特表昭62-500676(JP,A)
【文献】実開平3-52386(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106835453(CN,A)
【文献】特開2001-20155(JP,A)
【文献】特開平4-173600(JP,A)
【文献】特公昭49-24186(JP,B1)
【文献】特開昭62-282038(JP,A)
【文献】実開昭61-150880(JP,U)
【文献】米国特許第4121626(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D47/32
F04B11/00
F04B9/00
F04B23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射水により緯糸を緯入れする緯入れノズルと、
前記緯入れノズルへ水を圧送する緯入れポンプと、
前記緯入れポンプに吸入される水を貯留する貯水タンクと、
前記貯水タンクから前記緯入れポンプへ吸入される水を通す吸入管と、を備えたウォータージェット織機の水噴射装置において、
前記緯入れポンプと別に設けられ、前記吸入管へ水を供給可能とする補助給水機構を備え、
前記補助給水機構は、前記ウォータージェット織機の運転時に前記吸入管へ常に水を供給することを特徴とするウォータージェット織機の水噴射装置。
【請求項2】
前記補助給水機構は、水道水の供給源と接続されるとともに、前記供給源からの水道水の流通を遮断する開閉弁を備えていることを特徴とする請求項1記載のウォータージェット織機の水噴射装置。
【請求項3】
前記補助給水機構は、前記吸入管へ水を供給する補助給水ポンプを有することを特徴と
する請求項1又は2記載のウォータージェット織機の水噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウォータージェット織機の水噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、防音部材からなるカバー(以下「防音カバー」と表記する)が配置される織機が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。防音カバーは、主に騒音が発生する織機の製織部を密閉するため、織機の運転時における騒音を効果的に低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-279446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された防音カバーは織機の製織部を密閉するので、防音カバーの機台への取り付けや、織機の製織条件の設定といった機台側での調整を行う場合には防音カバーの機台からの取り外し・取り付けを必要とするという問題がある。
ところで、ウォータージェット織機はより一層の高速化が求められており、従来よりも高回転の運転が試みられている。しかしながら、ウォータージェット織機の回転数が高くなると、緯入れポンプの騒音が大きくなるという問題がある。高回転の運転において騒音が大きくなる理由としては、緯入れポンプにおけるキャビテーションの発生である。具体的には、緯入れポンプによる水の吸引時に気泡が発生し、水の吐出時に気泡の消滅時に生じる大きな音が生じる。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、防音カバーを用いることなく製織時の騒音を低減することが可能なウォータージェット織機の水噴射装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、噴射水により緯糸を緯入れする緯入れノズルと、前記緯入れノズルへ水を圧送する緯入れポンプと、前記緯入れポンプに吸入される水を貯留する貯水タンクと、前記貯水タンクから前記緯入れポンプへ吸入される水を通す吸入管と、を備えたウォータージェット織機の水噴射装置において、前記緯入れポンプと別に設けられ、前記吸入管へ水を供給可能とする補助給水機構を備え、前記補助給水機構は、前記ウォータージェット織機の運転時に前記吸入管へ常に水を供給することを特徴とする。
【0007】
本発明では、前記ウォータージェット織機の運転時に前記吸入管へ常に水を供給することにより、キャビテーション発生が一層抑制される。また、従来よりも噴射水の噴射開始のタイミングが早くなるとともに噴射水の噴射時間が従来よりも長くなる。その結果、噴射水の水量が増え、騒音の一層の低減とともに安定した緯糸の飛走を実現できる。
【0009】
また、上記のウォータージェット織機の水噴射装置において、前記補助給水機構は、水道水の供給源と接続されるとともに、前記供給源からの水道水の流通を遮断する開閉弁を備えている構成としてもよい。
この場合、補助給水機構が水道水の供給源と接続されることにより、簡単な構成にて緯入れポンプの水吸引時に吸入管へ水を供給することができる。また、補助給水機構が開閉弁を備えることにより、ウォータージェット織機の停止中に補助給水機構からの水の供給を停止することができる。
【0010】
また、上記のウォータージェット織機の水噴射装置において、前記補助給水機構は、前記吸入管へ水を供給する補助給水ポンプを有する構成としてもよい。
この場合、補助給水機構が有する補助給水ポンプは、吸入管への給水量および水圧を調整することができ、補助給水機構は吸入管へ水を適切に供給することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防音カバーを用いることなく製織時の騒音を低減することが可能なウォータージェット織機の水噴射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係るウォータージェット織機の水噴射装置の概要を示す構成図である。
図2】(a)は第1の実施形態における噴射水の噴射タイミングと水圧との関係を示すグラフ図であり、(b)は、比較例における噴射水の噴射タイミングと水圧との関係を示すグラフ図である。
図3】第2の実施形態に係るウォータージェット織機の水噴射装置の概要を示す構成図である。
図4】第3の実施形態に係るウォータージェット織機の水噴射装置の概要を示す構成図である。
図5】4パターンの電磁弁開閉における騒音の測定結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るウォータージェット織機の水噴射装置(以下「水噴射装置」と表記する)について図面を参照して説明する。
図1に示す水噴射装置10は、噴射水により緯糸Yを緯入れする緯入れノズル11と、緯入れノズル11へ水を圧送する緯入れポンプ12と、緯入れポンプ12に吸入される水を貯留する貯水タンク13と、を備えている。貯水タンク13から緯入れポンプ12へ給水する吸入管14が設けられている。水噴射装置10は、緯入れポンプ12と連結され、緯入れポンプ12を作動させるカム機構15を備えている。
【0014】
緯入れポンプ12は、ウォータージェット織機(以下「織機」と表記する)のフレーム(図示せず)に固定されるポンプハウジング16を備えている。ポンプハウジング16には、水を吸入する吸入口17および圧縮された水を吐出する吐出口18が設けられている。ポンプハウジング16における吸入口17と吐出口18との間には貯水室19が形成されている。吸入口17と貯水室19との間には逆止弁20が設けられ、貯水室19と吐出口18との間には別の逆止弁21が設けられている。従って、吸入口17から吸入された貯水室19の水は吸入口17から吐出されることはなく、吐出口18から吐出される圧縮後の水は貯水室19へ逆流することはない。
【0015】
吸入口17には吸入管14の一端が接続されており、吸入管14の他端は貯水タンク13と連通している。吸入管14は、貯水タンク13から緯入れポンプ12へ給水するための主給水路に相当する。貯水タンク13は、水源(図示せず)と接続される密閉式のタンクである。貯水タンク13内における吸入管14には逆止弁22が設けられている。吐出口18には吐出管23の一端が接続されており、吐出管23の他端は緯入れノズル11と連通している。吐出管23には、緯入れポンプ12から吐出された水の圧力を検出する圧力センサ24が設けられている。圧力センサ24は、ウォータージェット織機の各部を制御する制御装置(図示せず)と接続されている。
【0016】
ポンプハウジング16内には、ポンプハウジング16に対して往復移動可能なプランジャ25が収容されている。プランジャ25はポンプハウジング16の中心に保持されている。プランジャ25が貯水室19から離れる方向をプランジャ25の往動方向とし、プランジャ25が貯水室19に接近する方向をプランジャ25の復動方向とする。つまり、プランジャ25はポンプハウジング16内にて往復移動する。ポンプハウジング16内にはコイルばね26が収容されている。コイルばね26はプランジャ25を復動方向へ付勢する圧縮コイルばねである。
【0017】
プランジャ25の一方の端面は貯水室19に面している。プランジャ25の往復動により貯水室19の容積が変動する。プランジャ25の他方の端面にはプランジャ25と同軸となる連結軸27の一端が連結されている。連結軸27の他端にはカム機構15と連結する連結部28を備えている。
【0018】
次に、カム機構15について説明する。カム機構15は、駆動に同期して一定の角速度により回転するカム29と、カム29の回転により回動されるカムレバー30を備えている。カムレバー30は、L字状に屈曲された形状に形成されており、緯入れポンプ12側に延設され、カムフォロア31が設けられたカム側アーム部32と、カム側アーム部32の延設方向と略直角方向に延設されるリンク側アーム部33を備えている。カムレバー30の中央部には回動支点となる回動軸34が備えられている。カム側アーム部32のカムフォロア31は回転するカム29と接離自在である。リンク側アーム部33には、緯入れポンプ12とカムレバー30を繋ぐリンク部材35が連結されている。
【0019】
リンク部材35は、一方の端部に設けた連結ピン36を介して緯入れポンプ12の連結部28に軸着されている。また、リンク部材35は、他方の端部に設けた連結ピン37を介してリンク側アーム部33と軸着されている。リンク部材35を介して緯入れポンプ12とカム機構15とが連結されている。リンク部材35はカムレバー30および連結部28に対して回動自在である。リンク部材35によりカムレバー30および連結部28が連結されるから、カムレバー30の回動は緯入れポンプ12のプランジャ25の往復動に変換される。
【0020】
図示しない織機のフレームには、緯入れポンプ12に設けたプランジャ25の復動方向における移動範囲を規定するストッパ38が設けられている。ストッパ38は、カムレバー30のリンク側アーム部33の先端部と対向する位置に設けられている。ストッパ38には、カムレバー30と当接可能な調節部材39が備えられている。カムレバー30の回動範囲は、カムレバー30に対する調節部材39の進退量の調節により規定される。従って、プランジャ25の復動方向における移動範囲は、カムレバー30の復動方向における回動範囲の規定により規定される。
【0021】
ところで、本実施形態の水噴射装置10は、吸入管14へ水を供給する補助給水機構40を備えている。補助給水機構40は、補助配水管41および補助配水管41に設けられた開閉弁42を備えている。開閉弁42は手動式の開閉弁である。補助配水管41の一端は吸入管14に接続されており、補助配水管41の他端は、補助配水供給源としての水道水の供給源43と接続されている。補助配水管41の内径は吸入管14の内径の半分に設定されている。水道水の供給源43は、水圧が1.8kg/cmの水道水を補助配水管41に供給可能である。
【0022】
開閉弁42は、水道水の供給源43から補助配水管41への水道水の流通および遮断を可能とする。本実施形態では、開閉弁42はウォータージェット織機の運転中では常に開かれており、補助配水管41を通る水は吸入管14へ供給される。ウォータージェット織機の運転停止中では、開閉弁42が閉じられる。つまり、補助配水管41は、ウォータージェット織機の運転時に水道水の供給源43から吸入管14へ常に水を供給するための補助給水路に相当する。
【0023】
次に、本実施形態に係る水噴射装置10の作用について説明する。ウォータージェット織機の運転に同期してカム29が一定の角速度で回転されると、カムレバー30はカム29、カムフォロア31およびコイルばね26の協働により回動軸34を支点として回動する。カム29の回転によりカムレバー30のリンク側アーム部33が緯入れポンプ12から離れる方向へ回動すると、プランジャ25はコイルばね26の付勢力に抗して移動する往動動作を行なう。
【0024】
プランジャ25の往動動作はコイルばね26を圧縮する。緯入れポンプ12は、プランジャ25の往動動作により貯水タンク13から吸入管14を通じて貯水室19に一定量の水を吸入する。水を吸入するプランジャ25の往動動作の間、吸入口17側の逆止弁20は開いた状態にあり、吐出口18側の逆止弁21は閉じた状態となる。従って、吐出管23の水が貯水室19側へ逆流することはない。なお、コイルばね26の付勢力はプランジャ25の往動動作において増大する。
【0025】
カムフォロア31が、カム29の回動によりカム29の最大径の位置を通過すると、カムフォロア31はカム29から離れる。プランジャ25は圧縮により蓄勢されたコイルばね26の付勢力を受けているので、カムフォロア31がカム29から離れることにより、プランジャ25は、コイルばね26の付勢力により往動動作の開始位置へ移動する復動動作を行なう。
【0026】
プランジャ25は復動動作により貯水室19内の水を加圧する。貯水室19内の水がプランジャ25により加圧されると、吐出口18側の逆止弁21が開き、加圧された貯水室19の水が吐出管23を通じて緯入れノズル11へ圧送される。プランジャ25の復動動作のとき、吸入口17側の逆止弁20は閉じており、貯水室19の水は吸入管14へ逆流することはない。
【0027】
緯入れポンプ12から緯入れノズル11に圧送された水は、緯入れノズル11から噴射され、この噴射水により緯糸Yが経糸開口内に緯入れされる。カム29から離れていたカムフォロア31がカム29に当接するか、カムレバー30がストッパ38に当接することにより1サイクルの水噴射を終了する。図1では、緯入れポンプ12のプランジャ25が往動動作を完了する時点でのカムレバー30の位置を実線により示し、プランジャ25が復動動作を完了する時点でのカムレバー30の位置を二点鎖線により示している。
【0028】
ところで、本実施形態では、ウォータージェット織機の運転中は、開閉弁42が開かれている。このため、水道水の供給源43から水道水が補助配水管41を通り、吸入管14へ供給される。つまり、ウォータージェット織機の運転中に水道水は補助給水機構40によって吸入管14へ常に供給される。
【0029】
図2(a)は、本実施形態のウォータージェット織機における噴射タイミングと吐出される水の水圧との関係を示すグラフである。図2(b)は、補助給水機構40による水道水の供給を行わない比較例に係るグラフである。いずれのグラフも、所定の回転数(1000rpm以上の高回転)により運転されているウォータージェット織機において、所定の緯入れ回数(50ピック、N=50)のそれぞれについて水圧を計測してグラフに示している。騒音の計測は、緯入れポンプ12の近傍(緯入れポンプ12の1m以内の位置)にて10秒間の計測時間により実施し、水圧の計測は、吐出管23に設けた圧力センサ24によって計測している。
【0030】
図2(a)に示すように、補助給水機構40による水道水の供給が行われることにより、噴射開始が比較例と比べて早くなっており、また、噴射終了は比較例よりも遅れている。つまり、本実施形態では、噴射される水量が比較例よりも多い。また、吸引時に貯水室19へ補助給水機構40による水道水の供給が行われるから気泡の発生が抑制される。従って、気泡の発生が抑制されるため、水の吐出時における気泡の消滅も少なくなり、気泡の消滅時に生じる大きな音は低減される。つまり、高回転の運転時の緯入れポンプ12におけるキャビテーション発生が抑制され、騒音が低減される。なお、従来の水噴射装置では約101dBの騒音が生じていたが、本実施形態の水噴射装置10では騒音は約97dBに低減されている。
【0031】
本実施形態では、緯入れポンプ12におけるキャビテーション発生が抑制されるため、図2(a)に示すように比較例と比べて緯入れ時における吐出された水の水圧の変化が安定する。1回目から50回目までの計測によって得られるグラフの形は殆ど変らない。緯入れ時の水圧が安定することにより緯糸の飛走は安定し、製織品質は向上する。因みに、比較例では、緯入れ時に吐出された水の水圧は、キャビテーションの発生によってばらつきが大きくなっている。このため、図2(b)に示すようにそれぞれの回数における測定結果が安定せず、水圧の幅が生じたグラフとなる。このように、ウォータージェット織機が高回転により運転されても、製織時における緯入れポンプ12の騒音が低減されるとともに、安定した緯入れを実現できる。
【0032】
本実施形態に係る水噴射装置10は以下の作用効果を奏する。
(1)少なくとも緯入れポンプ12による水の吸引時に、補助給水機構40が水を吸入管14へ供給することにより、緯入れポンプ12に生じるキャビテーション発生が抑制される。緯入れポンプ12におけるキャビテーション発生の抑制により、噴射水の圧力のばらつきが抑制され、製織時における騒音を従来よりも低減することが可能である。
【0033】
(2)補助給水機構40が、ウォータージェット織機の運転時に給水配管へ常に水を供給することにより、緯入れポンプ12におけるキャビテーション発生が一層抑制される。また、従来よりも噴射水の噴射開始のタイミングが早くなるとともに噴射水の噴射時間が従来よりも長くなる。その結果、噴射水の水量が増え、騒音の一層の低減とともに安定した緯糸の飛走を実現できる。
【0034】
(3)補助給水機構40が水道水の供給源43と接続されることにより、簡単な構成にて吸入管14へ水を供給することができる。また、補助給水機構40が開閉弁42を備えることにより、ウォータージェット織機の停止中に補助給水機構40からの水の供給を停止することができる。これによりウォータージェット織機の停止中に無駄な水の消費を防止することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る水噴射装置について説明する。第2の実施形態は、補助給水機構の構成が第1の実施形態と異なる例である。第2の実施形態では、第1の実施形態と共通の構成については、第1の実施形態の説明を援用して符号を共通して用いる。
【0036】
図3に示すように、ウォータージェット織機の水噴射装置50が備える補助給水機構51は、吸入管14へ水を供給する補助給水ポンプ52を有する。補助給水ポンプ52は、ポンプ駆動用の電動モータ53により駆動される。電動モータ53は制御装置(図示せず)により制御される。本実施形態によれば、補助給水ポンプ52は吸入管14への水道水の給水量および水圧を調整することができ、補助給水機構51は吸入管14へ水を適切に供給することができる。
【0037】
(第3の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る水噴射装置について説明する。第3の実施形態は、補助給水機構の構成が第1の実施形態と異なる例である。第2の実施形態では、第1の実施形態と共通の構成については、第1の実施形態の説明を援用して符号を共通して用いる。
【0038】
図4に示すように、ウォータージェット織機の水噴射装置60が備える補助給水機構61は、電磁弁62を備えている。電磁弁62は制御装置(図示せず)の指令に基づいて制御される。このため、電磁弁62の開閉のタイミングが変更でき、例えば、緯入れポンプ12の作動に合わせた電磁弁62の開閉が可能である。本実施形態では、図5に示すように、電磁弁62の開閉を4つのパターンA、B、C、Dに設定し、これらのパターンA~Dのそれぞれについて騒音を測定した。
【0039】
パターンAは、電磁弁62を常時開として補助給水機構61により常に水道水を吸入管14へ給水するパターンである。パターンBは、電磁弁62を開くタイミングを主軸の1回転における20~250°としてこの期間に補助給水機構61により水道水を吸入管14へ給水するパターンである。パターンCは、電磁弁62を開くタイミングを主軸の1回転における80~250°としてこの期間に補助給水機構61により水道水を吸入管14へ給水するパターンである。パターンDは、電磁弁62を開くことなく補助給水機構61による吸入管14に対して給水されないパターンである。
【0040】
図5に示すようにパターンAでは最も騒音が低減されており、補助給水機構61により常に水道水を吸入管14へ給水するため、騒音低減の効果が最も高い結果が得られており、第1の実施形態の騒音低減の効果と同等である。パターンBでは、パターンAの次に騒音低減の効果が高く、次に、パターンCはパターンBの次に騒音低減の効果が高い。パターンA~Cでは、少なくとも緯入れポンプ12の水吸引時に吸入管14へ水が供給され、噴射水の水量が増える。なお、パターンDでは、第1の実施形態における比較例と同様に騒音低減の効果は得られていない。
【0041】
このように、パターンA~Dの騒音の測定結果によれば、パターンA~Cでは、噴射水の水量が増え、緯入れポンプ12の騒音が低減される。従って、本実施形態のように、電磁弁62の開閉のタイミングを変更することにより、少なくとも緯入れポンプ12の水吸引時に吸入管14へ給水され、緯入れポンプ12の騒音を低減することができる。
【0042】
なお、上記の実施形態は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0043】
○ 上記の実施形態では、補助給水機構により給水管へ供給する水を水道水としたが、補助給水機構により給水管へ供給する水は、水道水に限定されない。水道水以外の水を補助給水機構により給水管へ供給することを妨げない。例えば、第2の実施形態のような補助給水ポンプを貯水タンク13内に配置し、貯水タンク13内の水を吸入管14に供給するようにしてもよい。
○ 上記の第1の実施形態では、補助給水機構40が開閉弁を備え、第3の実施形態では、補助給水機構61が電磁弁62を備えるようにしたが、この限りではない。供給源43の水圧が僅かで流量が少ない場合には、補助給水機構は開閉弁又は電磁弁を備えなくてもよい。この場合、補助給水機構が開閉弁又は電磁弁を備える必要がないので、水噴射装置の製作コストを低減することができる。
○ 上記の実施形態では、1台のウォータージェット織機の水噴射装置に補助給水機構を備えるとしたが、この限りではない。例えば、複数台のウォータージェット織機の水噴射装置を兼用する補助給水機構としてもよい。具体的には、例えば、補助給水管をウォータージェット織機の台数に応じて分岐させ、分岐された補助給水管を各ウォータージェット織機の吸引管と接続すればよい。
【符号の説明】
【0044】
10、50、60 水噴射装置
11 緯入れノズル
12 緯入れポンプ
13 貯水タンク
14 吸入管
15 カム機構
19 貯水室
20、21、22 逆止弁
23 吐出管
24 圧力センサ
40、51、61 補助給水機構
41 補助配水管
42 開閉弁
43 水道水の供給源
52 補助給水ポンプ
53 電動モータ
62 電磁弁
Y 緯糸
図1
図2
図3
図4
図5