(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】災害時バックアップシステム、災害時バックアップ方法
(51)【国際特許分類】
G06F 11/14 20060101AFI20221011BHJP
G06F 16/11 20190101ALI20221011BHJP
G06F 16/178 20190101ALI20221011BHJP
【FI】
G06F11/14 656
G06F16/11
G06F16/178
(21)【出願番号】P 2018071521
(22)【出願日】2018-04-03
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】葉山 馨
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】高平 寛之,災害発生直後における災害リスクとデータ転送時間を考慮したネットワーク制御手法の提案,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会 ,2017年08月31日,第117巻,第205号,pp.67-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/14
G06F 16/11
G06F 16/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサイトに設けられた第1のコンピュータが蓄積するデータを、前記第1のサイトに設けられた第1の転送装置およびバックアップ先である第2のサイトに設けられた第2の転送装置を介して、前記第2のサイトに設けられた第2のコンピュータにバックアップする災害時バックアップシステムであって、
前記第1の転送装置と前記第2の転送装置との間
における前記データのバックアップ時間に関するコストと、災害速報により得られた震度に応じた前記第1の転送装置および前記第2の転送装置それぞれの被災リスク
であって前記データのバックアップ時間の増加および当該増加に伴う本番業務の遅延が生じる前記被災リスクとに基づいて、前記データのバックアップ経路の評価値を算出する第1の処理部と、
前記第1の処理部により算出された前記評価値が最も小さい経路を、前記データのバックアップ経路として選択する第2の処理部と、
を備えることを特徴とする災害時バックアップシステム。
【請求項2】
前記災害時バックアップシステムは、前記第1のサイトと前記第2のサイトとの間の第3のサイトに設けられた第3の転送装置を備え、
前記第1の処理部は、前記第1の転送装置と前記第3の転送装置との間のコストおよび前記第3の転送装置と前記第2の転送装置との間のコストと、前記第1の転送装置、前記第2の転送装置、前記第3の転送装置のそれぞれの被災リスクとに基づいて、前記評価値を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の災害時バックアップシステム。
【請求項3】
第1のサイトに設けられた第1のコンピュータが蓄積するデータを、前記第1のサイトに設けられた第1の転送装置およびバックアップ先である第2のサイトに設けられた第2の転送装置を介して、前記第2のサイトに設けられた第2のコンピュータにバックアップする災害時バックアップシステム
で行われる災害時バックアップ方法であって、
第1のサイトに設けられた第1の転送装置とバックアップ先である第2のサイトに設けられた第2の転送装置との間
における前記データのバックアップ時間に関するコストと、災害速報により得られた震度に応じた前記第1の転送装置および前記第2の転送装置それぞれの被災リスク
であって前記データのバックアップ時間の増加および当該増加に伴う本番業務の遅延が生じる前記被災リスクとに基づいて、第1のサイトに設けられた第1のコンピュータが蓄積するデータのバックアップ経路の評価値を算出し、
前記算出された前記評価値が最も小さい経路を、前記データのバックアップ経路として選択する、
ことを特徴とする災害時バックアップ方法。
【請求項4】
第1の処理部は、前記第1の転送装置と前記第1のサイトと前記第2のサイトとの間の第3のサイトに設けられた第3の転送装置との間のコストおよび前記第3の転送装置と前記第2の転送装置との間のコストと、前記第1の転送装置、前記第2の転送装置、前記第3の転送装置のそれぞれの被災リスクとに基づいて、前記評価値を算出する、
ことを特徴とする請求項
3に記載の災害時バックアップ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害発生時のデータを退避させる災害時バックアップシステム、災害時バックアップ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害発生時のデータを退避させる様々な仕組みが存在する。例えば、特許文献1では、緊急地震速報データを受信する地震情報受信手段と、更新系トランザクションの制御条件を格納した管理サーバと、データベースを更新するアプリケーションサーバ上で起動する制御エージェントとから構成され、管理サーバが、更新系トランザクションの停止条件を定める震度データ等のトランザクション制御条件を格納した制御条件データベースと、地震情報受信手段から緊急地震データを受信したならば、制御条件データベースに格納されたトランザクション制御条件と比較し、地震情報受信手段から受信した緊急地震データが更新系トランザクションの停止条件を満たしていた場合に、制御エージェントに対して、更新系トランザクションの停止を指示する手段と、を備えるディザスタリカバリシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、前述の通り、災害発生時に実質的に被害のない退避先にデータをバックアップする着想が開示されているが、震源地の所在、バックアップ対象のデータが格納されているサイトの所在、バックアップ先となる災対サイトの所在、等の情報を用いてデータ退避先を決定する具体的な処理として、ノード間のコストやノードが設置されている場所の被災リスクを考慮して退避先を決定することについては開示されていない。
【0005】
本発明は、ノード間のコストやノードが設置されている場所の被災リスクを考慮して退避先を決定することが可能な災害時バックアップシステム、災害時バックアップ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる災害時バックアップシステムは、第1のサイトに設けられた第1のコンピュータが蓄積するデータを、前記第1のサイトに設けられた第1の転送装置およびバックアップ先である第2のサイトに設けられた第2の転送装置を介して、前記第2のサイトに設けられた第2のコンピュータにバックアップする災害時バックアップシステムであって、前記第1の転送装置と前記第2の転送装置との間のコストと、災害速報により得られた震度に応じた前記第1の転送装置および前記第2の転送装置それぞれの被災リスクとに基づいて、前記データのバックアップ経路の評価値を算出する第1の処理部と、前記第1の処理部により算出された前記評価値が最も小さい経路を、前記データのバックアップ経路として選択する第2の処理部と、を備えることを特徴とする災害時バックアップシステムとして構成される。
【0007】
また、本発明は、上記災害時バックアップシステムで行われる災害時バックアップ方法としても把握される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノード間のコストやノードが設置されている場所の被災リスクを考慮して退避先を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】災害時バックアップシステムの構成例を示す図。
【
図2】対象データを本番サイトから災対サイトにバックアップする流れを示す図。
【
図7】ノードリスク情報のデータテーブルを示す図。
【
図9】震度毎リスク情報のデータテーブルを示す図。
【
図10】リンクコスト情報のデータテーブルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施例を、図面を用いて詳細に説明する。なお、実施例の説明の中で「本番サイト」は「バックアップ対象となる対象データが格納されているサイト」を意味するものとし、「災対サイト」は「バックアップ先となり得る災害対策サイト」を意味するものとする。
【実施例1】
【0011】
図1は、日本国内における本番サイトと災対サイトとを有した災害時バックアップシステムの構成例を示す図である。
図1に示すように、災害時バックアップシステム1では、本番サイト101が関東地方に、災対サイト102が東北地方に、災対サイト103が北海道に、災対サイト104が中国地方にそれぞれ配置され、これらがネットワークを介して接続されている。
【0012】
本番サイト101は、災対サイト102、災対サイト103、災対サイト104と、それぞれネットワークN1、N2、N3を介して直接接続されている。また、本システムでは、災対サイト102と災対サイト103とがネットワークN4を介して接続され、本番サイト101から災対サイト103に至る経路は2通り設けられている。すなわち、本番サイト101から災対サイト103に直接、本番サイト101に蓄積されている対象データをバックアップする経路(N2)と、本番サイト101から災対サイト102を経由して、災対サイト103に上記対象データをバックアップする経路(N1、N4)とが設けられている。
【0013】
図2は、対象データを本番サイトから災対サイトにバックアップする流れを示す図である。
図2では、本番サイト101から対象データが転送装置202及び転送装置203を経由して災対サイト103にバックアップすることが示されている。
【0014】
転送装置202は、本番サイトの中に配置されたノードであり、データ転送の機能を持つ装置である。転送装置203は、災対サイトの中に配置されたノードであり、データ転送の機能を持つ装置である。具体的には、本番サイト101に設けられた本番装置1011が、蓄積した対象データを本番サイト101内に設けられた転送装置202に送信し、さらに、転送装置202が、上記対象データを災対サイト103に設けられた転送装置203に送信し、転送装置203が、災対サイト103に設けられた災対装置1031に上記対象データを送信し、災対装置1031が、上記対象データを蓄積することで、対象データをバックアップする。本番装置1011、災対装置1031は、例えば、サーバやホストコンピュータといった情報処理装置、ストレージ装置等の記憶装置を備えている。
【0015】
図3は、本番サイトの構成を示す図である。
図3に示すように、本番サイト101は、本番装置1011として、実行制御サーバ302と、実行制御ストレージ303と、システム管理サーバ308と、業務サーバ309と、外部ストレージ310と、を有している。
【0016】
実行制御サーバ302は、本システムの処理を実行するサーバである。当該サーバが行う処理については、フローチャートを用いて後述する。
【0017】
実行制御ストレージ303は、震度毎に設定したリスク値を格納する重み付けデータベース304と、緊急地震速報を格納する速報記録データベース305と、経路情報を格納する経路情報記録データベース306と、を含んで構成される。それぞれのデータベースの内容については
図7、
図8、
図9、
図10で後述する。
【0018】
システム管理サーバ307は、業務サーバ308および外部ストレージ310を管理するサーバである。例えば、システム管理サーバ307は、業務サーバ308が実行する業務処理の実行スケジュールや進捗状況を管理する。また、例えば、システム管理サーバ307は、外部ストレージ310を監視し、その容量や使用量、残容量を管理する。
【0019】
業務サーバ308は、本番サイト101において行われている業務に関する業務処理を実行するサーバである。業務サーバ308は、システム管理サーバ307からの指示に従って、上記業務処理を実行し、その実行状況や実行結果をシステム管理サーバ307に通知する。
【0020】
外部ストレージ309は、対象データを格納する業務データベース310を含んで構成される。業務データベース310は、システム管理サーバ307および業務サーバ308と相互に接続されており、業務サーバが利用するデータを記憶している。本実施例では、対象データが外部ストレージ309に記憶されている前提で説明しているが、これ以外の他のサーバやストレージに記憶されているデータを対象データとしてもよい。
【0021】
本番サイト101では、気象観測や気象業務を行うサイトの一例である気象庁301から災害情報を受信した場合に、実行制御サーバ302を用いて所定のアルゴリズムに基づき災対サイトが決定される。災対サイト決定処理の詳細は
図5および
図6で後述する。本番サイト101は、係る処理にて決定された災対サイトに対し、ネットワーク311(例えば、
図1で示したネットワークN2、あるいはネットワークN1、N4)を介してバックアップを開始する。
【0022】
なお、本実施例では、災害として地震が起きた場合を想定しているため、気象庁301から災害情報を受信する例を示しているが、これに限られるものではない。例えば、防衛省からのアラートを契機として同様の処理を行ってもよい。
【0023】
図4は、災対サイトの構成を示す図である。
以下では、
図1に示した災対サイト103を例に説明する。
図4に示すように、災対サイト103は、システム管理サーバ401と、業務サーバ402と、外部ストレージ404と、を有している。
【0024】
システム管理サーバ401は、業務サーバ402および外部ストレージ404を管理するサーバである。例えば、システム管理サーバ401は、業務サーバ402が実行する業務処理の実行スケジュールや進捗状況を管理する。また、例えば、システム管理サーバ401は、外部ストレージ403を監視し、その容量や使用量、残容量を管理する。
【0025】
業務サーバ402は、災対サイト103において行われている業務に関する業務処理を実行するサーバである。業務サーバ402は、システム管理サーバ401からの指示に従って、上記業務処理を実行し、その実行状況や実行結果をシステム管理サーバ401に通知する。
【0026】
外部ストレージ404は、対象データを格納する業務データベース403を含んで構成される。業務データベース403は、システム管理サーバ401および業務サーバ402と相互に接続されており、業務サーバが利用するデータを記憶している。本実施例では、対象データが外部ストレージ309に記憶されている前提で説明しているが、これ以外の他のサーバやストレージに記憶されているデータを対象データとしてもよい。災対サイト103は、本番サイト101から、ネットワーク311およびネットワーク405(例えば、
図1で示したネットワークN2、あるいはネットワークN1、N4)を介して送られてきた業務データベース310のデータを業務データベース403に格納する。
【0027】
図5は、実行制御サーバ302が実行する災対サイト決定処理の処理フローを示す図である。
S501は、本番サイト101の実行制御サーバ302が、気象庁301から災害情報を受信したときに、災対サイト決定処理を開始する処理である。
S502は、実行制御サーバ302が、S501で受信した災害情報が地震速報であるかを判定する処理である。実行制御サーバ302は、上記受信した災害情報が地震速報であると判定した場合にはS503に進み(S502;Yes)、そうでない場合にはS508に進む(S502;No)。
【0028】
なお、上記地震速報は、例えば、緊急地震速報であり、最大震度が5弱以上と予想された場合に、震度4以上が予想される地域を対象にした警報である。当該警報には、少なくとも、強い揺れが予想されている旨やその予想時刻と、強い揺れをあらわす震度と、当該揺れが予想されている地域とを含んでいる。
【0029】
S503は、実行制御サーバ302が、上記地震速報から所定の情報を抽出して速報記録データベース306に格納する処理である。速報記録データベース306のレイアウトについては省略するが、少なくとも、上記地震速報と、当該地震速報を受信した日時とを対応付けたレコードが、上記地震速報が受信される都度、時系列に蓄積されている。
【0030】
S504は、実行制御サーバ302が、被災対象地域に対するバックアップ時のリスクを反映するリスク反映処理である。S504の詳細は、
図6で後述する。ここで言うリスクとは、本番サイトから災対サイトまでの経路でバックアップしたときの危険度を、震度の大きさに応じて数値化した値であり、有事の際に全国各地の転送装置に対して付与することで、S505で後述するダイクストラ法により最適な経路選択を実現することができる。リスクとしては、例えば、物理的にネットワークが遮断される可能性、震災に伴って通信が集中することによるバックアップ時間の増加、バックアップ時間の増加に伴う本番業務の遅延等がある。
【0031】
S505は、実行制御サーバ302が、ダイクストラ法により最適な経路と災対サイトを決定する処理である。一般的に、ダイクストラ法では転送装置間のコストを入力値として、最もコストの低い経路を選択、決定するが、ここでは前述のリスクをコストに加算する。例えば、実行制御サーバ302は、ノード間コスト情報テーブル1000(
図10)を参照し、経路1(
図1に示したネットワークN1、N4)のコスト「5」(3+2)を算出する。データのバックアップのためにかかるコストとしては、例えば、バックアップするデータ量、バックアップに伴う通信回線負荷、データのバックアップ時間等がある。
【0032】
さらに、実行制御サーバ302は、上記経路1は3つの転送装置SW1、SW2、SW4を経由するため、S504で算出したリスクの値を加算した値のリスクを、上記コストに加算する。例えば、札幌で震度5強の地震が発生し、仙台では震度3、東京では震度0が予想された場合、実行制御サーバ302は、東京にある転送装置SW1のリスク「0」、仙台にある転送装置SW2のリスク「1」、札幌にある転送装置SW4のリスク「4」を加算した合計値5を算出し、上記コスト5に加算する。そのため、この経路で対象データをバックアップしたときの総コストである評価値は10となる。実行制御サーバ302は、同様に全ての経路について、コストに対してリスクを加算した上記評価値を算出し、その値である結果を経路情報テーブル800(
図8)に記録する。
【0033】
S506は、実行制御サーバ302が、決定した経路を保存する処理である。実行制御サーバ302は、各経路のコストの中で、算出された評価値が最も小さい経路を、最適なバックアップ経路として保存する。
S507は、実行制御サーバ302が、決定された経路で対象データのバックアップを実行する処理である。
S508は、実行制御サーバ302が、災対サイト決定処理を終了する処理である。
【0034】
図6は、
図5に示したリスク反映処理の処理フローを示す図であり、S504の詳細を示す図である。
S601は、実行制御サーバ302が、上記地震速報に含まれる揺れが予想されている地域である被災地域名をキーとして、被災時リスク反映テーブル700(
図7)にアクセスし、転送装置の設置場所が被災地域に含まれるかどうか検索をかける処理である。
S602は、実行制御サーバ302が、S601を行った結果、転送装置の設置場所が被災地域に含まれるか否か判定する処理である。被災地域に含まれる場合はS603に進み、そうでない場合にはS606に進む。
【0035】
例えば、上記被災地が「札幌」であれば、実行制御サーバ302は、S601において、被災時リスク反映テーブル700(
図7)を参照し、転送装置の設置場所が「札幌」として記憶されているレコードを検索して当該レコードを検索定する(S601)。さらに、実行制御サーバ302は、当該レコードとして、上記被災地「札幌」に対応付けて記憶されている転送装置のノード名「SW4」を読み取ることができたか否かを判定する。
【0036】
S603は、実行制御サーバ302が、重み付けデータベース304に含まれる重み付けテーブルを呼び出す処理である。例えば、実行制御サーバ302は、上記地震速報に含まれる震度をキーにして、重み付けテーブル900(
図9)にアクセスし、当該震度に対応するリスク(例えば、4)を読み取る。重み付けテーブルについては
図9で後述する。
【0037】
S604は、実行制御サーバ302が、震災時リスク反映テーブル(
図7)を呼び出し、気象庁301から受信した災害情報に含まれる震度に基づいて、震災時リスク反映テーブルにリスクを追加する。例えば、震度5強の地震が札幌で発生した場合、実行制御サーバ302は、重み付けテーブル900(
図9)を参照し、当該震度「5強」に対応する列902から値「4」を読み出し、読み出した値「4」を、被災時リスク反映テーブル700(
図7)に含まれる列703に記録する。この処理を、すべての転送装置について実行することにより、被災地域に設置された転送装置の被災リスクを考慮したバックアップが可能となる。
S605は、実行制御サーバ302が、前述のS604で反映した結果を保存する処理である。
S606は、実行制御サーバ302が、被災対象地域へのコスト反映処理を終了する処理である。
【0038】
図7は、被災時リスク反映テーブル700のデータテーブルを示す図である。被災時リスク反映テーブル700は、
図3の経路情報記録データベース306に格納されるテーブルであり、
図6のリスク加算処理に使用されるテーブルである。
【0039】
図7に示すように、被災時リスク反映テーブル700は、転送装置のノード名を示す列701と、各転送装置が設置される設置場所を示す列702と、リスクを反映した値を示す列703と、を含んで構成される。例えば、
図7では、ノード名「SW3」で識別される転送装置が札幌に設置されており、震度5強の地震が札幌で発生したため、重み付けテーブル900を参照して、そのリスクが「4」となったことを示している。
【0040】
図8は、経路情報テーブル800のデータテーブルを示す図である。経路情報テーブル800は、
図3の経路情報記録データベース306に格納されるテーブルであり、
図6のリスク加算処理に使用されるテーブルである。
【0041】
図8に示すように、経路情報テーブル800は、経路名を示す列801と、各経路上の1つ目のネットワークであるリンクを示す列802と、各経路上の2つ目のネットワークであるリンクを示す列803と、各経路上の3つ目のネットワークであるリンクを示す列804と、各経路上のn個目のネットワークであるリンクを示す列805と、各リンクのコスト(すなわち当該リンクを構成する転送装置間のコスト)の合計値にリスクの合計値を足した値(コスト+リスク)である評価値を示す列806と、各経路の目的地(災対サイト)の場所を示す列807と、を含んで構成される。例えば、
図8では、経路名「経路1」で識別される経路は、災対サイトの場所が札幌であり、リンク1、リンク2を途中経路に含んでおり、その値(コスト+リスク)が「10」であることを示している。
【0042】
図9は、重み付けテーブル900のデータテーブルを示す図である。重み付けテーブル900は、
図3の重み付けデータベース304に格納されるテーブルであり、
図6のリスク加算処理に使用されるテーブルである。
【0043】
図9に示すように、重み付けテーブル900は、震度を示す列901と、当該震度に対応するリスクを示す列902と、を含んで構成される。例えば、
図9では、震度「7」の場合は、リスクが「6」であることを示している。
【0044】
図10は、ノード間コスト情報テーブル1000のデータテーブルを示す図である。ノード間コスト情報テーブル1000は、
図3の経路情報記録データベース306に格納されるテーブルであり、
図5のダイクストラ法による経路決定に使用されるテーブルである。
【0045】
図10に示すように、ノード間コスト情報テーブル1000は、リンク名を示す列1001と、当該リンクを構成する転送元の転送装置である転送元SWを示す列1002と、当該リンクを構成する転送先の転送装置である転送先SWを示す列1003と、当該リンクのコストを示す列804と、を含んで構成される。例えば、
図10では、リンク1は転送元SWがSW1であり、転送先SWがSW2であり、その値(コスト)が「3」であることを示している。
【0046】
このように、本実施例では、第1のサイトである本番サイト101に設けられた第1のコンピュータ(例えば、外部ストレージ309)が蓄積するデータ(例えば、本番業務データベース310のデータ)を、上記第1のサイトに設けられた第1の転送装置(例えば、転送装置202)およびバックアップ先である第2のサイトである災対サイト(例えば災対サイト103)に設けられた第2の転送装置(例えば、転送装置203)を介して、上記第2のサイトに設けられた第2のコンピュータ(例えば、外部ストレージ404)にバックアップする災害時バックアップシステム1において、上記第1の転送装置と上記第2の転送装置との間のコスト(
図10参照)と、災害速報(例えば、地震速報)により得られた震度に応じた上記第1の転送装置および上記第2の転送装置それぞれの被災リスク(
図9参照)とに基づいて、上記データのバックアップ経路の評価値(
図8参照)を算出する第1の処理部を有した実行制御サーバ302と、上記第1の処理部により算出された上記評価値が最も小さい経路を、上記データのバックアップ経路として選択する第2の処理部を有した実行制御サーバ302と、を備えている。
【0047】
したがって、災害発生時に、震源地の所在、バックアップ対象のデータが格納されているサイトの所在や当該サイトに設置された転送装置の所在、バックアップ先となる災対サイトの所在や当該サイトに設置された転送装置の所在等の情報に基づき、震災に伴うリスクの影響が最も少ない経路で最適なデータ退避先を決定することが可能となる。
【0048】
また、上記災害時バックアップシステム1は、上記第1のサイトと上記第2のサイトとの間の第3のサイトに設けられた第3の転送装置を備え、
上記第1の処理部は、上記第1の転送装置と上記第3の転送装置との間のコストおよび上記第3の転送装置と上記第2の転送装置との間のコストと、上記第1の転送装置、上記第2の転送装置、上記第3の転送装置のそれぞれの被災リスクとに基づいて、上記評価値を算出するので、上記経路の途中で災対サイトを経由する場合には、経由する災対サイトの所在や当該サイトに設置された転送装置の所在を考慮した総合的な評価に基づいて、上記データ退避先を決定することができる。
【符号の説明】
【0049】
101: 本番サイト
102: 災対サイト1
103: 災対サイト2
104: 災対サイト3
202: 転送装置(ノード名:SW1)
203: 転送装置(ノード名:SW2)
301: 気象庁
302: 実行制御サーバ
303: 実行制御ストレージ
304: 重み付けデータベース
305: 速報記録データベース
306: 経路情報記録データベース
308: システム管理サーバ
309: 業務サーバ
310: 外部ストレージ
311: 業務データベース
312: ネットワーク
401: システム管理サーバ(災対)
402: 業務サーバ(災対)
403: 業務データベース(災対)
404: 外部ストレージ(災対)
405: ネットワーク(災対)
700: 被災時リスク反映テーブル
800: 経路情報テーブル
900: 重み付けテーブル
1000: ノード間コスト情報テーブル