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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】目地構造、及び、目地構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20221011BHJP
   E01C 11/02 20060101ALI20221011BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
E04B1/684 Z
E01C11/02 C
E04F13/08 Y
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018083846
(22)【出願日】2018-04-25
(65)【公開番号】P2019190126
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】奥田 章子
(72)【発明者】
【氏名】三谷 一房
(72)【発明者】
【氏名】古城 雄一
(72)【発明者】
【氏名】堀居 令奈
(72)【発明者】
【氏名】倉田 綾香
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠治
(72)【発明者】
【氏名】堀 長生
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-138606(JP,U)
【文献】国際公開第2012/041331(WO,A1)
【文献】特開平07-048879(JP,A)
【文献】特開平07-034557(JP,A)
【文献】特開2006-002421(JP,A)
【文献】実開昭59-188210(JP,U)
【文献】特開2008-095100(JP,A)
【文献】実開平05-024770(JP,U)
【文献】特開2014-074293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E01C 11/02
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと水との水和反応物として固結されている第1部材と、セメントと水との水和反応物として固結されている第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間の目地空間と、を備える目地構造であって、
前記第1部材である前記水和反応物の内部に固着されて埋設されている第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出している第1延出部とを有する第1シート部材と、
前記第2部材である前記水和反応物の内部に固着されて埋設されている第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出している第2延出部とを有する第2シート部材と、を備え、
前記第1シート部材の前記第1延出部と前記第2シート部材の前記第2延出部とが接触している、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項2】
請求項1に記載の目地構造であって、
前記第1シート部材及び前記第2シート部材は樹脂製のシートであり、
前記第1延出部と前記第2延出部は溶着剤によって溶着されている、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の目地構造であって、
前記第1部材及び前記第2部材は、室内と屋外との間に配置されており、
前記第1延出部及び前記第2延出部は、それぞれ、室内側に向けて折り曲げられている、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の目地構造であって、
前記第1埋設部には、前記第1シート部材を前記第1部材に係止させるための係止部が設けられている
ことを特徴とする目地構造。
【請求項5】
請求項4に記載の目地構造であって、
前記係止部は、前記第1シート部材の厚さ方向に貫通する穴である、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項6】
型枠にシート部材を一端が前記型枠の内部に位置し、他端が前記型枠の外部に位置するように配置する工程と、
水和反応によって固結するセメント系組成物を前記型枠に打ち込む工程と、
前記セメント系組成物が固結した後、前記型枠を脱型する脱型工程と、
有する目地構造用部材の製造方法で作製された第1部材及び第2部材を、目地空間が形成されるように、且つ、前記第1部材の第1シート部材の前記他端側の第1延出部と、前記第2部材の第2シート部材の前記他端側の第2延出部が前記目地空間に延出するように配置し、
前記第1シート部材の前記第1延出部と、第2シート部材の前記第2延出部とを接触させる、
ことを特徴とする目地構造の施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の目地構造の施工方法であって、
前記第1シート部材及び前記第2シート部材は樹脂製のシートであり、
前記第1延出部と前記第2延出部を溶着剤によって溶着する、
ことを特徴とする目地構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地構造、目地構造用部材の製造方法、及び、目地構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、外壁材や内装材の目地部分に防水性能が必要な場合、目地部分に不定形のシーリング材を充填し、止水性を持たせている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-73462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シーリング材は、基材のコンクリート等が乾燥するまで所定の養生期間を取ってから施工する必要があった。また、シーリング材が硬化するまで、防水機能が完全に発現しなかった。さらに、シーリング材に塗装を行う場合も養生期間が必要であった。加えて、シーリング工事において外足場が必要になる場合があった。このように、施工に手間がかかるとともに、工期短縮が困難であった。
【0005】
また、シーリング目地における漏水の原因として、シーリング材の被着体(壁やボードなど)からの界面剥離が挙げられる。特に、ワーキングジョイントでは、目地の伸縮に伴う動きによって、シーリング材の被着体界面に負荷がかかり、経年的にシーリング材が硬くなることも加わり、界面剥離してしまうおそれがあった。このように、防水機能の信頼性が悪化するおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、施工の簡易化、工期短縮、及び、防水機能の信頼性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明の目地構造は、 セメントと水との水和反応物として固結されている第1部材と、セメントと水との水和反応物として固結されている第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間の目地空間と、を備える目地構造であって、
前記第1部材である前記水和反応物の内部に固着されて埋設されている第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出している第1延出部とを有する第1シート部材と、
前記第2部材である前記水和反応物の内部に固着されて埋設されている第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出している第2延出部とを有する第2シート部材と、を備え、
前記第1シート部材の前記第1延出部と前記第2シート部材の前記第2延出部とが接触している、
ことを特徴とする目地構造。
このような目地構造によれば、養生期間を低減でき、また施工に手間がかからないよう
にできる。よって、施工の簡易化、及び、工期短縮を図ることができる。また、目地の耐久性を向上でき、防水機能の信頼性の向上を図ることができる。
【0008】
かかる目地構造であって、前記第1シート部材及び前記第2シート部材は樹脂製のシートであり、前記第1延出部と前記第2延出部は溶着剤によって溶着されていることが望ましい。
このような目地構造によれば、簡易に且つ確実に接合することができる。
【0009】
かかる目地構造であって、前記第1部材及び前記第2部材は、室内と屋外との間に配置されており、前記第1延出部及び前記第2延出部は、それぞれ、室内側に向けて折り曲げられていることが望ましい。
このような目地構造によれば、外部から見た時の意匠性の向上を図ることができる。
【0011】
かかる目地構造であって、前記第1埋設部には、前記第1シート部材を前記第1部材に係止させるための係止部が設けられていることが望ましい。
このような目地構造によれば、アンカー効果を得ることができる。
【0012】
かかる目地構造であって、前記係止部は、前記第1シート部材の厚さ方向に貫通する穴であることが望ましい。
このような目地構造によれば、安価に形成できる。
【0014】
また、かかる目的を達成するため、本発明の目地構造の施工方法は、
型枠にシート部材を一端が前記型枠の内部に位置し、他端が前記型枠の外部に位置するように配置する工程と、水和反応によって固結するセメント系組成物を前記型枠に打ち込む工程と、前記セメント系組成物が固結した後、前記型枠を脱型する脱型工程と、を有する目地構造用部材の製造方法で作製された第1部材及び第2部材を、目地空間が形成されるように、且つ、前記第1部材の第1シート部材の前記他端側の第1延出部と、前記第2部材の第2シート部材の前記他端側の第2延出部が前記目地空間に延出するように配置し、
前記第1シート部材の前記第1延出部と、第2シート部材の前記第2延出部とを接触させる、
ことを特徴とする目地構造の施工方法。
このような目地構造の施工方法によれば、施工の簡易化、及び、工期短縮を図ることができる。
【0015】
かかる目地構造の施工方法であって、前記第1シート部材及び前記第2シート部材は樹脂製のシートであり、前記第1延出部と前記第2延出部を溶着剤によって溶着する、ことが望ましい。
このような目地構造の施工方法によれば、簡易に且つ確実に接合することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施工の簡易化、工期短縮、及び、防水機能の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1Aは、第1実施形態の目地構造の斜視図であり、図1Bは、図1Aを上から見た図である。
図2】コンクリート部材10の製造方法を示すフロー図である。
図3図3A図3Dは、コンクリート部材10の製造の様子を示す概略図である。
図4】第1シート部材12と第2シート部材22の溶着方法を示す概略図である。
図5図5A図5Cは、第2実施形態の目地構造の説明図である。図5Aは斜視図、図5B図5Aを上から見た図、図5Cは、変形例を示す図である。
図6図6A図6Cは、第3実施形態の目地構造の説明図である。図6Aは正面図、図6B図6AのA-A断面図、図6Cは変形例を示す図である。
図7図7A及び図7Bは、第4実施形態の目地構造の説明図である。図7Aは正面図、図7B図7AのA-A断面図である。
図8図8Aは、第1変形例のシート部材12´を示す概略斜視図であり、図8Bは、シート部材12´をコンクリート部材に配置した状態を示す断面図である。
図9図9Aは、第2変形例のシート部材12″を示す概略斜視図であり、図9Bは、シート部材12″をコンクリート部材に配置した状態を示す断面図である。
図10図10A図10Dは、目地構造の適用例を示す図である。図10Dは比較例、図10A図10Cは本実施形態の適用例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
===第1実施形態===
<<目地構造について>>
図1Aは、第1実施形態の目地構造の斜視図であり、図1Bは、図1Aを上から見た図である。
【0020】
図1A及び図1Bに示す目地構造は、第1コンクリート部材10と、第2コンクリート部材20と、目地空間30とを備えている。図11A及び図1Bに示すように、第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20は、目地空間30を隔てて水平方向に並んでおり、室内と屋外との間に設けられている。
【0021】
第1コンクリート部材10(第1部材に相当)は、セメントと水との水和反応で固結された部材である。本実施形態の第1コンクリート部材10は、PC(プレキャストコンクリート)工法で作製されている。なお、PC工法とは、工場において予めコンクリート製品(部材)を作製した後、現場へ運搬して設置を行う工法である。ただし、これには限られず、建設現場において型枠を設置し、コンクリートを打設する現場打ち工法であってもよい(第2コンクリート部材20についても同様)。本実施形態の第1コンクリート部材10の端面10a側には第1シート部材12が設けられている。
【0022】
第1シート部材12は、止水性を有するシート状の部材である。第1シート部材12としては、合成樹脂系あるは合成ゴム系のフィルムやシートを用いることができる。合成樹脂系としては、例えば、塩化ビニル系、アクリル系、ABS系(アクリロニトル・ブタジエン・スチレン共重合)、TPE系(熱可塑性エラストマー)などを用いることができる。
【0023】
第1シート部材12は、第1コンクリート部材10に水和反応によって固着されて埋設された埋設部12a(第1埋設部に相当)と、第1コンクリート部材10の端面10aから目地空間30に延出した延出部12b(第1延出部に相当)とを有している。図1Bに示すように、延出部12bは、室内側に向けて折り曲げられている。
【0024】
第2コンクリート部材20(第2部材に相当)も第1コンクリート部材10と同様のコンクリート部材である。本実施形態の第2コンクリート部材20の端面20a(第1コンクリート部材10の端面10aと対向する面)側には第2シート部材22が設けられている。
【0025】
第2シート部材22も、第1シート部材12と同様に、止水性を有するシート状の部材である。第2シート部材22は、第2コンクリート部材20に水和反応によって固着されて埋設された埋設部22a(第2埋設部に相当)と、第2コンクリート部材20の端面20aから目地空間30に延出した延出部22b(第2延出部に相当)とを有している。図1Bに示すように、延出部22bも、室内側に向けて折り曲げられている。
【0026】
目地空間30は、第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20との間に設けられた空間である。本実施形態の目地空間30は鉛直方向に沿った垂直目地である。目地空間30において、第1コンクリート部材10の第1シート部材12の延出部12b(折り曲げられた部位の側面)と、第2コンクリート部材20の第2シート部材22の延出部22b(折り曲げられた部位の側面)とが溶着されている。なお、溶着とは樹脂や金属を溶かして接合する接合方法である。本実施形態の溶着の方法については後述する。
【0027】
<<目地構造の施工方法について>>
<コンクリート部材の製造>
目地構造の施工方法の説明の前に、コンクリート部材の製造方法について説明する。以下では第1コンクリート部材10(及び第1シート部材12)の施工について説明するが、第2コンクリート部材20(及び第2シート部材22)についても同様に施工することができる。
【0028】
図2は、第1コンクリート部材10の製造方法を示すフロー図である。また、図3A図3Dは、第1コンクリート部材10の製造の様子を示す概略図である。
【0029】
まず、図3Aに示すように加工した第1シート部材12を準備する。すなわち。第1シート部材12の埋設部12aとなる部分にパンチング等で穴12c(貫通穴)を形成する。ここでは、第1シート部材12の埋設部12aとなる部位に、長手方向に沿って穴12cを複数設けている。このように埋設部12aに穴12cを設けておくことにより、第1コンクリート部材10に埋設したときに、アンカー効果が得られる。本実施形態では、第1シート部材12の埋設部12aとなる部位に穴12cを設けておくだけで、アンカー効果が得られる。よって、安価であり、実用性が高い。
【0030】
なお、穴12cが第1シート部材12の端(埋設部12aの端)に近すぎると、延出部12bを引っ張ったときに第1シート部材12が破損するおそれがあるので、端から所定距離離れた位置に形成ことが望ましい。本実施形態では、第1シート部材12の端(埋設部12a側の端)から20mm程度離間させている。また、穴12cの直径は、本実施形態のようにコンクリート(第1コンクリート部材10)の場合、5~25mmがよく、モルタルの場合、5~15mmがよい。このため、埋設部12aの長さ(埋め込み深さ)は、コンクリートの場合50mm以上、モルタルの場合40mm以上であることが望ましい。また、本実施形態の第1シート部材12の厚さは、1mm~1.5mmである。
【0031】
次に、側部にスリット41が形成された型枠40を準備し、図3Aの第1シート部材12を、図3Bに示すように、型枠40のスリット41に挿入する(S10)。なお、本実施形態では、型枠40の両側に第1シート部材12を配置しているが片側だけでもよい。
【0032】
次に、図3Cに示すように型枠40内にコンクリートを打設する(S20)。なお、図3Cでは、コンクリートを一部透過して示している。そして、セメントと水との水和反応によりコンクリートが固結した後、図3Dに示すように、型枠40を脱型する(S30)。
【0033】
このようにして、第1シート部材12を設けた第1コンクリート部材10を製造することができる。第2コンクリート部材20についても同様に製造できる。
【0034】
<目地構造の施工>
上記のような方法で、製造した第1コンクリート部材10の第1シート部材12の延出部12bと、第2コンクリート部材20の第2シート部材22の延出部22bを図1Bに示すように折り曲げる。そして、第1コンクリート部材10の端面10aと第2コンクリート部材20の端面20aが対向するように配置し、目地空間30を形成する。
【0035】
また、目地空間30において第1シート部材12の延出部12bと、第2シート部材22の延出部22bを接合させる。本実施形態では、延出部12bと延出部22bを溶着剤で溶着させている。
【0036】
図4は、第1シート部材12と第2シート部材22の溶着方法の一例を示す概略図である。
【0037】
本実施形態では、刷毛50に専用の溶着剤を含浸させて、刷毛50で第1シート部材12の延出部12bと、第2シート部材22の延出部22bとの間に溶着剤を塗布している。これにより、溶着剤の塗布された延出部12bと延出部22bの部位が溶けた状態で接触し、その後硬化することで溶着する。このように、溶着剤を塗布することで第1シート部材12と第2シート部材22を簡易に且つ確実に接合(溶着)することができる。
【0038】
なお、本実施形態(図4)では、屋外側から溶着剤を塗布しているが、室内側から溶着剤を塗布してもよい。
【0039】
<<溶着による接合性の評価>>
シート部材の溶着剤による溶着の接合性について評価を行った。
【0040】
(試験材料)
シート部材:DNシートNSJ(住べシート防水株式会社)
溶着剤:サンロイドDN溶着剤(住べシート防水株式会社)
サンロイドDN溶着剤の成分を表1に示す。
【0041】
【表1】
なお、シート部材として使用したDNシートNSJは、一般的な塩化ビニルシートと比べて液体可塑剤が少ない。具体的には、一般的な軟質塩化ビニルシートの液体可塑剤含有率が40~120(単位は塩化ビニル重量を100としたときの添加重量)であるのに対し、DNシートNSJは、10~90である。このように液体可塑剤が少ないDNシートNSJを用いることにより、可塑剤溶出量の抑制、耐候性の向上、防汚性向上を図ることができる。すなわち、可塑剤の溶出を抑制できるので、目地周辺が可塑剤等で汚れる撥水汚れを回避することができ、意匠性の向上を図ることができる。よって、汚れ対策が必要な場合には、DNシートNSJを使うことができる。ただし、シート部材はDNシートNSJには限られず、上述した素材(合成樹脂系あるは合成ゴム系)のものを用いてもよい。
【0042】
(試験方法)
シート部材(DNシートNSJ)に溶着剤(サンロイドDN溶着剤)を塗布して2つのシート部材を溶着し、引張り試験装置により2つのシート部材の端部に引張荷重を加えて破断させ、その破断箇所を確認した。
【0043】
(試験結果)
引張試験の結果、溶着箇所では破断せず、溶着していない箇所(シート部材自体)で破断した。これにより、溶着剤による溶着で十分な強度の接合性を得られることが確認された。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態の目地構造は、水和反応で固結された第1コンクリート部材10と、水和反応で固結された第2コンクリート部材20と、第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20との間の目地空間30と、を備えている。第1コンクリート部材10には、第1シート部材12が設けられており、第1シート部材12は、第1コンクリート部材10に水和反応によって固着されて埋設された埋設部12aと、第1コンクリート部材10から目地空間30に延出した延出部12bを有している。第2コンクリート部材20には、第2シート部材22が設けられており、第2シート部材22は、第2コンクリート部材20に水和反応によって固着されて埋設された埋設部22aと、第2コンクリート部材20から目地空間30に延出した延出部22bを有している。そして、目地空間30において、第1シート部材12の延出部12bと第2シート部材22の延出部22bとを溶着(接触)させている。
【0045】
これにより、目地部分に不定形のシーリング材を充填する場合と比べて、施工が簡易であり、養生期間を短縮できるので工期短縮を図ることができる。また、シーリング材では目地周辺に可塑剤が溶出して目地部分が汚れるおそれがあるが、本実施形態では、目地周辺が可塑剤で汚れないようすることができ、意匠性の向上を図ることができる。さらに、延出部12bや22bを充分にとることで、目地部分に動きが生じても余裕をもって追従することができ、シーリング目地のように、被着体との界面やその近傍に負荷がかかりにくいため、界面剥離を起こしにくく、目地の耐久性が向上する。よって、目地の防水機能の信頼性の向上を図ることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、第1シート部材12の延出部12bと第2シート部材22の延出部22bを溶着していたが、溶着以外の方法で接合してもよい。例えば、接着剤を用いて接合(接着)してもよい。この場合も、屋外側からでも、室内側からでも、両方から作業することができる。また、単に接触させるだけでもよい。
【0047】
また、本実施形態では、第1シート部材12の延出部12bと、第2シート部材22の延出部22bをそれぞれ室内側に向けて折り曲げていたが、屋外側に向けて折り曲げてもよい。ただし、室内側に向けて折り曲げると、外から見た時の意匠性の向上を図ることができる。
【0048】
===第2実施形態===
図5A図5Cは、第2実施形態の目地構造の説明図である。図5Aは斜視図、図5B図5Aを上から見た図、図5Cは、変形例を示す図である。第1実施形態と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0049】
第2実施形態では、第1シート部材12の延出部12bと第2シート部材22の延出部22bが直線状である(すなわち、折り曲げられていない)。そして、第1シート部材12の延出部12bと、第2シート部材22の延出部22bとが目地空間30において溶着されている。溶着の方法については第1実施形態と同様である。なお、第2実施形態においても、溶着には限られず、例えば接着剤で接合してもよいし、あるいは、接合せずに接触させるだけでもよい。
【0050】
図5Cでは、第1シート部材12と第2シート部材22との組み合わせが2重に配置されている。なお、2重には限られず、3重以上にしてもよい。このように、目地空間30にシート部材(第1シート部材12と第2シート部材22の組み合わせ)を多重に配置することでメンテナンスの期間を延長あるいは不要にすることができる。
【0051】
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2実施形態では、第1シート部材12の延出部12b及び第2シート部材22の延出部22bを折り曲げなくてよいので、より簡易に施工することができる。
【0052】
===第3実施形態===
図6A図6Cは、第3実施形態の目地構造の説明図である。図6Aは正面図、図6B図6AのA-A断面図、図6Cは変形例を示す図である。
【0053】
第3実施形態では、第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20が上下方向(鉛直方向)に間隔を空けて並んでおり、目地空間30が水平方向に沿って形成されている(水平目地)。
【0054】
また、第1コンクリート部材10の下端側には、第1シート部材12が設けられている。一方、第2コンクリート部材20には、シート部材は設けられていない。
【0055】
第1シート部材12は、第1コンクリート部材10に埋設された埋設部12aと、第1コンクリート部材10から目地空間30に延出した延出部12bを有している。
【0056】
第3実施形態では、第1シート部材12の延出部12bは、図6Bに示すように目地空間30においてU字状に折り曲げられて、第2コンクリート部材20と接触している。
【0057】
図6Cに示す変形例では、目地空間30において第1シート部材12(延出部12b)が2重に配置されている。なお、2重には限られず、3重以上に配置してもよい。これにより、メンテナンスの期間を延長あるいは不要にすることができる。
【0058】
===第4実施形態===
図7A及び図7Bは、第4実施形態の目地構造の説明図である。図7Aは正面図、図7B図7AのA-A断面図である。
【0059】
第4実施形態においても、第3実施形態と同様に、第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20が上下方向(鉛直方向)に間隔を空けて並んでおり、目地空間30が水平方向に沿って形成されている(水平目地)。
【0060】
また、第1コンクリート部材10の下端側には、第1シート部材12が設けられている。
【0061】
第1シート部材12は、第1コンクリート部材10に埋設された埋設部12aと、第1コンクリート部材10から目地空間30に延出した延出部12bを有している。第4実施形態では延出部12bが、第2コンクリート部材20の上端と接触しつつ、第2コンクリート部材20の前方(屋外側)に出るように配置されている。これにより、雨などが目地空間30内に入るのを抑制することができる。
【0062】
なお、目地空間30において第1シート部材12(延出部12b)を多重(例えば、2重)に配置してもよい。
【0063】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0064】
<シート部材について>
前述の実施形態では、シート部材(例えば第1シート部材12)の埋設部(例えば、埋設部12a)に厚さ方向に貫通する穴(例えば穴12c)を設けることによりアンカー効果を得るようにしていたが、これには限られない。例えば以下のような変形例でもアンカー効果を発揮することが可能である。以下では、第1シート部材12についての変形例を説明するが第2シート部材22についても同様である。
【0065】
図8Aは、第1変形例のシート部材12´を示す概略斜視図であり、図8Bは、シート部材12´をコンクリート部材に配置した状態を示す断面図である。
【0066】
図8Aに示すように第1変形例では、シート部材12´はシート部121とL型部材122を有している。
【0067】
シート部121は、図3Aと同様の樹脂製のシート状の部材である。ただし、シート部121には厚さ方向に貫通する穴は形成されていない。シート部121は、コンクリート部材に埋設される埋設部121aと、コンクリート部材から延出する延出部121bとを有している。
【0068】
L型部材122は、例えば、鋼板の表面に塩ビ加工を施した断面L字状の塩ビ鋼板である。図8Aに示すように、L型部材122は、シート材121のコンクリート部材に埋め込まれる部位(埋設部121aの部位)に溶着あるいは接着されている。
【0069】
これにより、シート部材12´を、図8Bに示すように、コンクリート部材に設けることで、L型部材122がアンカーとしての効果を発揮する。
【0070】
図9Aは、第2変形例のシート部材12″を示す概略斜視図であり、図9Bは、シート部材12″をコンクリート部材に配置した状態を示す断面図である。
【0071】
シート部材12″の埋設部12a´は、樹脂成型時に埋設部12aが端部に向かうにつれて厚さが大きくなるような形状(略三角形)に設けられている。
【0072】
これにより、シート部材12″を、図9Bに示すように、コンクリート部材に設けることにより、埋設部12a´(厚さ方向に広がった部位)がアンカーとしての効果を発揮する。なお、この例では埋設部12a´が厚さ方向の両側に広がっているが、片側だけでもアンカーとしての効果を発揮することができる。
【0073】
<目地構造の他の適用例について>
図10A図10Dは、目地構造の適用例を示す図である。図10Dは比較例、図10A図10Cは本実施形態である。ここでは、PCカーテンウォール(オープンジョイント構法)に本発明を適用している。
【0074】
図10D(比較例)では、上側パネル部材100と下側パネル部材200との間の目地空間300の目地材として、レインバリア110とウィンドバリア111が用いられている。
【0075】
上側パネル部材100及び下側パネル部材200はそれぞれコンクリートで構成された部材である。上側パネル部材100と下側パネル部材200との間には目地空間300が設けられている。
【0076】
レインバリア110は、屋外からの雨滴の侵入を防止するための部材あり、フィン状のゴム成形品である。レインバリア110は、目地空間300において屋外に近い側(外側)に設けられている。また、レインバリア110は、上側パネル部材100の下面に垂れ下がるように取り付けられている。
【0077】
ウィンドバリア111は、気密性、水密性を保持するための部材であり、合成ゴム製の中空の弾性体(ガスケット)で構成されている。ウィンドバリア111は、目地空間300において室内に近い側(内側)に設けられている。
【0078】
図10Aでは、図10Dのレインバリア110の代わりに本実施形態の目地構造が用いられている。すなわち、第1シート部材12が上側パネル部材100に設けられていている。第1シート部材12は、前述の実施形態と同様に、予め上側パネル部材100に固定されている(設けられている)。すなわち、埋設部12aが上側パネル部材100に埋設され、延出部12bが上側パネル部材100から目地空間300に延出している。これにより、比較例(図10D)のPCカーテンウォールを形成する場合と比べて、施工が簡易であり、また、工期の短縮を図ることができる。
【0079】
また、図10Bでは、ウィンドバリア111の部位にも第1シート部材12が設けられている。構成は同様であるので説明を省略する。この例では、2重の第1シート部材12の各延出部12bは、それぞれ、U字状に折り曲げられている。
【0080】
また、図10Cでは、上側パネル部材100に第1シート部材12が設けられ、下側パネル部材200に第2シート部材22が設けられている。第1シート部材12の延出部12bと第2シート部材22の延出部22bがそれぞれU字状に折り曲げられて溶着されている。
【0081】
また、PCカーテンウォールとコンクリート躯体との間などにも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 第1コンクリート部材
10a 端面
12 第1シート部材
12´ シート部材
12″ シート部材
12a 埋設部
12b 延出部
12c 穴
20 第2コンクリート部材
20a 端面
22 第2シート部材
22a 埋設部
22b 延出部
30 目地空間
40 型枠
41 スリット
50 刷毛
100 上側パネル部材
110 レインバリア
111 ウィンドバリア
121 シート部
121a 埋設部
121b 延出部
122 L型部材
200 下側パネル部材
300 目地空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10