IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

<>
  • 特許-作業機械およびその制御方法 図1
  • 特許-作業機械およびその制御方法 図2
  • 特許-作業機械およびその制御方法 図3
  • 特許-作業機械およびその制御方法 図4
  • 特許-作業機械およびその制御方法 図5
  • 特許-作業機械およびその制御方法 図6
  • 特許-作業機械およびその制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】作業機械およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 12/00 20060101AFI20221011BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20221011BHJP
   E02F 3/76 20060101ALI20221011BHJP
   B60K 17/36 20060101ALI20221011BHJP
   B62D 5/12 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B62D12/00
E02F9/22 H
E02F3/76 A
B60K17/36 Z
B62D5/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018085243
(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公開番号】P2019189084
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】荒井 優樹
(72)【発明者】
【氏名】上前 健志
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-010405(JP,A)
【文献】特開2003-013419(JP,A)
【文献】特開2017-172187(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061888(WO,A1)
【文献】特開2011-245988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 12/00
E02F 9/22
E02F 3/76
B60K 17/36
B62D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械であって、
右前輪および左前輪と、
前記作業機械の移動速度を測定する速度センサと、
前記作業機械の移動時に前記作業機械に作用する旋回角速度を測定する測定装置と、
前記右前輪に駆動力を付与する第1駆動源と、
前記左前輪に駆動力を付与する第2駆動源と、
前記速度センサで測定した前記作業機械の前記移動速度と前記測定装置で測定した前記旋回角速度とに基づいて前記第1駆動源および前記第2駆動源を制御することにより、前記右前輪および前記左前輪の各々の回転速度を独立して制御する制御部と、
後輪と、
前記右前輪および前記左前輪が設けられたフロントフレームと、
前記後輪が設けられ、かつ前記フロントフレームに連結されたリアフレームと、
前記フロントフレームと前記リアフレームとのアーティキュレート角度を検出するアーティキュレートセンサとを備え、
前記制御部は、前記速度センサで測定した前記作業機械の前記移動速度と前記測定装置で測定した前記旋回角速度とに基づいて前記後輪の旋回半径を算出し、算出された前記後輪の前記旋回半径と前記アーティキュレートセンサにより検出された前記アーティキュレート角度とに基づいて前記右前輪の目標前輪回転速度と前記左前輪の目標前輪回転速度とを決定し、前記右前輪の前記目標前輪回転速度となるように前記第1駆動源を制御し、かつ前記左前輪の前記目標前輪回転速度となるように前記第2駆動源を制御し、
前記第1駆動源は前記右前輪に駆動力を付与する第1油圧モータを有し、前記第2駆動源は前記左前輪に駆動力を付与する第2油圧モータを有する、作業機械。
【請求項2】
前記測定装置は前記フロントフレームに取り付けられている、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記第1駆動源は第1モータを含み、かつ前記第2駆動源は第2モータを含む、請求項1に記載の作業機械。
【請求項4】
右前輪および左前輪と、後輪と、前記右前輪および前記左前輪が設けられたフロントフレームと、前記後輪が設けられかつ前記フロントフレームに連結されたリアフレームとを有する作業機械の制御方法であって、
前記作業機械の移動速度を測定する工程と、
前記作業機械の移動時に前記作業機械に作用する旋回角速度を測定する工程と、
前記フロントフレームと前記リアフレームとのアーティキュレート角度を検出する工程と、
測定した前記移動速度と前記旋回角速度とに基づいて前記後輪の旋回半径を算出する工程と、
算出した前記後輪の前記旋回半径と検出された前記アーティキュレート角度とに基づいて前記右前輪の目標前輪回転速度と前記左前輪の目標前輪回転速度とを決定する工程と、
前記右前輪の前記目標前輪回転速度となるように前記右前輪の回転速度を制御し、かつ前記左前輪の前記目標前輪回転速度となるように前記左前輪の回転速度を制御することにより前記右前輪および前記左前輪の各々の回転速度を独立して制御する工程とを備え、
前記作業機械は、前記右前輪に駆動力を付与する第1油圧モータを有し、前記左前輪に駆動力を付与する第2油圧モータを有する、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2006/0042838号明細書(特許文献1)には、モータグレーダなどの作業機械において、操舵角または操舵角とアーティキュレート角度との組合せに基づいて前輪の速度を独立に調整することが記載されている。このように作業機械の旋回時に左右の前輪を独立して制御することにより、旋回中に少なくとも1つの前輪から牽引力が失われることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2006/0042838号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記文献に記載の作業車両では、操舵角センサが前輪の近傍に設置されるため、土砂などにより故障しやすい。
【0005】
本開示の目的は、前輪から牽引力が失われることを抑制でき、かつ測定装置が故障しにくい作業機械およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の作業機械は、右前輪および左前輪と、速度センサと、測定装置と、第1駆動源と、第2駆動源と、制御部とを備える。速度センサは、作業機械の移動速度を測定する。測定装置は、作業機械の移動時に作業機械に作用する旋回角速度を測定する。第1駆動源は、右前輪に駆動力を付与する。第2駆動源は、左前輪に駆動力を付与する。制御部は、速度センサで測定した作業機械の移動速度と測定装置で測定した旋回角速度とに基づいて第1駆動源および第2駆動源を制御することにより、右前輪および左前輪の各々の回転速度を独立して制御する。
【0007】
本開示の作業機械の制御方法は、右前輪および左前輪を有する作業機械の制御方法であって、以下の工程を備える。
【0008】
作業機械の移動速度が測定される。作業機械の移動時に作業機械に作用する旋回角速度が測定される。測定した移動速度と前記旋回角速度とに基づいて右前輪および左前輪の各々の回転速度が独立して制御される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、前輪から牽引力が失われることを抑制でき、かつ測定装置が故障しにくい作業機械およびその制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態におけるモータグレーダの構成を概略的に示す斜視図である。
図2】一実施形態におけるモータグレーダにおける走行輪の駆動制御に関する構成を概略的に示す図である。
図3】一実施形態におけるモータグレーダにおける制御部の機能を示す機能ブロック図である。
図4】後輪の旋回半径を説明するための図である。
図5】前輪の旋回半径の計算式を説明するための図である。
図6】後輪の旋回半径とアーティキュレート角度とから、右前輪および左前輪の各々の目標前輪増速比を決定するための前輪増速比テーブルを示す図である。
図7】一実施形態におけるモータグレーダにおける走行輪の制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る作業機械について、図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
<モータグレーダの構成>
まず、本開示の思想を適用可能な作業機械の一例であるモータグレーダの構成について説明する。
【0013】
図1は、一実施形態におけるモータグレーダの構成を概略的に示す斜視図である。図1に示されるように、本実施形態のモータグレーダ1は、走行輪11、12と、車体フレーム2と、キャブ3と、作業機4とを主に有している。また、モータグレーダ1は、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品を備えている。作業機4は、たとえばブレード42を含んでいる。モータグレーダ1は、ブレード42で整地作業、除雪作業、材料混合などの作業を行なうことができる。
【0014】
なお以下の図の説明において、モータグレーダ1が直進走行する方向を、モータグレーダ1の前後方向という。モータグレーダ1の前後方向において、作業機4に対して前輪11が配置されている側を、前方向とする。モータグレーダ1の前後方向において、作業機4に対して後輪12が配置されている側を、後方向とする。モータグレーダ1の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。モータグレーダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0015】
走行輪11、12は、前輪11と後輪12とを含んでいる。前輪11は、左右の片側において1輪ずつを有し、右前輪11Rと、左前輪11Lとを含んでいる。後輪12は、左右の片側において2輪ずつを有し、2つの右後輪12Rと、2つの左後輪12L(図2)とを含んでいる。前輪11および後輪12の数および配置は、図1に示す例に限られるものではない。
【0016】
車体フレーム2は、前後方向に延びている。車体フレーム2は、リアフレーム21と、フロントフレーム22とを含んでいる。
【0017】
リアフレーム21は、外装カバー25と、エンジン室6に配置されたエンジンなどの構成部品とを支持している。外装カバー25はエンジン室6を覆っている。リアフレーム21には、上記のたとえば4つの後輪12の各々が取り付けられている。4つの後輪12の各々は、エンジンからの駆動力によって回転駆動可能である。
【0018】
フロントフレーム22は、リアフレーム21の前方に取り付けられている。フロントフレーム22は、リアフレーム21に、回動可能に連結されている。フロントフレーム22は、前後方向に延びている。フロントフレーム22は、リアフレーム21に連結されている基端部と、基端部と反対側の先端部とを有している。フロントフレーム22の基端部は、鉛直なセンタピンにより、リアフレーム21の先端部と連結されている。フロントフレーム22は、1本の梁で構成されている。
【0019】
フロントフレーム22とリアフレーム21との間には、アーティキュレートシリンダ23が取り付けられている。フロントフレーム22は、アーティキュレートシリンダ23の伸縮により、リアフレーム21に対して回動(アーティキュレート)可能に設けられている。
【0020】
フロントフレーム22の先端部には、上記のたとえば2つの前輪11が回転可能に取り付けられている。前輪11は、ステアリングシリンダ7の伸縮によって、フロントフレーム22に対して旋回可能に取り付けられている。モータグレーダ1は、ステアリングシリンダ7の伸縮によって、進行方向を変更することが可能である。
【0021】
車体フレーム2の前端2Fには、カウンタウェイト51が取り付けられている。カウンタウェイト51は、フロントフレーム22に取り付けられるアタッチメントの一種である。カウンタウェイト51は、前輪11に負荷される下向きの荷重を増加して、操舵を可能にするとともにブレード42の押付荷重を増加するために、フロントフレーム22に装着されている。
【0022】
キャブ3はたとえばフロントフレーム22に載置されている。キャブ3の内部には、ハンドル、変速レバー、作業機4の操作レバー、ブレーキ、アクセルペダル、インチングペダルなどの操作部(図示せず)が設けられている。なお、キャブ3は、リアフレーム21に載置されていてもよい。走行輪11、12と、車体フレーム2と、キャブ3とにより車両本体(機械本体)が構成されている。
【0023】
作業機4は、たとえばドローバ40と、旋回サークル41と、ブレード42とを主に有している。ドローバ40は、フロントフレーム22の下方に配置されている。ドローバ40の前端部は、フロントフレーム22の先端部に、玉軸部を用いて連結されている。ドローバ40の前端部は、フロントフレーム22の先端部に揺動可能に取付けられている。
【0024】
ドローバ40の後端部は、一対のリフトシリンダ44、45によってフロントフレーム22(車両本体の一部)に支持されている。一対のリフトシリンダ44、45の伸縮によって、ドローバ40の後端部がフロントフレーム22に対して上下に昇降可能である。また、ドローバ40は、一対のリフトシリンダ44、45の互いに異なる伸縮によって、前後方向に延びる軸を中心に揺動可能である。
【0025】
旋回サークル41は、フロントフレーム22の下方に配置されている。旋回サークル41は、ドローバ40の下方に配置されている。旋回サークル41は、ドローバ40の後端部に旋回(回転)可能に取り付けられている。旋回サークル41は、油圧モータ49によって、ドローバ40に対し、車両上方から見て時計方向と反時計方向との両方に、旋回駆動可能である。ブレード42は、旋回サークル41に配設されている。旋回サークル41の旋回駆動によって、ブレード42のブレード推進角が調整される。ブレード推進角とは、車両上方から見た視点におけるモータグレーダ1の前後方向に対するブレード42の傾斜角度である。
【0026】
ブレード42は、前輪11と後輪12との間に配置されている。前輪11は、ブレード42よりも前方に配置されている。後輪12は、ブレード42よりも後方に配置されている。ブレード42は、車体フレーム2の前端2Fと、車体フレーム2の後端2Rとの間に配置されている。ブレード42は、旋回サークル41に支持されている。ブレード42は、旋回サークル41を介して、ドローバ40に支持されている。ブレード42は、ドローバ40を介して、フロントフレーム22に支持されている。
【0027】
一対のリフトシリンダ44、45はドローバ40を車両本体に対してつり下げている(懸架している)。具体的には一対のリフトシリンダ44、45は、ドローバ40を介して、フロントフレーム22(車両本体の一部)の下方に位置するブレード42を支持している。一対のリフトシリンダ44、45を伸縮させることにより、ドローバ40およびブレード42の高さを変更することができる。
【0028】
以上のように、ブレード42は、ドローバ40と、旋回サークル41とを介して、車両に対する上下の昇降と、前後方向に延びる軸を中心とする揺動とを行なうことが可能に構成されている。
【0029】
図2は、一実施形態におけるモータグレーダにおける走行輪の駆動制御に関する構成を概略的に示す図である。図2に示されるように、本実施形態のモータグレーダ1は、走行輪11、12と、エンジン31と、変速機32と、終減速装置33と、タンデム装置34R、34L、第1駆動源35Rと、第2駆動源35Lとを有している。
【0030】
エンジン31は、図1に示すリアフレーム21に支持されている。エンジン31の一方の出力側には、変速機32を介在して終減速装置33が接続されている。終減速装置33には、右タンデム装置34Rおよび左タンデム装置34Lが接続されている。
【0031】
右タンデム装置34Rには、一対の右後輪12Rが接続されている。左タンデム装置34Lには、一対の左後輪12Lが接続されている。エンジン31は、変速機32、終減速装置33およびタンデム装置34R、34Lを介して、右後輪12Rと左後輪12Lとを駆動する。
【0032】
エンジン31の他方の出力側には、第1駆動源35Rおよび第2駆動源35Lが接続されている。第1駆動源35Rおよび第2駆動源35Lの各々は、油圧システムである。第1駆動源35Rは、右前輪11Rを駆動する。第2駆動源35Lは、左前輪11Lを駆動する。
【0033】
第1駆動源35Rは、右油圧ポンプ35PRと、右油圧モータ35MR(第1モータ)とを有している。第2駆動源35Lは、左油圧ポンプ35PLと、左油圧モータ35ML(第2モータ)とを有している。右油圧ポンプ35PRおよび左油圧ポンプ35PLの各々は、エンジン31の出力が伝達されて駆動される。右油圧ポンプ35PRおよび左油圧ポンプ35PLの各々は、たとえば斜板式アキシャル形のポンプである。
【0034】
右油圧モータ35MRは、右油圧ポンプ35PRから吐出する作動油で駆動されて、右前輪11Rに駆動力を付与する。左油圧モータ35MLは、左油圧ポンプ35PLから吐出する作動油で駆動されて、左前輪11Lに駆動力を付与する。油圧モータ35MR、35MLの各々は、たとえば斜板式アキシャル形のモータである。なお油圧モータ35MR、35MLの各々は、ラジアルピストン式のモータであってもよい。
【0035】
本実施形態のモータグレーダ1は、IMU(Inertial Measurement Unit)26と、速度センサ36と、ソレノイド37R、37L、38R、38Lと、アーティキュレートセンサ39と、制御部50とをさらに有している。
【0036】
速度センサ36は、モータグレーダ1の移動時(走行時)の移動速度(走行速度)を検出し、その移動速度の信号を発生する。速度センサ36で発生した移動速度の信号は制御部50へ出力される。
【0037】
速度センサ36は、たとえば変速機32の出力軸の回転速度を測定する。また速度センサ36は、たとえばGPS(Global Positioning System)を利用してモータグレーダ1の移動速度を検出してもよい。
【0038】
IMU26(測定装置)は、モータグレーダ1の移動時(走行時)にモータグレーダ1に作用する旋回角速度を検出し、その旋回角速度の信号を発生する。IMU26で発生した旋回角速度の信号は制御部50へ出力される。
【0039】
作業機4、タンデム装置34R、34Lなどの車体フレーム2に対して相対的に作動する部分にIMU26が取り付けられた場合、IMU26によりモータグレーダ1の旋回角速度の測定を行うことは不可能である。このためIMU26は、モータグレーダ1の車体フレーム2、または車体フレーム2に対して相対的に作動しない部分に取り付けられている。
【0040】
IMU26が土砂などの影響を受けにくくするためには、IMU26を走行輪11、12および作業機4から離れた位置に配置することが好ましい。IMU26が土砂などの影響を受けにくいという観点からは、IMU26は、たとえば図1に示されるようにフロントフレーム22に取り付けられることが好ましい。IMU26がフロントフレーム22の上面に取り付けられることが特に好ましい。
【0041】
右ポンプソレノイド37Rは、右油圧ポンプ35PRにおけるポンプ斜板の角度を変えることにより右油圧ポンプ35PRから右油圧モータ35MRへ吐出される作動油の量を制御する。左ポンプソレノイド37Lは、左油圧ポンプ35PLにおけるポンプ斜板の角度を変えることにより左油圧ポンプ35PLから左油圧モータ35MLへ吐出される作動油の量を制御する。各ソレノイド37R、37Lは、制御部50から与えられる制御信号に基づいて油圧ポンプ35PR、35PLのそれぞれを制御する。
【0042】
右モータソレノイド38Rは、右油圧モータ35MRにおけるモータ斜板の角度を変えることにより右前輪11Rの回転速度を制御する。左モータソレノイド38Lは、左油圧モータ35MLにおけるモータ斜板の角度を変えることにより左前輪11Lの回転速度を制御する。各ソレノイド38R、38Lは、制御部50から与えられる制御信号に基づいて油圧モータ35MR、35MLのそれぞれを制御する。
【0043】
なお油圧モータ35MR、35MLの各々がラジアルピストン式のモータである場合、周方向に沿って複数個配置された放射状に延びるピストンのうち作動油を供給されるピストンの個数を変えることにより、前輪11R、11Lの回転速度が制御される。
【0044】
アーティキュレートセンサ39は、フロントフレーム22とリアフレーム21とのアーティキュレート角度(連結角度)を検出し、アーティキュレート角度信号を発生する。アーティキュレートセンサ39で発生したアーティキュレート角度信号は制御部50へ出力される。
【0045】
<制御部50の構成>
図3は、一実施形態におけるモータグレーダにおける制御部50の機能を示す機能ブロック図である。図3に示されるように、制御部50は、後輪旋回半径算出部50aと、前輪旋回半径算出部50bと、目標前輪回転速度算出部50cと、右前輪回転速度指令部50dRと、左前輪回転速度指令部50dLと、記憶部50eとを有している。
【0046】
後輪旋回半径算出部50aは、速度センサ36で測定したモータグレーダ1の移動速度とIMU26で測定した旋回角速度とに基づいて右後輪12Rと左後輪12Lとを含む後輪12の旋回半径を算出する。後輪旋回半径算出部50aは、算出した後輪12の旋回半径を前輪旋回半径算出部50bへ出力する。
【0047】
前輪旋回半径算出部50bは、後輪旋回半径算出部50aにより算出された後輪12の旋回半径と、アーティキュレートセンサ39により検知されたアーティキュレート角度とに基づいて右前輪11Rの旋回半径と左前輪11Lの旋回半径とを算出する。前輪旋回半径算出部50bは、算出した右前輪11Rおよび左前輪11Lの各々の旋回半径と、後輪旋回半径算出部50aにより算出された後輪12の旋回半径と、アーティキュレートセンサ39により検知されたアーティキュレート角度とに基づいて前輪増速比テーブル(図6)を作成する。前輪旋回半径算出部50bは、作成した前輪増速比テーブルを記憶部50eへ出力する。
【0048】
記憶部50eは、上記前輪増速比テーブルを格納(記憶)している。前輪増速比テーブルは、たとえば図6に示されるように、後輪旋回半径とアーティキュレート角度とに対応した前輪増速比を規定するものである。この前輪増速比テーブルの詳細については後述する。また前輪増速比とは、前輪旋回半径を後輪旋回半径で除した値(前輪旋回半径/後輪旋回半径)である。この記憶部50eは、制御部50の外部にあってもよい。
【0049】
目標前輪回転速度算出部50cは、右前輪11Rおよび左前輪11Lの各々の目標前輪回転速度を算出する。具体的には以下のとおりである。
【0050】
目標前輪回転速度算出部50cは、決定された目標前輪増速比と後輪旋回半径とから右前輪11Rおよび左前輪11Lの各々の目標となる旋回半径(目標前輪旋回半径)を算出する。
【0051】
目標前輪回転速度算出部50cは、速度センサ36の速度と上記により算出された右前輪11Rおよび左前輪11Lの各々の目標前輪増速比とに基づいて、右前輪11Rおよび左前輪11Lの各々の目標となる回転速度(目標前輪回転速度)を算出する。
【0052】
目標前輪回転速度算出部50cは、算出した右前輪11Rの目標前輪回転速度を右前輪回転速度指令部50dRへ出力する。また目標前輪回転速度算出部50cは、算出した左前輪11Lの目標前輪回転速度を左前輪回転速度指令部50dLへ出力する。
【0053】
右前輪回転速度指令部50dRは、目標前輪回転速度算出部50cから出力された右前輪11Rの目標前輪回転速度信号に基づいて右前輪11Rの第1駆動源35Rを制御する。また左前輪回転速度指令部50dLは、目標前輪回転速度算出部50cから出力された左前輪11Lの目標前輪回転速度信号に基づいて左前輪11Lの第2駆動源35Lを制御する。
【0054】
以上により制御部50は、速度センサ36で測定した移動速度とIMU26で測定した旋回角速度とに基づいて第1駆動源35Rおよび第2駆動源35Lを制御することにより、右前輪11Rおよび左前輪11Lの各々の回転速度を独立して制御する。
【0055】
<後輪の旋回半径と前輪の旋回半径とを算出する方法>
次に、後輪の旋回半径と前輪の旋回半径とを算出する方法について図4および図5を用いて説明する。
【0056】
図4は、後輪の旋回半径を説明するための図である。図5は、前輪の旋回半径の計算式を説明するための図である。
【0057】
後輪の旋回半径として、後輪中心の旋回半径が求められる。ここで後輪中心の旋回半径とは、図4に示されるように、右後輪12Rと左後輪12Lとの中心(後輪中心)C1の旋回半径Rを意味する。なお図4には、右後輪12Rの回転速度vrが、左後輪12Lの回転速度vlよりも小さく、モータグレーダ1が右旋回している状態が示されている。
【0058】
上記状態において後輪中心C1の旋回半径Rは、速度センサ36で測定したモータグレーダ1の移動速度をIMU26で測定した旋回角速度で除すことにより算出される。つまり後輪中心C1の旋回半径Rは、以下の式により算出される。
【0059】
後輪中心C1の旋回半径R=(速度センサ36で測定した移動速度)/(IMU26で測定した旋回角速度) ・・・式(A)
なお上記においてはモータグレーダ1が右旋回している状態について説明したが、左旋回している時においても同様に後輪中心の旋回半径が求められる。
【0060】
また上記後輪中心C1の旋回半径Rを以下の数1式に代入することにより、右前輪11Rの旋回半径Rrが算出される。また上記後輪中心C1の旋回半径Rを以下の数2式に代入することにより、左前輪11Lの旋回半径Rlが算出される。
【0061】
【数1】
【0062】
【数2】
【0063】
また上記数1式および数2式に示されるxr、yr、xlおよびylのそれぞれは、以下の数3式、数4式、数5式および数6式で表わされる。
【0064】
【数3】
【0065】
【数4】
【0066】
【数5】
【0067】
【数6】
【0068】
上記数3式、数4式、数5式および数6式におけるL1は、図5に示されるように、後輪中心C1とアーティキュレート中心24との距離である。L2は、アーティキュレート中心24とフロントアクセルセンタピンとの距離である。L3は、右前輪11Rと左前輪11Lとのトレッド幅である。θaは、アーティキュレート角度である。L1、L2およびL3の各々は、作業機械1の機種によって決まる数値である。
【0069】
以上より、上記式(A)を用いることによって後輪中心C1の旋回半径Rが算出される。また上記数1式を用いることによって右前輪11Rの旋回半径Rrが算出される。また上記数2式を用いることによって左前輪11Lの旋回半径Rlが算出される。
【0070】
<前輪増速比テーブル>
次に、前輪増速比テーブルについて図6を用いて説明する。
【0071】
図6は、後輪の旋回半径とアーティキュレート角度とから、左右前輪の各前輪増速比を求めるための前輪増速比テーブルを示す図である。図6に示される前輪増速比テーブルには、後輪の旋回半径、アーティキュレート角度および前輪増速比の関係が規定されている。
【0072】
前輪増速比テーブルにおける「後輪旋回半径」の項目は、「右旋回」、「中立(直進)」および「左旋回」の項目に分けられている。「右旋回」の項目は、たとえば「小」、「↑」、「↓」、「大」の4つの項目に分かれている。「右旋回」の「大」の項目には右旋回時の比較的大きい旋回半径の数値が規定され、「小」の項目には右旋回時の比較的小さい旋回半径の数値が規定される。また「右旋回」の「↑」および「↓」の各々には「大」の旋回半径よりも小さく、かつ「小」の旋回半径よりも大きい数値が規定される。また「右旋回」の「↑」は「右旋回」の「↓」よりも「右旋回」の「小」に近い数値が規定される。
【0073】
「左旋回」の項目は、たとえば「小」、「↑」、「↓」、「大」の4つの項目に分かれている。「左旋回」の「大」の項目には比較的大きい左旋回時の旋回半径の数値が規定され、「小」の項目には比較的小さい左旋回時の旋回半径の数値が規定される。また「左旋回」の「↑」および「↓」の各々には「大」の旋回半径よりも小さく、かつ「小」の旋回半径よりも大きい数値が規定される。また「左旋回」の「↑」は「左旋回」の「↓」よりも「左旋回」の「小」に近い数値が規定される。
【0074】
また「アーティキュレート角度」の項目は、「左アーティキュレート」、「中立」および「右アーティキュレート」の項目に分けられている。「左アーティキュレート」の項目は、たとえば「小」、「中」、「大」の3つの項目に分かれている。「左アーティキュレート」の「大」の項目には左アーティキュレート時の比較的大きいアーティキュレート角度が規定される。「左アーティキュレート」の「小」の項目には左アーティキュレート時の比較的小さいアーティキュレート角度が規定される。「左アーティキュレート」の「中」の項目には「左アーティキュレート」の「大」と「小」との間のアーティキュレート角度が規定される。
【0075】
「右アーティキュレート」の項目は、たとえば「小」、「中」、「大」の3つの項目に分かれている。「右アーティキュレート」の「大」の項目には右アーティキュレート時の比較的大きいアーティキュレート角度が規定される。「右アーティキュレート」の「小」の項目には右アーティキュレート時の比較的小さいアーティキュレート角度が規定される。「右アーティキュレート」の「中」の項目には「右アーティキュレート」の「大」と「小」との間のアーティキュレート角度が規定される。
【0076】
図6に示される前輪増速比テーブル内における「1.00」の数値は目標前輪増速比である。また、L01~L03、L11~L13、L21~L23、L31~L34、R01~R03、R11~LR3、R21~R23、およびR31~R34の各々には、各機種に対応した目標前輪増速比の数値が規定される。
【0077】
この図6に示される前輪増速比テーブルが、右前輪11Rに対するものと、左前輪11Lに対するものとの双方について作成され、図3に示される記憶部50eに格納されている。なお図6に示される前輪増速比テーブルでは、「右旋回」および「左旋回」の各々が4つの項目に分けられているが、これらの項目は3つ以下に分けられてもよく、また5つ以上に分けられてもよい。また「左アーティキュレート」および「右アーティキュレート」の項目の各々が3つの項目分けられているが、これらの項目は2つ以下に分けられてもよく、また4つ以上に分けられてもよい。
【0078】
<前輪増速比テーブルの作成>
図6に示す前輪増速比テーブルは、図3に示される後輪旋回半径算出部50aにより算出された後輪旋回半径と、アーティキュレートセンサ39により測定されたアーティキュレート角度と、前輪旋回半径算出部50bにより算出された前輪旋回半径とに基づいて作成される。具体的には、上記後輪旋回半径と、上記アーティキュレート角度と、上記前輪旋回半径を上記後輪旋回半径で除すことにより算出された前輪増速比とにより作成される。
【0079】
この前輪増速比テーブルは、図3に示される前輪旋回半径算出部50bにおいて作成され、作成された後は前輪旋回半径算出部50bから記憶部50eへ出力され、記憶部50eに格納される。
【0080】
<目標前輪回転速度を算出する方法>
次に、目標前輪回転速度を算出する方法について説明する。
【0081】
目標前輪回転速度の算出は、図3に示される目標前輪回転速度算出部50cにおいて行われる。この目標前輪回転速度算出部50cは、記憶部50eに格納された前輪増速比テーブル(図6)を参照して、後輪旋回半径算出部50aにより算出された後輪12の旋回半径と、アーティキュレートセンサ39により測定されたアーティキュレート角度とに基づいて右前輪11Rおよび左前輪11Lの各々の目標前輪増速比を決定する。具体的には、図4および図5に示されるモータグレーダ1のアーティキュレート角度がたとえば図6に示す「右アーティキュレート」の「大」であり、かつ後輪旋回半径がたとえば図6に示す「右旋回」の「大」である場合には、目標前輪増速比は「R31」に規定された数値に決定される。
【0082】
上記のように決定された目標前輪増速比は、目標となる前輪旋回半径(目標前輪旋回半径)を後輪旋回半径で除した値である。
【0083】
なお上記においては前輪増速比テーブルを用いて目標前輪回転速度を算出する方法について説明したが、目標前輪回転速度は前輪増速比テーブルを用いずに計算により算出されてもよい。
【0084】
<走行輪11、12の制御方法>
次に、一実施形態におけるモータグレーダにおける走行輪11、12の制御方法について図7を用いて説明する。
【0085】
図7は、一実施形態におけるモータグレーダにおける走行輪11、12の制御方法を示すフロー図である。図3および図7に示されるように、速度センサ36によりモータグレーダ1の移動速度が測定される(ステップS1a:図7)。またIMU26により移動中のモータグレーダ1における旋回角速度が測定される(ステップS1b:図7)。またアーティキュレートセンサ39によりアーティキュレート角度が測定される(ステップS1c:図7)。
【0086】
この後、図3に示されるように、速度センサ36で測定された移動速度の信号とIMU26で測定された旋回角速度の信号とが制御部50の後輪旋回半径算出部50aへ出力される。
【0087】
後輪旋回半径算出部50aでは、後輪の旋回半径が算出される(ステップS2:図7)。具体的には、上記式(A)に、速度センサ36で測定された移動速度の信号とIMU26で測定された旋回角速度とを代入することにより、後輪中心C1の旋回半径Rが算出される。
【0088】
この後、図3に示されるように、後輪旋回半径算出部50aで算出された後輪12の旋回半径が目標前輪回転速度算出部50cへ出力される。またアーティキュレートセンサ39により測定されたアーティキュレート角度も目標前輪回転速度算出部50cへ出力される。
【0089】
目標前輪回転速度算出部50cでは、記憶部50eに格納された前輪増速比テーブルを参照して目標前輪回転速度が決定される(ステップS3:図7)。具体的には、目標前輪回転速度算出部50cは、記憶部50eに格納された前輪増速比テーブルを参照して、後輪旋回半径算出部50aにより算出された後輪12の旋回半径と、アーティキュレートセンサ39により検知されたアーティキュレート角度とに基づいて右前輪11Rおよび左前輪11Lの各々の目標前輪増速比を決定する。
【0090】
上記のように決定された目標前輪増速比は、目標前輪旋回半径を後輪旋回半径で除した値である。このため目標前輪増速比と、移動速度とに基づいて目標前輪回転速度が算出される。
【0091】
目標前輪回転速度算出部50cにより算出された右前輪11Rの目標前輪回転速度は右前輪回転速度指令部50dRへ出力される。また目標前輪回転速度算出部50cにより算出された左前輪11Lの目標前輪回転速度は左前輪回転速度指令部50dLへ出力される。
【0092】
右前輪回転速度指令部50dRは右前輪11Rの目標前輪回転速度に基づいて右前輪11Rの回転速度を制御し、左前輪回転速度指令部50dLは左前輪11Lの目標前輪回転速度に基づいて左前輪11Lの回転速度を制御する(ステップS4:図7)。
【0093】
具体的には右前輪回転速度指令部50dRは、図2に示される右ポンプソレノイド37Rおよび右モータソレノイド38Rの少なくとも1つに右前輪11Rの回転制御の信号を出力する。上記信号を受けた右ポンプソレノイド37Rは、右油圧ポンプ35PRのポンプ斜板の角度を変更する。また上記信号を受けた右モータソレノイド38Rは、右油圧モータ35MRのモータ斜板の角度を変更する。上記の右油圧ポンプ35PRのポンプ斜板および右油圧モータ35MRのモータ斜板の少なくとも1つの角度が変更されることにより右前輪11Rの回転速度が制御される。
【0094】
また左前輪回転速度指令部50dLは、図2に示される左ポンプソレノイド37Lおよび左モータソレノイド38Lの少なくとも1つに左前輪11Lの回転制御の信号を出力する。上記信号を受けた左ポンプソレノイド37Lは、左油圧ポンプ35PLのポンプ斜板の角度を変更する。また上記信号を受けた左モータソレノイド38Lは、左油圧モータ35MLのモータ斜板の角度を変更する。上記の左油圧ポンプ35PLのポンプ斜板および左油圧モータ35MLのモータ斜板の少なくとも1つの角度が変更されることにより左前輪11Lの回転速度が制御される。
【0095】
上記により、モータグレーダ1の移動速度と旋回角速度とに基づいて、右前輪11Rの回転速度と左前輪11Lの回転速度とが独立して制御される。
【0096】
<本実施形態における効果>
次に、本実施形態における効果について説明する。
【0097】
本実施形態においては、図2に示されるように、モータグレーダ1の移動速度と旋回角速度とに基づいて、右前輪11Rの回転速度と左前輪11Lの回転速度とが独立して制御される。前輪11から牽引力が失われることを抑制することができる。
【0098】
また本実施形態においては、図2に示されるように、モータグレーダ1の旋回角速度がIMU26により測定される。IMU26は、基本的にはモータグレーダ1の如何なる部分に取り付けられた場合でもモータグレーダ1の旋回角速度を測定可能である。このためIMU26を土砂などの影響を受けにくい、たとえば走行輪11、12および作業機4から離れた位置に配置することが可能となる。これによりIMU26が故障しにくい作業機械およびその制御方法を実現することができる。
【0099】
また本実施形態においては、図3に示されるように、制御部50は、速度センサ36で測定された移動速度とIMU26で測定された旋回角速度とに基づいて右後輪12Rと左後輪12Lとを含む後輪12の旋回半径を算出する。この算出された後輪12の旋回半径に基づいて、右前輪11Rと左前輪11Lとの各々の目標前輪回転速度を算出することが可能となる。
【0100】
また本実施形態においては、図3に示されるように、制御部50は、目標前輪回転速度算出部50cにおいて、算出された後輪12の旋回半径と、アーティキュレートセンサ39により検出されたアーティキュレート角度とに基づいて右前輪11Rの目標前輪旋回半径と左前輪11Lの目標前輪旋回半径とを決定する。この決定された右前輪11Rの目標前輪旋回半径と左前輪11Lの目標前輪旋回半径とに基づいて、右前輪11Rと左前輪11Lとの各々の目標前輪回転速度を算出することが可能となる。
【0101】
また本実施形態においては、図3に示されるように、制御部50は、右前輪回転速度指令部50dRにおいて右前輪11Rの目標前輪回転速度となるように第1駆動源35Rを制御し、かつ左前輪回転速度指令部50dLにおいて左前輪11Lの目標前輪回転速度となるように第2駆動源35Lを制御する。これにより、右前輪11Rおよび左前輪11Lの各々の回転速度を独立して制御することが可能となり、前輪11から牽引力が失われることが抑制される。
【0102】
また本実施形態においては、図1に示されるように、IMU26はフロントフレーム22に取り付けられている。これにより走行輪11、12および作業機4から離れた位置に配置することが可能となり、IMU26が土砂などにより故障しにくくなる。
【0103】
また本実施形態においては、図2に示されるように、第1駆動源35Rは右油圧モータ35MRを含み、かつ第2駆動源35Lは左油圧モータ35MLを含む。これにより右前輪11Rの回転速度が右油圧モータ35MRにより制御され、かつ左前輪11Lの回転速度が左油圧モータ35MLにより制御される。よって右前輪11Rの回転速度と左前輪11Lの回転速度とが独立して制御可能である。
【0104】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0105】
1 モータグレーダ、2 車体フレーム、2F 前端、2R 後端、3 キャブ、4 作業機、6 エンジン室、7 ステアリングシリンダ、11 前輪、11L 左前輪、11R 右前輪、12 後輪、12L 左後輪、12R 右後輪、21 リアフレーム、22 フロントフレーム、23 アーティキュレートシリンダ、24 アーティキュレート中心、25 外装カバー、26 IMU、31 エンジン、32 変速機、33 終減速装置、34L 左タンデム装置、34R 右タンデム装置、35L 第2駆動源、35ML 左油圧モータ、35MR 右油圧モータ、35PL 左油圧ポンプ、35PR 右油圧ポンプ、35R 第1駆動源、36 速度センサ、37L 左ポンプソレノイド、37R 右ポンプソレノイド、38L 左モータソレノイド、38R 右モータソレノイド、39 アーティキュレートセンサ、40 ドローバ、41 旋回サークル、42 ブレード、44 リフトシリンダ、49 油圧モータ、50 制御部、50a 後輪旋回半径算出部、50b 前輪旋回半径算出部、50c 目標前輪回転速度算出部、50dL 左前輪回転速度指令部、50dR 右前輪回転速度指令部、50e 記憶部、51 カウンタウェイト、C1 後輪中心。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7