(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け構造、及び、壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け方法
(51)【国際特許分類】
E04F 19/02 20060101AFI20221011BHJP
E04F 13/073 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
E04F19/02 Q
E04F13/073
(21)【出願番号】P 2018142182
(22)【出願日】2018-07-30
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】石田 尚也
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053100(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008047681(DE,A1)
【文献】実開昭54-084822(JP,U)
【文献】米国特許第01608475(US,A)
【文献】特開2007-120047(JP,A)
【文献】特開2016-040442(JP,A)
【文献】実開平06-076530(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/02-19/06
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の角部縁面に添設される取付部と、壁の角部から張り出される定規部が一体成形された壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け構造において、前記定規部には内側に向かってくぼんだ凹状の溝部が形成され、前記凹状溝部は、前記取付部から略垂直に設けられた底部と当該底部から傾斜して設けられた傾斜部を有するものであり、前記凹状溝部の前記傾斜部に化粧シートの端部を挿入して固定することにより前記化粧シートの端部を外部から隠すようにして取り付けることを特徴とする壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け構造。
【請求項2】
前記定規部の頭頂面は平面状の面取り形状もしくは円弧形状に形成されてなり
、前記凹状溝部の前記傾斜部は、前記略垂直な底部を基準に略45度傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1記載の壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け構造。
【請求項3】
壁の角部に壁装用コーナー材を固定して化粧シートを取り付ける方法において、前記壁装用コーナー材は、壁の角部縁面に添設される取付部と壁の角部から張り出される定規部が一体成形されてなるとともに前記定規部には内側に向かってくぼんだ凹状の溝部が形成され、前記化粧シートが前記取付部に沿って貼着されて前記凹状溝部に前記化粧シートの端部が挿入されるとともに、前記凹状溝部は、前記取付部から略垂直に設けられた底部と当該底部から傾斜して設けられた傾斜部を有するものであり、前記凹状溝部の前記傾斜部に化粧シートの端部を挿入して固定することにより前記化粧シートの端部を外部から隠すようにして取り付けることを特徴とする壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスなどの壁装材を壁面に貼り付けて仕上げるクロス仕上げ工事において、コーナー(出隅角)部を綺麗仕上げる目的で壁下地に貼り付けて用いる場合や、左官仕上げ工事において、塗り壁の角部を綺麗に仕上げる目的、また、端部起し等、壁の端部を綺麗に仕上げる目的でモルタル等の塗り壁装材に埋め込んで用いる壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け構造、及び、壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建造物の壁の内装を綺麗に仕上げる目的で、クロス等の化粧シートや塗り壁材の下に見切材、目地部材またはコーナー材等の内装下地材が使用されている。
異なった種類の化粧シートを張り分けて壁に貼着する場合や壁に化粧シート同士の継ぎ目ができる場合、継ぎ目の美観性を高める目的や化粧シートの剥離防止目的で化粧シート間に目地部材が設けられる。
【0003】
特許文献1は、建物の壁の境界構造に関する技術であって、互いに隣接する壁ボード1の境界にコーナー具11を固定しており、コーナー具11は壁ボード1の表面に固定され、壁ボード1との境界に両側に開口して収縮吸収スリット10を設けているもの(
図9、
図10)が開示されている。
【0004】
特許文献2は、コーナー下地材に関する技術であって、コーナー下地材10は、角部1に沿って延びる硬質樹脂製の本体11を有し、角部1に対応して直角に折り曲げられて成形された断面L字形の直角部12と、この直角部12の頂点の両側にそれぞれ設けられる角度調整部13と、これらの角度調整部13の近傍において、直角部12とは反対方向に延びるとともに、表面にクロス21および壁紙31が張り付けられるシート被覆部14と、角度調整部13とシート被覆部14との間に設けられるとともに、シート被覆部14の表面から突出する段付部15を有していること(その段落0016)、シート被覆部14の表面には、クロス21および壁紙31が張り付けられ、これらのクロス21および壁紙31の端縁が段付部15の入隅部分まで達し、当該段付部15に沿って配置されていること(その段落0017)、コーナー下地材としては、天井2および壁3が互いに交差する入隅部分に設けられるものに限らず、
図7に示されるように、壁3B同士が互いに交差する出隅部分に設けられるコーナー下地材10Aでもよく、天井同士が互いに交差する出隅部分に設けられるものでもよいこと(その段落0032、
図7)が記載されている。
【0005】
特許文献3は、目地部材に関する技術であって、目地部材1は、長尺状を呈しており、下部材2と上部材3とで構成されている。下部材2は、上部材3を連結する被係合部25を設けた取付部20と、この取付部20の基部から両側に突設された帯板状の側片部21、21とを備えていること(その段落0015)、下部材2における側片部21,21上に隣接する化粧シート4,4の端部をそれぞれ重ねるとともに、中央部に立設した取付部20の両側面に沿わせる。この状態で側片部21,21は、下地面6aと化粧シート4との間に介在する。側片部21,21が下地面6aと化粧シート4との間に介在された状態で、下部材2の取付部20に形成した嵌合溝25に、上部材3の嵌合部31を強制的に差し込むことにより、係止部31aは弾性力に抗して嵌合溝25内に嵌入(アリ溝構造により嵌合)されるため、使用状態が維持される。これにより、
図5に示すように、上部材3が化粧シート4の端部を覆った状態となるようにして使用すること(その段落0027,0028)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平06-076530号公報
【文献】特開2001-040850号公報
【文献】特開2018-009290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、目地部材としては出隅に固定して化粧シートの側縁を挿入するもの(特許文献1)や、コーナー下地材のシート被覆部に化粧シートを貼り付けるもの(特許文献2)、また下部材に化粧シートを接着し、その後、化粧シートの端部を覆うように上部材を下部材に取り付けるもの(特許文献3)があるものの従来は継ぎ目の美観性を高める目的や化粧シートの剥離防止目的での目地部材を使用しており、目地部材および化粧シートを貼着する際の作業性や化粧シートを交換する際の交換のしやすさを重要視したものは存在しなかった。
目地部材を使用して化粧シートを壁に貼着する場合、最初に目地部材を壁または角部に取り付け、その後化粧シートの側縁を切断する。そして最後に目地部材に化粧シートを取り付けることで完成する。
特許文献1のコーナー具においては、スリットが細幅に形成されているためスリットに切断工具を挿入することができず、スリットの幅を想像しながらスリットに合うように化粧シートを切断する必要があり、作業が大変煩雑で時間がかかってしまう。さらにスリットが細幅であるため、側縁を接着剤等で壁に固着することができず、時間の経過により化粧シートの側縁が外れて壁から浮いてしまう問題が発生する。
また特許文献3の目地部材においては、上部材と下部材に分離されているため、下部材を壁に取り付けてから化粧シートを下部材に取り付け、さらに上部材を下部材に装着する必要があるため、取り付ける作業工程が増え作業が煩雑化してしまう。
さらに特許文献2のコーナー下地材は、化粧シートの側縁がコーナー下地材によって覆った状態となっておらず目視できてしまうため、経年劣化により化粧シートが壁から浮きやすく、化粧シートが壁から浮いてしまった場合には美観性を損なう恐れがある。
【0008】
また経年劣化により目地部材を挟んで一方の化粧シートのみ劣化して破損し、他方の化粧シートはまだ使用できる状態である場合、破損した化粧シートのみ交換したいといった要望がある。しかしながら、特許文献1のコーナー具や特許文献3の目地部材に関しては一度コーナー具や目地部材を取り外す必要があるため、交換作業が複雑化してしまう。
【0009】
このように、化粧シート同士の繋ぎ目の美観性を保ち、かつ化粧シートの取付作業および交換作業を簡単に行うことが可能な内装下地材は従来存在していなかった。
【0010】
さらに現在、建築業界においては大型商業施設の建設ラッシュや景気回復により、工事費の高騰が続いている。このような状況により、内装工事においても品質を落とさずに少しでも工事費を削減するため、内装工事に必要な部品点数を最小限にしたいという要望があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、化粧シートの取付作業および交換作業が容易でかつ化粧シートが剥離し難くさらに継ぎ目の美観性を向上することが可能な壁装用コーナー材および壁の角部の内装構造を提供することである。
さらに、本発明の目的は、壁の角部を平面形状または円弧形状に面取りするコーナー材を化粧シートの剥離を防止するための目地部材として兼用することで、内装工事に必要な部品点数を最小限としてコストを削減した壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け構造、及び、壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、壁の角部に壁装用コーナー材を固定して化粧シートを取り付ける方法において、前記壁装用コーナー材は、壁の角部縁面に添設される取付部と壁の角部から張り出される定規部が一体成形されてなるとともに前記定規部には内側に向かってくぼんだ凹状の溝部が形成され、前記化粧シートが前記取付部に沿って貼着されて前記凹状溝部に前記化粧シートの端部が挿入されるとともに、前記凹状溝部は、前記取付部から略垂直に設けられた底部と当該底部から傾斜して設けられた傾斜部を有するものであり、前記凹状溝部の前記傾斜部に化粧シートの端部を挿入して固定することにより前記化粧シートの端部を外部から隠すようにして取り付けることを特徴とする。
また取り付け方法としては、前記定規部の頭頂面は平面状の面取り形状もしくは円弧形状に形成されてなり、前記取付部が前記壁の角部に貼着されて前記定規部により前記壁の角部が面取りされ、前記化粧シートが前記取付部に沿って貼着されて前記凹状溝部に前記化粧シートの端部が挿入されることを特徴とする。
ここで「面取り」とは、壁の角部を削る等により壁の角部に新しい面を形成することを指し、本実施形態においては壁の角部に壁装用コーナー材を取り付けることにより壁の角部を平面状や円弧形状などの形状に加工することである。
また「面取り形状」とは、壁装用コーナー材の頭頂面の形状であって円弧形状や平面形状をなし、押出成形等により形成される。壁の角部に壁装用コーナー材を取り付けた際に壁の角部の面取りを行うことができる。
本願出願人は、壁装用コーナー材の形状に創意工夫を凝らすことで、(1)壁装用コーナー材を一体成形することで化粧シートの交換作業を簡易化すること、(2)壁装用コーナー材の定規部の形状を鋭意検討することで、より化粧シートの取付作業および交換作業がし易い形状としたこと、(3)壁の角部を円弧形状(R面形状)もしくは平面状に面取りするためのコーナー材を化粧シートの剥離を防止するための目地部材として兼用することで部品点数を最小限にすること、を発明するに至った。
本発明によれば、定規部の頭頂面が円弧形状や平面状等の面取り形状に形成されていることによって壁の角部を簡単に面取りすることが可能で、かつ定規部に設けられた凹状溝部に化粧シートを挿入することで化粧シートの端部が定規部によって被覆されて化粧シートの剥離が防止でき、さらに化粧シート同士の継ぎ目の美観性を保つことが可能となる。
また本発明によれば、取付部と定規部が一体成形されているため、化粧シートの交換作業の際に部材を取り外す等の手間を省くことが可能で簡単に化粧シートを交換することが可能となる。
【0013】
本発明の壁装用コーナー材は、前記凹状溝部が前記取付部から略垂直に設けられた底部と当該底部から傾斜して設けられた傾斜部を有することを特徴とする。
また本発明の壁装用コーナー材は、前記定規部の頭頂面の両端が前記定規部の内側に向かって湾曲して円弧形状をなしていることを特徴とする。
本発明によれば、定規部の頭頂面の両端が定規部の内側に向かって湾曲してキノコの傘のように円弧形状をなしていることにより、頭頂面の両端から円弧形状に頭頂面の両端が突出し、化粧シートの端部を好適に外部から隠すことが可能となる。さらに、頭頂面の両端が円弧形状であるため、凹状溝部に切削工具や接着剤のノズル等が挿入しやすく、化粧シートを凹状溝部から取り外す際も取り外ししやすいという作用効果を奏する。
また、凹状溝部は底部から傾斜して設けられた傾斜部を有するため、傾斜部を切削工具や接着剤のノズルの支える台として使用することが可能である。このように傾斜部を利用することで、凹状溝部のような狭い空間内であっても簡単かつ正確に作業を行うことが可能で、化粧シートの取付作業および交換作業を容易に行うことが可能となる。
【0014】
本発明の壁装用コーナー材は、前記定規部の頭頂面が凹凸のない連続した円弧形状に形成されていることを特徴とする。
また本発明の壁装用コーナー材は、前記定規部の頭頂面が曲率半径4mmの円弧形状に形成されていることを特徴とする。
さらに本発明の壁装用コーナー材は、定規部の頭頂面が平面状の面取り形状に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、壁の角部に壁装用コーナー材を取り付けるだけで凹凸のない綺麗なR面形状や平面形状を壁の角部に簡単に形成できるうえ、化粧シートの剥離を防止するための目地部材として兼用することが可能である。さらに部品点数を最小限にすることができ、化粧シート同士の継ぎ目の美観性を保つことが可能となる。
壁の角部に壁装用コーナー材を取り付けた際に角部の表面を凹凸のない綺麗な円弧形状とするためには、定規部の頭頂面の曲率半径が4mmであることがより好ましい。
【0015】
本発明の壁装用コーナー材は、前記定規部の内部に空洞が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、定規部の内部に空洞が設けられていることにより、壁装用コーナー材が軽量化するうえ、最小限の材料で形成することが可能で材料コストを削減することが可能となる。
【0016】
本発明の壁装用コーナー材は、断面が略L字形状をなしており、前記一対の取付部がなす角度は86~89度であることを特徴とする。
本発明よれば、壁装用コーナー材の断面が略L字形状をなしているため壁の角部に簡単に取り付けることが可能で、かつ一対の取付部がなす角度は86~89度であるため略90度の壁の角部を挟み込むように取付部と壁を密着させて壁装用コーナー材を取り付けることが可能となる。
【0017】
本発明の壁装用コーナー材において、前記取付部は前記定規部との連結部分から他端に向かって厚みが徐々に薄くなるように形成されていることを特徴とする。
取付部の厚みが大き過ぎると壁装用コーナー材が取り付けられていない箇所に比べて取付部に貼着された化粧シートの仕上げ表面が盛りあがって美観を損ねてしまい、逆に薄すぎると角部の強度が不十分となる。厚みを徐々に薄くすることにより、取付部の他端部と壁面との間に大きな段差が生じず、化粧シートを貼着した後の表面に筋目が生じる等の問題を解消することが可能となる。
【0018】
本発明の壁装用コーナー材において、前記定規部は化粧シートと調和する色彩が施されていることを特徴とする。
定規部は外部から目視可能な箇所であるため、化粧シートに合うように白、黒、赤、木目調等の色彩が施されていてもよい。色彩は定規部のみ施されていてもよいし、壁装用コーナー材全体に施されていてもよい。定規部は透明性を有する材質で形成されていてもよい。
【0019】
本発明の壁装用コーナー材は、ポリ塩化ビニルで形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、壁装用コーナー材がポリ塩化ビニル等の硬質の合成樹脂で形成されていることにより、壁の角部の強度を高めることが可能となり、継ぎ目の美観性を高める目的、化粧シートの剥離防止目的、壁の角部に綺麗なR面形状を形成する目的に加えて壁の角部を保護する目的で使用することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、定規部の頭頂面が円弧形状に形成されていることによって壁の角部に適切にR面形状を形成することが可能で、かつ定規部に設けられた凹状溝部に化粧シートを挿入することで化粧シートの端部が定規部によって被覆されて化粧シートの剥離が防止でき、さらに化粧シート同士の継ぎ目の美観性を向上することが可能となる。このように本発明の壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け構造、及び、壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け方法は、壁の角部に丸みを設けるためのコーナー材と目地部材の両方の機能をひとつの部材で提供することが可能となる。
また本発明によれば、取付部と定規部が一体成形されていることや定規部の頭頂面の両端や溝の形状により、化粧シートの取付作業および交換作業が行いやすい壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け構造、及び、壁装用コーナー材を使用した化粧シートの取り付け方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施形態の壁装用コーナー材100を示す斜視図である。
【
図2】上記実施形態の壁装用コーナー材100を示すA-A断面図である。
【
図3】上記実施形態の壁装用コーナー材100の定規部2を示すB拡大図である。
【
図4】上記実施形態の壁装用コーナー材100を示す側面図である。
【
図5】上記実施形態の壁装用コーナー材100を角部に取り付けた状態を示す模式図である。
【
図6】上記実施形態の壁装用コーナー材100を角部に取り付けて化粧シート10を切断する切断工程を示す模式図である。
【
図7】上記実施形態の壁装用コーナー材100において接着剤を化粧シート10の端部に塗布する塗布工程を示す模式図である。
【
図8】上記実施形態の壁装用コーナー材100に化粧シート10を取り付けた状態を示す模式図である。
【
図9】上記実施形態の壁装用コーナー材100において切断工具Sを化粧シート10の端部に押し当てて切断している状態を示す模式図である。
【
図10】上記実施形態の壁装用コーナー材100において切断工具Sで化粧シート10を取り外した状態を示す模式図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態の壁装用コーナー材200を示すA-A断面図である。
【
図12】本発明の第3の実施形態の壁装用コーナー材300を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面を引用しながら説明する。
【0023】
(第1の本実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の壁装用コーナー材100を示す斜視図であり、
図2は、上記実施形態の壁装用コーナー材100を示すA-A断面図である。
図3は、上記実施形態の壁装用コーナー材100の定規部2を示すB拡大図であり、
図4は、上記実施形態の壁装用コーナー材100を示す側面図である。
本実施の形態の壁装用コーナー材100は、継ぎ目の美観性を高める目的や化粧シート10の剥離防止目的および壁の角部Pに綺麗なR面形状を形成する目的で設けられる長尺状の内装下地材であり、ポリ塩化ビニル等の硬質の合成樹脂で形成されている。
壁装用コーナー材100は、断面が略L字形状(
図2)で長手方向に伸長して設けられており、角部Pから突出して設けられる定規部2と、壁に沿って取り付けられる一対の取付部3,3から構成される。
【0024】
定規部2は、壁の角部PにR面形状を形成するためおよび化粧シート10の端部を被覆して固定するための部材であり、両端に設けられた取付部3から紙面上上方(
図1,
図2)に突出して設けられ、定規部2の断面(側面)は全体として略扇形の形状をなす(
図2,
図3)。壁の角部Pに壁装用コーナー材100を取り付けた際に定規部2は壁の角部Pから円弧状に突出して、角部Pに凹凸のない連続した綺麗なR面形状を形成する。
定規部2は、外部から目視可能であるため、化粧シート10に合うように白、黒、赤、木目調等の色彩が施されている。色彩は定規部2のみ施されていてもよいし、壁装用コーナー材100全体に施されていてもよい。定規部2は透明性を有する材質で形成されていてもよい。
定規部2は、角部Pから突出する頭頂面21と、頭頂面21から連続して設けられる頭頂側部22と、化粧シート10の端部10aを挿入するための凹状溝部23を有する。
【0025】
頭頂面21は、外部から視認可能な外側面であり、断面は円弧形状をなし(
図2,
図3)、頭頂面21の両端は連続して頭頂側部22に連結されている。頭頂面21は、壁装用コーナー材100を壁に取り付けた場合に凹凸のない連続したR面形状を形成する頭頂部となる。R面形状の曲率半径は約4mmである。
頭頂側部22は、頭頂面21の両端に設けられ、頭頂面21の両端から定規部2の内側方向に向かってキノコの傘のように湾曲して円弧形状を形成している。頭頂側部22は、一端が頭頂面21と連結し、他端が凹状溝部23と連結している。円弧形状の曲率半径は約0.5mmである。頭頂側部22が頭頂面21の両端から円弧形状に突出していることにより、化粧シート10の端部10aを好適に外部から隠すことが可能となる。
凹状溝部23は、化粧シート10の端部10aを挿入するための溝であり、頭頂側部22よりも定規部2の内側にくぼんだ状態で設けられ(
図3)、取付部3から略垂直に伸張した状態で設けられた底部23aと、頭頂側部22から底部23aにかけて傾斜して設けられた傾斜部23bを備える。
傾斜部23bは、底部23aを基準に略45度傾斜して設けられている。例えば、
凹状溝部23に化粧シート10の端部10aを挿入し、
凹状溝部23と化粧シート10の端部10aの隙間にコーキング等の接着剤Tを充填する場合、接着剤TのノズルNを傾斜部23bに沿わせて配置し、接着剤TのノズルNの先端を
凹状溝部23と化粧シート10の端部10aの隙間に向けることで、狭い箇所でも簡単に安定して接着剤Tを充填することが可能となる。また
凹状溝部23にカッター等の切断工具Sを挿入して、化粧シート10を切断する場合や取り外す場合でも、切断工具Sの先端を傾斜部23bに接触させて支える台とすることで狭い箇所でも簡単に切断工具Sを操作することが可能となる。さらに化粧シート10を交換する場合、切断工具等を利用して古い接着剤Tを
凹状溝部23から掻き出し、古い化粧シート10を取り外す必要があるが、傾斜部23bが底部23aを基準に傾斜して設けられているため凹状溝部23から接着剤Tを掻き出しやすくさらに化粧シート10も取り出しやすくなる。
【0026】
取付部3は、壁装用コーナー材100を壁面に固定するための一対の長尺状の板状部材であり、定規部2の両端から各々伸長して設けられ、一対の取付部3,3は全体として断面L字形状をなす(
図2,
図3)。
一対の取付部3,3がなす角度は86~89度である。このように略90度の壁の角部Pと比較して一対の取付部3,3のなす角度が小さい形状となっているため、壁装用コーナー材100を取り付けた際に壁の角部Pを挟み込むように一対の取付部3,3を壁に密着させて固定することが可能となる。
取付部3は、定規部2との連結部分から取付部3の他端に向かってその厚みが徐々に薄くなるように形成されており、本実施の形態の取付部3は、定規部2との連結部分付近での厚みが約0.8mm、他端部での厚みが約0.2mmである。取付部3の厚みが大き過ぎると壁装用コーナー材100が取り付けられていない箇所に比べて取付部3に貼着された化粧シート10の仕上げ表面が盛りあがって美観を損ねてしまい、逆に薄すぎると角部Pの強度が不十分となる。厚みが徐々に薄くなることによって、取付部3の他端部と壁面との間に大きな段差が生じず、化粧シート10を貼着した後の表面に筋目等が生じない。
取付部3の長さや厚みは取付部3の強度や、角部Pへの固定度合い等を考慮し、適宜選択可能である。
さらに取付部3の定規部2との連結側には複数の円形状の貫通穴3aの列が形成され、貫通穴3aは取付部3の長手方向に沿って間隔をもって複数形成される。本実施の形態の貫通穴3aは、直径約4mmであり長手方向に沿って2列設けられているが、1列でも3列以上でもよい。また貫通穴3aは、楕円形、正方形、長方形、多角形等種々選択可能である。貫通穴3aのサイズや間隔、列数は取付部3の強度や、角部Pへの固定度合いを考慮し、選択可能である。貫通穴3aはパンチング等で簡単に形成できる。
また取付部3の背面側には壁装用コーナー材100を壁に取り付けるための両面テープ等の粘着層3bが設けられており、この粘着層3bを壁に押し当てることによって壁装用コーナー材100を角部Pに貼着可能となっている。
【0027】
(壁装用コーナー材100の使用例)
図5は、上記実施形態の壁装用コーナー材100を角部に取り付けた状態を示す模式図であり、
図6は、上記実施形態の壁装用コーナー材100を角部に取り付けて化粧シート10を切断する切断工程を示す模式図である。
図7は、上記実施形態の壁装用コーナー材100において接着剤を化粧シート10の端部10aに塗布する塗布工程を示す模式図であり、
図8は、上記実施形態の壁装用コーナー材100に化粧シート10を取り付けた状態を示す模式図である。
壁装用コーナー材100を使用して化粧シート10を壁の角部Pに貼着する場合、最初に壁装用コーナー材100の背面側に設けられた粘着層3bを壁に押し当て、壁装用コーナー材100を角部Pに取り付ける(ステップ1-1)。壁装用コーナー材100を取り付けると角部Pに凹凸のない連続したR面形状を形成することができる。
次に、化粧シート10を壁に沿って引張りながら張り付け、化粧シート10の端部10aを取付部3に沿って貼着し、定規部2の
凹状溝部23に端部10aを挿入する(ステップ1-2)。定規部2の
凹状溝部23に化粧シート10の端部10aを挿入すると、定規部2の頭頂側部22によって化粧シート10の端部10aが被覆された状態となる。外部から化粧シート10の端部10aが視認できないため角部Pの美観性を保つことが可能であり、さらに化粧シート10の端部10aが壁面から剥がれてしまうことを防止することが可能となる。
化粧シート10の端部10aが定規部2の
凹状溝部23から湾曲してはみ出てしまう場合は、凹状溝部23の傾斜部23bに切断工具Sを接触させて傾斜部23bを支点とし、
凹状溝部23の底部23aと取付部3との接合箇所Iに切断工具Sの先端を当てながら長手方向に沿って切断工具Sを動かし、化粧シート10を切断する(
図6)。傾斜部23bを使用すると切断工具Sを安定して動かすことが可能となり、化粧シート10の端部10aが直線状に綺麗に切断され、定規部2の
凹状溝部23に適切に挿入することが可能となる。
その後、接着剤TのノズルNを傾斜部23bに沿わせるように配置し、接着剤TのノズルNの先端を
凹状溝部23に向けて、接着剤Tを
凹状溝部23と化粧シート10の端部10aの隙間に充填する(ステップ1-3)(
図7,
図8)。
【0028】
このように本発明の壁装用コーナー材100を使用すると、凹凸のない綺麗なR面形状を壁の角部Pに簡単に形成できるうえ、化粧シート10の端部10aが被覆されることにより角部Pの美観性を保つことが可能で、さらに化粧シート10の剥離を防止することが可能となる。
さらに装用コーナー材100の傾斜部23bを使用することで化粧シート10を簡単かつ綺麗に切断でき、また接着剤Tを正確な箇所に充填することが可能となる。
【0029】
図9は、上記実施形態の壁装用コーナー材100において切断工具Sを化粧シート10の端部に押し当てて切断している状態を示す模式図であり、
図10は、上記実施形態の壁装用コーナー材100において切断工具Sで化粧シート10を取り外した状態を示す模式図である。
次に化粧シート10の劣化等により、化粧シート10を交換する際の交換作業に関して説明を行う。
古い化粧シート10から新しい化粧シート10に交換する場合(
図9,
図10)、交換したい化粧シート10が貼着されてる
凹状溝部23に切断工具Sを当てる。この場合、凹状溝部23の傾斜部23bに切断工具Sの先端を沿わせるように凹状溝部23に切断工具Sを挿入し、その後、凹状
凹状溝部23の傾斜部23bに切断工具Sを当てて傾斜部23bを支点とする。そして古い化粧シート10の端部10aに切断工具Sを当てて取付部3から化粧シート10の端部10aを取り外すように動かし、化粧シート10を取付部3から浮かせて、壁面から取り外す(ステップ2-1)。
その後、さらに
凹状溝部23の傾斜部23bに切断工具Sを当てて傾斜部23bを支点として凹状溝部23に充填されている接着剤Tを掻き出すように切断工具Sの先端を動かし、接着剤Tを
凹状溝部23から除去する(ステップ2-2)。
【0030】
このように、本発明の壁装用コーナー材100を使用すると、化粧シート10を交換する場合であっても壁装用コーナー材100を取り外すことなく簡単に化粧シートを交換することが可能である。
また傾斜部23bを使用して切断工具Sを凹状溝部23に配置するため、傾斜部23bに沿って簡単に切断工具Sが凹状溝部23に挿入され、さらに傾斜部23bの一部を切断工具の支点とすることが可能であるため、切断工具Sを狭い領域内で動かす場合であっても安定した状態で作業を行うことが可能となる。
【0031】
(第2の本実施の形態)
図11は、本発明の第2の実施形態の壁装用コーナー材200を示すA-A断面図である。
本発明の第1の実施形態の壁装用コーナー材100は、定規部2の内部が充填されているものであったが(
図2)、定規部2の内部に空洞24が設けられていてもよい(
図11)。内部の空洞24は、定規部の形状と同様に略扇形の形状をなす。定規部2の内部に空洞24が設けられていることにより、壁装用コーナー材200が軽量化するうえ、最小限の材料で形成されているため材料費を軽減することが可能となる。
【0032】
(第3の本実施の形態)
図12は、本発明の第3の実施形態の壁装用コーナー材300を示す断面図である。
本発明の第1および第2の実施形態の壁装用コーナー材100,200は、定規部2の頭頂面21が円弧形状に形成されていたが、平面状の面取り形状に形成されていてもよい(
図12)。
本実施形態の壁装用コーナー材300は、定規部320の頭頂面に傾斜した平面状の面取り321が形成されている。面取り321は、取付部3を基準として略45度傾斜しており、壁の角部Pに取り付けた場合、壁の角部Pが平面状に面取りされる。
このように、壁の角部を円弧形状にするだけでなく平面形状にすることも可能で、使用目的等により適宜選択可能である。
【0033】
以上、本実施の形態の壁装用コーナー材100,200は壁の角部Pに設けられていたが、壁の角部P以外にも適用可能である。例えば、一対の取付部3を一直線上に配置することで、角部P以外の化粧シート同士の繋ぎ目の目地部材として使用でき、さらに一対の取付部3の配置を変えるだけで出隅壁仕上げ用と入隅壁仕上げ用とを問わずに適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
100,200,300 壁装用コーナー材、
2,320 定規部、
21 頭頂面、
22 頭頂側部、
23 凹状溝部、
23a 底部、
23b 傾斜部、
24 空洞、
3 取付部、
3a 貫通穴、
3b 粘着層、
321 面取り、
10 化粧シート、
10a 端部、
I 接合箇所、
N 接着剤のノズル、
P 壁の角部、
S 切断工具、
T 接着剤