IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本メクトロン株式会社の特許一覧

特許7154865シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法
<>
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図1
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図2
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図3
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図4
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図5
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図6
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図7
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図8
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図9
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図10
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図11
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図12
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図13
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図14
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図15
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図16
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図17
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図18
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図19
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図20
  • 特許-シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/08 20060101AFI20221011BHJP
   B65H 3/54 20060101ALI20221011BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B65H3/08 310H
B65H3/54 310A
H05K3/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018145314
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020019635
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】高木 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】岡 修平
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-056367(JP,A)
【文献】特開平05-008874(JP,A)
【文献】特開平11-079437(JP,A)
【文献】特開平11-333774(JP,A)
【文献】実開昭59-108744(JP,U)
【文献】実開昭61-203637(JP,U)
【文献】特開2004-315218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00- 3/68
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント基板の製造に用いられるシート状部材を取り出すシート取り出し装置であって、
前記シート状部材の一方の縁部側を吸引保持可能な複数の第1吸引手段と、
前記シート状部材の他方の縁部側を吸引保持可能な複数の第2吸引手段と、
前記第1吸引手段を昇降させる第1昇降手段と、
前記第2吸引手段を昇降させる第2昇降手段と、
前記第1昇降手段および前記第2昇降手段の作動を制御する制御手段と、
複数の前記第1吸引手段を回動させて前記第1吸引手段を前記シート状部材に当接させる当接動作と前記シート状部材から離れるための退避動作を行うための第1回動機構と、
複数の前記第2吸引手段を回動させて前記第2吸引手段を前記シート状部材に当接させる当接動作と前記シート状部材から離れるための退避動作を行うための第2回動機構と、
を備え、
前記第1回動機構は、前記複数の第1吸引手段を同時に回転させる第1支持軸と、前記制御手段の作動制御によって当該第1支持軸を回動させる第1回動用アクチュエータとを備え、
前記第2回動機構は、前記複数の第2吸引手段を同時に回転させる第2支持軸と、前記制御手段の作動制御によって当該第2支持軸を回動させる第2回動用アクチュエータとを備え、
前記制御手段は、複数枚の前記シート状部材が積層されている積層体から最上位に積層されている前記シート状部材を前記第1吸引手段および前記第2吸引手段で吸引保持させるように前記第1昇降手段および前記第2昇降手段の作動を制御する第1制御を行い、
前記第1制御の後に、前記第1吸引手段および前記第2吸引手段で吸引保持された前記シート状部材を前記積層体から離間させる方向に移動させるように前記第1昇降手段および前記第2昇降手段の作動を制御する第3制御を行い、
その第3制御の後に、前記第1吸引手段と前記第2吸引手段のうちのいずれか一方をいずれか他方に対して相対的に昇降させるように、前記第1昇降手段と前記第2昇降手段のうちの少なくとも一方の作動を制御することで、吸引保持している以外の前記シート状部材を振り落すための第2制御を行う、
ことを特徴とするシート取り出し装置。
【請求項2】
請求項1記載のシート取り出し装置であって、
前記第1昇降手段は、前記第1吸引手段の長手方向の一方側を昇降させる一方側第1昇降手段と、前記第1吸引手段の長手方向の他方側を昇降させる他方側第1昇降手段とを備え、
前記第2昇降手段は、前記第2吸引手段の長手方向の一方側を昇降させる一方側第2昇降手段と、前記第2吸引手段の長手方向の他方側を昇降させる他方側第2昇降手段とを備え、
前記第2制御では、前記制御手段は、前記第1吸引手段の長手方向の一方側を上昇させるように前記一方側第1昇降手段の作動を制御し、その作動開始の後に前記第1吸引手段の長手方向の他方側を上昇させるように前記他方側第1昇降手段の作動を制御し、
さらに前記第2吸引手段の長手方向の一方側を上昇させるように前記一方側第2昇降手段の作動を制御し、その作動開始の後に前記第2吸引手段の長手方向の他方側を上昇させるように前記他方側第2昇降手段の作動を制御する、
ことを特徴とするシート取り出し装置。
【請求項3】
請求項記載のシート取り出し装置であって、
前記第2制御では、前記第1吸引手段と前記第2吸引手段のうちのいずれか一方を前記積層体から離間させる方向に移動させると共に、前記第1吸引手段と前記第2吸引手段のうちのいずれか他方は移動させない状態となるように、前記第1昇降手段および前記第2昇降手段の作動を制御すると共に、
その作動開始の後に前記第1吸引手段と前記第2吸引手段のうちのいずれか1つを移動させない状態としつつ、前記第1吸引手段と前記第2吸引手段のうちの残りの1つを前記積層体から離間させる方向に移動させるように、前記第1昇降手段および前記第2昇降手段の作動を制御する、
ことを特徴とするシート取り出し装置。
【請求項4】
請求項記載のシート取り出し装置であって、
隣り合う前記シート状部材の間に挿入されて、これらのシート状部材の間での吸着を防止する分離手段と、
前記分離手段を隣り合う前記シート状部材の間に挿入させるように該分離手段を移動させる移動手段とを備え、
前記制御手段は、前記移動手段の作動を制御すると共に、
前記制御手段は、前記第3制御の後に、前記第1吸引手段および前記第2吸引手段で保持されている前記シート状部材と、前記積層体の最上位の前記シート状部材との間に、前記分離手段を配置するように、前記移動手段の作動を制御する第4制御を行う、
ことを特徴とするシート取り出し装置。
【請求項5】
請求項記載のシート取り出し装置であって、
前記シート状部材を平面状に吸引保持可能であると共に前記積層体に対して昇降可能な吸着ベッドを備え、この吸着ベッドは前記制御手段によって作動が制御され、
前記第4制御の後に、前記制御手段は、前記第1吸引手段および前記第2吸引手段で保持されている前記シート状部材の保持を解除するように前記第1吸引手段および前記第2吸引手段の作動を制御して、当該シート状部材を前記積層体に重ねさせる第5制御を行い、
前記制御手段は、前記第5制御の後に、前記積層体を押圧するように前記吸着ベッドを下降させると共に、前記積層体の最上位の前記シート状部材を吸引保持するように前記吸着ベッドの作動を制御する、
ことを特徴とするシート取り出し装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載のシート取り出し装置であって、
前記第1吸引手段および前記第2吸引手段は、弾性部材を材質とすると共に蛇腹状に設けられている吸着パッドを備えている、
ことを特徴とするシート取り出し装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のシート取り出し装置であって、
前記シート状部材を吸引保持する吸着ベッドを備え、
前記吸着ベッドは、複数の吸引孔が設けられていて当該複数の吸引孔を介して前記シート状部材を平面状に吸引可能な吸着板を備える、
ことを特徴とするシート取り出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント基板の製造工程には、多数枚の銅箔のようなシート状部材が積層された部位から1枚のシート状部材を取り出して、別途の処理部位に供給する工程が存在している。このような、フレキシブルプリント基板の製造に用いられるシート状部材を取り出すための装置としては、特許文献1に開示されているものがある。特許文献1に開示の構成では、シート状部材の2枚取りを防止するための機構として、多数のシート状部材の積層状態において、バキュームパッドが積層順の最も上位に位置するシート状部材を吸着した後に、第1のシリンダが作動して移動フレームを持ち上げるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭59-108744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の構成では、多数のシート状部材が積層された状態で、固定フレーム側および移動フレーム側のバキュームパッドを押し付け、その押し付け状態から固定フレーム側は上昇させずに、移動フレーム側を上昇させている。したがって、シート状部材が湾曲して、歪んでしまう場合がある。特に、銅箔には、容易に曲げや折り目等の歪みが付き易いので、バキュームパッドの押し付け状態で、片側である移動フレーム側を持ち上げるのは、上記の歪みの原因となる。
【0005】
このような歪みは、フレキシブルプリント基板の製造の際に、不良の原因となるので好ましくない。
【0006】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、シート状部材に歪みが生じない状態で、シート状部材を複数枚取り出すのを防止可能なシート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、フレキシブルプリント基板の製造に用いられるシート状部材を取り出すシート取り出し装置であって、シート状部材の一方の縁部側を吸引保持可能な第1吸引手段と、シート状部材の他方の縁部側を吸引保持可能な第2吸引手段と、第1吸引手段を昇降させる第1昇降手段と、第2吸引手段を昇降させる第2昇降手段と、第1昇降手段および第2昇降手段の作動を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、複数枚のシート状部材が積層されている積層体から最上位に積層されているシート状部材を第1吸引手段および第2吸引手段で吸引保持させるように第1昇降手段および第2昇降手段の作動を制御する第1制御を行い、その第1制御の後に、第1吸引手段と第2吸引手段のうちのいずれか一方をいずれか他方に対して相対的に昇降させるように、第1昇降手段と第2昇降手段のうちの少なくとも一方の作動を制御することで、吸引保持している以外のシート状部材を振り落すための第2制御を行う、ことを特徴とするシート取り出し装置が提供される。
【0008】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、制御手段は、第1制御の後に、第1吸引手段および第2吸引手段で吸引保持されたシート状部材を積層体から離間させる方向に移動させるように第1昇降手段および第2昇降手段の作動を制御する第3制御を行い、その第3制御の後に、第2制御を行う、ことが好ましい。
【0009】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1昇降手段は、第1吸引手段の長手方向の一方側を昇降させる一方側第1昇降手段と、第1吸引手段の長手方向の他方側を昇降させる他方側第1昇降手段とを備え、第2昇降手段は、第2吸引手段の長手方向の一方側を昇降させる一方側第2昇降手段と、第2吸引手段の長手方向の他方側を昇降させる他方側第2昇降手段とを備え、第2制御では、制御手段は、第1吸引手段の長手方向の一方側を上昇させるように一方側第1昇降手段の作動を制御し、その作動開始の後に第1吸引手段の長手方向の他方側を上昇させるように他方側第1昇降手段の作動を制御し、さらに第2吸引手段の長手方向の一方側を上昇させるように一方側第2昇降手段の作動を制御し、その作動開始の後に第2吸引手段の長手方向の他方側を上昇させるように他方側第2昇降手段の作動を制御する、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第2制御では、第1吸引手段と第2吸引手段のうちのいずれか一方を積層体から離間させる方向に移動させると共に、第1吸引手段と第2吸引手段のうちのいずれか他方は移動させない状態となるように、第1昇降手段および第2昇降手段の作動を制御すると共に、その作動開始の後に第1吸引手段と第2吸引手段のうちのいずれか1つを移動させない状態としつつ、第1吸引手段と第2吸引手段のうちの残りの1つを積層体から離間させる方向に移動させるように、第1昇降手段および第2昇降手段の作動を制御する、ことが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、隣り合うシート状部材の間に挿入されて、これらのシート状部材の間での吸着を防止する分離手段と、分離手段を隣り合うシート状部材の間に挿入させるように該分離手段を移動させる移動手段とを備え、制御手段は、移動手段の作動を制御すると共に、制御手段は、第3制御の後に、第1吸引手段および第2吸引手段で保持されているシート状部材と、積層体の最上位のシート状部材との間に、分離手段を配置するように、移動手段の作動を制御する第4制御を行う、ことが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、シート状部材を平面状に吸引保持可能であると共に積層体に対して昇降可能な吸着ベッドを備え、この吸着ベッドは制御手段によって作動が制御され、第4制御の後に、制御手段は、第1吸引手段および第2吸引手段で保持されているシート状部材の保持を解除するように第1吸引手段および第2吸引手段の作動を制御して、当該シート状部材を積層体に重ねさせる第5制御を行い、制御手段は、第5制御の後に、積層体を押圧するように吸着ベッドを下降させると共に、積層体の最上位のシート状部材を吸引保持するように吸着ベッドの作動を制御する、ことが好ましい。
【0013】
また、本発明の他の側面は、上述の発明において、第1吸引手段および第2吸引手段は、弾性部材を材質とすると共に蛇腹状に設けられている吸着パッドを備えている、ことが好ましい。
【0014】
また、本発明の第2の観点によると、複数のシート状部材が積層された積層体から、最上位のシート状部材を取り出して、フレキシブルプリント基板を製造するフレキシブルプリント基板の製造方法であって、積層体から最上位に積層されているシート状部材を、シート状部材の一方の縁部側を吸引保持可能な第1吸引手段、およびシート状部材の他方の縁部側を吸引保持可能な第2吸引手段で吸引保持させるように第1昇降手段および第2昇降手段の作動を制御する吸引工程と、吸引工程の後に、第1吸引手段と第2吸引手段のうちのいずれか一方をいずれか他方に対して相対的に昇降させるように、第1吸引手段を昇降させる第1昇降手段と第2吸引手段を昇降させる第2昇降手段のうちの少なくとも一方を作動させることで、吸引保持している以外のシート状部材を振り落すための振り落とし工程と、を備えることを特徴とするフレキシブルプリント基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、シート状部材に歪みが生じない状態で、シート状部材を複数枚取り出すのを防止可能なシート取り出し装置およびフレキシブルプリント基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るシート取り出し装置の構成を示す概略図である。
図2図1に示すシート取り出し装置の吸着保持部の概略的な構成を示す図である。
図3図1に示すシート取り出し装置の吸着保持部、回動機構、吸引機構および昇降機構の概略的な構成を示す図である。
図4図1に示すシート取り出し装置の分離板ユニットの概略的な構成を示す図である。
図5図1に示すシート取り出し装置が備える載置台ユニットおよび吸着ベッドを含めたシート取り出し装置の構成を示す概略図であり、シート取り出し装置を側方から見た状態を示す図である。
図6図5に示すシート取り出し装置において、載置台を規定の上昇位置まで上昇させた状態を示す図である。
図7図5に示すシート取り出し装置において、吸着パッドが最上位のシート状部材を吸引保持し、そのシート状部材を上昇した状態を示す図である。
図8図1に示すシート取り出し装置の第1吸着ユニット側の昇降シリンダと、第2吸着ユニット側の昇降シリンダの作動タイミングの第1動作例を示す図であり、それぞれの昇降シリンダの作動時間と高さ位置の関係を示す図である。
図9図5に示すシート取り出し装置において、第1吸着ユニット側の吸着保持部を上昇させると共に、第2吸着ユニット側の吸着保持部を上昇させない状態を示す図である。
図10図9に示す状態から第2吸着ユニット側の吸着保持部を上昇させた状態を示す図である。
図11図10に示す状態から第2吸着ユニット側の吸着保持部を上昇させたままで、第1吸着ユニット側の吸着保持部を下降させた状態を示す図である。
図12図11に示す状態から第2吸着ユニット側の吸着保持部を下降させた状態を示す図である。
図13図1に示すシート取り出し装置の第1吸着ユニット側の昇降シリンダと、第2吸着ユニット側の昇降シリンダの作動タイミングの第2動作例を示す図であり、それぞれの昇降シリンダの作動時間と高さ位置の関係を示す図である。
図14図9に示す状態から第2吸着ユニット側の吸着保持部を上昇させた後に下降させると共に、第1吸着ユニット側の吸着保持部の停止を維持した状態を示す図である。
図15図10に示す状態の後に、吸引保持されているシート状部材と、積層体の最上位のシート状部材の間に、分離板を挿入した状態を示す図である。
図16図15に示す状態の後に、吸引保持されているシート状部材の吸引保持を解除した状態を示す図である。
図17図16に示す状態の後に、吸着保持部を退避位置へと位置させると共に、吸着ベッドを降下させて、吸着板を積層体に対して押し付けた状態を示す図である。
図18図1に示すシート取り出し装置において、第1吸着ユニット側に存在する吸着保持部のうち、並びの一方側に位置する吸着保持部を上昇させた状態を示す斜視図である。
図19図18に示す状態の後に、第1吸着ユニット側に存在する吸着保持部のうち、並びの他方側に位置する吸着保持部を上昇させた状態を示す斜視図である。
図20図19に示す状態の後に、第2吸着ユニット側に存在する吸着保持部のうち、並びの一方側に位置する吸着保持部を上昇させた状態を示す図である。
図21図20に示す状態の後に、第2吸着ユニット側に存在する吸着保持部のうち、並びの他方側に位置する吸着保持部を上昇させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態に係るシート取り出し装置10について、以下に説明する。以下の説明では、支持軸41の長手方向をX方向とし、X1側は図1における紙面右側、X2側は図1における紙面左側とする。また、第1吸着ユニット20と第2吸着ユニット120とを結ぶ方向をY方向とし、Y1側は図1における紙面手前側、Y2側は図1における紙面奥側とする。また、Z方向は図5における吸着ベッド220と載置台ユニット200を結ぶ方向(上下方向)とし、Z1側は図5における紙面奥側(上側)とし、Z2側は図5における紙面手前側(下側)とする。
【0018】
<シート取り出し装置の構成について>
図1は、シート取り出し装置10の構成を示す概略図である。図1に示すように、シート取り出し装置10は、第1吸着ユニット20と、第2吸着ユニット120と、載置台ユニット200と、制御部210と、吸着ベッド220(図5参照)と、を主要な構成要素としている。
【0019】
これらのうち、第1吸着ユニット20は、吸着保持部30と、回動機構40(第1回動機構に対応)と、吸引機構50と、昇降機構60と、分離板ユニット70とを備えている。これらのうち、吸着保持部30は、第1吸引手段の一部に対応する。なお、第1吸引手段は、吸着保持部30のみならず、吸引機構50も対応する。
【0020】
図2は、吸着保持部30の概略的な構成を示す図である。図2に示す吸着保持部30は、シート状部材Sを吸着保持するものであり、回動機構40を構成する支持軸41(第1支持軸に対応)に取り付けられている。この吸着保持部30は、吸着パッド31を備え、その吸着パッド31は、支持アーム32に取り付けられている。
【0021】
この吸着パッド31の材質は、たとえばゴムやエラストマー等のような弾性を有する弾性部材から形成されている。そのため、吸着パッド31の先端側のシート当接部31aがシート状部材Sに当接しても、シート状部材Sにダメージを与えない構成となっている。また、吸着パッド31は、蛇腹状に設けられた筒状部材である。したがって、シート当接部31aの向きは、シート状部材Sに追従して容易に変化可能となっているので、シート状部材Sに反り等のような変形が生じていても、その変形に追従可能となっている。
【0022】
また、吸着パッド31は、支持アーム32の先端側(一端側)に取り付けられている。支持アーム32は、たとえば金属のような剛性を有する部材から形成されていて、吸着パッド31および吸引分岐管路を支持可能となっている。また、支持アーム32は、回動機構40によって回動させられ、それによって吸着パッド31がシート状部材Sに対して当接する当接動作と、シート状部材Sから離れる退避動作とを行える構成となっている。
【0023】
図3は、吸着保持部30、回動機構40、吸引機構50および昇降機構60の概略的な構成を示す図である。回動機構40は、支持軸41と、支持柱42と、回動用アクチュエータ43(第1回動用アクチュエータに対応)とを備えている。支持軸41は、支持アーム32の他端側が取り付けられる部分であり、後述する回動用アクチュエータ43の作動によって回動させられる部材である。この支持軸41は、少なくとも2箇所が支持柱42で回動可能に支持された軸部材である。なお、支持柱42は、フレーム44から立設された部材であり、支持軸41や吸着保持部30を支持する部分である。また、フレーム44は、支持柱42を支持する部材であり、たとえば支持柱42の下方側に配置された、金属製の長尺状の部材が該当する。
【0024】
また、支持軸41の一端側には、駆動伝達機構45を介して回動用アクチュエータ43が取り付けられている。この回動用アクチュエータ43の作動により支持軸41が回動させられる。この回動動作における一端部は、吸着パッド31がシート状部材Sに対して当接する動作の終点であり、また回動動作における他端部は、シート状部材Sから離れる退避動作の終点である。ここで、回動用アクチュエータ43としては、たとえばエアシリンダ、油圧シリンダ、電磁シリンダ、ソレノイド、モータ等を用いることができる。なお、回動用アクチュエータ43は、支持軸41に対して直結されても良い。
【0025】
また、吸引機構50は、吸引ポンプ51と、吸引管路52とを備えている。吸引ポンプ51は、吸着パッド31によってシート状部材Sを吸引保持するための負圧を与えるものである。この吸引ポンプ51には、吸引管路52の一端側が接続されていて、該吸引管路52の他端側が吸着パッド31に接続されている。したがって、吸引ポンプ51が作動し、吸着パッド31がシート状部材Sに当接すると、吸着パッド31によってシート状部材Sを吸引保持可能となる。
【0026】
なお、吸引管路52は、たとえば弾性を有する材質から形成されたチューブ、金属や樹脂製のパイプ等、空気を流通させる筒状の部材であれば、どのようなものであっても良い。また、上述した支持アーム32が筒状に設けられている場合には、この支持アーム32も吸引管路52の一構成要素に該当する。
【0027】
また、昇降機構60は、上述した吸着保持部30、回動機構40をおよび吸引管路52の少なくとも一部を昇降させるための機構である。なお、昇降機構60は、吸引管路52の少なくとも一部のみならず、吸引ポンプ51を昇降させるようにしても良い。また、昇降機構60は、第1昇降手段に対応する。この昇降機構60は、フレーム44の長手方向の両端側にそれぞれ配置されている。この昇降機構60は、懸架部材61と、昇降シリンダ62とを備えている。
【0028】
懸架部材61は、フレーム44の端部および昇降シリンダ62のシリンダロッドの先端部とを結ぶ機構であり、たとえばリンク機構や軸受等を用いることができる。特に、リンク機構を用いる場合には、フレーム44の一端側の昇降シリンダ62と、フレーム44の他端側の昇降シリンダ62とが、異なるタイミングで昇降させる動作を行うことができ、フレーム44およびそのフレーム44に支持されている吸着保持部30等を傾斜させることができる。
【0029】
しかしながら、懸架部材61は、リンク機構や軸受を用いずに、フレーム44と昇降シリンダ62の間を、たとえば金属製の柱状部材で連結するようにしても良い。なお、昇降シリンダ62のシリンダロッドは、通常は傾斜することが不能であるので、懸架部材61が金属製の柱状部材で構成される場合には、フレーム44の一端側の昇降シリンダ62と、フレーム44の他端側の昇降シリンダ62とが、同じタイミングで昇降させる動作を行うようにすることが好ましい。
【0030】
また、昇降シリンダ62は、フレーム44や吸着保持部30等が昇降する駆動力を与えるものである。この昇降シリンダ62としては、たとえばエアシリンダ、油圧シリンダ、電磁シリンダ、ソレノイド、モータ等を用いることができる。
【0031】
図4は、分離板ユニット70の概略的な構成を示す図である。図4に示すように、分離板ユニット70は、分離板71と、支持アーム72と、連結ビーム73と、分離板アクチュエータ74と、ガイド部材75とを備えている。分離板71は、積層体PS(図5参照)の最上位のシート状部材Sが吸着保持部30によって保持されたまま持ち上げられた場合に、持ち上げられたシート状部材Sの直ぐ下側に位置しているシート状部材Sとの間に挿入される板状の部材である。この分離板71の挿入により、後に吸着保持部30で保持されているシート状部材Sが降下しても、直ぐ下のシート状部材Sに対して密着して離れなくなるのを防止することができる。なお、分離板71は分離手段に対応する。
【0032】
ここで、分離板71は、シート状部材Sに対してダメージを与え難い材質から形成されている。具体的には、分離板71は、シート状部材Sによって押圧力が付与されても、容易に変形可能な材質から形成されている。そのような材質としては、たとえばバネ鋼や、弾性を有する樹脂が挙げられる。なお、塵埃がシート状部材Sに付着するのを防ぐ観点から、分離板71の材質は、バネ鋼が好適である。
【0033】
また、支持アーム72は、分離板71を支持する部材であり、分離板71の一端側を保持している。また、連結ビーム73は、複数(図1および図4では3つ)の支持アーム72を連結している部材である。また、分離板アクチュエータ74は、移動手段に対応し、支持アーム72をシート状部材Sに対して近接および離間させるような動作を実行させるものである。このような分離板アクチュエータ74としては、たとえばエアシリンダ、油圧シリンダ、電磁シリンダ、ソレノイド、モータ等を用いることができる。なお、本実施の形態では、分離板アクチュエータ74は、連結ビーム73を移動させるように取り付けられている。また、ガイド部材75は、分離板アクチュエータ74の作動による、連結ビーム73の移動をガイドする部材であり、たとえばレール状の部材や、リニアガイド等が該当する。
【0034】
なお、図1に示すように、第2吸着ユニット120は、第1吸着ユニット20と同様の構成を有している。具体的には、第2吸着ユニット120は、吸着保持部130、回動機構140(第2回動機構に対応)、吸引機構150、昇降機構160および分離板ユニット170を備えている。
【0035】
すなわち、吸着保持部130は、シート当接部131aを有する吸着パッド131、支持アーム132を備えている。なお、吸着保持部130は、第2吸引手段の一部に対応する。また、回動機構40は、支持軸141(第2支持軸に対応)、支持柱142、回動用アクチュエータ143(第2回動用アクチュエータに対応)、およびフレーム144を備えている。また、吸引機構150は、吸引ポンプ151、吸引管路152を備えている。なお、吸引機構150は、第2吸引手段の一部に対応する。また、昇降機構160は、懸架部材161および昇降シリンダ162を備えている。なお、昇降機構160は、第2昇降手段に対応する。また、分離板ユニット170は、分離板171、支持アーム172、連結ビーム173、分離板アクチュエータ174、およびガイド部材175を備えている。なお、分離板171は分離手段に対応し、分離板アクチュエータ174は、移動手段に対応する。これらの各部位は、第1吸着ユニット20の対応する部位の構成と同様の構成であるので、その説明は省略する。
【0036】
また、シート取り出し装置10は、載置台ユニット200を備えている。図5は、載置台ユニット200および吸着ベッド220を含めたシート取り出し装置10の構成を示す概略図であり、シート取り出し装置10を側方から見た状態を示す図である。図5に示すように、載置台ユニット200は、載置台201と、昇降ガイド202と、載置台用シリンダ203とを有している。
【0037】
載置台201は、平板状に設けられている部材であり、その上面側には多数のシート状部材Sが載置される。また、昇降ガイド202は、載置台201の縁部側(たとえば載置台201の縁部側に設けられた凹部等)に、所定の間隔で配置されることで、載置台201が位置ずれすることなく、上下方向(Z方向)に昇降するのをガイドする部材である。また、載置台用シリンダ203は、載置台201が上下方向(Z方向)に移動する駆動力を与える部材である。この載置台用シリンダ203としては、たとえばエアシリンダ、油圧シリンダ、電磁シリンダ、ソレノイド、モータ等を用いることができる。
【0038】
また、シート取り出し装置10は、制御部210を備えている。この制御部210は、第1吸着ユニット20および第2吸着ユニット120の各駆動部位の駆動を制御する部分である。具体的には、制御部210は、回動用アクチュエータ43,143、吸引ポンプ51,151、昇降シリンダ62,162および分離板アクチュエータ74,174の駆動を制御する。
【0039】
また、制御部210は制御手段に対応する。この制御部210は、たとえばコンピュータであり、外部記憶装置を含むメモリに記憶されている所定の制御データおよび所定の制御プログラムを実行することで、各種の制御動作を実行可能としている。なお、制御部210が実行する制御動作については、後述する。
【0040】
図5に示すように、吸着ベッド220は、吸着板221と、移動機構連結部222と、図示を省略する吸引手段と、図示を省略する移動機構を備えている。吸着板221には、図示を省略する吸引孔が複数設けられている。このため、吸着板221は、シート状部材Sを、平面状に吸引可能となっている。また、移動機構連結部222は、図示を省略する移動機構に連結されている部分である。そのため、移動機構の作動により、吸着板221を降下させたり、吸着ベッド220で吸引されたシート状部材Sを、別途の処理部位に搬送することが可能となっている。
【0041】
なお、シート状部材Sは、フレキシブルプリント基板の製造に用いられるシート状の部材であり、たとえば銅箔シート、ポリイミドシート等が該当する。なお、銅箔シートやポリイミドフィルム等のシート状部材Sには、たとえば銅箔フィルムやポリイミドフィルムといった基材に、リリースフィルムや保護フィルムといった別途のフィルム部材が貼り付けられていても良く、そのようなフィルム部材が貼り付けられていなくても良い。シート状部材Sにおける、たとえば銅箔材やポリイミド材等の基材に対して、別途のフィルム部材が貼り付けられている場合、基材とフィルム部材の熱収縮率の相違により、シート状部材Sには反りが生じ易い状態となっている。
【0042】
<制御動作について>
以上のように構成されたシート取り出し装置10を用いたフレキシブルプリント基板の製造方法について、以下に説明する。なお、以下の説明では、第1工程から第7工程について順次記載するが、これら以外の種々の工程が存在していても良いのは勿論である。
【0043】
(1)第1工程:最上位のシート状部材Sの吸着保持(第1制御)
まず、図5に示すように、多数のシート状部材Sが積層された積層体PSを、所定の載置部位にセットする。その後に、図6に示すように、制御部210は、吸着保持部30の吸着パッド31の先端部を積層体PSの最上位のシート状部材S(以下、このシート状部材Sをシート状部材S1とする)に対して当接させるべく、載置台201を規定の上昇位置まで上昇させるように、載置台用シリンダ203を作動させる。このとき、制御部210は、吸引機構50の吸引ポンプ51を作動させて、最上位のシート状部材Sを吸着パッド31によって吸引保持させる。
【0044】
ここで、吸着パッド31が当接する最上位のシート状部材S1には、その端部側が上側(Z1側)に向かうように反りが生じている場合がある。しかしながら、吸着パッド31は、ベローズ状に設けられていて、弾性的に変形可能となっている。したがって、シート状部材S1の反っている部位に吸着パッド31の先端部が当接しても、その反りに倣うように吸着パッド31が変形可能となっている。したがって、吸着パッド31の先端部が最上位のシート状部材S1に当接する際に、その当接部位にダメージを与えるのを防止可能となっている。
【0045】
なお、制御部210は、載置台用シリンダ203の上昇に代えて、吸着パッド31がシート状部材S1に向かって下降するように昇降シリンダ62を作動させても良い。このようにしても、最上位のシート状部材S1を吸引保持することができる。
【0046】
(2)第2工程:最上位のシート状部材S1の積層体PSからの離間(第3制御)
次に、図7に示すように、制御部210は、吸着パッド31が最上位のシート状部材Sを吸引保持した状態で(すなわち、吸引ポンプ51が作動した状態で)、最上位のシート状部材Sを積層体PSから離間させるように、載置台用シリンダ203および昇降シリンダ62を作動させる。
【0047】
具体的には、制御部210は、載置台201を規定の退避位置まで下降させるように、載置台用シリンダ203を作動させる。それにより、積層体PSと吸引保持されたシート状部材S1の間に、比較的大きな空間が形成される。このとき、シート状部材S1を持ち上げた後に、残りの積層体PSの中で最上位に位置するシート状部材S(以下、このシート状部材Sをシート状部材S2とする)が想定される範囲内で大きく反っていても、シート状部材S1とシート状部材S2の間には、確実に隙間が形成されるような空間となっている。
【0048】
(3)第3工程:振り落とし動作の実施(第2制御)
ところで、最上位のシート状部材S1を持ち上げる場合、そのシート状部材S1が積層時には隣り合っていた次位のシート状部材S2も、一緒に持ち上げられてしまう場合がある。また、次位のシート状部材S2を含めて、複数枚のシート状部材Sが持ち上げられてしまう場合もある。特に、シート状部材Sの表面粗さが非常に小さい場合(シート状部材Sが非常に滑らかな場合)、隣り合って密着しているシート状部材Sの間には、空気が入り込み難くなるので、そのようなシート状部材S同士の密着保持(以下、シート状部材Sの多数取りとする)が生じ易くなる。
【0049】
そこで、積層体PSの最上位のシート状部材S1を持ち上げた後に、そのシート状部材S1に他のシート状部材Sが密着していることを想定して、他のシート状部材Sの振り落とし動作を実施する。具体的には、制御部210は、第1吸着ユニット20側の昇降シリンダ62と、第2吸着ユニット120側の昇降シリンダ162とを、一緒のタイミングではなく、異なるタイミングで作動させるように制御する。以下、そのような振り落とし動作(第1の動作例および第2の動作例)に関して説明する。
【0050】
(3-1)振り落とし動作の第1動作例
図8は、第1吸着ユニット20側の昇降シリンダ62と、第2吸着ユニット120側の昇降シリンダ162の作動タイミングの第1の動作例を示す図である。図8に示すように、制御部210は、最初に第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を上昇させるように昇降シリンダ62を作動させるが、同じタイミングでは第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を上昇させずに、昇降シリンダ162の作動は停止しておく。このイメージを、図9に示す。すると、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を上昇した際に、シート状部材S1が斜めに傾斜する。このため、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなり、他のシート状部材Sの多くがシート状部材S1から落下する。
【0051】
次に、図8および図10に示すように、制御部210は、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を規定位置まで上昇させるのに前後して、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を規定位置まで上昇させるように昇降シリンダ162を作動させる。すると、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30と、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130とが、共に上昇した状態となる。
【0052】
次に、制御部210は、第1吸着ユニット20側の昇降シリンダ62と、第2吸着ユニット120側の昇降シリンダ162とを、再び異なるタイミングで作動させるように制御する。具体的には、図8および図11に示すように、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を上昇させたままで、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を規定位置まで下降させる。このとき、シート状部材S1は、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30側が下側(Z2側)に位置するように斜めに傾斜するが、シート状部材S1の第1吸着ユニット20側は、次位のシート状部材S2に対して接触せずに間隔を有した状態となっている。
【0053】
次に、図8および図12に示すように、制御部210は、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を規定位置まで下降させるのに前後して、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を下降させた状態を維持したままで、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を規定位置まで下降させるように昇降シリンダ162を作動させる。このとき、シート状部材S1の第1吸着ユニット20側と共に、シート状部材S1の第2吸着ユニット120側も、次位のシート状部材S2に対して接触せずに間隔を有した状態となっている。
【0054】
次に、図8および図9に示すように、制御部210は、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を規定位置まで下降させるのに前後して、再び第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を上昇させるように昇降シリンダ62を作動させるが、同じタイミングでは第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を上昇させずに、昇降シリンダ162の作動は停止しておく。
【0055】
次に、図8および図10に示すように、制御部210は、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を規定位置まで上昇させるのに前後して、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を規定位置まで再び上昇させるように昇降シリンダ162を作動させる。すると、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30と、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130とが、共に上昇した状態となる。それにより、吸着保持されているシート状部材S1と、次位のシート状部材S2の間には、大きな隙間が形成される。また、上述したような第1吸着ユニット20および第2吸着ユニット120の上昇および下降を繰り返すことにより、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が一層入り易くなり、他のシート状部材Sがシート状部材S1から落下する。
【0056】
以後は、後述する第4工程に移行する。しかしながら、より確実に他のシート状部材Sをシート状部材S1から落下させるために、再び図8に基づく振り落とし動作を繰り返すようにしても良い。
【0057】
(3-2)振り落とし動作の第2動作例
次に、振り落し動作の第2動作例について説明する。図13は、第1吸着ユニット20側の昇降シリンダ62と、第2吸着ユニット120側の昇降シリンダ162の作動タイミングの第2の動作例を示す図である。図13に示すように、最初に第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を規定位置まで上昇させるように昇降シリンダ62を作動させるが、同じタイミングでは第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を上昇させずに、昇降シリンダ162の作動は停止しておく。このイメージは、既に図9に示したのと同様となり、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を上昇した際に、シート状部材S1が斜めに傾斜する。このため、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなり、他のシート状部材Sの多くがシート状部材S1から落下する。
【0058】
次に、制御部210は、図13および図14に示すように、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を規定位置まで上昇させた後に、その第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を規定位置まで下降させるように昇降シリンダ162を作動させるが、同じタイミングでは第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を下降させずに、昇降シリンダ62の作動は停止しておく。すると、上昇の頂部に至った吸着保持部130は、再び下降させられるので、シート状部材S1は、はためかせられたのと同様の状態となり、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなる。それにより、他のシート状部材Sの多くがシート状部材S1から落下する。なお、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を規定位置まで下降させた際に、シート状部材S1の第2吸着ユニット120側は、次位のシート状部材S2に対して接触せずに間隔を有した状態となっている。
【0059】
さらに、制御部210は、図13および図12に示すように、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を規定位置まで下降させるのに前後して、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を規定位置まで下降させるように昇降シリンダ62を作動させるが、同じタイミングでは第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を上昇させずに、昇降シリンダ162の作動は停止しておく。このとき、シート状部材S1の第2吸着ユニット120側と共に、シート状部材S1の第1吸着ユニット20側も、次位のシート状部材S2に対して接触せずに間隔を有した状態となっている。
【0060】
次に、制御部210は、図13および図11に示すように、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を規定位置まで下降させるのに前後して、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を上昇させるように昇降シリンダ162を作動させるが、同じタイミングでは第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を上昇させずに、昇降シリンダ62の作動は停止しておく。
【0061】
次に、制御部210は、図13および図10に示すように、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130を上昇させたままで、再び第1吸着ユニット20側の吸着保持部30を規定位置まで上昇させるように昇降シリンダ162を作動させる。すると、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30と、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130とが、共に上昇した状態となる。それにより、吸着保持されているシート状部材S1と、次位のシート状部材S2の間には、大きな隙間が形成される。また、上述したような第1吸着ユニット20および第2吸着ユニット120の上昇および下降を繰り返すことにより、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が一層入り易くなり、他のシート状部材Sがシート状部材S1から落下する。
【0062】
以後は、後述する第4工程に移行する。しかしながら、より確実に他のシート状部材Sをシート状部材S1から落下させるために、再び図13に基づく振り落とし動作を繰り返すようにしても良い。
【0063】
なお、第1吸着ユニット20側の昇降シリンダ62と、第2吸着ユニット120側の昇降シリンダ162とを、一緒のタイミングではなく、異なるタイミングで作動させるような制御は、上記に限られるものではない。すなわち、最上位のシート状部材S1に密着している他のシート状部材Sを良好に落下させることができるものであれば、第1吸着ユニット20側の昇降シリンダ62と、第2吸着ユニット120側の昇降シリンダ162の動作のタイミングは、どのようなものであっても良い。
【0064】
(4)第4工程:分離板71の挿入(第4制御)
次に、図15に示すように、制御部210は、吸着保持部30,130で吸引保持されている(持ち上げられた)シート状部材S1と、残りの積層体PSの最上位のシート状部材S2の間に、分離板71を挿入するように、分離板アクチュエータ74を作動させる。
【0065】
(5)第5工程:最上位のシート状部材S1の吸引保持の解除(第5制御)
次に、制御部210は、載置台201を上昇させるように載置台用シリンダ203を作動させる。これと共に、制御部210は、第1吸着ユニット20側の吸引ポンプ51と、第2吸着ユニット120側の吸引ポンプ151の作動を停止させて、最上位のシート状部材S1の吸引保持を解除する。このとき、吸着保持部30,130を下降させるように、昇降シリンダ62,162を制御しても良い。
【0066】
すると、図16に示すように、最上位のシート状部材S1の吸引保持の解除により、最上位のシート状部材S1は、シート状部材S2(積層体PS)に向かって落下する。このとき、最上位のシート状部材S1と、シート状部材S2との間に、分離板71が挟み込まれる状態となる。なお、分離板71は弾性変形可能な部材によって形成されているので、分離板71がシート状部材S1,S2に当接しても、それらに損傷を与えるのを防ぐことが可能となっている。
【0067】
なお、シート状部材S1の吸引保持の解除後に、制御部210は、回動用アクチュエータ43,143を作動させて、吸着保持部30,130を退避位置へと位置させる(図17参照)。それにより、次工程で吸着ベッド220が下降しても、吸着保持部30,130が吸着ベッド220と干渉するのを防ぐことができる。
【0068】
(6)第6工程:吸着ベッド220による最上位のシート状部材S1の吸引保持
次に、制御部210は、不図示の吸引手段および移動機構を作動させつつ、吸着ベッド220を降下させる。そして、吸着板221を積層体PSに対して押し付け、該積層体PSを吸着板221と載置台201とで挟み込む状態とする。このとき、最上位のシート状部材S1に反りが生じていても、この挟み込み動作によって、最上位のシート状部材S1は、その反りが矯正された状態で吸着板221に吸引保持される。この様子を、図17に示す。なお、図17に示す状態でも、図16に示す状態と同様に、最上位のシート状部材S1と、シート状部材S2との間に、分離板71が挟み込まれている。
【0069】
ここで、吸着板221を強く押し付けてしまうと、積層体PSと吸着板221の間に分離板71,171が挟み込まれることで、打痕が発生してしまう虞がある。かかる打痕を生じさせないために、吸着ベッド220が図示を省略する吸引ブロワを備え、その吸引ブロワで吸引しながら吸着板221が徐々に下降する。そして、吸着板221が最上位のシート状部材S1を下側(Z2側)に押し付ける直前に、その最上位のシート状部材S1のみを上昇させるように吸引することが好ましい。なお、吸着板221は、最上位のシート状部材S1を吸着保持するまで徐々に下降し、そのシート状部材S1を吸着保持すると、吸着板221の下降が停止される。ここで、最上位のシート状部材S1を吸着保持したか否かの判断のために、吸着ベッド220は、図示を省略する真空センサを備えるようにしても良い。
【0070】
なお、最上位のシート状部材S1を始めとして、シート状部材Sに反りが生じている場合、最上位のシート状部材S1が平坦状となるまで吸着板221が下降しないと、真空センサが最上位のシート状部材S1を吸引ブロワで吸着保持したと判断しない。その場合、最上位のシート状部材S1が吸引ブロワで吸引可能となる程度まで、最上位のシート状部材S1が平坦状に押し込まれる。しかしながら、平坦状に押し込まれても、最上位のシート状部材S1を吸着保持した際には、それ以上の最上位のシート状部材S1の下側(Z2側)への押し込みは停止されるので、上述のような打痕が生じるのを防ぐことが可能となる。
【0071】
なお、吸着板221で最上位のシート状部材S1が吸引された後に、不図示の移動機構を作動させて、吸着ベッド220を上昇させ、その後に最上位のシート状部材S1を別途の処理部位へと搬送する。
【0072】
(7)第7工程:載置台201の下降(初期位置への復帰)
次に、制御部210は、載置台201を下降させるように載置台用シリンダ203を作動させて、載置台201を初期位置へと移動させる。そして、以後は、上述した第1工程から第7工程の動作を繰り返し、積層体PSから順次、シート状部材Sを取り出すようにする。
【0073】
<他の制御動作について>
ところで、上述のような第1吸着ユニット20側および第2吸着ユニット120側の、他のシート状部材Sを落下させるための動作は、次のようにしても良い。まず、上述した図6で説明したのと同様な第1工程(最上位のシート状部材Sの吸着保持)を実施する。この第1工程は、既に説明しているので、その説明を省略する。
【0074】
次に、第2工程(最上位のシート状部材S1の積層体PSからの離間)および第3工程(振り落とし動作の実施)を兼ねた動作として、次のような第8工程~第11工程の動作を行う。
【0075】
(8)第8工程:第1吸着ユニット20の並びの一方側(X1側)の吸着保持部30の上昇
第1工程の後に、たとえば第1吸着ユニット20側に存在する吸着保持部30のうち、並びの一方側(X1側)に位置する吸着保持部30が上昇するように、制御部210が昇降シリンダ62の作動を制御する。この状態を、図18に示す。すると、支持軸41は傾斜するので、吸着保持部30のうち、並びの一方側(X1側)から他方側(X2側)に向かうにつれて、吸着保持部30の高さ位置が徐々に低くなる。このとき、第2吸着ユニット120側に存在する吸着保持部130は、高さ位置が揃う状態で並んでいるので、吸引保持されているシート状部材S1は、平面状ではなく、奥側(Y2側)が捩じれるように吸引保持された状態となる。
【0076】
このような、シート状部材S1を捩じるような動作の実施により、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなり、他のシート状部材Sの多くがシート状部材S1から落下する。
【0077】
(9)第9工程:第1吸着ユニット20の並びの他方側(X2側)の吸着保持部30の上昇
次に、第1吸着ユニット20側に存在する吸着保持部30のうち、並びの他方側(X2側)に位置する吸着保持部30が上昇するように、制御部210が昇降シリンダ62の作動を制御する。この状態を、図19に示す。すると、第1吸着ユニット20側の吸着保持部30は全体的に上昇した状態となる。このとき、第1吸着ユニット20側では、吸着保持されているシート状部材S1と次位のシート状部材S2との間に、隙間が形成される。
【0078】
このとき、シート状部材S1は、捩じれ状態から復帰して、その奥側(Y2側)が全体的に持ち上げられる状態となる。かかる動作の実施によっても、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなり、他のシート状部材Sの多くがシート状部材S1から落下する。
【0079】
(10)第10工程:第2吸着ユニット120の並びの一方側(X1側)の吸着保持部130の上昇
次に、第2吸着ユニット120側に存在する吸着保持部130のうち、並びの一方側(X1側)に位置する吸着保持部130が上昇するように、制御部210が昇降シリンダ162の作動を制御する。この状態を、図20に示す。すると、支持軸141は傾斜するので、吸着保持部130のうち、並びの一方側(X1側)から他方側(X2側)に向かうにつれて、吸着保持部130の高さ位置が徐々に低くなる。このとき、第1吸着ユニット20側の複数の吸着保持部30は、同じ高さとなるように既に上昇しているので、吸引保持されているシート状部材S1は、平面状ではなく、手前側(Y1側)が捩じれるように吸引保持された状態となる。
【0080】
このような、シート状部材S1を捩じるような動作の実施により、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、さらに空気が入り易くなり、他のシート状部材Sの多くがシート状部材S1から落下する。
【0081】
(11)第11工程:第2吸着ユニット120の並びの他方側(X2側)の吸着保持部130の上昇
次に、第2吸着ユニット120側に存在する吸着保持部130のうち、並びの他方側(X2側)に位置する吸着保持部130が上昇するように、制御部210が昇降シリンダ162の作動を制御する。この状態を、図21に示す。すると、第2吸着ユニット120側の吸着保持部130は全体的に上昇した状態となる。また、このときには、既に第1吸着ユニット20側の吸着保持部30は、全体的に上昇している。したがって、吸着保持されているシート状部材S1と次位のシート状部材S2との間には、概ね平行な状態の隙間(空間)が形成される。
【0082】
このとき、シート状部材S1は、捩じれ状態から復帰して、その奥側(Y2側)が全体的に持ち上げられる状態となる。かかる動作の実施によっても、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなり、他のシート状部材Sがシート状部材S1から落下する。
【0083】
このような、第8工程~第11工程の動作を経ることにより、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなり、シート状部材S1に密着していた他のシート状部材Sが落下する。
【0084】
なお、第11工程の後には、上述したような、第4工程(分離板71の挿入)、第5工程(最上位のシート状部材S1の吸引保持の解除)、第6工程(吸着ベッド220による最上位のシート状部材S1の吸引保持)、および第7工程(載置台201の下降(初期位置への復帰))を、順次実行する。
【0085】
なお、上述した各工程の後に、フレキシブルプリント基板を製造するための各工程を実施することで、製品としてのフレキシブルプリント基板が製造される。
【0086】
<効果について>
以上のような構成のシート取り出し装置10は、フレキシブルプリント基板の製造に用いられるシート状部材Sを取り出すものであり、シート状部材Sの一方の縁部側を吸引保持可能な吸着保持部30(第1吸引手段)と、シート状部材Sの他方の縁部側を吸引保持可能な吸着保持部130(第2吸引手段)と、吸着保持部30(第1吸引手段)を昇降させる昇降機構60(第1昇降手段)と、吸着保持部130(第2吸引手段)を昇降させる昇降機構160(第2昇降手段)と、昇降機構60(第1昇降手段)および昇降機構160(第2昇降手段)の作動を制御する制御部210(制御手段)とを備える。
【0087】
また、制御部210(制御手段)は、複数枚のシート状部材Sが積層されている積層体PSから最上位に積層されているシート状部材S1を吸着保持部30(第1吸引手段)および吸着保持部130(第2吸引手段)で吸引保持させるように昇降機構60(第1昇降手段)および昇降機構160(第2昇降手段)の作動を制御する第1制御を行い、その第1制御の後に、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)のうちのいずれか一方をいずれか他方に対して相対的に昇降させるように、昇降機構60(第1昇降手段)と昇降機構160(第2昇降手段)のうちの少なくとも一方の作動を制御することで、吸引保持している以外のシート状部材Sを振り落すための第2制御を行う。
【0088】
このため、第1制御により、最上位のシート状部材S1が吸着保持部30(第1吸引手段)および吸着保持部130(第2吸引手段)で吸引保持された状態とした後に、第2制御により、その第1制御の後に、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)のうちのいずれか一方をいずれか他方に対して相対的に昇降させることで、吸引保持されているシート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなり、他のシート状部材Sの多くがシート状部材S1から落下する。したがって、シート状部材Sを複数枚取り出すのを防止可能となる。
【0089】
また、このような、シート状部材Sを複数枚取り出してしまうのを防止するためには、現状は、人手によってシート状部材Sを取り出すようにしているが、本実施の形態のシート取り出し装置10を用いることで、そのシート状部材Sの取り出しが自動的に行える。そのため、シート状部材Sの取り出しにおけるヒューマンエラーを防止することができると共に、自動的な取り出しの実施により、フレキシブルプリント基板の生産性を向上させることができる。
【0090】
また、このようなシート状部材Sの複数枚の取り出しを防止するための動作は、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)との間の相対的な昇降動作により実現されるので、シート状部材Sに歪みが生じない状態とすることができる。
【0091】
また、本実施の形態では、制御部210(制御手段)は、上述の第1制御の後に、吸着保持部30(第1吸引手段)および吸着保持部130(第2吸引手段)で吸引保持されたシート状部材Sを積層体PSから離間させる方向に移動させるように昇降機構60(第1昇降手段)および昇降機構160(第2昇降手段)の作動を制御する第3制御を行い、その第3制御の後に、第2制御を行ようにしている。
【0092】
このため、シート状部材Sに反りのような変形が生じていても、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sを落下させるための空間を確保することができる。また、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)との間の相対的な昇降動作を行うための十分なスペースを確保することができ、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sを良好に落下させることができる。
【0093】
さらに、本実施の形態では、昇降機構60(第1昇降手段)は、吸着保持部30(第1吸引手段)の長手方向の一方側を昇降させる昇降シリンダ62(一方側第1昇降手段)と、吸着保持部30(第1吸引手段)の長手方向の他方側を昇降させる昇降シリンダ62(他方側第1昇降手段)とを備えている。また、昇降機構160(第2昇降手段)は、吸着保持部130(第2吸引手段)の長手方向の一方側を昇降させる昇降シリンダ162(一方側第2昇降手段)と、吸着保持部130(第2吸引手段)の長手方向の他方側を昇降させる昇降シリンダ162(他方側第2昇降手段)とを備えている。また、第2制御では、制御部210(制御手段)は、吸着保持部30(第1吸引手段)の長手方向の一方側を上昇させるように昇降シリンダ62(一方側第1昇降手段)の作動を制御し、その作動開始の後に吸着保持部30(第1吸引手段)の長手方向の他方側を上昇させるように昇降シリンダ62(他方側第1昇降手段)の作動を制御し、さらに吸着保持部130(第2吸引手段)の長手方向の一方側を上昇させるように昇降シリンダ162(一方側第2昇降手段)の作動を制御し、その作動開始の後に吸着保持部130(第2吸引手段)の長手方向の他方側を上昇させるように昇降シリンダ162(他方側第2昇降手段)の作動を制御している。
【0094】
このため、長手方向(X方向)の他方側(X2側)に位置する吸着保持部30(第1吸引手段)に対して、長手方向(X方向)の一方側(X1側)に位置する吸着保持部30(第1吸引手段)が上昇するので、図18に示すように、シート状部材S1を捩じるような動作が実施される。また、長手方向(X方向)の他方側(X2側)に位置する吸着保持部130(第2吸引手段)に対して、長手方向(X方向)の一方側(X1側)に位置する吸着保持部30(第2吸引手段)が上昇するので、図20に示すように、シート状部材S1を捩じるような動作が実施される。このような動作の実施により、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなり、他のシート状部材Sの多くがシート状部材S1から落下する。したがって、シート状部材Sを複数枚取り出すのを良好に防止可能となる。
【0095】
また、本実施の形態では、上述した第2制御では、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)のうちのいずれか一方を積層体PSから離間させる方向に移動させると共に、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)のうちのいずれか他方は移動させない状態となるように、昇降機構60(第1昇降手段)および昇降機構160(第2昇降手段)の作動を制御すると共に、その作動開始の後に吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)のうちのいずれか1つを移動させない状態としつつ、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)のうちの残りの1つを積層体PSから離間させる方向に移動させるように、昇降機構60(第1昇降手段)および昇降機構160(第2昇降手段)の作動を制御している。
【0096】
このため、図8図13に示すように、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)のいずれか一方が、いずれか他方を支点として昇降させる状態となるので、シート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなる。それにより、他のシート状部材Sを最上位のシート状部材S1から良好に落下させることができ、シート状部材Sを複数枚取り出すのを良好に防止可能となる。
【0097】
さらに、本実施の形態では、シート取り出し装置10は、隣り合うシート状部材Sの間に挿入されて、これらのシート状部材Sの間での吸着を防止する分離板71(分離手段)と、分離板71(分離手段)を隣り合うシート状部材Sの間に挿入させるように分離板71(分離手段)を移動させる分離板アクチュエータ74(移動手段)とを備えている。また、制御部210(制御手段)は、分離板アクチュエータ74(移動手段)の作動を制御すると共に、制御部210(制御手段)は、上述した第3制御の後に、吸着保持部30(第1吸引手段)および吸着保持部130(第2吸引手段)で保持されているシート状部材S1と、積層体PSの最上位のシート状部材S2との間に、分離板71(分離手段)を配置するように、分離板アクチュエータ74(移動手段)の作動を制御する第4制御を行う。
【0098】
このため、吸着保持部30および吸着保持部130(第1吸引手段および第2吸引手段)で吸引保持しているシート状部材S1の保持を解除し、そのシート状部材S1が積層体PSの最上位のシート状部材S2に向かって落下すると、シート状部材S1と、シート状部材S2との間に、分離板71が挟み込まれる状態となる。したがって、シート状部材S1とシート状部材S2とが再び密着してしまうのを防止して、シート状部材S1とシート状部材S2とを良好に分離させることができる。
【0099】
また、本実施の形態では、シート取り出し装置10は、シート状部材Sを平面状に吸引保持可能であると共に積層体PSに対して昇降可能な吸着ベッド220を備え、この吸着ベッド220は制御部210(制御手段)によって作動が制御されている。また、上述した第4制御の後に、制御部210(制御手段)は、吸着保持部30および吸着保持部130(第1吸引手段および第2吸引手段)で保持されているシート状部材の保持を解除するように吸引機構50(第1吸引手段)および吸引機構150(第2吸引手段)の作動を制御して、シート状部材S1を積層体PSに重ねさせる第5制御を行う。また、制御部210(制御手段)は、第5制御の後に、積層体PS(積層体)を押圧するように吸着ベッド220を下降させると共に、積層体PSの最上位のシート状部材S1を吸引保持するように吸着ベッド220の作動を制御する。
【0100】
このため、図17に示すように、吸着ベッド220の下降による積層体PSを押圧する動作により、積層体PSを吸着板221と載置台201とで挟み込む状態となる。それにより、最上位のシート状部材S1に反りが生じていても、この挟み込み動作によって、最上位のシート状部材S1は、その反りを矯正することができる。そのため、最上位のシート状部材S1は、平面状となった状態で吸着ベッド220に吸引保持させることができる。それにより、フレキシブルプリント基板を製造する後の工程において、正確なシート状部材S1の位置決めを行うことができる。
【0101】
また、本実施の形態では、吸着保持部30および吸着保持部130(第1吸引手段および第2吸引手段)は、弾性部材を材質とすると共に蛇腹状に設けられている吸着パッド31,131を備えている。このため、吸着パッド31は、シート状部材Sに追従して容易に変化可能となるので、シート状部材Sに反り等のような変形が生じていても、その変形に追従させることができる。このため、シート状部材Sに吸着パッド31が当接しても、シート状部材Sに損傷が生じるのを防止可能となる。
【0102】
また、本実施の形態におけるフレキシブルプリント基板の製造方法は、積層体PSから最上位に積層されているシート状部材S1を、シート状部材S1の一方の縁部側を吸引保持可能な吸着保持部30(第1吸引手段)、およびシート状部材S1の他方の縁部側を吸引保持可能な吸着保持部130(第2吸引手段)で吸引保持させるように昇降機構60(第1昇降手段)および昇降機構160(第2昇降手段)の作動を制御する吸引工程と、その吸引工程の後に、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)のうちのいずれか一方をいずれか他方に対して相対的に昇降させるように、吸着保持部30(第1吸引手段)を昇降させる昇降機構60(第1昇降手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)を昇降させる昇降機構160(第2昇降手段)のうちの少なくとも一方を作動させることで、吸引保持している以外のシート状部材Sを振り落すための振り落とし工程と、を備えている。
【0103】
このため、吸引工程により、最上位のシート状部材S1が吸着保持部30(第1吸引手段)および吸着保持部130(第2吸引手段)で吸引保持された状態とした後に、振り落し工程により、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)のうちのいずれか一方をいずれか他方に対して相対的に昇降させることで、吸引保持されているシート状部材S1に密着している他のシート状部材Sとの間に、空気が入り易くなり、他のシート状部材Sの多くがシート状部材S1から落下する。したがって、シート状部材Sを複数枚取り出すのを防止可能となる。
【0104】
また、このような、シート状部材Sを複数枚取り出してしまうのを防止するためには、現状は、人手によってシート状部材Sを取り出すようにしているが、本実施の形態のシート取り出し装置10を用いることで、そのシート状部材Sの取り出しが自動的に行える。そのため、シート状部材Sの取り出しにおけるヒューマンエラーを防止することができると共に、自動的な取り出しの実施により、フレキシブルプリント基板の生産性を向上させることができる。
【0105】
また、このようなシート状部材Sの複数枚の取り出しを防止するための動作は、吸着保持部30(第1吸引手段)と吸着保持部130(第2吸引手段)との間の相対的な昇降動作により実現されるので、シート状部材Sに歪みが生じない状態とすることができる。
【0106】
<変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0107】
上述の実施の形態では、第1吸引手段には吸着保持部30および吸引機構50が対応し、第2吸引手段には吸着保持部130および吸引機構150が対応するものとしている。しかしながら、かかる対応関係を逆にしても良い。すなわち、第1吸引手段には吸着保持部130および吸引機構150が対応し、第2吸引手段には吸着保持部30および吸引機構50が対応するようにしても良い。同様に、第1昇降手段には昇降機構160が対応し、第2昇降手段には昇降機構60が対応するようにしても良い。
【0108】
また、上述の実施の形態においては、吸着パッド31は、蛇腹状に設けられた構成としている。しかしながら、吸着パッド31は、そのような構成には限られず、たとえば所定の長さのゴムチューブに、所定ピッチで吸引孔が設けられているものを用いる等、その他の構成としても良い。
【0109】
また、上述の実施の形態のシート取り出し装置10は、さらに別途の構成を備えても良い。たとえば、シート状部材S同士が、静電気により吸着する場合に対応させて、イオナイザ(除電ブロア)を設け、そのイオナイザから所定の電荷に帯電された空気を吹き付けて、静電気を取り除くようにしても良い。
【0110】
また、上述した各制御動作においては、ある制御動作が終了してから、次の制御動作を開始するようにしても良いが、ある制御動作が終了したのと同時か、または終了しないうちに、次の制御動作を開始するようにしても良い。
【0111】
また、上述の実施の形態におけるシート状部材Sは、ポリイミドフィルム等の基材の片面側にのみ銅箔が存在する片面銅箔材でも良く、基材の両面側に銅箔が存在する両面銅箔材でも良く、両面銅箔材以上の多層の銅箔を有する多層材でも良い。また、シート状部材Sは、基材および銅箔以外に、接着材層や、その接着材層を保護するリリースフィルムを備えていても良い。かかる接着材層やリリースフィルムを備える場合、それらを備えない場合よりもシート状部材Sの厚みが大きくなる。そのため、シート状部材Sに反りが生じていても、吸着板221が下降して最上位のシート状部材S1を吸着保持する際に、打痕が一層生じ難くなる。
【符号の説明】
【0112】
10…シート取り出し装置、20…第1吸着ユニット、30…吸着保持部(第1吸引手段の一部に対応)、31…吸着パッド、31a…シート当接部、32…支持アーム、40…回動機構、41…支持軸、42…支持柱、43…回動用アクチュエータ、44…フレーム、45…駆動伝達機構、50…吸引機構(第1吸引手段の一部に対応)、51…吸引ポンプ、52…吸引管路、60…昇降機構(第1昇降手段に対応)、61…懸架部材、62…昇降シリンダ、70…分離板ユニット、71…分離板(分離手段に対応)、72…支持アーム、73…連結ビーム、74…分離板アクチュエータ(移動手段に対応)、75…ガイド部材、120…第2吸着ユニット、130…吸着保持部(第2吸引手段の一部に対応)、131…吸着パッド、131a…シート当接部、132…支持アーム、140…回動機構、141…支持軸、142…支持柱、143…回動用アクチュエータ、144…フレーム、145…駆動伝達機構、150…吸引機構(第2吸引手段の一部に対応)、151…吸引ポンプ、152…吸引管路、160…昇降機構(第2昇降手段に対応)、161…懸架部材、162…昇降シリンダ、170…分離板ユニット、171…分離板(分離手段に対応)、172…支持アーム、173…連結ビーム、174…分離板アクチュエータ(移動手段に対応)、175…ガイド部材、200…載置台ユニット、201…載置台、202…昇降ガイド、203…載置台用シリンダ、210…制御部(制御手段に対応)、220…吸着ベッド、221…吸着板、222…移動機構連結部、PS…積層体、S,S1,S2…シート状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21