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  • 特許-蓄電素子 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/547 20210101AFI20221011BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20221011BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20221011BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20221011BHJP
【FI】
H01M50/547 201
H01M50/202 301
H01G11/78
H01G11/74
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018154919
(22)【出願日】2018-08-21
(65)【公開番号】P2020030922
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆二
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雄幸
(72)【発明者】
【氏名】江川 泰昭
(72)【発明者】
【氏名】平田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】池山 美紗子
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-122938(JP,A)
【文献】特開2018-010751(JP,A)
【文献】特開2012-190797(JP,A)
【文献】特開2004-265761(JP,A)
【文献】特開平09-097618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/20
H01G 11/74
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネートフィルムからなる扁平袋状の外装体内に、平板状の正極と平板状の負極とが積層されてなる電極体が収納されているとともに、前記正極と前記負極のそれぞれに電極端子板が接続されてなる蓄電素子であって、
前記正極と前記負極との積層方向を上下方向とするとともに、当該上下方向を法線方向とする面を水平面として、
前記水平面と平行な実装面と水平面と平行で前記外装体の下面に接する載置面とを有する外部の電子回路基板に実装され、
前記電極端子板において、前記外装体の所定の一縁辺から水平外方向に向かって引き出されている領域を端子部とし、
前記端子部は、前記外装体の所定の一縁辺と間隙を有して下方に屈曲されつつ、先端側が水平外方向に向かって再度屈曲されて、前記水平面と平行な面を有する先端部を有し、
前記先端部の下面の上下方向の位置前記載置面の上に前記外装体が載置された際に前記実装面の位置となるように調整されている、
ことを特徴とする蓄電素子。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電素子であって、前記正極前記負極とを一つだけ備えたことを特徴とする蓄電素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蓄電素子であって、リチウム金属又はリチウム合金からなる負極を備え、前記外装体の内部に不定形状の電解質が収納されていることを特徴とする蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートフィルムからなる外装体内に発電素子を収納してなるラミネート型の蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワンタイムパスワード機能やディスプレイを搭載したICカード、又はタグやトークン(ワンタイムパスワード生成機)などといった、電源を内蔵しながら極めて薄い電子機器(以下、機器とも言う)が普及しつつある。これらの機器の実現には、電源となる蓄電素子(一次電池、二次電池、電気二重層コンデンサーなど)の小型化や薄型化が欠かせない。小型化や薄型化に適した代表的な蓄電素子としては、以下の特許文献1に記載されているラミネート型蓄電素子がある。
【0003】
図1Aにラミネート型の蓄電素子(以下、蓄電素子101とも言う)の外観を示した。また、図1Bに、蓄電素子101の基本的な構造を、分解斜視図にして示した。図1Aに示すように、蓄電素子101は、平板状の外観形状を有し、ラミネートフィルム(13a、13b)からなる扁平な袋状の外装体12内に電極体2が密封されてなる。また、矩形状の外装体12の一辺(以下、端子縁辺22とも言う)から正極端子板124及び負極端子板128(以下、総称して電極端子板とも言う)が外方に突出するように引き出されている。
【0004】
次に、蓄電素子101の構成を、図1Bを参照しつつ説明する。なお図1Bでは一部の部材や部位にハッチングを施し、他の部材や部位と区別し易いようにしている。図1Bに示すように、外装体12は、互いに対面する矩形状の二枚のアルミラミネートフィルム(13a、13b)において、図中網掛けのハッチング又は点線の枠で示した周縁領域21が熱圧着法により溶着されることによって袋状に成形されて内部が密閉されたものである。ラミネートフィルム(13a、13b)は、アルミ箔やステンレス箔などの金属箔(図2A、符号32)を基材とし、その基材32の裏表に、一層以上の樹脂層が積層されたものである。一般的に、外装体12の外面となるおもて面には、例えばポリアミド樹脂などからなる保護層(図2A、符号33)が設けられており、外装体12の内面となる裏面には、例えばポリプロピレンなどの熱溶着性を有する樹脂からなるヒートシール層(図2A、符号31)が設けられている。
【0005】
外装体12の内部には、電極体2が、図示しない電解液とともに封入されている。ここで、二枚のラミネートフィルム(13a、13b)が対面する方向を上下方向とし、上下方向を法線方向とした面を水平面とすると、電極体2は、シート状の正極4と、シート状の負極8とが、セパレーター6を介して上下方向に積層された状態で圧着されたものである。正極4は、金属板や金属箔からなる正極集電体3の一主面に、正極活物質を含む正極材料5が配置されてなる。負極8は、金属板や金属箔などからなる負極集電体7の一主面に、負極活物質を含む負極材料9が配置されてなる。正極4と負極8とは、正極材料5と負極材料9とがセパレーター6を介して対面するように積層されている。正極集電体3、及び負極集電体7には、帯状の正極端子板124、及び帯状の負極端子板128の一端がそれぞれ取り付けられている。そして、この正極端子板124と負極端子板128の他端側が、水平面と平行となるように外装体12の端子縁辺22から外方に向けて突出している。
【0006】
なお、蓄電素子101がリチウム一次電池であれば、正極4は、二酸化マンガンなどの正極活物質を含んだスラリー状の正極材料5が正極集電体3の表面に塗工されたものであり、負極8は、負極集電体7に箔状あるいは平板状のリチウム金属やリチウム合金を圧着させたものである。そして、以下の非特許文献1には、製品として実際に販売されているラミネート型蓄電素子である薄型二酸化マンガンリチウム一次電池の特徴や放電性能などが記載されている。また、製品として提供されている蓄電素子では、特許文献1にも記載されているように、端子縁辺22側の周縁領域21が、リードタブや帯状のタブフィルムを用いて封止されているのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-10751号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】FDK株式会社、”薄型リチウム一次電池”、[online]、[平成30年7月23日検索]、インターネット<URL:http://www.fdk.co.jp/battery/lithium/lithium_thin.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の蓄電素子は、回路基板に実装される際、電極端子が回路基板上に形成された電極パッドなどの印刷配線にはんだ付けされる。しかし、従来の蓄電素子では、その実装に際して「電池浮き」と呼ばれる問題が発生し易い。図2A、及び図2Bに「電池浮き」を説明するための図を示した。図2Aは、蓄電素子101を実装に先立って回路基板C上に載置したときの状態を示す図であり、図2Bは、回路基板に実装されたときの蓄電素子101の状態を示す図である。また、図2Cに「電池浮き」に関わる問題点を説明するための図を示した。なお、図2A図2B、及び図2Cは、水平面において、端子縁辺22と直交する方向を前後方向としたときに、蓄電素子101を上下方向と前後方向とを含む面で切断したときの縦断面図である。
【0010】
まず、「電池浮き」について説明すると、図2Aに示したように、蓄電素子101は、電極体2が配置されている領域に厚みがあるため、蓄電素子101を回路基板Cの上面に載置すると、外装体12の端子縁辺22から引き出されている電極端子板(124、128)の下面と、回路基板Cに形成されている電極パッドPの上面との間に隙間dが生じる。すなわち、蓄電素子101を回路基板C上に載置しただけでは、電極端子(124、128)を電極パッドPに面接触させることができない。そこで、回路基板C上の電極パッドPに電極端子(124、128)を面接触させようとして、電極端子板(124、128)の先端側を押し下げると、例えば、図2Bに示したように、外装体12において、電極体2が収納された厚みのある領域の端子縁辺22側の下縁50が支点となって、蓄電素子101における端子縁辺22の対辺側が浮き上がり、「電池浮き」が発生する。
【0011】
ここで、電池浮きの状態を正すために蓄電素子101の外装体12部分を回路基板Cに押し当てると、図2Cに示したように、電極端子(124、128)が、端子縁辺22から引き出されている基端の位置で、下側のラミネートフィルム13bの端子縁辺22を支点として屈曲する場合が多い。そして、電極端子板(124、128)の基端が屈曲すると、外装体12の端子縁辺22に露出しているラミネートフィルム13bの基材32と電極端子(124、128)とが図中符号200の位置にて接触し、電極端子(124、128)とラミネートフィルム13bの基材32とが導通する状態が発生してしまう可能性がある。
【0012】
そこで、上記特許文献1に記載されているタブリードや帯状のタブフィルムを用いて端子縁辺22に沿う周縁領域21を封止することも考えられる。周知のごとく、タブリードは、電極端子板(124、128)となる金属板(以下、端子リードとも言う)の一部を熱溶着性と絶縁性とを有する樹脂からなるタブフィルムで狭持した構造を有している。そして、タブリードのタブフィルムや帯状のタブフィルムの端子縁辺22側の縁辺を外装体12の外方に突出させた状態で周縁領域21を熱圧着すれば、電極端子板(124、128)とラミネートフィルム(13a、13b)の基材32との接触を抑止することができる。
【0013】
しかし、タブリードは高価な部材である。また、帯状のタブフィルムを端子縁辺から突出させて封止する場合では、特許文献1にも記載されているように、タブフィルムの柔軟性に起因して二枚のラミネートフィルム同士の位置合わせ精度を確保できないという問題も発生する。もちろん、タブリードや帯状のタブフィルムによって外装体が封止された蓄電素子にも「電池浮き」が発生する。
【0014】
そこで本発明は、製造コストを増大させることなく、回路基板への実装時に発生する電池浮きと、ラミネートフィルムの基材と電極端子板との間の導通とを抑止することができるラミネート型の蓄電素子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、ラミネートフィルムからなる扁平袋状の外装体内に、平板状の正極と平板状の負極とが積層されてなる電極体が収納されているとともに、前記正極と前記負極のそれぞれに電極端子板が接続されてなる蓄電素子であって、
前記正極と前記負極との積層方向を上下方向とするとともに、当該上下方向を法線方向とする面を水平面として、
前記水平面と平行な実装面と水平面と平行で前記外装体の下面に接する載置面とを有する外部の電子回路基板に実装され、
前記電極端子板において、前記外装体の所定の一縁辺から水平外方向に向かって引き出されている領域を端子部とし、
前記端子部は、前記外装体の所定の一縁辺と間隙を有して下方に屈曲されつつ、先端側が水平外方向に向かって再度屈曲されて、前記水平面と平行な面を有する先端部を有し、
前記先端部の下面の上下方向の位置前記載置面の上に前記外装体が載置された際に前記実装面の位置となるように調整されている、
ことを特徴としている。
【0016】
前記正極前記負極とを一つだけ備えた蓄電素子とすることもできる。また、リチウム金属又はリチウム合金からなる負極を備え、前記外装体の内部に不定形状の電解質が収納されている蓄電素子としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、回路基板への実装時に発生する電池浮きと、ラミネートフィルムの基材と電極端子板との間の導通とを防止することができるラミネート型の蓄電素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】一般的なラミネート型蓄電素子の外観を示す図である。
図1B】上記一般的なラミネート型蓄電素子の基本的な構造を示す分解斜視図である。
図2A】上記一般的なラミネート型蓄電素子が回路基板上に載置されている状態を示す図である。
図2B】上記一般的なラミネート型蓄電素子を回路基板に実装した際に発生する電池浮きの状態を示す図である。
図2C】上記一般的な蓄電素子におけるラミネートフィルムの基材と電極端子板との間の導通の発生状態を示す図である。
図3】本発明の蓄電素子の外観を示す図である。
図4】上記実施例に係る蓄電素子が回路基板上に実装されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ以下で説明する。なお、説明に用いた以下の図面においては、同一又は類似の部分に同一の符号を付すことによって、重複する説明を省略することがある。また、図面によっては、説明の際に不要な符号を省略することがある。
【0020】
===従来の電極端子板の構造上の問題点===
上述したように、蓄電素子101には、基板に実装する際に電池浮きが発生したり、その電池浮きを正す際にラミネートフィルム13bの基材32と電極端子(124、128)とが導通したりするなどの問題がある。また、製造コストを低減させつつ導通を防止するために帯状のタブフィルムを用いて端子縁辺22側の周縁領域21を封止すると、タブフィルムの柔軟性に起因して外装体を構成する二枚のラミネートフィルム同士の位置合わせ精度を確保できないという問題が発生する。タブフィルムを用いつつ位置合わせ精度を確保するために、予め変形の少ない熱硬化性樹脂タブをラミネート間に挿入させることも考えられるが、ICカードに用いられるような厚さ0.6mm以下の薄い蓄電素子では、絶縁シートをラミネートフィルム間に介在させると蓄電素子の薄型化が困難になる。
【0021】
そこで本発明者は、外装体12の端子縁辺22において外部に露出しているラミネートフィルム(13a、13b)の基材32と電極端子板(124、128)との間を絶縁するのではなく、いわゆる電池浮きを防止することができれば、ラミネートフィルム(13a、13b)の基材32と電極端子板(124、128)との間の導通の発生を根本から防ぐことができると考えた。そして、本発明者は、このような考えに基づいて、電極端子板の最適な形状や構造などについて鋭意研究を重ね、本発明に想到した。
【0022】
===実施例===
<蓄電素子の構成>
本発明の実施例に係る蓄電素子の基本的な構造や構成は、図1A図1Bに示した一般的なラミネート型蓄電素子101と同様である。しかし、本発明の実施例に係る蓄電素子(以下、蓄電素子1とも言う)は、電極端子板の形状が、図1A図1Bに示した一般的な蓄電素子101とは異なっている。概略的には、上下方向を法線方向とする面を水平面として、端子縁辺22から水平に外装体12の外方に引き出されている電極端子板が、下方に向けて屈曲されているとともに、先端がさらに水平方向に屈曲されて、クランク状に形成されている。
【0023】
図3に、本発明の実施例に係る蓄電素子1の外観形状を示した。また、図4に、回路基板C上に実装された状態の蓄電素子1を示した。図3は、蓄電素子1の斜視図であり、図4は、蓄電素子1の縦断面図である。以下、外装体12における端子縁辺22を前方とすると、図3~4に示したように、蓄電素子1は、端子縁辺22から外装体12の前方に向かって水平に引き出されている電極端子板(24、28)が、端子縁辺22との間で所定の間隙(43、83)を設けた位置において下方に屈曲された後、再度前方に向かって屈曲している。そして、電極端子板(24、28)において、先端から後方に向かって最初の屈曲点に至る部分(以下、先端部(41、81)とも言う)が水平面と平行となっている。なお、実施例に係る蓄電素子1では、電極端子板(24、28)を各屈曲位置にて90゜の角度で屈曲させている。もちろん、外装体12の端子縁辺22から水平方向に突出している電極端子板(24、28)の下方への折り曲げ角度は、90゜でなくてもよい。なお、下方への屈曲角度は、電極端子板(24、28)が、ラミネートフィルム(13a、13b)の基材32との間の導通の発生箇所となる端子縁辺22からさらに離れるように、鈍角にすることが望ましい。
【0024】
また、先端部(41、81)は、回路基板上の電極パッドPと面接触することができるように上下方向の位置が調整されている。すなわち、蓄電素子1を回路基板C上に載置するだけで、電極端子板(24、28)の先端部(41、81)の下面が回路基板C上の電極パッドPの上面に面接触する。それによって、蓄電素子1を回路基板Cに実装する際に浮き上がりが発生しない。結果として、蓄電素子1の下端面を回路基板の上端面に押し当てる必要がなくなる。また、実施例に係る蓄電素子1では、電極端子板(24、28)が外装体12の端子縁辺22から離れた位置で下方に屈曲しているため、電極端子板(24、28)とラミネートフィルム13bの基材32とが接触することがない。すなわち、蓄電素子1では原理的にラミネートフィルム13bの基材32と電極端子板(24、28)との間の導通が発生しない。
【0025】
なお、蓄電素子1の作製手順としては、まず、図1Aに示した従来の蓄電素子101を作成した後、周知のプレス加工により電極端子板(24、28)をクランク状に形成すればよい。もちろん、予め作製しておいたクランク状の電極端子板(24、28)を電極体2に取り付けてもよい。
【0026】
===性能評価===
まず、本発明の実施例に係る蓄電素子1における、電池浮きの防止効果を評価するために、図3に示した実施例に係る蓄電素子1と、図1に示した従来の蓄電素子101とに対応する蓄電素子をサンプルとして作製した。具体的には、上記非特許文献にCF042722Uとして記載されている薄型二酸化マンガンリチウム一次電池を従来の蓄電素子101に対応するサンプル(以下、比較例のサンプルとも言う)とし、電極端子板(24、28)の形状をクランク状にした以外は、CF042722Uと同じ構造、構成、及びサイズを有する薄型二酸化マンガンリチウム一次電池を実施例に係る蓄電素子1に対応するサンプル(以下、実施例のサンプルとも言う)とした。また、実施例のサンプルと比較例のサンプルのそれぞれについて30個の個体を用意した。そして、各サンプルの全個体を所定の回路基板C上に実装し、電池浮きの有無を調べた。なお、電池浮きの有無については、端子縁辺22と反対側の縁辺が回路基板Cの上面から5mm以上浮いた場合に「電池浮き有り」とした。
【0027】
以下の表1に、各サンプルにおける電池浮きの発生状態を示した。
【0028】
【表1】

表1に示したように、比較例のサンプルにおいては、30個の個体の全てにおいて電池浮きが発生し、実施例のサンプルにおいては、全ての個体において電池浮きが発生しなかった。
【0029】
次に、比較例のサンプルについて、電池浮きを正す際にラミネートフィルム(13a、13b)の基材32と電極端子板(124、128)との間の導通が発生する可能性について検討した。ここでは、電池浮きの評価に用いた個体とは別に、30個の個体を用意し、各個体に対し、電極端子板(124、128)を基端の位置で下方向に90°屈曲させた。そして、電極端子板(124、128)を屈曲させた状態で電極端子板(124、128)とラミネートフィルム13bの基材32との抵抗値を測定した。抵抗値については、ラミネートフィルム13bに探針を当て、ラミネートフィルム13bと電極端子板(124、128)との間に5.0Vの直流電圧を印加することで測定した。ラミネートフィルム(13a、13b)の基材32と電極端子板(124、128)との間の導通の有無については、ラミネートフィルム13bの基材32と正負いずれかの電極端子板(124、128)との間の抵抗値が100MΩ以下であれば導通が発生しているものとした。そして、各個体に対する抵抗値を測定した結果、30個の個体のうち、28個の個体にラミネートフィルム(13a、13b)の基材32と電極端子板(124、128)との間の導通が発生していた。すなわち、従来の蓄電素子101では、実装に際して電池浮きが発生したときに、その電池浮きを正そうとして外装体12の下面を回路基板Cの上面に接触させたときに、偶然、電極端子板(124、128)が端子縁辺22の位置で屈曲してしまうと、ラミネートフィルム(13a、13b)の基材32との間で導通が発生する可能性が高い。
【0030】
以上より、実施例に係る蓄電素子1は、回路基板に実装された状態において電池浮きの発生を防止することができる。また、上述したように、原理的にラミネートフィルム(13a、13b)の基材32と電極端子板(24、28)との間の導通も発生しない。
【0031】
===その他の実施例===
上述した実施例についての説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。本発明は、上記実施例の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。
【0032】
本発明の実施例に係る蓄電素子1は、ラミネートフィルム(13a、13b)からなる扁平袋状の外装体12内に、平板状の正極4と平板状の負極8とが上下方向に積層されてなる電極体2が収納された蓄電素子1であれば、リチウム一次電池に限定されない。もちろん、実施例に係る蓄電素子1は、二次電池や電気二重層コンデンサーであってもよい。電解液に代えてポリマー電解質を備えた蓄電素子であってもよい。あるいは全固体電池のように電解液もセパレーター6も備えていない電池であってもよい。
【0033】
電極体2は、一つの正極4と一つの負極8とをセパレーター6を介して対面させた構成を一組の素電池として、複数組の素電池が直列接続されるように、上下方向に積層されたものであってもよい。そして、その直列接続された複数組の素電池からなる電極体2が、一つの外装体12内に収納されていてもよい。しかし、ICカードなどの厚さが規格によって規定されている極めて薄型の電子機器の電源には、普通、上記実施例と同様に、正極4と負極8とを一つずつ備えた「一層型」の蓄電素子1が用いられる。そして、電池浮きは、薄形の電子機器に組み込まれた際により大きな問題となる。したがって、本発明は、一層型のラミネート型蓄電素子に適用されることで、より格別な効果を奏するものとなる。
【0034】
上記実施例に係る蓄電素子1では、電子機器に組み込まれる前に電極端子板(24、28)を屈曲させていた。しかし、蓄電素子1が特定の電子機器を対象としたものではなく、様々な電子機器に組み込まれる場合では、組み込み対象となる電子機器によって蓄電素子1の実装状態が異なる。すなわち、電極端子板(24、28)の屈曲状態が組み込み先の電子機器によって異なる。そこで、電極端子板(24、28)の屈曲位置や先端部(41、81)の上下位置を、蓄電素子1を出荷したり、電子機器に組み込んだりする直前に調整してもよい。それによって、同じ製造ラインで従来の蓄電素子101と実施形態に係る蓄電素子1とを混在させて製造することもできるとともに、在庫管理に要するコストを削減することができる。
【0035】
上記実施例に係る蓄電素子1では、印刷配線によって形成されている電極パッドPの厚さが極めて薄いため、電極端子板(24、28)の先端部(41、81)の下面の上下位置が、回路基板Cの上面の位置(以下、実装面とも言う)に一致するように調整されていた。もちろん、外装体12の下面の上下位置に対し、実装面が下方あるいは上方に配置されている場合であっても、電極端子板(24、28)を適宜に屈曲させて、電極端子板(24、28)の先端部(41、81)の下面の上下位置を実装面に一致させればよい。
【符号の説明】
【0036】
1,101 蓄電素子、2 電極体、3 正極集電体、4 正極、
5 正極材料、6 セパレーター、7 負極集電体、8 負極、9 負極材料、12 外装体、13a,13b ラミネートフィルム、21 周縁領域、
22 端子縁辺、24,124 正極端子板、28,128 負極端子板、
31 ラミネートフィルムのヒートシール層、
32 ラミネートフィルムの基材(金属箔)、
33 ラミネートフィルムの保護層、41,81 電極端子板の先端部、
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4