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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】門形構造の位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
H01L21/68 K
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018155964
(22)【出願日】2018-08-23
(65)【公開番号】P2019041105
(43)【公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】17187633.7
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502149218
【氏名又は名称】エテル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィッド・イングラム
(72)【発明者】
【氏名】ロラン・ハイニガー
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0280529(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0127133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1横ビーム(FY1)および第2横ビーム(FY2)を第1方向(X)に可動に保持する、ベース(G)上に相互に平行に配置された2つの線形ガイド(FX1、FX2)を有する門形構造の位置決め装置であって、この場合、第1横ビーム(FY1)に、機能要素(T)を有するY方向走行車(LY)が第2方向(Y)に可動に保持され、第2横ビーム(FY2)およびY方向走行車(LY)に、第2横ビーム(FY2)に対するY方向走行車(LY)の相対姿勢を検出するための位置測定装置(Mxy、Mz、AKz2、Mxy1、AKxy1)が配置されている門形構造の位置決め装置において、
機能要素(T)がY方向走行車(LY)に対してZ方向走行車(LZ)により第3方向(Z)に可動に保持され、この場合、Y方向走行車(LY)および機能要素(T)に、Y方向走行車(LY)に対する第1および第2方向(X、Y)における機能要素(T)の相対変位の検出を可能にするための他の位置測定装置(AKxy2、AKxy2′、Mxy2、Mxy2′)が配置されていることを特徴とする門形構造の位置決め装置。
【請求項2】
他の位置測定装置(AKxy2、AKxy2′、Mxy2、Mxy2′)は、第3方向(Z)に対するそれぞれ1つの測定トラックおよび第1および/または第2方向(X、Y)に対する直線性トラックを有する、2つの1Dplus尺度(Mxy2、Mxy2′)を含み、この場合、1Dplus尺度(Mxy2、Mxy2′)にそれぞれ1つの走査ヘッド(AKxy2、AKxy2′)が設けられていることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置。
【請求項3】
1Dplus尺度(Mxy2、Mxy2′)の直線性トラックは、第1方向のみならず第2方向(X、Y)にもある角度をなして切り取られ、これにより、機能要素(T)の変位は、両方の走査ヘッド(AKxy2、AKxy2′)の位置値の算出により決定可能であることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置。
【請求項4】
走査ヘッド(AKxy2、AKxy2′)は剛結合(V)を介してY方向走行車(LY)と結合されていること、および1Dplus尺度(Mxy2、Mxy2′)は機能要素(T)に固定されていることを特徴とする請求項またはに記載の位置決め装置。
【請求項5】
剛結合(V)は、さらに、第2横ビーム(FY2)に対するY方向走行車(LY)の相対姿勢を検出するために、位置測定装置(Mxy1、AKxy1)の他の走査ヘッド(AKxy1)を支持することを特徴とする請求項に記載の位置決め装置。
【請求項6】
剛結合(V)は走査ヘッド(AKxy2、AKxy2′)のための装着面(S1、S2)を有し、この場合、装着面(S1、S2)は相互に90度の角度を形成することを特徴とする請求項またはに記載の位置決め装置。
【請求項7】
1Dplus尺度(Mxy2、Mxy2′)は、機能要素(T)において、第3方向(Z)の周りに相互に90度だけねじられて配置されていることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項8】
第2横ビーム(LY2)は2つの固定要素(B1、B2)を介して2つのX方向走行車(LX1、LX2)に固定されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項9】
固定要素(B1、B2)は、第2横ビーム(FY2)の重量を支持しかつ第1方向(X)内の第2横ビーム(FY2)の同伴を保証するが、第2横ビーム(FY2)内に曲げ力を導入しない可撓性要素を含むことを特徴とする請求項に記載の位置決め装置。
【請求項10】
第2横ビーム(FY2)は、第3方向(Z)に関して、第1横ビーム(FY1)、Y方向走行車(LY)、Z方向走行車(LZ)および機能要素(T)からなる複合体の下方でかつベース(G)の上方に配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の位置決め装置。
【請求項11】
剛結合(V)は、ベース(G)と第2横ビーム(FY2)の間で伸長することを特徴とする請求項10に記載の位置決め装置。
【請求項12】
姿勢測定装置は、絶対基準系に対する第2横ビーム(FY2)の相対姿勢の検出を可能にし、これにより、第2横ビーム(FY2)は、絶対基準系に対するY方向走行車(LY)の相対空間姿勢の決定における可動基準系として使用されることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1方向に対して平行に伸長する2つの従動線形軸、並びにこれらの線形軸に沿って移動可能な横ばりを有し、横ばりは、機能要素を第2方向に移動可能に保持し、これにより、機能要素が両方の平行な線形軸の間の平面内またはその平面に平行に位置決め可能である、門形構造の位置決め装置に関する。位置決めユニットは、さらに、例えば回路基板に部品を実装したりまたは配線したりするために、それにより機能要素がこの平面に垂直に調節可能な従動線形軸を含む。
【0002】
このような位置決め装置は門形駆動装置またはX-Yガントリとも呼ばれ、多くの技術分野で使用される。ウェーハまたは回路基板のような平面基板の加工は、このような門形駆動装置に対する代表的な使用例である。進歩した小型化により、この場合もまた、常により良好な位置決め精度が要求される。
【背景技術】
【0003】
EP2066996B1に、門形構造の位置決め装置が記載され、ここでは、より正確な位置決定のために、線形ガイドに沿った本来の測定方向における位置のほかに、これに対して横方向の位置の小さな偏差(すなわち例えば案内エラー)もまた検出可能な位置測定システムが使用される。このために、測定方向における本来の測定トラックのほかに、測定方向に対して横方向のこのような小さな偏差が読取り可能ないわゆる直線性トラックもまた支持する尺度が使用される。このような尺度は、測定方向(1D)の検出のほかに、他の方向における測定もまた、たとえこの方向におけるきわめて小さな偏差であっても、可能にするので、1Dplus尺度とも呼ばれる。このような尺度およびそれに対応する位置測定システムは、会社資料 HEIDENHAIN INFO、Electronics、Volume1、2009に詳細に記載されている。門形構造の位置決め装置におけるこのような尺度の使用もまたここに示されている。
【0004】
代表的な1Dplus尺度は、本来の測定方向に対して、例えば光学的に、尺度に対して相対的に可動な走査ヘッドにより走査される、測定方向に対して横方向のきわめて短い線分から構成されてもよい増分トラックすなわち一般的に測定トラックを支持する。直線性トラックは、増分トラックのほかに、本来の測定方向に対して平行に(したがって案内エラーの方向に対して横方向に)位置する僅かに長い線分から構成されている。この直線性トラックもまた走査ヘッドにより走査される。尺度トラックの走査により、尺度と走査ヘッドの間の相対運動において周期的信号が発生する。周期および個々の周期の細分の数を数えること(補間)により、変位の大きさしたがって位置が決定可能である。すなわち、1Dplus尺度により、相互に独立な2つの方向における位置値もまた読取り可能である。
【0005】
従来技術において、いわゆる二重ガントリ配置もまた既知であり、この場合、両方の線形ガイドの間に第1方向において2つの異なる横ビームが配置されている。すなわち、WO02/067648A1は、生産性を上げるために追加の加工工具を備えた第2横ビームを有する、圧着結線による回路基板の加工のための工作機械を記載する。
【0006】
本発明がそれから出発するUS2015/0280529A1から、第1横ビームおよび第2横ビームを第1方向に可動に保持する、ベース上に相互に平行に配置された2つの線形ガイドを有する門形構造の位置決め装置が既知である。第1横ビームに、機能要素を有するY方向走行車が第2方向に可動に保持されている。Y方向走行車および第2横ビームに、第2横ビームに対するY方向走行車の相対姿勢を測定するための位置測定装置が配置されている。ここで、機械的にも熱的にも影響されない、すなわちY方向走行車を支持する第1横ビームよりも本質的に形状が安定している第2横ビームに対するY方向走行車の相対姿勢が測定されることにより、Y方向走行車の空間姿勢の、本質的により正確な検出が可能である。したがって、Y方向走行車と機能要素の間で作用する、精密位置決めのための追加駆動装置により、第1横ビームの変形とは無関係に、機能要素のより正確な位置決めが全ての自由度において可能である。
【0007】
しかしながら、この位置決め装置において、他の従動線形ガイドにより実行される、ベースに対して垂直な機能要素の位置決めは監視可能ではない。機能要素の垂直方向運動において発生する、ベース平面に平行な機能要素の係合点(ツールセンタポイント、TCP)の変位は検出可能ではなく、したがって補償可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】EP2066996B1
【文献】WO02/067648A1
【文献】US2015/0280529A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の課題は、機能要素の位置の、より正確な検出およびこれによるその正確な位置決めを可能にする、門形構造の位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の装置により解決される。この装置の有利な詳細が、請求項1の従属請求項から得られる。
第1横ビームおよび第2横ビームを第1方向に可動に保持する、ベース上に相互に平行に配置された2つの線形ガイドを有する門形構造の位置決め装置が開示され、この場合、第1横ビームに、機能要素を有するY方向走行車が第2方向に可動に保持され、この場合、Y方向走行車および第2横ビームに、第2横ビームに対するY方向走行車の相対姿勢を検出するための位置測定装置が配置されている。機能要素は、Y方向走行車に対して、Z方向走行車により第3方向に可動に保持され、この場合、Y方向走行車および機能要素に、Y方向走行車に対する機能要素の相対姿勢を検出するための他の位置測定装置が配置されている。
【0011】
この場合、他の位置測定装置は、第1および第2方向における、Y方向走行車に対する機能要素の相対変位の検出を可能にする。
したがって、加工力がかからないように保持されかつ正確な位置測定を可能にする、移動される基準系の評価される考え方は、他の測定方向に拡張される。第2横ビームに対して固有の駆動装置が省略されることにより、従来技術に比較して構造がさらに簡単化され、かつ二重ガントリ配置もまた可能にされるようにコンパクトに形成可能である。
【0012】
本発明の他の利点および詳細が、図面による種々の実施形態の以下の説明から与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、通常の門形構造の位置決め装置を示す。
図2図2は、本発明による第1の門形構造の位置決め装置を示す。
図3図3は、第1方向から見た、本発明による他の位置決め装置の図を示す。
図4図4は、第2方向から見た、本発明によるこの他の位置決め装置の図を示す。
図5図5は、本発明によるこの他の位置決め装置の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、従来技術から既知の門形構造の位置決め装置を示す。例えば花崗岩ブロックとして形成されたベースG上に、横ビームFY1をX方向に移動可能に保持する2つの平行な線形ガイドFX1、FX2が配置されている。横ビームFY1の移動のために、線形ガイドFX1、FX2に平行に位置するかまたはこれに組み込まれた2つのリニアモータLMX1、LMX2が使用される。横ビームFY1に、他のリニアモータLMYによりY方向走行車LYがY方向に移動可能に案内されている。
【0015】
Y方向走行車LYは、例として、機能要素に対してテーブルTを有し、テーブル上にウェーハを置くことが可能であり、ウェーハは、次に、位置決め装置の上方に位置固定に配置された工具により加工可能であるかまたは検査可能である。
【0016】
XおよびY方向における線形軸の位置決めは、それぞれのガイドFX1、FX2、FY1に沿って、尺度MX1、MX2、MYにより行われ、全ての軸線のそれぞれの実際位置を決定するために、尺度は、ここでは図示されていない走査ヘッドにより走査される。通常の位置制御器により、全ての可動軸はそれぞれの位置目標値に制御され、すなわち、テーブルTはX-Y平面内に位置決めされる。
【0017】
Y方向走行車LYは横ビームFYに対して特にY方向に移動するが、案内エラーおよび種々の構造部品内の弾性により、自由度内にXおよびY方向の周りの回転並びにZ方向の線形変位が発生する。
【0018】
さらに、第2横ビームFY2が確認される。この第2横ビームFY2は、X方向に対する固有の駆動装置を備え、すなわち、第1横ビームFX1とは無関係に位置決め可能である。しかしながら、これは、位置制御器により、第1横ビームFY1に対して固定間隔に保持される。この間隔は、第2横ビームFY2に対するY方向走行車LYの相対姿勢を検出するための、以下に記載の他の位置測定装置が確実に評価可能なように、正確に保持されなければならない。その範囲内であれば十分に評価が可能な位置測定装置の間隔公差は、一般的には、約200マイクロメートルである。
【0019】
Y方向走行車LY内に、Y方向走行車LYの走査運動の間にテーブルTの精密位置決めを可能にする駆動装置が設けられている。この精密位置決めは、少なくともXおよびY軸の周りの回転に対して、並びにZ方向に対して可能であるべきである。XおよびY軸内の位置補正、並びにZ軸の周りの回転は、門形構造の位置決め装置の駆動装置によってもまた行うことが可能である。すなわち、偏差は、6つの全ての自由度における希望の走査運動により補正可能であるが、この目的のために、偏差は測定されなければならない。
【0020】
この位置ないしは姿勢の測定のための基準系として、この場合、第2横ビームFY2が使用されるので、これは、ここでは可動基準系とも呼ばれる。この方法の利点は、Y方向走行車LYの走査運動により第2横ビームFY2に力がかからないことであり、第1横ビームFY1の駆動装置は、第2横ビームFY2内に熱を伝達しないことでもある。
【0021】
第1および第2横ビームFY1、FY2の各位置変化(ステップ移動)後に、第2横ビームFY2の振動が減衰されるようにある時間だけ待機したとき、第2横ビームは位置が固定されたとみなすことが可能である。第2横ビームFY2はY方向走行車を支持しないので、これは特に軽量に形成可能であり、これにより、その共振周波数は特に高い位置にあり、振動は急速に減衰する。
【0022】
ベースGに対する第2横ビームFY2の正確な相対姿勢が固定されたとき(このための測定系の可能な配置が冒頭記載のUS2015/0280529A1に記載されている)、これは、Y方向走行車LYないしはテーブルTの走査運動の間において、全ての自由度におけるY方向走行車LYの位置測定に対する基準系として適している。すなわち、第2横ビームFY2に関して、全ての自由度においてY方向走行車LYの位置を直接測定した場合、(例えば加速力、Y方向走行車の重力、温度の影響、振動による)第1横ビームFY1の変形が検出され、かつ(テーブルTおよび/または門形構造の位置決め装置の軸の精密位置決めの)利用可能な駆動装置を介して、これは解消可能である。
【0023】
実際に第1横ビームFY1から第2横ビームFY2への各反作用を排除するために、外部からの振動のみならず、第1横ビームFY1および第2横ビームFY2の加工力からベースG内に導かれる振動もまた遮蔽されるように、ベースGの振動が能動的に減衰されるべきである。
【0024】
第2横ビームFY2に対して相対的にY方向走行車LYを位置決めするために、第2横ビームに尺度Mxy、Mzが、並びにY方向走行車に走査ヘッドAKz2が確認される。他の尺度および走査ヘッドは、この図においては確認されないが、これらの配置に対する可能性は、上で引用されたUS2015/0280529A1に開示されている。これにより、第2横ビームFY2に対するY方向走行車LYの相対位置を6つの全ての自由度において決定することが可能である。
【0025】
しかしながら、このような配置においてさらに機能要素Tが第3方向Z内においても位置決めされるべきとき、問題が発生する。図2は、本発明の簡単な第1実施例における問題点およびその解決方法を説明する。Y方向走行車LYおよびそれにZ方向に案内されるZ方向走行車LZが確認される。このZ方向走行車LZに、ここでは、できるだけ剛に、機能要素Tが固定されている。すなわち、リニア駆動装置により、機能要素Tは、第3方向Zにおいてもまた位置決め可能である。
【0026】
この機能要素Tは、例えば、花崗岩G上に置かれたプリント回路板上に部品を位置決めするための要素であってもよい。このZ軸もまた案内エラーを有し、Y方向走行車LYのみならず、機能要素Tおよびその固定もまた完全に剛ではない。これらの全ての効果がXおよびY方向における機能要素Tのオフセットに導くことが可能であり、オフセットはZ方向におけるその位置に依存可能である。
【0027】
第2横ビームFY2における1Dplus尺度Mxy1が、剛結合Vを介してY方向走行車LYと結合された走査ヘッドAKxy1により走査されることが、図2に略図で示されている。Y方向に相前後して配置されたこのような2つの走査ヘッドAKxy1により、第2横ビームFY2に対するY方向走行車LYの相対姿勢が、確かに、XおよびY方向に関して、並びにZ方向の周りの回転に関して決定可能である。Y方向走行車LYと第2横ビームFY2の間の相対姿勢のこの測定は、図1に示された従来技術に対応する。
【0028】
ここで、さらに、今までは検出されなかった、機能要素TのXおよびY方向における変位もまた検出可能にするために、Y方向走行車LYとの剛結合Vに、さらに2つの走査ヘッドAKxy2、AKxy2′もまた配置され、図2にはこれらのうちの1つのみが見えている。第2走査ヘッドAKxy2′はY方向において第1走査ヘッドの後側に配置されている。これらの走査ヘッドAKxy2、AKxy2′は、機能要素Tの側部にY方向に相前後して配置された2つの1Dplus尺度Mxy2、Mxy2′を走査する。他の位置測定装置のための、走査ヘッドAKxy2、AKxy2′と1Dplus尺度Mxy2、Mxy2′のこの組合せは、1Dplus尺度Mxy2、Mxy2′における両方の水平測定が、相互に適切に算出された両方の方向X、Yにおけるそれぞれの成分を検出するとき、Z方向においてのみならず、XおよびY方向においてもまた、Y方向走行車LYに対する機能要素Tの相対オフセットを測定することを可能にする。さらに、一方で、従来技術から既知のように、Y方向走行車LYと第2横ビームFY2の間の相対位置が、他方で、Y方向走行車LYに対する機能要素Tの相対位置が既知であるので、機能要素Tの第2横ビームFY2に対する相対位置もまた算出可能である。ベースGに対する第2横ビームFY2の相対位置はきわめて正確に検出可能であるので、ベースG内に位置する基準系において、第2横ビームFY2に対する相対位置情報もまた換算可能である。この場合、きわめて剛な結合Vから出発される。
【0029】
図3および4は、本発明の他の具体的な実施例を示す。本発明の詳細および図1のシステムに対する相違をよりよく示すことが可能なように、ここでは、ベースGは省略されかつ符号のみで示されている。
【0030】
第2横ビームFY2は、ここでは固有の駆動装置をもはや有さず、固定要素B1、B2を介してX方向走行車LX1、LX2に固定され、これにより、これらのX方向走行車LX1、LX2により同伴される。これらのX方向走行車LX1、LX2は第1横ビームFY1もまた移動させるので、両方の横ビームFY1、FY2の間にほぼ一定の間隔が確保されている。
【0031】
第2横ビームFY2はできるだけ力がかからないように保持されるべきであり、これにより、第2横ビームは曲げられることなく、それによって、同伴された基準系としてのその機能を達成可能である。したがって、固定要素B1、B2は、第2横ビームの重量を支持可能でありかつ第1方向Xにおける第2横ビームFY2の同伴を保証するが、第2横ビームFY2内へ曲げ力を導入しない可撓性要素を含むべきである。例えば、第1固定要素は、Z方向の周りの回転以外の全ての自由度を阻止する曲げ継手であってもよい。第2固定要素B2は、このとき、Y方向における移動およびZ方向の周りの回転以外の全ての自由度を阻止すべきである。これは、例えば、曲げ継手と、SCARA-Roboterのタイプの折り重ね継手の組合せにより達成可能である。
【0032】
大量生産用に、相互に接近可能な2つの第1横ビームFY1および2つの機能要素Tを有するシステムを構成可能にするために、第2横ビームFY2は、ここで、第3方向Zに関して、ベースGと、第1横ビームFY1、Y方向走行車FY、Z方向走行車LZおよび機能要素Tからなる複合体の間、ないしはこの複合体の下方に配置されている。すなわち、これは、第1方向Xには追加の構造空間を必要としない。剛結合Vは、ベースGと第2横ビームFYの間で伸長する。この有利な配置は、図2においてもまた良好に確認可能である。このような二重ガントリ配置は、このとき、2つの第1横ビームFY1およびこれに付属のそれぞれ1つの第2横ビームFY2を有する。通常、機能要素Tは、このようなシステムにおいて、相互に向かい合わされている。第2横ビームFY2の特定の配置により、両方の機能要素Tはほぼ任意に接近していてもよい。
【0033】
図3および4において、ここでは図示されていないベースGと剛に結合された尺度MX1、MX2もまた確認される。固定要素B1、B2の付近の走査ヘッドAK1、AK2は、ベースGに対する第2横ビームFY2の相対位置の決定に使用される。
【0034】
ベースGは、相互に分離された横ビームFY1、FY2もまた支持し、第1横ビームFY1は、この場合、全ての加工力を受け取りかつ曲がることが可能であるが、決定的な位置測定は、第2横ビームFY2に対して相対的に(直接または機能要素TのX-Yオフセットの場合のように間接的に)行われる。ベースGに対するこの相対位置は良好に検出されかつ第2横ビームFY2は加工力のもとでも曲がらないので、ベースGに対する機能要素Tの最終的な決定的位置は決定可能である。ここで、これは、Z方向走行車LZの位置に依存する案内エラーによりまたは機能要素Tにかかる力により発生され、かつ従来技術においては検出可能ではなかった位置偏差に対してもまた適用される。
【0035】
したがって、機能要素Tを用いて、ベースG上に置かれた物体の加工が、しかも物体上のきわめて正確に定義された位置において実行可能である。
ここではベースGと剛に結合されている第2横ビームFY2の位置の決定のために、図3および4に示された尺度M1、M2の配置に対する変更により、これらの尺度M1、M2は、ベースG上に配置された、それ自身剛であったり温度に対して安定していたりする必要のない構造部品上に装着されていてもよい。この構造部品は、例えば、ウェーハまたは回路基板のような物体に対する操作システムであってもよい。尺度M1、M2がこの物体の平面上で構造部品に固定されているにも関わらず、FY2の位置は、構造部品の変形においても物体と共に動く尺度M1、M2に相対的に固定されるので、その正確な加工が可能である。
【0036】
図5は、さらに、固定要素B1、B2、およびここには図示されていないY方向走行車LYから出発して第2横ビームFY2を包囲する剛結合Vを有する第2横ビームFY2の詳細図を示す。剛結合Vの前方端部に、第1および第2方向X、Yに対してそれぞれ45度の角度以下に配向され、かつこの場合、相互に90度の角度を形成する2つの装着面S1、S2が確認される。これらの装着面S1、S2に走査ヘッドAKxy2、AKxy2′が装着され、これらは、第3方向Zの周りの回転に関して90度のオフセットを有して機能要素Tに装着された両方の1Dplus尺度Mxy2、Mxy2′を走査する。両方の走査ヘッドAKxy2、AKxy2′は、このとき、同様に90度の角度を形成しかつ第3方向Z内のY方向走行車LYに対する機能要素Tの相対位置、並びにXおよびYオフセットの混合を提供する。この混合は、簡単な三角法変換により、第1方向Xおよび第2方向YにおけるY方向走行車LYに対する機能要素Tの相対オフセットに換算可能である。この変換は、尺度Mxy2、Mxy2′および走査ヘッドAKxy2、AKxy2′の幾何学的配置により決定されている。
【符号の説明】
【0037】
AK1、AK2、AKxy1、AKxy2、AKxy2′、AKz2 位置測定装置、走査ヘッド
B1、B2 固定要素
FX1、FX2 線形ガイド
FY1、FY2 横ビーム
G ベース、花崗岩
LMX1、LMX2 リニアモータ
LMY 他のリニアモータ
LX1、LX2 X方向走行車
LY Y方向走行車
LZ Z方向走行車
M1、M2、MX1、MX2、Mxy、Mxy1、Mxy2、Mxy2′、MY、Mz 位置測定装置、尺度
S1、S2 装着面
T 機能要素、テーブル
V 剛結合
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向
図1
図2
図3
図4
図5