(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ハンドリング装置、制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20221011BHJP
B65G 47/91 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B25J15/06 M
B65G47/91 Z
(21)【出願番号】P 2018159652
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 春菜
(72)【発明者】
【氏名】小川 昭人
(72)【発明者】
【氏名】十倉 征司
(72)【発明者】
【氏名】古茂田 和馬
(72)【発明者】
【氏名】姜 平
(72)【発明者】
【氏名】菅原 淳
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0221187(US,A1)
【文献】特表2017-520417(JP,A)
【文献】特開2019-042828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
B65G 47/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を保持可能な
吸着部を有する保持部と
、
制御部と、
前記物体と前記物体の移動元および箱状の移動先に関する情報を検出する検出器と、
前記移動先の内壁面へ前記物体を押し付けた時の情報を取得する力センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、
前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、
前記移動先の前記内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、
特定された前記方向に基づいて、前記保持部の保持姿勢および保持位置を決定する、
ハンドリング装置。
【請求項2】
前記保持部は、保管領域において前記物体を解放する
請求項1に記載のハンドリング装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する前記方向から見た時に前記保管領域の境界面又は先に配置された物体の側面に倣うことが可能な前記物体の少なくとも一面が前記保持部によって覆われないように前記保持部に前記物体を保持させる
請求項2に記載のハンドリング装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記保管領域の境界面又は先に配置された物体の側面に対して前記物体を押し付ける
請求項3に記載のハンドリング装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する前記方向から見た時に前記保管領域の境界面又は先に配置された物体の側面に倣うことが可能な前記物体の少なくとも二面が前記保持部によって覆われないように前記保持部に前記物体を保持させる
請求項2に記載のハンドリング装置。
【請求項6】
前記保持部は、前記保管領域の境界面又は先に配置された物体の側面のいずれかの面であって、2つの前記面によって構成される角部に対して前記物体を押し付ける
請求項5に記載のハンドリング装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する前記方向から見た時に、前記物体の
前記外形から前記保持部がはみ出す前記物体の辺の数が最も少なくなるように前記保持部に前記物体を保持させる
請求項1又は請求項2に記載のハンドリング装置。
【請求項8】
前記保持部は、複数の吸着部からなり、
それぞれの前記吸着部の使用の程度に応じてそれぞれの前記吸着部の交換時期を示す情報を出力する提示部
を備える請求項1又は請求項2に記載のハンドリング装置。
【請求項9】
前記保持部は、複数の吸着部からなり、
前記制御部は、それぞれの前記吸着部の使用の程度に応じてそれぞれの前記吸着部の使用頻度を変更させる
を備える請求項1又は請求項2に記載のハンドリング装置。
【請求項10】
物体を保持可能な
吸着部を有する保持部と
、
制御部と、
前記物体と前記物体の移動元および箱状の移動先に関する情報を検出する検出器と、
前記移動先の内壁面へ前記物体を押し付けた時の情報を取得する力センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、
前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、
前記移動先の前記内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、
特定された前記方向に基づいて、前記保持部に前記物体の端の位置を保持させる
ハンドリング装置。
【請求項11】
物体を保持可能な
吸着部を有する保持部と
、
制御部と、
前記物体と前記物体の移動元および箱状の移動先に関する情報を検出する検出器と、
前記移動先の内壁面へ前記物体を押し付けた時の情報を取得する力センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、
前記物体の側面を
前記移動先の前記内壁面に接触させる場合に、前記物体の側面が
前記移動先の前記内壁面に接触する前に前記保持部が
前記移動先の前記内壁面に接触しないように、
前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、
前記移動先の前記内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、
特定された前記方向に基づいて、前記保持部に前記物体を保持させる
ハンドリング装置。
【請求項12】
物体を保持可能な吸着部を有する保持部と、前記物体と前記物体の移動元および箱状の移動先に関する情報を検出する検出器と、前記移動先の内壁面へ前記物体を押し付けた時の情報を取得する力センサと、を備えるハンドリング装置における制御装置であって、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、
前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、
前記移動先の前記内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、
特定された前記方向に基づいて、前記保持部の端の位置で前記保持部に前記物体を保持させる制御部
を備える制御装置。
【請求項13】
物体を保持可能な吸着部を有する保持部と、前記物体と前記物体の移動元および箱状の移動先に関する情報を検出する検出器と、前記移動先の内壁面へ前記物体を押し付けた時の情報を取得する力センサと、を備えるハンドリング装置における制御装置であって、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、
前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、
前記移動先の前記内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、
特定された前記方向に基づいて、前記保持部に前記物体の端の位置を保持させる制御
部
を備える制御装置。
【請求項14】
物体を保持可能な吸着部を有する保持部と、前記物体と前記物体の移動元および箱状の移動先に関する情報を検出する検出器と、前記移動先の内壁面へ前記物体を押し付けた時の情報を取得する力センサと、を備えるハンドリング装置における制御装置であって、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、
前記物体の側面を
前記移動先の前記内壁面に接触させる場合に、前記物体の側面が
前記移動先の前記内壁面に接触する前に前記物体を保持可能な
前記保持部が
前記移動先の前記内壁面に接触しないように、
前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、
前記移動先の前記内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、
特定された前記方向に基づいて、前記保持部に前記物体を保持させる制御部
を備える制御装置。
【請求項15】
物体を保持可能な吸着部を有する保持部と、前記物体と前記物体の移動元および箱状の移動先に関する情報を検出する検出器と、前記移動先の内壁面へ前記物体を押し付けた時の情報を取得する力センサと、を備えるハンドリング装置を制御する制御装置のプログラムであって、
前記プログラムは前記制御装置のコンピュータに、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、
前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、
前記移動先の前記内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、
特定された前記方向に基づいて、前記保持部の端の位置で前記保持部に前記物体を保持させる制御ステップ
を実行させるためのプログラム。
【請求項16】
物体を保持可能な吸着部を有する保持部と、前記物体と前記物体の移動元および箱状の移動先に関する情報を検出する検出器と、前記移動先の内壁面へ前記物体を押し付けた時の情報を取得する力センサと、を備えるハンドリング装置を制御する制御装置のプログラムであって、
前記プログラムは前記制御装置のコンピュータに、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、
前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、
前記移動先の前記内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、
特定された前記方向に基づいて、前記保持部に前記物体の端の位置を保持させる制御ステップ
を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
物体を保持可能な吸着部を有する保持部と、前記物体と前記物体の移動元および箱状の移動先に関する情報を検出する検出器と、前記移動先の内壁面へ前記物体を押し付けた時の情報を取得する力センサと、を備えるハンドリング装置を制御する制御装置のプログラムであって、
前記プログラムは前記制御装置のコンピュータに、
前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、
物体の側面を
前記移動先の前記内壁面に接触させる場合に、前記物体の側面が
前記移動先の前記内壁面に接触する前に前記物体を保持可能な
前記保持部が
前記移動先の前記内壁面に接触しないように、
前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、
前記移動先の前記内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、
特定された前記方向に基づいて、前記保持部に前記物体を保持させる制御ステップ
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ハンドリング装置、制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
物流向けピッキングシステムを活用した自動化システムでは、ピッキングしたアイテムを出荷用の箱に詰める箱詰め作業を伴うことが多い。このような箱詰め作業によってアイテムが詰められた箱の充填率は、輸送効率及び輸送コストに影響を与える。そのため、箱詰めにおける充填率向上が、物流向けピッキングシステムの性能を訴求する上での重要な訴求ポイントとなる。例えば、特許文献1には、収容容器及び収納対象物の幾何モデルデータとセンシングにより取得されるデータとに基づいて箱詰めを行う箱詰め計画方法について記載されている。また、特許文献2には、腹部が盛り上がった袋形状の物体を複数把持し、持ち上げた複数の物体の間隔を狭めて段ボールケース等に収納する吸着装置について記載されている。
【0003】
ところで、箱の隅から順にアイテムを詰めながら箱詰め作業を行う場合、例えば把持成功率のみを考慮した従来のハンドリング装置では、アイテムを把持するハンド機構(保持部)の一部が、箱の内壁又は箱内の他のアイテム等に干渉する場合がある。この場合、アイテムを詰めて置くことができないため、アイテムが詰められる箱の充填率が低下する。しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、箱の内壁又は箱内の他のアイテム等に対する保持部の干渉については考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/149616号
【文献】特開2018-89732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、アイテムが詰められる箱の充填率を向上させることができるハンドリング装置、制御装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のハンドリング装置は、吸着部を有する保持部と、制御部と、検出器と、力センサと、を持つ。保持部は、物体を保持可能である。制御部は、前記検出器で前記物体に対して前記保持部の前記吸着部が接する方向から見た時に前記保持部の外形が前記物体の外形からはみ出す場合、前記検出器で検出した情報に基づいて生成した物体外形情報、移動先形状情報および移動先積載情報に基づいて、移動先の内壁面または前記移動先に先に置かれた物体に前記保持部を干渉させないための前記物体の前記外形に対して前記保持部がはみ出してはいけない方向を特定し、特定された前記方向に基づいて、前記保持部の端の位置で前記保持部に前記物体を保持させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態の搬送システムを模式的に示す図。
【
図3】一実施形態の複数の吸着部の配置レイアウトを示す下面図。
【
図5】一実施形態の搬送システムのシステム構成を示すブロック図。
【
図6】一実施形態の保持部の端で物体を把持する様子を示す図。
【
図7】複数の保持姿勢及び保持位置と、その保持姿勢及び保持位置による箱詰め密度について説明するための図。
【
図8】複数の保持姿勢及び保持位置と、その保持姿勢及び保持位置による箱詰め密度について説明するための図。
【
図9】各把持方法に対する幾何学的なパターン分類を説明するための図。
【
図10】各把持方法に対する幾何学的なパターン分類を説明するための図。
【
図11】各把持方法に対する幾何学的なパターン分類を説明するための図。
【
図12】一実施形態の保持部の複数の保持姿勢及び保持位置の例を示す図。
【
図13】搬送効率に影響する要素の分類例を示す図。
【
図15】一実施形態の制御部の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態のハンドリング装置及び搬送システムを、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。また、本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0009】
図1から
図15を参照して、一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のハンドリング装置10を含む搬送システム1を模式的に示す図である。搬送システム1は、例えば、物流用のハンドリングシステム(ピッキングシステム)である。搬送システム1は、移動元S1に位置する物体(保持対象物、搬送対象物)Oを、移動先S2に移動させる。
【0010】
移動元S1は、例えば、各種のコンベアや各種のパレット、又はトートやオリコンのようなコンテナ等であるが、これらに限定されない。移動元S1には、大きさや重さが異なる多種類の物体Oがランダムに置かれる。本実施形態では、保持対象の物体Oは、5cm角のような小さなものから、30cm角のような大きなものまで様々である。また、物体Oは、数十gのような軽いものから数kgのような重いものまで様々である。ただし、物体Oの大きさや重さは、上記例に限定されない。
【0011】
移動先S2は、例えば、トートやオリコンのようなコンテナであるが、これらに限定されない。「コンテナ」とは、物体Oを収容可能な部材(例えば箱状の部材)を広く意味する。以下では、説明の便宜上、「移動先S2」を「移動先コンテナS2」と称する場合がある。ただし、ハンドリング装置10及び搬送システム1は、コンテナ以外の移動先S2に物体Oを移動させるものでもよい。
【0012】
又はハンドリング装置10及び搬送システム1は、物流用のハンドリングシステムに限定されず、産業用ロボットシステムやその他のシステム等にも広く適用可能である。本願でいう「ハンドリング装置」、及び「搬送システム」とは、物体の搬送を主目的とした装置やシステムに限定されず、製品組立や別の目的の一部として物体の搬送(移動)を伴う装置やシステムも含む。
【0013】
まず、搬送システム1の全体構成について説明する。
図1に示すように、搬送システム1は、例えば、ハンドリング装置10、1つ以上の第1検出器11、1つ以上の第2検出器12、及び管理装置13を含む。
【0014】
ハンドリング装置10は、例えばロボット装置であり、移動元S1に位置する物体Oを保持し、保持した物体Oを移動先S2(保管領域)に移動させる。ハンドリング装置10は、有線又は無線で管理装置13と通信可能である。ハンドリング装置10については詳しく後述する。
【0015】
第1検出器11は、移動元S1の近く(例えば、移動元S1の直上や斜め上方)に配置されたカメラ又は各種センサである。第1検出器11は、例えば、移動元S1に位置する物体Oに関する情報と、移動元S1に関する情報とを取得する。第1検出器11により取得される情報は、例えば、「画像データ」、「距離画像データ」、及び/又は、「形状データ」である。「距離画像データ」とは、1つ以上の方向の距離情報(例えば、移動元S1の上方に設定された任意の基準面からの深さ情報)を持つ画像データである。「形状データ」とは、物体Oの外形形状等を示す情報である。第1検出器11により検出された情報は、管理装置13に出力される。なお、第1検出器11は、ハンドリング装置10の一部として設けられてもよい。この場合、第1検出器11により検出された情報は、ハンドリング装置10の制御部300(後述)に直接出力されてもよい。
【0016】
なお、ハンドリング装置10が、移動元S1から物体Oを取り出す動作を行う前に、移動元S1に位置する物体Oに関する情報、及び移動元S1に関する情報を取得することができる構成であるならば、これらの情報が第1検出器11を用いて取得される構成ではなくても構わない。例えば、移動元S1に位置する物体Oに関する情報、及び移動元S1に関する情報が、予めサーバ(図示せず)上のデータベースに登録されており、制御部300(後述)又は管理装置13が、当該データベースからこれらの情報を取得する構成であっても構わない。
【0017】
ただし、例えば、システム動作中に揺れ等が発生することによって物体Oの位置や姿勢等が変化する可能性がある。そのため、搬送システム1が、物体O及び移動元S1に関する最新の情報を取得することができる構成を備えていることが好ましい。
【0018】
第2検出器12は、移動先コンテナS2の近く(例えば、移動先コンテナS2の直上や斜め上方)に配置されたカメラ又は各種センサである。第2検出器12は、例えば、移動先コンテナS2の形状(内壁面や仕切りの形状を含む)に関する情報と、移動先コンテナS2内に先に置かれた物体Oに関する情報とを検出する。第2検出器12により取得される情報は、例えば、「画像データ」、「距離画像データ」、及び/又は、「形状データ」である。なお、第2検出器12は、ハンドリング装置10の一部として設けられてもよい。この場合、第2検出器12により検出された情報は、ハンドリング装置10の制御部300に直接出力されてもよい。
【0019】
管理装置13は、搬送システム1の全体の管理及び制御を行う。例えば、管理装置13は、第1検出器11及び第2検出器12により検出された情報を取得し、取得した情報をハンドリング装置10に出力する。
【0020】
次に、ハンドリング装置10について説明する。
図1に示すように、ハンドリング装置10は、例えば、移動機構100、保持部200、及び制御部300(制御装置)を含む。
【0021】
移動機構100は、保持部200を所望の位置に移動させる機構である。例えば、移動機構100は、6軸の垂直多関節ロボットアームであり、複数のアーム部材101と、複数のアーム部材101を回動可能に連結した複数の回動部102とを含む。ただし、移動機構100は、3軸の直交ロボットアームでもよいし、その他の構成により保持部200を所望の位置に移動させる機構でもよい。例えば、移動機構100は、回転翼により保持部200を持ち上げて移動させる飛行体(例えばドローン)等でもよい。
【0022】
保持部200は、移動元S1に位置する物体Oを保持する保持機構である。保持部200は、後述する回動部202を介して移動機構100に連結されている。例えば、保持部200は、吸引装置203と、吸引装置203に連通した吸着部205とを有し、吸着により物体Oを保持する。ただし、保持部200は、複数の挟持部材で物体Oを挟持することで物体Oを保持する保持部でもよいし、その他の機構により物体Oを保持する保持部でもよい。なお以下では、保持部200が吸着部205を有する例について説明する。
【0023】
図2は、本実施形態の保持部200を示す斜視図である。保持部200は、例えば、ベース201、回動部202、吸引装置203、複数の切換弁204、複数の吸着部205(例えば吸着パッド)、ベース先端部206、及び回動部207を有する。
【0024】
ベース201は、例えば立方体状の外形を有し、保持部200の外郭を形成している。ベース201は、回動部202を介して移動機構100に連結されている。ベース201は、箱状に形成されてもよく、フレームのみで構成されてもよい。
【0025】
回動部202は、ベース201と移動機構100との間に設けられ、移動機構100に対してベース201を回動可能に連結している。回動部202の回動中心軸Cは、移動機構100の先端部とベース201とが並ぶ方向と略一致する。回動部202は、移動機構100に対して保持部200のベース201を、図中のθ方向及びその反対方向に回動させることができる。なお、回動部202は、保持部200の一部としてではなく、移動機構100の一部として設けられてもよい。
【0026】
吸引装置203は、ベース201の内側に設けられている。吸引装置203は、例えば真空ポンプである。吸引装置203は、ホース等を介して複数の吸着部205の各々と連通している。吸引装置203が駆動されることで、各吸着部205内の圧力が大気圧よりも低くなり、吸着部205により物体Oが吸着保持される。
【0027】
複数の切換弁204は、複数の吸着部205に対して1対1で設けられている。各切換弁204は、対応する吸着部205と吸引装置203と連通させる第1状態と、吸着部205と吸引装置203との間の連通を遮断するとともに吸着部205をハンドリング装置10の外部(大気圧空間)に連通させる第2状態との間で切り替え可能である。ハンドリング装置10は、例えば物体Oが比較的小さい場合、複数の吸着部205のなかから選択された1つ又は少数の吸着部205のみを、保持に用いる吸着部205(以下、「有効吸着部205E」と称する)として機能させる。なお、以下に説明するいくつかの図では、複数の吸着部205のなかで、有効吸着部205Eにドット模様を付することで、有効吸着部205Eと、それ以外の吸着部205とを区別して図示している。
【0028】
複数の吸着部205は、ベース先端部206(後述)の一端部において、互いに並べて配置されている。吸着部205は、移動元S1に位置する最小の物体よりも小さい外形を持つ。ハンドリング装置10は、複数の吸着部205のなかから選択された1つ以上の有効吸着部205Eのみを用いて物体Oを吸着保持する。本実施形態は、移動元S1に5cm角の物体Oが置かれ得る例であり、吸着部205は、例えば直径が4cmの円形状である。
【0029】
ベース先端部206は、回動部207を介してベース201の一端部に連結されている。ベース先端部206には、上述したように、5つの吸着部205が設けられている。
【0030】
回動部207は、ベース先端部206とベース201との間に設けられ、ベース201に対してベース先端部206を回動可能に連結している。
【0031】
なお、上述したように移動機構100は、6軸の垂直多関節ロボットアームであり、様々な位置姿勢をとることが可能である。さらに、上記のベース先端部206及び回動部207が設けられることによって、保持部200の先端に、さらに1軸の自由度が与えられる。これにより、例えば、人間が、底の深い箱の中の物を取り出す場合に、箱の上方からまっすぐ垂直に腕を差し込み、腕自体の水平方向回転と手首を倒す運動のみで様々な手先姿勢を取ることができるように、移動機構100も、物体を把持するためのより様々な姿勢を取ることができる。
【0032】
なお、上述したように、移動元S1の上部には内部の物体Oを認識するための第1検出器11が設けられているが、物体Oの移動作業において生じる様々な誤差により、物体Oを把持する動作の前後において多少の位置ずれが生じる可能性がある。これに対し、例えば、ハンドリング装置10は、把持した物体Oを移動させて、LRF(Laser Range Finder;レーザー照準機)(図示せず)の前を通過させる。これにより、ハンドリング装置10は、物体Oの把持状態の確認を行うことができ、保持部200と物体Oとの位置関係をより正確に認識することができる。
【0033】
なお、上記LRFは、例えば、保持部200が移動先コンテナS2へ向かって移動する際の移動経路の近傍に設けられることが好ましい。この場合、ハンドリング装置10は、より小さな動作で物体Oの把持状態の確認を行うことができる。これにより、システム全体の動作時間が短縮される。
【0034】
図3は、本実施形態の複数の吸着部205の配置レイアウトを示す下面図である。本実施形態では、保持部200の外形(例えばベース先端部206又はベース201の外形)は、例えば12cm×12cmの四角形状である。上述したように、保持部200は、5つの吸着部205を有する。5つの吸着部205は、保持部200の略中心に配置された1つの吸着部205と、保持部200の4つの角部に対応するように、上記吸着部205の周囲に分かれて配置された4つの吸着部205とを含む。これら4つの吸着部205は、上述した回動部202が回動することで、回動部202の回動中心軸Cの周りをθ方向及びその反対方向に回動可能である。
【0035】
ここで、本明細書でいう「保持姿勢」及び「保持位置」について定義する。
図4は、「保持姿勢」及び「保持位置」を説明するための図である。本明細書でいう「保持姿勢」とは、物体Oに対する保持部200の角度位置(θ方向における回転位置)を意味する。例えば、
図4中の(a)の状態から「保持姿勢」を変化させた場合、保持部200の中心(回動部202の回動中心軸C)の位置は
図4中の(a)の状態から変化しないが、物体Oの外形に対する保持部200の外形の向きが変化する。なお、保持部200の保持姿勢は、回動部202の回動により変更可能である。
【0036】
一方で、本明細書でいう「保持位置」とは、物体Oに対して保持部200を平行移動させた場合に変化する、保持部200において物体Oが保持される位置を意味する。すなわち、「保持位置」とは、物体Oと保持部200とが重なる方向から見たときに、保持部200の外形で表される範囲のうち物体Oが重なっている範囲を示す。例えば、
図4中の(a)の状態から「保持位置」を変化させた場合は、保持部200の「保持姿勢」は
図4中の(a)の状態から変化しないが、物体Oの中心に対する保持部200の中心の位置が変化し、保持部200の外形で表される範囲のうち物体Oが重なっている範囲が変化する。
なお、保持部200の保持位置は、移動機構100の動作により変更可能である。
【0037】
次に、制御部300について説明する。制御部300は、ハンドリング装置10の全体動作を制御する。
図5は、搬送システム1のシステム構成を示すブロック図である。制御部300は、例えば、情報取得部310、情報解析部320、計画部330、動作制御部340、及び記憶部350を含む。
【0038】
制御部300の各機能部(例えば、情報取得部310、情報解析部320、計画部330、及び動作制御部340)の全部又は一部は、例えばCPU(Central Processing Unit;中央処理装置)又はGPU(Graphics Processing Unit;グラフィックスプロセッサ)のような1つ以上のプロセッサがプログラムメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。ただし、これら機能部の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)等のハードウェア(例えば回路部;circuity)により実現されてもよい。また、上記機能部の全部又は一部は、上記ソフトウェア機能部とハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。記憶部350は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory;読み出し専用メモリ)、又はRAM(Random Access Memory;読み書き可能なメモリ)等により実現される。
【0039】
ここで、説明の便宜上、記憶部350について先に説明する。記憶部350には、例えば、保持部200の外形を示す情報(以下、「保持部外形情報」と称する)が記憶されている。
【0040】
「保持部外形情報」は、例えば特定方向D(
図1参照)から見た場合における保持部200の外形を示す情報を含む。特定方向Dとは、例えば、移動先コンテナS2内に物体Oを置くタイミング(例えば物体Oを解放する直前のタイミング)で、物体Oと保持部200とが重なる方向である。別の観点で見ると、「特定方向D」とは、吸着部205を有した保持部200が設けられる場合、物体Oに対して吸着部205が接する方向である。
【0041】
なお、保持部外形情報は、ハンドリング装置10の記憶部350に記憶されることに代えて、管理装置13に記憶されてもよく、ハンドリング装置10がネットワークを介して通信可能な他の装置に記憶されてもよい。
【0042】
次に、制御部300の各機能部について説明する。情報取得部310は、第1検出器11及び第2検出器12により検出された情報を、管理装置13から取得する。本明細書で言う「取得」とは、送信リクエストを発信することで情報を取得する場合に限定されず、受け身で受信することで情報を取得する場合も含む。情報取得部310は、第1検出器11及び第2検出器12から取得した情報を情報解析部320に出力する。
【0043】
情報解析部320は、第1検出器11及び第2検出器12により検出された情報に基づき、ハンドリング装置10の制御に用いられる各種の情報を生成する。例えば、情報解析部320は、画像データ又は距離画像データに対して所定の画像処理を行うことで、上記情報の少なくとも一部を生成する。上記情報は、例えば、「物体外形情報」、「移動元形状情報」、「移動先形状情報」、及び「移動先積載情報」を含む。情報解析部320は、これら情報を計画部330に出力する。
【0044】
「物体外形情報」は、例えば、物体Oの画像データ、物体Oの距離画像データ、物体Oの形状データ、又は、それらの少なくとも1つから導出された情報である。「物体外形情報」は、移動元S1に位置する物体O(保持対象の物体O)の外形を示す情報である。「物体外形情報」は、例えば上記特定方向Dから見た場合における物体Oの外形を示す情報を含む。
【0045】
「移動元形状情報」は、移動元S1の物体Oを保持部200で保持する場合に障害物となる移動元S1の形状を示す情報である。情報解析部320は、例えば第1検出器11により検出された情報に基づき、「移動元形状情報」を生成する。
【0046】
「移動先形状情報」は、移動先S2に物体Oを移動させる場合に障害物となる移動先S2の形状を示す情報である。例えば、「移動先形状情報」は、移動先コンテナS2の内壁面を規定する壁や、移動先コンテナS2の内部に設けられた仕切りを示す情報である。「移動先積載情報」は、移動先コンテナS2に先に置かれた物体Oを示す情報である。情報解析部320は、例えば第2検出器12により検出された情報に基づき、「移動先形状情報」及び「移動先積載情報」を生成する。
【0047】
次に、計画部330について説明する。計画部330は、例えば、保持計画生成部330aと、移動計画生成部330bとを有する。保持計画生成部330aは、移動元S1に位置する物体Oを保持部200で保持するための保持計画を生成する。移動計画生成部330bは、保持部200により保持された物体Oを移動先S2に移動させるための移動計画を生成する。
【0048】
(保持計画生成部の処理)
まず、保持計画生成部330aについて説明する。本実施形態の保持計画生成部330aは、物体Oと保持部200とが重なる方向(例えば上記特定方向D)から見た場合における、物体Oの外形に対する保持部200のはみ出し方に基づいて、物体Oに対する保持部200の保持姿勢及び保持位置を決定する。なお以下の説明における「はみ出る」とは、例えば上記特定方向Dから見た場合を基準とする。
【0049】
ここで、移動先コンテナS2内に物体Oを移動させる(いわゆる箱詰めを行う)際の保持部200の種々の保持姿勢及び保持位置の優劣について説明する。
上記説明したハンドリング装置10は、例えば、1mm間隔のシフト又は1度間隔の回転等、保持部200を自在に動作させることができるため、物体Oを様々な保持姿勢及び保持位置で把持することができる。ここで、最良の保持姿勢及び保持位置を選択することが、箱の充填率を向上させて輸送効率を向上させる上で重要になる。
【0050】
保持計画生成部330aは、様々な保持姿勢及び保持位置の中から、任意の基準に沿って評価を行い、最良の保持姿勢及び保持位置を選択する。場合によっては、保持計画生成部330aは、例えば
図6に示すように、あえてベース先端部206の中央よりも端に近い保持位置で(例えば、ベース先端部206の端により近い吸着部205によって)物体Oを把持する保持位置を選択することがある。上記のような選択が行われる場合とは、例えば、物体Oと前記保持部200とが重なる方向から見た場合に保持部200の外形が物体Oの外形からはみ出す場合である。
【0051】
上述したように本実施形態では、保持部200は5つの吸着部を備えている。この場合、例えば
図7に示すような、複数の保持姿勢及び保持位置が考えられる。
図7及び
図8は、複数の保持姿勢及び保持位置と、その保持姿勢及び保持位置による箱詰め密度について説明するための図である。
図7中の(a)は、保持部200の外形が物体Oの外形の4辺(すなわち、全ての辺)からはみ出す保持姿勢及び保持位置を示す。この保持姿勢及び保持位置で把持した場合には、保持部200が移動先コンテナS2の内壁に干渉する。そのため、ハンドリング装置10は、移動先コンテナS2の内壁に倣うように詰めて物体Oを置くことができない。
【0052】
図7中の(b)に示す保持姿勢及び保持位置は、
図7中の(a)に示す保持姿勢及び保持位置に対し、保持姿勢のみが異なる。この保持姿勢及び保持位置で把持した場合には、
図8中の(b)に示すように、移動先コンテナS2の内壁に近い位置にまで詰めて、物体Oを置くことができる。しかしながら、保持部200が移動先コンテナS2の内壁にやはり干渉するため、移動先コンテナS2の内壁に倣うように(内壁に押し付けるようにして)詰めて物体Oを置くことができない。
【0053】
図7中の(c)に示す保持姿勢及び保持位置は、
図7中の(b)に示す保持姿勢及び保持位置に対し、保持位置のみが異なる。
図7中の(c)の保持位置は、
図7中の(b)の保持位置よりもベース先端部206の端により近い。そのため、
図7中の(c)の保持位置で把持した場合、
図7中の(b)の保持位置で把持するよりも、移動先コンテナS2の内壁にさらに寄せて物体Oを置くことが可能になる。しかしながら、
図7中の(c)も、保持部200の外形が物体Oの外形の4辺(すなわち、全ての辺)からはみ出す保持姿勢及び保持位置である。そのため、
図7中の(c)の保持姿勢及び保持位置で把持した場合であっても、保持部200が移動先コンテナS2の内壁に干渉する。そのため、ハンドリング装置10は、移動先コンテナS2の内壁に押し付けるようにして詰めて物体Oを置くことはできない。
【0054】
このように、
図7中の(a)、(b)及び(c)の保持姿勢及び保持位置は、いずれも保持部200の外形が物体Oの外形の4辺からはみ出す保持姿勢及び保持位置である点については共通しているが、箱の充填率を向上させるためには、(a)よりも(b)の保持姿勢及び保持位置、そして(b)よりも(c)の保持姿勢及び保持位置のほうがより好ましいといえる。
【0055】
また、
図7中の(d)は、物体Oの外形の3辺から保持部200の外形がはみ出す保持姿勢及び保持位置を示す。この保持姿勢及び保持位置で把持した場合、
図8中の(d)に示すように、移動先コンテナS2の内壁に押し付けるようにして(内壁に接触させて)詰めて物体Oを詰めて置くことができる。しかしながら、この保持姿勢及び保持位置で把持した場合、移動先コンテナS2の角に押し付けるようにして物体Oを詰めて置くことはできない。
【0056】
図7中の(e)は、物体Oの外形の2辺から保持部200の外形がはみ出す保持姿勢及び保持位置を示す。この保持姿勢及び保持位置で把持した場合、
図8中の(e)に示すように、移動先コンテナS2の角に押し付けるようにして物体Oを詰めて置くことができる。しかしながら、例えば移動先コンテナS2における保管領域の幅が狭い場合には、保持部200が移動先コンテナS2の内壁又は先に置かれた他の物体Oに干渉するため、移動先コンテナS2の角に押し付けるようにして物体Oを置くことができない。
【0057】
図7中の(f)は、物体Oの外形の2辺から保持部200の外形がはみ出す保持姿勢及び保持位置を示す。この保持姿勢及び保持位置で把持した場合、
図8中の(f)に示すように、移動先コンテナS2における保管領域の幅が狭い場合であっても、移動先コンテナS2の角に押し付けるようにして物体Oを詰めて置くことができる。この保持姿勢及び保持位置では、移動先コンテナS2の角に押し付けるようにして物体Oを詰めておくことが比較的容易にでき、さらに、先に置かれた物体Oに対して他の物体Oを詰めて置くことも比較的容易にできる。そのため、箱の充填率を向上させるためには、
図7中の(a)から(f)に示される複数の保持姿勢及び保持位置の中では、
図7中の(f)の保持姿勢及び保持位置がより好ましいと言える。
【0058】
本実施形態では、保持計画生成部330aは、物体Oの外形を示す情報(上述した「物体外形情報」)と、保持部200の外形を示す情報(上述した「保持部外形情報」)とに基づき、複数の保持姿勢の各々について、物体Oの外形に対する保持部200のはみ出し方を評価する。さらに本実施形態では、保持計画生成部330aは、複数の保持姿勢の各々について、複数の保持位置の各々での、物体Oの外形に対する保持部200のはみ出し方を評価する。
【0059】
詳しく述べると、本実施形態では、保持計画生成部330aは、物体Oの外形に対する保持部200のはみ出し量に基づき、物体Oの外形に対する保持部200のはみ出し方を評価する。「はみ出し量」とは、例えば、物体Oの外形が多角形と見做された場合(例えば、物体Oの外形が多角形として、又は多角形に近似されて登録されている場合)、物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す辺の数である。
【0060】
ここで上述したように、保持計画生成部330aは、物体Oに対して保持部200の角度位置が異なる複数の保持姿勢及び保持位置を決定する場合がある。この場合、保持計画生成部330aは、決定された複数の保持姿勢及び保持位置の各々について上述した処理を行い、複数の保持姿勢及び保持位置の各々について、その保持姿勢及び保持位置での上記はみ出し量の最小値と、その保持姿勢及び保持位置において上記はみ出し量が最小値となる保持位置とを特定する。
【0061】
保持計画生成部330aは、評価結果に基づき、決定された複数の保持姿勢及び複数の保持位置のなかから、採用される保持部200の保持姿勢及び保持位置を決定する。例えば、保持計画生成部330aは、上記はみ出し量が特定の条件を満たすように、複数の保持姿勢及び複数の保持位置のなかから、保持部200の保持姿勢及び保持位置を決定する。
【0062】
「特定の条件を満たす」とは、例えば、保持計画生成部330aにより決定された複数の保持姿勢及び保持位置のなかで、上記はみ出し量が最小又は所定値以下となることである。上述したように、上記はみ出し量は、例えば、物体Oの外形が多角形と見做された場合、物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す辺の数である。
【0063】
したがって、はみ出し量が物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す辺の数である場合、「特定の条件を満たす」とは、例えば、物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す辺の数が、複数の保持姿勢のなかで最小又は所定数以下(例えば1つ以下)となることである。ただし、「所定数以下」は、「1つ以下」に限定されず、保持部200が近似される多角形の種類等に基づき、「2つ以下」と設定されてもよく、その他の数以下に設定されてもよい。
【0064】
このように、制御部300は、物体Oと保持部200とが重なる方向から見た場合に、保管領域の境界面又は先に配置された他の物体Oの側面に倣うことが可能な物体Oの、(保管領域の境界面に物体Oを押し付ける場合)少なくとも一面、又は、(保管領域の角に物体Oを押し付ける場合)少なくとも二面が、保持部200によって覆われないように、保持部200に物体Oを保持させる。
【0065】
また、保持計画生成部330aは、物体Oの移動先S2に関する情報(例えば、上述した「移動先形状情報」及び「移動先積載情報」)に基づき、物体Oの外形に対して保持部200がはみ出してはいけない方向と、保持部200がはみ出してはいけない物体Oの辺とのうち少なくとも一方を特定するようにしてもよい。そして、保持計画生成部330aは、特定された方向又は特定された物体Oの辺に関する、保持部200のはみ出し量に対する重みを大きくしてもよい。ここで言う「重みを大きくする」とは、保持部200の保持姿勢及び保持位置として採用されにくくすることを意味する。これにより、保持計画生成部330aは、上記特定された方向又は上記特定された物体Oの辺から、保持部200の外形がはみ出す保持姿勢及び保持位置が選択されることを抑制することができる。
【0066】
また、保持計画生成部330aは、物体Oの移動元に関する情報(例えば、上述した「移動元形状情報」)に基づき保持部200の保持姿勢及び保持位置に関する制約条件を設定し、その制約条件下で保持部200の保持姿勢及び保持位置を選択してもよい。
【0067】
以上説明した処理により、保持計画生成部330aは、保持部200の保持姿勢及び保持位置を決定する。保持計画生成部330aは、決定した保持姿勢及び保持位置を、制御目標として動作制御部340に出力する。
【0068】
次に、移動計画生成部330bについて説明する。移動計画生成部330bは、物体Oの移動先S2に関する情報(例えば、上述した「移動先形状情報」及び「移動先積載情報」)に基づき、保持部200で保持した物体Oを移動先S2に移動させる移動計画を生成する。本実施形態では、移動計画生成部330bは、保持計画生成部330aにより決定された保持姿勢及び保持位置に基づき、上記移動計画を生成する。例えば、移動計画生成部330bは、物体Oの外形に対して保持部200がはみ出していない方向が(すなわち、保持部200がはみ出していない物体Oの辺が)、移動先コンテナS2の内壁面や先に置かれた物体Oに隣り合う移動計画を生成する。
【0069】
次に、動作制御部340について説明する。動作制御部340は、計画部330により計画された保持計画及び移動計画に基づき、保持部200及び移動機構100を制御する。例えば、動作制御部340は、保持計画生成部330aにより生成された保持計画に基づき移動機構100及び保持部200を制御し、保持計画生成部330aにより決定された保持部200の保持姿勢及び保持位置で物体Oを保持する。動作制御部340は、移動計画生成部330bにより生成された移動計画に基づき移動機構100及び保持部200を制御し、物体Oを移動先コンテナS2内に移動させる。
【0070】
移動先コンテナS2の内壁、又は先に置かれた他の物体Oの側面に倣って次の物体Oを置く場合に、隙間なく配置するため、ハンドリング装置10による把持解放時の動作には、物体Oを、移動先コンテナS2の内壁、又は先に置かれた他の物体Oの側面へ押し付ける動作を伴うことが想定される。この場合、ベース先端部206の中央よりも、より端に近い保持位置で物体Oを把持する方が、保持部200が箱の内壁や他の物体の側面に干渉しにくい。
【0071】
このような干渉のしにくさを表す定量的な値を計算によって導くためには、例えば、
図9、
図10及び
図11に示すように、各把持方法に対して幾何学的にパターン分類を行えばよい。各パターンが全体パターンに対し優位かどうかを表現する点数を割り付けることによって、一意に評価が可能である。
【0072】
図9、
図10及び
図11は、各把持方法に対する幾何学的なパターン分類を説明するための図である。
図9に示すように、例えば物体が四角形である場合、四角形の一辺の延長線の外側を、1つの領域とみなすことができる。
図9に示すように、四辺それぞれの延長線の外側の領域である領域1~4がある。
【0073】
図10において、実線で描かれた四角形は物体Oの外形を示す。また、二点鎖線で描かれた四角形は保持部200の外形を示す。
図10中の(a)に示す保持姿勢及び保持位置の場合、保持部200の外形は
図10に示した領域1~4のうちいずれの領域にもはみ出していない。
図10中の(b)に示す保持姿勢及び保持位置の場合、保持部200の外形は
図10に示した領域3のみにはみ出している。
図10中の(c)に示す保持姿勢及び保持位置の場合、保持部200の外形は
図10に示した領域2及び領域3にはみ出している。
図10中の(d)に示す保持姿勢及び保持位置の場合、保持部200の外形は
図10に示した領域1及び領域2にはみ出している。
図10中の(e)に示す保持姿勢及び保持位置の場合、保持部200の外形は
図10に示した領域2~4にはみ出している。
図10中の(f)に示す保持姿勢及び保持位置の場合、保持部200の外形は
図10に示した領域1~4の全てにはみ出している。
【0074】
上記のように、はみ出し方の種類(以下「はみ出しパターン」という。)によって、保持姿勢及び保持位置を分類することが可能である。
そして、保持姿勢及び保持位置を上記のように分類した後、例えば、
図11に示すようなスコアリングを行う。
【0075】
ここで、保持計画生成部330aは、物体Oの外形のなかで保持部200が2つの辺からはみ出す場合、前記2つの辺が互いに連続する保持姿勢を、前記2つの辺が互いに連続しない保持姿勢よりも優先して、保持部200の保持姿勢に決定してもよい。
図12は、保持部200の複数の保持姿勢の例を示す図である。「前記2つの辺が互いに連続する」とは、例えば、
図12中の(a)に示すように、物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す2つの辺J1,J2が互いに連続する(互いに接続されている)ことを意味する。一方で、「前記2つの辺が互いに連続しない」とは、例えば、
図12中の(b)に示すように、物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す2つの辺J1,J3が互いに連続しない(例えば対辺である)ことを意味する。
【0076】
上記説明した構成を備えることによって、ハンドリング装置10は、箱詰めに有利な把持方法を選定することができる。しかしながら、一般的に、搬送システムにおいては、箱詰めのみを考慮した把持方法を実行すると、把持時における障害物への衝突の可能性が高くなったり、把持搬送時において物理的な安定性を損なったりする場合が考えられる。また、ロボットの可動範囲の限界付近でハンドリングされることによって、目的とする姿勢を取るまでの到達時間が増大する場合も考えられる。
【0077】
そこで、上述したはみ出しパターンの判定のみから搬送効率の向上を考えるのではなく、搬送プロセス全体において、搬送効率に影響する様々な要素を重み付けすることによって、より効果的に搬送効率の改善を図ることができる。
例えば、
図13に示すように、搬送効率に影響する様々な要素を、「項目」を表す軸と「目的」を表す軸とによって分類することができる。項目の軸の要素としては、例えば、「保持姿勢」、「保持位置」、及び「吸着部の特徴」がある。また、目的の軸の要素としては、例えば、「把持成功率」、「把持解放成功率」、及び「動作タクトタイム」がある。
【0078】
そして、これら3つの項目と3つの目的とによって分類される合計9つの要素グループに対し、例えば、それぞれ
図13示すようにラベリング(score:1-1~score:3-3)を行う。
【0079】
例えば、
図13に示すように、把持成功率に対して影響しうる要素のうち、吸着部の特徴に関する要素に対しては「score:1-1」がラベリングされている。そして、「score:1-1」がラベリングされた要素として「吸着面積の多さ」が挙げられている。これは、物体Oの重量に対して必要十分な吸着面積を有していること、あるいは有していないことを評価するための要素である。
【0080】
また、
図13に示すように、把持成功率に対して影響しうる要素のうち、保持姿勢に関する要素に対しては「score:1-2」がラベリングされている。そして、「score:1-2」がラベリングされた要素として「把持面に姿勢が合っている」ことが挙げられている。これは、物体Oの把持面に吸着部205がしっかりと吸着される保持姿勢であること、あるいはそのような保持姿勢ではないことを評価するための要素である。
【0081】
また、
図13に示すように、把持成功率に対して影響しうる要素のうち、保持位置に関する要素に対しては「score:1-3」がラベリングされている。そして、「score:1-3」がラベリングされた要素として「周囲環境との距離」が挙げられている。これは、ハンドリング装置10が物体Oを移動させる動作における、移動のし易さを評価するための要素である。
【0082】
また、「score:1-3」がラベリングされた要素として、さらに「把持点の面中心近さ」が挙げられている。これは、物体Oが安定して把持されていること、あるいはそのように把持されていないことを評価するための要素である。
【0083】
また、
図13に示すように、把持解放成功率に対して影響しうる要素のうち、保持位置に関する要素に対しては「score:2-1」がラベリングされている。そして、「score2-1」がラベリングされた要素として「はみ出しパターンの判定(はみ出し量の計算)」が挙げられている。これは、本実施形態によるハンドリング装置10によって改善される要素であり、移動先コンテナS2において物体Oをより詰めて置けること、あるいはより詰めて置けないことを評価するための要素である。
【0084】
また、
図13に示すように、把持解放成功率に対して影響しうる要素のうち、保持姿勢に関する要素に対しては「score:2-2」がラベリングされている。そして、「score2-2」がラベリングされた要素として「アイテムとパッド面とが直交しているか」という点が挙げられている。これは、アイテムとパッド面とが直交しているほうが移動先コンテナS2において物体Oをより詰めて置けることから、上記と同様に、移動先コンテナS2において物体Oをより詰めて置けること、あるいはより詰めて置けないことを評価するための要素である。
【0085】
また、
図13に示すように、把持解放成功率に対して影響しうる要素のうち、吸着部の特徴に関する要素に対しては「score:2-3」がラベリングされている。そして、「score2-3」がラベリングされた要素として「解放時運動特性が有効な吸盤」という点が挙げられている。これは、例えば移動先コンテナS2の角部等、把持解放時の環境において物体Oを置く場合に、より有効な吸盤であること、あるいは有効ではない吸盤であることを評価するための要素である。
【0086】
また、
図13に示すように、動作タクトタイムに対して影響しうる要素のうち、保持姿勢に関する要素に対しては「score:3-1」がラベリングされている。そして、「score3-1」がラベリングされた要素として「ロボットが到達しやすい姿勢であること」という点が挙げられている。これは、より短い動作タクトタイムで物体Oを移動させることができる保持姿勢であること、あるいはそのような保持姿勢でないことを評価するための要素である。
【0087】
また、
図13に示すように、動作タクトタイムに対して影響しうる要素のうち、保持位置に関する要素に対しては「score:3-2」がラベリングされている。そして、「score3-2」がラベリングされた要素として「把持面評価」点が挙げられている。これは、より短い動作タクトタイムで物体Oを移動させることができる保持位置であること、あるいはそのような保持位置でないことを評価するための要素である。例えば、把持面がより高い位置にある物体Oから順に移動させたほうが、動作タクトタイムを短くすることができるためである。
【0088】
また、
図13に示すように、動作タクトタイムに対して影響しうる要素のうち、吸着部の特徴に関する要素に対しては「score:3-3」がラベリングされている。そして、「score3-3」がラベリングされた要素として「吸着/解放の動作時間の短い吸盤」が挙げられている。これは、より短い動作タクトタイムで物体Oを移動させることができる特徴を有する吸着部であること、あるいはそのような吸着部ではないことを評価するための要素である。
【0089】
このようにラベリングされた要素グループごとの評価値を、例えば、
図14に示すように、重み付けを行いつつ1つに統合する計算を行う。これにより、
図13及び
図14によって示されるポリシーに基づいて、搬送システムは、最良の判断を自動的に選択して処理を実行することができる。例えば、
図13及び
図14に示すポリシーにおいては、重量のある対象物体を安定して保持するために、「吸着面積の大きさ(score:1-1)」に対して最も多くの重み付けがなされるようになっている。
【0090】
本実施形態に係るハンドリング装置10は、膨大な把持方法(複数の保持姿勢及び複数の保持位置)の候補に対して、統一のスコアリングルールで点数付け及び重み付けを行う。そして、ハンドリング装置10は、このようなスコアリングルールによって算出されたスコアが最良となる保持方法を選択する。統一されたスコアリングルールを用いることによって、例えば互いに背反する複数の「優先したい事項」が存在する場合であっても、ハンドリング装置10は、一括して判断を行い、動作することができる。
【0091】
なお、上記のようなポリシーは、例えば搬送システムの設計者や顧客等によって任意に設定されるものであってもよい。あるいは、安全用に設けられた衝突検知装置から得られる衝突検知結果や、物体認識時に得られる対象物体の破損の有無を示す結果をデータベースに収集しながら、把持結果の成否に基づいて自動で重み付けを更新していくような学習アルゴリズムと組み合わせて設定されるものであってもよい。
【0092】
以下、制御部300の処理の流れの一例について説明する。
図15は、制御部300の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0093】
情報取得部310は、第1検出器11によって認識された物体O等に関する情報を、管理装置13を介して取得する(ステップS01)。
情報解析部320は、物体Oに対して保持部200をあてがう保持姿勢及び保持位置を全て又は必要な分だけ、任意の分解能で算出して把持方法の候補を絞り込む(ステップS02)。
【0094】
保持計画生成部330aは、保持部200をあてがう物体Oの側面から、平面視で見たときの周囲を幾何学的に4領域に分類する(ステップS03)。
保持計画生成部330aは、ステップS02において絞り込まれた把持方法の候補それぞれにおいて、4領域のうちどの領域に対して保持部200の外形が干渉するかを特定する。本実施形態では、例えば、物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す辺の数を算出する。そして、保持計画生成部330aは、干渉しない領域の数がより多い(例えば、物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す辺の数がより少ない)把持方法の候補から順により高い評価点数を付与する。そして、保持計画生成部330aは、最も評価点数が高い把持方法を選択する(ステップS04)。
【0095】
動作制御部340は、移動機構100及び保持部200を制御し、選択された把持方法によって把持を実行させる(ステップS04)。なお、動作制御部340は、干渉しない領域を保管領域の境界面に押し付けて箱詰めが行われるように、移動機構100及び保持部200を制御する。
このような構成によれば、ハンドリング装置10は、保管領域に対し、搬送対象の物体Oを詰めて置くことができる。
【0096】
例えば、移動先コンテナ内に物体を移動させる(いわゆる箱詰めを行う)際には、移動先コンテナにおける物体の充填率向上のため、把持した物体及び保持部を周囲に干渉させないように制御しつつ、例えば、移動先コンテナの内壁面や先に置かれた物体の側面に対して搬送対象の物体を詰めて置くことが望ましい。しかしながら、一般的な搬送装置では、移動元での物体の保持しやすさのみに着目して物体に対する保持姿勢及び保持位置が決定されることが多く、箱詰め時における(移動先における)保持姿勢及び保持位置が考慮されていないことが多い。そのため、箱詰め動作の際に、移動先コンテナや先に置かれた物体に保持部が干渉し、物体を置く位置が大きく制限されることで、箱詰めの充填率が低下してしまう場合がある。また一般的には、箱詰め動作を行う保持部は、物体の外形よりも小さい場合が多く、本実施形態のような物体Oの外形よりも大きな保持部200は検討されてこなかった。
【0097】
一方で、本実施形態では上述したように、ハンドリング装置10は、移動先コンテナS2の内壁面や先に置かれた物体Oに対する保持部200の干渉をより小さくするように、物体Oに対する保持部200の保持姿勢及び保持位置を決定する制御部300を有する。具体的には、ハンドリング装置10は、物体Oと保持部200とが重なる方向から見た場合に保持部200の外形が物体Oの外形からはみ出す場合、保持部200の端の位置で物体Oを保持する。
【0098】
このような構成によれば、移動先コンテナS2や先に置かれた物体Oに保持部200が干渉しにくく、物体Oを置く位置が制限されにくい。このため、移動先コンテナS2の内壁や仕切り等の(境界面)や先に置かれた物体Oの側面に対して、搬送対象の物体Oを詰めて置くことが容易になる。その結果、本実施形態に係るハンドリング装置10は、箱詰めの充填率を向上させることができる。これにより、本実施形態に係るハンドリング装置10は、輸送効率の向上及び輸送コストの低減を図ることができる。
【0099】
なお、本実施形態によるハンドリング装置10が、物体Oと保持部200とが重なる方向から見た場合に保持部200の外形が物体Oの外形からはみ出す場合に、保持部200の端の位置で物体Oを保持するのではなく、物体Oの端の位置を保持する構成であってもよい。
【0100】
また、本実施形態では上述したように、ハンドリング装置10は、保持計画生成部330aを有する。保持計画生成部330aは、物体Oに対する保持部200の複数の保持姿勢を決定する。保持計画生成部330aは、物体Oの外形を示す情報に基づき、複数の保持姿勢の各々について、物体Oの外形に対する保持部200のはみ出し方を評価する。保持計画生成部330aは、評価結果に基づき、前記複数の保持姿勢のなかから保持部200の保持姿勢を決定する。このような構成によれば、物体Oを保持可能な複数の保持姿勢の各々について保持計画生成部330aにより評価を行うことができ、より適した保持姿勢を決定することができる。これにより、物体Oをより詰めて置くことができる場合がある。
【0101】
また、保持計画生成部330aは、複数の保持姿勢の各々において、物体Oに対する保持部200の複数の保持位置を決定する。保持計画生成部330aは、前記複数の保持姿勢の各々について、前記複数の保持位置の各々での物体Oの外形に対する保持部200のはみ出し方を評価する。保持計画生成部330aは、評価に基づき、保持部200の保持姿勢及び保持位置を決定する。このような構成によれば、複数の保持姿勢に加え、各保持姿勢における複数の保持位置の各々について保持計画生成部330aにより評価を行うことができ、より適した保持姿勢及び保持位置を決定することができる。
【0102】
また、本実施形態では上述したように、保持計画生成部330aは、物体Oの外形に対する保持部200のはみ出し量を評価する。保持計画生成部330aは、物体Oの外形に対する保持部200のはみ出し量が特定の条件を満たすように、保持部200の保持姿勢及び保持位置を決定する。このような構成によれば、物体Oの外形に対するはみ出し量が比較的小さな保持姿勢及び保持位置が決定される。これにより、物体Oをより詰めて置くことができる場合がある。
【0103】
また、本実施形態では上述したように、上記はみ出し量は、物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す辺の数である。このような構成によれば、物体Oの外形のなかで保持部200がはみ出す辺の数が少ない保持姿勢及び保持位置が決定される。これにより、保持部200の外形がより邪魔になりにくく、物体Oをより詰めて置くことができる場合がある。
【0104】
ここで、物体Oの外形のなかで保持部200が2つの辺からはみ出す場合、前記2つの辺が互いに連続する保持姿勢を、前記2つの辺が互いに連続しない保持姿勢よりも優先して、保持部200の保持姿勢に決定してもよい。このような構成によれば、移動先コンテナS2の内壁面や先に置かれた物体Oに対して搬送対象の物体Oをさらに詰めて置きやすくなる。
【0105】
なお、保持部200の外形が保管領域の境界面へ押し付けやすい形状であるほど、箱の充填率向上に対する効果はより高くなる。そのため、保持部200の外形は、円形よりも四角形あるいは三角形等のほうがより好ましい。そして、四角形あるいは三角形の角はより鋭角であることが望ましい。
【0106】
なお、箱詰め時の動作において保管領域の境界面に対して物体Oの押し付けを行う場合においては、ハンドリング装置10が力センサを備える構成であってもよい。ハンドリング装置10は、例えば、力センサから得られる情報をリアルタイムで観察しながら押し付けを行う。あるいは、押し付け時に、位置制御ではなく、一時的にモーターの電流制御を行うことによって一定の力を与える構成にしてもよい。これにより、より正確な箱詰めが可能になる。
【0107】
なお、それぞれの吸着部205の使用の程度に応じて、それぞれの吸着部205の交換時期を示す情報を出力する提示部(図示せず)を備える構成にしてもよい。なお、提示部が、例えば、ディスプレイ等を有する表示装置(図示せず)へ当該情報を出力し、当該表示装置がそれぞれの吸着部205の交換時期を示す情報を表示するようにしてもよい。あるいは、提示部が、各吸着部205の近傍にそれぞれ備えられた発光部(図示せず)へ当該情報を出力し、交換時期である吸着部205の近傍に備えられた発光部が発光するようにしてもよい。
【0108】
また、制御部300が、複数の吸着部205それぞれの使用の程度に応じて、それぞれ吸着部205の使用頻度を変更させる制御を行うようにしてもよい。これにより、ハンドリング装置10(吸着部205)の耐久性を向上させることができる。
【0109】
以上、いくつかの実施形態及び変形例について説明したが、実施形態は上記例に限定されない。例えば、制御部300のいくつかの機能部は、ハンドリング装置10に代えて、管理装置13に設けられてもよい。例えば、情報取得部310、情報解析部320、計画部330、及び記憶部350は、管理装置13に設けられてもよい。計画部330は、「情報処理部」の一例である。
【0110】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ハンドリング装置は、物体と保持部とが重なる方向から見た場合に保持部の外形が物体の外形からはみ出す場合、保持部の端の位置で前記保持部に前記物体を保持させる制御部を持つ。このような構成によれば、アイテムが詰められる箱の充填率を向上させることができる。
【0111】
なお、上述した実施形態における搬送システム1の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、搬送システム1に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0112】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信回線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0113】
また、上述した実施形態における搬送システム1の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。搬送システム1の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0115】
1…搬送システム、10…ハンドリング装置、11…第1検出器、12…第2検出器、13…管理装置、100…移動機構、101…アーム部材、102…回動部、200…保持部、201…ベース、202…回動部、203…吸引装置、204…切換弁、205…吸着部、205E…有効吸着部、206…ベース先端部、207…回動部、300…制御部、310…情報取得部、320…情報解析部、330…計画部、330a…保持計画生成部、330b…移動計画生成部、340…動作制御部、350…記憶部、O…物体、S1…移動元、S2…移動先