(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】機械式駐車装置の車両保護システム、及びその車両保護方法並びに車両保護プログラム、機械式駐車装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20221011BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
E04H6/18 601F
E04H6/18 606A
E04H6/18 601G
E04H6/42 B
(21)【出願番号】P 2018167771
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】天野 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤川 博康
(72)【発明者】
【氏名】原 和也
(72)【発明者】
【氏名】花島 陽
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-061011(JP,A)
【文献】特開2018-059378(JP,A)
【文献】特開2017-214800(JP,A)
【文献】特開2016-061010(JP,A)
【文献】特開2016-186169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 - 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降室と格納庫の間で車両を搬送する機械式駐車装置の車両保護システムであって、
前記車両と通信を行う通信部と、
前記車両が入庫する場合に、前記車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信する車両状態制御部と、
を備え、
前記車両状態制御部は、前記車両から、前記禁止信号に基づく動作禁止状態が完了したことを示す禁止完了信号を受信した場合に、前記車両の搬送を開始させる機械式駐車装置の車両保護システム。
【請求項2】
乗降室と格納庫の間で車両を搬送する機械式駐車装置の車両保護システムであって、
前記車両と通信を行う通信部と、
前記車両が入庫する場合に、前記車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信する車両状態制御部と、
を備え、
前記車両状態制御部は、前記禁止信号を送信した後に機械式駐車装置の動作中断指示が入力された場合には、前記車両を前記乗降室へ搬送させると共に、前記車両を前記格納庫から前記乗降室へ搬送した後に前記車両の動作禁止状態を解除する解除信号を送信する機械式駐車装置の車両保護システム。
【請求項3】
前記車両状態制御部は、前記車両を前記乗降室から前記格納庫へ搬送する前に前記禁止信号を送信する請求項1
又は2に記載の機械式駐車装置の車両保護システム。
【請求項4】
前記車両状態制御部は、前記車両が出庫する場合に、前記車両の動作禁止状態を解除する解除信号を送信する請求項1
から3のいずれか1項に記載の機械式駐車装置の車両保護システム。
【請求項5】
前記車両状態制御部は、前記車両を前記格納庫から前記乗降室へ搬送した後に前記解除信号を送信する請求項
4に記載の機械式駐車装置の車両保護システム。
【請求項6】
前記車両状態制御部は、前記車両から現在の車両状態を受信した場合に、前記車両状態が予め設定した危険条件に適合するか否かを判定し、前記車両状態が前記危険条件に適合した場合に、前記機械式駐車装置の動作を中止させる請求項1から5のいずれか1項に記載の機械式駐車装置の車両保護システム。
【請求項7】
前記車両状態は、前記車両における可動部の開閉状態、ライト点灯状態、及び乗員の有無のうち少なくとも1つを含む請求項6に記載の機械式駐車装置の車両保護システム。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載の機械式駐車装置の車両保護システムを備える機械式駐車装置。
【請求項9】
乗降室と格納庫の間で車両を搬送する機械式駐車装置の車両保護方法であって、
前記車両が入庫する場合に、前記車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信する工程と、
前記車両から、前記禁止信号に基づく動作禁止状態が完了したことを示す禁止完了信号を受信した場合に、前記車両の搬送を開始させる工程と
を含む機械式駐車装置の車両保護方法。
【請求項10】
乗降室と格納庫の間で車両を搬送する機械式駐車装置の車両保護方法であって、
前記車両が入庫する場合に、前記車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信する工程と、
前記禁止信号を送信した後に機械式駐車装置の動作中断指示が入力された場合に、前記車両を前記乗降室へ搬送させる工程と、
前記車両を前記格納庫から前記乗降室へ搬送した後に、前記車両の動作禁止状態を解除する解除信号を送信する工程と
を含む機械式駐車装置の車両保護方法。
【請求項11】
コンピュータを請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の機械式駐車装置の車両保護システムとして機能させるための車両保護プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置の車両保護システム、及びその車両保護方法並びに車両保護プログラム、機械式駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動運転車両等の普及により、機械式駐車装置と車両との間で通信を行い車両を制御することが考案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建屋のエントランス前で乗員が降車した自動運転車両を自動走行させて機械式駐車装置に入庫させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機械式駐車装置の内部において機械式駐車装置と車両との間で通信を行うことは行われていない。機械式駐車装置の内部では、搬送機により乗降室に駐車された車両を格納庫へ搬送している。このため、例えば該車両のリモコン等の誤操作によって車両の搬送中に車両のドア等が開動作した場合、機械式駐車装置と車両とが接触する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、機械式駐車装置内においてより安全に車両を搬送することのできる機械式駐車装置の車両保護システム、及びその車両保護方法並びに車両保護プログラム、機械式駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、乗降室と格納庫の間で車両を搬送する機械式駐車装置の車両保護システムであって、前記車両と通信を行う通信部と、前記車両が入庫する場合に、前記車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信する車両状態制御部と、を備える機械式駐車装置の車両保護システムである。
【0008】
上記のような構成によれば、車両が入庫する場合に、車両に対して動作を禁止させる禁止信号を送信し、車両を動作禁止状態にするため、より安全に車両を搬送させることが可能となる。具体的には、車両がリモコン等によって外部から制御可能であっても、車両が入庫する場合には車両を動作禁止状態とすることが可能である。このため、車両が入庫する場合には、リモコン等の誤操作によるドア開の動作を防止して、安全に車両を格納することが可能となる。
【0009】
上記車両保護システムにおいて、前記車両状態制御部は、前記車両を前記乗降室から前記格納庫へ搬送する前に前記禁止信号を送信することとしてもよい。
【0010】
上記のような構成によれば、車両を乗降室から格納庫へ搬送する前に禁止信号を送信することとすることで、特に事故が発生しやすい車両の搬送中より前に、より確実に車両を動作禁止状態とすることができ、安全性を向上させることが可能となる。
【0011】
上記車両保護システムにおいて、前記車両状態制御部は、前記車両が出庫する場合に、前記車両の動作禁止状態を解除する解除信号を送信することとしてもよい。
【0012】
上記のような構成によれば、車両が出庫する場合に車両の動作禁止状態を解除する解除信号を送信するため、動作禁止状態となっている車両に対して自動的に動作禁止状態を解除できるため、車両の運転者等の利便性を向上させることができる。
【0013】
上記車両保護システムにおいて、前記車両状態制御部は、前記車両を前記格納庫から前記乗降室へ搬送した後に前記解除信号を送信することとしてもよい。
【0014】
上記のような構成によれば、車両を格納庫から乗降室へ搬送した後に解除信号を送信するため、特に事故が発生しやすい車両の搬送中には確実に車両を動作禁止状態とし、例えばドア開等の利用者の操作が行われる車両の搬送後に動作禁止状態を解除できるため、車両の安全性及び利便性を向上させることができる。
【0015】
上記車両保護システムにおいて、前記車両状態制御部は、前記車両から、前記禁止信号に基づく動作禁止状態が完了したことを示す禁止完了信号を受信した場合に、前記車両の搬送を開始させることとしてもよい。
【0016】
上記のような構成によれば、車両から動作禁止状態完了の旨を示す禁止完了信号を受信した場合に車両の搬送を開始させるため、特に事故が発生しやすい車両の搬送中より前に確実に車両を動作禁止状態とすることができ、安全性を向上させることが可能となる。
【0017】
上記車両保護システムにおいて、前記車両状態制御部は、前記車両から現在の車両状態を受信した場合に、前記車両状態が予め設定した危険条件に適合するか否かを判定し、前記車両状態が前記危険条件に適合した場合に、前記機械式駐車装置の動作を中止させることとしてもよい。
【0018】
上記のような構成によれば、車両状態が予め設定した危険条件に適合するか否かを判定し、適合した場合に機械式駐車装置の動作を中止させるため、例えば搬送中の事故等を未然に防ぐことが可能となる。例えば、車両のドアが閉まり切っておらず車両の搬送中にドアが開いて機械式駐車装置と接触する可能性がある場合であっても、車両から車両状態としてドアが閉となっていないことを受信した場合には、機械式駐車装置の動作を中止させることで事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0019】
上記車両保護システムにおいて、前記車両状態は、前記車両における可動部の開閉状態、ライト点灯状態、及び乗員の有無のうち少なくとも1つを含むこととしてもよい。
【0020】
上記のような構成によれば、例えば搬送中の事故等を未然に防ぐことが可能となる。
【0021】
上記車両保護システムにおいて、前記車両状態制御部は、前記禁止信号を送信した後に機械式駐車装置の動作中断指示が入力された場合には、前記車両を前記乗降室へ搬送させると共に、前記車両を前記格納庫から前記乗降室へ搬送した後に前記車両の動作禁止状態を解除する解除信号を送信することとしてもよい。
【0022】
上記のような構成によれば、例えば車両に忘れ物等をした運転者等が、機械式駐車装置の操作盤等によって動作中断指示を入力した場合には、車両を乗降室へ搬送し、搬送した後に車両の動作禁止状態を解除するため、利用者の利便性を向上させることが可能となる。
【0023】
本発明の第2態様は、上記の車両保護システムを備える機械式駐車装置である。
【0024】
本発明の第3態様は、乗降室と格納庫の間で車両を搬送する機械式駐車装置の車両保護方法であって、前記車両と通信を行う通信工程と、前記車両が入庫する場合に、前記車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信する車両状態制御工程と、を含む機械式駐車装置の車両保護方法である。
【0025】
本発明の第4態様は、乗降室と格納庫の間で車両を搬送する機械式駐車装置の車両保護プログラムであって、前記車両と通信を行う通信処理と、前記車両が入庫する場合に、前記車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信する車両状態制御処理と、をコンピュータに実行させるための機械式駐車装置の車両保護プログラムである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、機械式駐車装置内においてより安全に車両を搬送することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置の外観図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置の縦断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置における乗降室の斜視透視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置における操作盤の斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置における制御装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置の入庫時の処理を示したフローチャートである。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置の出庫時の処理を示したフローチャートである。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置の忘れ物取出し処理を示したフローチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る機械式駐車装置の入庫時の処理を示したフローチャートである。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る機械式駐車装置の出庫時の処理を示したフローチャートである。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る機械式駐車装置の動作中止処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態に係る機械式駐車装置の車両保護システム、及びその車両保護方法並びに車両保護プログラム、機械式駐車装置について、図面を参照して説明する。なお、車両保護システムは、機械式駐車装置の内部において車両の事故を防止するシステムであって、後述する通信部54と車両状態制御部52とを少なくとも含んで構成される。また、車両保護システムは、機械式駐車装置であれば幅広く適用できるものであって、以下に説明するようにエレベータ式の機械式駐車装置のみに限定されるものではない。
【0029】
本実施形態では、機械式駐車装置10から車両へ信号が送信される単方向通信の場合について説明する。なお、双方向通信の場合については後段に第2実施形態として説明する。また、本実施形態では、車両が自動運転機能を有する場合について説明するが、車両が自動運転機能を有さない場合であっても同様に適応可能である。
【0030】
図1は、本実施形態に係る機械式駐車装置(立体駐車場)10の外観図である。また、
図2は、本実施形態に係る機械式駐車装置10の縦断面図である。
機械式駐車装置10では、駐車塔の地上に設けた乗入階14における乗降室7から車両を入出庫させる。そして、機械式駐車装置10では、搬送機によって、車両を載置したパレット18を乗入階14と車両を格納する格納庫3との間で昇降させることで、車両を搬送(入出庫)する。具体的には、駐車塔の中心部には垂直な昇降通路13が形成されており、この中にリフト16(エレベータ状の搬送機)が上下に昇降可能に設けられている。リフト16は、例えば駐車塔の上部に設けられた図示しないウインチから下方に延びる複数本のワイヤロープ15に四隅を吊持され、上記ウインチが起動することにより昇降通路13内を上下に昇降することができる。
【0031】
一方、昇降通路13の両側には格納棚17(駐車スペース)が設けられている。この格納棚17は、昇降通路13を挟むようにして上下に多階層状に設けられており、それぞれの格納棚17には車両を積載するためのパレット18が1枚ずつ収容されている。リフト16と格納棚17の床面には、両者(リフト16と格納棚17)の床面の高さが一致した時に、空荷のパレット18、または車両が積載されたパレット18を、リフト16から格納棚17に、または格納棚17からリフト16に、スムーズに受け渡すことができる図示しない受渡機構が設けられている。
【0032】
なお、
図1及び
図2に示す機械式駐車装置10の構成は、一例であり、乗入階14を格納庫3よりも上層とする等、他の構成であってもよい。また、本実施形態では、車両を搬送する搬送機をパレット式として説明するが、コンベア式、くし歯式(フォーク式)等の他の構成を適用することも可能である。
【0033】
乗入階14には、車両の入庫及び出庫の少なくとも一方が行われる乗降室7が設けられている。
図3は、乗降室7を示す斜視透視図である。入出庫扉4の左側に非常用出入口20があり、入出庫扉4の上部に青と赤のランプを備えた入庫管制灯21が設けられている。また、例えば入出庫扉4に向かって右側に操作盤22が設けられている。操作盤22は、機械式駐車装置10に入庫する各車両の利用者(運転者等)により操作される。また、機械式駐車装置10には、制御状態を示す三色灯23が設けられている。
【0034】
乗降室7の内部には、中央部に搬送機のパレット18が配置されるスペースがあり、入出庫扉4の正面の壁には車両の位置を運転者が確認するための鏡24と、「前進」、「停車」、「後退」等の案内を行う電光式の停車位置指示灯25が設けられている。車両の方向を転換させるターンテーブル9によって、入庫のために乗降室7のパレット18に停車された車両は、方向を例えば90度旋回してから搬送機によって搬送される。また、乗降室7の内部各所には、乗降室7の内部における車両及び利用者等の人の存在等を検知するための複数のセンサ30、及びカメラ35設けられている。
【0035】
また、乗降室7の内部には、車両と通信を行う通信部54が設けられている。通信部54は、例えばDSRCアンテナであり、車両と通信が可能なように配置されている。なお、通信部54の配置位置については、車両と通信が可能であれば、
図3に示す配置位置に限定されず、例えば、乗降室7の外部に設けることしてもよい。DSRCアンテナは、車両との間で例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)による狭域通信を行う。狭域通信により、信号の送受信を行う車両が限定されるため、通信対象でない車両との信号の送受信が防止される。なお、機械式駐車装置10と車両との通信方式については、これに限定されるものではなく、信号の送受信をWi-Fi(登録商標)やブルートゥース(Blue tooth(登録商標))、赤外線通信、またはLTE通信網のような無線通信網等などを適用することとしてもよい。
【0036】
図4は、操作盤22の斜視図である。操作盤22は、風雨からの保護と悪戯防止のために金属製の筐体43に収容されており、筐体43には施錠可能な蓋44が設けられている。利用者が操作盤22を操作する際には、施錠を解錠して蓋44を開き、操作盤22にアクセスする。なお、例えば利用者が携帯している専用リモコンに設けられたトランスポンダによって利用者の接近と共に自動的に蓋44の施錠を解錠するようにしてもよい。
【0037】
操作盤22には、利用者が認証操作及び入出庫扉4の開閉、搬送機の起動等の機械操作を行うためのタッチパネル式の操作画面45と、ICカードやリモコン等の携帯型認証媒体から発信されるトランスポンダ信号等を読み込むためのリーダー46と、利用者に操作方法を音声で案内するためのスピーカー47と、非常停止ボタン48等が配置されている。
【0038】
また、操作盤22には、操作画面45から機械式駐車装置10の動作中断操作が可能となっている。動作中断操作(忘れ物取出し操作)とは、例えば、機械式駐車装置10の内部において車両の搬送が開始された後等に、利用者が車内に忘れ物等をした場合に操作するものである。動作中断操作が行われると動作中断指示が後述する制御装置50へ出力される。なお、動作中断操作は、タッチパネル式の操作画面45による操作に限定されず、操作盤22に動作中断操作の専用ボタンを設けておいてもよいし、利用者が持ち歩き可能な端末(例えば、機械式駐車装置10のリモコンやスマートフォン等)から操作が行われてもよい。
【0039】
図5は、機械式駐車装置10の制御装置50が備える機能を示した機能ブロック図である。制御装置50は、機械式駐車装置10の入出庫動作を制御する。また、制御装置50は、車両の動作禁止状態を制御する。
【0040】
制御装置50は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0041】
図5に示すように、制御装置50は、入出庫制御部51と、車両状態制御部52とを備えている。なお、本実施形態では、車両状態制御部52を、入出庫制御部51と同一の制御装置内に設けることとしているが、入出庫制御部51とは独立した装置として設けることとしてもよい。
【0042】
入出庫制御部51は、各種モータ(不図示)を制御することによって、車両を搬送する搬送機や乗降室7における入出庫扉4を駆動させる。具体的には、入出庫制御部51は、車両の入庫予約が入った場合に、空きのパレット18を格納棚17から引き抜き、乗降室7に配置する。そして、車両が乗降室7前に到着し、操作盤22により出入口の開が入力された場合に、入出庫扉4を開く。そして、車両がパレット18に載置され、乗降室7内の安全が確認され、安全確認ボタンが押圧された後に、入出庫扉4を閉じ、車両を乗降室7から格納庫3へ搬送する。また、入出庫制御部51は、車両の出庫予約が入った場合に、出庫車両が載置されたパレット18を格納棚17から乗降室7へ搬送する。そして、出庫予約をした利用者が乗降室7前に到着し、操作盤22により出入口の開が入力された場合に、入出庫扉4を開く。そして、車両が乗降室7から出庫され、乗降室7内の安全が確認され、安全確認ボタンが押圧された後に、入出庫扉4を閉じ、出庫車両が載置されていたパレット18を格納棚17へ搬送する。
【0043】
車両状態制御部52は、車両が入庫する場合に、車両に対して、車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信する。なお、車両を動作禁止状態とする前、すなわち、利用者によって車両が乗降室7に駐車された時には、車両は入庫可能な状態(初期車両状態)となっているものとする。入庫可能な状態とは、機械式駐車装置10の内部において搬送等が行われても事故が発生しないと想定される車両の状態である。例えば、入庫可能な状態とは、車両におけるドア等の可動部が閉状態となっており、ライトが消灯され、自動運転が行われていない等の状態である。なお、利用者によって車両が乗降室7に駐車される場合に、車両を入庫可能な状態(初期車両状態)とするように促すこととしてもよい。また、車両状態制御部52は、車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信する前に、車両を入庫可能な状態(初期車両状態)とする制御信号を車両へ送信することとしてもよい。すなわち、車両状態制御部52は、入庫可能な状態(初期車両状態)となった車両が機械式駐車装置10の内部において誤操作等によって動作しないように、動作禁止状態とする。
【0044】
動作禁止状態とは、車両における可動部の状態や、ライトの点灯状態、自動運転制御状態等の車両の各種状態の動作(初期状態からの変更)を禁止する状態である。すなわち、車両は、動作禁止状態となると、車両を動作禁止状態とする前の状態(入庫可能な状態)を維持する。可動部とは、例えば、車のドアやドアミラー、ハッチバック、スライドドア等の物理的な可動が可能なものである。車両が動作禁止状態となることによって、車両は、外部のリモコン等による制御信号によって動作しなくなる。なお、動作禁止状態として、機械式駐車装置10以外の装置からの制御信号に基づく動作を実行しないこと、すなわち、車両の動作実行権限を機械式駐車装置10のみが持つこととしてもよい。
【0045】
本実施形態では、車両状態制御部52は、禁止信号として、可動部他禁止信号と自動運転動作禁止信号を車両に送信することとする。可動部他禁止信号とは、車両における可動部の状態及びライトの点灯状態等の動作を禁止する信号であり、自動運転動作禁止信号は、自動運転による動作を禁止する信号である。すなわち、動作禁止状態とは、可動部他禁止信号に基づいて車両における可動部の状態及びライトの点灯状態等の変更が禁止され、自動運転動作禁止信号に基づいて自動運転による動作が禁止された状態である。なお、車両が自動運転機能を有しない場合には、禁止信号として、可動部他禁止信号を含んで送信することとすればよい。
【0046】
車両状態制御部52は、車両が入庫する場合に、車両を動作禁止状態とする禁止信号を送信することによって、入庫可能な状態(初期車両状態)の車両が動作しないように制限する。このようにすることによって、例えば、車両の外部リモコン等によって車両に対する誤操作が行われたとしても、車両が動作禁止状態となっていれば該誤操作が車両側で実行されないため、事故を防止することが可能となる。
【0047】
車両状態制御部52は、車両を乗降室7から格納庫3へ搬送する前に禁止信号を送信する。機械式駐車装置10の内部において、特に車両の搬送中に事故が発生しやすい。このため、車両を乗降室7から格納庫3へ搬送する前に禁止信号を送信することで、車両の搬送中には車両を動作禁止状態とすることが可能となる。なお、車両を搬送する前に、乗降室7においてターンテーブル9により車両を旋回させる場合には、車両の旋回により事故が発生する可能性もあるため、車両を旋回する前に禁止信号を送信することがより好ましい。
【0048】
本実施形態では、車両を入庫するために乗降室7の入出庫扉4を閉めた時(すなわち、ターンテーブル9により車両を旋回させる前)に禁止信号を送信する場合について説明する。しかしながら、車両状態制御部52は、車両を乗降室7から格納庫3へ搬送する前に禁止信号を送信すればよいため、乗降室7の入出庫扉4を閉めた時に限定されず適宜設計可能である。例えば、車両側において、乗降室7内に駐車され入庫可能な状態となったことを検知して、入庫可能信号を機械式駐車装置10側に送信可能な場合には、車両状態制御部52は、該入庫可能信号を受信した時に禁止信号を送信することとしてもよい。
【0049】
また、車両状態制御部52は、車両が出庫する場合に、車両の動作禁止状態を解除する解除信号を送信する。出庫する前において、車両は禁止信号によって動作禁止状態となっている。このため、車両を出庫する場合には、動作禁止状態を解除する必要がある。このため、車両状態制御部52は、車両が出庫する場合に、解除信号を車両へ送信することによって、自動的に車両の動作禁止状態を解除する。
【0050】
具体的には、車両状態制御部52は、車両を格納庫3から乗降室7へ搬送した後に解除信号を送信する。特に車両の搬送中には事故が発生しやすいため、車両状態制御部52は、車両を格納庫3から乗降室7へ搬送した後に解除信号を送信する。なお、車両を搬送した後に、乗降室7においてターンテーブル9により車両を旋回させる場合には、車両の旋回により事故が発生する可能性もあるため、車両を旋回した後に解除信号を送信することがより好ましい。
【0051】
本実施形態では、車両を出庫するために乗降室7の入出庫扉4を開ける時(すなわち、ターンテーブル9により車両を旋回させた後)に解除信号を送信する場合について説明する。しかしながら、車両状態制御部52は、車両を格納庫3から乗降室7へ搬送した後に解除信号を送信すればよいため、乗降室7の入出庫扉4を開ける時に限定されず適宜設計可能である。
【0052】
また、車両状態制御部52は、禁止信号を送信した後に機械式駐車装置10の動作中断指示が入力された場合には、車両を乗降室7へ搬送させると共に、車両を格納庫3から乗降室7へ搬送した後に車両の動作禁止状態を解除する解除信号を送信する(忘れ物取出し処理)。例えば、入庫のために乗降室7の入出庫扉4を閉とし、車両の搬送が開始された後に、利用者が車内に忘れ物をしたことに気付く場合がある。この場合に、利用者が操作盤22によって動作中断操作を行うと、動作中断指令が車両状態制御部52へ入力される。動作中断指令が入力されると、車両状態制御部52は、入出庫制御部51に対して車両を乗降室7へ搬送に戻すよう指令を送信する。そして、車両を乗降室7へ搬送された後に解除信号を送信して動作禁止状態を解除することで、利用者はより早く車内の忘れ物等を取り出すことが可能となる。
【0053】
なお、車両状態制御部52は、車両が動作禁止状態となっていること及び車両の動作禁止状態が解除されたことを、操作盤22や、利用者が持つリモコンまたはスマートフォンに通知させることとしてもよい。
【0054】
次に、車両保護システムに対応した車両について説明する。
図5に示すように、車両は、車両側通信部56と、車両側制御部57を備えている。本実施形態では、機械式駐車装置10から車両へ信号が送信される単方向通信の場合について説明する。なお、双方向通信の場合については後段に第2実施形態として説明する。
【0055】
車両側通信部56は、機械式駐車装置10における通信部54と通信が可能とされており、通信部54より信号(禁止信号および解除信号)を受信する。受信した信号は、後述する車両側制御部57へ送信される。車両側通信部56は、一例として、DSRCによる信号の送受信が可能なETC車載器であるが、これに限らず、DSRCによる通信機能を有するカーナビゲーション装置等であってもよい。
【0056】
車両側制御部57は、車両の各種動作を制御する。特に、車両側制御部57は、機械式駐車装置10より車両側通信部56を介して受信した信号(禁止信号および解除信号)に基づいて、車両の状態制御を行う。具体的には、車両側制御部57は、機械式駐車装置10から禁止信号を受信した場合に、車両における可動部の状態や、ライトの点灯状態、自動運転制御状態等の車両の各種状態の動作を禁止することで、車両を動作禁止状態とする。車両が動作禁止状態となっている場合には、例えば、車両のリモコン等による指令を受信した場合であっても該操作は実行されず、車両は動作禁止状態となる前の状態を維持する。
【0057】
また、車両側制御部57は、車両が動作禁止状態となっている場合において、機械式駐車装置10から解除信号を受信した場合には、動作禁止状態を解除する。動作禁止状態が解除されることによって車両における各種動作が実行可能な状態となる。
【0058】
次に、本実施形態における入庫時の処理について、
図6を用いて説明する。
図6では、左側に車両における処理を示し、右側に機械式駐車装置10における処理を示している。
【0059】
まず、機械式駐車装置10において、操作盤22に対する利用者の認証番号の入力等を受け付けることによって、入庫予約が行われる(PS101)。入庫予約を受け付けると、入力された認証番号と利用者DBとを照合するユーザ認証を行うと共に、車両を載置させるための格納棚17を決定する(PS102)。なお、車両を載置する格納棚17は、利用者毎に予め格納棚17が割り当てられている場合には、ユーザ認証した利用者に対応する格納棚17に決定し、格納棚17が任意に決定可能な場合には、例えば、下方の格納階における空の格納棚17に決定する。
【0060】
そして、機械式駐車装置10では、入庫起動を行い、パレット18を乗降室7へ搬送する(PS103)。なお、この間、現在の利用者を示す利用者番号と共にパレット18が乗降室7に到着する間での待ち時間を通知することとしてもよい。
【0061】
機械式駐車装置10は、パレット18が乗降室7に到着すると、入出庫扉4を開く(PS104)。例えば、操作盤22等は入庫を促す入庫案内が表示され、入庫管制灯21が入庫許可を示すように点灯する。なお、利用者によって扉開ボタンが押されることによって入出庫扉4を開くこととしてもよい。
【0062】
これらを確認した利用者は、乗降室7に車両を入庫させる(CS101)。乗降室7への車両の入庫が完了すると(CS102)、利用者は降車して、操作盤22の前へ移動し、乗降室7内の安全確認(無人確認)を行い、安全確認ボタンが押される(PS105)。そして、入出庫扉4を閉じることを促す画像を操作盤22等に表示し、利用者によって扉閉ボタンが押された場合(PS106)に、入出庫扉4を閉じる。
【0063】
そして、機械式駐車装置10は、入出庫扉4を閉じた時(または扉閉ボタンが押された時)に、車両に対して禁止信号を送信する(PS107)。車両側では、禁止信号を受信すると、車両を動作禁止状態とする(CS103)。
【0064】
機械式駐車装置10側では、車両に対して禁止信号を送信した後に、車両を乗降室7から格納庫3へ搬送させる(PS108)。なお、機械式駐車装置10は、より確実に車両が動作禁止状態となった後に搬送を開始するために、車両に対して禁止信号を送信してから所定時間経過後に搬送を開始することとしてもよい。
【0065】
次に、本実施形態における出庫時の処理について、
図7を用いて説明する。
図7では、左側に車両における処理を示し、右側に機械式駐車装置10における処理を示している。
【0066】
まず、機械式駐車装置10において、操作盤22に対して利用者の認証番号の入力等を受け付けることによって、出庫予約が行われる(PS111)。出庫予約を受け付けると、入力された認証番号と利用者DBとを照合するユーザ認証を行うと共に、車両を載置された格納棚17を決定する(PS112)。
【0067】
そして、機械式駐車装置10では、出庫起動を行い、車両が載置されたパレット18を乗降室7へ搬送する(PS113)。なお、この間、現在の利用者を示す利用者番号と共にパレット18が乗降室7に到着する間での待ち時間を通知することとしてもよい。
【0068】
機械式駐車装置10は、車両が載置されたパレット18が乗降室7に到着すると、入出庫扉4を開く。なお、利用者によって扉開ボタンが押されることによって入出庫扉4を開くこととしてもよい。
【0069】
そして、機械式駐車装置10は、入出庫扉4を開けた時(または扉開ボタンが押された時)に、車両に対して解除信号を送信する(PS114)。車両側では、解除信号を受信すると、車両の動作禁止状態を解除する(CS111)。なお、車両の動作禁止状態が解除されたことを利用者に通知することとしてもよい。
【0070】
車両の動作禁止状態が解除された後、利用者は、乗降室7から車両を入出庫させる。乗降室7から車両が出庫される(CS112)、利用者は降車して、操作盤22の前へ移動し、乗降室7内の安全確認(無人確認)を行い、安全確認ボタンが押される(PS115)。そして、入出庫扉4を閉じることを促す画像を操作盤22等に表示し、利用者によって扉閉ボタンが押された場合に、入出庫扉4を閉じ(PS116)、出庫が完了する。
【0071】
次に、本実施形態における忘れ物取出し処理について、
図8を用いて説明する。
図8に示すフローは、車両が動作禁止状態となった後(入庫の際に入出庫扉4を閉じた後)であって、格納庫3への車両の格納が完了す前までの間に所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0072】
利用者等が車内に忘れ物をしたことに気付いた場合には、操作盤22によって動作中断操作が行われる。このため、まず、動作中断操作による動作中断指令が入力されたか否かを判定する(S101)。動作中断指令が入力されていない場合(S101のNO判定)には、処理を終了する。
【0073】
動作中断指令が入力された場合(S101のYES判定)には、車両の搬送を中断し、そして、車両を乗降室7に戻す(S102)。そして、車両を乗降室7へ搬送された後に、車両へ解除信号を送信する(S103)。なお、車両の忘れ物が利用者によって取り出された後、操作盤22等に対して忘れ物の取出しが完了(動作中断操作が完了)したことが入力された場合に、車両は入庫される。
【0074】
なお、
図8に示すフローは、格納庫3への車両の格納が完了す前まで実行されるが、車両が格納された後に、動作中断操作が行われた場合には、出庫の場合と同様のフローにて車両が乗降室7に戻され、動作禁止状態の解除が行われる。なお、車両が格納された後に、動作中断操作と同様の処理を実行する忘れ物取出しボタン等を操作盤22に設けることとしてもよい。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る機械式駐車装置の車両保護システム、及びその車両保護方法並びに車両保護プログラム、機械式駐車装置によれば、車両が入庫する場合に、車両に対して動作を禁止させる禁止信号を送信し、車両を動作禁止状態にするため、より安全に車両を搬送させることが可能となる。具体的には、車両がリモコン等によって外部から制御可能であっても、車両が入庫する場合には車両を動作禁止状態とすることが可能である。このため、車両が入庫する場合には、リモコン等の誤操作によるドア開の動作を防止して、安全に車両を格納することが可能となる。
【0076】
また、車両を乗降室7から格納庫3へ搬送する前に禁止信号を送信することとすることで、特に事故が発生しやすい車両の搬送中より前に、より確実に車両を動作禁止状態とすることができ、安全性を向上させることが可能となる。
【0077】
また、車両を格納庫3から乗降室7へ搬送した後に解除信号を送信するため、特に事故が発生しやすい車両の搬送中には確実に車両を動作禁止状態とし、例えばドア開等の利用者の操作が行われる車両の搬送後に動作禁止状態を解除できるため、車両の安全性及び利便性を向上させることができる。
【0078】
また、例えば車両に忘れ物等をした運転者等が、機械式駐車装置10の操作盤22等によって動作中断指示を入力した場合には、車両を乗降室7へ搬送し、搬送した後に車両の動作禁止状態を解除するため、利用者の利便性を向上させることが可能となる。
【0079】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る機械式駐車装置の車両保護システム、及びその車両保護方法並びに車両保護プログラム、機械式駐車装置について説明する。
上述した第1実施形態では、機械式駐車装置10から車両へ信号が送信される単方向通信の場合について説明したが、本実施形態では、機械式駐車装置10と車両との間で信号が送受が行われる双方向通信の場合について説明する。以下、本実施形態に係る車両保護システムについて、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0080】
本実施形態における車両状態制御部52は、車両から、禁止信号に基づく動作禁止状態が完了したことを示す禁止完了信号を受信する。そして、車両状態制御部52は、車両から、禁止信号に基づく動作禁止状態が完了したことを示す禁止完了信号を受信した場合に、車両の搬送を開始させる。すなわち、機械式駐車装置10と車両とにおいて信号の送受が可能な場合に、車両状態制御部52は、車両から動作禁止状態が正常に完了したことを示す禁止完了信号を受信する。そして、車両状態制御部52は、車両側で動作禁止状態が完了したことを確認した後に、入出庫制御部51への搬送の開始を許可する。入出庫制御部51は、車両状態制御部52より、搬送の開始の許可がなされた後に、乗降室7から格納庫3へ車両を搬送する。
【0081】
また、車両状態制御部52は、車両から、解除信号に基づく動作禁止状態の解除が完了したことを示す解除完了信号を受信し、解除完了信号を受信した場合には通常通り制御を行う。なお、解除信号を送信したにも関わらず車両から解除完了信号が受信されない場合に、動作禁止状態が維持されている旨を利用者等に通知することとしてもよい。
【0082】
また、車両状態制御部52は、車両から現在の車両状態を受信し、車両状態が予め設定した危険条件に適合するか否かを判定し、車両状態が危険条件に適合した場合に、機械式駐車装置10の動作を中止させる(動作中止処理)。車両状態とは、例えば、車両における可動部の開閉状態、ライト点灯状態、及び乗員の有無のうち少なくとも1つを含むものとする。なお、車両状態は、機械式駐車装置10内において車両に事故が発生すると想定される車両の状態に関するものであれば適宜用いることができ、上記に限定されない。また、危険条件とは、例えば、可動部が開状態となっている場合、ライトが点灯している場合、乗員が有の場合等、機械式駐車装置10内において車両に事故が発生すると想定される車両の状態の条件である。なお、危険条件は、機械式駐車装置10内において車両に事故が発生すると想定される車両の状態であれば適宜用いることができ、上記に限定されない。
【0083】
機械式駐車装置10の動作を停止させるとは、例えば、車両が搬送機によって搬送中の場合には、搬送動作を中止(停止)させ、車両が乗降室7におけるターンテーブル9にて旋回中には、ターンテーブル9の旋回を中止(停止)させる。
【0084】
車両状態制御部52は、入庫の際に、例えば、入出庫扉4が閉とされた後(禁止信号を送信した後)から、車両の搬送が完了するまで(車両が格納棚17に格納されるまで)、所定の制御周期で車両から現在の車両状態を受信する。また、車両状態制御部52は、出庫の際に、例えば、車両の搬送が開始されてから(格納庫3から乗降室7への搬送が開始されてから)、入出庫扉4が開とされるまで(解除信号が送信されるまで)、所定の制御周期で車両から現在の車両状態を受信する。なお、入出庫を行う場合における車両の搬送中のみ所定の制御周期で車両から現在の車両状態を受信することとしてもよい。
【0085】
車両状態制御部52は、車両から現在の車両状態を受信し、車両状態が危険条件に適合するか否か判定する。そして、車両状態が危険条件に適合した場合に、入出庫制御装置へ機械式駐車装置10の動作を中止させる信号を出力する。車両状態が危険条件に適合した場合とは、例えば、車両状態として可動部が開状態となっていることが含まれており、このままの状態で搬送が行われると事故が発生する可能性が高い場合である。このため、特に車両の搬送中に所定の制御周期で車両から現在の車両状態を受信することで、車両状態が事故が発生しやすい状態となったことを検知して未然に防ぐことが可能となる。また、入出庫扉4が閉とされた後から所定の制御周期で車両から現在の車両状態を受信することで、入出庫扉4が閉とされた後であって車両の搬送が開始される前に、車両が危険な状態となっているかを検知して未然に防ぐことが可能となる。特に、車両から現在の車両状態として乗員の有無を受信することによって、未然に事故を防ぎ安全性を向上させることが可能となる。
【0086】
車両側制御部57は、機械式駐車装置10から禁止信号を受信した場合に、車両を動作禁止状態とする。そして、車両の動作禁止状態が完了した後に、機械式駐車装置10へ禁止完了信号を送信する。
【0087】
また、車両側制御部57は、機械式駐車装置10から解除信号を受信した場合に、車両の動作禁止状態を解除する。そして、車両の動作禁止状態の解除が完了した後に、機械式駐車装置10へ解除完了信号を送信する。
【0088】
また、車両側制御部57は、現在の車両状態を検出して、機械式駐車装置10へ送信する。すなわち、車両側制御部57は、例えば、車両における各可動部の開閉状態、ライト点灯状態、及び乗員の有無等の車両の状態を検知して、これらの情報を機械式駐車装置10へ送信する。
【0089】
次に、本実施形態における入庫時の処理について、
図9を用いて説明する。
図9では、左側に車両における処理を示し、右側に機械式駐車装置10における処理を示している。なお、本実施形態に係る入庫時の処について、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0090】
機械式駐車装置10は、入出庫扉4を閉じた時(または扉閉ボタンが押された時)に、車両に対して禁止信号を送信する(PS107)。車両側では、禁止信号を受信すると、車両を動作禁止状態とする(CS103)。
【0091】
車両は、動作禁止状態が完了したこと(車両が動作禁止状態となったこと)を示す禁止完了信号を機械式駐車装置10へ送信する(CS103’)。
【0092】
機械式駐車装置10側では、車両から禁止完了信号を受信した後に、車両を乗降室7から格納庫3へ搬送させる(PS108)。
【0093】
次に、本実施形態における出庫時の処理について、
図10を用いて説明する。
図10では、左側に車両における処理を示し、右側に機械式駐車装置10における処理を示している。なお、本実施形態に係る出庫時の処理について、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0094】
機械式駐車装置10は、入出庫扉4を開けた時(または扉開ボタンが押された時)に、車両に対して解除信号を送信する(PS114)。車両側では、解除信号を受信すると、車両の動作禁止状態を解除する(CS111)。
【0095】
車両側では、解除信号に基づいて車両の動作禁止状態を解除した後に解除完了信号を車両へ送信する(CS112’)。
【0096】
機械式駐車装置10では、車両から解除完了信号を受信した場合に利用者に動作禁止動作が完了したことを通知する(PS114’)。
【0097】
次に、本実施形態における機械式駐車装置10の動作中止処理について、
図11を用いて説明する。
図11に示すフローは、入庫の際には、入出庫扉4が閉とされた後(禁止信号を送信した後)から、車両の搬送が完了するまで(車両が格納棚17に格納されるまで)、所定の制御周期で繰り返し実行される。また、
図11に示すフローは、出庫の際には、車両の搬送が開始されてから(格納庫3から乗降室7への搬送が開始されてから)、入出庫扉4が開とされるまで(解除信号を送信するまで)、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0098】
まず、車両から現在の車両状態を受信する(S201)。そして、受信した車両状態が予め設定した危険条件に適合するか否かを判定する(S202)。受信した車両状態が予め設定した危険条件に適合しない場合(S202のNO判定)には、処理を終了する。
【0099】
受信した車両状態が予め設定した危険条件に適合する場合(S202のYES判定)には、機械式駐車装置10の動作を中止させる(S203)。なお、機械式駐車装置10の動作を停止させた場合には、利用者や機械式駐車装置10の管理者等に通知することとしてもよい。
【0100】
以上説明したように、本実施形態に係る機械式駐車装置の車両保護システム、及びその車両保護方法並びに車両保護プログラム、機械式駐車装置によれば、車両から動作禁止状態完了の旨を示す禁止完了信号を受信した場合に車両の搬送を開始させるため、特に事故が発生しやすい車両の搬送中より前に確実に車両を動作禁止状態とすることができ、安全性を向上させることが可能となる。
【0101】
また、車両状態が予め設定した危険条件に適合するか否かを判定し、適合した場合に機械式駐車装置10の動作を中止させるため、例えば搬送中の事故等を未然に防ぐことが可能となる。例えば、車両のドアが閉まり切っておらず車両の搬送中にドアが開いて機械式駐車装置10と接触する可能性がある場合であっても、車両から車両状態としてドアが閉となっていないことを受信した場合には、機械式駐車装置10の動作を中止させることで事故を未然に防ぐことが可能となる。
【0102】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0103】
また、各実施形態では、機械式駐車装置10に対する各種操作(入庫予約等)を操作盤22に対して行うこととしているが、乗降室7とは離れた位置(例えば、ホテルのロビー等)に設けた装置や、車両に設けられた端末(カーナビゲーションシステム等)、利用者のモバイル端末(スマートフォン等)から各種操作が入力可能としてもよい。
【0104】
また、各実施形態では、乗降室7前までの運転や、乗降室7への車両の入出庫は車両の運転者が行うこととしているが、車両が自動運転可能な場合には、各運転動作を機械式駐車装置10側で自動運転制御することとしてもよい。なお、車両が自動運転制御可能か否かは、車両側から通信により車両が自動運転制御可能か否かを判定可能な情報を受信して判定することとしてもよいし、車両のナンバープレート等から判定することとしてもよい。
【0105】
また、各実施形態では、機械式駐車装置10をエレベータ式として説明したが、平面往復方式、垂直循環方式、多層階循環方式、水平循環方式、エレベータ・スライド方式、二・多段方式(ピット式)、二・多段方式(横行乗降式)等さまざまな方式の機械式駐車装置とすることが可能である。
【符号の説明】
【0106】
3 :格納庫
4 :入出庫扉
7 :乗降室
9 :ターンテーブル
10 :機械式駐車装置
13 :昇降通路
14 :乗入階
15 :ワイヤロープ
16 :リフト
17 :格納棚
18 :パレット
20 :非常用出入口
21 :入庫管制灯
22 :操作盤
23 :三色灯
24 :鏡
25 :停車位置指示灯
30 :センサ
35 :カメラ
43 :筐体
44 :蓋
45 :操作画面
46 :リーダー
47 :スピーカー
48 :非常停止ボタン
50 :制御装置
51 :入出庫制御部
52 :車両状態制御部
54 :通信部
56 :車両側通信部
57 :車両側制御部