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特許7154902無機繊維マット用切断具及び無機繊維マットの切断方法
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  • 特許-無機繊維マット用切断具及び無機繊維マットの切断方法 図1
  • 特許-無機繊維マット用切断具及び無機繊維マットの切断方法 図2
  • 特許-無機繊維マット用切断具及び無機繊維マットの切断方法 図3
  • 特許-無機繊維マット用切断具及び無機繊維マットの切断方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】無機繊維マット用切断具及び無機繊維マットの切断方法
(51)【国際特許分類】
   B26B 3/08 20060101AFI20221011BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B26B3/08
F01N3/28 311P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018169748
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020039618
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】河合 五百里
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-104285(JP,U)
【文献】実開昭48-080187(JP,U)
【文献】実開昭60-179273(JP,U)
【文献】特開2007-044820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 3/08
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維マット挿入用のガイドスペースが設けられた二枚のパネルと、
前記二枚のパネルの間に挟持され、前記ガイドスペース内に刃が露出するように配置されたカット刃と、
前記二枚のパネルの間に挟持され、第1のマグネットシートと第2のマグネットシートからなる一組のゴム製のマグネットシートと、からなり、
前記カット刃の背部側に位置する前記第1のマグネットシートと、前記カット刃の刃部側に位置する前記第2のマグネットシートによって前記カット刃を挟むことにより、前記カット刃が固定されている、ことを特徴とする、無機繊維マット用切断具。
【請求項2】
前記二枚のパネルの少なくとも一面に取手部が設けられている請求項1に記載の無機繊維マット用切断具。
【請求項3】
前記パネルが透明である請求項1又は2に記載の無機繊維マット用切断具。
【請求項4】
前記カット刃及び前記マグネットシートは、それぞれ前記二枚のパネルとともにボルト及びナットで固定されている請求項1~3のいずれかに記載の無機繊維マット用切断具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の無機繊維マット用切断具の無機繊維マット挿入用のガイドスペースに無機繊維マットを挿入し、
無機繊維マット用切断具を移動させることにより、無機繊維マットを切断することを特徴とする、無機繊維マットの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維マット用切断具及び無機繊維マットの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、パティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
【0003】
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設されるマット材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。このマット材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体とケーシングとの間から排気ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。
【0004】
このような用途で用いられるマット材としては、無機繊維からなるマット材(無機繊維マット)が用いられる。
また、このようなマット材を切断するために、例えば特許文献1に記載されたようなカッターナイフが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-221234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カッターナイフを使用する場合、刃が露出されたカッターナイフを定規にあてて切断を行うことが多いが、係る方法は安全ではなく手先を切傷することがあった。
また、カット刃が露出されていない安全性を考慮した切断具についても作業中のカット刃が折れた場合が考慮されておらず、折れたカット刃が切断具の外に飛び出し体の一部を切傷することがあった。
特許文献1においては切断具を直接手で保持する構造であり、折れたカット刃が手先に触れる可能性が高く安全性が充分とは言えなかった。
このような事情を踏まえ、本発明は、無機繊維マットの切断時及び刃の交換時の安全性の高い切断具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の無機繊維マット用切断具は、
無機繊維マット挿入用のガイドスペースが設けられた二枚のパネルと、
上記二枚のパネルの間に挟持され、上記ガイドスペース内に刃が露出するように配置されたカット刃と、
上記二枚のパネルの間に挟持され、上記カット刃の長手方向を挟むことにより上記カット刃を固定する、一組のゴム製のマグネットシートと、からなることを特徴とする。
【0008】
本発明の無機繊維マット用切断具では、カット刃の刃がガイドスペース内に露出しているが、ここには作業者の手が入ることがないので安全性が高い。
また、カット刃はマグネットシートに挟まれているので、カット刃が折れたとしてもカット刃はマグネットシートに吸着されて切断具外に飛び出すことは無く安全である。
マグネットシートはゴム製であり硬い無機繊維マットを切断する際に衝撃を緩和することが可能であり、カット刃の破断を抑制可能である。
【0009】
本発明の無機繊維マット用切断具では、上記二枚のパネルの少なくとも一面に取手部が設けられていることが好ましい。
パネルに取手部が設けられていると、カット刃に触れる必要がないので安全である。
【0010】
本発明の無機繊維マット用切断具では、上記パネルが透明であることが好ましい。
パネルが透明であると、カット刃の破損状況を目視で確認することができ、安全性を高くすることができる。
【0011】
本発明の無機繊維マット用切断具では、上記カット刃及び上記マグネットシートは、それぞれ上記二枚のパネルとともにボルト及びナットで固定されていることが好ましい。
このようにすると、カット刃の交換を容易にすることができ、カット刃とマグネットシートがしっかりと固定されるので好ましい。
【0012】
本発明の無機繊維マットの切断方法では、本発明の無機繊維マット用切断具の無機繊維マット挿入用のガイドスペースに無機繊維マットを挿入し、無機繊維マット用切断具を移動させることを特徴とする。
このようにすることにより、安全に無機繊維マットを切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、無機繊維マット用切断具の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す無機繊維マット用切断具の分解図である。
図3図3は、パネルが透明である無機繊維マット用切断具の一例を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、無機繊維マット用切断具を使用して無機繊維マットを切断する様子を模式的に示す作業図である。
【0014】
(発明の詳細な説明)
[無機繊維マット用切断具]
本発明の無機繊維マット用切断具は、
無機繊維マット挿入用のガイドスペースが設けられた二枚のパネルと、
上記二枚のパネルの間に挟持され、上記ガイドスペース内に刃が露出するように配置されたカット刃と、
上記二枚のパネルの間に挟持され、上記カット刃の長手方向を挟むことにより上記カット刃を固定する、一組のゴム製のマグネットシートと、からなることを特徴とする。
【0015】
図1は、無機繊維マット用切断具の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示す無機繊維マット用切断具1は、二枚のパネル(第1のパネル11及び第2のパネル12)が対向して配置されており、二枚のパネルの間にカット刃20が挟まれて(挟持されて)いる。
第1のパネル11及び第2のパネル12にはそれぞれガイドスペース15が設けられている。
そして、カット刃20の刃21がガイドスペース15から露出するようになっている。
また、第1のパネル11及び第2のパネル12とともにボルト(図示しない)及びナット52により固定される。
本発明の無機繊維マット用切断具では、二枚のパネルの少なくとも一面に取手部が設けられていることが好ましい。図1に示す無機繊維マット用切断具1では、第1のパネル11に取手部40が設けられている。
【0016】
図2は、図1に示す無機繊維マット用切断具の分解図である。
図2には、カット刃20の長手方向を挟む、一組のマグネットシート30(第1のマグネットシート31及び第2のマグネットシート32)を示している。
一組のマグネットシート30は、第1のパネル11及び第2のパネル12により挟まれ(挟持され)るので、一組のマグネットシート30により、カット刃20が固定される。
カット刃20、第1のマグネットシート31及び第2のマグネットシート32にはボルトを通すための穴が設けられており、第1のパネル11及び第2のパネル12とともにボルト(図示しない)及びナット52により固定される。
【0017】
このような無機繊維マット用切断具を構成する各部材の詳細について以下に説明する。
パネルは、プラスチック製の板材を所定形状に加工したものであることが好ましい。
パネルの寸法は、特に限定するものではないが、縦80~300mm、横50~200mm、厚さ2.0~5.0mmであることが好ましい。
【0018】
パネルに設けられるガイドスペースは、無機繊維マットを挿入するためにパネルに設けられた所定幅の切込みである。
ガイドスペースの幅は特に限定されるものではないが、切断する無機繊維マットの厚さにより定めることが好ましい。
例えば、切断する無機繊維マットの厚さに対してガイドスペースの幅が小さいと無機繊維マットの反力により無機繊維マット用切断具の位置ずれが起こり難く、安定した切断が可能になる。無機繊維マットの厚さに対するガイドスペースの幅は95~55%であることが好ましく、80~65%であることがより好ましい。ガイドスペースの幅が95%より大きいと無機繊維マットの反力が足りなく、安定した切断が出来なくなる。また55%より小さいと無機繊維を圧壊することになり好ましくない。ガイドスペースの幅はガイドスペースの全域にわたって無機繊維マットの厚さより小さくする必要はなく、ガイドスペースの一部のみ小さくすることでもよい。ガイドスペースの一部のみ小さくすることにより無機繊維マットにかかる圧力負荷のトータル量を低減することが可能となる。
例えば、ガイドスペースのうち、無機繊維マットの入り口にあたる部分を、ガイドスペースの幅に対して広くしておき、ガイドスペースの幅が一定になる部分までに傾斜をつけるようにしておくことが好ましい。このようにするとガイドスペースへの無機繊維マットの挿入が容易になる。
【0019】
カット刃としては、市販のカッターナイフの替え刃を使用することができる。例えばオルファ(株)製、品番LB50Kを使用することができる。
カッターナイフの替え刃には根元に穴が空いているのでその穴にボルトを通すことでカット刃の位置決めを行うことができる。
【0020】
カット刃は、カット刃の刃がガイドスペースに露出するように配置する。ガイドスペースとカット刃の刃がなす角度(図2中にθで示す角度)が15~75°であるようにすることが好ましい。
【0021】
マグネットシートは、ゴム製のマグネットシートであることが好ましい。
マグネットシートでカット刃の長手方向を挟むことによりカット刃を固定することにより、カット刃の耐久性が向上する。
マグネットシートにはボルトを通すための穴を設けておくことが好ましい。
マグネットシートは、カット刃の刃が折れた際にカット刃が吸着される程度の磁力を有するシートであることが好ましく、折れたカット刃がマグネットシートに吸着されるようにすることで安全性を高めることができる。
【0022】
取手部は、無機繊維マット用切断具を使用する際に作業者が無機繊維マット用切断具を保持するための部位である。
図1にはコの字形状の取手部を示しているが、作業者が無機繊維マット用切断具を保持して、切断方向に力を加えることができるような形状であればその形状はコの字形状に限定されるものではない。
また、取手部の材質は特に限定されるものではない。
取手部は、パネルに対してボルト等で固定されてもよいし、接着剤等で固定されていてもよい。
【0023】
本発明の無機繊維マット用切断具では、上記パネルが透明であることが好ましい。
図3は、パネルが透明である無機繊維マット用切断具の一例を模式的に示す斜視図である。
図3に示す無機繊維マット用切断具2は、第1のパネル13及び第2のパネル14が透明である。その他の構成は図1に示す無機繊維マット用切断具1と同様である。
第1のパネル13及び第2のパネル14が透明であるので、カット刃20の全体、一組のマグネットシート30(第1のマグネットシート31及び第2のマグネットシート32)が外から見えるようになっている。
パネルが透明であると、カット刃の破損状況を目視で確認することができ、安全性を高くすることができる。
【0024】
[無機繊維マットの切断方法]
本発明の無機繊維マットの切断方法では、本発明の無機繊維マット用切断具の無機繊維マット挿入用のガイドスペースに無機繊維マットを挿入し、無機繊維マット用切断具を移動させることを特徴とする。
【0025】
本発明の無機繊維マットの切断方法において切断する対象である無機繊維マットは、無機繊維からなる。無機繊維は、特に限定されず、アルミナ-シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維等であってもよい。また、ガラス繊維や生体溶解性繊維であってもよい。耐熱性や耐風蝕性等、マット材に要求される特性等に応じて変更すればよく、各国の環境規制に適合できるような太径繊維や繊維長のものを使用するのが好ましい。
【0026】
この中でも、低結晶性アルミナ質の無機繊維が好ましく、ムライト組成の低結晶性アルミナ質の無機繊維がより好ましい。加えて、スピネル型化合物を含む無機繊維がさらに好ましい。
【0027】
無機繊維マットは、種々の方法により得ることができるが、例えば、抄造法又はニードリング法により製造することができる。
抄造法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。
無機繊維を開繊し、開繊した無機繊維を溶媒中に分散させて混合液とする。底面にろ過用のメッシュが形成された成形器に混合液を流し込み、混合液中の溶媒を脱溶媒処理することで無機繊維集合体を得る。そして、無機繊維集合体を乾燥することにより無機繊維マットを得ることができる。
ニードリング法の場合、例えば、以下の方法により製造することができる。
塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して3~10μmの平均繊維径を有する無機繊維前駆体を作製する。続いて、上記無機繊維前駆体を圧縮して所定の大きさの連続したシート状物を作製し、焼成処理を施すことにより無機繊維マットを得ることができる。この焼成処理の前後のいずれかにニードルパンチング処理を行い、無機繊維同士を交絡させる。
【0028】
上記無機繊維マットの厚さは、2~30mmであることが望ましい。
無機繊維マットの厚さが2mm未満であると、その厚さが薄すぎるため、断熱性能や防音性能が低下してしまう。一方、無機繊維マットの厚さが30mmを超えると、柔軟性が低下し、装着対象となる部材への装着性が低下する。
【0029】
上記無機繊維マットのかさ密度は、特に限定されるものではないが、0.05~0.30g/cmであることが望ましい。無機繊維マットのかさ密度が0.05g/cm未満であると、無機繊維のからみ合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、無機繊維マットの形状を所定の形状に保ちにくくなる。一方、無機繊維マットのかさ密度が0.30g/cmを超えると、無機繊維マットが硬くなり、装着対象となる部材への装着性が低下し、無機繊維マットが割れやすくなる。
【0030】
このような無機繊維マットの切断を行う際には、無機繊維マット用切断具の無機繊維マット挿入用のガイドスペースに無機繊維マットを挿入し、無機繊維マット用切断具を移動させる。
このようにすることにより、安全に無機繊維マットを切断することができる。
また、無機繊維マット用切断具に取手部が設けられている場合は、取手部を持って無機繊維マット用切断具を移動させることが好ましい。
【0031】
図4は、無機繊維マット用切断具を使用して無機繊維マットを切断する様子を模式的に示す作業図である。
図4では、ロールからその一端が垂れ下がった無機繊維マット100を無機繊維マット用切断具1を使用して切断する様子を示している。
図面左から右に向かって無機繊維マット用切断具1を動かすことによって、無機繊維マット100を切断することができる。
このようにして無機繊維マットを切断する場合に、下敷きは不要である。
【0032】
切断した無機繊維マットは、さらに所定の形状に打ち抜き加工等を行うことによりマット材とすることができる。そして、円柱状の排ガス浄化装置、排ガス処理体や排気管にマット材を巻きつけることにより、保持シール材、断熱材、防音材等の用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 無機繊維マット用切断具
2 無機繊維マット用切断具(透明)
11 パネル(第1のパネル)
12 パネル(第2のパネル)
13 パネル(透明な第1のパネル)
14 パネル(透明な第2のパネル)
15 ガイドスペース
20 カット刃
21 カット刃の刃
30 一組のマグネットシート
31 マグネットシート(第1のマグネットシート)
32 マグネットシート(第2のマグネットシート)
40 取手部
52 ナット
100 無機繊維マット
図1
図2
図3
図4