IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社FTSの特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-バッテリーケース用ロアトレー 図1
  • 特許-バッテリーケース用ロアトレー 図2
  • 特許-バッテリーケース用ロアトレー 図3
  • 特許-バッテリーケース用ロアトレー 図4
  • 特許-バッテリーケース用ロアトレー 図5
  • 特許-バッテリーケース用ロアトレー 図6
  • 特許-バッテリーケース用ロアトレー 図7
  • 特許-バッテリーケース用ロアトレー 図8
  • 特許-バッテリーケース用ロアトレー 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】バッテリーケース用ロアトレー
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/242 20210101AFI20221011BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221011BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H01M50/242
B60K1/04 Z
B60R16/04 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018178626
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020053132
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 吉則
(72)【発明者】
【氏名】梶川 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆介
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第206921896(CN,U)
【文献】特開2013-157242(JP,A)
【文献】特開2017-226353(JP,A)
【文献】特開2015-099703(JP,A)
【文献】特開2012-126058(JP,A)
【文献】特開2009-137408(JP,A)
【文献】特開平06-115362(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194684(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104953055(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
B60K 1/04
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーモジュールを下方から覆うトレー本体と、
金属材料からなり、前記トレー本体に沿って水平方向に並列配置された複数本のリインフォースと、
前記リインフォースの長さ方向における端部に形成され、前記リインフォースの長さ方向と略直交する受圧面を有する受圧部と、
前記リインフォースの並列方向と同方向に間隔を空けて直列状に配置され、隣り合う前記リインフォースの端部同士を連結する複数の補強部材とを備え、
前記複数の補強部材が、前記受圧面に対して接触可能に又は接触した状態で対向していることを特徴とするバッテリーケース用ロアトレー。
【請求項2】
前記複数の補強部材の全てが、前記リインフォースの並列ピッチより短尺であることを特徴とする請求項1記載のバッテリーケース用ロアトレー。
【請求項3】
前記補強部材が、
水平な板状をなし、隣り合う前記リインフォースの端部同士を連結する機能を有する連結機能部と、
前記リインフォースの長さ方向と略直角な平板状をなし、前記受圧部を押圧する機能を有する押圧機能部とを備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のバッテリーケース用ロアトレー。
【請求項4】
前記補強部材が、前記連結機能部と前記押圧機能部とを略直角に繋げた単一部材であることを特徴とする請求項3記載のバッテリーケース用ロアトレー。
【請求項5】
前記連結機能部と前記押圧機能部が弧状をなす曲げ加工部を介して繋がっており、
前記連結機能部の下面と前記受圧部の上面との間に、ブラケットが介在していることを特徴とする請求項4記載のバッテリーケース用ロアトレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーケース用ロアトレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電池パックを収容するためのバッテリーケースが開示されている。このバッテリーケースは、電池パックを載せるためのロアトレー(電池パックトレー)と、電池パックを覆うアッパカバー(カバー装置)とを備え、アッパカバーとロアトレーとが固定されている。
【0003】
ロアトレーは、電池パックを下面側から保護するトレー本体と、電池パックを固定して支持するための支持部材とを備えて構成されている。支持部材は、トレー本体の上面に並列配置した複数本のクロスメンバと、トレー本体の外側壁に沿って配置されてクロスメンバの端部同士を連結する一対の補強フレームとを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-019203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のロアトレーは、トレー本体、クロスメンバ、補強フレームのいずれも金属製であるため、非常に重たいという問題がある。軽量化を図る手段としては、補強フレームを省略し、クロスメンバの端面をトレー本体の外側壁の内面に当接させることも考えられるが、その場合、トレー本体の外側壁のうちクロスメンバが当接していない部位に外力が作用したときに、トレー本体が大きく変形し、電池パックにダメージが及ぶことが懸念される。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、トレー本体の変形を防止しながら軽量化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
バッテリーモジュールを下方から覆うトレー本体と、
金属材料からなり、前記トレー本体に沿って水平方向に並列配置された複数本のリインフォースと、
前記リインフォースの長さ方向における端部に形成され、前記リインフォースの長さ方向と略直交する受圧面を有する受圧部と、
前記リインフォースの並列方向と同方向に間隔を空けて直列状に配置され、隣り合う前記リインフォースの端部同士を連結する複数の補強部材とを備え、
前記複数の補強部材が、前記受圧面に対して接触可能に又は接触した状態で対向していることを特徴とする。
【0008】
尚、本願発明における「略直交」は、90°の角度をなす直交の形態と、90°に対して僅かな角度(例えば、5~6°)で斜めをなす形態の両方を含む概念と定義される。
【発明の効果】
【0009】
補強部材の外側面のうち隣り合うリインフォースの間の領域に対して、リインフォースの軸方向と平行な押圧力が作用すると、その押圧力は、補強部材を介すことにより複数本のリインフォースの受圧部に分散して伝わるので、1本のリインフォースに生じる応力が低減される。リインフォースは、軸剛性が高く、補強部材に付与された押圧力によって座屈変形を生じる虞がないので、トレー本体の変形を防止することができる。また、リインフォースの並列方向に間隔を空けて直列状に配置した複数の補強部材によって隣り合うリインフォースの端部同士を連結しているので、1本の長尺の補強部材によって全てのリインフォースの端部同士を連結する形態に比べると、補強部材の総重量が軽減される。本発明によれば、トレー本体の変形を防止しながら軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のバッテリーケースの斜視図
図2】バッテリーケースの部分拡大正面図
図3】バッテリーケースの部分拡大平面図
図4】アッパカバーの斜視図
図5】トレー本体の斜視図
図6】支持部材の分解斜視図
図7図2のX-X線断面図
図8】補強部材に押圧力が作用した状態をあらわすX-X線相当断面図
図9】実施例2のX-X線相当断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、前記複数の補強部材の全てが、前記リインフォースの並列ピッチより短尺であってもよい。この構成によれば、補強部材の重量を最小にすることができる。
【0012】
本発明は、前記補強部材が、水平な板状をなし、隣り合う前記リインフォースの端部同士を連結する機能を有する連結機能部と、前記リインフォースの長さ方向と略直角な平板状をなし、前記受圧部を押圧する機能を有する押圧機能部とを備えていてもよい。この構成によれば、連結機能部と押圧機能部とを別々の部位としたので、連結機能部と押圧機能部の設計に際して、それぞれの機能を優先した形状や寸法等を設定することができる。
尚、この構成における「略直角」は、90°の角度をなす直角な形態と、90°に対して僅かな角度(例えば、5~6°)で斜めをなす形態の両方を含む概念と定義される。
【0013】
本発明は、前記補強部材が、前記連結機能部と前記押圧機能部とを略直角に繋げた単一部材であってもよい。この構成によれば、連結機能部と押圧機能部が、夫々、相手側の機能部を補強する機能を発揮するので、補強部材が座屈変形する虞はない。
【0014】
本発明は、前記連結機能部と前記押圧機能部が弧状をなす曲げ加工部を介して繋がっており、前記連結機能部の下面と前記受圧部の上面との間に、ブラケットが介在していてもよい。弧状の曲げ加工部の曲率半径を小さくすることには限界があるので、曲げ加工部と受圧部が同じ高さに位置している場合は、補強部材に付与された押圧力が受圧部に伝わらない虞がある。しかし、曲げ加工部と同じ高さにブラケットを配置したことにより、押圧機能部を受圧部と同じ高さに配置できるので、押圧機能部から受圧部へ押圧力を付与することができる。
【0015】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図8を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、図1,5における斜め右下方、図3における下方及び図7,8における左方を前方と定義する。上下の方向については、図1,2,4~8にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、図2,3にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0016】
本実施例1のバッテリーケース10は、バッテリーモジュールM(図5を参照)を下から支えるロアトレー11と、ロアトレー11に対しバッテリーモジュールMを覆い隠すように取り付けられる金属製のアッパカバー16とを備えて構成されている。ロアトレー11は、金属製のトレー本体12と、金属製の支持部材20とを備えて構成されている。図5に示すように、トレー本体12は、平面視形状が略方形をなす水平な底壁部13と、底壁部13の外周縁から立ち上がった下部周壁部14と、下部周壁部14の立ち上がり端縁から水平方向外方へ張り出した下部フランジ部15とを有する単一部材である。
【0017】
図4に示すように、アッパカバー16は、平面視形状が略方形をなす水平な上壁部17と、上壁部17の外周縁から斜め下方へ張り出した上部周壁部18と、上部周壁部18の下端縁から水平方向外方へ張り出した上部フランジ部19とを有する単一部材である。アッパカバー16は、上部フランジ部19を下部フランジ部15に載置し、両フランジ部15,19同士をボルト締め等によって固定することで、トレー本体12に取り付けられている。バッテリーモジュールMは、トレー本体12とアッパカバー16とによって形成された収容空間(図示省略)内に収容される。
【0018】
図6に示すように、支持部材20は、4本(複数本)のリインフォース21と、8つ(複数)のブラケット30と、6本(複数本)の補強部材37とを組み付けて構成されている。リインフォース21とブラケット30と補強部材37は、金属材料(例えば、高張力鋼)からなり、圧延やプレス等により全体として前後方向に細長い板状に成形されたものである。
【0019】
図2,6に示すように、リインフォース21は、基部22と左右対称な一対の受板部26とから構成される単一部品である。基部22は、前後方向に細長い水平な底板部23と、底板部23の左右両側縁から斜め上方へ延出した一対の支持板部24とからなる。一対の受板部26は、基部22(両支持板部24)の上端縁から左右方向外方へ水平に延出した形態である。底板部23の長さ方向における前後両端部には、底板部23の両端面における中央部を切り欠いた形態の切欠部25が形成されている。リインフォース21の長さ方向と直角に切断した断面形状は、切欠部25の形成領域を除き、いずれの部位においても同一形状である。
【0020】
リインフォース21の長さ方向(軸方向)に見た形状は、基部22においては底板部23と支持板部24が角度をなして連なり、基部22の左右両端(支持板部24の上端)に対して一対の受板部26が角度をなして連なっている。したがって、リインフォース21は、その軸線を屈曲させるように曲げ変形や座屈変形が生じ難い。つまり、リインフォース21は、長さ方向(軸線方向)の外力を受けたときの軸剛性が高いものとなっている。
【0021】
図1に示すように、4本のリインフォース21の前端部は、トレー本体12の下部周壁部14を構成する前壁部14Fよりも前方へ突出し、4本のリインフォース21の後端部は、トレー本体12の下部周壁部14を構成する後壁部14Rよりも後方へ突出している。つまり、リインフォース21の前後両端部は、平面視においてトレー本体12の下部周壁部14の外部に配されている。図6~8に示すように、リインフォース21のうち受板部26の前後両端部は、前後方向において補強部材37と対向する受圧部27となっている。受圧部27のうち前方又は後方に臨む端面は、受板部26(リインフォース21)の長さ方向と直交する受圧面28となっている。リインフォース21のうち受板部26以外の部位(底板部23と支持板部24)の両端部は、補強部材37と対向しない非対向部29となっている。
【0022】
図1,2に示すように、4本のリインフォース21は、左右方向に間隔を空けて並列するように配置されている。図2に示すように、並列配置した4本のリインフォース21のうち受板部26の上面には、トレー本体12の底板部23が載置され、溶着等により固着されている。これにより、トレー本体12に収容したバッテリーモジュールMの重量が、底板部23(トレー本体12)を介して4本のリインフォース21によって下から支えられるようになっている。
【0023】
図6に示すように、ブラケット30は、本体部31と背板部36とから構成された単一部品である。本体部31は、上下方向に貫通するボルト孔33が形成された上板部32と、上板部32の左右両側縁から斜め下方へ延出した一対の側板部34と、側板部34の下端縁から左右方向外方へ水平に延出した左右一対の下板部35とから構成されている。背板部36は、本体部31の前後方向における一方の端縁から上方へフランジ状に張り出した形態である。背板部36は、トレー本体12の周壁部の外側面に溶着等によって固着されている。
【0024】
ブラケット30の両下板部35は、リインフォース21の受板部26における前後両端部(受圧部27)の上面に載置するように重ねられ、溶接等により固着されている。これにより、1本のリインフォース21に対し前後対称な一対のブラケット30が一体化されている。ブラケット30のボルト孔33とリインフォース21の切欠部25は、上下に対応するように配置されている。
【0025】
図7に示すように、リインフォース21の前端部においては、受圧部27の前端面(受圧面28)と下板部35の前端面25Fとが、前後方向において同じ位置に配され、面一状の位置関係で上下に連なっている。リインフォース21の後端部においても、受圧部27の後端面(受圧面28)と下板部35の後端面(図示省略)とが、前後方向において同じ位置に配され、面一状の位置関係で上下に連なっている。
【0026】
図6に示すように、補強部材37は、左右方向(リインフォース21の長さ方向と直交する方向)に長い形状である。補強部材37の左右方向の長さ寸法は、左右に隣り合うリインフォース21の並列ピッチの寸法より小さい。補強部材37は、水平な平板状をなす連結機能部38と、略四半円弧状に屈曲した曲げ加工部39と、平板状をなす押圧機能部40とを有する単一部品である。連結機能部38の幅方向(前後方向)における一方の側縁部には、曲げ加工部39の一方の側縁部が滑らかに連なっている。押圧機能部40は、曲げ加工部39の他方の側縁部から下向き(連結機能部38と直角)に延出した形態である。
【0027】
図1~3に示すように、補強部材37は、トレー本体12と接触することなくトレー本体12の外部に配置されている。即ち、補強部材37は、トレー本体12の前壁部14Fよりも前方の位置と、トレー本体12の後壁部14Rよりも後方の位置に配されている。補強部材37は、左右に隣り合う2本のリインフォース21の前端部同士の間、及び後端部同士の間に橋渡されるように配置されている。連結機能部38の左右両端部は、左右に隣り合うブラケット30の下板部35の上面に載置され、溶接により固着されている。つまり、補強部は、ブラケット30を介して、左右方向に隣り合うリインフォース21の前端部同士又は後端部同士を連結している。
【0028】
図7に示すように、リインフォース21の前端部同士を連結する補強部材37の左右両端部においては、押圧機能部40の後面上端部が、受圧面28に対し僅かな間隔を空けて前方から対向するように配置されている。リインフォース21の後端部同士を連結する補強部材37の左右両端部においても、同様に、押圧機能部40の前面上端部が、受圧面28に対して僅かな間隔を空けて後方から対向するように配置されている。受圧面28と押圧機能部40の前後方向の対向間隔は、曲げ加工部39の曲率半径に相当する寸法である。また、上下方向においては、曲げ加工部39とブラケット30の下板部35が、ほぼ同じ高さで前後方向に間隔を空けて対向するような位置関係となっている。
【0029】
前側の押圧機能部40は前側の受圧部27を前方から覆っている。後側の押圧機能部40は後側の受圧部27を後方から覆っている。リインフォース21の前端部及び後端部のうち受圧部27以外の非対向部29(基部22)は、押圧機能部40で覆われず、前方又は後方に露出した状態となっている。
【0030】
次に、本実施例1の作用を説明する。4本のリインフォース21と8つのブラケット30と6本の補強部材37を固着して一体化することにより、平面視が略方形の枠状をなす支持部材20が構成される。支持部材20の上面には、バッテリーモジュールMを収容したトレー本体12とアッパカバー16が載置された状態で取り付けられ、バッテリーケース10が構成される。
【0031】
バッテリーケース10は、ブラケット30のボルト孔33に挿通したボルト(図示省略)を利用して車体(図示省略)に固定される。尚、ブラケット30はリインフォース21に載置されているが、リインフォース21には切欠部25が形成されているので、ボルトがリインフォース21と干渉することはない。
【0032】
車体に取り付けたバッテリーケース10に対し、リインフォース21の長さ方向に沿って前方又は後方から押圧力P(衝撃力)が作用しても、リインフォース21によってトレー本体12の変形が防止されている。リインフォース21のうち補強部材37で覆われていない基部22の非対向部29(底板部23と支持板部24)に対して、直接、押圧力Pが作用した場合、その押圧力Pはリインフォース21の高い軸剛性によって受け止められる。したがって、リインフォース21が曲げ変形や座屈変形を来す虞はない。これにより、トレー本体12の変形を防止し、ひいては、バッテリーモジュールMに押圧力Pの影響が及ぶことを防止できる。
【0033】
また、前方又は後方からの押圧力P(衝撃力)が、リインフォース21ではなく補強部材37(押圧機能部40)に作用した場合、その押圧力Pにより、押圧機能部40が、曲げ加工部39を略支点としてトレー本体12側へ接近するように変位する。そして、図8に示すように、押圧機能部40の左右方向における端部が、受圧部27(受圧面28)に対し前方又は後方から当接する。補強部材37における押圧機能部40の作用部位が、左右方向において受圧部27と対応する領域と、受圧部27から左右方向に外れた領域(つまり、隣り合うリインフォース21の間の領域)のいずれであっても、押圧機能部40が変形して受圧部27に当接する。
【0034】
押圧機能部40が受圧部27に当接すると、リインフォース21の長さ方向(軸方向)に沿った押圧力Pは、押圧機能部40を介してリインフォース21の受圧部27に作用し、リインフォース21の高い軸剛性によって受け止められる。したがって、リインフォース21が曲げ変形や座屈変形を来す虞はない。このように、押圧力Pが左右方向に隣り合うリインフォース21の間の領域に作用した場合でも、補強部材37によってトレー本体12の変形を防止し、ひいては、バッテリーモジュールMに押圧力Pの影響が及ぶことを防止できる。
【0035】
本実施例のバッテリーケース10用のロアトレー11は、バッテリーモジュールMを下方から覆うトレー本体12と、金属材料からなる複数本のリインフォース21と、複数の補強部材37とを備えている。複数本のリインフォース21は、トレー本体12に沿って水平方向に並列配置されている。リインフォース21の長さ方向における端部には、リインフォース21の長さ方向と略直交する受圧面28を有する受圧部27が形成されている。
【0036】
複数の補強部材37は、リインフォース21の並列方向と同方向に間隔を空けて直列状に配置され、隣り合うリインフォース21の端部同士を連結するとともに、受圧部27に対して接触可能に対向するように配置されている。尚、「略直交」は、90°の角度をなす直交の形態と、90°に対して僅かな角度(例えば、5~6°)で斜めをなす形態の両方を含む概念と定義される。
【0037】
補強部材37の外側面のうち隣り合うリインフォース21の間の領域に対して、リインフォース21の軸方向と平行な押圧力Pが作用すると、その押圧力Pは、補強部材37を介すことにより複数本のリインフォース21の受圧部27に分散して伝わるので、1本のリインフォース21に生じる応力が低減される。リインフォース21は、軸剛性が高く、補強部材37に付与された押圧力Pによって座屈変形を生じる虞がないので、トレー本体12の変形を防止することができる。
【0038】
また、リインフォース21の並列方向に間隔を空けて直列状に配置した複数の補強部材37によって隣り合うリインフォース21の端部同士を連結しているので、1本の長尺の補強部材37によって全てのリインフォース21の端部同士を連結する形態に比べると、補強部材37の総重量が軽減される。本発明によれば、軽量化を図りながらトレー本体12の変形を防止することができる。
【0039】
また、複数の補強部材37の全てがリインフォース21の並列ピッチより短尺であり、全てのリインフォース21の端部が、補強部材37と対向しない非対向部29(受圧部27以外の領域)を有している。この構成によれば、補強部材37の重量を最小にすることができる。
【0040】
また、補強部材37は、水平な板状をなし、隣り合うリインフォース21の端部同士を連結する機能を有する連結機能部38と、リインフォース21の長さ方向と略直角をなし、受圧部27を押圧する機能を有する押圧機能部40とを備えている。この構成によれば、連結機能部38と押圧機能部40とを別々の部位としたので、連結機能部38と押圧機能部40の設計に際して、それぞれの機能を優先した形状や寸法等を設定することができる。
【0041】
また、補強部材37は、連結機能部38と押圧機能部40とを略直角に繋げた単一部材である。この構成によれば、連結機能部38と押圧機能部40が、夫々、相手側の機能部を補強する機能を発揮する。これにより、補強部材37の剛性が高められているので、補強部材37が座屈変形する虞はない。
【0042】
また、連結機能部38と前記押圧機能部40が弧状をなす曲げ加工部39を介して繋がっており、連結機能部38の下面と受圧部27の上面との間に、ブラケット30の下板部35が介在している。弧状の曲げ加工部39の曲率半径を小さくすることには限界があるので、曲げ加工部39と受圧部27が同じ高さに位置している場合は、押圧機能部40が受圧部27より下方に位置することになるので、補強部材37に付与された押圧力Pが受圧部27に伝わらない虞がある。しかし、本実施例1では、曲げ加工部39と同じ高さにブラケット30の下板部35を配置したことにより、押圧機能部40の上端部を受圧部27と同じ高さに配置できたので、押圧機能部40から受圧部27へ押圧力Pを付与することができる。
【0043】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を図9を参照して説明する。本実施例2のロアトレー41は、リインフォース21に対するブラケット30と補強部材37の前後方向における位置関係を、上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0044】
リインフォース21の前端部においては、ブラケット30の下板部35の前端面35Fが、リインフォース21の受圧部27(受圧面28)より後方へ退避するように位置ずれするように配置されている。リインフォース21の後端部においても、前端部と同様、ブラケット30の下板部35の後端面(図示省略)が、リインフォース21の受圧部27(受圧面28)より後方へ退避するように位置ずれするように配置されている。
【0045】
この前後方向における位置ずれ配置により、リインフォース21の前端部においては、補強部材37の曲げ加工部39を受圧面28より後方に配置して、押圧機能部40の後面を、受圧面28に対し、ほぼ面当たり状態で当接させた状態としている。リインフォース21の後端部においても、前端部と同様、補強部材37の曲げ加工部39を受圧面28より前方に配置して、押圧機能部40の前面を、受圧面28に対し、ほぼ面当たり状態で当接させた状態としている。
【0046】
補強部材37に対して前方又は後方から押圧力P(衝撃力)が作用すると、曲げ加工部39が殆ど変形せず、押圧機能部40が前後方向へ変位することなく、押圧力Pが押圧機能部40を介して受圧部27(受圧面28)に作用する。受圧部27に作用した押圧力は、リインフォース21の高い軸剛性によって受け止められるので、リインフォース21が曲げ変形や座屈変形を来す虞はない。これにより、補強部材37とリインフォース21によってトレー本体12の変形を防止し、バッテリーモジュールMに押圧力Pの影響が及ぶことを防止できる。
【0047】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、全てのリインフォースの端部が、補強部材と対向しない非対向部(受圧部以外の領域)を有しているが、一部のリインフォースについては、その端面の全領域が受圧部となっていてもよい。
(2)上記実施例では、複数の補強部材の全てが、リインフォースの並列ピッチより短尺であるが、一部の補強部材はリインフォースの並列ピッチより長尺であってもよい。
(3)上記実施例では、連結機能部と押圧機能部を別々の部位として形成したが、連結機能部と押圧機能部を兼用させた形態としてもよい。
(4)上記実施例では、連結機能部と押圧機能部とを略直角(略L字形)に繋げた形態であるが、連結機能部と押圧機能部は略T字形に繋げた形態であってもよい。
(5)上記実施例では、補強部材が連結機能部と押圧機能部とを一体化した単一部材であるが、補強部材は、互いに別部品として成形した連結機能部と押圧機能部を固着した形態であってもよい。
(6)上記実施例では、トレー本体が金属製であるが、本発明は、トレー本体が合成樹脂製である場合にも適用できる。
(7)上記実施例では、リインフォースの両端部と補強部材が平面視においてトレー本体の外部に配されているが、リインフォースの両端部と補強部材は平面視においてトレー本体の内部に配されていてもよい。この場合、補強部材をトレー本体の下部周壁部(前壁部と後壁部)の内側面に当接させておけば、トレー本体の変形を防止することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
M…バッテリーモジュール
10…バッテリーケース
11,41…ロアトレー
12…トレー本体
21…リインフォース
27…受圧部
30…ブラケット
37…補強部材
38…連結機能部
39…曲げ加工部
40…押圧機能部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9