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特許7154933サイホン排水システムの検査方法及びサイホン排水システムの検査用部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】サイホン排水システムの検査方法及びサイホン排水システムの検査用部品
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018194422
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020063561
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 秀司
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-012536(JP,A)
【文献】特開2010-281070(JP,A)
【文献】特開2017-145677(JP,A)
【文献】特開2008-163634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水廻り器具からの排水を略水平方向に排出する横引き管と、横引き管の下流側端部に接続され、鉛直下方に配置された竪管と、前記横引き管の上流側に設けられ管内に外気を取入れ可能な通気部とを備えるサイホン排水システムの検査方法であって、
前記通気部に、弾性体を用いて構成され、前記通気部への取付け状態において自立可能である袋体被せる第1工程と、
前記横引き管に排水を流入させる第2工程と、
サイホン力発生時に管内に生じる負圧の作用時に前記袋体が変形するようにしてサイホン力発生の有無を確認する第3工程と、
を有し、
前記袋体のうち前記通気部に取り付けられる部分には、弾性的に拡縮可能な開口孔が設けられ、
自然状態における前記開口孔の内径は、前記通気部における前記袋体の取付け箇所の外径よりも小さく設定され、
前記袋体のうち前記開口孔を形成する部分には、前記通気部に対して密着するOリングが設けられているサイホン排水システムの検査方法。
【請求項2】
前記袋体には、通常時は外側に突出し、前記負圧による前記袋体内の圧力低下時に凹む凸部が設けられている請求項1に記載のサイホン排水システムの検査方法。
【請求項3】
弾性体を用いて構成され、サイホン排水システムの通気部への取付け状態において自立可能な袋体と、
前記袋体のうち前記通気部に取り付けられる部分に設けられ、自然状態における内径が前記通気部における前記袋体の取付け箇所の外径よりも小さく設定され、弾性的に拡縮可能な開口孔と、
前記袋体のうち前記開口孔を形成する部分に設けられ、前記通気部に対して密着するOリングと、
を有するサイホン排水システムの検査用部品。
【請求項4】
前記袋体には、通常時は外側に突出し、サイホン力発生時に管内に生じる負圧による前記袋体内の圧力低下時に凹む凸部が設けられている請求項3に記載のサイホン排水システムの検査用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイホン排水システムの検査方法及びサイホン排水システムの検査用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
水廻り器具からの排水を略水平方向に排出する横引き管と、横引き管の下流側端部に接続され、鉛直下方に配置された竪管と、を備えるサイホン排水システムの検査方法であって、上流側端部が大気開放された他の配管の下流側端部と竪管の下流側端部とを接続する第1工程と、横引き管の上流側端部から検査流体を流入させる第2工程と、検査流体が他の配管の上流側端部に到達した後、横引き管、竪管と他の配管に流体漏れがあるか否かを検査する第3工程と、を備えた検査方法が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-166526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイホン排水システムの施工後、検査を行いサイホン排水システムとして所定の機能を満たすか否かについて、例えば上記した特許文献1の方法を用いて検査することができる。
【0005】
しかしながら、この検査方法の場合、横引き管、竪管と他の配管に流体漏れがあるか否かは分かるが、排水時にサイホン力が発生しているか否かを検査し、サイホン排水システムの性能を担保できるわけではない。
【0006】
また、排水時の音によりサイホン力発生の有無を検査することも考えられるが、正確な判定は難しいと考えられる。更に、メーターボックス内に配置される清掃口から排水の状態を目視確認することで、サイホン力発生の有無を検査することも考えられる。しかしながら、メーターボックスは戸外にあるため、作業者が水廻り器具からの排水を開始してから戸外へ移動する必要があり、一人での作業が行い難い。
【0007】
本発明は、サイホン排水システムにおいて、排水時にサイホン力が発生しているか否かを水廻り器具の近傍で検査できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係るサイホン排水システムの検査方法は、水廻り器具からの排水を略水平方向に排出する横引き管と、横引き管の下流側端部に接続され、鉛直下方に配置された竪管と、前記横引き管の上流側に設けられ管内に外気を取入れ可能な通気部とを備えるサイホン排水システムの検査方法であって、前記通気部に、サイホン力発生時に管内に生じる負圧を検出可能な検査用部品を取り付ける第1工程と、前記横引き管に排水を流入させる第2工程と、前記検査用部品によりサイホン力発生の有無を確認する第3工程と、を有する。
【0009】
ここで、「横引き管の上流側」には、横引き管の上流側の管体だけでなく、横引き管自身の上流側端部も含まれる。
【0010】
このサイホン排水システムの検査方法では、第1工程において、通気部に、サイホン力発生時に管内に生じる負圧を検出可能な検査用部品を取り付ける。また、第2工程において、横引き管に排水を流入させる。更に、第3工程において、検査用部品によりサイホン力発生の有無を確認する。通気部は横引き管の上流側に設けられているので、該通気部に取り付けられる検査用部品は、サイホン排水システムにおいて水廻り器具の近傍に位置する。このため、排水時にサイホン力が発生しているか否かを水廻り器具の近傍で検査できる。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係るサイホン排水システムの検査方法において、前記検査用部品が袋体であり、前記第1工程において、前記袋体を前記通気部に被せ、前記第3工程において、前記負圧の作用時に前記袋体が変形するようにしている。
【0012】
このサイホン排水システムの検査方法では、検査用部品が袋体であるので、検査用部品を通気部に取り付け易い。また、袋体は、サイホン力発生時に管内に生じる負圧により変形するので、排水時の袋体の状態を観察することにより、サイホン力が発生しているか否かを検査できる。
【0013】
第3の態様は、第2の態様に係るサイホン排水システムの検査方法において、前記袋体が弾性体を用いて構成され、前記通気部への取付け状態において自立可能である。
【0014】
このサイホン排水システムの検査方法では、検査用部品としての袋体が弾性体を用いて構成され、通気部への取付け状態において自立可能であるので、袋体を通気部に取り付け易い。また、排水時の袋体の変形を観察し易い。
【0015】
第4の態様は、第3の態様に係るサイホン排水システムの検査方法において、前記袋体のうち前記通気部に取り付けられる部分には、弾性的に拡縮可能な開口孔が設けられ、自然状態における前記開口孔の内径は、前記通気部における前記袋体の取付け箇所の外径よりも小さく設定され、前記袋体のうち前記開口孔を形成する部分には、前記通気部に対して密着するOリングが設けられている。
【0016】
このサイホン排水システムの検査方法では、袋体の開口孔が弾性的に拡縮可能であり、自然状態における開口孔の内径が通気部における袋体の取付け箇所の外径よりも小さく設定されているので、留め具等を用いずに、袋体を通気部に取り付けることができる。また、Oリングにより、通気部と開口孔との間の空気漏れを防ぐことができる。
【0017】
第5の態様は、第4の態様に係るサイホン排水システムの検査方法において、前記袋体には、通常時は外側に突出し、前記負圧による前記袋体内の圧力低下時に凹む凸部が設けられている。
【0018】
このサイホン排水システムの検査方法では、袋体の凸部が、通常時は外側に突出している。この凸部は、サイホン力発生時に管内に生じる負圧による袋体内の圧力低下時に凹む。このため、サイホン力が発生しているか否かを、凸部の凹み具合等から、ある程度定量的に確認できる。
【0019】
第6の態様に係るサイホン排水システムの検査用部品は、弾性体を用いて構成され、サイホン排水システムの通気部への取付け状態において自立可能な袋体と、前記袋体のうち前記通気部に取り付けられる部分に設けられ、自然状態における内径が前記通気部における前記袋体の取付け箇所の外径よりも小さく設定され、弾性的に拡縮可能な開口孔と、前記袋体のうち前記開口孔を形成する部分に設けられ、前記通気部に対して密着するOリングと、を有する。
【0020】
このサイホン排水システムの検査用部品では、袋体の開口孔が弾性的に拡縮可能であり、自然状態における開口孔の内径が通気部における袋体の取付け箇所の外径よりも小さく設定されているので、留め具等を用いずに、袋体を通気部に取り付けることができる。また、Oリングにより、通気部と開口孔との間の空気漏れを防ぐことができる。
【0021】
この検査用部品をサイホン排水システムの通気部に取り付けることにより、排水時にサイホン力が発生しているか否かを水廻り器具の近傍で検査できる。
【0022】
第7の態様は、第6の態様に係るサイホン排水システムの検査用部品において、前記袋体には、通常時は外側に突出し、サイホン力発生時に管内に生じる負圧による前記袋体内の圧力低下時に凹む凸部が設けられている。
【0023】
このサイホン排水システムの検査用部品では、袋体の凸部が、通常時は外側に突出している。この凸部は、サイホン力発生時に管内に生じる負圧による袋体内の圧力低下時に凹む。このため、サイホン力が発生しているか否かを、凸部の凹み具合等から、ある程度定量的に確認できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るサイホン排水システムの検査方法によれば、排水時にサイホン力が発生しているか否かを水廻り器具の近傍で検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係るサイホン排水システムの概要を示す断面図である。
図2】排水トラップに通気弁が設けられ、検査用部品としての袋体が該通気弁に取り付けられた状態を示す断面図である。
図3】第2排水管に通気弁が設けられ、検査用部品としての袋体が該通気弁に取り付けられた状態を示す断面図である。
図4】横引き管に通気弁が設けられ、検査用部品としての袋体が該通気弁に取り付けられた状態を示す断面図である。
図5】排水トラップに通気管接続部が設けられ、検査用部品としての袋体が該通気管接続部に取り付けられた状態を示す断面図である。
図6】凸部が設けられた袋体が通気弁に取り付けられた状態を示す拡大断面図である。
図7】負圧センサが設けられた袋体が通気弁に取り付けられた状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本実施形態に係るサイホン排水システム10の全体構成を説明する。図1には、本実施形態に係るサイホン排水システム10の全体構成が概略図にて示されている。サイホン排水システム10は、サイホン力を利用して水廻り器具からの排水を効率よく排出する排水システムである。このサイホン排水システム10は、第1排水管31と、排水トラップ18と、第2排水管32と、横引き管21と、竪管22と、通気部としての通気弁24を有している。
【0027】
サイホン排水システム10は、例えば複数階で構成された集合住宅に用いられ、図1に示すように、排水を下方へ流す排水立て管12を備えている。この排水立て管12は、集合住宅の上下方向(縦方向)に延設され、集合住宅の各階の床スラブ14を貫いている。
【0028】
集合住宅の各階には、水廻り器具の一例としての台所シンク16が設けられている。この台所シンク16の底部には、排水部30が設けられている。排水部30は、台所シンク16の底部に設けられた排水口16Aに開口するように設置されている。台所シンク16からの排水は、排水口16Aを通じて排水部30へ流入するようになっている。
【0029】
第1排水管31は、台所シンク16の排水部30に接続されている。この第1排水管31は、排水部30から例えば略水平方向に延び、下方向に向けて延びている。換言すれば、第1排水管31は、略L字形に形成されている。排水トラップ18は、第1排水管31の下流側に接続されている。排水トラップ18は、例えばS字トラップである。第2排水管32は、排水トラップ18の下流側に接続されている。この第2排水管32は、上下方向に延設され、排水トラップ18の下流側端部から床スラブ14の上面近くまで下方に延びている。
【0030】
サイホン排水管23は、横引き管21及び竪管22を含んで構成されている。横引き管21は、第2排水管32の下流側に接続された管である。横引き管21は、床スラブ14上に無勾配で横方向に延設されている。横引き管21は、台所シンク16からの排水を略水平方向に排出するようになっている。
【0031】
竪管22は、横引き管21の下流側端部に接続され、鉛直下方に配置され、横引き管21からの排水を下方へ流す管である。竪管22は、排水立て管12に沿って、上下方向(縦方向)に延設されている。横引き管21から竪管22へ流入した排水等を下方へ落下させることによりサイホン力が発生する。竪管22の下流側端部と排水立て管12の間には、両者を連結する排水継手50が設けられている。排水継手50は、竪管22からの排水等を排水立て管12へ合流させる。サイホン排水管23における横引き管21の内径と竪管22の内径は、台所シンク16からの排水が満水の状態で流れ易くなるように、例えば20mmとされている。
【0032】
図1図2において、通気弁24は、横引き管21の上流側のうち、例えば排水トラップ18の封水溜まり28より下流側に設けられ、管内に外気(外部の空気)を取入れ可能な部材である。ここで、「横引き管の上流側」には、横引き管21の上流側の管体である排水トラップ18及び第2排水管32だけでなく、横引き管21自身の上流側端部も含まれる。図1図2においては、通気弁24は、排水トラップ18に設けられている。この通気弁24は、外気を管内(例えば第2排水管32内)へ通過させると共に、管内から外部へ排水及び空気を通過させないための部品である。換言すれば、通気弁24は、管内への外気の導入を可能にする一方向弁(吸気弁)である。図2に示されるように、通気弁24は、例えば排水トラップ18の上端から上方に延びる分岐管26に接続されている。
【0033】
なお、通気弁24の取付け位置は排水トラップ18に限られず、例えば図3に示されるように、第2排水管32の途中であってもよく、図4に示されるように、横引き管21の上流側端部付近であってもよい。何れの場合においても、通気弁24の取付け位置に応じて分岐管26が設けられる。
【0034】
図5に示される例では、排水トラップ18に、通気部の一例としての分岐管26及び通気管34が設けられている。分岐管26には通気管34の一端が接続されている。この通気管34は、分岐管26に対して着脱可能とされている。通気管34の他端(図示せず)は、例えば排水立て管12に通じている。
【0035】
(サイホン排水システムの検査方法)
図2において、本実施形態に係るサイホン排水システムの検査方法は、上記したサイホン排水システム10の検査方法であって、第1工程S1から第3工程S3を有している。
【0036】
第1工程S1は、通気弁24に、サイホン力発生時に管内に生じる負圧を検出可能な検査用部品としての袋体40を取り付ける工程である。この袋体40は、樹脂やゴム等の可撓性を用いて構成されている。袋体40のうち通気弁24に取り付けられる部分には、開口孔40Aが設けられている。開口孔40Aは、通気弁24を通過させることが可能な大きさに形成されている。また、袋体40における開口孔40Aの周囲には、紐や輪ゴム等の締付け部材42が取り付けられている。
【0037】
図2において、第1工程S1において、袋体40は、排水トラップ18に設けられた通気弁24に被せられる。このとき、通気弁24は、開口孔40Aを通じて袋体40の内側に入り、該袋体40により覆われる。図3に示される例では、袋体40が、第2排水管32の途中に設けられた通気弁24に被せられる。図4に示される例では、袋体40が、横引き管21の上流側端部に設けられた通気弁24に被せられる。図5に示される例では、通気管34が分岐管26から取り外され、該分岐管26に袋体40が被せられる。図2から図5において、締付け部材42により開口孔40Aを縮小させると、開口孔40Aの周囲が分岐管26に対して密着状態となる。
【0038】
図2において、第2工程S2は、横引き管21に排水を流入させる工程である。具体的には、排水が、台所シンク16から排水部30に流される。排水は、排水部30から第1排水管31、排水トラップ18及び第2排水管32を順に通過し、横引き管21に流入する(矢印A方向)。図1において、排水は横引き管21を通過し、竪管22に入る。このとき、管内が排水で満たされる所謂満流となることでサイホン力が発生し、横引き管21の内部の圧力が約30kPaの負圧となる。図2において、負圧が生じると通気管34から横引き管21に外気が導入される。外気を導入することにより、排水トラップ18の封水溜まり28に破封が生じることが抑制される。
【0039】
図2において、第3工程S3は、袋体40によりサイホン力発生の有無を確認する工程である。サイホン力発生による負圧の作用時には、袋体40内の空気が通気弁24から管内に導入されるため、袋体40の内部も負圧となり、該袋体40が収縮変形する。つまり、袋体40が変形した場合には、サイホン力が発生していると考えることができる。このように、サイホン力発生の有無を、袋体40の変形の有無により容易に確認できる。
【0040】
なお、袋体40における開口孔40Aの周囲は分岐管26に対して密着しているので、サイホン力発生時に袋体40と分岐管26との隙間から袋体40の内部に外気が吸い込まれて袋体40の収縮変形が阻害されることはない。
【0041】
(作用)
図2において、本実施形態に係るサイホン排水システムの検査方法では、第1工程S1において、通気弁24に、サイホン力発生時に管内に生じる負圧を検出可能な袋体40を取り付け、第2工程S2において、横引き管21に排水を流入させ、第3工程S3において、袋体40によりサイホン力発生の有無を確認する。通気弁24は横引き管21の上流側に設けられているので、該通気弁24に取り付けられる袋体40は、サイホン排水システム10において台所シンク16の近傍に位置する。このため、排水時にサイホン力が発生しているか否かを台所シンク16の近傍で検査できる。
【0042】
また、検査用部品が袋体40であるので、袋体40を通気弁24に取り付け易い。また、袋体40は、サイホン力発生時に管内に生じる負圧により変形するので、排水時の袋体40の状態を観察することにより、サイホン力が発生しているか否かを検査できる。
【0043】
(検査用部品の変形例1)
図6において、変形例1に係るサイホン排水システムの検査用部品41は、袋体44と、開口孔44Aと、Oリング46とを有している。袋体44は、ゴム等の弾性体を用いて構成され、サイホン排水システム10の例えば通気弁24への取付け状態において自立可能とされている。袋体44は、有底円筒形に形成され、底部を上方に向け、開口孔44Aを下方に向けた倒立状態で通気弁24に取り付けられるようになっている。袋体44の周壁44Bの少なくとも一部は、通気弁24への取付け状態において通気弁24の吸気口24Aから離間するように構成されている。これは、吸気口24Aが周壁44Bにより塞がれることを防ぐためである。図示の例では、周壁44Bの全周が、通気弁24の吸気口24Aから離間している。
【0044】
開口孔44Aは、袋体44のうち通気弁24に取り付けられる部分に設けられ、自然状態における内径が通気弁24における袋体44の取付け箇所の外径よりも小さく設定され、弾性的に拡縮可能とされている。Oリング46は、袋体44のうち開口孔44Aを形成する部分に設けられ、通気弁24に対して密着する部材である。このOリング46は、開口孔44Aの弾性的な収縮力と、Oリング46自身の弾性的な収縮力とにより、通気弁24のうち、吸気口24Aよりも下方の円筒部位に密着するようになっている。なお、Oリング46が密着する位置は、通気弁24に限られず、分岐管26であってもよい。つまり、吸気口24Aが袋体44の内部に位置する状態であればよい。
【0045】
袋体44における例えば底部には、通常時は外側に突出し、負圧による袋体44内の圧力低下時に凹む凸部44Cが設けられている。負圧は、サイホン力発生時に管内に生じる圧力である。凸部44Cは袋体44の底部以外に設けられていてもよいが、通気弁24への取付け時に上部に位置する底部に凸部44Cが設けられていた方が、袋体44の内圧のかかり具合が均等になる点で好ましい。
【0046】
この検査用部品41では、袋体44の開口孔44Aが弾性的に拡縮可能であり、自然状態における開口孔44Aの内径が通気弁24における袋体44の取付け箇所の外径よりも小さく設定されている。したがって、留め具等を用いずに、袋体44を通気弁24に取り付けることができる。また、Oリング46により、通気弁24と開口孔44Aとの間の空気漏れを防ぐことができる。また、袋体44としての袋体44が弾性体を用いて構成され、通気弁24への取付け状態において自立可能であるので、袋体44を通気弁24に取り付け易い。この袋体44を通気弁24に取り付けることにより、排水時にサイホン力が発生しているか否かを台所シンク16等の水廻り器具の近傍で検査できる。このため、排水時の袋体44の変形を観察し易い。
【0047】
更に、袋体44の凸部44Cが、通常時は外側に突出している。この凸部44Cは、サイホン力発生時に管内に生じる負圧による袋体44内の圧力低下時に凹む。具体的には、サイホン排水システム10の管内にサイホン力が発生すると、袋体44内の空気が通気弁24から管内に導入されるため、袋体44の内部も負圧となる。そうすると、凸部44Cが凹むように変形する。この凸部44Cの凹み具合等から、サイホン力が発生しているか否かを、ある程度定量的に確認することができる。つまり、ある一定以上のサイホン力が発生しているか否かを確認できるようにするために、凸部44Cの形状や大きさ、厚みを設定することができる。更に、ある一定以下の圧だと凸部44Cが凹まないように設定することもできる。
【0048】
なお、検査用部品51においては、少なくとも開口孔44Aの部位と、凸部44Cの部位がゴム等の弾性体で構成されていればよく、他の部位は硬質樹脂や金属等で構成されていてもよい。
【0049】
(検査用部品の変形例2)
図7において、変形例2に係るサイホン排水システムの検査用部品52は、変形例1(図6)における袋体44に、凸部44Cの代わりに負圧センサ54を設けたものである。負圧センサ54としては、電気的なセンサの他、笛等の音響部材であってもよい。笛は、サイホン力発生時に袋体44の内部に負圧が生じ、空気が袋体44の外部から内部へ吸い込まれるときの気流により鳴動するので、電気的な設備が不要である。負圧センサ54として電気的なセンサを用いる場合には、所定の負圧が生じたことを目視可能なランプやディスプレイ等の表示部を設けたり、所定の負圧が生じたことを音で知らせるブザー、チャイム、ベル、スピーカー等の音響部材を設けたりしてもよい。
【0050】
サイホン排水システム10の管内にサイホン力が発生すると、袋体44内の空気が通気弁24から管内に導入されるため、袋体44の内部も負圧となる。この検査用部品52では、この負圧の発生を負圧センサ54により検知することで、サイホン力が発生しているか否かを確認することができる。
【0051】
なお、検査用部品52においては、少なくとも開口孔44Aの部位がゴム等の弾性体で構成されていればよく、他の部位は硬質樹脂や金属等で構成されていてもよい。
【0052】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
12…排水立て管、16…台所シンク(水廻り器具)、21…横引き管、22…竪管、24…通気弁(通気部)、26…分岐管(通気部)、34…通気管(通気部)、40…袋体(検査用部品)、40A…開口孔、41…検査用部品、44…袋体、44A…開口孔、44C…凸部、46…Oリング、52…検査用部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7