(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】未燃ガス検出装置
(51)【国際特許分類】
F23N 5/08 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
F23N5/08 A
(21)【出願番号】P 2018195117
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503063168
【氏名又は名称】東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 毅
(72)【発明者】
【氏名】和▲崎▼ 謙一
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-101155(JP,A)
【文献】特開2000-018577(JP,A)
【文献】特開2018-132457(JP,A)
【文献】特開平08-292091(JP,A)
【文献】特開2013-036974(JP,A)
【文献】特開2016-176779(JP,A)
【文献】特開2015-105892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃焼装置における未燃ガス存在可能領域の壁面に設けられた検出光透過窓と、
上記検出光透過窓、および上記未燃ガス存在可能領域内を透過する検出光に基づいて、上記未燃ガス存在可能領域内の未燃ガスを検出する検出部と、
を有し、
上記検出部が、防爆エリア外に設けられ
るとともに、
上記検出光透過窓を介した検出光の強度に基づいて、上記検出光透過窓の汚れを検出することを特徴とする未燃ガス検出装置。
【請求項2】
請求項1の未燃ガス検出装置であって、
上記未燃ガス存在可能領域内に入射する検出光が透過する検出光透過窓と、上記未燃ガス存在可能領域内から出射する検出光が透過する検出光透過窓とが同一であることを特徴とする未燃ガス検出装置。
【請求項3】
請求項1および請求項2のうち何れか1項の未燃ガス検出装置であって、
上記検出部は、上記検出光透過窓を介する検出光の強度と、上記検出光透過窓を介さない検出光の強度との相違に基づいて、上記検出光透過窓の汚れを検出することを特徴とする未燃ガス検出装置。
【請求項4】
請求項3の未燃ガス検出装置であって、
上記検出光透過窓を介する検出光と、上記検出光透過窓を介さない検出光とは、同一の光源から出射した光の光路が切り替えられて生成されることを特徴とする未燃ガス検出装置。
【請求項5】
請求項1から
請求項4のうち何れか1項の未燃ガス検出装置であって、
複数の上記検出光透過窓が設けられ、
上記検出部は、上記複数の光検出光透過窓を介する検出光に基づいて、上記未燃ガス存在可能領域内の未燃ガスを検出することを特徴とする未燃ガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスボイラ等のガス燃焼装置において、燃焼室内や煙道内などの未燃ガスを検出する未燃ガス検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばバーナに燃焼用空気を供給する送風機を備えたガス給湯器において、点火時に爆発着火を防ぐために、燃焼開始前に送風機のみを作動させてプレパージを行うものが知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなプレパージは、例えば燃焼室および煙道の容量の5倍以上の空気を送り込むことなどが必要とされる。そのようなプレパージを行うと、そのために送風機を運転する電力の消費や点火までの時間を要するうえ、燃焼を一旦停止した後に再開する場合には燃焼室などに余熱が残っていても冷却されてしまうため、再度温度を上昇させるための燃焼が必要となり、効率の低下を招くことになる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、プレパージを行わなくても、未燃ガスの爆発着火等を防止できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
未燃ガス検出装置であって、
ガス燃焼装置における未燃ガス存在可能領域の壁面に設けられた検出光透過窓と、
上記検出光透過窓、および上記未燃ガス存在可能領域内を透過する検出光に基づいて、上記未燃ガス存在可能領域内の未燃ガスを検出する検出部と、
を有することを特徴とする。
【0007】
これにより、火炎の失火などによって未燃ガス存在可能領域内に未燃ガスが存在する場合に、その検知を検知部によって容易にできるとともに、上記のような検知部を未燃ガス存在可能領域から離れた、熱的影響や振動の影響等を受けにくい位置に設けることが容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プレパージを行わなくても、未燃ガスの爆発着火等を防止可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1のガスボイラの概略構成を示す模式図である。
【
図3】実施形態2の熱処理炉の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
実施形態1として、未燃ガス検出装置が、ガス燃焼装置であるガスボイラに適用される例を説明する。
【0012】
ガスボイラ100は、
図1に示すように、燃焼室101内に送風機102からの空気と、ガス供給管104からの燃料ガスとが供給され、ノズル103から噴出する燃料ガスの燃焼によって、図示しない流水配管内の水を加熱するようになっている。上記ガス供給管104には、安全性を高めるために2つのバルブ105が設けられている。また、燃焼室101内での燃焼によって発生した排気ガスは、煙道106を介して排出されるようになっている。
【0013】
上記ガスボイラ100には、例えば3カ所での未燃焼ガスの検出が行われるようになっている。具体的には、例えばガス供給管104におけるバルブ105の下流側、燃焼室101の炉壁、および煙道106(未燃ガス存在可能領域)に、それぞれ、耐熱ガラスから成る検出光透過窓122(未燃ガス検出装置の一部)が設けられている。また、上記検出光透過窓122から所定以上の距離だけ離れた位置に、検出光透過窓122の内部側に存在する未燃ガスを検出する検出部121(未燃ガス検出装置の一部)が設けられている。より詳しくは、検出部121は、例えば
図2に示すように、煙道106等の熱的影響範囲131よりも離れた位置に配置されている。また、熱的影響範囲131に限らず、燃焼によって振動が生じる場合には、その振動による影響が生じないか、または十分に小さい位置に検出部121が配置されるようにしてもよい。さらに、防爆エリア外に配置される場合には、検出部121を防爆仕様にしなくてもよいので、製造コストの低減等を図ることもできる。もっとも、検出部121を防爆仕様にしたり耐圧防爆装置内に設置したりして、防爆エリア内に配置可能にしてもよい。
【0014】
上記検出部121は、具体的には、例えばメタンガスによって強く吸収される波長が1.6μmの赤外線レーザ光を所定の周波数で変調して、検出光透過窓122を介して照射し、検出光透過窓122の内部側で反射して検出光透過窓122から出射する検出光の強度を検出することにより、メタンガスの有無(濃度)を検出するようになっている。ここで、検出光透過窓122の内部側には、特に検出光の反射板などを設けなくても、内部側で乱反射等した検出光が検出光透過窓122から出射して検出部121により受光できるようになっていればよい。また、例えば煙道106等の壁面における互いに対向する位置等に検出光透過窓122が設けられ、一方の検出光透過窓122から検出光を入射させて他方の検出光透過窓122から出射した検出光の強度を検出するようにしてもよい。すなわち、未燃ガスが存在する場合に、そこを検出光が通過して特定の波長の光に吸光が生じ得るようになっていればよい。
【0015】
上記のような検出部121が設けられていることによって、ガスボイラ100の運転開始前にバルブ105が閉じた状態で下流側に燃料ガスのリークが生じている場合や、ノズル103からの火炎が失火して燃焼室101内や煙道106に未燃ガスが存在する場合に、その検知を容易にできるので、運転の開始や継続を停止させたり、失火した火炎を再着火させたりすることが容易にできる。
【0016】
(実施形態2)
実施形態2として、未燃ガス検出装置が、ガス燃焼装置である蓄熱式ラジアントチューブバーナを設置する熱処理炉に適用される例を説明する。
【0017】
熱処理炉200は、
図3に示すように、炉壁201によって囲まれる炉内202に、耐熱鋼等から成るラジアントチューブ211が多数設けられている。ラジアントチューブ211の両端部には、ガス供給管213からバルブ214を介してノズル212に燃料ガスが供給されるとともに図示しない空気供給部から空気が供給され、ノズル212から噴出する燃料ガスを燃焼させバルブ216から個別煙道215を介して集合煙道217から排出させ、ラジアントチューブ211から発せられる輻射熱により、例えば炉内202に搬入された鋼板301の熱処理等を行うようになっている。より詳しくは、燃料ガスを供給する2つのバルブ214および排気ガスを排出する2つのバルブ216をそれぞれ交互に切り替えて、ラジアントチューブ211の両端部のノズル212から交互に噴出する燃焼ガスを燃焼させ、ラジアントチューブ211の両端部に設けられた図示しないセラミックボールなどの蓄熱体を交互に加熱し、ラジアントチューブ211から輻射熱を発生させるようになっている。
【0018】
上記熱処理炉200には、実施形態1と同様に、例えば各ラジアントチューブ211の個別煙道215(未燃ガス存在可能領域)ごとに検出光透過窓122が設けられ、上記検出光透過窓122から所定以上の距離だけ離れた位置に、検出光透過窓122の内部側に存在する未燃ガスを検出する検出部121が設けられている。また、集合煙道217(未燃ガス存在可能領域)にも、同様にノズル212および検出部121が設けられている。なお、各個別煙道215と集合煙道217との両方に検出光透過窓122および検出部121が設けられるのに限らず、何れか一方だけ設けられるようにしてもよい。
【0019】
上記のような熱処理炉200においても、実施形態1で説明したのと同様に、ノズル212からの火炎が失火して個別煙道215や集合煙道217に未燃ガスが存在する場合、特にバーナの温度が760℃以下でメタンガスが自然着火しないような場合などに、燃料ガスの供給を遮断して爆発着火を防止したりすることが容易にできる。しかも、オペレータが各ラジアントチューブ211ごとの燃焼状態を確認したりする必要もない。
【0020】
(変形例)
上記のような検出部121は、入射する検出光の強度によって燃料ガスの濃度等を検出するとともに、上記検出光の強度の時間的変化などに応じて検出光透過窓122の曇り等の汚れなどを検出し、必要に応じて清掃を促すようにしたりしてもよい。また、上記のように検出光透過窓122を介する検出光の強度と、検出光透過窓122を介さずに燃焼室101の外壁面等で反射される検出光の強度との相違に基づいて、検出光透過窓122の汚れなどを検出するようにしてもよい。上記のような検出光透過窓122を介する検出光と、検出光透過窓122を介さない検出光とは、同一の光源から出射した光をスキャンするなどして光路を切り替えることにより得られるようにしてもよいし、別個の光源を用いて得られるようにしてもよい。
【0021】
また、上記のような2種類の検出光の強度の差分を求めることによって、検出部121と検出光透過窓122との間に存在するガスの影響などをキャンセルすることもできる。
【0022】
また、検出部121と検出光透過窓122との間の検出光の光路を遮光筒で覆って、外乱光の影響等を排除するようにしてもよい。
【0023】
また、1つの検出部121で、検出光の出射方向を切り替える光路切替部を設けるなどして、複数の検出光透過窓122を介した検出をできるようにしてもよい。
【0024】
また、上記のような未燃ガス検出装置は、ガスボイラ100や熱処理炉200に限らず、ガスエンジン等に適用することもできる。すなわち、エンジンにおいて着火ミスを起こした場合には未燃ガスが排気中に混入することがあるが、そのような場合に、同様に排気ガス中の未燃ガスを検出することによって、ラプチャーディスクを用いたりすることなく、爆発燃焼によるエンジンの破損を防止することなどもできる。
【符号の説明】
【0025】
100 ガスボイラ
101 燃焼室
102 送風機
103 ノズル
104 ガス供給管
105 バルブ
106 煙道
121 検出部
122 検出光透過窓
131 熱的影響範囲
200 熱処理炉
201 炉壁
202 炉内
211 ラジアントチューブ
212 ノズル
213 ガス供給管
214 バルブ
215 個別煙道
216 バルブ
217 集合煙道
301 鋼板