(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】椅子の背凭れ、およびそれを備える椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/40 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A47C7/40
(21)【出願番号】P 2018195631
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】益永 浩
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-057641(JP,A)
【文献】国際公開第2010/044331(WO,A1)
【文献】特開2002-136388(JP,A)
【文献】実公昭42-019713(JP,Y1)
【文献】実開平01-071209(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/40-7/48
B60N 2/64
F16B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の背を支持する前面を有する背凭れ本体と、
前記背凭れ本体の後面側に配置され、前記背凭れ本体の前記後面に、前面を対向させた状態で取り付けられる化粧部材と、
少なくとも前記化粧部材の前記前面側に配置され、前記化粧部材と前記背凭れ本体とを接続する接続部材と、
前記背凭れ本体の前記前面を構成する面材と、を備え、
前記接続部材と前記背凭れ本体のうちのいずれか一方に設けられる係合部と、
前記接続部材と前記背凭れ本体のうちのいずれか他方に設けられる被係合部と、を有し、
前記接続部材は、前記係合部と前記被係合部とが互いに係合した状態で、前記面材の
後面側
と前記化粧部材の前記前面側との間の空間に露出する押圧部を有している、
椅子の背凭れ。
【請求項2】
前記接続部材は、前記化粧部材が取り外し可能に接合される接合部を有し、
前記接合部は、前記押圧部が前記背凭れ本体の前記前面側から前記
後面側に向かって押圧されることで前記化粧部材に向かって凸状に弾性変形する、請求項1に記載の椅子の背凭れ。
【請求項3】
前記接続部材は、平面視においてループ形状とされている、請求項1または2に記載の椅子の背凭れ。
【請求項4】
前記背凭れ本体は、前記面材および前記面材が架設される外周枠部材を有する
背受面構成部と、前記背受面構成部の後面を支持する背凭れ支持部材と、を備え、
前記背凭れ支持部材に前記被係合部が設けられている場合、
前記被係合部は、前記背凭れ支持部材のうち、前記面材の前記後面に対向する前面と、前記化粧部材に対向する後面と、に貫通するとともに、内側に前記接続部材を保持可能な貫通孔を少なくとも有している、
請求項1から3のいずれか一項に記載の椅子の背凭れ。
【請求項5】
前記背凭れ支持部材は、前記前面が前記面材の前記後面から離間
している、
請求項4に記載の椅子の背凭れ。
【請求項6】
前記貫通孔内に保持された前記押圧部の前面と、前記背凭れ支持部材の前記前面とが面一である、
請求項4または5に記載の椅子の背凭れ。
【請求項7】
前記面材がメッシュ部材からなる、
請求項1から6のいずれか一項に記載の椅子の背凭れ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の椅子の背凭れを備える、椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の背凭れ、およびそれを備える椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子の背凭れの背面側に、背凭れ本体の表面を覆う化粧部材を備えた構成が知られている。
このような椅子として、化粧部材(カバー)に形成された係合部(係止爪)が、背凭れ本体(背杆)の背面に形成された被係合部(係合孔)に係合することで、背凭れ本体に支持された構成が開示されている(例えば、特許文献1)。上記の構成を採用することによって、背凭れ本体に対する化粧部材の位置ずれや脱落が防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1における係止爪と係合孔との係合は、係止爪を、所謂嵌め殺しの状態にするため、適宜係合を解除することが困難である。このため、必要に応じてカバーを交換することが難しい。
そこで、化粧部材(カバー)を背凭れ本体(背杆)に対して良好に取り付けることができるとともに、互いの係合状態を容易に解除することができる構成が望まれている。
【0005】
本願発明は、上記の技術的課題に鑑みてなされたもので、化粧部材と背凭れ本体との係合状態を容易に解除することが可能で、必要に応じて化粧部材を適宜交換することのできる、椅子の背凭れ、およびそれを備えた椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の椅子の背凭れは、着座者の背を支持する前面を有する背凭れ本体と、
前記背凭れ本体の後面側に配置され、前記背凭れ本体の前記後面に、前面を対向させた状態で取り付けられる化粧部材と、少なくとも前記化粧部材の前記前面側に配置され、前記化粧部材と前記背凭れ本体とを接続する接続部材と、前記背凭れ本体の前記前面を構成する面材と、を備え、前記接続部材と前記背凭れ本体のうちのいずれか一方に設けられる係合部と、前記接続部材と前記背凭れ本体のうちのいずれか他方に設けられる被係合部と、を有し、前記接続部材は、前記係合部と前記被係合部とが互いに係合した状態で、前記面材の後面側と前記化粧部材の前記前面側との間の空間に露出する押圧部を有している。
【0007】
この構成によれば、接続部材の押圧部が、背凭れの前面を構成する面材の後面側の空間に露出しているので、背凭れ本体の前面側から接続部材の押圧部を押圧することで係合部と被係合部との係合状態を解除することができ、必要に応じて背凭れ本体から化粧部材を取り外すことが可能になる。また、接続部材の押圧部は面材によって隠されているため、背凭れ本体の前面側から押圧部への頻繁なアクセスを防ぐことができ、係合部と被係合部との係合解除が妄りに行われるのを防ぐことができる。
【0008】
本発明の一態様の椅子の背凭れは、前記接続部材は、前記化粧部材の前記前面が接合される接合部を有し、前記接合部は、前記押圧部が前記背凭れ本体の前記前面側から前記後面に向かって押圧されることで、前記化粧部材に向かって凸状に弾性変形する、構成としてもよい。
【0009】
この構成によれば、接合部が凸状に弾性変形することで、化粧部材を背凭れ本体から離れる方向へ押し出すことができる。これにより、化粧部材と背凭れ本体との間の隙間が大きくなり、背凭れ本体から化粧部材を取り外しやすくなる。
【0010】
本発明の一態様の椅子の背凭れにおいて、前記接続部材は、平面視においてループ形状とされている構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、前面側からの押圧によって接続部材が弾性変形し易い。したがって、より容易に接合部が凸状に弾性変形して化粧部材を背凭れ本体から離れる方向へ押し出すことができ、化粧部材を簡単に取り外すことができる。
【0012】
本発明の一態様の椅子の背凭れにおいて、前記背凭れ本体は、前記面材および前記面材が架設される外周枠部材を有する背受面構成部と、前記背受面構成部の後面を支持する背凭れ支持部材と、を備え、前記背凭れ支持部材に前記被係合部が設けられている場合、前記被係合部は、前記背凭れ支持部材のうち、前記面材の前記後面に対向する前面と、前記化粧部材に対向する後面と、に貫通するとともに、内側に前記接続部材を保持可能な貫通孔を少なくとも有している、構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、被係合孔内に前記接続部材が保持されることで押圧部以外の部分を背凭れ支持部材内に隠すことができ、背凭れの外観体裁を良好にすることができる。
【0014】
本発明の一態様の椅子の背凭れにおいて、前記背凭れ支持部材は、前記前面が前記面材の前記後面から離間している構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、背受面構成部の面材の後面と、背凭れ支持部材の前面との間に手を挿し入れて、押圧部を押圧することができる。これにより、化粧部材を簡単に背凭れ本体(背凭れ支持部材)から取り外すことができる。
【0016】
本発明の一態様の椅子の背凭れにおいて、前記貫通孔内に保持された前記押圧部の前面と、前記背凭れ支持部材の前記前面とが面一である構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、接続部材が被係合孔内に入り込んでいないので、背凭れ支持部材の前面から押圧部の前面を押圧しやすい。
【0018】
本発明の一態様の椅子の背凭れにおいて、前記面材がメッシュ部材からなる構成としてもよい。
【0019】
この構成によれば、メッシュ部材からなる面材により、押圧部の位置を隠しつつ、よく見ればその位置を確認しやすい。これにより、通常の使用時には背凭れの外観体裁を損なうことがなく、化粧部材を取り外す際には押圧部の位置を確認しやすいため作業を行いやすい。
【0020】
本発明の一態様における椅子は、上記の椅子の背凭れを備える。
【0021】
この構成によれば、必要に応じて化粧部材を交換することのできる背凭れを備えているため、用途に応じて椅子の外観デザインの変更を容易に行える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、化粧部材と背凭れ本体との係合状態を容易に解除することができ、必要に応じて化粧部材を適宜交換することのできる、椅子の背凭れ、およびそれを備えた椅子を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態の一態様における椅子の構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の一態様における椅子の構成を示す背面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の一態様における椅子の背凭れの構成を示す側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の一態様における背凭れ支持部材の周囲の構成を部分的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態の一態様における背凭れ支持部材の構成を部分的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態の一態様における化粧部材が接続部材を介して背凭れ支持部材に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態の一態様における接続部材の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態の一態様における接続部材の構成を示す側面図である。
【
図9】
図9は、変形例としての接続部材の構成を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、変形例としての接続部材の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明における背凭れおよびそれを備えた椅子を実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。なお、以下の各図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0025】
以下の説明において、椅子の背凭れに背中を向けて正規姿勢で着座した人の正面を向く向きを「前」と呼び、それと逆側の向きを「後」と呼ぶものとする。また、椅子に正規姿勢で着座した人の上方を向く向きを「上」、それと逆側の向きを「下」と呼び、椅子に正規姿勢で着座した人の左方を「左」、右方を「右」と呼ぶこととする。また、椅子の左右方向を「幅方向」と呼ぶ。
【0026】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、「X方向」は、
図1に示す椅子の「幅方向」と平行な方向とする。「Z方向」は、X方向と直交する方向であって
図1の「上下方向」とする。「Y方向」は、X方向とZ方向との両方と直交する「前後方向」とする。
【0027】
図1は、実施形態の一態様における椅子の構成を示す正面図である。
図2は、実施形態の一態様における椅子の構成を示す背面図である。
図3は、実施形態の一態様における椅子の背凭れの構成を示す側面図である。
図4は、実施形態の一態様における背凭れ支持部材の周囲の構成を部分的に示す斜視図である。
図5は、実施形態の一態様における背凭れ支持部材の構成を部分的に示す斜視図である。
図6は、実施形態の一態様における化粧部材が接続部材を介して背凭れ支持部材に取り付けられた状態を示す斜視図である。
図7は、実施形態の一態様における接続部材の構成を示す斜視図である。
図8は、実施形態の一態様における接続部材の構成を示す側面図である。
図9は、変形例としての接続部材の構成を示す斜視図である。
図10は、変形例としての接続部材の動作を示す図である。
【0028】
図1および
図2に示すように、本実施形態の椅子1は、床面上に載置される脚部2と、脚部2の上端に設置されるボックス状の支基3と、着座者が着座する座体4と、支基3の上面に取り付けられ座体4を支持する座受部材5と、支基3から後部上方側に延出して座体4に着座した着座者の背中を支持する背凭れ6と、を備えている。
【0029】
脚部2は、キャスタ7a付きの多岐脚7と、多岐脚7の中央部より起立し、昇降機構であるガススプリングを内蔵する脚柱8と、を備えている。
【0030】
支基3は、脚柱8の上端部に取り付けられている。支基3には、脚柱8の昇降調整機構と背凭れ6の傾動調整機構が内蔵されている。
【0031】
座体4は、
図1に示すように、骨格部を成す座体外周枠本体部13と、座体外周枠本体部13に張設された座体用面材14と、を備えている。
【0032】
座体外周枠本体部13は、例えば合成樹脂によって形成され、上面視では四隅が丸みを帯びた略長方形状とされている。座体外周枠本体部13の外周縁部には、座体外周枠本体部13の内方に向かって凹む溝13mが周方向に連続して形成されている。
【0033】
座体用面材14は、多数の孔が形成されたメッシュ部材からなり、外周端部に縁材(不図示)が設けられている。そして、座体用面材14は、その外周端部が、座体外周枠本体部13に形成された溝13mに巻き込まれ、溝13m内に挿入される縁材によって座体外周枠本体部13に固定されている。
【0034】
背凭れ6は、座体4に着座した着座者の背中からの荷重を支持する。背凭れ6は、その一部が支基3内の傾動調整機構に連結されている。また、支基3には、傾動調整機構を操作するための操作ノブ12が設けられており、この操作ノブ12を着座者が操作することで、背凭れ6を前後方向(Y方向)に傾動させるときの反力を調整することができる。
【0035】
以下、本実施形態における背凭れ6の具体的な構成について説明する。
背凭れ6は、
図3および
図5に示すように、背凭れ本体20および化粧部材23と、背凭れ支持部材22、取付部材24、および接続部材30を備えている。
【0036】
[背凭れ本体]
背凭れ本体20は、背受面構成部21と背凭れ支持部材22とを備えている。
【0037】
(背受面構成部21)
背受面構成部21は、
図1および
図2に示すように、背凭れ外周枠部材(外周枠部材)28と、背凭れ外周枠部材28に張設された背凭れ用面材(面材)29と、を有している。
【0038】
背凭れ外周枠部材28は、幅方向(X方向)に離間した一対の縦杆28a,28aと、上杆28bと、下杆28cと、を備えている。背凭れ外周枠部材28は、これら縦杆28a,28a、上杆28b、下杆28cにより、
図1および
図2に示したような環状の枠形状とされている。背凭れ外周枠部材28は、例えば、樹脂、アルミ合金等により作製される。背凭れ外周枠部材28の外周縁部には、背凭れ外周枠部材28の内方に向かって凹む溝28m(
図3)が周方向に連続して形成されている。
【0039】
背凭れ用面材29は、
図1および
図2に示すように、多数の孔が形成されたメッシュ状であり、外周端部(不図示)に縁材(不図示)が設けられている。そして、背凭れ用面材29は、その外周端部(不図示)が、
図3に示す背凭れ外周枠部材28に形成された溝28mに巻き込まれ、溝28m内に挿入される縁材(不図示)によって背凭れ外周枠部材28に固定されている。座体4に着座した着座者の背中は、背凭れ本体20の前面20a(
図1)を構成する背凭れ用面材29に接触する。背凭れ外周枠部材28に布状の背凭れ用面材29を帳設することにより、着座者の背中を適度な弾力で支持することができる。
【0040】
(背受面構成部)
図3および
図4に示すように、背受面構成部21の後面21b側には背凭れ支持部材22が配置されている。背凭れ支持部材22は、上述した背受面構成部21を支持する。背受面構成部21は、複数の締結具を介して背凭れ支持部材22に固定されている。締結具は、例えば、留めネジとこれに螺合するナットとにより構成され、背凭れ支持部材22と背凭れ外周枠部材28とを締結する。留めネジは、
図4に示した背凭れ外周枠部材28の縦杆28aに形成された複数の固定孔28gと、
図5に示した背凭れ支持部材22に形成された穴部22gとに挿入される。なお、背受面構成部21と背凭れ支持部材22の取付け手段は、上述した締結具に限定されるものではない。背凭れ外周枠部材28には、
図4に示すように、固定孔28gを隠すようにしてカバー部材15が設けられている。
【0041】
また、背凭れ支持部材22は、座体4も支持する。背凭れ支持部材22と座体4との取付け手段についての具体的な説明は省略するが、例えば、上述したような締結具を採用してもよい。
【0042】
背凭れ支持部材22は、
図2に示すように、背凭れ外周枠部材28の外形の一部に倣う形状とされている。背凭れ支持部材22は、
図2および
図3に示すように、一対の側部22Aと、第1連結部22Bと、第2連結部22Cと、一対の延出部22Dと、を有している。なお、
図3においては、一方の側部22A、延出部22Dの図示を省略している。
【0043】
図2に示す背凭れ支持部材22のうち、幅方向(X方向)に間隔をおいて存在する一対の側部22A,22Aが、背凭れ外周枠部材28の縦杆28a、28aにそれぞれ対向する。背凭れ支持部材22は、上下方向(Z方向)に延在する一対の側部22A,22Aと、これら側部22A,22Aの上端側を連結する第1連結部22B(
図3)と、下端側を連結する第2連結部22C(
図2および
図3)とによって、その一部が、
図2に示すように環状に形成されている。背凭れ支持部材22の開口22eからは、背受面構成部21の背凭れ用面材29が露出する。
【0044】
また、背凭れ支持部材22は、
図3および
図4に示すように、一対の側部22Aがその延在方向の所定の位置において屈曲されており、上記第2連結部22Cと一対の延出部22Dとが、
図1および
図2に示した座体4の下面側と対向する。
【0045】
背凭れ支持部材22には、
図4および
図5に示すように、後述する接続部材30を係合した状態で保持する被係合孔(貫通孔)27が形成されている。被係合孔27は、背凭れ支持部材22の第1連結部22Bの延在方向の略中央に位置し、前面22aから後面22bにかけて厚さ方向に貫通する孔である。被係合孔27の内側には、
図6に示すように、背凭れ支持部材22の幅方向(X方向)の内側に向かって突出する一対の被係合部27A,27Aが設けられている。
【0046】
一対の被係合部27A,27Aは、被係合孔27内に挿入された接続部材30の一部が係合する部分である。被係合部27Aは、幅方向(X方向)の厚さよりも、接続部材30との係合方向(Y方向)の厚さを大として、その剛性が高められている。
【0047】
また、被係合部27Aは、背凭れ支持部材22の前面22a側に向かう被係合面27Vを有している。被係合面27Vは、前面22aに対して斜めに傾斜しており、幅方向(X方向)において被係合部27Aの基端側より先端側の方が太くなっている。
【0048】
(接続部材)
接続部材30は、
図6に示すように、背凭れ支持部材22の後面22b側から被係合孔27内に挿入されて保持される。接続部材30は、
図7に示すように、互いに離間した一対の側部31,31と、側部31,31の一端側どうしを接続する押圧部32と、側部31,31の他端側どうしを接続する接合部33と、押圧部32の延在方向両側に設けられた一対の係合部34,34と、を有している。接続部材30は、一対の側部31,31と押圧部32と接合部33とによって形成される開口35を有している。本実施形態の接続部材30は、Z方向からの平面視において矩形のループ形状をなしており、弾性変形が可能である。
【0049】
一対の係合部34,34は、背凭れ支持部材22の被係合部27A(
図6)に係合する部分である。係合部34,34は、
図7に示すように、側部31,31よりも幅方向(X方向)の外側に位置するとともに互いに相反する方向に突出し、幅方向(X方向)の厚さよりも背凭れ支持部材22との係合方向(Y方向)の厚さを大として、係合方向(Y方向)における剛性が高められている。
【0050】
係合部34は、接合部33の内面33aに対向する係合面34Vを有している。係合面34Vは、
図6に示すように、接続部材30が被係合孔27内に挿入された状態で、背凭れ6の前後方向(Y方向)で被係合部27Aの被係合面27Vに対向し、被係合面27Vと接触して係合する。これにより、背凭れ支持部材22に対する接続部材30の挿入方向(+Y方向)とは逆の離脱方向(-Y方向)への移動が規制されている。
【0051】
本実施形態において、接続部材30の係合面34Vおよび背凭れ支持部材22の被係合面27Vは、互いの係合方向(Y方向)および上下方向(Z方向)に対してそれぞれ傾斜した状態で密接に接して係合している。
【0052】
具体的に、接続部材30の係合面34Vは、
図6および
図7に示すようにZ方向からの平面視において側部31側に向かって傾いており、これとは逆の傾斜をなす背凭れ支持部材22の被係合面27Vと面接触している。
これにより、接続部材30の係合面34Vが、背凭れ支持部材22の被係合面27Vに対して引っかかるように係合することとなり、接続部材30の離脱方向(-Y方向)への移動がより規制されている。
【0053】
また、接続部材30の係合面34Vは、
図8に示すように+X方向からの側面視において接続部材30の下面30d側に向かってさらに傾いている。背凭れ支持部材22の被係合面27Vもさらに上方に向かって傾いており、これらが互いに係合することで、幅方向(X方向)および上下方向(Z方向)への接続部材30のがたつきが規制されている。
【0054】
接続部材30の押圧部32は、
図3および
図5に示すように、接続部材30が背凭れ支持部材22の被係合孔27に係合保持され状態で、背凭れ支持部材22の前面22aと背凭れ用面材29の後面29bとの間の空間Kに露出している。
図4および
図6に示すように、押圧部32の前面32aは、背凭れ支持部材22の前面22aと面一になることが好ましい。接続部材30の前面32aが背凭れ支持部材22の前面22aよりも奥(後方:-Y方向)側へ入り込んでいないので、背凭れ支持部材22の前面22a側から押圧部32の前面32aを押圧しやすい。
【0055】
また、接続部材30と被係合孔27との係合方向(Y方向)において、押圧部32の厚さTは、接続部材30の他の部位の厚さよりも薄い。つまり、押圧部32は、接続部材30のうち最も薄い厚さで形成されており、係合方向(Y方向)へ弾性変形し易い厚さとなっている。
【0056】
接合部33は、接続部材30が背凭れ支持部材22の被係合孔27に係合保持された状態で、背凭れ支持部材22の後面22bに露出している。接合部33の後面33bには、化粧部材23を接続するための接合部材36が設けられている。接合部材36としては、両面接着テープあるいは面ファスナーなどが挙げられる。
【0057】
接合部33の後面33bは、その面積が広ければ接合部材36を設ける面積が増すため、化粧部材23との接合力を確保するうえで有利である。また、接合部33の後面33bは、化粧部材23の連結部23Bの湾曲形状に合わせた湾曲面であることが好ましい。これにより、接続部材30の後面33bと化粧部材23の前面23aとが互いに面接触し、隙間なく接合されることで接合力が高められる。
【0058】
接続部材30は、化粧部材23が背凭れ支持部材22に取り付けられる前に被係合孔27内に挿入されていることが好ましい。
【0059】
(取付部材)
本実施形態では、背凭れ支持部材22の後面22bと、化粧部材23の前面23a(
図4)との間に、
図5に示した取付部材24が2つ配置されている。取付部材24は、化粧部材23と背凭れ支持部材22との間のうち、化粧部材23の側部23A,23Aおよび背凭れ支持部材22の側部22A,22Aとそれぞれ対向する位置に配置されている。
【0060】
取付部材24は、
図5に示すように、矩形状の平面部24Aと、一対の第1の係合凸部(係合部)16A,16Aと、一対の第2の係合凸部(係合部)16B,16Bとを有している。
【0061】
取付部材24は、
図5に示すように、背凭れ支持部材22の後面22bに、前面24c(
図6)を対向させた状態で取り付けられている。
図5に示すように、背凭れ支持部材22には、上述した取付部材24の第1の係合凸部16A,16Aおよび第2の係合凸部16B,16Bに対応する第1の係合凹部22J,22J(被係合部)および第2の係合凹部22K,22K(被係合部)が形成されており、取付部材24のうち、第1の係合凸部16A,16Aが、背凭れ支持部材22の第1の係合凹部22J,22Jに挿入されて係合し、第2の係合凸部16B,16Bが、背凭れ支持部材22の第2の係合凹部22K,22Kに挿入されて係合している。
【0062】
(化粧部材)
化粧部材23は、
図3および
図4に示すように、背凭れ本体20の後面20b(
図2)側に配置され、後面20bに前面23aを対向させた状態で背凭れ本体20に設けられている。具体的に、化粧部材23は、背凭れ支持部材22に対してその後面22b(
図5)の一部を覆うようにして取り付けられている。
【0063】
化粧部材23は、
図2に示すように、一対の側部23A,23Aと、連結部23Bと、を有している。幅方向(X方向)に離間した一対の側部23A,23Aは、それぞれ上下方向(Z方向)に延在し、上端部どうしが幅方向(X方向)に延在する連結部23Bによって連結されている。化粧部材23は、これら一対の側部23A、23Aと連結部23Bとによって、下方に開放された形状を有する。化粧部材23の一対の側部23A,23Aおよび連結部23Bは、背凭れ支持部材22の一対の側部22A,22Aおよび第1連結部22Bにそれぞれ対向する。
【0064】
化粧部材23は、背凭れ支持部材22の後面22b(
図5)のうち、少なくとも肉抜き部22fが形成された領域を隠すように取り付けられるため、化粧部材23は、椅子1を背面側から見たときに、化粧部材23から、背凭れ支持部材22の上記肉抜き部22fがはみ出して見えることのない大きさを有していることが好ましい。
【0065】
化粧部材23は、
図3および
図4に示すように、各側部23A(23A)の下端側が、背凭れ支持部材22の側部22Aの屈曲形状に倣ってそれぞれ湾曲している。このため、化粧部材23を背凭れ支持部材22に取り付けた状態において、化粧部材23の一対の側部23A,23Aが背凭れ支持部材22の側部22A,22Aの下側に入り込む。これにより、化粧部材23によって、背凭れ支持部材22の後面22bを全体的にカバーすることができるため、椅子1の背面側の見栄えをよくすることができる。
【0066】
このような化粧部材23は、
図2および
図5に示すように、背凭れ支持部材22の幅方向両側に設けられた一対の取付部材24,24を介して背凭れ支持部材22に取り付けられている。化粧部材23は、一対の取付部材24,24の各後面24d,24d側のそれぞれに、前面23a(
図4)を対向させた状態で、両面接着テープあるいは面ファスナーなどの接合手段25を用いて各取付部材24に取り付けられている。このようにして、化粧部材23の幅方向両側の側部23A,23Aが、取付部材24,24を介して背凭れ支持部材22に接続されている。
【0067】
また、本実施形態の化粧部材23は、幅方向(X方向)に延在する連結部23Bの中央部分が、接続部材30を介して背凭れ支持部材22の第1連結部22Bに接続されている。化粧部材23は、接合部33の後面33bに設けられた接合部材36(
図5)を介して、接続部材30に貼り合わされている。このようにして、化粧部材23の幅方向中央部分が接続部材30を介して背凭れ支持部材22に接続されている。
【0068】
本実施形態の化粧部材23は、背凭れ支持部材22に取り付けられた取付部材24および接続部材30に対して、取り外し可能に取り付けられている。つまり、化粧部材23は、取付部材24および接続部材30を介して背凭れ支持部材22に取り外し可能に取り付けられている。このように、背凭れ支持部材22に対する化粧部材23の取り外しが自在な構成とすることで、化粧部材23の付け替えが適宜可能になっている。
【0069】
背凭れ支持部材22から化粧部材23を取り外す際は、背凭れ支持部材22に係合している接続部材30を、背凭れ支持部材22から押し出すように押圧する。具体的には、接続部材30のうち、背凭れ支持部材22の前面22aに露出した押圧部32の中央付近を、背凭れ6の後方へ向かって、つまり接続部材30の離脱方向(-Y方向)へ向けて押圧する。
【0070】
これにより、押圧部32が後方(-Y方向)へ凸状に弾性変形し、この弾性変形に伴って幅方向両側の係合部34,34が前方(+Y方向)へ開いて、係合部34と被係合部27Aとの係合状態が解除され、離脱方向(-Y方向)への接続部材30の移動が可能になる。また、押圧部32の変形に伴って接合部33が背凭れ6の後方へ向かって凸状に弾性変形することで、接合部33の後面33bに接続されていた化粧部材23が、背凭れ支持部材22から離れる方向(-Y方向)へ押し出される。
【0071】
これにより、背凭れ支持部材22の後面22bと化粧部材23の前面23aとの間の隙間10(
図6)が広がり、この広がった隙間に作業者が指や工具を入れるなどして、背凭れ支持部材22(一対の取付部材24,24)から化粧部材23を取り外す。この際、化粧部材23と一緒に接続部材30も背凭れ支持部材22から取り外してもいいし、接続部材30を背凭れ支持部材22内に保持させたまま、化粧部材23だけを背凭れ支持部材22から取り外してもよい。
【0072】
このように、化粧部材23を取り換えることにより、椅子1の外観を簡単に変えることができる。椅子1の外観は、化粧部材23のデザインによって印象が変わってくるため、必要に応じてデザインの異なる化粧部材23に付け替えることによって、さまざまな用途に応じて最適なデザインを選択することができる。このように、外観デザインのアレンジが可能でデザイン性の高い背凭れ6を備えることにより、着座者の要望に応じて幅広い用途に適した椅子1を提供することができる。
【0073】
本実施形態では、化粧部材23が一対の取付部材24,24を介して背凭れ支持部材22に取り付けられた状態において、化粧部材23の中央部分が接続部材30を介して背凭れ支持部材22と接続されている。このため、接続部材30によって化粧部材23の中央部分の浮きを防ぐことが可能である。
【0074】
また、本実施形態では、接続部材30の押圧部32が、背凭れ支持部材22の前面22aと背凭れ用面材29との間の空間に露出しているため、化粧部材23を取り外す際には、背凭れ支持部材22の前面22a側から接続部材30の押圧部32を押圧して接合部33を弾性変形させることによって、化粧部材23を背凭れ支持部材22から容易に取り外すことができる。本実施形態における接続部材30は、平面視においてループ形状をなしているため、押圧方向へ弾性変形し易い。
【0075】
上述したように、接続部材30の接合部33を凸状に弾性変形させることで、当該接合部33に接合された化粧部材23を背凭れ支持部材22から離れる方向へ押し出すことができ、化粧部材23と背凭れ支持部材22との間の隙間10を広げることができる。これにより、背凭れ支持部材22からの化粧部材23の取り外しを容易に行うことが可能となる。
【0076】
また、押圧部32をさらに押圧することで、背凭れ支持部材22の被係合部27Aと接続部材30の係合部34との係合状態が完全に解除されて、接続部材30の後方(-Y方向)への移動が可能になり、化粧部材23とともに、接続部材30を取り外すことができる。化粧部材23の取り換えとともに、接続部材30と化粧部材23とを接合させる接合部材36を新しいものに取り換えることができる。これにより、化粧部材23を取り換えた後も、接合部材36の接合力を維持することができる。
【0077】
また、接続部材30は、背凭れ支持部材22に取り付けられた状態で、係合面34V,27Vどうしの係合により後方(離脱方向:-Y方向)への移動が規制されているが、前方(+Y方向)へはわずかに移動可能である。接続部材30の前方への大きな移動は、接合部33の後面33bに接合された化粧部材23が、背凭れ支持部材22の後面22bに当接することによって規制される。このように、接続部材30に対する、化粧部材23の前方への移動規制を緩くしておくことにより、接続部材30における寸法誤差が緩和され、背凭れ支持部材22に対する化粧部材23の取り付け間隔を取付部材24,24において規制することが可能になる。
【0078】
また、背凭れ用面材29がメッシュ部材からなるため、接続部材30の露出部分(押圧部32)を隠しつつ、よく見ればその露出部分を確認することができる。そのため、作業者が化粧部材23を取り外す際に接続部材30の位置を確認しやすく、作業しやすい。
【0079】
また、通常の椅子1の使用時には、接続部材30の露出部分を背凭れ用面材29によって隠すことができるため、押圧部32への頻繁なアクセスを防ぐことができ、係合部34と被係合部27Aとの係合状態が妄りに行われるのを防ぐことができる。
【0080】
また、押圧部32を背凭れ用面材29によって隠す構成とすることで、押圧部32が外部から見えにくくなって椅子1の外観が損なわれるのを防ぐことができる。
【0081】
また、背凭れ支持部材22に設けた被係合孔27内に接続部材30を挿入して係合状態で保持することで、押圧部32および接合部33以外の部分を背凭れ支持部材22に隠すことができ、背凭れ支持部材22の外観体裁を良好にすることができる。
【0082】
本実施形態の背凭れ支持部材22は、第1連結部22Bが後方(-Y方向)へ凸状に湾曲しており、第1連結部22Bの前面22aが背凭れ用面材29から離間する形状とされている。そのため、背凭れ支持部材22の前面22aと背凭れ用面材29との間の空間に手を挿し入れて、接続部材30の押圧部32を押圧することができる。これにより、背凭れ6を分解することなく、化粧部材23のみを容易に取り外すことができる。
【0083】
また、着座者が椅子1に着座した際に、背凭れ用面材29を介して背凭れ支持部材22や前面22aに露出する接続部材30に着座者の背中が当たってしまうようなことがなく、座り心地のよい椅子1となる。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、背凭れ用面材29は、上述したメッシュ状の部材に限られず、例えば表皮材により被覆されたクッション等でもよい。
【0085】
例えば、接続部材30の形状は、上述した形状に限らない。また、接続部材30および背凭れ支持部材22のいずれか一方に係合部を有するとともに他方に被係合部を有した構成であれば、これらの係合構造も上述した構造に限られず、一方を凸部、他方を孔部としてもよい。
【0086】
接続部材30の他の形状としては、例えば、
図9に示すように、押圧部32の中央にスリット37が設けられていてもよい。スリット37は、押圧部32の上下方向(Z方向)および厚さ方向(Y方向)に貫通している。幅方向(X方向)におけるスリット37の幅Wは、
図10に示すように、押圧部32を押圧した際に、作業者の指がスリット37をすり抜けて開口35の内側にまで入り込まない幅であるとともに、押圧をやめたときにスリット37に指の一部が挟まれることのない幅であることが好ましい。
この構成によれば、押圧部32が押圧方向へ変形し易くなり、背凭れ支持部材22に対する係合をより簡単に解除することができる。
【符号の説明】
【0087】
1…椅子、10…隙間、16A…第1の係合凸部(係合部)、16B…第2の係合凸部(係合部)、18…補助係止手段、20…背凭れ本体、20a…背凭れ本体の前面、20b…背凭れ本体の後面、21…背受面構成部、21b…背受面構成部の後面、22…背凭れ支持部材、22a…背凭れ支持部材の前面、22b…背凭れ支持部材の後面、22A…背凭れ支持部材の側部、22J…第1の係合凹部(第1の被係合部)、22K…第2の係合凹部(第2の被係合部)、23…化粧部材、23A…側部、23B…連結部、23a…化粧部材の前面、23b…化粧部材の後面、23d…外周縁部、24…取付部材、24d…取付部材の後面、26…隙間形成部材、27…被係合孔(貫通孔)、27A…被係合部、28…背凭れ外周枠部材(外周枠部材)、29…背凭れ用面材(面材)、29b…背凭れ用面材の後面、30…接続部材、32…押圧部、32a…押圧部の前面、33…接合部、33b…後面、34…係合部、K…空間、T…厚さ