IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルパイン株式会社の特許一覧

特許7154936経路関連情報提供装置および経路関連情報提供方法
<>
  • 特許-経路関連情報提供装置および経路関連情報提供方法 図1
  • 特許-経路関連情報提供装置および経路関連情報提供方法 図2
  • 特許-経路関連情報提供装置および経路関連情報提供方法 図3
  • 特許-経路関連情報提供装置および経路関連情報提供方法 図4
  • 特許-経路関連情報提供装置および経路関連情報提供方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】経路関連情報提供装置および経路関連情報提供方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20221011BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20221011BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G01C21/36
G09B29/00 A
G09B29/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018197206
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020064020
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 雅浩
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/067811(WO,A1)
【文献】特開2010-156573(JP,A)
【文献】特開2011-089821(JP,A)
【文献】特開2010-101745(JP,A)
【文献】特開2012-145432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/36
G09B 29/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置および進行方向を検出する自車状態検出部と、
地図データおよび前記自車状態検出部の検出結果に基づいて、地図上で前記車両の現在位置を基点として進行方向とは逆方向側の方面を除く方面に複数の仮目的地を設定する仮目的地設定部と、
前記仮目的地設定部により設定された前記仮目的地のそれぞれについて、前記自車状態検出部により検出された前記車両の現在位置から前記仮目的地に至る燃費の良い経路を探索する良燃費経路探索部と、
前記良燃費経路探索部により検索された経路のそれぞれを、前記地図データに基づく地図上に表示する表示制御部とを備え、
前記仮目的地設定部は、前記車両の現在位置を配置した地図画面において、地図画面に表示された地図上の領域の外側であって、当該領域から一定範囲内の領域に所定のルールに従って前記仮目的地を設定する
ことを特徴とする経路関連情報提供装置。
【請求項2】
前記仮目的地設定部は、前記地図データおよび前記自車状態検出部の検出結果に基づいて前記車両による交差点の通過を検出し、前記車両による交差点の通過に応じて前記仮目的地を設定する処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の経路関連情報提供装置。
【請求項3】
前記仮目的地設定部は、前記車両の進行方向側、進行方向に対して右側、および、進行方向に対して左側に位置する地点をそれぞれ前記仮目的地として設定することを特徴とする請求項1または2に記載の経路関連情報提供装置。
【請求項4】
前記仮目的地設定部は、更に、前記車両の進行方向側に設定された前記仮目的地と進行方向に対して右側に設定された前記仮目的地との間に位置する地点、および、前記車両の進行方向側に設定された前記仮目的地と進行方向に対して左側に設定された前記仮目的地との間に位置する地点をそれぞれ前記仮目的地として設定することを特徴とする請求項3に記載の経路関連情報提供装置。
【請求項5】
前記車両は電力を回生可能な自動車であり、
前記良燃費経路探索部は、電力の回生を考慮して経路を探索することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の経路関連情報提供装置。
【請求項6】
経路関連情報提供装置の仮目的地設定部が、地図データ、および、車両の現在位置および進行方向を検出する前記経路関連情報提供装置の自車状態検出部の検出結果に基づいて、地図上で前記車両の現在位置を基点として進行方向とは逆方向側の方面を除く方面に複数の仮目的地を設定する第1ステップと、
前記経路関連情報提供装置の良燃費経路探索部が、前記仮目的地設定部により設定された前記仮目的地のそれぞれについて、前記自車状態検出部により検出された前記車両の現在位置から前記仮目的地に至る燃費の良い経路を探索する第2ステップと、
前記経路関連情報提供装置の表示制御部が、前記良燃費経路探索部により検索された経路のそれぞれを、前記地図データに基づく地図上に表示する第3ステップとを含み、
前記第1ステップにおいて前記仮目的地設定部は、前記車両の現在位置を配置した地図画面において、地図画面に表示された地図上の領域の外側であって、当該領域から一定範囲内の領域に所定のルールに従って前記仮目的地を設定する
ことを特徴とする経路関連情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路関連情報提供装置および経路関連情報提供方法に関し、特に、車両の走行中に運転手に対して燃費の良い経路に関する情報を提供する経路関連情報提供装置および経路関連情報提供方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中、車両を運転する運転手に対して、燃費の良い経路に関する情報を提供する装置が知られている。例えば、特許文献1には、ハイブリッド車や、電気自動車等のように電力を回生可能な車両に搭載される経路探索装置であって、目的地が設定されている状況下で、電力の回生を考慮して、出発地から目的地に至る燃費の良い経路を探索し、運転手に提供する経路探索装置について記載されている。特許文献1の技術によれば、運転手は、提供される情報に基づいて、電力の回生を考慮した燃費の良い経路を走行して目的地に至ることが可能である。
【0003】
なお、特許文献2には、電気自動車に搭載される電自動車用表示装置であって、バッテリーの残容量による車両の登坂能力を考慮した走行可能範囲を、車両の現在位置が明示された地図上に表示する電気自動車用表示装置について記載されている。特許文献2の技術によれば、運転手は、坂道の状況を反映して、車両(電気自動車)が正味でどの程度の範囲を走行できるのか認識することがきる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-101745号公報
【文献】特開平7-85397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、特許文献1には、運転手が設定した目的地に至る経路について、燃費の良い経路を提供する技術が記載されている。しかしながら、運転手は、車両で目的地に何度も訪れたことがある場合や、目的地が馴染みのある地域に存在している場合等、装置による経路の誘導がなくても目的地までスムーズに車両を走行させることができる場合には、装置に対して目的地を設定しない場合も多い。また、運転手は、単純にドライブを楽しむ場合等、特に目的地を決めることなく、車両を走行させる場合もある。そして、特許文献1の技術は、装置に対して目的地が設定されて初めて、設定された目的地に至る経路のうち、燃費の良い経路を提供するものであるため、運転手が装置に対して目的地を設定していない場合には、運転手は、燃費のよい経路に関する有益な情報を得ることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、目的地が設定されていない状況下でも、運転手が車両を走行させる際に、燃費のよい経路に関する有益な情報を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明では、地図上で車両の現在位置を基点として進行方向とは逆方向側の方面を除く方面に複数の仮目的地を設定し、仮目的地のそれぞれについて、車両の現在位置から仮目的地に至る燃費の良い経路を探索し、各経路を地図上に表示するようにしている。そして仮目的地を設定する際に、車両の現在位置を配置した地図画面において、地図画面に表示された地図上の領域の外側であって、当該領域から一定範囲内の領域に所定のルールに従って仮目的地を設定するようにしている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明によれば、車両の目的地が設定されていない状況下において、車両の進行方向と逆方向側の方面を除く方面、つまり、進行方向を加味すると、今後、運転手が車両を走らせることが想定される方面に複数の仮目的地が設定された上で、それぞれの仮目的地に至る燃費の良い経路が提供される。このため、運転手は、提供された経路を参考にして、どのような経路を通れば燃費が良いのかを認識できる。つまり、本発明によれば、目的地が設定されていない状況下でも、運転手が車両を走行させる際に、燃費のよい経路に関する有益な情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る経路関連情報提供装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】推奨経路が描画されていない地図画面の一例を示す図である。
図3】地図画面に表示された地図の領域を包含する地図の一例を示す図である。
図4】推奨経路描画された地図画面の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る経路関連情報提供装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る経路関連情報提供装置1の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る経路関連情報提供装置1は、車両に搭載された、いわゆるナビゲーション装置であり、車両の現在位置(以下、「自車位置」という)を検出する機能や、目的地までの経路を探索し案内する機能等を備えている。なお、経路関連情報提供装置1は、車両に固定的に搭載された専用機である必要はなく、例えば、車両の搭乗者が所有する携帯端末(例えば、スマートフォンや、タブレット型PC、ノート型PC)であってもよい。以下の説明では、経路関連情報提供装置1が搭載された車両を「自車両」という。本実施形態に係る経路関連情報提供装置1は、特に、電力を回生可能な車両(ハイブリッド車や電気自動車等)に搭載されている。周知の通り、電力を回生可能な車両については、燃料の消費を抑制することだけが燃費の向上につながるわけではなく、走行中の電力の回生可能性が燃費の向上に寄与する。
【0011】
図1に示すように、経路関連情報提供装置1には、表示パネル2が接続されている。表示パネル2は、液晶表示パネルや有機ELパネル等の表示装置であり、自車両のダッシュボードの中央部等、表示パネル2の表示領域を運転手が視認可能な位置に設けられている。
【0012】
図1に示すように、経路関連情報提供装置1は、機能構成として、自車状態検出部10、仮目的地設定部11、良燃費経路探索部12および表示制御部13を備えている。上記各機能ブロック10~13は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~13は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0013】
また、図1に示すように、経路関連情報提供装置1は、記憶手段として、記憶部14を備えている。記憶部14は、ハードディスク、EEPROM等の不揮発性記憶装置を含んで構成され、各種データを記憶する。記憶部14には、地図データ15が記憶されている。地図データ15は、地図の背景や、地図上の道路、地図上に明示される文字列(地名等)等の描画に用いられるデータを含んでいる。
【0014】
また、地図データ15は、推奨経路の探索に用いられる道路データを含んでいる。道路データは、道路網における結節点について定義されたノード毎に、ノードデータを有しており、また、ノードとノードとの間の道路区間について定義されたリンク毎に、リンクデータを有している。リンクデータは、道路区間の道路属性や、道路種別、道路長、道路幅、道路の方位、通常リンクコスト(電力の回生可能性を考慮しないリンクコスト)等の道路区間に関する情報に加え、特別リンクコストを有している。
【0015】
特別リンクコストは、燃費の良さを加味したリンクコストであり、道路幅や、車線数等の道路に関する種々の情報に加え、電力の回生可能性が反映されて値が設定されている。すなわち、特別リンクコストは、道路区間の勾配の状況や、道路区間を走行したときのスムーズさ等の種々の要因を考慮して、道路区間を走行した場合に効率よく電力が回生できるほど、コスト値の低下に寄与するように値が設定されている。
【0016】
自車状態検出部10は、GPSユニット、加速度センサー、ジャイロセンサーおよび車速センサー等の各種センサー(いずれも不図示)の検出結果を入力し、これらの検出結果および記憶部14に記憶された地図データ15に基づいて、自車位置および自車両の進行方向を検出する。自車位置および自車両の進行方向の検出は既存の技術に基づいて適切に行われる。
【0017】
仮目的地設定部11は、動作モードが「良燃費経路提供モード」の場合に、以下の処理を実行する。良燃費経路提供モードは、ユーザー(本実施形態では、運転手であるものとする)が経路関連情報提供装置1に対して目的地を設定しない状況下で、燃費の良い経路に関する有益な情報が自動で提供されるモードである。ここで、ユーザーは、意識として目的地を決めている一方、その目的地を経路関連情報提供装置1に設定しない場合も多い。例えば、その目的地が、車両で何度も訪れたことがある場所であったり、その目的地が馴染みのある地域に存在していたりする場合等である。
【0018】
後に明らかとなる通り、良燃費経路提供モードによれば、このような場合に、ユーザーは、自身が意識する目的地まで自車両を走行させるにあたって、どのような経路を通れば燃費が良いのかという事項に関して、有益な情報を得ることができる。また、良燃費経路提供モードによれば、ユーザーが、特定の目的地を決めていない状態で自車両を走行させている場合、例えば、特定のレストランではなく、何れかのレストランに行こうと考えている場合や、目的地を決めることなくドライブを楽しんでいる場合等にも、ユーザーは、燃費に関する有益な情報を得ることができる。
【0019】
以下の説明では、良燃費経路提供モードのときは、経路関連情報提供装置1に対して目的地が設定されていないものとする。また、良燃費経路提供モードのときは、表示制御部13によって表示パネル2の表示領域に地図画面が表示されているものとする。本実施形態では、地図画面は、自車両の現在位置が中央部(画面における左右方向の中央であって、上下方向における中央よりも下がった位置を含む)に配置された所定スケールの地図が表示された画面である。表示制御部13は、記憶部14に記憶された地図データ15および自車状態検出部10の検出結果に基づいて、既存の技術により地図画面の表示を行う。
【0020】
良燃費経路提供モードにおいて、仮目的地設定部11は、記憶部14に記憶された地図データ15および自車状態検出部10により検出される自車位置に基づいて、自車両が交差点を通過したか否かを監視する。自車両が交差点を通過したことを検出した場合、仮目的地設定部11は、以下の仮目的地設定処理を実行する。つまり、仮目的地設定部11は、自車両が交差点を通過する度に仮目的地設定処理を実行する。
【0021】
仮目的地設定処理において、仮目的地設定部11は、現時点で、地図画面に所定スケールで表示されている地図の領域(以下、「現在表示地図領域」という)を認識する。図2は、地図画面の一例を模式的に示す図である。図2では、説明の便宜上、後述する仮目的地毎の推奨経路は描画されていない。また、通常、表示パネル2の表示領域には、地図画面以外の画面(例えば、各種情報が表示されたバー状の画面)が表示され、また、地図画面上に、各種アイコン(例えば、スケールを変更するときに操作されるアイコンや、詳細画面に移行するときに操作されるアイコン)が表示されるが、図2では省略している。また、図3は、図2の地図画面に表示された地図の領域(現在表示地図領域)を包含する地図の一例を模式的に示す図である。図2、3において、マークMは、自車位置を示している。仮目的地設定部11は、地図画面が図2で例示するものであった場合、図3に示す地図において点線で囲む領域ARXを、現在表示地図領域として認識する。例えば、仮目的地設定部11は、現在表示地図領域の四隅の座標(経度、緯度により特定される座標)を認識する。
【0022】
次いで、仮目的地設定部11は、自車両の進行方向側に位置し、現在表示地図領域の外側であって、現在表示地図領域から一定範囲内の領域を、「進行方向側領域」として特定する。図3の符号AR1は、進行方向側領域の一例を示している。自車両の進行方向側をどの程度の範囲とするかや、一定範囲をどの程度の大きさとするかは、事前に定められている。図3の例では、自車両を基点として、進行方向に向かって約30°展開した範囲を「自車両の進行方向側」としている。また、図3の例では、現在表示地図領域の外縁から外側に向かって2km相当の範囲を一定範囲としている。
【0023】
進行方向側領域を特定した後、仮目的地設定部11は、所定のルールに従って、進行方向側領域における一の地点を、進行方向側仮目的地(仮目的地)として設定する。所定のルールは、自車両がスムーズに到来できない地点が進行方向側仮目的地に設定されてしまうことをできる限り排除するルールであり、一例として、Uターンや、反対車線の横断、無理な車線変更等を伴うことなく自車両が行くことができること、という条件がルールの1つに含まれる。図3の符号KM1は、仮目的地設定部11により設定される進行方向側仮目的地の一例を示している。
【0024】
なお、有効な進行方向側仮目的地を設定できないケースもある。例えば、進行方向領域が自車両が進入できない領域(例えば、海や、川等に属する領域や、車両の進入が制限されている領域等)である場合や、進行方向領域に自車両が走行可能な道路が存在しない場合等である。このような場合には、仮目的地設定部11は、進行方向側仮目的地を設定しない。この場合、対応する推奨経路が探索されず、ルートも描画されないことになる。このことは、後述する右側仮目的地、左側仮目的地、右中間仮目的地および左中間仮目的地についても同様である。
【0025】
更に、仮目的地設定部11は、自車両の進行方向に対して右側に位置し、現在表示地図領域の外側であって、現在表示地図領域から一定範囲内の領域を、「右側領域」として特定する。図3の符号AR2は、右側領域の一例を示している。次いで、仮目的地設定部11は、所定のルールに従って、右側領域における一の地点を、右側仮目的地(仮目的地)として設定する。図3の符号KM2は、仮目的地設定部11により設定される右側仮目的地の一例を示している。同様に、仮目的地設定部11は、自車両の進行方向に対して左側に位置し、現在表示地図領域の外側であって、現在表示地図領域から一定範囲内の領域を、「左側領域」として特定する。図3の符号AR3は、左側領域の一例を示している。次いで、仮目的地設定部11は、所定のルールに従って、左側領域における一の地点を、左側仮目的地(仮目的地)として設定する。図3の符号KM3は、仮目的地設定部11により設定される左側仮目的地の一例を示している。
【0026】
更に、仮目的地設定部11は、進行方向側領域と右側領域との「間」に位置し、現在表示地図領域の外側であって、現在表示地図領域から一定範囲内の領域を、「右中間領域」として特定する。図3の符号AR4は、右中間領域の一例を示している。次いで、仮目的地設定部11は、所定のルールに従って、右中間領域における一の地点を、右中間仮目的地(仮目的地)として設定する。図3の符号KM4は、仮目的地設定部11により設定される右中間仮目的地の一例を示している。同様に、仮目的地設定部11は、進行方向側領域と左側領域との「間」に位置し、現在表示地図領域の外側であって、現在表示地図領域から一定範囲内の領域を、「左中間領域」として特定する。図3の符号AR5は、左中間領域の一例を示している。次いで、仮目的地設定部11は、所定のルールに従って、左中間領域における一の地点を、左中間仮目的地(仮目的地)として設定する。図3の符号KM5は、仮目的地設定部11により設定される左中間仮目的地の一例を示している。
【0027】
仮目的地設定部11により特定される進行方向領域、右側領域、左側領域、右中間領域および左中間領域のそれぞれは、地図上で自車両の現在位置を基点として、自車両の進行方向と逆方向側の方面を除く方面である。ここで、ユーザー(運転手)が、意識として目的地を決定している場合であっても、目的地を決定することなく自車両を走行させている場合であっても、現時点以降、自車両をUターンさせる等して自車両の進行方向と逆方向側の方面に自車両を走行させる可能性は低いと言える。これを踏まえ、進行方向領域、右側領域、左側領域、右中間領域および左中間領域はそれぞれ、進行方向を加味すると、運転手が今後、自車両を走行させることが想定される方面に存在する領域である。また、5つの各領域内に設定された5つの各仮目的地は、運転手が今後、自車両を走行させることが想定される方面に設定された地点である。
【0028】
以上の処理が、仮目的地設定処理である。以上のように、仮目的地設定部11は、自車両が交差点を通過する度に、仮目的地設定処理を行って、進行方向側仮目的地、右側仮目的地、左側仮目的地、右中間仮目的地および左中間仮目的地を設定する。以下では、これら5つの地点を総称して単に「仮目的地」と表現する場合がある。
【0029】
良燃費経路探索部12は、動作モードが良燃費経路提供モードの場合において、仮目的地設定部11により仮目的地が設定されたとき(=自車両が交差点を通過したことをトリガーとして、仮目的地設定処理が実行されたとき)に、以下の処理を実行する。すなわち、良燃費経路探索部12は、記憶部14に記憶された地図データ15および自車状態検出部10の検出結果に基づいて、自車位置から、5つの仮目的地のそれぞれに至る推奨経路のそれぞれを探索する。その際、良燃費経路探索部12は、通常リンクコストではなく、特別リンクコストを、推奨経路を探索するときのリンクコストとして使用して推奨経路のそれぞれを探索する。このため、探索された推奨経路のそれぞれは、電力の回生可能性を考慮した燃費の良い経路である。図3の符号RT1~RT5はそれぞれ、仮目的地KM1~KM5について、良燃費経路探索部12により探索された推奨経路の例を示している。
【0030】
表示制御部13は、動作モードが良燃費経路提供モードの場合において、良燃費経路探索部12により仮目的地ごとの推奨経路が探索されたときに、以下の処理を実行する。すなわち、表示制御部13は、地図画面上に、推奨経路のそれぞれを描画する。図4は、ルートが描画されていない地図画面が図2の地図画面であるとした場合において、図3で示す推奨経路RT1~RT5が良燃費経路探索部12により探索された場合に、表示制御部13により表示される地図画面の一例を示している。図4に示すように、地図画面には、推奨経路RT1~RT5のそれぞれについて、ルートが描画される。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る経路関連情報提供装置1は、地図上で車両の現在位置を基点として進行方向と逆方向側の方面を除く方面に複数の仮目的地を設定し、仮目的地のそれぞれについて、車両の現在位置から仮目的地に至る燃費の良い経路を探索し、各経路を地図上に表示するようにしている。この構成によれば、車両の目的地が設定されていない状況下において、車両の進行方向と逆方向側の方面を除く方面、つまり、進行方向を加味すると、今後、ユーザー(運転手)が車両を走らせることが想定される方面に複数の仮目的地が設定された上で、それぞれの仮目的地に至る燃費の良い経路が提供される。このため、ユーザーは、提供された経路を参考にして、どのような経路を通れば燃費が良いのかを認識できる。つまり、本実施形態によれば、目的地が設定されていない状況下でも、運転手が車両を走行させる際に、燃費のよい経路に関する有益な情報を提供できる。
【0032】
例えば、ユーザーが、目的地を経路関連情報提供装置1に設定していない一方、意識としては目的地を決めている場合、図4で例示したような仮目的地毎の推奨経路が描画された地図画面を参照することにより、ユーザーは、目的地まで自車両を走行するにあたって有効利用できる推奨経路を参考にして、目的地までにどのような経路を通れば燃費をよくできるかという有益な情報を取得できる。また、ユーザーが、特定のレストランではなく、何れかのレストランに行くことを考えながら自車両を走行させている場合、仮に、自車位置から同程度の距離にレストランがあった場合に、推奨経路を参考にして燃費良く行くことができる方のレストランを認識でき、今回は燃費の良く行ける方のレストランに行くことにする、といった判断ができる。また、ユーザーが、何ら目的地を決めることなくドライブをしている場合には、燃費の良さという観点で自車両を走行させる経路を決めたり、燃費の良さという観点で目的地を決めたりすることが可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、仮目的地設定部11は、地図データ15および自車状態検出部10の検出結果に基づいて車両による交差点の通過を検出し、車両による交差点の通過に応じて仮目的地を設定する処理(仮目的地設定処理)を実行する。この構成によれば、進行方向が変わるタイミングで、変わった後の進行方向を加味した仮目的地の設定、および、仮目的地毎の推奨経路の探索が可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、仮目的地設定部11は、車両の進行方向側、進行方向に対して右側、および、進行方向に対して左側に位置する地点をそれぞれ仮目的地(進行方向側仮目的地、右側仮目的地、左側仮目的地)として設定し、更に、進行方向側仮目的地と右側仮目的地との間に位置する地点、および、進行方向側仮目的地と左側仮目的地との間に位置する地点をそれぞれ仮目的地(右中間仮目的地、左中間仮目的地)として設定する。この構成によれば、最終的に探索される推奨経路が、進行方向と逆方向側の方面を除く方面に偏らず満遍なく配置された状態とすることができ、ユーザーが、実際に自車両を走行させる経路との関係で、提示した推奨経路が参考となる可能性を高めることができる。
【0035】
また、本実施形態では、仮目的地設定部11は、車両の現在位置を中央部に配置した地図画面において、地図画面に表示された地図上の領域(現在表示地図領域)の外側であって、当該領域から一定範囲内の領域に仮目的地を設定する。この構成によれば、推奨経路が、地図画面内において終端することを防止しつつ、自車位置から仮目的地までの距離が不必要に長くなり、推奨経路の探索にかかる処理負荷が増大することを抑制できる。
【0036】
次に、本実施形態に係る経路関連情報提供装置1の動作例を、フローチャートを用いて説明する。図5は、動作モードが良燃費経路提供モードのときの経路関連情報提供装置1の動作を示すフローチャートである。図5に示すように、仮目的地設定部11は、記憶部14に記憶された地図データ15および自車状態検出部10の検出結果に基づいて、自車両が交差点を通過したか否かを監視する(ステップSA1)。自車両が交差点を通過したことを検出した場合(ステップSA1:YES)、仮目的地設定部11は、現在表示地図領域を特定する(ステップSA2)。
【0037】
次いで、仮目的地設定部11は、進行方向側領域、右側領域、左側領域、右中間領域および左中間領域のそれぞれを特定すると共に、各領域内に進行方向側仮目的地、右側仮目的地、左側仮目的地、右中間仮目的地および左側仮目的地を設定する(ステップSA3)。なお、ステップSA3の処理は、最終的に5つの仮目的地が設定されればよく、各処理の順番は任意である。領域を特定する順番や、仮目的地を設定する順番は任意であり、また、並列して行われてもよい。
【0038】
次いで、良燃費経路探索部12は、記憶部14に記憶された地図データ15および自車状態検出部10の検出結果に基づいて、ステップSA3で仮目的地設定部11により設定された仮目的地のそれぞれについて推奨経路を探索する(ステップSA4)。次いで、表示制御部13は、ステップSA4で良燃費経路探索部12により探索された推奨経路のそれぞれについて、地図画面にルートを描画する(ステップSA5)。良燃費経路提供モードが解除されない間は、ステップSA5の処理後、処理手順がステップSA1に戻る。
【0039】
以上、本発明の一実施形態説明したが、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0040】
例えば、上記実施形態では、仮目的地設定部11により5つの仮目的地が設定された。この点に関し、仮目的地設定部11が、進行方向側仮目的地、右側仮目的地および左側仮目的地の3つの仮目的地を設定する構成でもよい。この構成によれば、ユーザーが、実際に自車両を走行させる経路との関係で、提示した推奨経路が参考となる可能性が、上記実施形態と比べて低減するものの、最終的に探索される推奨経路が、進行方向と逆方向側の方面を除く方面に偏らず満遍なく配置された状態とすることができる。また、探索すべき推奨経路が上記実施形態の場合と比較して少ない分、処理負荷が少なくなる。
【0041】
また、上記実施形態では、経路関連情報提供装置1は、電力を回生可能な自動車に搭載されており、良燃費経路探索部12は、推奨経路として、電力の回生可能性を考量した燃費の良い経路を探索した。この点に関し、経路関連情報提供装置1は、電力の回生ができない自動車に搭載されてもよい。この場合、例えば、経路関連情報提供装置1は、既存の技術により、燃費の消費効率に着目した燃費の良い推奨経路を探索する。
【0042】
また、上記実施形態では、仮目的地設定部11は、自車両が交差点を通過する度に仮目的地設定処理を実行した。この点に関し、仮目的地設定部11が、車両の走行中、継続して仮目的地設定処理を実行する構成でもよい。例えば、仮目的地設定部11が、所定周期で間欠的に仮目的地設定処理を実行する構成でもよい。
【0043】
また、上記実施形態では、経路関連情報提供装置1が地図データ15を記憶する構成であったが、経路関連情報提供装置1が外部装置(直接接続な装置によらず、インターネット等のネットワークを介して接続された装置であってもよい)に記憶された地図データ15(地図データ15の一部であってもよい)を利用する構成でもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 経路関連情報提供装置
10 自車状態検出部
11 仮目的地設定部
12 良燃費経路探索部
13 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5