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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】設置位置計測装置及び設置位置計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 23/18 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
G01F23/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018199805
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020067355
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 暁
(72)【発明者】
【氏名】鍵福 辰緒
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 政明
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105674951(CN,A)
【文献】特開2002-90140(JP,A)
【文献】国際公開第99/00644(WO,A1)
【文献】特開昭61-45915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F23/14-23/18
G01B13/00-13/24
G01B21/00-21/32
G01C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定時に測定対象構造の底部に配置される一端部が封止されていることで液体の管内保持
が可能な送液管と、
前記送液管内に挿入されて前記送液管内に充填された前記液体の前記一端部における液
圧を検出する液圧検出部と、
前記液圧に基づいて前記測定対象構造の深さを導出する深度導出部と、を備え、
前記液圧検出部は、
前記一端部に開口端を有する計測用バブラチューブと、
前記計測用バブラチューブ内に加圧して背圧を測定する背圧測定部と、で構成されることを特徴とする設置位置計測装置。
【請求項2】
前記送液管内に前記液体を供給する水張部が、
前記一端部に開口端を有する水張用バブラチューブと、
前記水張用バブラチューブに前記液体を供給する揚水部と、を備える請求項1又は請求項に記載の設置位置計測装置。
【請求項3】
前記計測用バブラチューブと水張用バブラチューブとは兼用される請求項に記載の設置位置計測装置。
【請求項4】
前記液圧検出部は、投込式水位計である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の設置位置計測装置。
【請求項5】
前記送液管は、管内にエア溜まり防止構造を有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の設置位置計測装置。
【請求項6】
前記一端部は、前記液圧検出部を着脱する着脱機構を備え、
前記液圧検出部は、前記深さの導出後に回収可能である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の設置位置計測装置。
【請求項7】
前記一端部は、前記液圧検出部を定位置に案内する案内部を備える請求項1から請求項のいずれか1項に記載の設置位置計測装置。
【請求項8】
前記一端部の外表に設けられて前記測定対象構造に貯められた液体の液位を測定する水位計を備える請求項1から請求項のいずれか1項に記載の設置位置計測装置。
【請求項9】
前記一端部は、外表の少なくとも一部が球状に膨潤している請求項1から請求項のいずれか1項に記載の設置位置計測装置。
【請求項10】
測定対象構造の底部に閉端部を有する送液管を挿入する挿入ステップと、
前記送液管に挿入された計測用バブラチューブ内に加圧して背圧を測定することで前記送液管内に充填された液体の前記閉端部における液圧を検出する検出ステップと、
前記液圧に基づいて前記測定対象構造の深さを導出するステップと、を含むことを特徴とする設置位置計測方法。
【請求項11】
前記挿入ステップの過程において、
前記液体を供給しながら前記検出ステップを実施する請求項10に記載の設置位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、構造物の深さを測定する設置位置計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建物などの構造物内部に溜まった液体を処理する場合、液体が溜まったフロア自体の深さ情報が必要になることがある。例えば、このフロアに地盤沈下が発生している場合や、設計図面に深さ情報がない場合、測定対象階へのアクセスが困難な場合、この深さ情報を据え付け面から取得することが必要になる。
一般的な深さの情報取得方法としては、メジャーや超音波レベル計を安全な上部階又は下部階から測定対象階(測定対象構造)へ向けてこの高さを計測することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-172990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、目的の測定点までの計測器の挿入径路が複雑な場合には測定対象構造の深さ情報の取得が困難であるという課題があった。
この挿入径路を経て測定対象構造の目的の底部に到達し、この目的の測定点を基準とした測定対象構造の高さを正確に測定する適当な測定手段がなかったからである。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、目的の測定点までの計測器の挿入径路が複雑な場合にも測定対象構造の深さ情報の取得が可能な設置位置計測装置及び設置位置計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る設置位置計測装置は、測定時に測定対象構造の底部に配置される一端部が封止されていることで液体の管内保持が可能な送液管と、前記送液管内に挿入されて前記送液管内に充填された前記液体の前記一端部における液圧を検出する液圧検出部と、前記液圧に基づいて前記測定対象構造の深さを導出する深度導出部と、を備えるものである。
【0007】
本実施形態に係る設置位置計測方法は、測定対象構造の底部に閉端部を有する送液管を挿入する挿入ステップと、前記送液管に挿入された液圧検出部で前記送液管内に充填された液体の前記閉端部における液圧を検出する検出ステップと、前記液圧に基づいて前記測定対象構造の深さを導出するステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、目的の測定点までの計測器の挿入径路が複雑な場合にも測定対象構造の深さ情報の取得が可能な設置位置計測装置及び設置位置計測方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る設置位置計測装置の概略構成図。
図2】第1実施形態に係る設置位置計測装置の変形例を示す図。
図3】第2実施形態に係る設置位置計測装置の概略構成図。
図4】(A)は第2実施形態に係る設置位置計測装置における送液管の閉端部周辺の部分拡大断面図、(B)は(A)で示す案内部の上面図。
図5図4の閉端部の変形例を示す部分拡大断面図。
図6】第2実施形態に係る設置位置計測装置の変形例の概略構成図。
図7】第2実施形態に係る設置位置測定方法を示すフローチャート。
図8】第2実施形態に係る設置位置測定方法の動作手順を説明する図。
図9】第3実施形態に係る設置位置計測方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
以下では、作業員の進入が困難になった建物の地下階を計測対象構造として、この地下階の高さ情報(深さ情報)を取得する例で設置位置計測装置(以下、単に「計測装置」という)を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る計測装置10の概略構成図である。
計測装置10の検出器11は、図1に示されるように、進入可能な上方階(1F)の適当な挿入口12から挿入されて、地下階(B1)における目的の測定点13に検出端が配置される。
【0012】
この測定点13は、例えば地下階の最低位部22など特定の地点であるため、上方階における挿入口12の鉛直線上にないことが多い。また、地下階は、底部の凹凸又は障害物14があったり、誤部90などに入ってしまうこともある。よって、検出器11の挿入径路は、平行移動を含みこれら障害物14等を迂回した複雑なものになることがある。第1実施形態に係る計測装置10は、このように検出器11の挿入径路が屈曲している場合にも、この地下階の高さ情報(H)を取得することができるものである。なお、地下階には汚染水や貯蔵水などの液体(以下、「貯留水16」という)が溜まっている。
【0013】
第1実施形態に係る計測装置10は、図1に示されるように、地下階に挿入される検出器11と、この検出器11に接続される深度導出部17と、を主に備える。
検出器11は、主に、送液管18と、液圧検出部21と、で構成される。
【0014】
送液管18は、地下階の例えば最低位部22に、封止された一端部(閉端部)23が測定時に配置される。
送液管18の一端が封止されていることで、この封止された閉端部23から管内へは貯留水16が浸入しない。
送液管18は、例えばポリエチレン等の材料で構成され、外力に対して柔軟に変形するチューブである。送液管18の全体が柔軟であっても、その一部のみが柔軟であってもよい。
【0015】
この送液管18の管内には、液体(以下、貯留水16と区別して「測定用液」という)19が規定高さまで充填される。
ここでいう規定高さとは、取得したい高さ情報以上の所定の高さをいう。第1実施形態では、地下階の最低位部22の底面から上方階床面24までの高さHが、取得したい高さ情報である。よって、上方階床面24以上の高さに設けられた例えばオーバーフローライン26の高さDが、規定高さになる。
【0016】
液圧検出部21は、送液管18の管内に挿入されて測定用液19の閉端部23における液圧を検出する。液圧検出部21には、計測用バブラチューブ27が好適に用いられる。
計測用バブラチューブ27の一端は、送液管18の閉端部23において開口する。計測用バブラチューブ27は、全部又は一部が柔軟性を有して送液管18とともに変形する、例えばポリエチレン製のチューブである。
【0017】
計測用バブラチューブ27の他端には、背圧測定部28が接続される。
背圧測定部28は、計測用バブラチューブ27の開口端まで気体が満たされるように気体を供給し、その背圧を測定することで、閉端部23における測定用液19の液圧を測定する。背圧測定部28には、例えば、市販のパージセット及びコンプレッサが利用可能である。パージセットは、例えば、減圧弁、しぼり及びロータメータを一体にしたもので、コンプレッサで圧縮された気体を計測用バブラチューブ27に供給する機能及びこの気体の背圧を測定する機能を有する。
【0018】
深度導出部17は、背圧測定部28に接続されて、背圧測定部28で測定された閉端部23の液圧と、例えば気圧計(図示しない)などから得られた大気圧とから、送液管18内の測定用液19の水頭圧を算出する。そして、この水頭圧から、最低位部22からオーバーフローライン26までの高さDを算出する。この高さDから、予め測定された上方階床面24からオーバーフローライン26までの高さLを差し引いた高さHが取得したい高さ情報になる。深度導出部17で導出された高さHは、表示部29に表示されて作業員に視認される。
なお、水頭圧を背圧測定部28が算出する場合には、深度導出部17は、水頭圧を算出しなくてもよい。
【0019】
なお、オーバーフローライン26の設置は実測時の便宜上のものであって、オーバーフローライン26を用いずに、設測定用液の高さを浮動的にしてもよい。また、オーバーフローライン26を上方階床面24の高さと一致させて、これらの差分Lをゼロにしてもよい。
【0020】
次に、図2を用いて、第1実施形態に係る計測装置10の変形例を説明する。
計測装置10の変形例では、液圧検出部21として、計測用バブラチューブ27に代えて、図2に示されるように投込式水位計31が用いられる。投込式水位計31は、閉端部23に配置された検出端部32からオーバーフローライン26までの水頭圧を一旦電気信号にしてその水位を算出する。
【0021】
投込式水位計31では、例えば挿入径路が途中で一旦浮上して閉端部23側の方が高度が高い、いわゆる逆勾配状態の箇所がある場合、バブラチューブでは液圧の測定誤差が大きくなることがある。このような場合には、検出した水頭圧を電気信号に変換して上方階まで伝送する投込式水位計31を用いるのが望ましい。この投込式水位計31には、水位を算出するための、例えば深度導出部17(図1)及び表示部29(図1)及び伝送器などが測定器34として一体化されたハンディタイプの市販品が使用可能である。
【0022】
以上のように、第1実施形態に係る計測装置10によれば、目的の測定点13までの計測器の挿入径路が複雑な場合にも測定対象構造の深さ情報の取得することができる。
【0023】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る計測装置10の概略構成図である。
【0024】
第2実施形態に係る計測装置10は、図3に示されるように、送液管18内に測定用液19を供給する水張ライン(水張部)36を備える。
水張ライン36は、例えば、図3に示されるように、閉端部23に開口端を有する水張用バブラチューブ37と、水張用バブラチューブ37に測定用液19を供給する揚水部38と、で構成される。
【0025】
図3の一例では、液圧検出部21が第1実施形態の変形例で説明したハンディタイプの投込式水位計31であり、水張用バブラチューブ37は水位計としての機能を有さないものである。
また、揚水部38は、例えば、水張用バブラチューブ37に設けられて、水槽39に貯められた測定用液19を揚水するポンプである。
また、水張用バブラチューブ37上には、測定用液19の供給量を調整する調整弁41及び逃し弁42なども適宜設けられる。
【0026】
送液管18の開口端から測定用液19を注入すると、送液管18が複雑に屈曲している場合や、逆勾配を有する場合、送液管18内の空気が一部抜けきらないことがある。このようにして送液管18内にエア溜まりが発生すると、正確な水頭圧が検出されない原因になりうる。
そこで、送液管18の開口端とは反対側の閉端部23から水張用バブラチューブ37で水張りすることで、送液管18にエア溜まりが発生することを防止する。
【0027】
なお、投込式水位計31は一般に高価なため、地下階の深さ情報を取得した後に送液管18から抜き取って再使用するのが望ましい。
そこで、投込式水位計31の検出端部32及び送液管18の閉端部23のそれぞれに、磁石などの着脱機構43を設ける。着脱機構43により、投込式水位計31の検出端部32が閉端部23の定位置に取り外し可能に固定される。また、この場合、送液管18を挿入口12に固定する建付治具44にも、投込式水位計31を引き抜き可能にする蓋部46を設ける。
なお、水張用バブラチューブ37の開口端にも磁石を設け、水張用バブラチューブ37を、投込式水位計31と同様に閉端部23から取り外し可能にしてもよい。
【0028】
また、図4(A)は、第2実施形態に係る計測装置10における送液管18の閉端部23周辺の部分拡大断面図である。
また、図4(B)は、図4(A)で示す案内部47の上面図である。
【0029】
閉端部23には、図4(A)に示されるように、液圧検出部21を定位置に案内する案内部47が設けられていることが望ましい。
案内部47は、例えば、図4(B)に示されるような、投込式水位計31の挿入方向に垂直な方向に広がる平面を有する案内板である。案内部47には、投込式水位計31を通す第1孔48と、水張用バブラチューブ37を通す第1孔48よりも小さい第2孔49が開けられている。案内部47を通して投込式水位計31及び水張用バブラチューブ37を閉端部23に取り付けることで、投込式水位計31と水張用バブラチューブ37とが、互いに絡まることなくそれぞれの定位置に配置される。
【0030】
また、送液管18が閉端部23において径が大きくなっている場合、この経の変わり目部分では、段差が発生することになる。この段差を不連続にしておくと、水張用バブラチューブ37で測定用液19を管内に充填した際に、この段差にエア溜まりが発生するおそれがある。そこで、送液管18内にこの段差部分を埋めて内径を連続的に変化させるエア溜まり防止構造51を設けることが望ましい。
【0031】
また、図5は、図4(A)で示した閉端部23の変形例を示す部分拡大断面図である。
地下階底部の目的の測定点13(図1)周辺は、小石等によって細かい凹凸を有していることもある。地下階底部に細かい凹凸がある場合、閉端部23が安定して着地することができず、閉端部23が水平に倒れてしまうことがある。
【0032】
そこで、この凹凸が閉端部23と複数点で接触支持するように、図5に示されるように閉端部23の外表の全部又は一部を球状に膨潤させることが望ましい。
なお、閉端部23を安定的に着地させることができれば、閉端部23の外表形状は球形でなくてもよい。例えば、閉端部23の外表は、接地面を底面とする円錐形状などであってもよい。
【0033】
次に、図6を用いて、第2実施形態に係る計測装置10の変形例について説明する。
第2実施形態の変形例では、水張用バブラチューブ37が第1実施形態で説明した計測用バブラチューブ27(図1)としても機能する。つまり、送液管18内に配設された一種類の常設バブラチューブ53が、水張りにも水張り後の液圧の計測にも使用される。
【0034】
常設バブラチューブ53は、建付治具44に設けられた開口部に内部からジョイント55で固定される。このジョイント55に、水張り時には水張ライン36のコネクタ56aが接続されて全体として水張用バブラチューブ37を構成する。
また、計測時には、水張ライン36は取り外され、第1実施形態の背圧測定部28及び深度導出部17等を備えた計測ライン59のコネクタ56bが接続されて全体として計測用バブラチューブ27を構成する。このように、常設バブラチューブ53を水張用と計測用とで兼用することで、別途投込式水位計31を必要とせず、構成を簡素にすることができる。
【0035】
次に、第2実施形態に係る設置位置測定方法の動作手順を、図7のフローチャート及び図8を用いて説明する(適宜図1を参照)。
図8は、第2実施形態に係る設置位置測定方法の動作手順を説明する図である。
【0036】
まず、挿入ステップS11において、送液管18の閉端部23を上方階の挿入口12から挿入して、地下階の測定点13である最低位部22に配置する。このとき測定用バブラチューブのチューブ開口端54が閉端部23に位置するように送液管18とともに挿入する。
【0037】
ところで、挿入口12が小さい場合や、地下階が汚染されている場合等、作業員が地下階にアクセスすることが困難なことがある。このような場合、送液管18の挿入には、図8に示されるように、地下階底部に貯められた貯留水16の水位を測定する貯留水位計測計60を利用するが望ましい。通常、地下階の高さ情報が必要になるのは地下階に貯められた貯留水16を処理する際が多く、貯留水16の水位を計測する貯留水位計測計60と計測装置10とを同時に使用することが多いからである。
【0038】
例えば、貯留水位計測計60にバブラチューブ式水位計を用い、ワイヤ付バブラチューブ30で送液管18を測定点13まで誘導する。具体的には、ワイヤ付バブラチューブ30の先端位置と送液管18の閉端部23とを揃えて、ワイヤ付バブラチューブ30を送液管18の外表に固定する。
【0039】
そして、ワイヤ付バブラチューブ30に張られた複数の操縦ワイヤ61を操作して、ワイヤ付バブラチューブ30の進行方向を操縦しながら送液管18を徐々に挿入する。測定点13に到達した後には、ワイヤ付バブラチューブ30は、貯留水16の水位を計測する。
なお、送液管18の挿入方法は、ワイヤ付バブラチューブ30を用いる方法に限定されない。例えば、閉端部23をロボットや、貯留水汲み取り用のポンプなどに固定して遠隔操作で送液管18を測定点13まで運んでもよい。
【0040】
次に、ステップS12において、計測用バブラチューブ27により測定用液19を管内に充填する。上方階に固定されたオーバーフローライン26まで測定用液19を供給する。
なお、オーバーフローライン26を超えて測定用液19を供給しても、余剰分はオーバーフローライン26から水槽39に排出される。よって、測定用液19の液面高さは、オーバーフローライン26の高さLに維持される。
【0041】
次に、ステップS13において、液圧検出部21で閉端部23における測定用液19の液圧を検出する。この液圧と大気圧との差分が、測定点13から液面20までの高さDに比例した水頭圧になる。
【0042】
次に、ステップS14において、作業員は、上方階床面24からオーバーフローライン26までの高さLを実測又は検尺する。
そして、ステップS15において、測定点13から液面20までの高さDから上方階床面24からオーバーフローライン26までの高さLを引いて、地下階の高さHを導出する(END)。オーバーフローライン26までの高さLを深度導出部17又は表示部29に予め読み込ませて地下階の高さHを表示部29に表示させてもよい。
【0043】
なお、水張用バブラチューブ37による水張り及び貯留水位計測計60による送液管18の挿入を明示したこと以外は、第2実施形態は第1実施形態と同様の構成になるので、重複する説明を省略する。
【0044】
このように、第2実施形態に係る計測装置10によれば、第1実施形態の効果に加え、送液管18の閉端部23から測定用液19を供給することで、送液管18内のエア溜まりの発生を防止することができる。つまり、第2実施形態によれば、地下階の深さを正確に把握することができる。
【0045】
さらに、ワイヤ付バブラチューブ30や遠隔操作で検出器11を操縦しながら挿入することで、作業員による測定点13へのアクセスが困難であっても検出器11を測定点13へ到達させることができる。
【0046】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る設置位置計測方法を説明するフローチャートである。
【0047】
第3実施形態に係る設置位置計測方法では、図9に示されるように、第2実施形態の計測に加えて、計測装置10を挿入しながら随時閉端部23の液圧を検出してマッピングをする。
以下、図9に加え、第2実施形態で用いた図8を用いて、第3実施形態に係る設置位置計測方法を説明する。
【0048】
まず、ステップS20において、上方階床面24からオーバーフローライン26までの高さLを実測又は検尺をする。
次に、ステップS21において、送液管18の閉端部23に検出端部32及び水張用バブラチューブ37を挿入する。検出端部32が常時閉端部23の定位置に配置されるように、着脱機構43(図3)などで検出端部32を固定する。
【0049】
そして、ステップS22において、送液管18を挿入口12から地下階に挿入する。
次に、ステップS23において、測定用液19を供給して管内を封止する。計算を容易にするため、測定用液19の液面20が常時オーバーフローライン26になるように測定用液19を供給する。
【0050】
次に、ステップS24において、挿入地点の深さを導出する。そして、ステップS25において、導出した深さ情報を、その時点までの送り量の情報とともに3Dマッピングに追加する。
次に、ステップS26において、閉端部23を測定点13に向けて奥へ挿入する。
【0051】
目的の測定点13に到達するまで、測定用液19の供給しながらその地点の液圧を検出してマッピングをすることを繰り返す(ステップS27でNOの場合、ステップS23に戻る)。
送り量が増加しているにも関わらず導出した深さ情報が変化していない場合、送液管18は水平に進んでいることを示唆している。また、送り量に対して少しずつ深さ情報が増加していく場合、送液管18は緩やかな下り勾配を進んでいると推測することができる。さらに、送り量に対して深さ情報が減少している場合は上り勾配を進んでいると推測することができる。
【0052】
このように閉端部23における測定用液19の液圧を逐一検出しながら送液管18を挿入することで、地下階の形状を3Dマッピングすることができる。なお、送液管18を1方向にのみ挿入してマッピングする場合、2Dマッピングになる。目的の測定点13に到達した場合(ステップS27でYESの場合)、ステップS28において、測定点13の深さを導出する(END)。
【0053】
なお、挿入中にその地点における深さ情報を取得してマッピングすること以外は、第3実施形態は第1実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0054】
このように、第3実施形態に係る計測装置10によれば、第2実施形態と同様の効果に加え、閉端部23の深さと測定用液19の送り量との関係を逐一把握することができるので、地下階の2次元構造又は3次元構造を推測することができる。
【0055】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の計測装置10によれば、目的の測定点13までの検出器11の挿入径路が複雑な場合にも測定対象構造の深さ情報を取得することが可能となる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
10…設置位置計測装置(計測装置)、11…検出器、12…挿入口、13…測定点、14…障害物、15…誤部、16…貯留水、17…深度導出部、18…送液管、19…測定用液、20…液面、21…液圧検出部、22…最低位部、23…閉端部、24…上方階床面、26…オーバーフローライン、27…計測用バブラチューブ、28…背圧測定部、29…表示部、30…ワイヤ付バブラチューブ、31…投込式水位計、32…検出端部、34…測定器、36…水張ライン、37…水張用バブラチューブ、38…揚水部、39…水槽、41…調整弁、42…弁、43…着脱機構、44…建付治具、46…蓋部、47…案内部、48…第1孔、49…第2孔、51…エア溜まり防止構造、53…常設バブラチューブ、54…チューブ開口端、55…ジョイント、56(56a,56b)…コネクタ、59…計測ライン、60…貯留水位計測計、61…操縦ワイヤ、D…測定点から液面までの高さ、H…計測対象構造の高さ、L…上方階床面からオーバーフローラインまでの高さ。
図1
図2
図3
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図8
図9