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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20221011BHJP
   F24C 3/02 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F24C3/12 J
F24C3/02 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018214232
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020085250
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-063506(JP,A)
【文献】特開2009-236449(JP,A)
【文献】特開2017-190939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0209044(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
F24C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンロ本体の上面を覆う天板に形成された挿通孔から環状のコンロバーナの上部が突出しており、該コンロバーナを囲んで前記天板上に五徳が着脱可能に設置され、前記コンロバーナの外周面に形成された複数の炎口から燃料ガスと空気との混合ガスを噴出して燃焼させることで、前記五徳の爪部に載置された調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記コンロバーナの中央を上下方向に貫通する中央通路の上方に位置し、上下方向に可動で前記五徳の前記爪部における前記調理容器の載置面よりも突出して前記調理容器の底面に当接可能な当接体と、
前記当接体を上下方向に摺動可能に支持する支持台と、
前記当接体を上方に向けて付勢する付勢部材と、
前記中央通路に挿通して設置された中空の筒部材と、
前記筒部材内に収容されるか、または前記筒部材の下方に位置して、前記当接体の温度を計測可能な温度センサと
を備え、
前記支持台は、前記五徳の前記爪部と接続されており、
前記温度センサは、前記当接体の温度を非接触で計測する
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスコンロにおいて、
前記支持台は、前記中央通路の通路径よりも大径に形成されて該中央通路の上方を覆う部材である
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項3】
請求項2に記載のガスコンロにおいて、
前記支持台と前記コンロバーナとの間には通気用の隙間が設けられている
ことを特徴とするガスコンロ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のガスコンロにおいて、
前記当接体には、径方向の外側に張り出して摺動箇所の上方を覆う庇部が設けられている
ことを特徴とするガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、五徳に載置された調理容器の温度を計測するための温度センサを備えたガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロでは、コンロ本体の上面を覆う天板に挿通孔が形成されており、この挿通孔から環状のコンロバーナの上部を突出させた構造が一般的に知られている。また、天板上にはコンロバーナを囲んで五徳が設置されており、鍋などの調理容器が五徳上に載置される。コンロバーナの外周面には複数の炎口が開口しており、燃料ガスと空気との混合ガスを炎口から噴出して燃焼させることで、五徳上の調理容器を加熱する。
【0003】
こうしたガスコンロでは、近年、五徳上に載置された調理容器の温度を計測する温度計測装置を搭載することが一般的になっている。温度計測装置としては、コンロバーナの中央を上下に貫通する中央通路内に立設された支持パイプと、上下方向に移動可能な態様で支持パイプの上部に取り付けられた筒状のホルダーと、ホルダーを上方に向けて付勢する付勢バネと、ホルダーの上端に取り付けられた当接体と、当接体の下面に取り付けられた温度センサとを備えたものが普及している(例えば、特許文献1)。ホルダーの上部は五徳の上面(載置面)から突出しており、五徳上に調理容器が載置されると、調理容器の底面が当接体に当接してホルダーを押し下げると共に、付勢バネの付勢力で調理容器の底面に当接体が押し付けられた状態となる。その結果、当接体に伝わる調理容器の温度を温度センサで計測することができる。
【0004】
このような従来の温度計測装置では、コンロ本体に対する支持パイプの取り付け公差や、支持パイプに対するホルダーの取り付け公差などの積み重なりによって、当接体の位置のバラツキが大きくなる傾向にある。それでも、調理容器の底面に当接体を確実に押し付ける必要があるため、バラツキの影響を見越して、五徳の載置面に対する当接体(ホルダーの上部)の突出量は大きめに設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-250458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、五徳の載置面から当接体が大きく突出していることによって、五徳に調理容器を載置していないときの見栄えが悪くなるだけでなく、調理容器が軽く当接体(ホルダー)を押し下げることができない場合には、五徳上で調理容器が大きく傾いてしまうことがあるという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、五徳に載置された調理容器の底面に当接体を押し付けて温度を計測可能としながら、五徳の載置面に対する当接体の突出量を抑えることが可能なガスコンロの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のガスコンロは次の構成を採用した。すなわち、
コンロ本体の上面を覆う天板に形成された挿通孔から環状のコンロバーナの上部が突出しており、該コンロバーナを囲んで前記天板上に五徳が着脱可能に設置され、前記コンロバーナの外周面に形成された複数の炎口から燃料ガスと空気との混合ガスを噴出して燃焼させることで、前記五徳の爪部に載置された調理容器を加熱するガスコンロにおいて、
前記コンロバーナの中央を上下方向に貫通する中央通路の上方に位置し、上下方向に可動で前記五徳の前記爪部における前記調理容器の載置面よりも突出して前記調理容器の底面に当接可能な当接体と、
前記当接体を上下方向に摺動可能に支持する支持台と、
前記当接体を上方に向けて付勢する付勢部材と、
前記中央通路に挿通して設置された中空の筒部材と、
前記筒部材内に収容されるか、または前記筒部材の下方に位置して、前記当接体の温度を計測可能な温度センサと
を備え、
前記支持台は、前記五徳の前記爪部と接続されており、
前記温度センサは、前記当接体の温度を非接触で計測する
ことを特徴とする。
【0009】
このような本発明のガスコンロでは、五徳の爪部における調理容器の載置面に対する当接体の突出量を設定する際に、五徳の爪部と一体の支持台に対する当接体の取り付け公差による当接体の位置のバラツキだけを考慮すればよく、他の公差によるバラツキの影響を排除することができるので、載置面に対する当接体の突出量を最小限に抑えることが可能となる。結果として、五徳上に調理容器を置いていないときの見栄えが良くなると共に、調理容器が軽くて当接体を押し下げることができなくても、五徳上での調理容器の傾きを抑えることができる。そして、温度センサが当接体の温度を非接触で計測することにより、当接体に温度センサを接触させて温度を計測する場合と対比して、当接体と温度センサとの接触状況に影響されることがなく、計測値にバラツキが生じ難いので、五徳と一体に当接体を着脱可能としながら、安定かつ精度良く調理容器の温度を計測することが可能となる。
【0010】
上述した本発明のガスコンロにおける支持台は、中央通路の通路径よりも大径に形成されて中央通路の上方を覆う部材であってもよい。
【0011】
このようにすれば、五徳上に載置された調理容器から煮こぼれた場合でも、支持台で中央通路が覆われているので、煮こぼれ汁が中央通路に流れ落ちること(筒部材に煮こぼれ汁がかかること)を抑制することができる。
【0012】
また、上述した本発明のガスコンロでは、支持台とコンロバーナとの間に通気用の隙間を設けておいてもよい。
【0013】
このようにすれば、コンロバーナの外周面の炎口から噴出する混合ガスの燃焼に伴って、中央通路内に下方から上方に向かう空気の流れが生じることにより、コンロバーナの熱を受ける筒部材を気流で冷却する効果を得ることができる。
【0014】
こうした本発明のガスコンロにおける当接体には、径方向の外側に張り出して摺動箇所の上方を覆う庇部を設けておいてもよい。
【0015】
このようにすれば、五徳上の調理容器から煮こぼれても、摺動箇所が庇部で保護されているので、摺動箇所に煮こぼれ汁がかかって支持台に当接体が固着してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施例のガスコンロ1の手入れなどの際に分解した状態を示した上部外観の斜視図である。
図2】本実施例のガスコンロ1の構造を示した縦断面図である。
図3】五徳5の載置面に対する当接体の突出量が大きめに設定される従来例のガスコンロ1の構成を示した説明図である。
図4】本実施例のガスコンロ1における当接体20および中央連結部5cの周辺を拡大して示した縦断面図である。
図5】中央連結部5cとバーナヘッド12とで五徳5の位置決めを可能とする例を示した斜視図である。
図6】当接体20の下面の温度を温度計測装置40で計測する例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施例のガスコンロ1の手入れなどの際に分解した状態を示した上部外観の斜視図である。ガスコンロ1は、図示しないコンロ本体の上面が天板2で覆われており、その天板2に形成された挿通孔3から上部を突出させてコンロバーナ10がコンロ本体内に設置されている。コンロバーナ10は、略円環形状になっており、土台となるバーナボディ11と、バーナボディ11に載置されるバーナヘッド12とを備えている。
【0020】
バーナヘッド12の外周面には、複数の炎口13が周方向に所定の間隔で開口している。この炎口13から燃料ガスと空気との混合ガスが噴出し、図示しない点火プラグで点火すると、混合ガスの燃焼が開始される。また、コンロバーナ10には、中央を上下方向に貫通する中央通路14が設けられており、詳しくは後述するが、この中央通路14に挿通して中空の筒部材30が設置されている。
【0021】
また、コンロバーナ10(バーナボディ11)と天板2(挿通孔3の周縁)との間には隙間があいているため、この隙間を覆う略円環形状のバーナリング4が着脱可能に天板2上に設置される。尚、バーナリング4は、取り外し不能に天板2に固定しておいてもよい。さらに、天板2上には、コンロバーナ10を囲んで五徳5が着脱可能に設置され、五徳5上に載置された鍋などの調理容器をコンロバーナ10での混合ガスの燃焼によって加熱する。
【0022】
本実施例の五徳5は、調理容器を載せる爪部5aが放射状に複数(図示した例では6つ)配置されており、この爪部5aの外側端部から下方に延設された脚部5bが天板2上に据え置かれる。また、爪部5aの内側端部は、略円環形状の中央連結部5cに接続されている。そして、中央連結部5cの上面側には略円板形状の当接体20が上下方向に摺動自在に取り付けられており、五徳5上に調理容器を載置すると、後述のように当接体20が調理容器の底面に当接可能となっている。尚、本実施例の中央連結部5cは、本発明の「支持台」に相当している。
【0023】
図2は、本実施例のガスコンロ1の構造を示した縦断面図である。本実施例のバーナボディ11は、ステンレス鋼薄板をプレス加工して形成された2枚の板金(外面板11aおよび内面板11b)を合わせて気密に接合することで、内部に略円環形状の混合室11cが形成されている。また、外面板11aの上端側は、内向きに折り曲げられて上面が形成されており、この上面にバーナヘッド12が載置される。
【0024】
さらに、バーナボディ11からは、混合室11cと連通する混合管15が延設されている。混合管15の開口端15aには噴射ノズル16が設置されており、図中に破線の矢印で示すように噴射ノズル16から燃料ガスが噴射されると、周囲の空気を吸い込みながら混合管15に流入する。そして、混合管15を通過する燃料ガスと空気とが混合されて、混合室11cに混合ガスが供給される。
【0025】
バーナヘッド12は、アルミニウム合金や真鍮などを用いて、ダイカストなどで略円環形状に形成されている。バーナヘッド12の外縁部分には下方に向けて略円筒形状の外周壁12aが延設されており、内縁部分には下方に向けて略円筒形状の内周壁12bが外周壁12aよりも長く延設されている。バーナヘッド12をバーナボディ11に載置する際には、内周壁12bを内面板11bに嵌め合わせた状態で、外周壁12aの下面をバーナボディ11(外面板11a)の上面に当接させる。
【0026】
バーナヘッド12をバーナボディ11に載置すると、混合室11cの上面開口部が覆われると共に、バーナヘッド12の外周壁12aの下面に複数形成された径方向の炎口溝12dと、バーナボディ11の上面とによって、混合室11cに連通してバーナヘッド12の外周面に開口する複数の炎口13が形成される。混合室11cに供給された混合ガスは複数の炎口13から噴出し、点火すると炎口13の外側に炎が形成される。
【0027】
バーナヘッド12の内側は、コンロバーナ10を上下方向に貫通する中央通路14になっており、前述したように中央通路14には中空の筒部材30が挿通されている。この筒部材30の下端側は、コンロバーナ10(バーナボディ11)を支えるコンロ本体内の梁部材17に固定されている。そして、筒部材30内には温度センサ31が設置されており、本実施例の温度センサ31は、対象物が放出する赤外線を感知することによって、対象物の温度を非接触で計測することが可能になっている。
【0028】
前述したようにコンロバーナ10を囲んで脚部5bが天板2上に載置される五徳5は、調理容器を載せる爪部5aの内側端部が中央連結部5cに接続されており、この中央連結部5cは、外径がバーナヘッド12よりも小径に形成されると共に、コンロバーナ10の中央通路14の通路径(中央通路14の上部における最大通路径)よりも大径に形成されて中央通路14の上方を覆っている。そして、中央連結部5cの上面側に上下動が可能に取り付けられた当接体20は、コンロバーナ10の中央通路14の上方に位置している。詳しくは後述するが、当接体20は、中央連結部5cの底面側を塞ぐ底板22に対してコイルバネ21によって上方に付勢されており、五徳5上に調理容器がない状態で、五徳5の爪部5aの上面(調理容器が載置される載置面)よりも当接体20が上方に突出している。五徳5上に調理容器が載置されると、調理容器の底面が当接体20を押し下げると共に、コイルバネ21の付勢力によって当接体20が調理容器の底面に押し付けられた状態となる。尚、本実施例のコイルバネ21は、本発明の「付勢部材」に相当している。
【0029】
このような当接体20は、アルミニウムなどの熱伝導性の高い金属材料で形成されており、当接体20の下方には筒部材30が配置されている。そして、筒部材30内に収容された温度センサ31の位置からは、当接体20の下面を見通すことが可能になっている。そのため、調理容器の底面に当接した当接体20の下面に伝わる温度を温度センサ31によって非接触で計測することができる。
【0030】
以上のような本実施例のガスコンロ1では、調理容器の底面に当接する当接体20を、五徳5の爪部5aと接続された中央連結部5cで支持することにより、五徳5の爪部5aの上面(載置面)に対する当接体20の突出量を抑えることができる。以下では、この点について説明するが、まず準備として、五徳5の載置面に対する当接体の突出量が大きめに設定される従来例のガスコンロ1の構成について簡単に説明する。尚、従来例の説明では、上述した本実施例と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0031】
図3は、五徳5の載置面に対する当接体の突出量が大きめに設定される従来例のガスコンロ1の構成を示した説明図である。まず、図3(a)には、従来例のガスコンロ1の縦断面図が示されている。図示した例では、天板2上に設置される五徳5に爪部5aと接続される前述の中央連結部5cを備えておらず、代わりに、脚部5bの下部から下辺部5fが爪部5aと略平行に延設されると共に、コンロバーナ10を囲んで天板2上に載置される環状の五徳枠5gに下辺部5fが接続されている。
【0032】
また、バーナヘッド12の上方には、略円環形状のバーナカバー18が図示しない取付金具で固定されている。このバーナカバー18は、五徳5上の調理容器から煮こぼれた際に、煮こぼれ汁がバーナヘッド12にかかるのを抑制している。さらに、コンロバーナ10の中央通路14には、温度計測装置40が挿通されており、バーナカバー18の中央の貫通孔18aから温度計測装置40の上部が突出している。
【0033】
温度計測装置40は、図3(b)に縦断面図で示されるように、管状に形成された金属製の支持パイプ41や、ステンレス鋼板などを用いて筒状に形成されたホルダー42や、アルミニウムなどの熱伝導性の高い金属材料を用いて略円板形状に形成された集熱板43などを備えている。
【0034】
ホルダー42は、上端側が内側に折り曲げられて頂面42aが形成されると共に、頂面42aの内側が下方に折り曲げられて筒状の内筒壁42bが形成されている。一方、集熱板43は、ホルダー42よりも小径に形成されて、集熱板43の下面からは、内筒壁42bよりも小径の筒状に形成された収容筒43aが垂設されている。この収容筒43aを内筒壁42bの内側に圧入することで、ホルダー42の上端に集熱板43が当接体として取り付けられる。
【0035】
集熱板43の下面には、温度センサ44が収容筒43a内に収容されて、充填剤で固定されている。例示した温度センサ44には、温度の変化によって電気抵抗が変わるサーミスタが用いられており、調理容器の底面に当接した集熱板43の下面に伝わる温度を温度センサ44によって計測することが可能である。
【0036】
支持パイプ41の上端には、ホルダー42よりも小径である略円環形状の座金46が図示しないカシメ止めで接合されており、この座金46がホルダー42内に挿入されている。また、座金46の下方には、外径がホルダー42よりも小径で、内径が支持パイプ41よりも大径である略円環形状のストッパー47が中央の孔に支持パイプ41を挿通した状態でホルダー42に嵌め込まれている。このストッパー47は、ホルダー42の周面の複数個所を外側から内側に向けて塑性変形させることで係止されており、ホルダー42が支持パイプ41の軸方向(図中の上下方向)に移動しても、ホルダー42から座金46が抜けることはない。
【0037】
また、ホルダー42の内部には、頂面42aと座金46との間にコイルバネ48が圧縮された状態で収納されており、このコイルバネ48がホルダー42を上方に付勢している。加えて、温度センサ44から延びるリード線45は、ホルダー42および支持パイプ41に挿通されており、ホルダー42の上下動に連動してリード線45が支持パイプ41内を移動可能になっている。
【0038】
こうした温度計測装置40は、図3(a)に示されるように、当接体としての集熱板43が五徳5の爪部5aの上面(載置面)よりも上方に突出した状態で、支持パイプ41がコンロ本体内の梁部材17にビス止め(図示省略)などで固定されている。五徳5上に調理容器が載置されると、調理容器の底面が集熱板43に当接してホルダー42を押し下げると共に、コイルバネ48の付勢力によって集熱板43が調理容器の底面に押し付けられる。
【0039】
このような従来例の温度計測装置40では、コンロ本体内の梁部材17に対する支持パイプ41の取り付け公差や、温度計測装置40自体の製造公差(支持パイプ41に対するホルダー42の取り付け公差)などの積み重なりによって、集熱板43の位置のバラツキが大きくなる傾向にある。こうしたバラツキの影響で、五徳5の載置面に対する集熱板43の突出量Dが不足してしまうと、調理容器の底面にしっかりと集熱板43を押し付けることができない。そこで、五徳5の載置面に対する集熱板43の突出量Dは、バラツキの影響を見越して、大きめに設定されている。
【0040】
ただし、五徳5の載置面から集熱板43(ホルダー42の上部)が大きく突出していると、五徳5上に調理容器を載置していないときの見栄えが悪くなるだけでなく、調理容器が軽くてホルダー42を押し下げることができない場合には、五徳5上で調理容器が大きく傾いてしまうことがある。
【0041】
これに対して、図4は、本実施例のガスコンロ1における当接体20および中央連結部5cの周辺を拡大して示した縦断面図である。前述したように中央連結部5cは、略円環形状になっており、周面に五徳5の爪部5aが接続されていると共に、上面の中央に摺動孔5dが形成されている。一方、略円板形状の当接体20は、下面から摺動孔5dよりも小径の筒状に形成された摺動筒20aが垂設されており、この摺動筒20aが摺動孔5dに挿通されて上下方向に摺動可能になっている。また、摺動筒20aの下端には、外径を拡げた拡径部20bが設けられており、拡径部20bが摺動孔5dの周縁に係合することで摺動筒20aを抜け止めしている。
【0042】
中央連結部5cの開口した底面側は、略円環形状の底板22が嵌め込まれて塞がれている。そして、当接体20と底板22との間にはコイルバネ21が圧縮した状態で収納されており、当接体20を上方に付勢している。そのため、五徳5上に載置された調理容器の底面が当接体20を押し下げると、コイルバネ21の付勢力によって当接体20を調理容器の底面に押し付けることができる。
【0043】
また、底板22の内周からは上方に向けて筒状のガイド筒22aが立設されており、このガイド筒22aの内側に筒部材30の上部が挿入されている。前述したように筒部材30内に収容された温度センサ31の位置からは当接体20の下面を見通すことが可能であり、当接体20の下面から放出される赤外線を温度センサ31で感知することで、調理容器の底面に当接した当接体20の下面に伝わる温度を非接触で計測することができる。
【0044】
このような本実施例のガスコンロ1では、五徳5の爪部5aの上面(載置面)に対する当接体20の突出量Dを設定する際に、五徳5の爪部5aと一体の中央連結部5cに対する当接体20の取り付け公差による当接体20の位置のバラツキだけを考慮すればよく、他の公差によるバラツキの影響を排除することができるので、五徳5の載置面に対する当接体20の突出量Dを最小限に抑えることが可能となる。結果として、五徳5上に調理容器を置いていないときの見栄えが良くなると共に、調理容器が軽くて当接体20を押し下げることができなくても、五徳5上での調理容器の傾きを抑えることができる。
【0045】
また、本実施例のガスコンロ1では、中央連結部5cがコンロバーナ10の中央通路14の通路径よりも大径に形成されており、中央通路14の上方を覆うようになっているため、五徳5上に載置された調理容器から煮こぼれた場合でも、煮こぼれ汁が中央通路14に流れ落ちること(筒部材30に煮こぼれ汁がかかること)を抑制することができる。
【0046】
また、本実施例のガスコンロ1では、中央連結部5cの摺動孔5dに当接体20の摺動筒20aが摺動可能に挿通されており、その摺動筒20aの径方向の外側に張り出して設けられた庇部20cが摺動箇所の上方を覆っている。こうすれば、五徳5上の調理容器から煮こぼれても、摺動箇所が庇部20cで保護されているので、摺動箇所に煮こぼれ汁がかかって中央連結部5cに当接体20が固着してしまうことを抑制することができる。尚、庇部20cは、当接体20と一体に形成されていなくてもよく、別部材で構成して当接体20に取り付けてもよい。
【0047】
また、本実施例のガスコンロ1では、当接体20や中央連結部5cに煮こぼれ汁がかかった場合に、五徳5と一体に取り外して洗うことができる。そして、五徳5を取り外しても、温度センサ31自体は、コンロ本体の筒部材30内に残り、温度センサ31の配線や接続には触れる必要がないので、清掃性の向上を図ることができる。加えて、当接体20と一体の五徳5を天板2上に設置しないと、調理容器を載置することができないため、清掃後の当接体20の付け忘れを防ぐことができる。
【0048】
また、本実施例のガスコンロ1では、中央連結部5cがコンロバーナ10(バーナヘッド12)に接することはなく、中央連結部5cとバーナヘッド12との間には通気用の隙間が設けられている。こうすれば、バーナヘッド12の外周面の炎口13から噴出する混合ガスの燃焼に伴って、中央通路14内に下方から上方に向かう空気の流れが生じることにより、コンロバーナ10の熱を受ける筒部材30を気流で冷却する効果を得ることができる。
【0049】
こうした本実施例のガスコンロ1では、コンロバーナ10の中央に対して五徳5が偏って設置されると、コンロバーナ10の周囲に形成される炎で中央連結部5cや当接体20が炙られることによって、当接体20が当接している調理容器の温度を正確に計測できなくなることがある。そこで、中央連結部5cとバーナヘッド12とで五徳5の位置決めを可能としてもよい。
【0050】
図5は、中央連結部5cとバーナヘッド12とで五徳5の位置決めを可能とする例を示した斜視図である。図示されるように中央連結部5cには、外縁部分から下方に向けて複数の凸部5eが突設されており、ここでは、6つの爪部5aの各々が接続された部分の下方に位置して6つの凸部5eが設けられている。尚、図5では、手前側の爪部5aおよび脚部5bを透過させて表すことで、凸部5eを視認し易くしている。
【0051】
一方、バーナヘッド12には、上面の外縁部分に複数の凹部12eが設けられており、図示した例では、中央連結部5cの6つの凸部5eと対向するように6つの凹部12eが設けられている。そして、天板2上に五徳5を設置する際には、中央連結部5cの凸部5eをバーナヘッド12の凹部12eに嵌め合わせることで、五徳5を位置決めすることができる。尚、凸部5eの先端は凹部12eの底に載置される必要はなく、すなわち、凸部5eの先端と凹部12eの底との間には僅かな隙間があってもよい。
【0052】
こうして五徳5をコンロバーナ10の中央に対して偏ることなく適切に位置決めしてやれば、コンロバーナ10の周囲に形成される炎で中央連結部5cや当接体20が直接的に炙られることはないので、調理容器の底面に当接した当接体20の下面に伝わる温度を正確に計測することが可能となる。
【0053】
加えて、中央連結部5cの爪部5aが接続された部分の下方に位置して凸部5eを設けておけば、五徳5上に載置された調理容器から煮こぼれた際に煮こぼれ汁が爪部5aの下面を伝って中央連結部5c側に流れてきても、凸部5eで煮こぼれ汁が塞き止められるので、中央連結部5cとバーナヘッド12との隙間から中央通路14に煮こぼれ汁が入り込むことを抑制できる。
【0054】
以上、本実施例のガスコンロ1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0055】
例えば、前述した実施例では、温度センサ31を用いて当接体20の下面の温度を非接触で計測していたが、計測方法は必ずしも非接触に限られず、図3を用いて前述したような温度計測装置40を用いて当接体20の下面の温度を計測してもよい。図6は、当接体20の下面の温度を温度計測装置40で計測する例を示した説明図である。図示されるようにコンロバーナ10の中央通路14には温度計測装置40が挿通されており、ホルダー42の上部(集熱板43)をバーナヘッド12から突出させた状態で、支持パイプ41がコンロ本体内の梁部材17にビス止め(図示省略)などで固定されている。尚、この場合のホルダー42は、本発明の「筒部材」に相当している。
【0056】
そして、天板2上に五徳5が設置されると、中央連結部5cの底面側を塞ぐ底板22の中央の貫通孔22bにホルダー42が挿通されて、当接体20の下面が集熱板43に当接してホルダー42を押し下げると共に、コイルバネ48の付勢力によって集熱板43が当接体20の下面に押し付けられる(図3(b)参照)。
【0057】
五徳5上に調理容器が載置されると、調理容器の底面が当接体20を押し下げるので、当接体20の下面に集熱板43を当接させたホルダー42も押し下げられる。このとき、コイルバネ21の付勢力によって当接体20が調理容器の底面に押し付けられ、コイルバネ48の付勢力によって集熱板43が当接体20の下面に押し付けられる。そのため、調理容器の底面の温度が当接体20に伝わり、その当接体20の下面に当接した集熱板43に伝わる温度を温度センサ44によって計測することができる。尚、コイルバネ21は省略することができ、コイルバネ48によってホルダー42と共に、集熱板43が当接した当接体20を上方に付勢してもよい。この場合、温度計測装置40のコイルバネ48が、本発明の「付勢部材」に相当する。
【0058】
このように当接体20の下面に温度計測装置40の集熱板43を押し付けて温度を計測することとしても、前述した実施例と同様に、五徳5の爪部5aの上面(載置面)に対する当接体20の突出量Dは、五徳5の爪部5aと一体の中央連結部5cに対する当接体20の取り付け公差による当接体20の位置のバラツキだけを考慮して設定すればよく、最小限に抑えることができる。ただし、前述した実施例のように、温度センサ31を用いて当接体20の下面の温度を非接触で計測すれば、当接体20と集熱板43との接触状況に影響されることがなく、計測値にバラツキが生じ難いので、五徳5と一体に当接体20を着脱可能としながら、安定かつ精度良く調理容器の温度を計測することが可能となる。
【0059】
また、前述した実施例では、当接体20の温度を非接触で計測する温度センサ31を筒部材30内に収容していた。しかし、温度センサ31の設置位置は、筒部材30内に限られず、筒部材30の下方に温度センサ31を設置することとして、温度センサ31の位置から筒部材30の内側を通して当接体20の下面が見えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ガスコンロ、 2…天板、 3…挿通孔、
4…バーナリング、 5…五徳、 5a…爪部、
5b…脚部、 5c…中央連結部、 5d…摺動孔、
5e…凸部、 5f…下辺部、 5g…五徳枠、
10…コンロバーナ、 11…バーナボディ、 11c…混合室、
12…バーナヘッド、 12e…凹部、 13…炎口、
14…中央通路、 15…混合管、 16…噴射ノズル、
17…梁部材、 18…バーナカバー、 20…当接体、
20a…摺動筒、 20b…拡径部、 20c…庇部、
21…コイルバネ、 22…底板、 22a…ガイド筒、
22b…貫通孔、 30…筒部材、 31…温度センサ、
40…温度計測装置、 41…支持パイプ、 42…ホルダー、
43…集熱板、 44…温度センサ、 48…コイルバネ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6