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  • 特許-食器洗浄システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】食器洗浄システム
(51)【国際特許分類】
   A47L 15/42 20060101AFI20221011BHJP
   A47L 15/44 20060101ALI20221011BHJP
   A47L 15/46 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A47L15/42 F
A47L15/44
A47L15/46 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018223438
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020081616
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】509334170
【氏名又は名称】花王プロフェッショナル・サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 卓
(72)【発明者】
【氏名】高本 隼人
(72)【発明者】
【氏名】相吉沢 靖宜
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-298867(JP,A)
【文献】特開2007-244577(JP,A)
【文献】特開2006-288781(JP,A)
【文献】特開平07-095950(JP,A)
【文献】特開2000-279357(JP,A)
【文献】特開2004-298621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0356429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 15/00-15/46
B08B 3/02-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食器を洗浄する洗浄ユニットと、前記洗浄ユニットとは別に設けられた食器の浸漬ユニットと、を備えた食器洗浄システムであって、
前記浸漬ユニットは、食器と浸漬用媒体とを収容する浸漬槽と、前記浸漬槽に洗浄液を送るポンプ装置とを含み、
前記ポンプ装置は、前記洗浄ユニットの所定の動作に応じて作動可能なポンプ装置であり、
前記ポンプ装置は、洗浄剤の導入手段と、希釈用水の導入手段と、洗浄剤と希釈用水を混合して洗浄液とする混合手段と、洗浄液の排出手段とを備える、
食器洗浄システム。
【請求項2】
前記ポンプ装置は、前記洗浄ユニットの運転スイッチの投入により作動可能なポンプ装置である、請求項1記載の食器洗浄システム。
【請求項3】
前記浸漬ユニットは、前記ポンプ装置の動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記ポンプ装置が所定量の洗浄液を送ると動作を停止するよう、前記ポンプ装置を制御する、請求項1又は2記載の食器洗浄システム。
【請求項4】
前記所定量は、前記浸漬槽でオーバーフローが生じない最大容量の1%以上5%以下である、請求項記載の食器洗浄システム。
【請求項5】
前記浸漬槽は、浸漬用媒体に浮遊する汚れを排出可能なオーバーフロー排出口を備えている、請求項1~の何れか1項記載の食器洗浄システム。
【請求項6】
食器を洗浄する洗浄ユニットと、前記洗浄ユニットとは別に設けられた食器の浸漬ユニットと、を備えた食器洗浄システムにより食器を洗浄する方法であって、
前記浸漬ユニットは、食器の浸漬槽と、前記浸漬槽に洗浄液を送るポンプ装置とを含み、
前記洗浄ユニットに食器を配置し、且つ前記浸漬槽に水を含む浸漬用媒体と食器を投入し、
前記ポンプ装置で、洗浄剤と希釈用水とを混合して洗浄液を調製し、
前記洗浄ユニットの所定の動作に応じて前記ポンプ装置を作動させて前記浸漬ユニットに洗浄液を送る、
食器の洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄ユニットの洗浄の開始により前記ポンプ装置を作動させて前記浸漬ユニットに洗浄液を送る、請求項記載の食器の洗浄方法。
【請求項8】
前記浸漬槽にオーバーフロー排出口を設け、前記浸漬用媒体に浮遊している汚れを、前記浸漬用媒体のオーバーフローにより、前記浸漬槽から排出させる、請求項6又は7記載の食器の洗浄方法。
【請求項9】
前記オーバーフローが、前記洗浄液を前記浸漬槽に送ることにより生じる、請求項記載の食器の洗浄方法。
【請求項10】
前記ポンプ装置が所定量の前記洗浄液を前記浸漬槽に送ると前記洗浄液の送りを停止するよう、前記ポンプ装置を制御する、請求項の何れか1項記載の食器の洗浄方法。
【請求項11】
前記所定量は、前記浸漬槽でオーバーフローが生じない最大容量の1%以上5%以下である、請求項10記載の食器の洗浄方法。
【請求項12】
浸漬用媒体に所定時間浸漬された食器を、洗浄ユニットによる洗浄に供する、請求項11の何れか1項記載の食器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗浄システム及び食器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設、病院、介護施設、学校、事業所などで食器を洗浄する場合、大量の食器を短時間で洗浄するのに適した、いわゆる業務用自動食器洗浄機が用いられる。業務用自動食器洗浄機を用いた食器の洗浄では、洗浄機による洗浄の前に、所定の浸漬液に食器を浸漬した後、スポンジを用いた予備洗いが行なわれることが多い。そのような洗浄を行うために、例えば、食器を水などの浸漬水に浸漬させる浸漬槽や、浸漬槽と浸漬後の食器を洗浄する食器洗浄機とを備えた食器洗浄システムなどが用いられている。
【0003】
特許文献1には、洗浄ポンプが設けられた機械室を有する食器洗浄機と、浸漬水に食器を浸漬する浸漬槽と、を備えた食器洗浄システムにおいて、前記機械室に設けられた第1のポンプと、前記第1のポンプと前記浸漬槽とを連結する循環パイプと、を備え、前記第1のポンプの駆動により前記循環パイプを通じて循環される循環水によって、前記浸漬槽内の前記浸漬水が撹拌される食器洗浄システムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、浸漬水が収容されるとともにこの浸漬水に食器が積層状態で浸漬される食器収容室を有する水槽本体を設け、前記食器収容室の前記浸漬水を吸い込む吸い込み部と吸い込んだ浸漬水を噴出する噴出部とを有して前記食器収容室内の深さに対応する幅をもって前記浸漬水を略水平方向に循環させる噴流発生装置を前記水槽本体の側面に設けた食器浸漬槽が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-148831号公報
【文献】特開平7-95947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
業務用自動食器洗浄機による食器の洗浄では、汚れをより確実に除去できること、作業効率をより向上させることが望まれる。
本発明は、汚れをより確実に除去でき、作業効率をより向上できる、食器洗浄システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、食器を洗浄する洗浄ユニットと、前記洗浄ユニットとは別に設けられた食器の浸漬ユニットと、を備えた食器洗浄システムであって、
前記浸漬ユニットは、食器と浸漬用媒体とを収容する浸漬槽と、前記浸漬槽に洗浄液を送るポンプ装置とを含み、
前記ポンプ装置は、前記洗浄ユニットの所定の動作に応じて作動可能なポンプ装置である、
食器洗浄システムに関する。
【0008】
また、本発明は、食器を洗浄する洗浄ユニットと、前記洗浄ユニットとは別に設けられた食器の浸漬ユニットと、を備えた食器洗浄システムにより食器を洗浄する方法であって、
前記浸漬ユニットは、食器の浸漬槽と、前記浸漬槽に洗浄液を送るポンプ装置とを含み、
前記洗浄ユニットに食器を配置し、且つ前記浸漬槽に水を含む浸漬用媒体と食器を投入し、
前記洗浄ユニットの所定の動作に応じて前記ポンプ装置を作動させて前記浸漬ユニットに洗浄液を送る、
食器の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、汚れをより確実に除去でき、作業効率をより向上できる、食器洗浄システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の食器洗浄システムの一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<食器洗浄システム>
本発明の食器洗浄システムは、食器を洗浄する洗浄ユニットと、前記洗浄ユニットとは別に設けられた食器の浸漬ユニットと、を備える。
前記浸漬ユニットは、食器と浸漬用媒体とを収容する浸漬槽と、前記浸漬槽に洗浄液を送るポンプ装置とを含む。
【0012】
洗浄ユニットは、例えば業務用の自動食器洗浄機であり、市販されている種々のタイプの装置を使用可能である。一例では、洗浄ユニットはラックに収容された数枚から十数枚の皿などの食器をラックごと受容し、加熱された洗浄水を洗浄剤の存在下に噴射して1分程度洗浄を行うことによって食器を洗浄する。洗浄された食器は通常ラックごと風乾され、次のラックと入れ替えられる。このサイクルを繰り返すことにより、皿であれば数百枚/時またはそれ以上の食器を洗浄することができる。
【0013】
洗浄ユニットが業務用の自動食器洗浄機である場合、例えばドアタイプ、ツインラックタイプ、アンダーカウンタータイプなど種々の製品があるが、上記の機能を備えたものであれば何れも使用可能である。洗浄ユニットは通常は水道に直結され、単相または三相電源に接続されて動作する。食器としては各種形状および大きさの皿などのほか、フォーク、スプーン、ナイフ、箸など自動食器洗浄の対象となるものがすべて含まれ、また調理器具であってもよい。調理器具の場合、洗浄ユニットは器具洗浄機と呼ばれる場合もある。
【0014】
洗浄ユニットは例えば制御のためのパネルが設けられ、パネルには電源スイッチ、運転スイッチ、温度や水圧などの設定スイッチ、洗浄や濯ぎの切り替えスイッチ、コース設定スイッチなどが備えられていてよい。本発明の食器洗浄システムでは、例えば運転スイッチの操作と、後述するポンプ装置の動作とが関連付けられる。
【0015】
食器の浸漬ユニットは洗浄ユニットとは別に設けられ、洗浄ユニットで洗浄を行う前の食器を収容する浸漬槽を有する。浸漬槽は好ましくは洗浄ユニット近傍に、例えば洗浄ユニットに隣接して設置され、洗浄前の食器と浸漬用媒体とを収容可能なものであれば、どのような大きさや形状を有していてもよい。一例では、浸漬槽は業務用のステンレス製シンクであり、一槽タイプ、二槽タイプ、三槽タイプなどの何れであってもよく、またバックガードの付いたものやコーナー部分にアールが付けられたものなどであってもよい。大きさは一般には、間口が450mm~1800mm程度、奥行きが450mm~750mm程度、高さが700mm~900mm程度であるが、これらに限定されるものではない。浸漬槽の深さは200mm~400mm程度であり、従って容量は40リットル~540リットル程度の範囲となりうるが、これに限定されるものではない。
【0016】
浸漬槽は、食器および浸漬用媒体を収容する。ここでの食器は、例えば食堂やレストラン、各種の料理店で客に料理を供した後、厨房に返却されてきた食器であり、料理の残滓や油汚れなどが付着している。浸漬用媒体はこのような食器を予め浸漬して汚れを落ち易くし、洗浄ユニットでの洗浄処理を促進するためのものであり、例えば洗浄剤が添加された水または湯であってよい。多くの場合、食器は手作業で浸漬槽中の浸漬用媒体に投入されて浸漬され、その後ラックに移し替えられて洗浄ユニットへと導入される。浸漬時間に特に制限はない。なお浸漬槽には通常、排水栓およびオーバーフロー排出口が設けられる。ここでオーバーフロー排出口は、浸漬槽の側面上方に設けることができ、側面上方に孔を設け、あるいは、側面上方の縁部に排出用の溝を設けるなどすることで実現できる。また必要に応じて給水栓、例えば温水と冷水の混合栓を設けることができる。
【0017】
浸漬槽には、ポンプ装置から洗浄液が供給されてよい。このポンプ装置は、洗浄剤の導入手段と、希釈用水の導入手段と、洗浄剤と希釈用水を混合して洗浄液とする混合手段と、洗浄液の排出手段とを備えることができる。ポンプ装置は空の浸漬槽に洗浄液を供給してもよいし、また浸漬槽内で一定の水位を有する浸漬用媒体に洗浄液を追加的に供給してもよい。
【0018】
ポンプ装置は例えば、水が供給される水供給口と(希釈用水の導入手段)、洗浄剤が供給される洗浄剤供給口と(洗浄剤の導入手段)、洗浄液が排出される出口(排出手段)とを有し、混合手段は水供給口および洗浄剤供給口から供給される水と洗浄剤を所定の比率で混合して洗浄剤を希釈し、得られた洗浄液を出口から排出するよう動作可能である。
【0019】
一例では、水供給口は水道に直結され、水道水は電磁弁によってオンオフ制御されて定流量弁へと送られる。定流量弁は混合ユニットに接続され、そこに洗浄剤供給口からの洗浄剤が添加される。一例では、ポンプ装置は、洗浄剤供給口と混合ユニットの間に配置され、速度制御可能なチューブポンプ(しごきポンプ)を含む。該チューブポンプによって、洗浄剤は混合ユニットへと添加され、かくして所望の比率で希釈される。希釈して得られた洗浄液は、出口から浸漬槽へと供給される。
【0020】
一例では、ポンプ装置は、洗浄剤を、質量基準で、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上、そして、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下、更に好ましくは0.2%以下の濃度に希釈可能である。
この希釈濃度は、例えばチューブポンプの速度を制御することによって設定可能である。またポンプ装置は、出口から洗浄液を好ましくは0.01L/分以上、より好ましくは0.1L/分以上、更に好ましくは1L/分以上、そして、好ましくは50L/分以下、より好ましくは30L/分以下、更に好ましくは20L/分以下の量で吐出可能である。この吐出量は、定流量弁によって設定可能である。
【0021】
さらにポンプ装置は例えば、定量供給を行うためのスイッチを有してよく、このスイッチが操作された場合に、所定濃度の洗浄液を所定量、例えば使用される浸漬槽に適した量で供給するようにしてよい。例えば100リットルの洗浄液を空の浸漬槽に供給するため、ポンプ装置はこのスイッチが操作された場合に、10L/分の吐出量で10分間作動してよい。こうした吐出量や作動時間は適宜設定可能である。
【0022】
本発明の一例によれば、ポンプ装置は洗浄ユニットの所定の動作に応じて作動可能なポンプ装置である。洗浄ユニットの所定の動作は、例えば洗浄ユニットの運転スイッチの投入であってよい。「洗浄ユニットの所定の動作に応じて」とは、ポンプ装置が洗浄ユニットの動作に関連して作動すること、例えば運転スイッチの投入に連動して作動することであり、これは例えばポンプ装置の電源を洗浄ユニットから取り、洗浄ユニットの運転スイッチが投入された場合にポンプ装置を一定時間だけ作動させることによって達成できる。一例では、洗浄ユニットの運転スイッチが投入された場合、すなわち洗浄ユニットの洗浄が開始された場合に、ポンプ装置には1分間だけ作動電圧が印加され、所定量の洗浄液を出口から浸漬槽に供給することができる。
【0023】
洗浄ユニットの所定動作としては他にも、運転スイッチの投入からの所定時間の経過、洗浄の完了、食器洗浄機のドアの開閉などが挙げられる。このような関連付けを行うことにより、洗浄ユニットの運転が行われるたびに、ポンプ装置が所定量の洗浄液を浸漬槽に吐出するようにできる。洗浄ユニットにより食器の洗浄が行われると、例えば1ラック分の食器が洗浄処理され、次のラック分の食器が浸漬槽から取り出されて洗浄ユニットに移される。その都度洗浄液が浸漬槽に吐出されることで、洗浄液が適切に補給されると共に、浸漬用媒体に浮遊する油汚れなどが押し流されて、浸漬槽に汚れが蓄積することが防止される。もちろん、ポンプ装置の作動は洗浄ユニットの複数回の動作に関連付けてもよく、例えば洗浄を2回または3回行うごとにポンプ装置が所定時間にわたって作動するように設定してもよい。
【0024】
一例によれば、浸漬ユニットは、ポンプ装置の動作を制御する制御手段を備えることができる。この制御手段は例えばポンプ装置に設けられたプロセッサまたはロジックデバイスであってよく、洗浄ユニットの所定動作に応じて、例えば運転スイッチの投入に応じて洗浄ユニットから送られた信号に応じて電磁弁を開き、チューブポンプを回転させて所要量の洗浄液を吐出する。制御手段はその後、ポンプ装置が所定量の洗浄液を吐出した場合に、または所定時間作動を行った場合に、例えば電磁弁を閉じチューブポンプの回転動作を停止することにより、ポンプ装置を制御するものであってよい。
【0025】
別の例によれば、浸漬槽には水位センサーを設けて、ポンプ装置の動作を水位に応じて制御してもよい。例えば水位センサーはポンプ装置の制御手段に接続することができ、浸漬用媒体が所定水位に満たない場合は、洗浄ユニットの所定動作に応じたポンプ装置の作動時間を長くすることができる。また浸漬用媒体が所定水位以上ある場合は、ポンプ装置の作動時間を短くして吐出される洗浄液の量を少なくしてもよい。
【0026】
前述したように、浸漬槽はオーバーフロー排出口を備えるものであってよい。洗浄ユニットの動作に連動して浸漬ユニットが作動し、所定量の洗浄液が浸漬槽内の浸漬用媒体に追加されると、浸漬用媒体に浮遊する汚れは、オーバーフロー排出口から排出可能である。この場合の洗浄液の所定量は、浸漬槽でオーバーフローが生じない浸漬用媒体の最大容量の1%以上5%以下であってよい。例えばこの最大容量が100リットルである場合、所定量は1リットルから5リットルであり、ポンプ装置は5L/分で作動可能であるとすれば、1分までの時間内で作動されてよい。
【0027】
本発明において、食器は、皿、椀、コップ、グラス、箸、スプーン、フォーク、ナイフ等の食事の際に用いられる器具の他に、タッパー、瓶等の保存容器、包丁、まな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル等の調理器具等の、食材が接触する部材や器具を含む意味であってよい。
【0028】
<食器の洗浄方法>
本発明の食器の洗浄方法は、食器を洗浄する洗浄ユニットと、前記洗浄ユニットとは別に設けられた食器の浸漬ユニットと、を備えた食器洗浄システムにより食器を洗浄する方法であって、
前記浸漬ユニットは、食器の浸漬槽と、前記浸漬槽に洗浄液を送るポンプ装置とを含み、
前記洗浄ユニットに食器を配置し、且つ前記浸漬槽に水を含む浸漬用媒体と食器を投入し、
前記洗浄ユニットの所定の動作に応じて前記ポンプ装置を作動させて前記浸漬ユニットに洗浄液を送る、
食器の洗浄方法である。
【0029】
本発明の食器の洗浄方法は、好ましくは本発明の食器洗浄システムを用いて実施される。
本発明の食器の洗浄方法で用いる食器洗浄システムについて、洗浄ユニット、食器の浸漬ユニットの具体例及び好ましい態様などは、それぞれ、本発明の食器洗浄システムと同じである。また、本発明の食器の洗浄システムで述べた事項は、食器の洗浄方法に適宜適用できる。
【0030】
本発明では、前記洗浄ユニットの所定の動作に応じて前記ポンプ装置を作動させて前記浸漬ユニットに洗浄液を送る。前述の通り、洗浄ユニットの洗浄の開始、洗浄の完了、食器洗浄機のドアの開閉などの動作と関連付けてポンプ装置を作動させることにより、洗浄ユニットの運転が行われるたびに、ポンプ装置が所定量の洗浄液を浸漬槽に吐出するようにできる。一例では、前記洗浄ユニットの洗浄の開始により前記ポンプ装置を作動させて前記浸漬ユニットに洗浄液を送ることができる。これにより本発明では、浸漬槽中の浸漬用媒体に所定のタイミングで洗浄液が追加されることになり、浸漬用媒体中の界面活性剤などの有効成分の濃度が維持される。前述の通り、浸漬槽はオーバーフロー排出口を備えるものであってよく、その場合、浸漬用媒体に浮遊している汚れを浸漬用媒体のオーバーフローにより、浸漬槽の、好ましくは排出口から排出させることができる。本発明では、オーバーフローが、前記洗浄液を前記浸漬槽に送ることにより生じるものであってよい。
【0031】
本発明では、ポンプ装置で、洗浄剤と希釈用水とを混合して洗浄液を調製することができる。一例では、ポンプ装置は、洗浄剤の導入手段と、希釈用水の導入手段と、洗浄剤と希釈用水を混合して洗浄液とする混合手段と、洗浄液の排出手段とを備えることができるので、そのようなポンプ装置を用いることが好ましい。
【0032】
本発明では、ポンプ装置が所定量の洗浄液を浸漬槽に送ると洗浄液の送りを停止するよう、ポンプ装置を制御することができる。この場合の所定量は、前記浸漬槽でオーバーフローが生じない最大容量の1%以上5%以下であってよい。
【0033】
本発明では、洗浄液の導入後、所定時間食器を浸漬することができる。例えば、洗浄液の導入後、1分~180分、食器を浸漬することができる。
【0034】
本発明では、浸漬用媒体に所定時間浸漬された食器を、洗浄ユニットによる洗浄に供することができる。例えば、浸漬用媒体に、1分~180分、浸漬された食器を、洗浄ユニットによる洗浄に供することができる。
【0035】
<洗浄剤>
本発明の食器洗浄システム及び食器の洗浄方法に用いられる洗浄液(以下、本発明の洗浄液という場合もある)は、例えば、この種の洗浄に適した公知の洗浄剤から調製することができる。
本発明の洗浄液に用いる洗浄剤は、食品に含まれる油やデンプン質などに起因する食品汚れを、浸漬時に機械力を加えることなく可能な限り食器から分離するものが好ましく、分離した汚れを、浸漬槽の洗浄液(洗浄用媒体)の上部に浮遊させるものがより好ましい。
【0036】
本発明の洗浄液に用いる洗浄剤の一例として、(A)アニオン性界面活性剤、(B)非イオン性界面活性剤、(C)ハイドロトロープ剤、及び(D)その他の成分〔(A)~(C)を除く〕を含有する洗浄剤が挙げられる。
【0037】
(A)アニオン性界面活性剤としては、炭素数8以上21以下の炭化水素基と、硫酸エステル基又はスルホン酸基とを有するアニオン性界面活性剤が挙げられる。具体的には、(A1)スルホサクシネート又はその塩〔以下、(A1)成分という〕、(A2)硫酸エステル塩〔以下、(A2)成分という〕、(A3)置換ベンゼンスルホン酸塩〔以下、(A3)成分という〕、及び(A4)アルカンスルホン酸塩から選ばれる1種以上のアニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0038】
(A1)成分としては、炭化水素基がアルキル基であるものが挙げられる。(A1)成分としては、炭素数8以上18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を2つ有するジアルキルスルホサクシネート又はその塩が挙げられる。具体的には、下記一般式(A1)で表されるジアルキルスルホサクシネート又はその塩が挙げられる。
【0039】
【化1】
【0040】
〔式中、R1a、R2aは、それぞれ、炭素数8以上18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。Mは無機又は有機の陽イオンである。〕
【0041】
一般式(A1)中のR1a、R2aは、同一でも異なっていても良い。R1a、R2aの炭素数は、食品汚れ、なかでもデンプン汚れの除去性の向上の観点から、それぞれ、8以上であり、そして、食品汚れ、なかでもデンプン汚れの除去性のさらなる向上の観点から、18以下であり、14以下がより好ましく、10以下が更に好ましい。
一般式(A1)中、R1a、R2aは、それぞれ、具体的には、n-オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、2-エチルヘキシル基、sec-オクチル基、イソペンチル基、イソノニル基、イソデシル基、及びシクロヘキシル基から選ばれるアルキル基が挙げられ、好ましくはn-オクチル基、sec-オクチル基、デシル基、イソデシル基、及び2-エチルヘキシル基から選ばれる基である。
一般式(A1)中、Mとしては、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオンから選ばれる無機陽イオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオンから選ばれる有機陽イオンが挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、及びアンモニウムイオンから選ばれる陽イオンである。好ましくは、ナトリウムイオン及びカリウムイオンであり、ナトリウムイオンがより好ましい。
【0042】
(A2)成分としては、炭化水素基として、アルキル基、アルケニル基、又はアリール基を有するものが挙げられる。
(A2)成分はオキシアルキレン基を含むものであってよい。
(A2)成分としては、アルキル硫酸エステル塩、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。
(A2)成分の炭化水素基は、洗浄力の観点から、炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして18以下、好ましくは14以下、さらに好ましくは12以下である。
(A2)成分の塩は、(A1)成分と同じである。
【0043】
(A3)成分としては、炭素数10以上16以下の炭化水素基と、スルホン酸基を有する置換ベンゼンスルホン酸塩が好ましい。(A3)成分としては、炭化水素基がアルキル基であるものが挙げられる。(A)成分は、炭素数10以上16以下のアルキル基と、スルホン酸基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましい。塩は、(A1)成分と同じである。
【0044】
(A4)成分としては、アルカンスルホン酸の炭素数が8以上24以下のものが挙げられる。塩は、(A1)成分と同じである。
【0045】
(B)非イオン性界面活性剤としては、アルキル(ポリ)グリコシド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。具体的には、(B1)下記一般式(B1)で表されるアルキル(ポリ)グリコシド〔以下、(B1)成分という〕、(B2)下記一般式(B2)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及び(B3)下記一般式(B3)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルから選ばれる1種以上の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
1b(OR2b (B1)
〔式中、R1bは、直鎖又は分岐鎖の炭素数8以上18以下、好ましくは12以上14以下のアルキル基、アルケニル基又はアルキルフェニル基、好ましくはアルキル基を示し、R2bは、炭素数2以上4以下のアルキレン基を示し、Gは、炭素数5又は6の還元糖に由来する残基を示す。xは、平均付加モル数を示し、0以上5以下の数である。yは、その平均値が1以上5以下となる数を示す。〕
3bO-(EO)-H (B2)
〔式中、R3bは、炭素数6以上18以下の分岐鎖アルキル基であり、EOは、エチレンオキシ基であり、zは、EOの平均付加モル数を示し、0超6以下の数である。〕
4bO-[(EO)・(AO)]-H (B3)
〔式中、R4bは、炭素数8以上20以下の第2級アルキル基であり、EOは、エチレンオキシ基であり、AOは、炭素数3又は4のアルキレンオキシ基であり、mは、EOの平均付加モル数を示し、nは、AOの平均付加モル数を示し、mは、4以上10以下の数であり、nは、1以上6以下の数であり、EOとAOはブロック又はランダムに結合している。〕
【0046】
(B2)成分について、一般式(B2)中のR3bの炭素数は、洗浄性、泡立ち抑制の観点から、6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは14以下である。
一般式(B2)中のR3bの分岐鎖アルキル基としては、アルキル基の末端がイソ分岐していてもよく、第2級アルコール由来のアルキル基(第2級アルコールから水酸基を除去した残基)であってもよい。
一般式(B2)中のR3bは、洗浄性及び機械洗浄機を用いた際の泡立ち抑制の観点から、第2級アルキル基が好ましい。ここで、第2級アルキル基とは、第2級アルコールから水酸基を除去した残基であり、一般式(B2)中のR3bOにおいてOと結合するR3bの炭素原子が第2級炭素原子となっている。(B2)成分については、第2級アルキル基を分岐鎖状のアルキル基に含める。
【0047】
(B3)成分について、一般式(B3)中のR4bは、炭素数8以上20以下の第2級アルキル基である。ここで、第2級アルキル基とは、第2級アルコールから水酸基を除去した残基であり、一般式(B3)中のR4bO-においてO-と結合するR4bの炭素原子が第2級炭素原子となっている。
4bの炭素数は、洗浄性、泡立ち抑制の観点から、8以上、好ましくは9以上、より好ましくは10以上、そして、透明安定性の観点から、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
【0048】
(C)ハイドロトロープ剤としては、組成物の低粘度化及び取扱い性を向上させる観点から、溶媒が挙げられる。(C)成分は、好ましくは炭素数2以上、より好ましくは炭素数3以上、そして、好ましくは炭素数10以下、より好ましくは炭素数8以下の水溶性有機溶媒である。(C)成分は、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、フェニルグリコール、フェノキシイソプロパノール、及びブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)から選ばれる水溶性有機溶媒が好ましい。
【0049】
(D)その他の成分〔(A)~(C)を除く〕としては、本発明の目的を損なわない範囲で、任意の公知成分を用いることができる。具体的には、分散剤、pH調整剤、増粘剤、粘度調整剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、抑泡剤、漂白剤、漂白活性化剤などの成分(ただし、(A)~(C)を除く)が挙げられる。
【0050】
洗浄剤のpHは、洗浄力の観点から、20℃で、好ましくは5以上、より好ましくは5.5以上、さらに好ましくは6以上であり、皮膚への負担を低減する観点から、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。また、本発明の洗浄液もこの範囲のpHであってよい。その場合、20℃でのpHであってもよいし、洗浄温度におけるpHであってよい。
【実施例
【0051】
本発明の食器洗浄システムを用いた食器の洗浄の一例について図1に基づき説明する。
図1中、1は浸漬槽、2はポンプ装置、3は食器洗浄機、4は洗浄剤、5は食器、6はオーバーフロー排出口、7aは食器に付着した汚れ、7bは浮遊する汚れ、8は浸漬用媒体である。浸漬槽1、ポンプ装置2は浸漬ユニットの構成要素であってよい。また、食器洗浄機3は洗浄ユニットの構成要素であってよい。
【0052】
この例では、浸漬槽1中で汚れた食器5が浸漬用媒体8に浸漬されている。浸漬媒体8は水を含む。浸漬槽1は、オーバーフロー排出口6が形成されている。
【0053】
この例では、ポンプ装置2は、図示はしないが、水が供給される水供給口と(希釈用水の導入手段)、洗浄剤が供給される洗浄剤供給口と(洗浄剤の導入手段)、洗浄液が排出される出口(排出手段)とを有しており、混合手段は水供給口および洗浄剤供給口から供給される水と洗浄剤を所定の比率で混合して洗浄剤を希釈し、得られた洗浄液を出口から排出するように動作する。洗浄剤供給口は一端が洗浄剤4と連通しており、必要に応じて洗浄剤4をくみ上げることができる。図中、洗浄剤4からの矢印がこれを示している。
また、ポンプ装置2では、水供給口は水道に直結され(図中、ポンプ装置2に向かう上方の矢印がこれを示している)、水道水は電磁弁によってオンオフ制御されて定流量弁へと送られる。定流量弁は混合ユニットに接続され、そこに洗浄剤供給口からの洗浄剤が添加される。また、ポンプ装置2は、図示はしないが、洗浄剤供給口と混合ユニットの間に配置され速度制御可能なチューブポンプ(しごきポンプ)を備えている。該チューブポンプによって、洗浄剤4は混合ユニットへと添加され所望の比率で希釈される。希釈して得られた洗浄液は、出口から浸漬槽1へと供給される。図中、ポンプ装置2の下方からの矢印がこれを示している。
【0054】
この例では、ポンプ装置2の電源(図示せず)は食器洗浄機3からとっている。図中、ポンプ装置2と食器洗浄機3とを結ぶ線がこれを示している。ポンプ装置2は、食器洗浄機3の洗浄開始のスイッチが投入されると作動して、洗浄剤4をくみ上げるとともに水道に結合された水供給口の電磁弁が解放されて水道水が定流量弁へと送られる。洗浄剤4と水道水は混合ユニットで混合されて洗浄液が得られる。得られた洗浄液はポンプ装置2の出口から排出されて、食器5が収容された浸漬槽1に供給される。
ポンプ装置2は、一定量の洗浄液を排出したら排出を停止するように設定可能である。浸漬槽1にはオーバーフロー排出口6が設けられており、洗浄液の投入により、汚れ7bなどをオーバーフローさせて排出できるようになっている。浸漬槽1で所定時間浸漬された食器5は、食器洗浄機3で洗浄できる。
【0055】
このように本発明では、食器洗浄機の所定の動作に関連してフレッシュな洗浄液が定常的に浸漬槽に供給されるため、浸漬槽での食器の前処理を非常に効率的かつ効果的に行うことができる。また、浸漬槽の浸漬用媒体に浮かび上がってくる油汚れなどを、洗浄液の供給と連動させてオーバーフローさせて浸漬槽から排出できるため、浸漬用媒体の清浄さが保たれる。
【符号の説明】
【0056】
1:浸漬槽
2:ポンプ装置
3:食器洗浄機
4:洗浄剤
5:食器
6:オーバーフロー排出口
7a、7b:汚れ
8:浸漬用媒体
図1