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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】噴射ノズル及び噴射システム
(51)【国際特許分類】
   B05B 3/10 20060101AFI20221011BHJP
   B05B 3/02 20060101ALI20221011BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20221011BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20221011BHJP
   A47K 4/00 20060101ALI20221011BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B05B3/10 A
B05B3/02 H
B05B1/14 Z
B08B3/02 G
A47K4/00
E04H1/12 301
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018234720
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020093239
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000104973
【氏名又は名称】クリナップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】小井戸 文彦
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-527240(JP,A)
【文献】特開平08-229156(JP,A)
【文献】特開2012-110643(JP,A)
【文献】特開2011-041756(JP,A)
【文献】特開昭63-077561(JP,A)
【文献】特開平08-047549(JP,A)
【文献】特開2009-195272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00-3/18
B05D1/00-7/26
B08B3/00-3/14
A47K3/02-4/00
E04H1/00-1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間の内部に位置し、前記空間を区画する区画体の、前記空間に面した表面に向けて流体を噴射する噴射ノズルであって、
前記流体を噴射する複数の噴射孔を有する、回転可能なノズル体を備え、
前記複数の噴射孔の少なくとも一部の断面積は、
前記複数の噴射孔から噴射された前記流体の、前記区画体の、前記空間に面した表面における各到達点が、前記ノズル体の回転によって前記区画体の、前記空間に面した表面に描く流体到達線で仕切られた範囲の面積に応じて設定されていること
を特徴とする噴射ノズル。
【請求項2】
前記複数の噴射孔の少なくともの一部の中心間の間隔は、
前記ノズル体の表面において、等間隔であること
を特徴とする請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項3】
空間の内部に位置し、前記空間を区画する区画体の、前記空間に面した表面に向けて流体を噴射する噴射ノズルであって、
前記流体を噴射する複数の噴射孔を有する、回転可能なノズル体を備え、
前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、前記ノズル体に、
前記複数の噴射孔から噴射された前記流体の、前記区画体の、前記空間に面した表面における各到達点の間隔が均等になるように設定されていること
を特徴とする噴射ノズル。
【請求項4】
前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、前記ノズル体に、
前記複数の噴射孔から噴射された前記流体の、前記区画体の、前記空間に面した表面における各到達点の間隔を均等になるように設定し、前記各到達点から前記ノズル体に向かうラインに沿って設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の噴射ノズル。
【請求項5】
前記区画体は、前記ノズル体が取り付けられる噴射ノズル取付面を有し、
前記ノズル体は、球状ノズル体であり、
前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、
前記球状ノズル体の、前記噴射ノズル取付面側に位置する取付面側半球部に設けられていること
を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の噴射ノズル。
【請求項6】
前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、
前記球状ノズル体に、前記球状ノズル体の前記噴射ノズル取付面側の頂点と、前記球状ノズル体の、前記噴射ノズル取付面と対向した対向面側の頂点とを通り、前記球状ノズル体の表面に描いた1つ円の円弧に沿って、配されていること
を特徴とする請求項5に記載の噴射ノズル。
【請求項7】
前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、
前記球状ノズル体に、前記球状ノズル体の前記噴射ノズル取付面側の頂点と、前記球状ノズル体の前記噴射ノズル取付面と対向した対向面側の頂点とを結ぶ軸を中心に回転させた場合の回転方向にずれて、配されていること
を特徴とする請求項5に記載の噴射ノズル。
【請求項8】
空間の内部に位置し、前記空間を区画する区画体の、前記空間に面した表面に向けて流体を噴射する噴射ノズルを含む噴射システムであって、
前記噴射ノズルは、請求項1~7のいずれか1項に記載の噴射ノズルであること
を特徴とする噴射システム。
【請求項9】
前記空間は、角筒形の内壁、又は円筒形の内壁を含むこと
を特徴とする請求項8に記載の噴射システム。
【請求項10】
前記内壁は、天井と床との間に設けられていること
を特徴とする請求項9に記載の噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、噴射ノズル及び噴射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室を使用し続けると、浴室の内面、例えば、浴槽、床、内壁、天井、浴槽、窓、及びドア等に汚れが付着する。浴室の洗浄は、人による洗浄と拭き取りによって行われているが、効率性、及び衛生性の更なる向上を図るため、浴室洗浄システムの開発が進んでいる。例えば、特許文献1には、浴室自動洗浄システムが記載されている。この浴室自動洗浄システムは、浴室の天井から床に向けて設けられた、上下動自在なノズル軸と、ノズル軸の先端に取り付けられた、水圧で回転するスプリンクラー式ノズルと、を備えている。洗浄時には、ノズル軸を上下動させながら、先端のスプリンクラー式ノズルから浴室の内面の全体へ温水を散水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-209957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された浴室自動洗浄システムでは、ノズル軸が上下動するので、浴室内の縦方向の全域に散水することができる。しかし、ノズル軸を上下動させるために、構造や制御系が複雑となり、製品コストが上昇しやすい。
【0005】
また、ノズルは、浴室、即ち空間の中心に配置されて散水する仕様となっている。このため、ノズル表面には、複数の噴射孔が均等に配置される。また、噴射孔それぞれの大きさも均一とされる。このようなノズルが、浴室の中心に存在すると邪魔である。このため、人が入室する際には、ノズルが邪魔にならないように、ノズルを天井側に移動させるか、ノズルを取り外す必要があり、不便である。
【0006】
このような不便を解消するためには、ノズルを空間の中心から外れた位置に配置すること、例えば、ノズルを天井に近接させて配置することが考えられる。しかし、ノズルを天井に近接させて配置すると、ノズル近傍では散水量が多くなるが、ノズルから離れるほど散水量が少なくなり、散水にムラが生じる、という事情がある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、その目的は、空間の中心から外れた位置に配置されても流体散布にムラが生じにくい噴射ノズル、及びそのような噴射ノズルを備えた噴射システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る噴射ノズルは、空間の内部に位置し、前記空間を区画する区画体の、前記空間に面した表面に向けて流体を噴射する噴射ノズルであって、前記流体を噴射する複数の噴射孔を有する、回転可能なノズル体を備え、前記複数の噴射孔の少なくとも一部の断面積は、前記複数の噴射孔から噴射された前記流体の、前記区画体の、前記空間に面した表面における各到達点が、前記ノズル体の回転によって前記区画体の、前記空間に面した表面に描く流体到達線で仕切られた範囲の面積に応じて設定されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る噴射ノズルは、第1発明において、前記複数の噴射孔の少なくともの一部の中心間の間隔は、前記ノズル体の表面において、等間隔であることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る噴射ノズルは、空間の内部に位置し、前記空間を区画する区画体の、前記空間に面した表面に向けて流体を噴射する噴射ノズルであって、前記流体を噴射する複数の噴射孔を有する、回転可能なノズル体を備え、前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、前記ノズル体に、前記複数の噴射孔から噴射された前記流体の、前記区画体の、前記空間に面した表面における各到達点の間隔が均等になるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る噴射ノズルは、第1発明において、前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、前記ノズル体に、前記複数の噴射孔から噴射された前記流体の、前記区画体の、前記空間に面した表面における各到達点の間隔を均等になるように設定し、前記各到達点から前記ノズル体に向かうラインに沿って設けられていることを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る噴射ノズルは、第1発明~第4発明のいずれか1つにおいて、前記区画体は、前記ノズル体が取り付けられる噴射ノズル取付面を有し、前記ノズル体は、球状ノズル体であり、前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、前記球状ノズル体の、前記噴射ノズル取付面側に位置する取付面側半球部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る噴射ノズルは、第5発明において、前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、前記球状ノズル体に、前記球状ノズル体の前記噴射ノズル取付面側の頂点と、前記球状ノズル体の、前記噴射ノズル取付面と対向した対向面側の頂点とを通り、前記球状ノズル体の表面に描いた1つ円の円弧に沿って、配されていることを特徴とする。
【0014】
第7発明に係る噴射ノズルは、第5発明において、前記複数の噴射孔の少なくとも一部は、前記球状ノズル体に、前記球状ノズル体の前記噴射ノズル取付面側の頂点と、前記球状ノズル体の前記噴射ノズル取付面と対向した対向面側の頂点とを結ぶ軸を中心に回転させた場合の回転方向にずれて、配されていることを特徴とする。
【0015】
第8発明に係る噴射システムは、空間の内部に位置し、前記空間を区画する区画体の、前記空間に面した表面に向けて流体を噴射する噴射ノズルを含む噴射システムであって、前記噴射ノズルは、第1発明~第7発明のいずれか1つに記載の噴射ノズルであることを特徴とする。
【0016】
第9発明に係る噴射システムは、第8発明において、前記空間は、角筒形の内壁、又は円筒形の内壁を含むことを特徴とする。
【0017】
第10発明に係る噴射システムは、第9発明において、前記内壁は、天井と床との間に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1発明に係る噴射ノズルによれば、複数の噴射孔の少なくとも一部の断面積は、複数の噴射孔から噴射された流体の、区画体の、空間に面した表面における各到達点が、ノズル体の回転によって区画体の、空間に面した表面に描く流体到達線で仕切られた範囲の面積に応じて設定されている。これにより、空間の中心から外れた位置に配置されても、流体散布にムラが生じにくい噴射ノズルを得ることができる。また、流体が液体であるとき、ノズル体の近傍における液垂れを抑制できる。これにより、区画体の、空間に面した表面を、清浄度よく、しかも、均一に洗浄することが可能な噴射ノズルを得ることができる。
【0019】
第2発明に係る噴射ノズルによれば、第1発明において、複数の噴射孔の少なくともの一部の中心間の間隔は、ノズル体の表面において、等間隔である。このように、噴射孔の少なくともの一部の中心間の間隔を等間隔としても、流体散布にムラが生じにくい噴射ノズルを得ることができる。また、流体が液体であるとき、ノズル体の近傍における液垂れを抑制でき、区画体の、空間に面した表面を、清浄度よく、しかも、均一に洗浄することが可能な噴射ノズルを得ることができる。
【0020】
第3発明に係る噴射ノズルによれば、複数の噴射孔の少なくとも一部は、ノズル体に、複数の噴射孔から噴射された流体の、区画体の、空間に面した表面における各到達点の間隔を均等になるように設定し、各到達点からノズル体に向かうラインに沿って設けられている。これにより、空間の中心から外れた位置に配置されても、流体散布にムラが生じにくい噴射ノズルを得ることができる。また、流体が液体であるとき、ノズル体の近傍における液垂れを抑制できる。これにより、区画体の、空間に面した表面を、清浄度よく、しかも、均一に洗浄することが可能な噴射ノズルを得ることができる。
【0021】
第4発明に係る噴射ノズルによれば、第1発明において、複数の噴射孔の少なくとも一部は、ノズル体に、複数の噴射孔から噴射された流体の、区画体の、空間に面した表面における各到達点の間隔を均等になるように設定し、各到達点からノズル体に向かうラインに沿って設けられている。これにより、流体散布にムラが、さらに生じにくい噴射ノズルを得ることができる。また、流体が液体であるとき、ノズル体の近傍における液垂れを、より強力に抑制することができる。
【0022】
第5発明に係る噴射ノズルによれば、第1発明~第4発明のいずれか1つにおいて、区画体は、ノズル体が取り付けられる噴射ノズル取付面を有し、ノズル体は、球状ノズル体である。そして、複数の噴射孔の少なくとも一部は、球状ノズル体の、噴射ノズル取付面側に位置する取付面側半球部に設けられている。これにより、区画体の噴射ノズル取付面に対する流体散布にムラが生じにくい噴射ノズルを得ることができる。また、流体が液体であるとき、ノズル体の近傍における液垂れを抑制できる。これにより、区画体の噴射ノズル取付面を、清浄度よく、しかも、均一に洗浄することが可能な噴射ノズルを得ることができる。
【0023】
第6発明に係る噴射ノズルによれば、第5発明において、噴射ノズルの1つの具体例が提供される。
【0024】
第7発明に係る噴射ノズルによれば、第5発明において、噴射ノズルの別の具体例が提供される。また、複数の噴射孔の一部を回転方向にずれて配するので、複数の噴射孔の少なくとも一部のそれぞれが互いに干渉することを抑制できる。
【0025】
第8発明に係る噴射システムによれば、第1発明~第7発明のいずれか1つに記載の噴射ノズルを備えている。これにより、噴射ノズルが、空間の中心から外れた位置に配置されても、流体散布にムラが生じにくい噴射システムを得ることができる。また、流体が液体であるとき、ノズル体の近傍における液垂れを抑制できる。これにより、区画体の、空間に面した表面を、清浄度よく、しかも、均一に洗浄することが可能な噴射システムを得ることができる。
【0026】
第9発明に係る噴射システムによれば、第8発明において、空間の具体例が提供される。
【0027】
第10発明に係る噴射システムによれば、第9発明において、角筒形の内壁、又は円筒形の内壁を含む空間の具体例が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルが用いられた浴室洗浄システムを備えた浴室の模式斜視図である。
図2図2は、浴室洗浄システムの一例を示す模式ブロック図である。
図3図3(a)は、この発明の参考例に係る噴射ノズルと散水ラインとの関係を示す図である。図3(b)は、この発明の参考例に係る噴射ノズルの一例を示す模式断面図である。
図4図4は、この発明の参考例に係る噴射ノズルと到達点との関係を示す模式図である。
図5図5は、浴室内における散水ラインを示す模式側面図である。
図6図6は、浴室の内面に描かれる流体到達線を示す模式斜視図である。
図7図7(a)は、浴室の天井に描かれる流体到達線を示す模式平面図である。図7(b)は、浴室の内壁に描かれる流体到達線を示す模式側面図である。
図8図8は、この発明の第1実施形態に係る噴射ノズルの噴射孔の一例を示す模式図である。
図9図9(a)は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。図9(b)は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式斜視図である。
図10図10は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの噴射孔の一例を示す模式図である。
図11図11は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルと到達点との関係を示す模式図である。
図12図12(a)は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルと散水ラインとの関係を示す図である。図12(b)は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式断面図である。
図13図13は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの散水性能確認試験の結果を示す図である。
図14図14(a)は、噴射ノズルの取り付け位置と到達点との関係を示す模式平面図である。図14(b)は、噴射ノズルの取り付け位置と到達点との関係を示す模式側面図である。
図15図15(a)は、噴射ノズルの取り付け位置と到達点との関係を示す模式平面図である。図15(b)は、噴射ノズルの取り付け位置と到達点との関係を示す模式側面図である。
図16図16(a)及び図16(b)は、参考例に係る噴射ノズルの取り付け位置と天井における到達点との関係を示す模式側面図である。
図17図17は、この発明の第2実施形態の第1変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式断面図である。
図18図18は、この発明の第2実施形態の第2変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式断面図である。
図19図19は、この発明の第2実施形態の第3変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式断面図である。
図20図20は、この発明の第2実施形態の第4変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。
図21図21は、この発明の第2実施形態の第5変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。
図22図22は、この発明の第2実施形態の第6変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。
図23図23は、この発明の第2実施形態の第7変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。
図24図24(a)は、この発明の第3実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。図24(b)は、この発明の第3実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式斜視図である。
図25図25は、この発明の第3実施形態の第1変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。
図26図26は、この発明の第3実施形態の第2変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。
図27図27は、この発明の噴射ノズルと散水領域との関係を示す図である。
図28図28は、この発明の第4実施形態に係る噴射ノズルの噴射孔の一例を示す模式図である。
図29図29は、この発明の第4実施形態に係る噴射ノズルの散水性能確認試験の結果を示す図である。
図30図30(a)~図30(c)は、この発明の第5実施形態に係る噴射ノズルの散水方法を示す模式図である。
図31図31(a)は、空間の第1例を示す模式斜視図である。図31(b)は、空間の第2例を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、高さ方向を第1方向Zとし、第1方向Zと交差、例えば直交する1つの平面方向を第2方向Xとし、第1方向Z及び第2方向Xのそれぞれと交差、例えば直交する別の平面方向を第3方向Yとする。また、各図において、共通する部分については、共通する参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
(第1実施形態)
<浴室洗浄システム>
図1は、この発明の第1実施形態に係る噴射ノズルが用いられた浴室洗浄システムを備えた浴室の模式斜視図である。図2は、浴室洗浄システムの一例を示す模式ブロック図である。
【0031】
図1に示すように、浴室洗浄システム1は、浴室2に設けられている。浴室2は、空間である。浴室2は、内壁4、天井5、及び床7を含む。内壁4は、天井5と床7との間に設けられている。内壁4、天井5、及び床7は、空間を区画する区画体である。床7は、浴槽3と隣接する。内壁4及び天井5のそれぞれは、浴槽3と床7の上部空間を囲って内空部に浴室2を形成する。内壁4の少なくとも1つには、シャワー8及び水栓9が設けられている。浴室2外には、ユーザが浴室洗浄システム1を制御するための操作部10が設けられている。天井5には、浴室洗浄システム1に付属する噴射ノズル16、及び浴室2内を乾燥させるための乾燥機22のそれぞれが設けられている。噴射ノズル16は、浴室2の内部に位置し、例えば、浴室2の噴射ノズル取付面に取り付けられている。第1実施形態において、噴射ノズル16は、天井5に取り付け部32を介して取り付けられている。第1実施形態において、噴射ノズル取付面は、天井5である。
【0032】
図2に示すように、浴室洗浄システム1は、例えば、給水源11と、分岐部12と、供給水散布ユニット17と、制御部23と、を含む。給水源11は、水道水を給水する。分岐部12は、給水源11からの水道水を分岐し、一方をシャワー8及び水栓9へと導くと共に、他方を給水路14へと導く。供給水散布ユニット17は、給水路14から水道水が供給される制御弁15を有する。制御弁15の一端は給水路14に接続され、他端は噴射ノズル16に接続される。制御弁15は、制御部23からの制御信号に基づき、水道水の給水又は止水の制御を行うための弁である。水道水は、制御部23の制御により、給水路14から制御弁15を介して噴射ノズル16へと導かれる。噴射ノズル16は、水道水を、浴室2内の浴槽3、床7、内壁4、及び天井5のそれぞれに噴射する。制御部23は、供給水散布ユニット17、及び乾燥機22のそれぞれを制御する。
【0033】
乾燥機22は、制御部23による制御の下で、浴室2内に温風を送風する。乾燥機22は、外部空間から空気を吸い込んで熱を溜め込み、その熱を利用して浴室2内に温風を送風するいわゆるヒートポンプ方式、又は内部で熱を作り出して浴室2内に温風を送風する電気ヒーター方式等を採用するものであってもよい。乾燥機22から温風を送風することにより、浴室2内の水分が蒸発することで乾燥させることが可能となる。なお、この乾燥機22は、換気扇により浴室2内から高湿な空気を排出するものも含まれる。
【0034】
操作部10は、浴室2外に設置された操作パネル又はリモートコントローラ等で構成されており、制御部23に対して操作信号を有線通信又は無線通信を通じて送信可能なデバイスである。操作部10は、ユーザにより浴室2内の洗浄を開始する旨の入力が行われた場合に、これを反映させた操作信号を制御部23に送信する。
【0035】
制御部23は、制御弁15の開閉、及び乾燥機22による乾燥開始又は乾燥停止を制御する。制御部23は、操作部10から操作信号を受信した場合には、当該操作信号に反映されているユーザの意思に基づき、各種制御を行う。制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)による制御の下で、予め記憶させたプログラムに基づいてこれらの制御を行うようにしてもよい。制御部23は、例えば制御弁15の各開弁時間及び乾燥機22による乾燥時間を時系列的に制御するようにしてもよい。
【0036】
<噴射ノズル>
図3(a)は、この発明の第1実施形態に係る噴射ノズルと、散水ラインとの関係を示す図である。図3(b)は、この発明の第1実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式断面図である。図4は、この発明の第1実施形態に係る噴射ノズルと、流体の到達点との関係を示す模式図である。
【0037】
図3(a)~図4に示すように、第1実施形態に係る噴射ノズル16は、ノズル体30を含む。ノズル体30は、例えば、球状ノズル体である。本明細書において、球状とは、ほぼ真球だけでなく、楕円状の球や、ラグビーボール型、及びたまご型等、球状の部分を有するノズル体を総称して球状ノズル体と呼ぶ。
【0038】
ノズル体30の球状表面には、複数の噴射孔31が設けられている。噴射孔31からは、液体、例えば、水道水が噴射される。ノズル体30には、取り付け部32が設けられている(図4)。ノズル体30は、取り付け部32を介して、供給水散布ユニット17に取り付けられる。ノズル体30は、取り付け部32に、例えば、回転可能に取り付けられる。なお、図3(a)及び図3(b)では、取り付け部32の図示を省略している。
【0039】
供給水散布ユニット17からノズル体30へ供給される液体は、水道水に限られることはない。例えば、水道水から、シリカ、カルシウム、及びマグネシウム等の溶解物質を除去した溶解物質除去水、水道水又は溶解物除去水に次亜塩素酸ナトリウム等を添加した殺菌消毒水、あるいは水道水又は溶解物質除去水又は殺菌消毒水に洗浄成分を添加した洗浄水などでもよい。さらに、洗浄時には洗浄水を用い、洗浄水を濯ぎ流す時には、水道水、溶解物質除去水、及び殺菌消毒水のいずれかに切り換えるようにしてもよい。
【0040】
ここで、ノズル体30の中心Cを通り、床7から天井5へ向かう高さ方向を第1方向Zとする。ノズル体30の中心Cを通り、第1方向Zと直交するXY平面を、円状水平面Hxyとする。ノズル体30において、円状水平面Hxyより天井(噴射ノズル取付面)5側に位置する部分を天井側半球部(取付面側半球部)Aとし、円状水平面Hxy及び円状水平面Hxyより床(噴射ノズル対向面)7側のそれぞれに位置する部分を床側半球部(対向面側半球部)Bとする。
【0041】
噴射孔31の一部は、天井側半球部Aの表面に設けられ、噴射孔31の残りは、床側半球部Bの表面に設けられている。噴射孔31のうち、天井側半球部Aの表面に設けられたものを、噴射孔31A、床側半球部Bに設けられたものを、噴射孔31Bとする(図3(a)及び図3(b))。
【0042】
噴射ノズル16では、噴射孔31Aの間隔Laを、散水ライン(噴射された流体のライン)41の角度θvが均等になるように設定する(図3(a))。ノズル体30の天井側半球部Aが、例えば、ほぼ真球であれば、噴射孔31Aの間隔Laのそれぞれはほぼ等間隔となる(図3(b))。このような噴射ノズル16では、例えば、天井5の、浴室2の内部(空間)に面した表面(以下、浴室2の内部(空間)に面した表面を、便宜上、“浴室面”という)における到達点40それぞれの間隔Lcは不均等になる(図4)。例えば、到達点40は、噴射ノズル16に近いほど密となり、噴射ノズル16から離れるにつれて疎らとなる。このままであると、天井5の浴室面において、噴射ノズル16の近傍では散水量が多くなり、噴射ノズル16から離れるほど散水量が少なくなる。この結果、天井5の浴室面への散水にムラが生じる。そこで、第1実施形態に係る噴射ノズル16は、以下、説明するように、散水のムラを生じにくくする。なお、本明細書において、等間隔とは、厳密な等間隔だけでなく、実質的な等間隔を含むものとする。実質的な等間隔の例としては、例えば、孔形成の際の許容誤差等の僅かなばらつきを生じた間隔を挙げることができる。
【0043】
図5は、浴室内における散水ラインを示す模式側面図である。図6は、浴室の内面に描かれる流体到達線を示す模式斜視図である。図7(a)は、浴室の天井に描かれる流体到達線を示す模式平面図である。図7(b)は、浴室の内壁に描かれる流体到達線を示す模式側面図である。図8は、この発明の第1実施形態に係る噴射ノズルの噴射孔の一例を示す模式図である。なお、本明細書では、流体到達線は、重力の影響を無視するものとする。
【0044】
図5図7(b)に示すように、噴射孔31A及び31Bから噴射された流体の、内壁4、天井5、及び床7のそれぞれの浴室面における各到達点40は、ノズル体30の回転によって内壁4、天井5、及び床7の浴室面に複数の流体到達線42を描く。なお、図5図7(b)では、噴射された流体のライン(散水ライン41)の例として、内壁4へ向けて6本、天井5へ向けて4本、及び床7へ向けて4本を模式的に示している。
【0045】
流体到達線42は、例えば、天井5の浴室面、及び床7の浴室面のそれぞれの上では、同心円状となり、内壁4の浴室面の上では、縞状となる。流体到達線42は、内壁4の浴室面、天井5の浴室面、及び床7の浴室面のそれぞれに、2つの流体到達線42によって仕切られた複数の範囲を区画する。天井5の浴室面、及び床7の浴室面上において、内壁4に最も近い流体到達線42と内壁4との間にある範囲については、流体到達線42と内壁4とによって仕切られる。
【0046】
流体到達線42によって仕切られた範囲の面積は、天井5においては、ノズル体30から内壁4へ向かうにつれて大きくなる。例えば、ノズル体30から内壁4に向かって面積SC1~SC4とすると、ノズル体30に最も近い範囲の面積SC1が最も小さく、ノズル体30から遠ざかるにつれて、面積SC2、面積SC3の順で大きくなっていく。ただし、内壁4に最も近い範囲の面積SC4については、内壁4で仕切られるため、必ずしも最も大きくなるとは限らない。
【0047】
流体到達線42によって仕切られた範囲の面積が大きくなると、洗浄に必要な液体の量が増える。天井5の浴室面において、洗浄に必要な液体の量は、ノズル体30に最も近い範囲が最も少なく、内壁4に近づくにつれて増える。
【0048】
そこで、図8に示すように、噴射ノズル16では、流体到達線42によって仕切られた範囲の面積SC1~SC4のそれぞれに応じて、噴射孔31Aの断面積SH1~SH4を設定した。例えば、ノズル体30の天井側半球部Aでは、床側に近い噴射孔31Afから噴射される液体は内壁4に向かい、天井側に近い噴射孔31Anから噴射される液体は噴射ノズル16の近くに向かう。第1実施形態では、この知見を利用して、天井側に近い噴射孔31Anから床側に近い噴射孔31Afに向かって、例えば、噴射孔31Aの断面積SH1~SH4を大きくする(SH1<SH2<SH3<SH4)。噴射孔31Aの中心間の間隔Laは、例えば、ほぼ等間隔である(La1≒La2≒La3)。
【0049】
このような噴射ノズル16であると、天井側半球部Aにおいて、噴射孔31Aの断面積SH1~SH4を、面積SC1~SC4に応じて設定するので、ノズル体30の表面において、噴射孔31Aの中心間の間隔Laを等間隔としても、天井5の浴室面への散水にムラが生じにくくなる。これにより、例えば、噴射孔31Aの断面積SH1~SH4のそれぞれを等しくした噴射ノズルと比較して、例えば、天井5の浴室面を、より清浄度よく洗浄することができる。断面積SH1~SH4の設定の一例は、噴射孔31Anから噴射孔31Afに向かうにしたがって断面積を大きくする、である。
【0050】
さらに、噴射ノズル16は、流体として液体、例えば、洗浄水を噴射する。噴射ノズル16によれば、天井5のノズル体30の近傍へ洗浄水を噴射する噴射孔31Aの断面積が小さくされる。このため、流体が、例えば、洗浄水であるとき、ノズル体30の近傍の天井5の浴室面に対する洗浄水の供給量は、ノズル体30から離れた箇所の天井5の浴室面に対する洗浄水の供給量と比較して、相対的に減らすことができる。例えば、ノズル体30の近傍の天井5の浴室面に対する洗浄水の供給量は、ノズル体30から離れた箇所の天井5の浴室面に対する洗浄水の供給量と、ほぼ等しい値まで減らすことも可能である。これによれば、ノズル体30の近傍において、洗浄水の過剰供給を抑制することができ、天井5の浴室面上から洗浄水が滴って発生する液垂れを抑制できる。液垂れが、ノズル体30の近傍の天井5の浴室面上において生じると、滴った洗浄水によって、ノズル体30から噴射される洗浄水の散水ライン41が阻害されてしまう。散水ライン41が阻害されると、洗浄水が天井5の浴室面に届きにくくなり、天井5の浴室面の均一な洗浄が困難化する。このような事情についても、噴射ノズル16によれば、ノズル体30の近傍において、例えば、洗浄水の液垂れを抑制できることから、解消できる。したがって、噴射ノズル16によれば、例えば、天井5の浴室面を、清浄度よく、しかも、均一に洗浄することができる。
【0051】
第1実施形態では、天井側半球部Aについて、噴射孔31Aの断面積を、流体到達線42によって仕切られた範囲の面積に応じて設定したが、床側半球部Bについても、噴射孔31Bの断面積を、流体到達線42によって仕切られた範囲の面積に応じて設定してもよい。
【0052】
(第2実施形態)
<噴射ノズル>
図9(a)は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。図9(b)は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式斜視図である。図10は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの噴射孔の一例を示す模式図である。
【0053】
図9(a)~図10に示すように、第2実施形態に係る噴射ノズル16aは、ノズル体30を含む。ノズル体30は、例えば、球状ノズル体である。ノズル体30の球状表面には、複数の噴射孔31が設けられている。噴射孔31の一部は、天井側半球部Aの表面に設けられ、噴射孔31の残りは、床側半球部Bの表面に設けられている。
【0054】
噴射孔31A、及び噴射孔31Bのそれぞれは、ノズル体30の天井(取付面)5側の頂点V5と、ノズル体30の床(対向面)7側の頂点V7とを通り、球状ノズル体30の表面に描いた1つの円の円弧ARに沿って、配されている。なお、このような噴射孔31A、及び噴射孔31Bの配置は、第1実施形態においても同様である。噴射孔31Bの、円弧ARに沿った間隔Lb1~Lb4は、等間隔である。これに対して、噴射孔31Aの、円弧ARに沿った間隔La1~La3は、不等間隔である。例えば、図9(a)及び図10に示すように、噴射孔31Aの、円弧ARに沿った間隔La1~La3は、円状水平面Hxyから天井5に向かうにつれて広がっている(La1<La2<La3)。また、図10に示すように、間隔La1~La3は、第1実施形態と同様に、噴射孔31Aの中心間の間隔が選ばれてもよい。図10には、間隔La1~La3を不等間隔とした噴射ノズルの1つの例として、噴射孔31Aの断面積SH1~SH4を互いにほぼ等しくした例が示されている(SH1≒SH2≒SH3≒SH4)。ただし、噴射孔31Aの断面積SH1~SH4は、第1実施形態において説明したように、面積SC1~面積SC4に応じて、断面積SH1~SH4を“SH1<SH2<SH3<SH4”とされると、天井5の浴室面への散水時において、ムラが生じにくくできるので、なおよい。このような間隔La1~La3を不等間隔とし、かつ、断面積SH1~SH4を“SH1<SH2<SH3<SH4”とした噴射ノズルの1つの例は、別の実施形態として後述することとする。
【0055】
図11は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルと、到達点との関係を示す模式図である。図12(a)は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルと、散水ラインとの関係を示す図である。図12(b)は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式断面図である。
【0056】
図11図12(b)に示すように、ノズル16aでは、天井5の浴室面において、到達点40の間隔Lcが、均等になるように設定されている。各到達点40からノズル体30に向かって、例えば、ノズル体30の中心Cに向かって、散水ライン41が仮想的に設定される。噴射孔31Aは、散水ライン41に沿ってノズル体30に設けられる。これにより、噴射孔31Aの間隔Laのそれぞれが不等間隔となる。図11中の参照符号(1)~(8)は、散水領域を示している。なお、噴射ノズル16周囲の参照符号(0)は、実施形態においては、散水されない領域を示している。これは、図4においても同様である。
【0057】
噴射ノズル16aでは、噴射孔31Aの間隔Laを、到達点40の間隔Lcが均等になるように設定する。ノズル体30の天井側半球部Aが、例えば、ほぼ真球であれば、噴射孔31Aの間隔Laのそれぞれは不等間隔となる。図9(a)及び図9(b)に示した例では、円弧ARに沿って噴射孔31Aが配されている。円状水平面Hxyに最も近い噴射孔31Afは、噴射ノズル16から天井5の最も遠い箇所へ散水する噴射孔となる。また、円状水平面Hxyから最も離れ、天井5側の頂点V5に最も近い噴射孔31Anは、噴射ノズル16から天井5の最も近い箇所へ散水する噴射孔となる。
【0058】
このような噴射孔31Aを有したノズル体30を備えた噴射ノズル16aでは、天井5の浴室面における流体の到達点40の間隔Lcを均等にする。したがって、噴射ノズル16aにおいても、噴射ノズル16と同様に、天井5の浴室面への散水にムラが生じにくくなる。これにより、例えば、天井5の浴室面を、より清浄度よく洗浄することができる。
【0059】
さらに、噴射ノズル16aによれば、天井5のノズル体30の近傍において、到達点40の間隔Lcが広がる。このため、ノズル体30の近傍の天井5の浴室面に対する洗浄水の供給量を減らすことができる。したがって、噴射ノズル16aにおいても、第1実施形態と同様に、ノズル体30の近傍における洗浄水の液垂れを抑制できる。これにより、例えば、天井5の浴室面を、清浄度よく、しかも、均一に洗浄することができる。
【0060】
図13は、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルの散水性能確認試験の結果を示す図である。図13に示す散水領域(1)~(8)は、図11に示した(1)~(8)に対応する。
【0061】
図13に示すように、散水領域(1)~(8)のそれぞれに対応した到達点40の、噴射ノズル16aの取り付け位置の中心からの距離は、
(1) 60mm
(2) 142mm
(3) 224mm
(4) 306mm
(5) 388mm
(6) 470mm
(7) 552mm
(8) 634mm
である。
【0062】
到達点40の実測値は、
(1) 60mm
(2) 140mm
(3) 220mm
(4) 305mm
(5) 385mm
(6) 475mm
(7) 560mm
(8) 650mm
である。
【0063】
着水間隔(間隔Lc)の設定値は、
(1) 60mm
(2) 82mm
(3) 82mm
(4) 82mm
(5) 82mm
(6) 82mm
(7) 82mm
(8) 82mm
と均等にした。
【0064】
着水間隔(間隔Lc)の実測値は、
(1) 60.0mm
(2) 80.0mm
(3) 80.0mm
(4) 85.0mm
(5) 80.0mm
(6) 90.0mm
(7) 85.0mm
(8) 90.0mm
であった。このように、第2実施形態では、天井5の到達点40をほぼ均等にできた。
【0065】
このように、天井5の到達点40をほぼ均等にできる第2実施形態によれば、噴射ノズル16aが、散水空間、例えば浴室2の中心から外れた位置に配置されても、天井5の浴室面(噴射ノズル取付面)への散水にムラが生じにくくなる、という利点を得ることができる。
【0066】
以下、この発明の第2実施形態に係る噴射ノズルについて、さらに詳細に説明する。
図14(a)及び図15(a)は、噴射ノズル16の取り付け位置と到達点40との関係を示す模式平面図である。図14(b)及び図15(b)は、噴射ノズル16の取り付け位置と到達点40との関係を示す模式側面図である。図14(b)に示す模式側面は、図14(a)中のB-B線に沿っている。図15(b)に示す模式側面は、図15(a)中のB-B線に沿っている。
【0067】
<噴射ノズルを天井中心に取り付ける場合>
図14(a)及び図14(b)は、噴射ノズル16aを、浴室2の天井中心BCに取り付けた場合を示す。天井5の平面形状は、長方形を想定する。
【0068】
図14(a)及び図14(b)に示すように、平面形状が長方形の天井5は、長軸、短軸、及び対角線軸を有する。本明細書では、天井5の長軸の方向Dxは第2方向Xとし、短軸の方向Dyは第3方向Yとする。対角線軸の方向は、対角線軸方向Ddとする。天井5において、天井中心BCから最も遠い箇所は、浴室2の角部6a~6dである。つまり、天井5の対角線方向Ddに沿った長さは、長軸方向Dxに沿った長さよりも長い。
【0069】
噴射孔31Aをノズル体30に設ける際、天井5では対角線方向Ddに沿った長さが長いことが勘案される。例えば、角部6a~6dのいずれか1つ、又は角部6a~6dのいずれか1つの近傍に到達点40を設定する。この到達点40から、天井中心BCに取り付けた噴射ノズル16のノズル体30の中心C(図示せず:図9(a)及び図9(b)等参照)に向かって散水ライン41を設定する。噴射孔31Afは、この散水ライン41に沿ってノズル体30に設けられる。
【0070】
さらに他の複数の到達点40を、各到達点40の間隔が均等になるように設定し、これら到達点40毎に、ノズル体30の中心Cに向かって複数の散水ライン41をそれぞれ設定する。複数の噴射孔31Aは、これら散水ライン41のそれぞれに沿って、噴射孔31Afまでノズル体30に設ける。
【0071】
このようにして、噴射孔31Af~31Anのそれぞれをノズル体30に設けることで、噴射ノズル16の取り付け位置から、天井5(噴射ノズル取付面)における最遠到達点の位置までの距離が、噴射方向(例えば、長軸方向Dx、短軸方向Dy、及び対角線方向Dd)によって異なっていたとしても、天井5の全体に散水可能となり、天井5を綺麗に洗浄することができる。
【0072】
<噴射ノズルを天井中心から外れた位置に取り付ける場合>
図15(a)及び図15(b)は、噴射ノズル16aを、浴室2の天井中心BCから外れた位置に取り付けた場合を示す。天井5の平面形状は、長方形を想定する。
【0073】
図15(a)及び図15(b)に示すように、噴射ノズル16aを、天井中心BCから外れた位置に取り付ける場合も、図14(a)及び図14(b)を参照して説明した手法と同様に天井5では対角線方向Ddに沿った長さが長いことを勘案し、噴射孔31Aをノズル体30に設ければよい。例えば、噴射ノズル16aが、角部6aの近傍に取り付けられる場合、噴射ノズル16から最も遠い箇所は、浴室2の角部6cとなる。そこで、角部6c、又は角部6cの近傍に到達点40を設定する。この到達点40から、角部6aの近傍に取り付けた噴射ノズル16aのノズル体30の中心Cに向かって散水ライン41を設定する。噴射孔31Afは、この散水ライン41に沿ってノズル体30に設けられる。
【0074】
さらに他の複数の到達点40を、各到達点40の間隔が均等になるように設定し、これら到達点40毎に、ノズル体30の中心Cに向かって複数の散水ライン41をそれぞれ設定し、複数の噴射孔31Aを、これら散水ライン41のそれぞれに沿って、噴射孔31Afまでノズル体30に設けていけばよい。
【0075】
図16(a)及び図16(b)は、参考例に係る噴射ノズル16rの取り付け位置と到達点40との関係を示す模式側面図である。図16(a)に示す模式側面は、図14(b)に示した模式側面に対応し、図16(b)は、図15(b)に示した模式側面に対応する。
【0076】
参考例に係る噴射ノズル16rでは、噴射孔31Aの間隔Laを、散水ライン41の角度θvが均等になるように設定する。このため、噴射ノズル16rから最も遠い箇所に散水できる噴射孔31Aは、例えば、円状水平面Hxyから角度θvずれた噴射孔31Afとなる。つまり、噴射ノズル16rでは、最遠到達点の位置が、噴射孔31Afで決まってしまう。このため、噴射ノズル16rを天井中心BCに取り付けた場合では、図16(a)に示すように、天井5の全体に散水できていたとしても、噴射ノズル16rを角部6aの近傍に取り付けた場合には、図16(b)に示すように、天井5に、散水困難な箇所50が発生する。
【0077】
このような事情に対して、第2実施形態では、散水ライン41の角度θvに関わらずに、最遠到達点となる到達点40に着目し、さらに、最遠到達点となる到達点40から、間隔Lcを均等にしながら、他の到達点40を定めるようにしている。最遠到達点は、天井5の平面形状や大きさ、噴射ノズル16aの取り付け位置等によって変化する。第2実施形態では、このような変化に適宜対処しながら、最遠到達点となる到達点40を定める。
【0078】
このようにして得た噴射ノズル16aによれば、天井5の平面形状や、その大きさ、噴射ノズル16aの取り付け位置が変わったとしても、散水困難な箇所50を発生させることなく、天井5の全体に、天井5の隅も含めて散水できる。したがって、天井5の全体を、その隅も含めて、綺麗に洗浄することができる。
【0079】
<第1変形例>
図17は、この発明の第2実施形態の第1変形例に係る噴射ノズル16maの一例を示す模式断面図である。図17に示す模式断面は、図12(b)に示した模式断面と対応する。なお、図17には、散水ライン41が図示される。
【0080】
図17に示すように、第1変形例に係る噴射ノズル16maが、噴射ノズル16と異なるところは、ノズル体30maが、楕円状の球面を有することである。このように、ノズル体30maは、球(例えば、ほぼ真球)でなくてもよい。ノズル体30maでは、長軸が第1方向Zに沿った楕円型である。ノズル体30maが楕円型であっても、複数の噴射孔31Aは、球(例えば、ほぼ真球)型の場合と同様に、到達点40の間隔Lcを均等に設定することで得られる散水ライン41に沿ってノズル体30maに設けられればよい。
【0081】
<第2変形例>
図18は、この発明の第2実施形態の第2変形例に係る噴射ノズル16mbの一例を示す模式断面図である。図18に示す模式断面は、図12(b)に示した模式断面と対応する。なお、図18には、散水ライン41が図示される。
【0082】
図18に示すように、第2変形例に係る噴射ノズル16mbが、噴射ノズル16maと異なるところは、ノズル体30mbが、長軸が第2方向Xに沿った楕円型であることである。ノズル体30mbは、長軸が第2方向Xに沿った楕円型であってもよい。
【0083】
<第3変形例>
図19は、この発明の第2実施形態の第3変形例に係る噴射ノズル16mcの一例を示す模式断面図である。図19に示す模式断面は、図12(b)に示した模式断面と対応する。なお、図19には、散水ライン41が図示される。
【0084】
図19に示すように、第3変形例に係る噴射ノズル16mcが、噴射ノズル16mbと異なるところは、ノズル体30mcが、天井側半球部Aにおいて長軸が第1方向Zに沿った楕円型であり、床側半球部Bにおいて球型であることである。ノズル体30mcは、おおよそたまご型となる。ノズル体30mcのように、ノズル体は、楕円状の球面と、ほぼ真球状の球面とを組み合わせて有していてもよい。
【0085】
第1~第3変形例に示したように、ノズル体30は、楕円型のノズル体30ma及び30mb、あるいはたまご型のノズル体30mcのように、様々な球面を有した形状に変形させることが可能である。さらに、ノズル体30は、図17図19に示した以外の球面を有した形状にも、適宜変形させることも可能である。
【0086】
また、特に図示しないが、散水ライン41は、ノズル体30の中心Cに集束されなくてもよい。散水ライン41が集束する点は、例えば、天井側半球部Aと、床側半球部Bとで別々の位置にあってもよい。
【0087】
<第4変形例>
図20は、この発明の第2実施形態の第4変形例に係る噴射ノズル16mdの一例を示す模式側面図である。図20に示す模式側面は、図14(b)に示した模式側面と対応する。
【0088】
図20に示すように、第4変形例に係る噴射ノズル16mdが、噴射ノズル16と異なるところは、天井5の到達点40の間隔Lcに加えて、床7の到達点40dの間隔Ldについても、さらに均等に設定したことである。また、内壁4の到達点40eの間隔Leについても、均等に設定してもよい。
【0089】
噴射ノズル16mdのノズル体30mdでは、複数の噴射孔31B(図示せず:図9等参照)のうち、床7に向けて液体を噴射する噴射孔31Bが、間隔Ldを均等に設定することで得られた散水ライン41に沿って、ノズル体30mdに設けられる。また、間隔Leも均等に設定した場合、複数の噴射孔31Bのうち、内壁4に向けて液体を噴射する噴射孔31Bが、間隔Leを均等に設定することで得られた散水ライン41に沿って、ノズル体30mdに設けられる。
【0090】
このように、噴射孔31Aのみならず、噴射孔31Bについても、床7の到達点40dの間隔Ld、及び内壁4の到達点40eの間隔Leの少なくとも1つを均等になるように設定し、各到達点40d及び/又は40eからノズル体30mdへ向かう散水ライン41に沿ってノズル体30mdに設けるようにしてもよい。
【0091】
<第5変形例>
図21は、この発明の第2実施形態の第5変形例に係る噴射ノズル16meの一例を示す模式側面図である。図21に示す模式側面は、図15(b)に示した模式側面と対応する。
【0092】
図21に示すように、第5変形例に係る噴射ノズル16meが、噴射ノズル16mdと異なるところは、噴射ノズル16meが、天井中心BCから外れた位置に取り付けられていることである。
【0093】
噴射ノズル16meを、天井中心BCから外れた位置に取り付けた場合でも、噴射孔31B(図示せず:図9(a)及び図9(b)等参照)は、床7の到達点40dの間隔Ld、及び内壁4の到達点40eの間隔Leの少なくとも1つを均等になるように設定し、各到達点40d及び/又は40eからノズル体30meへ向かう散水ライン41に沿ってノズル体30meに設けることが可能である。
【0094】
<第6変形例>
図22は、この発明の第2実施形態の第6変形例に係る噴射ノズル16mfの一例を示す模式側面図である。図22に示す模式側面は、図15(b)に示した模式側面と対応する。
【0095】
図22に示すように、第6変形例に係る噴射ノズル16mfが、噴射ノズル16meと異なるところは、噴射ノズル16mfに近接した内壁4に、到達点40fを設定したことである。
【0096】
噴射ノズル16mfを、天井中心BCから外れた位置に取り付けた場合、内壁4には、噴射ノズル16mfに近接した近接側の内壁4と、噴射ノズル16mfから遠く離れた遠方側の内壁4とが生じる。近接側の内壁4と、遠方側の内壁4とが生じた場合、到達点40fは、近接側の内壁4に設定してもよい。噴射ノズル16mfでは、噴射孔31B(図示せず:図9(a)及び図9(b)等参照)は、近接側の内壁4の到達点40fの間隔Lfを均等になるように設定し、各到達点40fからノズル体30mfへ向かう散水ライン41に沿ってノズル体30mfに設けられる。
【0097】
<第7変形例>
図23は、この発明の第2実施形態の第7変形例に係る噴射ノズル16mgの一例を示す模式側面図である。図23に示す模式側面は、図15(b)に示した模式側面と対応する。
【0098】
図23に示すように、第7変形例に係る噴射ノズル16mgが、噴射ノズル16mfと異なるところは、噴射ノズル16mfから遠く離れた遠方側の内壁4、及び噴射ノズル16mgに近接した内壁4のそれぞれに、到達点40e及び到達点40fを設定したことである。
【0099】
噴射ノズル16mgでは、噴射孔31B(図示せず:図9(a)及び図9(b)等参照)は、到達点40eの間隔Leを均等に設定し、さらに、到達点40fの間隔Lfを均等に設定し、各到達点40e及び40fからノズル体30mfへ向かう散水ライン41に沿ってノズル体30mgに設けられる。
【0100】
なお、第4~第7変形例において、間隔Lc、Ld、Le、及びLfは、散水量等を勘案し、それぞれに最適な間隔が設定されてもよい。即ち、間隔Lc、Ld、Le、及びLfは、異なっていてもよい。
【0101】
(第3実施形態)
<噴射ノズル>
図24(a)は、この発明の第3実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。図24(b)は、この発明の第3実施形態に係る噴射ノズルの一例を示す模式斜視図である。
【0102】
図24(a)及び図24(b)に示すように、第3実施形態に係る噴射ノズル16bが、噴射ノズル16と異なるところは、噴射孔31Aが、ノズル体30の径方向にずれて、ノズル体30の表面に設けられていることである。また、噴射ノズル16bでは、噴射孔31Bについても、ノズル体30の径方向にずれて、ノズル体30の表面に設けられている。噴射孔31Aのそれぞれは、ノズル体30の天井5側の頂点V5と、ノズル体30の床7側の頂点V7とを通り、ノズル体30の表面に描いた1つの円の円弧ARに沿わなくても、他の円の円弧ARのそれぞれに沿って設けられていてもよい。円状水平面Hxyにおける隣り合う円弧ARを分離する角度θhは、例えば、均等である。
【0103】
噴射ノズル16bでは、噴射孔31Aを、ノズル体30の径方向にずらして、ノズル体30の表面に設ける。これにより、噴射孔31Aが干渉することなく、噴射孔31Aを、ノズル体30の表面に設けることができる。噴射孔31Aの干渉は、ノズル体30の大きさを小さくした場合、あるいは広い浴室2を洗浄する場合など、噴射孔31Aの円弧ARに沿った間隔が狭まったときに発生する。
【0104】
第3実施形態によれば、ノズル体30の大きさを小さくした場合、あるいは広い浴室2を洗浄する場合であっても、噴射孔31Aを干渉させることなく、ノズル体30の表面に設けることができる。
【0105】
<第1変形例>
図25は、この発明の第3実施形態の第1変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。
【0106】
図25に示すように、第1変形例に係る噴射ノズル16bmaが、噴射ノズル16bと異なるところは、噴射孔31Aが、左右に分散されて、ノズル体30の表面に設けられていることである。
【0107】
このように、噴射孔31Aを、ノズル体30の径方向にずらすとき、噴射孔31Aは、ノズル体30の球面上で、ノズル体30の天井5側の頂点V5と、ノズル体30の床7側の頂点V7とを通り、ノズル体30の表面に描いた1つの円の円弧ARに乗るように設けなくても、ノズル体30の球面上で分散、例えば、左右に分散させて設けることも可能である。
【0108】
<第2変形例>
図26は、この発明の第3実施形態の第2変形例に係る噴射ノズルの一例を示す模式側面図である。
【0109】
図26に示すように、第2変形例に係る噴射ノズル16bmbが、噴射ノズル16bmbと異なるところは、噴射孔31Bも、左右に分散されて、ノズル体30の表面に設けられていることである。
【0110】
このように、噴射孔31Bについても、ノズル体30の径方向にずらすとき、ノズル体30の球面上で分散、例えば、左右に分散させて設けてもよい。
【0111】
なお、第3実施形態、第3実施形態の第1変形例、及び第3実施形態の第2変形例のそれぞれは第2実施形態の第1~第7変形例と組み合わせて実施することも可能である。
【0112】
また、第1実施形態において、噴射孔31A及び31Bの配置を、第3実施形態、第3実施形態の第1変形例、及び第3実施形態の第2変形例のように変形させることも可能である。
【0113】
(第4実施形態)
<噴射ノズル>
図27は、この発明の噴射ノズルと散水領域との関係を示す図である。図28は、この発明の第4実施形態に係る噴射ノズルの噴射孔の一例を示す模式図である。
【0114】
第4実施形態に係る噴射ノズル16cは、第1実施形態に係る噴射ノズル16と、第2実施形態に係る噴射ノズル16cと、を組み合わせた例である。
【0115】
第2実施形態のように、到達点40の間隔Lcを均等になるように設定した場合でも、噴射孔31から噴射された液体の、天井5の浴室面における各到達点40が、ノズル体30cの回転によって天井5の浴室面に描く流体到達線42で仕切られた範囲が想定される。範囲は、散水領域(1)~(8)である。散水領域(1)~(8)においても、これらの面積は、噴射ノズル16cから内壁4に向かうにつれて大きくなる。散水領域(1)~(8)の面積が大きくなると、洗浄に必要な液体の量が増える。このため、内壁4に近いほど、多くの液体が必要となる。
【0116】
そこで、図28に示すように、噴射ノズル16cでは、散水領域(1)~(8)のそれぞれの面積に応じて、噴射孔31Aの断面積SH1~SH4を設定した。ノズル体30cでは、床側に近い噴射孔31Afから噴射される液体は内壁4に向かい、天井側に近い噴射孔31Anから噴射される液体は噴射ノズル16cの近くに向かう。第4実施形態では、床側では、噴射孔31Aの断面積を大きくし、天井側に向かうにつれて噴射孔31Aの断面積を小さくする(SH1<SH2<SH3<SH4)。また、噴射孔31Aの、円弧ARに沿った間隔La1~La3は、不等間隔である(La1<La2<La3)。
【0117】
図29は、この発明の第4実施形態に係る噴射ノズルの散水性能確認試験の結果を示す図である。
【0118】
図29に示すように、最も内壁4に近い散水領域(8)の面積は、最も噴射ノズル16cに近い散水領域(1)の面積の、約6.5~6.7倍ある。そこで、噴射孔31Aの面積を、
(1) 0.2mm2
(2) 0.4mm2
(3) 0.5mm2
(4) 0.7mm2
(5) 0.8mm2
(6) 1.0mm2
(7) 1.2mm2
(8) 1.3mm2
と、散水領域(1)から散水領域(8)に向かうにつれて大きくした。
【0119】
噴射孔31Aの噴射水量の実測値は、計測時間当たり、
(1) 40mL
(2) 80mL
(3) 95mL
(4) 135mL
(5) 155mL
(6) 190mL
(7) 215mL
(8) 235mL
であった。
【0120】
散水領域(1)に対する散水量比は、
(1) 1.0
(2) 2.0
(3) 2.4
(4) 3.4
(5) 3.9
(6) 4.8
(7) 5.4
(8) 5.9
と、散水領域(1)から散水領域(8)に向かうにつれて大きくなった。散水領域(8)では、散水領域(8)の約5.9倍の散水量となった。
【0121】
また、面積比と散水量比との差異は、
(1) -
(2) 0%
(3) -5%
(4) -4%
(5) -3%
(6) -5%
(7) -10%
(8) -10%
であった。±10%以内の差異であれば、実用に十分に供し得る結果である。
【0122】
このように、散水量を内壁4に向かうにつれて大きくできる第4実施形態によれば、噴射ノズル16cが、散水空間、例えば浴室2の中心から外れた位置に配置されても、散水領域(1)~(8)のそれぞれの面積に応じて、噴射孔31Aの断面積を設定することで、天井5の浴室面へ、適切な散水量で液体を噴射できる噴射ノズル16cを得ることができる。
【0123】
なお、第4実施形態は、第2実施形態の第1~第7変形例、第3実施形態、及び第3実施形態の第1、第2変形例のそれぞれと組み合わせて実施することができる。
【0124】
(第5実施形態)
<散水方法>
第5実施形態は、散水方法に関する。
図30(a)~図30(c)は、この発明の第5実施形態に係る噴射ノズルの散水方法を示す模式図である。
【0125】
浴室2の洗浄では、図30(a)に示す洗浄水散水の後、図30(b)に示す水道水等を用いた濯ぎ水散水が行われる。
【0126】
洗浄水散水時、本来散水されない領域に、洗浄水が撥ね飛ぶことがある。このような水滴を参照符号43により示す。水滴43は、散水されない領域に撥ね飛んでいるので、濯ぎ水散水時でも、洗い流すことはできない。
【0127】
そこで、第5実施形態では、図30(a)及び図30(b)に示すように、洗浄水散水時において、濯ぎ水散水時よりも水圧、又は水量を下げる。あるいは濯ぎ水散水時において、洗浄水散水時よりも水圧、又は水量を上げる。これにより、洗浄水散水時に、散水されない領域に撥ね飛んだ水滴43を、濯ぎ水散水時に洗い流すことができる。
【0128】
したがって、図30(c)に示すように、乾燥機22により浴室2の中を乾燥させても、水滴43が、汚れや水垢として残ることがない。
【0129】
このような第5実施形態によれば、洗浄水散水時において、濯ぎ水散水時よりも水圧、又は水量を下げる。あるいは濯ぎ水散水時において、洗浄水散水時よりも水圧、又は水量を上げることで、洗浄後に残る浴室2に残る汚れや水垢を、さらに減らすことができる。
【0130】
また、洗浄効果を上げるためには、第5実施形態のように、洗剤成分を含む洗浄水を散水した後、水道水から、シリカ、カルシウム、及びマグネシウム等の溶解物質を除去した溶解物質除去水を用いて濯ぎ水散水を行うとよい。これにより、シリカ、カルシウム、及びマグネシウム等が、例えば、水垢として残ることが、さらに抑制される。
【0131】
また、乾燥効果を上げるためには、濯ぎ水を加温しておくとよい。加温された濯ぎ水は、加温していない濯ぎ水よりも蒸発しやすい。このため、乾燥機22の稼働時間を短縮でき、浴室洗浄システムのランニングコストを下げることが可能となる。
【0132】
このような第5実施形態は、例えば、第2実施形態、第2実施形態の第1~第7変形例、第3実施形態、第3実施形態の第1、第2変形例、及び第4実施形態の少なくともいずれか1つと組み合わせて実施されるとよい。組み合わせて実施することで、噴射ノズル16が、散水空間の中心から外れた位置に配置されても、噴射ノズル取付面への散水にムラが生じにくく、しかも、汚れや水垢も残りにくくなる、という利点を、さらに得ることができる。
【0133】
(第6実施形態)
<空間>
図31(a)は、空間の第1例を示す模式斜視図である。図31(b)は、空間の第2例を示す模式斜視図である。
【0134】
図31(a)に示すように、空間は角筒形の内壁4を含む他、図31(b)に示すように、円筒形の内壁4を含むようにしてもよい。内壁4は、天井5と床7との間に設けられている。角筒形の内壁4を含む空間の代表例は、上述した浴室2である。角筒形の内壁4を含む空間は、浴室2に限られるものではなく、浴室2以外の部屋でもよい。円筒形の内壁4を含む空間の代表例は、例えば、タンク、及びチャンバである。なお、タンク、及びチャンバは、円筒形空間に限られるものではなく、角筒形の内壁4を含む空間であってもよい。同様に、浴室2、及び部屋についても、角筒形の内壁4を含む空間に限られるものでなく、円筒形の内壁4を含む空間であってもよい。
【0135】
角筒形の内壁4を含む空間、及び円筒形の内壁4を含む空間のそれぞれは、区画体として、天井5と、床7と、内壁4と、を含む。ただし、内壁4、天井5、及び床7の少なくともいずれか1つは、無くてもよい。例えば、区画体は、天井5だけもよいし、床7だけでもよい。また、区画体は、内壁4と天井5だけでもよいし、内壁4と床7だけでもよい。さらに、区画体は、内壁4だけでもよいし、天井5と床7だけでもよい。
【0136】
また、空間の天井5は、扁平な天井に限らず、例えば、ドーム型天井等のように曲面を有した天井であってもよい。また、空間の天井5は、水平に配置されるばかりでなく、例えば、傾斜天井等のように、水平に対して傾斜した天井であってもよい。
【0137】
以上、この発明のいくつかの実施形態を説明した。この発明は、上述した実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態に係る噴射ノズルは、区画体の、空間に面した表面の洗浄に使用される他、
・区画体の、空間に面した表面を消毒すること、
・区画体の、空間に面した表面を防黴処理すること、
・区画体の、空間に面した表面を防菌処理すること(本明細書において、防菌は抗菌を含む)、
・区画体の、空間に面した表面を、区画体の、空間に面した表面に定着可能な物質で覆うこと、並びに
・区画体の、空間に面した表面の温度、及び空間の内部の温度の少なくともいずれか1つを変化させること、
の少なくともいずれか1つに使用することができる。
【0138】
区画体の、空間に面した表面を、区画体の、空間に面した表面に定着可能な物質で覆うことの例としては、コーティングを挙げることができる。コーティングの例としては、区画体の、空間に面した表面の塗装、区画体の、空間に面した表面の錆止め剤塗布、及び区画体の、空間に面した表面の防水コート等を挙げることができる。
【0139】
また、区画体の、空間に面した表面の温度、及び空間の内部の温度の少なくともいずれか1つを変化させることは、温調を挙げることができる。例えば、温調の例としては、利用者が浴室2を利用する前に、事前に浴室2内を温めておくことが挙げられる。事前に浴室2内を温めておくと、例えば、気温が低いとき等に起こり得る利用者のヒートショックを予防できる。実施形態に係る噴射ノズルは、流体の散布にムラが生じにくいので、浴室2の内部を、ムラなく均等に、効率よく温めることが可能である。また、温調は、加温に限られるものではなく、冷却であってもよい。
【0140】
また、空間の内部に位置し、空間を区画する区画体の、空間に面した表面に向けて流体を噴射する噴射ノズルに、上述した実施形態に係る噴射ノズルを用いることで、
・区画体の、空間に面した表面を消毒すること、
・区画体の、空間に面した表面を防黴処理すること、
・区画体の、空間に面した表面を防菌処理すること、
・区画体の、空間に面した表面を、区画体の、空間に面した表面に定着可能な物質で覆うこと、並びに
・区画体の、空間に面した表面の温度、及び空間の内部の温度の少なくともいずれか1つを変化させること、
の少なくともいずれか1つを実行する噴射システムを得ることができる。
【0141】
例えば、空間が浴室であり、区画体が天井、床、及び内壁のそれぞれを含む場合、噴射システムは、
・天井、床、及び内壁のそれぞれを、洗浄すること、
・天井、床、及び内壁のそれぞれを、消毒すること、
・天井、床、及び内壁のそれぞれを、防黴処理すること、
・天井、床、及び内壁のそれぞれを、防菌処理すること、
・天井、床、及び内壁のそれぞれを、区画体の、空間に面した表面に定着可能な物質で覆うこと、並びに
・天井の温度、床の温度、内壁の温度、及び浴室の内部の温度の少なくともいずれか1つを変化させること、
の少なくともいずれか1つを実行する。
【0142】
また、上述した実施形態では、噴射ノズル16等は、液体を噴射する例を示したが、噴射ノズル16は、液体を噴射するものに限られるものではない。例えば、気体を噴射することも可能である。噴射ノズル16等は、液体、及び気体等の流体を噴射することができる。
【0143】
さらに、上述した実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。例えば、上記いくつかの実施形態では、噴射ノズル16を天井5に取り付けた例を示したが、噴射ノズル16は、天井5以外に取り付けること、例えば、内壁4に取り付けることも可能である。この場合、噴射ノズル16の噴射ノズル取付面は、内壁4となる。噴射4ノズルを内壁4に取り付けた場合、噴射孔31Aは、噴射ノズル取付面、即ち内壁4における到達点の間隔を均等になるように設定し、各到達点からノズル体30へ向かうラインに沿ってノズル体30に設けることができる。
【0144】
さらに、この発明は、上記いくつかの実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記いくつかの実施形態のそれぞれは、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0145】
1 :洗浄システム
2 :浴室
3 :浴槽
4 :内壁
5 :天井
6a~6d:角部
7 :床
8 :シャワー
9 :水栓
10 :操作部
11 :給水源
12 :分岐部
14 :給水路
15 :制御弁
16 :噴射ノズル(第1実施形態)
16a:噴射ノズル(第2実施形態)
16ma:噴射ノズル(第2実施形態:第1変形例)
16mb:噴射ノズル(第2実施形態:第2変形例)
16mc:噴射ノズル(第2実施形態:第3変形例)
16md:噴射ノズル(第2実施形態:第4変形例)
16me:噴射ノズル(第2実施形態:第5変形例)
16mf:噴射ノズル(第2実施形態:第6変形例)
16mg:噴射ノズル(第2実施形態:第7変形例)
16b:噴射ノズル(第3実施形態)
16bma:噴射ノズル(第3実施形態:第1変形例)
16bmb:噴射ノズル(第3実施形態:第2変形例)
16r:噴射ノズル(参考例)
22 :乾燥機
23 :制御部
30 :ノズル体(第2実施形態)
30ma:ノズル体(第2実施形態:第1変形例)
30mb:ノズル体(第2実施形態:第2変形例)
30mc:ノズル体(第2実施形態:第3変形例)
30md:ノズル体(第2実施形態:第4変形例)
30me:ノズル体(第2実施形態:第5変形例)
30mf:ノズル体(第2実施形態:第6変形例)
30mg:ノズル体(第2実施形態:第7変形例)
30b:ノズル体(第3実施形態)
30bma:ノズル体(第3実施形態:第1変形例)
30bmb:ノズル体(第3実施形態:第2変形例)
31、31A、31Af、31An、31B:噴射孔
32 :取り付け部
40 :到達点(天井)
40d:到達点(床)
40e:到達点(内壁:遠方側)
40f:到達点(内壁:近接側)
41 :散水ライン
42 :流体到達線
43 :水滴
50 :散水困難な箇所
A :天井側半球部(取付面側半球部)
B :床側半球部(対向面側半球部)
BC :天井中心
C :中心
Dd :対角線方向
Dx :長軸方向
Dy :短軸方向
V5 :天井5側の頂点
V7 :床7側の頂点
Z :第1方向
X :第2方向
Y :第3方向
Hxy:円状水平面
AR :円弧
La1~La3、Lb1~Lb4:間隔(噴射孔)
Lc、Ld、Le、Lf:間隔(到達点)
SH1~SH4:断面積(噴射孔)
SC1~SC4:流体到達線で仕切られた範囲の面積(天井)
SW1~SW6:流体到達線で仕切られた範囲の面積(内壁)
θv、θh :角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図22
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図31