(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】細胞傷害性細胞及び幹細胞の治療効果を強化する新規なRNA構築物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20221011BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20221011BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20221011BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221011BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20221011BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20221011BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20221011BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20221011BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20221011BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221011BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221011BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N5/0783
C07K14/55
C12N5/10
C12N5/077
A61K31/7105
A61K38/20
A61K35/17 Z
A61K35/12
A61P35/00
A61P31/00
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2018550550
(86)(22)【出願日】2017-04-01
(86)【国際出願番号】 US2017025656
(87)【国際公開番号】W WO2017173427
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-13
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518106249
【氏名又は名称】ヴィセリックス・インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(74)【代理人】
【識別番号】100187089
【氏名又は名称】上野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】エヴレン・アリシ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/011324(WO,A2)
【文献】特表2011-522526(JP,A)
【文献】Chiang, C. et al.,Sequence-Specific Modifications Enhance the Broad-Spectrum Antiviral Response Activated by RIG-I Agonists,J. Virol.,2015年,Vol. 89(15),pp. 8011-8025
【文献】Heidegger, S. et al.,Selective engagement of the RIG-I pathway synergizes with checkpoint blockade in cancer immunotherapy,Oncology Research and Treatment,2015年,Vol. 38, SUPPL. 5,pp. 37-38. Abstract Number: V132
【文献】Beljanski, V. et al.,Enhanced Influenza Virus-Like Particle Vaccination with a Structurally Optimized RIG-I Agonist as Adjuvant,J. Virol.,2015年,Vol. 89(20),pp. 10612-10624
【文献】間葉系幹細胞と造血幹細胞が形成する独特な骨髄ニッチ,慶応義塾大学 グローバルCOEブログラム[online],2015年,https://web.archive.org/web/20151205013112/http://www.med.keio.ac.jp/gcoe-stemcell/treatise/2010/20101015_02.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列ID番号1のRNA分子。
【請求項2】
細胞傷害性細胞にRIG-Iアゴニストを投与することを有し、前記RIG-Iアゴニストは、配列ID番号1、配列ID番号2又は配列ID番号3から選択されるRNA分子の少なくとも1つであることを特徴とする、細胞傷害性細胞におけるグランザイムBのレベルを
エクスビボで増加させる方法。
【請求項3】
前記RIG-IアゴニストがIL2と共に投与されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
細胞傷害性細胞にRIG-Iアゴニストを投与することを有し、前記RIG-Iアゴニストは、配列ID番号1、配列ID番号2又は配列ID番号3のRNA分子の少なくとも1つから選択されることを特徴とする、細胞傷害性細胞におけるパーフォリンのレベルを
エクスビボで増加させる方法。
【請求項5】
前記RIG-Iアゴニストは配列ID番号1であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記RIG-IアゴニストはIL2と共に投与されることを特徴とする請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
細胞傷害性細胞に、配列ID番号1、配列ID番号2又は配列ID番号3から選択される少なくとも1つのRNA分子を投与することを有することを特徴とする、細胞傷害性細胞におけるパーフォリン及びグランザイムBのレベルを
エクスビボで増加させる方法。
【請求項8】
前記RNA分子はIL2と共に投与されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記RNA分子は配列ID番号1であることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞傷害性細胞はナチュラルキラー細胞であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ナチュラルキラー細胞はNK92細胞であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞傷害性細胞はCD8細胞であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞傷害性細胞はリンパ球であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】
配列ID番号1を含むことを特徴とする細胞傷害性細胞。
【請求項15】
配列ID番号1のRNA分子からなり、癌又は慢性感染症を有する患者に投与されることを特徴とする投与物。
【請求項16】
配列ID番号1のRNA分子である細胞内防御機構を阻害する際に有効なRIG-Iアゴニストで処置された細胞からなり、養子細胞移入による治療において患者に投与されることを特徴とする投与物。
【請求項17】
IL2とともに患者に投与されることを特徴とする請求項16に記載の投与物。
【請求項18】
請求項14に記載の細胞傷害性細胞からなり、癌又は慢性感染症を有する患者に投与されることを特徴とする投与物。
【請求項19】
配列ID番号1のRNA構築物からなる投与物であって、幹細胞に接触させることで、前記幹細胞の生存性又は生着を増加させる及び/又は幹細胞の増殖、送達又は治療効果を強化する投与物。
【請求項20】
前記投与物はIL2と同時投与されることを特徴とする請求項19に記載の投与物。
【請求項21】
配列番号1のRNA分子であるRIG-Iアゴニストによって処置された細胞傷害性細胞から単離された細胞外小胞からなり、癌を有する哺乳動物の生存時間を延長するために投与される投与物。
【請求項22】
IL2とともに前記哺乳動物に投与されることを特徴とする請求項21に記載の投与物。
【請求項23】
前記細胞はナチュラルキラー細胞であることを特徴とする請求項21または22に記載の投与物。
【請求項24】
前記ナチュラルキラー細胞はNK92細胞であることを特徴とする請求項23に記載の投与物。
【請求項25】
前記細胞傷害性細胞はCD8細胞であることを特徴とする請求項21または22に記載の投与物。
【請求項26】
前記細胞傷害性細胞はリンパ球であることを特徴とする請求項21または22に記載の投与物。
【請求項27】
配列ID番号1のRNA分子であるRIG-Iアゴニストの投与を有することを特徴とする、間葉系間質細胞におけるCD90発現を
エクスビボで増加させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権と参照による結合)
本出願は、2016年4月1日に提出された米国仮特許出願62/316,679号に対する優先権を主張し、その内容は参考として援用される。本明細書に引用される全ての参考文献は、参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞及び細胞傷害性T細胞(「CD8細胞」)を用いる治療の有効性は、該細胞傷害性細胞におけるグランザイムB及び/又はパーフォリンの相対量(「ロード」)によって影響される。NK細胞及びCD8T細胞はまとめて「細胞傷害性細胞」と呼ばれる。養子細胞、腫瘍浸潤リンパ球細胞(TIL)、キメラ抗原受容体(CAR)改変細胞、及び幹細胞(ここではまとめて養子細胞移入と呼ばれる)と呼ばれるものを含む細胞傷害性細胞は、現在、様々な臨床試験において試験されている多数の癌の種類に対する治療処置として使用することができる。養子細胞移入による治療処置の成功のための重要な因子の1つは、NK細胞及びCD8T細胞におけるグランザイムB及びパーフォリンのロードである。
【0003】
細胞傷害性細胞は、悪性形質転換細胞への早期自然応答において重要な役割を果たす。細胞傷害性細胞は、細胞表面で様々な活性化受容体を通じて又は腫瘍細胞上のヒト白血球抗原(HLA)の非存在下で活性化される(非特許文献8、10)。
【0004】
NK及びCD8+T細胞の両方の細胞傷害性は、グランザイムB及びパーフォリンの放出、又はFasL及びTNF関連アポトーシスリガンド(TRAIL)等の死受容体リガンドの発現によって媒介される。活性化すると、溶解性顆粒は、エフェクター及び標的細胞によって主に形成される細胞内接合に送達される(非特許文献6)。TIL及びCAR遺伝子改変細胞傷害性細胞を含む養子細胞移入の標準実務は、現在、養子移入前にインビトロでサイトカイン曝露で細胞を活性化することである。しかし、制限因子は、パーフォリン及びグランザイムBの全ロードに大きく依存する、各細胞傷害性細胞による十分な連続死滅を得ることである。更に、トランスフェクション処理及び/又はインビボでウイルスに対する細胞耐性又は耐性欠如は、重要な要因である。
【0005】
細胞溶解性顆粒のロードに対する中心ステップは、MDA-5(メラノーマ分化因子5)及びRIG-I(レチノイン酸誘導性遺伝子I)等の細胞内RNA認識部位の活性化であり、活性化細胞の直接的な応答をもたらす。
【0006】
5’-トリホスフェート末端(5’ppp)及び100ヌクレオチド未満のサイズを有するウイルスRNA又は合成dsRNA分子は、RIG-1を誘導することが分かっている(非特許文献4、7)。更に、5’末端でペアリングするブラント末端塩基及び最小20ヌクレオチドの長さは、RIG-Iの最適結合及び活性化のために重要であった(非特許文献4、7)。活性RIG-Iは、そのCARDドメインを介してミトコンドリアアダプタータンパク質MAVSと相互作用する。MAVSの活性化は、結果的にIRF-3及びIRF-7をリン酸化し、NF-κB経路を活性化するIKK関連キナーゼTBK1及びΚΚβの活性化をもたらす。更に、これは、IFN刺激遺伝子15(ISG15)及び他のISG(非特許文献5、9、11、13)等の炎症性サイトカイン及び選択された抗ウイルス遺伝子の転写及び分泌と同様に、タイプI IFN(IFN-β及びIFN-α)免疫応答を直接誘導する(非特許文献5、9、11、13)
NK細胞及び細胞傷害性T細胞においてパーフォリン及びグランザイムBのロードを増加させるであろうRIG-1に対して特に特異的であるRNA構築物が当該技術分野では必要であり、それによりNK細胞とCD8+T細胞の養子細胞移入の障害の1つを克服する。
【0007】
RIG-Iは、幹細胞における生存性及び生存期間において重要な役割を果たすことも知られている。RIG-Iの活性化は、早期幹細胞死をもたらす処理をダウンレギュレートすると考えられている。生存性を改善し、幹細胞の生着能力を増加させるRIG-Iアゴニストが当該技術分野で必要とされている。
【0008】
当該技術分野では、改善された腫瘍溶解性ウイルス癌治療の必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Beljanski V, Chiang C, Kirchenbaum GA, Olagnier D, Bloom CE, Wong T, et al. (2015). Enhanced Influenza Virus-Like Particle Vaccination with a Structurally Optimized RIG-I Agonist as Adjuvant. Journal of virology 89(20): 10612-10624.
【文献】Bhat R, Watzl C (2007). Serial killing of tumor cells by human natural killer cells--enhancement by therapeutic antibodies. PloS one 2(3): e326.
【文献】Chiang C, Beljanski V, Yin K, Olagnier D, Ben Yebdri F, Steel C, et al. (2015). Sequence-Specific Modifications Enhance the Broad-Spectrum Antiviral Response Activated by RIG-I Agonists. Journal of virology 89(15): 8011-8025
【文献】Goubau D, Schlee M, Deddouche S, Pruijssers AJ, Zillinger T, Goldeck M, et al. (2014). Antiviral immunity via RIG-I-mediated recognition of RNA bearing 5’-diphosphates. Nature 514(7522): 372-375.
【文献】Grandvaux N, Servant MJ, tenOever B, Sen GC, Balachandran S, Barber GN, et al. (2002). Transcriptional profiling of interferon regulatory factor 3 target genes: direct involvement in the regulation of interferon-stimulated genes. Journal of virology 76(11): 5532-5539.
【文献】Henkart PA (1985). Mechanism of lymphocyte-mediated cytotoxicity. Annu Rev Immunol 3: 31-58.
【文献】Hornung V, Ellegast J, Kim S, Brzozka K, Jung A, Kato H, et al. (2006). 5’-Triphosphate RNA is the ligand for RIG-I. Science 314(5801): 994-997.
【文献】Karre K, Ljunggren HG, Piontek G, Kiessling R (1986). Selective rejection of H-2-deficient lymphoma variants suggests alternative immune defence strategy. Nature 319(6055): 675-678.
【文献】Kawai T, Takahashi K, Sato S, Coban C, Kumar H, Kato H, et al. (2005). IPS-1, an adaptor triggering RIG-I- and Mda5-mediated type I interferon induction. Nature immunology 6(10): 981-988.
【文献】Lanier LL (2001). On guard--activating NK cell receptors. Nature immunology 2(1): 23-27.
【文献】Liu SY, Sanchez DJ, Cheng G (2011). New developments in the induction and antiviral effectors of type I interferon. Current opinion in immunology 23(1): 57-64.
【文献】Shu D, Shu Y, Haque F, Abdelmawla S, Guo P (2011). Thermodynamically stable RNA three-way junction for constructing multifunctional nanoparticles for delivery of therapeutics. Nature nanotechnology 6(10): 658-667.
【文献】Takeuchi O, Akira S (2010). Pattern recognition receptors and inflammation. Cell 140(6): 805-820
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、細胞傷害性細胞中のパーフォリンの量を増加させるRNA分子を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、細胞傷害性細胞中のグランザイムBの量を増加させるRNA分子を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、小分子を投与することによって細胞傷害性細胞中のパーフォリンの量を増加させることである。
【0013】
本発明の目的は、エクスビボ処理(即ち、自己又は同種細胞が体外にある間)においてキメラ抗原受容体(CAR)技術を含む養子細胞治療を強化するために、細胞傷害性細胞及び/又は幹細胞を含む細胞にRNA分子を投与することである。
【0014】
本発明の目的は、インビボ処理(即ち、細胞が体内に残っている間)を介して、細胞傷害性細胞及び/又は幹細胞を含む常在細胞にRNA分子を投与することである。
【0015】
本発明の目的は、小分子を投与することによって細胞傷害性細胞中のグランザイムBの量を増加させることである。
【0016】
本発明の目的は、幹細胞をトランスフェクトする能力を改善することである。
【0017】
本発明の目的は、RIG-Iに結合するRNA分子を投与することによって幹細胞の生存性及び生着率を上げることである。
【0018】
本発明の目的は、エクスビボトランスフェクション処理においてウイルスに曝露された場合に細胞傷害性細胞の生存性を増加させることである。
【0019】
本発明の目的は、インビボでウイルスに曝露された場合に細胞傷害性細胞の生存性を増加させることである。
【0020】
本発明の目的は、細胞傷害性細胞の連続死滅能力を増加させることである。
【0021】
本発明の目的は、慢性ウイルス感染を含むウイルス感染を治療することである。
【0022】
本発明の目的は癌を治療することである。
【0023】
本発明の目的は、肝臓癌を治療することである。
【0024】
本発明の目的は、多発性骨髄腫を治療することである。
【0025】
本発明の目的は、C型肝炎を治療することである。
【0026】
本発明の目的は、HIVを治療することである。
【0027】
本発明の目的は、ウイルスリザーバとして作用する細胞を除去することである。
【0028】
本発明の目的は、RNA小分子を投与して細胞系NK-92においてグランザイムB及びパーフォリンを増加させることである。
【0029】
本発明の目的は、RNA小分子を投与して細胞系TALL-104においてグランザイムB及びパーフォリンを増加させることである。
【0030】
本発明の目的は、ナチュラルキラー細胞及びT細胞等の初代ヒト細胞傷害性リンパ球におけるグランザイムB及びパーフォリンを増加させるために、RNA小分子を投与することである。
【0031】
本発明の目的は、RIG-IアゴニストAによって処理されたHEK293細胞又はNK細胞から単離された細胞外小胞を用いて癌を有する哺乳動物の生存時間を延ばすことである。
【0032】
本発明の目的は、新規RNA RIG-Iアゴニストをインビボ又はインビトロで、RNAウイルスベクターにそれをコードすること又は腫瘍溶解性RNAウイルスを使用することによって、投与することである。
【0033】
本発明の目的は、細胞の活性化を上げるために、バイスペシフィックキラーセルエンゲージャ(Bispecific Killer cell Engager:BIKEs)、トライスペシフィックキラーセルエンゲージャ(Trispecific Killer cell Engager:TRIKEs)及びモノクローナル抗体と相乗する新規RNA RIG-Iアゴニストを投与することである。
【0034】
本発明の目的は、標的ナノ粒子、リポソーム、腫瘍溶解性ウイルス、ウイルスベクター、モノクローナル抗体又は運搬及び/又は細胞浸透性ペプチドを用いてRIG-IアゴニストAを送達することによって腫瘍微小環境における免疫応答を増加させることである。
【0035】
本発明の目的は、本発明のRIG-Iアゴニストを、抗KIR抗体、抗TIGIT、抗TEM3、抗PD1、抗PDL-1、及び/又は抗CTLA4等のチェックポイント阻害剤と組み合わせることである。
【0036】
本発明の目的は、診断ツールとしてのエフェクター細胞のアネルギーを理解するために、本発明のRIG-Iアゴニストを使用することである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
我々は、「RIG-IアゴニストA」(「RIAA」)とここで同定された56のRNAサブユニットを含むRNA構築物を作製した。RIAAはRIG-Iに非常に特異的であり、細胞傷害性細胞におけるパーフォリン及びグランザイムBのロードを増加させる。これは、細胞傷害性細胞の生存性、死滅力及び有効性を増加させ、NK細胞、CD8T細胞及び幹細胞の養子細胞移入の様々な障害を克服する。
【0038】
RIAAは、患者に細胞を投与する前に、NK細胞、CD8T細胞及び幹細胞を含む細胞をインビトロでトランスフェクトするために使用可能なRNA小分子である。細胞は、自己又は同種細胞であってもよい。RIAAは、患者の内在性細胞を治療するためにインビボで投与することもできる。更に、RIAAは、養子細胞のインビトロ処理を必要とせずに、治療用小分子として患者に投与することができ、更に、RIAAを単剤療法及び/又は併用療法として投与することができる。
【0039】
本発明の用途は、悪性黒色腫、卵巣癌、膀胱癌、尿路上皮癌、肝臓癌、子宮頸癌、頭頸部癌、EGFR+腫瘍、HER1+腫瘍、HER2+腫瘍、膵癌、扁平上皮癌、サルコーマ、非小細胞性肺癌、メルケル細胞癌、骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、多形膠芽腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、形質細胞白血病、非ホジキンリンパ腫、CD-20陽性B細胞悪性腫瘍、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫及び肝臓、慢性ウイルス及び/又はC型肝炎及びHIVを含むがこれらに限定されない感染、移植後リンパ増殖性疾患を含むがこれらに限定されない固形腫瘍及び血液癌の成人及び小児治療及び幹細胞を用いる任意の治療を含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】RIG-IアゴニストAの投与後のNK細胞のパーフォリン及びグランザイムBロードの増加を示す一対の棒グラフである。
【
図3】RIAAによる刺激後のNK細胞の連続的な細胞傷害能力を示す折れ線グラフである。
【
図4】RIAA及び他のRIG-Iアゴニストを、シンジェニック免疫適格腫瘍担持マウスへの皮下投与を示す折れ線グラフである。
【
図5】既知のRIG-I刺激剤M5及びM8と比較されたRIAAの二次RNA構造の概略図である。
【
図6】M5、M8及びRIG-IアゴニストAの配列比較である。
【
図7】RIG-IアゴニストA処理がある場合とない場合の間葉系間質細胞におけるドナーあたりのCD90受容体密度の変化を示す折れ線グラフである。
【
図8】RIG-IアゴニストAの投与後のCD90細胞の増加を示す棒グラフである。
【
図9】RIG-IアゴニストA処理を用いたT細胞におけるパーフォリン及びグランザイムBの増加を示す棒グラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
我々は、NK細胞及び幹細胞のトランスフェクションを改善する際に有用であるRNA RIG-Iアゴニストの新しいファミリーを発見した。これらのアゴニストは、ヘアピン及びループを含む二次構造を生成するそれ自体に結合するRNAの一本鎖を含む。我々は、ヘアピンとループ(「結合領域」)の間の分子に沿った距離がRIG-I結合及び活性化に重要であることを発見した。
【0042】
結合領域内で、ヘアピンとループの距離は7~80塩基の間でなければならない。7塩基未満では、構造がRIG-Iの結合溝に収まるように折り畳むことができないと考えられる。結合領域が80塩基を超えると、分子は折り畳まれてRIG-I結合部位に収まるかもしれないが、大分子は、実際にRIG-Iの活性化を減少させるだろうと考えられる。ヘアピンとループの結合領域は、ループ構造を安定にするために、ループの各側の2~5塩基距離内にGC相補塩基対を含む必要がある。また、ループ領域に少なくとも1つのAU相補対が存在することにより、ループの形成が容易になる。
【0043】
このRNA小分子ファミリーの代表は、RIAA(配列ID番号1)として同定された新規なRNA構築物である。RIAAは、NK細胞及び細胞傷害性T細胞におけるパーフォリン及びグランザイムBの大幅に増加したロードをもたらすRIG-Iに対して非常に特異的である。
【0044】
RIAAは、患者に細胞を投与する前に、NK細胞、CD8T細胞及び幹細胞を含む細胞をインビトロでトランスフェクトするために使用可能なRNA小分子である。細胞は、自己又は同種であってもよい。インビボで内在性細胞を治療するために、インビボでRIAAを投与することもできる。更に、RIAAは、養子細胞のインビトロ処理を必要とせずに小分子治療薬として患者に投与することができる。
【0045】
本発明の構築物及び方法を用いて活性化された細胞傷害性細胞は、殺傷機能が強化された細胞傷害性細胞が望まれる任意の用途に有用である。本発明の用途は、多発性骨髄腫及び肝臓を含むがこれらに限定されない任意の癌ならびにC型肝炎及びHIV等の慢性ウイルス感染を含み、これらに限定されないウイルス感染の治療を含む。
【実施例1】
【0046】
(細胞を強化するためのRIG-Iアゴニストのエクスビボの使用)
材料及び方法
細胞培養
ヒトナチュラルキラー細胞株NK-92は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(ATCC、バージニア州マナッサス、カタログ番号CRL-2407TM)から購入した。細胞を、20%熱不活性FBS(インビトロジェン、カリフォルニア州カールズバッド)及び1000U/ml Proleukin(ノバルティス、バーゼル・スイス)を含む幹細胞培地(CellGro;CellGenix、フライブルグ・ドイツ)で最初に解凍した。
【0047】
ヒトT細胞株TALL―104は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(ATCC、バージニア州マナッサス、カタログ番号CRL-2407TM)から購入した。細胞を、20%熱不活性FBS(インビトロジェン、カリフォルニア州カールズバッド)及び1000U/ml Proleukin(ノバルティス、バーゼル・スイス)を含むIMDMで最初に解凍した。
【0048】
NK細胞活性を評価するために、慢性骨髄性白血病患者K562(LGC Promochem/ATCC、バージニア州マナッサス)由来のヒト赤芽球細胞株をCR51放出及び脱顆粒分析の標的として使用した。K562細胞をRPMI、GlutaMAX1640(インビトロジェン)と共に培養し、10%FBSで補充した。
【0049】
細胞を37℃、5%CO2、湿度95%でインキュベートし、トリパンブルー染色及びCountess細胞カウンター(インビトロジェン)により2日毎に細胞数を決定した。
【0050】
NK-92細胞を0.5~1×106細胞/mlの細胞密度で培養し、IL-2で毎日補充した。
【0051】
全細胞培養は、厳密な抗生物質不使用条件下でBSL2環境で行われた。
【0052】
TALL-104細胞株は、10%ウシ胎仔血清(FCS)が補充されたイスコフ改変ダルベッコ培地(FMDM)で、0.05~0.1×106細胞/mlの細胞密度で使用された。細胞を組換え500U/ml IL-2で補充された。
【0053】
RNA構築物
以前に報告されたRIG-Iアゴニスト(M5及びM8)は、ジョン・ヒスコット(Istituto Pasteur-Fondazione Cenci Bolognetti、ローマ・イタリア)によって親切に共有された。残念なことに、移入されたM5配列ID番号2及びM8(配列ID番号3)組成物は非常に汚染されており、活性がM5又はM8分子に由来するかどうか、又は活性が未知の汚染物質に由来するかどうかは不明であった。(M5及びM8分子は、PCT公開WO2016/011324に記載されていると考える)。従って、RIG-IアゴニストA、M5及びM8構築物は合成され、RIG-IアゴニストA)精製され、品質管理された(Dharmacon(GEヘルスケア))。M5、M8及びRIAAを
図5に示す。
【0054】
RIAA配列ID番号1:
GACGAAGACCACAAACCAGAUAAAAAUAAUUUUUAUCUGGUUGUUUGUCUUCGUC
M5配列ID番号2:
GACGAAGACCACAAAACCAGATAAAAAATAATTTTTTATCTGGTTTTGTGGTCTTCGTCC
M8配列ID番号3
GACGAAGACCACAAAACCAGATAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAATAATTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTATCTGGTTTTGTGGTCTTCGTC
RIG-1アゴニストによるHEK293細胞株のトランスフェクション
ヒト胎児腎細胞株293(HEK293)は、当該技術分野で周知の細胞株である。トランスフェクションは、HEK293に対して1mlのIMDM/ウェルで約2×105細胞/ウェルを使用して、12ウェルプレートの懸濁液の新しくトリプシン処理された細胞で行われた。各トランスフェクションに対して、1μlのLipofectamine2000(インビトロジェン)及び50ngのmRNAが使用された。細胞懸濁液に添加される前に、mRNA及びLipofectamine2000は100μlOPTI-MEMブランド最小必須培地(Gibco)で30分間インキュベートした。細胞及びLipofectamine2000-mRNA複合混合物を、余分な50μl/ウェルFMDMが添加される前に、HEK293に対して5×103細胞/ウェルで96ウェルプレートに直ちに分け、37℃、5時間インキュベートした。トランスフェクション後、細胞はOPTI-MEMのT-150フラスコにプールされた。上清が16、24、40、48時間で集められ、-20℃でエクソソーム精製のために凍結された。
【0055】
RIG-IアゴニストによるBMMSCの培養及びトランスフェクション
トランスフェクションは上記のように行われた。簡潔には、骨髄間葉間質細胞(「BMMSC」)を3人の健康なドナーから入手した。Ficoll分離骨髄を、2mlのAlpha-MEM(インビトロジェン)の6ウェルプレートに播種した。次いで、細胞を、5%CO2インキュベーターにおいて37℃で5日間インキュベートした。位相差顕微鏡で3日目の紡錘形細胞の出現と70~90%のコンフルエントを確認した後で、細胞をPBSで2回洗浄し、0.25%GMPグレードTrypLE Select CTS(サーモフィッシャー、マサチューセッツ州ウォルサム)2.5mLで、37℃、2分間ダイジェストした後、7.5mLの完全最小必須培地アルファ(「α-MEM培地」)で中和した。その後、1x106細胞を、フローサイトメトリーを用いた表現型CD44、CD73、CD90、CD105、CD106、CD146、SSEA-1及びSSEA-4であることを確認するのに使用し、これらの細胞がCD31、CD34、CD45、CD80、CD86及びHLA-DRに対して陰性であることを確認した。パネルを以下の表1に記載する。残りの細胞を隔日継代し、継代5-7の間にトランスフェクトした。次いで、細胞をトランスフェクションのために5×105細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種した。トランスフェクションプロトコルは上記のように行われた。フローサイトメトリーを用いてトランスフェクション後24時間に細胞を特徴付け、上清TGF-BレベルをELISAによって評価した。
【0056】
【0057】
造血幹細胞(「HSC」)のトランスフェクション
満期正常分娩(37~41週)から採取した臍帯血試料を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Gibco)で1:1に希釈した。続いて、400gで40分間Ficollの遠心分離により単核細胞を単離した。単核細胞を集め、2回洗浄し、0.5%ヒト血清アルブミン(「HSA」)を添加してPBSに再懸濁した。
【0058】
製造業者の推奨に従って、AutoMACS(ミルテニーバイオテク)及びCD34ダイレクト・アイソレーション・キット(ミルテニーバイオテク)を使用して、CD34+画分を免疫磁気単離した。つまり、FcR Blocking Reagentを加えた後で、細胞をMACS CD34 Microbeadsで6~12℃で30分間標識した。続いて、細胞懸濁液を磁界に置かれたカラムを通すことにより、標識細胞を濃縮された。カラムを磁界から取り出した後、陽性選択細胞をカラムから洗い出して集めた。CD34+細胞集団の純度は、単離直後にフローサイトメトリーによって決定された。
【0059】
幹細胞因子(SCF)(20ng/ml;PeproTech EC)、トロンボポエチン(TPO)(50ng/ml;PeproTech EC)及び胎児肝チロシンキナーゼ-3リガンドFlt-3リガンド(Flt-3L)(50ng/ml;PeproTech EC)の成長因子で補充された造血幹細胞及び前駆細胞(CellGro SCGM、Cellgenix)に対して、細胞を、無血清培地に1x105/mlの細胞濃度、25cm2フラスコで培養した。5%CO2の加湿雰囲気、37℃で48時間インキュベートした後で、細胞を、20%HSAで補充されたCellGro SCGM培地に1x105/mlで再懸濁した。
【0060】
CD34濃縮細胞を、等しいサイズのアリコート(アリコート当たり2~5×105の細胞)に分け、トランスフェクトなし、RNAなしでトランスフェクトした(モック)、又はRIG-Iアゴニストでトランスフェクトした、のいずれかとした。トランスフェクションキュベットを1mlのIMDMで2回リンスすることにより、トランスフェクトされた細胞を15mlのプラスチックチューブに移し、総量10mlのEVIDMで洗浄した。ペレット化した細胞を、加湿雰囲気、37℃、5%CO2で15分間インキュベートした後、早期作用性サイトカイン(胎児肝チロシンキナーゼ-3リガンドFlt-3リガンド[Flt-3L]、幹細胞因子[SCF]、トロンボポエチン[TPO]、各々10ng/ml最終濃度で[全てPeproTech社、ニュージャージー州ロッキーヒル])で補充された1mlのMyleocult H5100培地(Stem Cell Technologies社、バンクーバー・カナダ)に再懸濁された。細胞を、37℃、5%CO2の加湿雰囲気で、一般的なカスパーゼ阻害剤Z-V AD-FMK(BD Biosciences、ハイデルベルグ・ドイツ)の存在下で、1×105細胞/mlの密度で培養した。
【0061】
我々は、製造業者Lonza(http://bio.lonza.com/fileadmin/groups/marketing/Downloads/Protocols/Generated/Optimize d_Protocol_71.pdf)からのトランスフェクションインストラクションを使用し、ヌクレオフェクションプログラムU08を使用し、5×105以上のCD34濃縮細胞を使用した。上記のようにRNAをトランスフェクトした。次いで、表2のパネルを用いて詳細なフローサイトメトリーにより細胞を特徴付けた。
【0062】
【0063】
RNAナノ粒子及び細胞外小胞の構築
ナノ粒子は、以前に報告されたプロトコル(非特許文献12)に従って、RNAフラグメント(Trilink)から合成された。RNAナノ粒子は、インビボでRNase分解に耐性をもたせるために、2-F U及びCヌクレオチドを含んだ。次いで、RNA複合物を、個々の鎖をPBS緩衝液に室温(RT)、化学量論比で混合することによって組み立てた。
【0064】
(Bradford Assayにより測定された)12μgの全タンパク質濃度でNK92又はHEK293由来のエクソソーム及び16μgのRNAを400μlのエレクトロポレーション緩衝液(1.15mMリン酸カリウムpH7.2,25mM塩化カリウム、21%Optiprep)で混合され、4mmキュベットで電気穿孔した。インビボ実験のために、エレクトロポレーションを400μlで行い、その後プールした。
【0065】
エクソソームは、50mlの条件培地(48時間、OptiMemにNK細胞S72)を300g、5分間回転させて細胞デブリを除去し、0.2μmの滅菌フィルターを通して濾過し、次いで110,000gで90分間超遠心分離した。ペレットを全容量300μlのPBSに再懸濁した。Liguniら、JI2012、ヒトNK細胞由来エクソソームの免疫サーベイランス特性を参照のこと。
【0066】
マウス
雌雄C57BL/KaLwRijマウスをHarlan CPB(ホルスト・オランダ)から購入した。C57B1/6、C57B1/6 CD1-/-、C57B1/6 CO4-/-、C57B1/6 CD8-/-、C57BL/6-Tg(ACTbEGFP)1Osb/J及びRag2-/-cγ-/-マウスは、カロリンスカ研究所微生物学及び腫瘍生物学センターから供給された。全ての動物は、水道水及び標準飼料の自由アクセスを含む従来条件下で、カロリンスカ研究所フッディンゲ大学病院臨床研究センターで動物施設に収容された。全マウスは、各実験の開始時に8-10週齢であった。本研究で行われた実験は、スウェーデン南ストックホルム地方倫理委員会によって承認された。
【0067】
MM細胞注入及び多発性骨髄腫の誘導
C57BL/KaLwRijマウス群に、マウス1匹あたり全量100μl滅菌PBSに懸濁された105個のeGFP-5T33 MM及び/又は非形質導入5T33 MM細胞で静注した。コントロールマウスには等量のPBSで静注された。動物は対麻痺の進展のために一日2回検査された。週間隔かつ疾患進行時に、マウスをCO2吸入により安楽死させ、脾臓、肝臓、胸腺及びリンパ節を切除し、単細胞懸濁液の調製処理までPBSに保持した。大腿骨及び脛骨からの骨髄は、PBSを骨の空洞に流すことによって得られた。
【0068】
腫瘍細胞の照射及び接種
腫瘍細胞をPBSで3回洗浄し、137Cs Gammacell2000デバイス(Molsgaard Medical、ヘルスホルム・デンマーク)に60Gyでガンマ線を照射した。照射直後に、それらを皮下注射又は更なるインビトロ分析のために培養した。C57Bl/6及びC57Bl/KaLwRijに、標準プロトコルに従って免疫性を与えた。簡潔には、注射前に、洗浄、計数し、最終濃度、PBS(0.2ml)に腫瘍細胞を再懸濁した。27ゲージ針を備えた1ccツベルクリン注射器を用いて3週間隔で3回腫瘍細胞を注入し、マウスを週に2回腫瘍の存在も検査した。
【0069】
エフェクター細胞の調製
脾臓断片に穏やかな圧力をかけるためホモジナイザーを用いて懸濁液をメッシュを通して濾過してことにより、マウスからの脾臓単細胞の懸濁液を無血清RPMI-1640培地にプールした。赤血球を、塩化アンモニウム溶液[0.15mol/L NH4Cl、10mmol/L KHCO3、0.1mmol/Lエデト酸(EDTA)、pH7.2]で溶解した。得られた細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、完全RPMI-1640培地[10%不活性FCS、2mmol/L L-グルタミン、25mmol/L NaHCO3、1mmolピルビン酸ナトリウム、25mmol/LのN-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸(HEPES)、100kU/LのペニシリンG及び100mg/Lのストレプトマイシン]で補充されたRPMI-1640培地とTrace Element A(Mediatech社、バージニア州ハーンドン)に再懸濁した。新鮮な完全RPMI培地のProleukin(登録商標)(rIL-2)を0日目及び1日おきに添加した。細胞を1×106細胞/mlの濃度で培養し、細胞密度を毎日測定した。
【0070】
エフェクター細胞のエクスビボ分離
単細胞懸濁後で、マウス細胞を、製造者の指示に従って、CD8マウスマイクロビーズキット(ミルテニーバイオテク、ベルギッシュ・グラードバッハ・ドイツ)を使用して分離した。簡潔には、異なる器官からの単細胞懸濁液を上記のように調製し、細胞数を決定した。300gで10分間の細胞遠心分離後、上清を完全に除去した。細胞ペレットを90μlのすすぎ緩衝液(PBS、0.5%BSA、2mM EDTA)に再懸濁した。細胞を、107の全細胞あたり10μlのCD8マイクロビーズと混合し、4℃で15分間インキュベートした。磁気分離前に、細胞を107の細胞あたり2mlのすすぎ緩衝液で洗浄し、300gで10分間遠心分離して上清を除去し、500μlのすすぎ緩衝液に再懸濁した。一方、磁気カラムを適切なMACSセパレータの磁界に置き、3mlのすすぎ緩衝液で3回すすぐことによって選別のために調製した。最後に、細胞懸濁液をカラムに適用し、3mlのすすぎ緩衝液で3回リンスした。全ての非標識(陰性)細胞をすすぎ洗いし、15mlのファルコンチューブに集めた。標識エフェクター細胞を集めるために、カラムを磁界から除去し、5mlのすすぎ緩衝液をカラムに適用し、プランジャーを用いて陽性細胞画分を清浄な15mlのファルコンチューブに洗い流した。
【0071】
陰性画分を、24ウェルプレート(BD)中の50ユニット/ml JL-2との1:1エフェクト対標的(E:T)比でインビトロで刺激した。インビトロ刺激の5日後、細胞を採取し、51Cr放出分析に使用した。
【0072】
脱顆粒及び細胞傷害性分析
K細胞の脱顆粒する能力を分析するために、細胞を96ウェルプレートで1×106細胞/mlの密度で培養し、単独又はK562と1:1の比又はPMA及びIono(0.5μg/ml、会社、場所)で4-6時間インキュベートした。インキュベーションの1時間後、ゴルジストップ(BD)を培養液に添加して、タンパク質輸送を阻害した。続いて、細胞をCD56及びCD107aに対して4℃で30分間染色した。
【0073】
細胞傷害性機能は、18時間の51Cr放出分析で3回測定した。簡潔には、1×106個の標的細胞を100μl51Cr(1mCi/mlの比活性)で標識し、37℃で1時間インキュベートした。5T33及びLPS Blastを標的として使用した。CTL細胞を、最大E:T比100:1を有する3組調製した標的細胞連続希釈液と共にインキュベートした。RPMI培地をネガティブコントロールとして使用し、ポジティブコントロールのために細胞を1%TritonXと共にインキュベートした。V底型96ウェルプレートで37℃、18時間インキュベートした後、上清70μlを各ウェルから吸引し、パッカード・コブラ・オートガンマ5000シリーズ計数システム(アメリカ合衆国コネチカット州メリデン)を用いて数えた。自発放出パーセンテージを次式から計算した:%比51Cr放出=(試料放出-自発放出)/(最大放出-自然放出)×100。
【0074】
マウスCD4+及びCD8+細胞のインビボ枯渇
C57Bl/6マウスに、尾静脈又は皮下を介して106の5T33MM細胞でそれらを接種することによって腫瘍誘発を行った。インビボでCD4細胞を枯渇させるために、マウスを、免疫化の2日前から抗CD4mAbの200μgの腹腔内注射し、その後5日毎に、実験終了まで抗CD4mAbの200μgの腹腔内注射した。コントロールマウスには、同量(0.2ml)及び同用量のマウスIgG抗体(Sigma)をアイソタイプコントロールとして注射した。エンドポイントで脾臓細胞のフローサイトメトリー分析により、CD4+細胞の枯渇の有効性をモニターした。脾臓において1.0%未満のCD4+細胞を示す動物を研究から除外した(n=2)。
【0075】
並行して、精製抗CD8MAb(クローン2.43)を用いてCTLのインビボ枯渇を実施し、腫瘍確立中に枯渇するとき、エンドポイントまで-2日目から5日毎にマウス1匹当たり0.5mgの抗体を腹腔内注射した。
【0076】
マウスを対麻痺又は皮下腫瘍の発生についてモニターし、それらの生存動態を比較した。
【0077】
フローサイトメトリー
CD2(RPA-2.10)、CD11b(ICRF44)CD57(NK-1)DNAM1(DX11)、Kp44(p44-8.1)Kp46(9E2)、NKp30(p30-15)、CD107a(H4A3)、NKG2D(1D11)(BD、ニュージャージー州フランクリン・レイクス)、NKG2C(134591)(R&Dシステムズ、英国アビングドン)、CD56(HCD56)、NKp80(5d12)、CD161(HP-3G10)、CD319(162.1)、CD352(NT-7)、(バイオレジェンド、カリフォルニア州サンディエゴ)、CD244(C1.7)(ベックマンコールター、カリフォルニア州ブレア)、Siglec7(REA214)(ミルテニー、ベルギッシュ・グラードバッハ・ドイツ)に対する蛍光色素結合抗体を用いて、表現型を分析し、製造手順に従って処理した。パーフォリン(dG9)、グランザイムB(GB11)(BD)の細胞内染色のために、細胞をPBSで洗浄し、次いでCytofix/Cytoperm(BD)で固定・透過化し、+4℃で20分間インキュベートした。固定・透過化の後で、細胞を洗浄し、製造プロトコルに従って、Permwashで染色した。
【0078】
Partec Cyflow ML又はBD LSR Fortessaフローサイトメーター(BD)のいずれかによって全細胞を獲得し、FlowJoソフトウェア(FlowJo社、オレゴン州アシュランド)を用いて分析した。
【0079】
統計
非パラメトリックKruskal Wallis検定を用いて、全培養液の絶対細胞数、NK細胞パーセンテージ及び細胞傷害性を比較した。生存曲線の統計的有意性(p<0.05)を分析するために、MacOSXのGraphPad Prismバージョン6(グラフ・パッド・ソフトウェア、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてログランク検定を行った。
【0080】
結果
パーフォリン及びグランザイムB含量
RIAA、M5又はM8で別々に処理したNK細胞の3つのバッチのトランスフェクションの4時間後、我々は上記のようにフローサイトメトリーを用いてNK細胞のグランザイムB及びパーフォリンロードを分析した。RIAAで処理したIL2刺激NK細胞では、IL2刺激M5及びM8コントロールと比較して、パーフォリン含量が1600~2000倍増加し、グランザイムB含量が800~1100倍増加した(
図2)。M5は、未処理細胞よりもパーフォリン含量が141~921倍増加し、M8は、未処理細胞よりもパーフォリン含量が110~783倍増加していた。M5は、未処理細胞よりもグランザイムB含量が70~460倍増加し、M8は、未処理細胞よりもパーフォリン含量が55~391倍増加したことを示した。
図2のデータを以下の表3及び表4に更に示す。
【0081】
【0082】
【0083】
RIAA及びM8のいずれかを用いたTALL-104細胞株のトランスフェクションの2時間後、4時間後、及び6時間後に、このガンマ-デルタT細胞株のグランザイムB及びパーフォリンロードを上記と同じパネルを用いて評価した。我々は、同様の方法で、RIAAで処置したアームでグランザイムB及びパーフォリン(
図9)のアップレギュレーションを観察した。RIAAで処置された細胞は、パーフォリンの270-1722からの増加を示した。M8は、未処理細胞よりもパーフォリン含量が190~381倍の増加を示した。M8は、未処理細胞よりもパーフォリン含量が224-365倍の増加を示した。このデータも以下の表5及び表6に示す。
【0084】
【0085】
【0086】
連続細胞傷害性分析
K562標的に対するNK細胞の連続細胞傷害性能力を、上述したように実施した(非特許文献2)。RIAA運搬ナノ粒子と同様に、M5及びM8アゴニストをIL-2によって活性化されたNK細胞に一夜越しインキュベーションでトランスフェクトした。その後、細胞傷害性分析を行った。M5及びM8によってトランスフェクトされたNK細胞は、連続死滅能力に有意差がなかった。しかし、RIAAによってトランスフェクトされた細胞は、連続細胞傷害性活性の有意な増加を有した(
図3及び4)。
【0087】
インビボ腫瘍拒絶分析
5T33MM腫瘍は、上記のように確立された。RNA運搬ナノ粒子を腫瘍細胞注射後5日目に投与した。粒子は2時間毎に6回(1μg/g;500μlのPBS)注射した。比較腫瘍生着は、RIAA粒子を投与したマウスはMM生着が遅れていることを示した(
図4)。更なる研究は、HEK293由来EVの皮下投与が同一実験モデルにおいて用量依存的に生存を遅延させることを示した(
図9)。
【0088】
議論
本研究では、我々はナチュラルキラー細胞及び細胞傷害性Tリンパ球等の細胞傷害性リンパ球におけるパーフォリン及びグランザイムB産生の最適誘導因子を同定することを目的とした。RIG-I依存性誘導を誘導しようとする際に、我々は、以前に発表されたRIG-1アゴニスト(M5及びM8)を用いることにより、より良好なパーフォリン及びグランザイムB発現を導くRIG-I誘導の仮説を最初に試験した。以前に報告したようにI型インターフェロン分泌の増加を観察することもできるが、細胞傷害性顆粒のいずれかの有意な増加は観察されなかった。これに対応するために、以前に定義された構築物とははるかに短く構造的に異なる新しい構築物を試験した。トランスフェクション又はEV媒介送達を用いてナチュラルキラー細胞及びT細胞にこの構築物を導入すると、パーフォリン及びグランザイムBの発現が有意かつ迅速に増加した。我々が知る限り、これは、RNA構築物の最初の報告であり、このような細胞傷害性リンパ球のプロテオームプロファイルの劇的な差異をもたらす。
【0089】
その後、我々は、活性NK細胞が用量依存的にMM拒絶に重要であることを示した以前に報告された同種免疫実験的多発性骨髄腫(MM)モデルに、このRNA構築物を投与した。この場合、NK細胞の養子移入はなく、最小限の残存疾患の確立直後に比較的短期間のRNA投与のみであった。構築物は、他の全ての試験処置と比較して、腫瘍発生の有意な遅延をもたらした。我々は、この現象が、細胞の連続細胞傷害能力の増加に起因する可能性があると考えている。オフターゲット効果や重篤な有害事象は観察されていない。しかし、我々は、RNA分子のインビボ送達は次善で、最適な抗腫瘍活性の最良のプラットフォーム及び送達方法を解明するために更なる研究が必要である。
【0090】
サイトゾルRNA認識受容体RIG-1及びMDA-5の刺激及び活性化は、活性細胞の免疫応答を高めるために大変魅力的である。活性化は、免疫細胞のプライミング、増殖及び極性の重要な役割を果たす広範囲な抗ウイルスエフェクター、サイトカイン及びケモカインの合成を刺激する(非特許文献1)。5’pppRNAを用いたRIG-Iの活性化は、炎症誘発性及び抗ウイルス性遺伝子の強固な発現をもたらすことが以前に示されている(非特許文献3)。他のところで議論されているように、構築物の長さが抗ウイルス応答の強さに重大な効果を及ぼすようであり、構築物が59ヌクレオチド~99ヌクレオチドの間であれば、抗ウイルス応答はより短い構築物に比べて高められた(非特許文献3)。また、K562の大幅に増加した連続死滅はインビボで示され(
図2及び3)、腫瘍拒絶分析(
図4)によってインビトロで確認することもできた。この大幅に増加した細胞傷害活性は、高められたパーフォリン及びグランザイムBレベルの直接的効果である。
【0091】
RIAAのRNA配列及び二次構造は、以前に発表されたRIG-1アゴニストM5及びM8とは完全に異なる。RIAAは他のRNA分子の両方よりも有意に短く、有意な配列相同性を持たない(
図6)。M5は片側にヘアピンを有する線状分子であり、M8は1つのヘアピンを有する両側dsRNA鎖である。対照的に、RIAA構造は、ヘアピン及びループ構造を有するものである(
図5)。これらの構造的相違は、他の既知のRIG-IアゴニストよりもRIAAの活性が大きく増加した原因となっている。
【0092】
要約すると、我々は、RIAA RNA構築物が、インビトロ及びインビボの両方でより高い連続選択的細胞傷害性能力をもたらす、増加されたパーフォリン及びグランザイムB発現を誘導することを実証した。この分子群の潜在的応用は、養子移入又は直接投与前に細胞の単純なエクスビボ処置であり得る。これらの構築物の安全性及び有効性プロフィールを理解するための更なる研究が必要である。
【実施例2】
【0093】
(インビボの使用)
本発明のRNA構築物は、構築物を発現する細胞を移入/投与することによって又は小分子として患者に投与可能である。そのような細胞又は小分子は、患者に注射するか、従来の経路を介して投与することができるだろう。次いで、RNA構築物を受ける細胞は、細胞の連続死滅能力を改善するために、グランザイムB及び/又はパーフォリンの産生及び貯蔵を増加させるであろう。
【0094】
本発明のRNA構築物は、当該技術分野で既知の技術を用いて、注射、経口、経鼻又は粘膜送達によって投与することができる。潜在的治療用途には、癌、肝臓遺伝子治療、単一遺伝子障害、記憶障害及び腫瘍再標的化遺伝子が含まれる。
【0095】
本発明で治療可能な癌は、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、及び芽細胞腫、即ち、急性リンパ芽球性白血病(全て)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、エイズ関連癌、肛門癌、星細胞腫、基底細胞癌、肝外胆管癌(胆管癌)、膀胱癌、骨腫瘍、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ、脳癌、大脳星細胞腫/悪性グリオーマ、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、視経路及び視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、軟骨肉腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、皮膚t-細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、頭蓋外、性腺外又は卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、脳幹のグリオーマ、小児大脳星細胞腫神経膠腫、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、眼内黒色腫、膵島細胞癌(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、急性リンパ芽球性白血病(急性リンパ性白血病とも呼ばれる)、急性骨髄芽球性白血病(急性骨髄性白血病)、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病(慢性骨髄性白血病とも呼ばれる)、ヘアリーセル白血病、口唇及び口腔癌、脂肪肉腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、マクログロブリン血症、ワルデンストローム、男性の乳癌、骨/骨肉腫の悪性線維性組織球腫、髄芽細胞腫、メラノーマ、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮頸部癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄性白血病、多発性骨髄腫(骨髄癌)、骨髄増殖性疾患、粘液腫、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、乏突起膠腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、上皮性卵巣癌(表面上皮間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵臓癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体芽細胞腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、中枢神経系原発リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)、腎盂尿管移行細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、メラノーマ及び非メラノーマ皮膚癌、メルケル細胞皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明扁平上皮頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、t細胞リンパ腫(菌状息肉腫及びセザリー症候群)、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行細胞癌、栄養膜腫瘍、尿管及び腎盂移行上皮癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視経路グリオーマ及び視床下部神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍(腎臓癌)を含む。
【0096】
本発明は、21-ヒドロキシラーゼ欠損症、軟骨無形成症、急性間欠性ポルフィリン症、アデニロコハク酸リアーゼ欠損症、副腎白質ジストロフィー、アラジール症候群、アレクサンダー病、アルストレーム症候群、遺伝性エナメル質形成不全症、ビオチニダーゼ欠損症、CGD慢性肉芽腫性疾患、ディジョージ症候群、ファンコニ貧血、G6PD欠損、リポ蛋白リパーゼ欠損症、筋ジストロフィー、デュシェンヌ型、シデリアスX連鎖性精神遅滞症候群(PHF8遺伝子の変異によって引き起こされる)、X連鎖重症複合免疫不全(X-SCID)、X連鎖鉄芽球性貧血(XLSA)等の遺伝性疾患の治療にも有効である。
【0097】
本発明で治療可能な代謝性疾患は、ニーマン・ピック病、テイ・サックス病、ゴーシェ病、ファブリー病を含む。
【実施例3】
【0098】
(慢性ウイルス感染を含むウイルス感染設定での使用)
RIG-Iアゴニストがトランスフェクトされた本発明の細胞の強化された死滅能力は、高いウイルスロードを有する感染細胞を除去する強化された能力をそれに与えるだろう。このように、本発明は、これらの感染細胞の他の細胞を感染又はそれらの含有を放出する能力を排除するウイルスリザーバの除去を可能にする。本発明のRNA構築物は、構築物を発現する細胞を移入/投与することによって、又は小分子として患者に投与することができる。そのような細胞又は小分子は、患者に注射又は従来の経路を介して投与することができた。RNA構築物を受ける細胞は、細胞の連続死滅能力を改善するために、グランザイムB及び/又はパーフォリンの産生及び貯蔵を増加させるであろう。
【実施例4】
【0099】
(幹細胞でのRIAAの使用)
本発明のRNA構築物は、幹細胞の寿命を延ばすために使用可能である。RIG-Iは、幹細胞におけるDNA修復機構を媒介することが知られている。本発明の投与は、RIG-I活性を強化すること、そのため本発明で処理された幹細胞の生存性を延長することが期待される。
【0100】
進行中の実験では、整形外科手術を受けている10人の健康なヒトドナーからcd90骨髄サンプルを得た。各試料をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で希釈し、70μm細胞フィルターを通した。
【0101】
単細胞懸濁液を、予め滴定された抗体混合物CD105、CD90、CD73、CD44、CD31、CD45、CD34、CD11b、HLA-DR及びCD14(全てBDバイオサイエンシーズ)でインキュベートし、室温で20分間インキュベートした。洗浄後、細胞を20×106/mlの濃度でFACS緩衝液に再懸濁した。細胞を、405、488、561及び633レーザーを備えたAriaIII(BDバイオサイエンシーズ)で選別した。細胞を回収し、DMEM20%FCSでコンフルエンスまで成長させた。
【0102】
RIAAは、フラスコにそれらを播種した後で、MSCSに播種してから24時間トランスフェクトした。それらは、定義されるように293システムのエクソソームによって産生された。
【0103】
インビボ創傷モデルにおける間葉系幹細胞(「MSC」)の治癒能力を評価する。継代8で、RIAA処理が有る場合と無い場合の選択されたMSC株をポリビニルアルコールスポンジにロードし、NOD/SCID免疫不全マウスに移入される(Deskins DL、Ardestani S、Young PP、ポリビニルアルコールスポンジモデル移入。J Vis Exp.2012;(62):3885.)。簡単に言えば、スポンジは食塩水で水和、滅菌される。MSC細胞株あたり3つのスポンジには、25μlのリン酸緩衝生理食塩水に7.5×106の細胞がロードされる。各マウスは3つのスポンジにはめ込まれ、各スポンジは異なるMSC株を含む。全てのスポンジは移植の21日後に除去され、半分に切断されてから、10%緩衝ホルマリンで24時間保存される。ホルマリン浸漬後、スポンジは、パラフィンに切り口を下にして埋め込まれ、染色のために切片にされる。
【0104】
図7及び
図8を参照すると、RIAAで処置されたMSC株はコントロールよりも有意に大きな成長を示すと考えられる。これらの細胞におけるCD90のアップレギュレーションは、腫瘍抑制においてRIAAで処理された細胞の直接又は代理的役割を示唆している(非特許文献1)。Abeysinghe HR、Cao Q、Xu J、Pollock S、Veyberman Y、Guckert L、Keng P、Wang N(2003)。「THY1 expression is associated with tumor suppression of human ovarian cancer」。Cancer Genet.Cytogenet.143(2):125-32.doi:10.1016/S0165-4608(02)00855-5。PMID12781446。また重要なのは、CD90が細胞の接着、溢出及びホーミングの増加に明らかに関係しているため、RIAA刺激によるMSC及びHSCの生着及び接着の増加の可能性である。Rege TA、Hagood JS(2006)、「Thy-1 as a regulator of cell-cell and cell-matrix interactions in axon regeneration, apoptosis, adhesion, migration, cancer, and fibrosis」、FASEB J.20(8):1045-54、doi:10.1096/fj.05-5460rev。PMID16770003。Wetzel A、Chavakis T、Preissner KT、Sticherling M、Haustein UF、Anderegg U、Saalbach A(2004)。「Human Thy-1 (CD90) on activated endothelial cells is a counterreceptor for the leukocyte integrin Mac-1 (CD11b/CD18)」(要約の頁)。J.Immunol、172(6):3850-9。doi:10.4049/jimmunol.172.6.3850。PMID15004192。
【実施例5】
【0105】
(養子細胞移入)
最も好ましい使用では、患者への養子細胞移入前に細胞を処置するためにRIG-Iアゴニストが使用される。上記プロトコルを使用して、RIAAは、エクスビボ操作中に任意の時点で使用することができる。培養範囲におけるRIG-Iアゴニストの好ましい濃度は、約0.4mMから約10mMである。最も好ましくは、0.5mMから6mMである。これらの細胞は、それにより、当該技術分野で周知のプロトコルを使用して、後の注入時間点で直ちに注入又は凍結することができる。RIG-Iアゴニスト投与は、インビボ及びエクスビボの両方で、単回用量として、又はインヒビターの血清濃度が0.4~6μMの間、好ましくはより低い用量であり得る用量ウィンドウを繰り返し使用して行うことができる。上記実施例3に記載の条件を治療するために、そのような養子細胞移入を使用することができる。
【実施例6】
【0106】
(ウイルス性炎症の治療)
本発明は、筋炎、心筋炎、ウイルス性関節炎、ウイルス性脳炎及び髄膜炎等のウイルス感染によって引き起こされる炎症を患っている患者を治療するために使用することもできる。このような疾患において、免疫系によるウイルスの認識を低減又は停止し、それによって炎症を軽減、予防又は排除するために、RIG-Iアゴニストを抗ウイルス療法と同時投与することができる。これは、免疫応答に依存しない又は完全に利用しない抗ウイルス療法と共に使用可能である。そのような抗ウイルス剤は、アマンダチン及びリマンチジン等のアダマンタン抗ウイルス剤、リトナビル及びコビシスタット等の抗ウイルスブースター、マラビロク等のケモカイン受容体アンタゴニスト、マラビロク、ドルテグラビル及びエルビテグラビル等のインテグラーゼ鎖転移阻害剤、ソホスブビル、エンフビルチド、ホスカルネット、ホミビルセン等のその他の抗ウイルス剤、ペルミビル、オセルタミビル及びザナミビル等のノイラミニダーゼ阻害剤、ネビラピン、デラビルジン、エトラビリン及びリルピビリン等の非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、ダクラタビル等のNS5a阻害剤、ジドブジン、ジダノシン、スタブジン、ラミブジン、アバカビル、エムトリシタビン及びエンテカビル等のヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(RTIS)、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、アタザナビル、ホサンプレナビル、チプラナビル及びダルナビル等のプロテアーゼ阻害剤、リバビリンバラシクロビル、ファムシクロビル、アシクロビル、ガンシクロビル、バルガンシクロビル及びシドフォビル等のプリンヌクレオシドを含む。これらの薬物の単独又は組み合わせの用量指示は、当該技術分野において周知である。
【実施例7】
【0107】
(RNAウィルス療法のインビボ有効性の増加)
RIG-Iアゴニストは、インビボ投与されると、水疱性口内炎ウイルス、ポリオウイルス、レオウイルス、セネカウイルス、ECHOウイルス、例えば、膀胱癌、脳腫瘍、婦人科腫瘍、肝細胞癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、前立腺癌、軟部組織肉腫及び固形腫瘍のような適応症のためのRIGVIR等のRNAウイルスベースの腫瘍溶解性ウイルス療法のインビボ有効性を増加させるのにも有用である。RIG-Iアゴニストは、細胞内抗ウイルス防御メカニズムを阻害し、腫瘍内の腫瘍溶解性ウイルスの分布有効性を高めるのに役立つであろう。RIG-Iアゴニストのインビボ投与のための標的血清レベルは、0.2乃至6mMである。
【0108】
このように、本発明の好ましい実施形態であると現在考えられていることが記載されているが、当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、他のそして更なる実施形態が可能であり、本明細書に記載された特許請求の範囲の真の範囲内にあるそのような更なる改変及び変更の全てを含む。
【配列表】