(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】運動エネルギー回生システム
(51)【国際特許分類】
B60K 6/10 20060101AFI20221011BHJP
B60K 6/30 20071001ALI20221011BHJP
B60K 6/365 20071001ALI20221011BHJP
B60K 17/10 20060101ALI20221011BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20221011BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20221011BHJP
F16H 47/04 20060101ALI20221011BHJP
F16D 41/06 20060101ALI20221011BHJP
F02N 11/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
B60K6/10
B60K6/30
B60K6/365
B60K17/10 Z
F16H1/28
F16H1/46
F16H47/04 A
F16D41/06 F
F02N11/00 Z
(21)【出願番号】P 2018565320
(86)(22)【出願日】2017-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2017064303
(87)【国際公開番号】W WO2017216114
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-21
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516323231
【氏名又は名称】パーキンス エンジンズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PERKINS ENGINES COMPANY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】イゴル ストラシニー
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0148191(US,A1)
【文献】特開2009-275854(JP,A)
【文献】特開2012-046179(JP,A)
【文献】特開2015-189279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/08 - 6/547
B60K 17/10
F16H 1/28
F16H 1/46
F16H 47/02 - 47/04
F16H 61/00 - 61/70
F16D 41/06
F02N 11/00
B60M 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動エネルギー回生システム(KERS)であって、
車両パワートレインに接続可能な入力を有する第1増速歯車装置と、
相互に流体接続された第1及び第2斜軸モータを含む油圧バリエータであり、少なくとも前記第1モータは可変容量モータであり且つ前記第1増速歯車装置の出力に接続される、油圧バリエータと、
前記第2モータに接続された入力を有する第2増速歯車装置と、
前記第2増速歯車装置の出力に接続された少なくとも1つのフライホイールであり、少なくとも1つのフライホイール室内の真空中に位置付けられた少なくとも1つのフライホイールと
、
始動電動機とを備え、該始動電動機は、前記第2増速歯車装置及び/又は前記少なくとも1つのフライホイールに接続される運動エネルギー回生システム(KERS)。
【請求項2】
請求項
1に記載のKERSにおいて、前記第1増速歯車装置は、第1リングギヤと該第1リングギヤが一方向にのみ回転できることを確実にするよう構成されたワンウェイクラッチとを有する第1遊星歯車機構であるKERS。
【請求項3】
請求項
2に記載のKERSにおいて、前記第1遊星歯車機構は、前記第1リングギヤをいずれの方向にも回転しないよう選択的にロックするよう構成されたロック機構を含むKERS。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のKERSにおいて、前記第1モータ及び前記第2モータの両方が可変容量モータであるKERS。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のKERSにおいて、前記第2増速歯車装置は、相互に直列に配置された第2及び第3遊星歯車機構を含むKRES。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のKERSにおいて、前記第2モータと前記第2増速歯車装置との間に接続されたアイドラギヤをさらに備え、それにより、前記第2増速歯車装置及び前記少なくとも1つのフライホイールは、KERSの残りの部分に対してオフセットしているKERS。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のKERSにおいて、前記第2増速歯車装置と前記少なくとも1つのフライホイールとの間に接続されたアイドラギヤをさらに備え、それにより、前記少なくとも1つのフライホイールは、KERSの残りの部分に対してオフセットしているKERS。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のKERSにおいて、同軸上に配置されて前記第2増速歯車装置に接続された一対のフライホイールを備えたKERS。
【請求項9】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のKERSにおいて、該KERSは、第1及び第2フライホイールを備え、さらに、
前記第2増速歯車装置と前記第1フライホイールとの間に接続された第1アイドラギヤと、
前記第2増速歯車装置と前記第2フライホイールとの間に接続された第2アイドラギヤと
を備え、前記第1フライホイール及び前記第2フライホイールは、相互に且つKERSの残りの部分からオフセットしているKERS。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載のKERSを含む車両パワートレイン。
【請求項11】
車両パワートレイン及び/又はエンジンに接続された第1増速歯車装置と、相互に流体接続された第1及び第2斜軸モータを含む油圧バリエータと、第2増速歯車装置と、該第2増速歯車装置の出力に接続された少なくとも1つのフライホイールとを備えた運動エネルギー回生システム(KERS)を制御する方法であって、
前記車両パワートレインの動作状態変化及び/又は電力需要を監視するステップと、
パワートレイン動作状態変化及び/又は電力需要に応じて前記KERSを充電又は放電するように2つの前記モータの少なくとも一方の容量を変えるステップと
を含
み、
前記KERSは、前記第2増速歯車装置及び/又は前記少なくとも1つのフライホイールに接続された始動電動機をさらに備え、該方法は、
前記監視するステップ中にエンジン始動コマンドを受け取るステップと、
前記少なくとも一方のモータの容量をゼロに設定するステップと、
前記少なくとも1つのフライホイールを回転させるように前記始動電動機を起動するステップと、
前記エンジンを始動させるために前記フライホイールから前記パワートレインへ運動エネルギーを伝達するように前記少なくとも一方のモータの容量を増加させるステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のハイブリッドパワートレイン、特に車両の原動機から出力された電力を選択的に補う運動エネルギー回生システム(KERS)に関する。
【背景技術】
【0002】
KERSを利用するハイブリッドパワートレインは既知である。これらのKERSは、車両制動中に消失されることになる運動エネルギーを蓄えるために利用される。機械、電気、油圧、又は空気圧システムを介して運動エネルギーをリザーバに蓄える、さまざまなKERSが提案されてきた。比較的大きなバッテリ又はアキュムレータに運動エネルギーを蓄える必要があることから、最後の3つのシステムは特定のタイプの車両で用いるには大きすぎる可能性がある。機械式KERSで用いられるフライホイールは、比較的小型であり、得られる全効率も利用可能な他のタイプのものよりも良い。フライホイールは、浅放電サイクルでの動作に必要か深放電サイクルでの動作に必要かに関係なく、非機械式KERSの蓄積手段と比べて比較的長いライフサイクルも有する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1態様によれば、運動エネルギー回生システム(KERS)であって、
車両パワートレインに接続可能な入力を有する第1増速歯車装置と、
相互に流体接続された第1及び第2斜軸モータを含む油圧バリエータであり、少なくとも第1モータは可変容量モータであり且つ第1増速歯車装置の出力に接続される、油圧バリエータと、
第2モータに接続された入力を有する第2増速歯車装置と、
第2増速歯車装置の出力に接続された少なくとも1つのフライホイールであり、少なくとも1つのフライホイール室内の真空中に位置付けられた少なくとも1つのフライホイールと
を備えた運動エネルギー回生システム(KERS)が提供される。
【0004】
本発明の第2態様によれば、本発明の第1態様によるKERSを含む車両パワートレインが提供される。
【0005】
本発明の第3態様によれば、相互に流体接続された第1及び第2斜軸モータを含む油圧バリエータであり、少なくとも第1モータは可変容量モータである油圧バリエータが提供される。
【0006】
本発明の第4態様によれば、車両パワートレイン及び/又はエンジンに接続された第1増速歯車装置と、相互に流体接続された第1及び第2斜軸モータを含む油圧バリエータと、第2増速歯車装置と、第2増速歯車装置の出力に接続された少なくとも1つのフライホイールとを備えた運動エネルギー回生システム(KERS)を制御する方法であって、
車両パワートレインの動作状態変化及び/又は電力需要を監視するステップと、
パワートレイン動作状態変化及び/又は電力需要に応じてKERSを充電又は放電するように2つのモータの少なくとも一方の容量を変えるステップと
を含む方法が提供される。
【0007】
本発明の好ましい実施形態を、単なる例として添付図面を参照して以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】運動エネルギー回生システムの第1実施形態の概略図である。
【
図2】運動エネルギー回生システムの第2実施形態の概略図である。
【
図3】運動エネルギー回生システムの第3実施形態の概略図である。
【
図4】運動エネルギー回生システムの第4実施形態の概略図である。
【
図5】運動エネルギー回生システムの第5実施形態の概略図である。
【
図6】
図6aは、第1充電イベント中のKERSの油圧ポンプ、油圧モータ、及びフライホイールの容量を示すグラフである。
図6bは、第2充電イベント中のKERSの油圧ポンプ、油圧モータ、及びフライホイールの容量を示すグラフである。
【
図7】KERSを組み込んだ車両ドライブトレインの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、運動エネルギー回生システム(KERS)1の概略図を示す。KERS1は、使用時に車両の主ドライブトレインに接続される第1シャフト10を有し、上記ドライブトレインは、
図7に概略的に示されさらに後述されるものである。
【0010】
第1シャフト10は、第1遊星歯車機構12に、より具体的には第1遊星歯車機構12の複数の第1プラネットギヤ16に接続される。第1遊星歯車機構12は、第1リングギヤ18及び第1サンギヤ14も含む。第1遊星歯車機構12は、ワンウェイクラッチの一部を形成し、既知の一方向転がり軸受装置17があることにより、第1リングギヤ18は、そのハウジング19内で一方向に回転できるが逆方向の回転を防止される。第1遊星歯車機構12は、電動ロックピン11も含み、これは、第1リングギヤ18がいずれの方向にも回転できないように第1リングギヤ18に選択的に係合することができる。図示の実施形態では、第1遊星歯車機構の比は1:3である。
【0011】
第1遊星歯車機構12の第1サンギヤ14は、第1斜軸油圧モータ20の第1入出力シャフト(図示せず)に接続される。第1斜軸モータ20は、第2斜軸モータ22と背中合わせに油圧接続される。換言すれば、2つのモータ20、22は、一方から送り込まれた流体が他方を駆動し、またその逆でもあるように、相互に流体接続される。モータ20、22のそれぞれが、高圧作動油の供給源に接続された入口21及び出口23を有する。結果として、2つのモータ20、22は、KERS1に対して入出力される運動エネルギーを制御する油圧バリエータを形成する。第1モータが可変容量モータであり得る一方で、第2モータは定容量モータであり得るが、この好ましい実施形態では、両方のモータ20、22が可変容量を有する。
【0012】
第2モータ22の第2シャフト24が、第1ギヤ26に接続される。第1ギヤ26は、始動電動機32のモータシャフト30に回転不能に接続された第2ギヤ28と噛み合う。第1ギヤ26は、第2遊星歯車機構34、より具体的には第2遊星歯車機構34内の複数の第2プラネットギヤ38にも接続される。第2遊星歯車機構34は、第2サンギヤ36及び固定第2リングギヤ40も含む。第2遊星歯車機構34の比は、1:3であることが好ましい。
【0013】
第2サンギヤ36は、第3遊星歯車機構42に、より具体的には複数の第3プラネットギヤ46に接続され、第3プラネットギヤ46は、第3サンギヤ44及び固定第3リングギヤ48と共に第2遊星歯車機構42を構成する。第3遊星歯車機構42の比は、1:3.75であることが好ましい。
【0014】
第3サンギヤ44は、フライホイール軸50に接続され、フライホイール軸50自体は、フライホイール52に回転不能に接続される。結果として、第3サンギヤの回転がフライホイール52を回転させ、またその逆でもある。フライホイール軸50は、フライホイール52の両側に位置付けられた一対の軸受54、56により回転可能に支持される。フライホイール52は、真空室58内に位置付けられる。
【0015】
電子制御ユニット(ECU)60も設けられる。ECU60は、KERSの動作を制御し、車両エンジン及びパワートレインを全体的に制御する監視ECU(図示せず)と通信する。ECU60は、KERSのさまざまな動作モードを統轄し、第1遊星歯車機構12のロックピン11の起動、可変容量モータ20、22それぞれの容量、及び始動電動機32を制御する。
【0016】
KERSの第2実施形態101を、
図2に概略的に示す。この第2実施形態のコンポーネントの大部分は第1実施形態と共通し、遊星歯車機構12、32、42の好ましい比も同様である。したがって、共通のコンポーネントには同じ参照符号を付し、ここでは再度言及しない。第1実施形態に関して図示したECUは、本明細書に記載のさらなる実施形態のそれぞれに存在するが、明確化のために各図から省いてあることに留意されたい。
【0017】
この第2実施形態における主な変更は、KERS101に、同軸上に配置されて延長フライホイール軸150に回転不能に接続された一対のフライホイール152A、152Bが設けられることである。結果として、第3サンギヤ44の回転が両方のフライホイール152A、152Bを回転させ、またその逆でもある。フライホイール軸150は、3つの軸受により回転可能に支持され、3つの軸受とは、フライホイール軸150の両端に隣接して位置付けられた一対の軸受154、156と、第1及び第2フライホイール152A、152B間で軸150上の中間の場所に位置付けられた単一の軸受155である。各フライホイール152A、152Bは、それぞれの真空室158A、158B内に位置付けられる。
【0018】
KERSの第3実施形態201を、
図3に概略的に示す。この実施形態も、第1及び第2実施形態といくつかのコンポーネントが共通し、ここでも同様にそれらのコンポーネントには以前と同じ参照符号を付す。この第3実施形態の相違点は、モータ20、22とフライホイール252A、252Bとの間に遊星歯車機構が1つしかないことであり、これを第2遊星歯車機構234と称する。さらに、フライホイール252A、252B及び上記第2遊星歯車機構234は、第1遊星歯車機構12及びモータ20、22からオフセットしている。この配置は、モータ22の第1ギヤ226と噛み合って逆回転するアイドラギヤ242を設けることにより可能となり、ここで、アイドラギヤと第1ギヤとの比は1:1であることが好ましい。アイドラギヤ242は、平ギヤ244を介して第2遊星歯車機構234にエネルギーを伝達し、ここで、アイドラギヤと平ギヤとの比は1:3.75であることが好ましい。平ギヤ244は、固定第2リングギヤ240及び第2サンギヤ236も含む第2遊星歯車機構の第2遊星歯車238のキャリアとして働く。第2サンギヤ236は、第2サンギヤ236の回転が一対のフライホイール252A、252Bを回転させ、またその逆でもあるように、フライホイール軸250に接続される。フライホイール軸250は、3つの軸受により回転可能に支持され、3つの軸受とは、フライホイール軸250の両端に隣接して位置付けられた一対の軸受254、256と、第1及び第2フライホイール252A、252B間で軸250上の中間の場所に位置付けられた単一の軸受255である。各フライホイール252A、252Bは、それぞれの真空室258A、258B内に位置付けられる。
【0019】
KERSの第4実施形態301を、
図4に概略的に示す。ここでは、第1遊星歯車機構12、モータ20、22、始動電動機32、及び第2遊星歯車機構34の配置は、第1及び第2実施形態と同様である。しかしながら、一対のフライホイール352A、352Bは、それらのコンポーネントからオフセットしている。この実施形態では、駆動ギヤ341を第2遊星歯車機構34の第2サンギヤ36に接続し、アイドラギヤ342を上記駆動ギヤに噛み合わせて逆回転をもたらすようにすることにより、オフセット配置が得られる。駆動ギヤ341とアイドラギヤ342との比は、1:1であることが好ましい。アイドラギヤ342は、この実施形態ではフライホイール軸350に回転不能に取り付けられた平ギヤ344とも噛み合う。アイドラギヤと平ギヤとの比は、1:3.75であることが好ましい。平ギヤ344は、一対のフライホイール352A、352B間で軸350上に位置付けられる。軸350は、2つの軸受対354、356で回転可能に支持され、その場合、軸受対は、各フライホイール352A、352Bの両側に位置付けられる。以前のように、各フライホイール352A、352Bは、真空室358A、358B内に位置付けられる。
【0020】
KERSの第5実施形態401を、
図5に概略的に示す。ここでは、第1遊星歯車機構12、モータ20、22、始動電動機32、及び第2遊星歯車機構34の配置は、第1、第2、及び第4実施形態と同様である。この実施形態では、駆動ギヤ441が第2遊星歯車機構34の第2サンギヤ36に接続される。駆動ギヤ441は、一対のアイドラギヤ442A、442Bと噛み合い、それにより各アイドラギヤが逆回転をもたらす。駆動ギヤ441とアイドラギヤ442A、442Bとの比は、1:1であることが好ましい。各アイドラギヤ442A、442Bは、それぞれが別個のフライホイール軸450A、450Bに回転不能に取り付けられた平ギヤ444A、444Bとも噛み合う。各対のアイドラギヤと平ギヤとの比は、1:3.75であることが好ましい。各平ギヤ444A、444Bは、それぞれのフライホイール軸450A、450B上に位置付けられ、それにより平ギヤの回転が各フライホイール軸及びそこに位置付けられたそれぞれのフライホイール452A、452Bを回転させる。各軸450A、450Bは、軸受対454、456で回転可能に支持され、ここで、各軸受対は、それぞれのフライホイール452A、452Bの両側に位置付けられる。以前のように、各フライホイール452A、452Bは、真空室458A、458B内に位置付けられる。上述した配置の結果として、この第5実施形態のフライホイール452A、452Bは相互にオフセットしている。
【産業上の利用可能性】
【0021】
KERSの動作の仕方を以下で説明する。特定の実施形態は、種々の方法でパッケージングされるように付加的なアイドラ及び/又は平ギヤ配置を用いるが、実施形態のそれぞれが実質的に同様に動作する。したがって、動作方法は、主に
図1に示す第1実施形態に関して説明する。
【0022】
KERSは、ECU60により制御されるいくつかの動作モードを有し、これらのモードは、スタンバイモード、始動モード、充電モード、及び放電モードを含み得る。KERSは、減速モード及び強制スピンダウンモードも含み得る。スタンバイモードでは、車両エンジン/原動機が停止され得るか、又はエンジンは始動している場合があるが充電イベントも放電イベントも要求されない。スタンバイモードでは、ECU60は、可変容量モータ2、20、22に容量をゼロに調整するよう命令する。これには、KERS1のエンジン側及びフライホイール側(又は入力側及び出力側)が相互に分離されている結果として、エンジンが作動中か否かに関係なくモータ20、22を介してフライホイールに又はフライホイールからエネルギーを伝達できないという効果がある。
【0023】
エンジンが停止されており、フライホイール52に蓄えられている運動エネルギーがほとんど又は全くない場合、始動モードを用いてエンジンを始動させることができる。このモードでは、ECU60は、監視コントローラからエンジン始動コマンドを受け取り、可変容量モータ20、22の容量がゼロ状態になっていない場合はこれらの容量を最初にゼロに設定して、KERS1のエンジン側及びフライホイール側が相互に分離されるようにする。ECU60は、続いて始動電動機32を起動する。この時点でKERS1のフライホイール側が分離されていると、始動電動機の回転が第2及び第3遊星歯車機構34、42を介してフライホイール52をスピンアップさせる。ECU60は、1つ又は複数のセンサ(図示せず)を介してフライホイールが適切な速度でスピンしていると判断したら、可変容量モータ20、22に容量をゼロから増加させるよう命令する。結果として、スピン中のフライホイール52からのエネルギーは、モータ20、22及び第1遊星歯車機構12を介してエンジンに伝達され、それによりエンジンを回転及び始動させる。
【0024】
充電モードでは、通常は車両の制動中にKERS1が運動エネルギーをフライホイール52に伝達する。
図6(a)及び
図6(b)のグラフは、ECU60が第1及び第2モータ20、22の容量及び得られるフライホイールの速度をどのように調整するかの例を示す。
図6(a)は、エンジン速度800rpmでのそれらの変数を示し、
図6(b)は、エンジン速度1800rpmでの変数を示す。グラフのそれぞれで、トレースAは第1モータ20の容量パーセンテージを表し、トレースBは第2モータ22の容量パーセンテージを表し、トレースCはフライホイールの速度パーセンテージを表す。このモードでは、当然ながら、第1モータ20はポンプとして作用しており、第2モータ22は、流体がポンプから送り込まれるのに応じてモータとして作用している。
【0025】
エンジン速度が800rpmである
図6(a)の例を参照すると、充電イベントの初めはポンプ20及びモータ22の容量はいずれもゼロであり、この例では、フライホイール速度もゼロであるものとする。充電が行われる場合、ポンプ20及びモータ22の両方の容量が実質的に線形に増加する。ポンプ20の容量は、最大(100%)まで増加するが、モータ22の容量は約55%まで増加してから、フライホイール速度が0から最高速度まで上昇したと判断されるまでそのまま維持される。最高フライホイール速度に達したら、EUC60は、ポンプ20及びモータ22の容量を比較的線形にゼロまで減らす。図示の例では、ポンプ20が最大容量に達してフライホイールが最高速度に達するまで約0.17秒を要する。ポンプ及びモータ20、22がいずれもゼロ容量に戻ったら、フライホイールは続いて最高速度でスピンを続ける。図示の例では、充電手順全体には約0.33秒かかり、バリエータ(すなわち、ポンプ及びモータの組み合わせ)が発生させた総電力は119kWである。
【0026】
同様の充電イベントを
図6(b)に示し、ここではエンジン速度は1800rpmである。この場合も、ポンプ及びモータ20、22の容量は比較的線形に増加し、ポンプ容量は約76%まで増加し、モータ容量は約95%まで増加する。この容量の増加には約0.15秒かかり、フライホイールは、約0.075秒後にはすでに最高速度に達している。この場合も、ポンプ及びモータ20、22の容量がゼロに減ると、フライホイールは最高速度でスピンを続ける。充電手順には約0.3秒かかり、バリエータ(すなわち、ポンプ及びモータ)が発生させた総電力は203kWである。
【0027】
ECU60は、エンジンECUから補充電力要求を受け取ると、充電モードと事実上逆のプロセスである放電モードに入る。この時点で、フライホイール52は最高速度でスピンしていることになり、これはこの例では52000rpm程度であり得る。2つのモータ20、22は、いずれもゼロ容量であり、この場合も、これにはフライホイールをエンジン/原動機から分離する効果がある。電力要求を受け取ると、ECU60は、モータ20、22の両方に容量を増加させるよう命令する。結果として、スピン中のフライホイール52のエネルギーは、第3及び第2遊星歯車機構42、34の減速ギヤ効果により第2モータ22の第2シャフト24に送られる。このモードでは、第2モータ22はポンプとして作用し、ここで、関連の遊星歯車機構42、34を介したフライホイール52による第2シャフト24の回転が、第2モータ22から第1モータ20へ作動油を送り込ませる。第1モータ20の第1シャフトの回転速度、したがってシステムが放出しているエネルギーの量は、一方又は両方のモータ20、22の容量を調整することにより制御できる。放電をできる限り速く行うことができることを確実にするために、ECU60は、複数のセンサと通信することで、第1遊星歯車機構12内の第1サンギヤ14及び第1プラネットギヤ16並びにそれらの関連シャフト10の相対回転速度を監視する。ECU60が、速度が同期しているか又は少なくとも相互の所定パーセンテージ内にあると判断すると、ロックピン11がECU60により起動されることにより、第1リングギヤ18と係合して第1リングギヤがハウジング19に対していずれの方向にも回転しないようにする。必要な補充電力を提供するために、第1シャフト10の運動エネルギーは、第1遊星歯車機構12の減速ギヤ効果によりエンジンに移動する。
【0028】
上述のように、ECU60は減速モードも含み得るが、この減速モードは、エンジンパワーの増加とは対照的にエンジンパワーを低減するためにフライホイールのエネルギーが利用されるとはいえ、放電モードに類似している。フライホイール速度をゼロに強制低減する矯正スピンダウンモードもあり得る。
【0029】
図7は、本発明のKERSが接続され得る車両ドライブトレインを概略的な形態で示す。例えば、KERS1の第1シャフト10は、原動機3からの出力と無断変速装置(CVT)5への入力との間でドライブトレインに接続され得るか、又は主変速装置出力に接続され得る。第1シャフト10は、駆動ギヤ9と噛み合う平ギヤ7を有し、駆動ギヤ9は、クラッチ11を介して原動機3に選択的に接続される。CVT5は、プロペラシャフト15及びデファレンシャル17を介して一対の駆動軸13に接続される。ドライブトレインブレーキ又はリターダ19も、プロペラシャフト15に設けられ得る。
【0030】
本発明のKERSは、ライフサイクルが長く、深放電に達する能力も有する。本発明のKERSは、急速に充電及び放電することもできる。本発明のKERSは、通常は大型車両用の高温動作環境で良好に機能することもできる。本発明のKERSは、小型であり、電気、油圧、又は空気圧手段により運動エネルギーを蓄える代替的なKERSシステムよりも充放電効率が良い。
【0031】
本発明のさまざまな図示の実施形態のコンパクトな構成により、技術者及び設計者は、車両においてKERSが占め得る場所に関してより大きな自由度を得ることができる。フライホイールのみを介してエンジンを始動させることができるように始動発電機を組み込んだ好ましい実施形態では、本発明は、より小さな始動発電機の使用も可能にし、これは技術者及び設計者にとってパッケージング面で有利でもある。
【0032】
背中合わせに流体接続された2つの斜軸モータから構成された油圧バリエータにより、本発明は、無断変速制御ができるバリエータも提供する。これは、上述のさまざまなモード間で遷移するKERSで特に有益だが、このバリエータは、上記KERSでの使用に限定されず、KERS以外の用途で用いてもよい。
【0033】
本発明が一対のフライホイールを利用する実施形態では、KERSは、単一のフライホイールシステムの運動エネルギー蓄積能力の2倍を事実上有する。
【0034】
第1遊星歯車機構のロック用ワンウェイクラッチ構成は、エンジン速度がフライホイールの相対速度よりも高い場合にフライホイールの充電が自動的に起こることを確実にする。さらに、上述のように、第1リングギヤの回転をいずれの方向にもロックすることで、KERSに蓄えられたエネルギーの高速放電が確保される。しかしながら、これらは、ロック用ワンウェイクラッチの利点ではあるが、これが従来の第1遊星歯車機構構成を優先させて本発明から省かれ得る任意の特徴であることを理解されたい。
【0035】
好ましい実施形態では、2つのモータが両方とも可変容量型であるように記載されている。しかしながら、一方のモータ(例えば、第1モータ)が可変容量モータであり得る一方で、他方(例えば、第2モータ)が定容量型であり得る。さらに、作動油がモータを一方向にのみ流れることができるという点で、図示の実施形態に関して記載したバリエータは一方向型である。しかしながら、バリエータは、モータ間で流体の双方向の流れを与えるために作動させることができる切替弁を含むためのものであってもよい。
【0036】
図示の実施形態では、遊星歯車機構がKERSに増速ギヤ配列を提供する。遊星歯車機構は好ましい増速歯車装置であるが、これらの遊星歯車機構を例えば平ギヤ等の代替装置で置き換えても良いことを理解されたい。
【0037】
始動発電機が本発明のKERSに含まれることが好ましいが、これはその必須要素ではない。所望であれば、始動発電機を含まないKERSを提供することができる。
【0038】
特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、これら及び他の変更及び改良を組み込むことができる。