(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】車載用バッテリの昇温装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6571 20140101AFI20221011BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20221011BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221011BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221011BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20221011BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20221011BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20221011BHJP
H01M 10/6562 20140101ALI20221011BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20221011BHJP
【FI】
H01M10/6571
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/647
H01M10/6554
H01M10/6562
H01M10/658
(21)【出願番号】P 2019020720
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2021-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 農
(72)【発明者】
【氏名】成毛 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】上田 逸央
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 律夫
【審査官】羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-022915(JP,A)
【文献】実開平02-079567(JP,U)
【文献】特開2010-129392(JP,A)
【文献】特開2016-159789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6571
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/613
H01M 10/617
H01M 10/647
H01M 10/6554
H01M 10/6562
H01M 10/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが収納される車載用バッテリの長手方向の側面に沿って配設される昇温ヒータを備えた車載用バッテリの昇温装置において、
前記昇温ヒータは、
筐体部と、
前記筐体部内に配設される電熱線と、を有し、
前記車載用バッテリの前記側面と対向する前記筐体部の側面には、少なくとも前記車載用バッテリの前記側面の外周端部周辺に対して密接する密接領域が設けられ、
前記密接領域は、前記筐体部の前記側面の一部が突出した環状の突出部であり、
前記突出部は、前記車載用バッテリの前記側面と密接し、前記突出部の内側であり、前記車載用バッテリの前記側面と前記筐体部の前記側面との間に密閉空間を形成することを特徴とする車載用バッテリの昇温装置。
【請求項2】
複数の電池セルが収納される車載用バッテリの長手方向の側面に沿って配設される昇温ヒータを備えた車載用バッテリの昇温装置において、
前記昇温ヒータは、
筐体部と、
前記筐体部内に配設される電熱線と、を有し、
前記車載用バッテリの前記側面と対向する前記筐体部の側面には、少なくとも前記車載用バッテリの前記側面の外周端部周辺に対して密接する密接領域が設けられ、
前記密接領域は、前記筐体部の前記側面に貼り付けられた環状のシール部材であり、
前記シール部材は、前記車載用バッテリの前記側面と密接し、前記シール部材の内側であり、前記車載用バッテリの前記側面と前記筐体部の前記側面との間に密閉空間を形成することを特徴とする車載用バッテリの昇温装置。
【請求項3】
前記筐体部の上面は、前記車載用バッテリの上面と面一となると共に、前記筐体部の長手方向の両端側の端面は、それぞれ前記車載用バッテリの長手方向の両端側の端面と面一となることを特徴とする
請求項1または
請求項2に記載の車載用バッテリの昇温装置。
【請求項4】
前記電熱線は、前記筐体部の前記側面に沿って配設され、
前記筐体部の前記側面の中の下側に位置する前記電熱線は、前記筐体部の前記側面の中の上側に位置する前記電熱線よりも密な状態に配線されていることを特徴とする請求項1から
請求項3のいずれか1項に記載の車載用バッテリの昇温装置。
【請求項5】
前記筐体部の前記側面の中の下側に位置する前記電熱線は、前記筐体部の前記側面の短手方向に湾曲または角形状に折れ曲がりながら配線され、
前記筐体部の前記側面の中の上側に位置する前記電熱線は、少なくとも前記筐体部の前記側面の長手方向の中央領域にて、前記筐体部の前記側面の中の下側に位置する前記電熱線に近づいて配線されていることを特徴とする
請求項4に記載の車載用バッテリの昇温装置。
【請求項6】
前記車載用バッテリの下面には、温調プレートが配設されていることを特徴とする請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の車載用バッテリの昇温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用バッテリの昇温装置に関し、特に、車載用バッテリの長手方向の側面に昇温ヒータを配設し、効率的に電池セルを温めることで、電池特性を向上させる車載用バッテリの昇温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリ100として、
図6及び
図7に示す構造が知られている。
図6は、従来のバッテリ100を説明する斜視図である。
図7(A)は、従来のバッテリ100のセルスタック101を説明する斜視図である。
図7(B)は、従来のバッテリ100のセルスタック101を説明する断面図であり、
図7(A)に示すセルスタック101のD-D線方向の断面図である。
【0003】
図6に示す如く、バッテリ100は、主に、箱型の筐体102と、筐体102の内部に配設される複数のセルスタック101(
図7(A)参照)と、筐体102の内部と連通するダクト103と、ダクト103と連結するブロワ104と、を有している。
【0004】
筐体102の内部には、例えば、5個のセルスタック101が配設され、バッテリ100は、車両に搭載されたPCU(図示せず)にて制御され、車両内に配設されたモータ等に電力を供給する。
【0005】
図7(A)に示す如く、個々のセルスタック101は、複数のセル105を含んで構成されている、セル105は、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池にて構成されている。そして、各セル105の側面105Aには、長手方向(紙面前後方向)に沿って凹部106が形成されている。凹部106には、空気を整流する複数の凸部107と、伝熱ヒータとしての配線108が形成されている。
【0006】
配線108は、例えば、銅等の金属線にて形成され、配線108は、電力供給部(図示せず)と接続し、電力が供給されることで発熱し、セル105を外部から昇温させる。図示したように、配線108は、セル105を均等に昇温させるために、側面105Aに対して出来る限り均一に配設されている。
【0007】
図7(B)に示す如く、セルスタック101では、複数のセル105が隣接して配設され、凹部106は、隣接するセル105間の間隙となり、セルスタック101の長手方向(紙面前後方向)に貫通した冷却風路として用いられる。そして、ブロワ104(
図6参照)は、バッテリシステムのBCU(図示せず)にて制御され、セル105を冷却する際に稼働し、筐体102(
図6参照)内へと外気を送風する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図7(A)に示すように、配線108は、セルスタック101を構成する各セル105の側面105Aに対してそれぞれ配設されている。一方、
図7(B)に示すように、各セル105間には、凹部106を利用して間隙が形成され、その間隙は、セルスタック101の長手方向(紙面前後方向)に貫通している。
【0010】
この構造により、上記間隙は密閉空間でないため、配線108の発熱により、間隙に存在する空気を温めた状態に維持することは難しい。そして、上記間隙内の温められた空気を熱伝導経路として介在させて、セル105を昇温させることは困難である。その結果、
図7(A)に示すように、配線108は、側面105Aに対して出来る限り均一に配設され、セル105を昇温させる期間中、配線108に電力を供給し続ける必要があり、消費電力を低減し難いという課題がある。
【0011】
また、寒冷地等、車両が低温環境下にて走行する際には、バッテリ100の特性、例えば、出力特性や放充電特性を向上させるために、セル105は、配線108を介して昇温される。このとき、低温環境下にてセル105や配線108が急に高温状態となり温度差が生じることで、セル105を含むセルスタック101には結露が発生する。そして、配線108が、各セル105の側面105Aに露出した状態では、上記結露により漏電する恐れがある。また、バッテリ100の配線108が、長期間に渡り上記結露に晒されることで、腐食し、断線する恐れがある。
【0012】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、車載用バッテリの長手方向の側面に昇温ヒータを配設し、効率的に電池セルを温めることで、電池特性を向上させる車載用バッテリの昇温装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の車載用バッテリの昇温装置では、複数の電池セルが収納される車載用バッテリの長手方向の側面に沿って配設される昇温ヒータを備えた車載用バッテリの昇温装置において、前記昇温ヒータは、筐体部と、前記筐体部内に配設される電熱線と、を有し、前記車載用バッテリの前記側面と対向する前記筐体部の側面には、少なくとも前記車載用バッテリの前記側面の外周端部周辺に対して密接する密接領域が設けられ、前記密接領域は、前記筐体部の前記側面の一部が突出した環状の突出部であり、前記突出部は、前記車載用バッテリの前記側面と密接し、前記突出部の内側であり、前記車載用バッテリの前記側面と前記筐体部の前記側面との間に密閉空間を形成することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、複数の電池セルが収納される車載用バッテリの長手方向の側面に沿って配設される昇温ヒータを備えた車載用バッテリの昇温装置において、前記昇温ヒータは、筐体部と、前記筐体部内に配設される電熱線と、を有し、前記車載用バッテリの前記側面と対向する前記筐体部の側面には、少なくとも前記車載用バッテリの前記側面の外周端部周辺に対して密接する密接領域が設けられ、前記密接領域は、前記筐体部の前記側面に貼り付けられた環状のシール部材であり、前記シール部材は、前記車載用バッテリの前記側面と密接し、前記シール部材の内側であり、前記車載用バッテリの前記側面と前記筐体部の前記側面との間に密閉空間を形成することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、前記筐体部の上面は、前記車載用バッテリの上面と面一となると共に、前記筐体部の長手方向の両端側の端面は、それぞれ前記車載用バッテリの長手方向の両端側の端面と面一となることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、前記電熱線は、前記筐体部の前記側面に沿って配設され、前記筐体部の前記側面の中の下側に位置する前記電熱線は、前記筐体部の前記側面の中の上側に位置する前記電熱線よりも密な状態に配線されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、前記筐体部の前記側面の中の下側に位置する前記電熱線は、前記筐体部の前記側面の短手方向に湾曲または角形状に折れ曲がりながら配線され、前記筐体部の前記側面の中の上側に位置する前記電熱線は、少なくとも前記筐体部の前記側面の長手方向の中央領域にて、前記筐体部の前記側面の中の下側に位置する前記電熱線に近づいて配線されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、前記車載用バッテリの下面には、温調プレートが配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車載用バッテリの昇温装置では、車載用バッテリの長手方向の側面に沿って配設される昇温ヒータを備え、昇温ヒータは、筐体部と、筐体部内に配設される電熱線と、を有し、車載用バッテリの側面と対向する筐体部の側面には、少なくとも車載用バッテリの側面の外周端部周辺に対して密接する密接領域が設けられている。この構造により、車載用バッテリの側面と筐体部の側面との間の空間には、熱伝導経路として介在させる空気が存在している。そして、車載用バッテリの側面は、昇温ヒータを介して温められた空気と接触することで昇温され、特に、寒冷地等、車両が低温環境下にて走行する際に、バッテリ特性が劣化することが防止される。
【0021】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、筐体部の側面には、その一部が突出した環状の突出部が形成され、突出部は、車載用バッテリの側面と密接し、車載用バッテリの側面と筐体部の側面との間に密閉空間を形成する。この構造により、密閉空間内の空気を熱伝導経路として介在させ、車載用バッテリが昇温される。そして、温められた空気は、密閉空間内を対流し、温まり易く、冷え難いため、昇温ヒータの消費電力が低減される。
【0022】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、筐体部の側面には、環状のシール部材が貼り付けられ、シール部材は、車載用バッテリの側面と密接し、車載用バッテリの側面と筐体部の側面との間に密閉空間を形成する。この構造により、密閉空間内の空気を熱伝導経路として介在させ、車載用バッテリが昇温される。そして、温められた空気は、密閉空間内を対流し、温まり易く、冷え難いため、昇温ヒータの消費電力が低減される。
【0023】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、筐体部の上面は、車載用バッテリの上面と面一となると共に、筐体部の長手方向の両端側の端面は、それぞれ車載用バッテリの長手方向の両端側の端面と面一となる。この構造により、昇温ヒータが、車載用バッテリの外側まではみ出して配設されることがない。そして、車両内での車載用バッテリの載置領域は限られているが、車載用バッテリが効率良く配列されることで、出来る限り多くの車載用バッテリが車両に搭載され、車両の連続走行距離を伸ばすことができる。
【0024】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、電熱線は、筐体部の側面に沿って配設され、筐体部の側面の中の下側に位置する電熱線は、筐体部の側面の中の上側に位置する電熱線よりも密な状態に配線されている。この構造により、密閉空間内の空気は、空間の下側から温められ、上昇気流が発生することで、温められた空気は、密閉空間内を対流する。そして、密閉空間内の空気が、出来る限り均一に温められることで、電熱線の配線パターンの一部を粗な状態とすることができ、昇温ヒータの消費電力が低減される。
【0025】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、筐体部の側面の中の下側に位置する電熱線は、筐体部の側面の短手方向に湾曲または角形状に折れ曲がりながら配線されている。また、筐体部の側面の中の上側に位置する電熱線は、少なくとも筐体部の側面の長手方向の中央領域にて、筐体部の側面の中の下側に位置する電熱線に近づいて配線されている。この構造により、密閉空間内の空気が、出来る限り均一に温められることで、昇温ヒータの消費電力が低減される。
【0026】
また、本発明の車載用バッテリの昇温装置では、車載用バッテリの下面には、温調プレートが配設されている。この構造により、車載用バッテリを昇温させる際には、昇温ヒータ及び温調プレートを用いて3方向から車載用バッテリを温めることができる。一方、車載用バッテリを冷却する際には、温調プレートを用いて車載用バッテリを冷却することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態である車載用バッテリの昇温装置を備えた車両を説明する(A)斜視図、(B)平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態である車載用バッテリの昇温装置を説明するブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態である車載用バッテリの昇温装置を説明する(A)側面図、(B)断面図、(C)断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態である車載用バッテリを説明する(A)斜視図、(B)分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態である車載用バッテリの昇温装置の配設された状態を説明する(A)斜視図、(B)断面図である。
【
図7】従来のバッテリのセルスタックを説明する(A)斜視図、(B)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る車載用バッテリの昇温装置10(以下、「昇温装置10」と呼ぶ。)を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0029】
図1(A)は、本実施形態の昇温装置10(
図2参照)及び車載用バッテリ11を搭載した車両12を説明する斜視図である。
図1(B)は、本実施形態の昇温装置10及び車載用バッテリ11の配設状態を説明する平面図である。
図2は、本実施形態の昇温装置10を説明するブロック図である。
図3(A)は、本実施形態の昇温装置10の昇温ヒータ16を説明する側面図である。
図3(B)は、本実施形態の昇温装置10の昇温ヒータ16を説明する断面図であり、
図3(A)に示す昇温ヒータ16のA-A線方向の断面図である。
図3(C)は、本実施形態の昇温装置10の昇温ヒータ16を説明する断面図であり、
図3(A)に示す昇温ヒータ16のB-B線方向の断面図である。
【0030】
図1(A)に示す如く、自動車や電車等の車両12には、モータや様々の電装部品に電力を供給するための車載用バッテリ11(
図1(B)参照)が搭載されている。車両12が自動車の場合には、近年、EV(Electrical Vehicle)車、HEV(Hybrid Electrical Vehicle)車やPHEV(Plug-in Hybrid Electrical Vehicle)車等が普及している。そして、これらの車両12にも、高い蓄電機能を有した複数の車載用バッテリ11が搭載されている。
【0031】
図1(A)は、車載用バッテリ11を備えた車両12を下方から見た状態を示している。車両12は、車体13と、車両12の底面14近傍のバッテリ配置領域15に配設された複数の車載用バッテリ11と、車載用バッテリ11から供給される電力により駆動される駆動モータ25(
図2参照)と、駆動モータ25の駆動力で回転するタイヤ(図示せず)と、を有している。
【0032】
図1(B)に示す如く、車両12のバッテリ配置領域15には、行列状に複数の車載用バッテリ11が配設されている。車載用バッテリ11は、例えば、直方体形状であり、車両12の前後方向に沿ってその長手方向が配置されている。そして、複数の車載用バッテリ11が、バッテリ配置領域15に効率良く配置され、多くの車載用バッテリ11が搭載されることで、車両12の連続走行距離を伸ばすことができる。
【0033】
図示したように、昇温装置10(
図2参照)の昇温ヒータ16が車載用バッテリ11の長手方向の側面11A,11B(
図5(B)参照)に沿って配設されている。昇温ヒータ16は、車載用バッテリ11を挟むように配設され、車載用バッテリ11の両側面11A,11B側から車載用バッテリ11を昇温する。そして、寒冷地等、車両12が低温環境下にて走行する際に、昇温ヒータ16は、車載用バッテリ11を使用可能な温度範囲まで昇温させることで、出力特性や放充電特性等のバッテリ特性が劣化することが防止される。
【0034】
具体的には、車両12のバッテリ配置領域15では、最前列には、2個の車載用バッテリ11が配設されると共に、それらの車載用バッテリ11と密接して3個の昇温ヒータ16が配設されている。一方、2列目から4列目には、各列4個の車載用バッテリ11が配設されると共に、それらの車載用バッテリ11と密接して5個の昇温ヒータ16が配設されている。詳細は後述するが、昇温ヒータ16が、車載用バッテリ11の側面11A,11Bの外周端部周辺に対して、少なくともその一部が密接して配設され、密閉空間51,52(
図5(B)参照)を形成することで、効率的に車載用バッテリ11を昇温することができる。
【0035】
図2に示す如く、昇温装置10は、主に、電子制御ユニット21と、車載用バッテリ11を温める昇温ヒータ16と、車載用バッテリ11の温度を測定する温度センサ22と、昇温ヒータ16に電力を供給するサブバッテリ23と、を有している。
【0036】
車載用バッテリ11は、例えば、350Vの高電圧の電力供給源である。車載用バッテリ11は、インバータ24を介して駆動モータ25と接続し、駆動モータ25へと電力を供給する。尚、駆動モータ25は、車両12(
図1(A)参照)の駆動輪(図示せず)を駆動するための動力を出力する。
【0037】
電子制御ユニット21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有して構成され、車両制御のための各種の演算等を実行する。そして、電子制御ユニット21は、例えば、運転手がブレーキ(図示せず)を踏んだ状態にて、車両12のイグニッションスイッチ26を押下することで始動する。
【0038】
電子制御ユニット21は、例えば、温度センサ22からの測定値を記憶すると共に、昇温ヒータ16をオン動作させる下限値と比較する。そして、上記測定値が、上記下限値以下の場合には、電子制御ユニット21は、サブバッテリ23から昇温ヒータ16に電力を供給させ、昇温ヒータ16をオン動作させる。一方、昇温ヒータ16をオン動作させた後は、温度センサ22からの測定値を記憶すると共に、昇温ヒータ16をオフ動作させる上限値と比較する。そして、上記測定値が、上記上限値以上の場合には、電子制御ユニット21は、サブバッテリ23から昇温ヒータ16への電力の供給を停止させ、昇温ヒータ16をオフ動作させる。
【0039】
例えば、車両12が、寒冷地等、低温環境下にて駐車し、車両12の始動時に車載用バッテリ11の温度が、使用可能温度範囲の下限値を下回る場合には、車載用バッテリ11が動作出来ない恐れや、あるいは、車載用バッテリ11の内部抵抗が増大し、出力特性や放充電特性等のバッテリ特性が劣化する恐れがある。そのため、電子制御ユニット21では、温度センサ22を介して車載用バッテリ11の温度を監視し、昇温ヒータ16を介して車載用バッテリ11の温度が使用可能温度範囲になるように制御している。
【0040】
図3(A)に示す如く、昇温ヒータ16は、主に、筐体部31と、筐体部31に内蔵される電熱線32と、電熱線32を支持する不織布33と、を有している。電熱線32は、不織布33の表面に縫い付けられた状態にて支持され、サブバッテリ23(
図2参照)から電力が供給されることで発熱する。そして、不織布33は、例えば、熱伝導率の優れたガラス繊維から形成され、筐体部31の側面31A,31Bの略全面に対して配設されている。不織布33は、電熱線32を支持すると共に、電熱線32から発生した熱を周囲の空気層へと効率的に伝熱することができる。
【0041】
図示したように、筐体部31は、例えば、略板状体であり、その側方に位置する側面31A,31Bでは、車両12の前後方向に沿って長手方向を有し、車両12の上下方向に沿って短手方向を有している。
図1(B)を用いて上述したように、筐体部31は、車載用バッテリ11の側面11A,11Bに沿って配設される。そして、筐体部31の長手方向の幅W1は、車載用バッテリ11の長手方向の幅W3(
図4(A)参照)と略同一であり、筐体部31の短手方向の幅W2は、車載用バッテリ11の短手方向の幅W4(
図4(A)参照)と略同一である。
【0042】
この構造により、昇温ヒータ16が、車両12の前後方向において、車載用バッテリ11の外側まではみ出して配設されることがない。そして、
図1(B)に示すように、車両12のバッテリ配置領域15に対して、出来る限り多くの車載用バッテリ11が、効率良く配置される。同様に、昇温ヒータ16が、車両12の上下方向において、車載用バッテリ11の外側まではみ出して配設されることがない。そして、車載用バッテリ11が、積層して配設される構造においても、出来る限り多くの車載用バッテリ11が、効率良く配置される。
【0043】
特に、車両12が、EV車やHEV車やPHEV車の場合には、連続走行距離を伸ばすために、車両12の限られたバッテリ配置領域15(
図1(B)参照)に多くの車載用バッテリ11を搭載することが望まれる。その際に、上述した昇温ヒータ16の形状を実現することで、車両12には、出来る限り多くの車載用バッテリ11が搭載される。
【0044】
図3(A)から
図3(C)に示す如く、筐体部31の側面31A,31Bには、その外周縁部に沿って環状の突出部31C,31Dが形成されている。そして、筐体部31の側面31A,31Bでは、突出部31C,31Dの内側には、凹部34、35が形成されている。詳細は後述するが、昇温ヒータ16が車載用バッテリ11の側面11A,11B(
図5(B)参照)に密接して配設された状態において、凹部34,35は、車載用バッテリ11の側面11A,11Bと筐体部31の側面31A,31Bとの間の密閉空間51,52(
図5(B)参照)となる。
【0045】
上述したように、筐体部31には、電熱線32及び不織布33が内蔵されている。電熱線32は、例えば、筐体部31の側面31B側の不織布33表面に縫い付けられている。そして、電熱線32は、サブバッテリ23(
図2参照)から電力が供給されることで発熱すると共に、熱伝導率の優れた不織布33も利用して、凹部34,35内の空気を加熱する。尚、電熱線32は、不織布33の両面に縫い付けられている場合でも良い。
【0046】
このとき、
図3(A)に一点鎖線にて示すように、電熱線32は、側面31A,31Bの上下方向(車両12の上下方向)に対して、その上側よりも下側が密な状態となるように配線されている。具体的には、電熱線32は、側面31A,31Bの下側では、側面31A,31Bの長手方向(車両12の前後方向)に延在して配線されている。そして、電熱線32は、その短手方向(車両12の上下方向)に角形状に折れ曲がりながら配線されている。
【0047】
一方、電熱線32は、側面31A,31Bの上側では、側面31A,31Bの長手方向(車両12の前後方向)に延在して配線されている。そして、電熱線32は、その長手方向の両端側にて側面31A,31Bの上端側近傍まで配線されると共に、その間の領域では、下方に位置する電熱線32の近傍まで折れ曲がりながら配線されている。
【0048】
この構造により、昇温ヒータ16では、筐体部31の中央から下端側までの領域にて、電熱線32による発熱密度が高くなる。一方、筐体部31の中央から上端側までの領域では、電熱線32が配線されていない領域も多くあり、発熱密度が低くなる。詳細は後述するが、凹部34,35が密閉空間51,52(
図5(B)参照)となり、その密閉空間51,52の空気が上昇気流により上下方向へと対流することで、密閉空間51,52内の空気全体が温められる。その結果、昇温ヒータ16の上側の電熱線32の配線長さを低減することができ、昇温ヒータ16での消費電力が低減される。
【0049】
尚、電熱線32の配線パターンは、
図3(A)に示す形状に限定するものではない。電熱線32が、側面31A,31Bに対して、その上側よりも下側が密な状態に配線されていれば良く、例えば、
図3(A)に示す角形状が、湾曲形状となる場合でも良い。また、側面31A,31Bの上側の電熱線32が、下側の電熱線32へと近づくことなく、一直線状に上端側近傍に配線される場合でも良い。
【0050】
ここで、
図4(A)及び
図4(B)を用いて、本実施形態の車載用バッテリ11を説明する。
図4(A)は、本実施形態の車載用バッテリ11を説明する斜視図である。
図4(B)は、本実施形態の車載用バッテリ11を説明する分解斜視図である。
【0051】
図4(A)に示す如く、車載用バッテリ11は、主に、収納ケース41と、収納ケース41内に収納される複数の電池セル42(
図4(B)参照)と、収納ケース41の上面を塞ぐカバー43と、収納ケース41の下方に配設される温調プレート44(
図4(B)参照)と、温調プレート44の下方に配設される断熱部材45(
図4(B)参照)と、を有している。
【0052】
車載用バッテリ11は、例えば、略直方体形状であり、車載用バッテリ11の側方の側面11A,11Bでは、車両12の前後方向にその長手方向が配設され、車両12の上下方向にその短手方向が配設されている。上述したように、側面11A,11Bの長手方向の幅W3は、筐体部31の側面31A,31Bの長手方向の幅W1(
図3(A)参照)と略同一であり、側面11A,11Bの短手方向の幅W4は、筐体部31の側面31A,31Bの短手方向の幅W2と略同一である。
【0053】
図4(B)に示す如く、収納ケース41は、主に、一対のエンドプレート46と、一対のバインドバー47とから構成され、複数の電池セル42を前方、後方、左方および右方から囲み、支持している。そして、エンドプレート46は、例えば、板状に成形された樹脂または鋼板等から成り、両端部に位置する電池セル42の前側面および後側面を覆う部材である。また、バインドバー47は、例えば、板状に成形された樹脂または鋼板等から成り、複数の電池セル42の右側面および左側面を覆う部材である。また、カバー43は、例えば、板状に成形された樹脂または鋼板等から成り、電池セル42を上方から覆う部材である。
【0054】
電池セル42は、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池である。個々の電池セル42は、例えば、角型平板形状であり、車両12の前後方向に沿って、その前後に小さな隙間を有した状態にて等間隔に配列されている。そして、複数の電池セル42が、導電性の接続板(図示せず)を介して直列接続されることで、高出力の車載用バッテリ11が構成されている。尚、図示していないが、電池セル42の上面には、それぞれ上方に突出した正極側端子と負極側端子とが配設されている。
【0055】
温調プレート44は、複数の電池セル42の下面の近傍に配設された温調手段である。温調プレート44の内部には、水などの媒体が流通するパイプ(図示せず)が配設されている。温調プレート44が複数の電池セル42の下方に配設されることで、電池セル42の充放電特性等の電池特性が向上される。
【0056】
具体的には、電池セル42の温度が使用可能温度範囲よりも高い場合には、温調プレート44に冷却媒体が流通することで電池セル42を冷却し、電池セル42の温度を調整する。一方、電池セル42の温度が使用可能温度範囲よりも低い場合には、温調プレート44に加熱媒体が流通することで電池セル42を昇温し、電池セル42の温度を調整する。
【0057】
図1(B)を用いて説明したように、昇温ヒータ16が、車載用バッテリ11の側面11A,11Bに沿って配設されることで、温調プレート44は、車載用バッテリ11の下面に沿って配設することができる。そして、昇温ヒータ16及び温調プレート44を用いて車載用バッテリ11を3方向から昇温させることができる。その一方、温調プレート44を用いて車載用バッテリ11を冷却することもできる。
【0058】
断熱部材45は、温調プレート44の下方に配置された板状の部材であり、例えば、発泡ポリエチレン等の発泡合成樹脂から成る。断熱部材45が、温調プレート44の下方に配置されることで、温調プレート44と外部とを断熱することができ、温調プレート44の温調効果を増大させることができる。
【0059】
次に、
図5(A)及び
図5(B)を用いて、本実施形態の昇温装置10の昇温ヒータ16の配設状態を説明する。
図5(A)は、本実施形態の昇温装置10の昇温ヒータ16の配設状態を説明する斜視図である。
図5(B)は、本実施形態の昇温装置10の昇温ヒータ16の配設状態を説明する断面図であり、
図5(A)に示す配設状態のC-C線方向の断面図である。
【0060】
図5(A)では、
図1(B)に示す車両12のバッテリ配置領域15の最前列に配設された2個の車載用バッテリ11及び3個の昇温ヒータ16を示している。昇温ヒータ16は、車載用バッテリ11の側方の側面11A,11Bに対して配設され、車載用バッテリ11を挟み込むように配設されている。そして、2個の車載用バッテリ11間には、1個の昇温ヒータ16が配設され、同時に2個の車載用バッテリ11を温めている。
【0061】
図示したように、筐体部31の上面31Eと車載用バッテリ11の上面11Cとは、略面一となると共に、車両12の前後方向において、筐体部31の両端面31Fと車載用バッテリ11の両端面11Dとは、略面一となっている。上述したように、昇温ヒータ16の筐体部31が、車載用バッテリ11の上面11C及び端面11Dから突出して配設されない構造となることで、より多くの車載用バッテリ11が、車両12に効率的に搭載されることが可能となる。
【0062】
また、
図3(A)から
図3(C)を用いて説明したように、昇温ヒータ16の筐体部31の側面31A,31Bには、その外周縁部に沿って環状の突出部31C,31Dが形成されている。
【0063】
そして、
図5(B)に示す如く、突出部31C,31Dの先端面が、車載用バッテリ11の側面11A,11Bの外周端部周辺に対して密接した状態となるように、昇温ヒータ16が、車載用バッテリ11に対して配設されている。そして、昇温ヒータ16は、車載用バッテリ11に対して、外観上は隙間なく配設されているが、その内部には、密閉空間51,52(
図5(B)参照)が形成されている。
【0064】
図示したように、車載用バッテリ11の側面11A,11Bと筐体部31の側面31A,31Bとの間には、筐体部31の凹部34,35を利用して密閉空間51,52が形成されている。尚、図示していないが、車載用バッテリ11の車両12の左右方向の両端部の側面11A,11Bにおいても、右側の車載用バッテリ11の側面11Aに対しては、筐体部31の凹部34を利用して密閉空間52が形成され、左側の車載用バッテリ11の側面11Bに対しては、筐体部31の凹部35を利用して密閉空間51が形成されている。
【0065】
密閉空間51,52内には空気が存在し、その空気は、電熱線32及び不織布33を介して温められる。
図3(A)を用いて説明したように、電熱線32は、筐体部31の側面31A,31Bに対して、その上側よりも下側が密な状態となるように配線されている。そして、昇温ヒータ16では、筐体部31の中央から下端側までの領域にて、電熱線32による発熱密度が高まる状態である。
【0066】
この構造により、密閉空間51,52内の空気は下側から温められ、密閉空間51,52内に上昇気流が発生し、温められた空気が密閉空間51,52内を上下方向へと対流することで、密閉空間51,52内の温度が、出来る限り均一に上昇する。そして、密閉空間51,52内の温められた空気を熱伝導経路として介在させて、車載用バッテリ11の収納ケース41を温めることで、その内部の温度を昇温させ、車載用バッテリ11の複数の電池セル42が温められる。その結果、車載用バッテリ11では、出力特性や放充電特性等のバッテリ特性が劣化することが防止される。
【0067】
その一方、熱伝導経路として介在する空気は、密閉空間51,52内に留まることで、一定の温度まで上昇した後には、その温度を維持し易くなる。その結果、サブバッテリ23(
図2参照)から電熱線32に供給される電力量を調整することで、昇温ヒータ16の消費電力の低減を実現することもできる。尚、上述したように、電熱線32の配線パターンを工夫することでも昇温ヒータ16の消費電力の低減を実現している。
【0068】
また、図示したように、電熱線32及び不織布33は、筐体部31内に内蔵されている。そして、昇温ヒータ16は、主に、車両12が寒冷地等の低温環境下にて走行する際に稼働するため、昇温ヒータ16の稼働時には、急に高温状態となることで、車載用バッテリ11や昇温ヒータ16の筐体部31には結露が発生する。このとき、電熱線32は、筐体部31により被覆され、保護されていることで、結露に晒されることがなく、昇温ヒータ16が漏電することが防止される。また、電熱線32が、結露により腐食し、断線することも防止される。
【0069】
尚、本実施形態では、筐体部31の側面31A,31Bには、その外周縁部に沿って環状の突出部31C,31Dが形成され、突出部31C,31Dの先端面が、車載用バッテリ11の側面11A,11Bの外周端部周辺に対して密接する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、筐体部31が一定の厚みの板状体から成り、筐体部31の側面31A,31Bに対して、その外周縁部に沿ってある程度の厚みを有するシール部材を貼り付け、シール部材の内側に凹部34,35が形成される構造でも良い。この構造においても、昇温ヒータ16が車載用バッテリ11の側面11A,11Bに配設された際に、上記シール部材の先端面が、車載用バッテリ11の側面11A,11Bの外周端部周辺に対して密接し、車載用バッテリ11の側面11A,11Bと筐体部31の側面31A,31Bとの間に密閉空間51,52が形成され、上述した効果と同様な効果を得ることができる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10 昇温装置
11 車載用バッテリ
11A,11B 側面
11C 上面
11D 端面
12 車両
15 バッテリ配置領域
16 昇温ヒータ
21 電子制御ユニット
22 温度センサ
23 サブバッテリ
25 駆動モータ
31 筐体部
31A,31B 側面
31C,31D 突出部
31E 上面
31F 端面
32 電熱線
33 不織布
34,35 凹部
41 収納ケース
42 電池セル
44 温調プレート
51,52 密閉空間