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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】作業機械の制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20221011BHJP
   H01H 19/20 20060101ALI20221011BHJP
   H01H 3/50 20060101ALI20221011BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20221011BHJP
   F16H 59/04 20060101ALI20221011BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
E02F9/20 H
H01H19/20 C
H01H3/50
G05G5/03 B
F16H59/04
F16H61/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019025877
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020133178
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 直希
(72)【発明者】
【氏名】榎本 良太
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-220285(JP,A)
【文献】特開2008-082124(JP,A)
【文献】特開2008-144942(JP,A)
【文献】特開2011-188781(JP,A)
【文献】特開2018-071676(JP,A)
【文献】特開2000-099178(JP,A)
【文献】特開2005-344835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
H01H 19/20
H01H 3/50
G05G 5/03
F16H 59/04
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
前記ベース部材に対し操作可能に取り付けられ、入力操作を受け付けて、前記ベース部材に対する相対位置を変更し、前記入力操作を受け付けない場合に前記相対位置を維持する操作部材と、
前記操作部材の前記ベース部材に対する前記相対位置に応じて操作指令を出力する操作入力部と、
前記相対位置の変更に対応して異なる複数の操作力を付与する操作力付与部と、
駆動源から入力された回転を変速して駆動輪に伝達するための変速部と、
前記操作指令に従い前記変速部に対する変速を指令するコントローラとを備える、作業機械の制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記操作指令に従う前記駆動輪の走行速度を設定する走行速度設定部と、
前記走行速度設定部により設定した走行速度に基づいて、前記駆動輪に接続される車両出力軸の制限回転数を調整する指令を出力する変速指令出力部とを含む、請求項1記載の作業機械の制御システム。
【請求項3】
前記走行速度設定部は、前記操作指令に従って段階的に前記駆動輪の走行速度を設定する、請求項1記載の作業機械の制御システム。
【請求項4】
前記走行速度設定部は、前記駆動輪の走行速度が速い領域では、前記駆動輪の走行速度が遅い領域よりも、段階的に前記駆動輪の走行速度が変化する変化量が大きくなるように走行速度を設定する、請求項3記載の作業機械の制御システム。
【請求項5】
前記ベース部材は、
第1の寸法を有する複数の第1係合部と、
前記第1の寸法と異なる第2の寸法を有する複数の第2係合部とを含み、
前記操作力付与部は、
前記ベース部材に接触し、前記ベース部材に対して相対移動可能に設けられ、前記複数の第1係合部および複数の第2係合部のうちのいずれか1つに選択的に係合可能である、接触部と、
前記接触部を前記ベース部材に接触させる向きの付勢力を前記接触部材に作用する付勢部とを含む、請求項1記載の作業機械の制御システム。
【請求項6】
前記駆動輪の走行速度の領域は、複数の速度段に分けられ、
各前記速度段は、前記駆動輪の走行速度の速い領域の速度段と、前記走行速度の遅い領域の速度段とに分けられ、
前記コントローラは、前記操作指令に従い前記複数の速度段のうちの1つの速度段の走行速度になるように前記変速部に対する変速を指令する、請求項4記載の作業機械の制御システム。
【請求項7】
各前記速度段は、複数の速度区分に分けられ、
前記コントローラは、前記操作指令に従い各前記速度段のうちの分けられた複数の速度区分のうちの1つの速度区分の走行速度となるように前記変速部に対する変速を指令する、請求項6記載の作業機械の制御システム。
【請求項8】
前記操作部材は、回転操作されるダイヤルと、前記ダイヤルの回転中心に取り付けられた軸部とを有し、
前記ベース部材には、前記軸部が挿通される挿通孔が形成されており、
前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記挿通孔を間に挟んで配置されている、請求項5~7のいずれか1項に記載の作業機械の制御システム。
【請求項9】
前記コントローラは、前記複数の第1係合部のうちの隣接する第1係合部に対する前記相対位置の変更に従う前記操作指令に従い、段階的に設けられた複数の速度段のうちの次の速度段の走行速度になるように前記変速部に対する変速を指令する、請求項5に記載の作業機械の制御システム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記複数の第2係合部のうちの隣接する第2係合部に対する前記相対位置の変更に従う前記操作指令に従い、各前記速度段のうちの分けられた複数の速度区分のうちの次の速度区分の走行速度になるように前記変速部に対する変速を指令する、請求項9に記載の作業機械の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、以下のような装置が提案されている。車両のコンソールに、ダイヤルノブが設けられている。ダイヤルノブは、円筒状のノブボディを有している。ノブボディの回転に伴い摺動による操作感触が得られる(たとえば、特開2008-144942号公報(特許文献1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-144942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールローダでは、作業に対応する車速を制限する要求がある。作業種別を切り替えるときには、車速制限の設定も切り替えることになる。たとえば泥濘地では車速の精密な設定を行ない、空荷走行時は車速制限を行わないなど、車速制限の調整レンジを広くする一方で小刻みに車速を設定できるようにする要求がある。これらの要求を単純な操作で満足できることが求められている。
【0005】
本開示では、簡易に走行速度を設定することが可能な作業機械の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、作業機械の制御システムは、ベース部材と、ベース部材に対し操作可能に取り付けられ、入力操作を受け付けて、ベース部材に対する相対位置を変更し、入力操作を受け付けない場合に相対位置を維持し、相対位置に応じて操作指令を出力する操作入力部と、相対位置の変更に対応して異なる複数の操作力を付与する操作力付与部と、駆動源から入力された回転を変速して駆動輪に伝達するための変速部と、操作指令に従い変速部に対する変速を指令するコントローラとを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る作業機械の制御システムに従えば、ベース部材と操作入力部との相対位置の変更に対応して異なる複数の操作力が付与されるため、簡易に走行速度を設定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に基づくホイールローダ10の構成の概略を示す側面図である。
図2図1に示すキャブ30内部の運転席周りの構成を示す平面図である。
図3】ダイヤル装置57の斜視図である。
図4】ダイヤル装置57の部分断面図である。
図5】ベース部80の平面図である。
図6】第1の孔部83への第1ボール部77の係合を示す模式図である。
図7】第2の孔部84への第2ボール部78の係合を示す模式図である。
図8】抵抗付与部の構成を示す断面図である。
図9】実施形態に基づく走行制御装置を含む作業機械の制御システムの構成を説明する図である。
図10】実施形態に従うダイヤル操作の操作指令信号に対応する走行速度を設定する速度テーブルを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
[全体構成]
実施形態においては、本開示の思想を適用可能な作業機械の一例として、ホイールローダ10を例に挙げて説明する。
【0011】
図1は、実施形態に基づくホイールローダ10の構成の概略を示す側面図である。
図1に示されるように、ホイールローダ10は、フロントフレーム12と、リアフレーム14と、前輪27と、後輪28と、作業機16と、キャブ(運転室)30と、運転席41と、エンジンフード17とを備えている。
【0012】
以下の説明において、ホイールローダ10が直進走行する方向を、ホイールローダ10の前後方向という。ホイールローダ10の前後方向において、フロントフレーム12およびリアフレーム14に対して作業機16が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ10の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ10の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0013】
フロントフレーム12およびリアフレーム14により、アーティキュレート構造の車体フレームが構成されている。フロントフレーム12は、リアフレーム14の前方に設けられている。フロントフレーム12は、センターピン(不図示)により、リアフレーム14に回転可能に接続されている。リアフレーム14に対するフロントフレーム12の回転中心は、上下方向に延びる軸である。
【0014】
フロントフレーム12およびリアフレーム14は、ステアリングシリンダ(不図示)により連結されている。ステアリングシリンダは、左右一対に設けられている。ステアリングシリンダが伸縮駆動することによって、フロントフレーム12は、上記のセンターピンを中心に左右に回転する。
【0015】
前輪27および後輪28は、ホイールローダ10の走行輪である。前輪27は、フロントフレーム12に設けられている。前輪27は、左右一対に設けられている。後輪28は、リアフレーム14に設けられている。後輪28は、左右一対に設けられている。
【0016】
作業機16は、フロントフレーム12に設けられている。作業機16は、ブーム21と、バケット24と、ブームシリンダ25と、ベルクランク22と、バケットシリンダ26と、リンク23とを有している。
【0017】
キャブ30およびエンジンフード17は、リアフレーム14に設けられている。キャブ30は、作業機16の後方に設けられている。エンジンフード17は、キャブ30の後方に設けられている。エンジンフード17内には、作動油タンク、エンジン、油圧ポンプおよびエアクリーナなどが収容されている。
【0018】
キャブ30は、オペレータが搭乗する室内空間を区画形成している。キャブ30の側面には、ドア32が設けられている。ドア32は、オペレータがキャブ30に入退室する時に開閉される。運転席41は、キャブ30が区画形成する室内空間に設けられている。オペレータは、キャブ30において、運転席41に着座してホイールローダ10の走行操作、および作業機16の操作を行なう。
【0019】
[キャブ30内部の構成]
図2は、図1に示すキャブ30内部の運転席周りの構成を示す平面図である。図2に示されるように、運転席41は、シートクッション43と、シートバック42とを有している。シートクッション43は、オペレータが腰をおろすシート部位である。シートバック42は、シートクッション43の後端部から上方に立ち上がるように設けられている。シートバック42は、オペレータの背もたれとなるシート部位である。
【0020】
キャブ30内部の運転席41の前方には、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルおよびモニタ装置など(いずれも図示せず)が設けられている。キャブ30内部の運転席41の右側方に、アームレスト46と、コンソール51とが配置されている。
【0021】
コンソール51は、筐体部52を有している。筐体部52は、筐体形状を有し、コンソール51の外観をなしている。筐体部52は、シートクッション43と左右方向に並んでいる。筐体部52は、左右方向において、シートクッション43と隙間を設けて並んでいる。
【0022】
筐体部52は、上面53を有している。上面53には、操作部54が設けられている。オペレータは、操作部54を操作することによって、ホイールローダ10の動作、より詳しくはホイールローダ10の走行および作業機16の動作を制御する。操作部54は、作業機16(ブーム21およびバケット24)の動作を制御するために操作される操作レバー55,56と、ホイールローダ10の走行を制御するために操作されるダイヤル装置57とを含んでいる。
【0023】
操作レバー55,56は、前後方向に沿ってスライド可能に設けられている。ダイヤル装置57は、回転可能に設けられている。ダイヤル装置57は、操作レバー55,56よりも運転席41から離れて配置されている。ダイヤル装置57は、操作レバー55,56よりも後方に配置されている。
【0024】
アームレスト46は、オペレータの肘掛けとして用いられる。アームレスト46は、コンソール51の上面53よりも上方に配置されている。アームレスト46は、上面47を有している。上面47は、オペレータの肘が置かれる肘掛け面をなしている。
【0025】
[ダイヤル装置57の構成]
続いて、実施形態に基づく操作装置の一例である、ダイヤル装置57の構成の詳細について説明する。図3は、ダイヤル装置57の斜視図である。図4は、ダイヤル装置57の部分断面図である。
【0026】
図3,4に示されるように、ダイヤル装置57は、ダイヤル本体61を有している。ダイヤル本体61は、平面視において略円形状に形成されている。ダイヤル本体61は、円環状の取付環部65によって囲われている。取付環部65は、コンソール51に固定されている。ダイヤル本体61は、両方向に一定の角度範囲で、取付環部65に対して回転可能に構成されている。ダイヤル本体61は、コンソール51に対して相対回転可能に構成されている。
【0027】
操作ノブ62は、ダイヤル本体61と一体に形成されている。操作ノブ62は、ダイヤル本体61から上方に隆起し、略円形状のダイヤル本体61の直径の全体に亘って延びる、畝状の形状を有している。オペレータは、操作ノブ62を手指で、たとえば親指と人差指とでつまんで回転させることにより、ダイヤル装置57を回転操作する。
【0028】
操作ノブ62の一方端には、基準マーク63が刻印されている。基準マーク63は、操作ノブ62の回転方向位置を示している。基準マーク63は、コンソール51に対するダイヤル本体61の調整位置を示している。取付環部65、またはコンソール51に、ダイヤル本体61の調整位置に対応する調整量を示す調整量表示マークが形成されていてもよい。
【0029】
ダイヤル本体61の下方に、回転動作部70が設けられている。回転動作部70は、ダイヤル本体61に取り付けられており、ダイヤル本体61が回転するときにダイヤル本体61と共に回転する。回転動作部70は、コンソール51に対して相対回転可能に構成されている。回転動作部70は、ばね部73と、押さえ部74と、接触部76とを有している。
【0030】
軸部71は、ダイヤル本体61から下方に延びている。軸部71は、ダイヤル本体61の回転中心と同心に配置されている。軸部71は、ダイヤル本体61の回転中心に取り付けられている。
【0031】
回転動作部70には、上下方向に延びるガイド筒部72が形成されている。ガイド筒部72は、中空円筒状であり、回転動作部70の一箇所以上に形成されている。図4に示される回転動作部70には、ガイド筒部72が二箇所に、ダイヤル本体61の回転中心を対称軸とする点対称となる位置に形成されている。
【0032】
各々のガイド筒部72内に、ばね部73と、接触部76とが収容されている。ばね部73は、コイルばねであり、ガイド筒部72の延びる方向である上下方向に伸縮自在に構成されている。ガイド筒部72の上端部に、押さえ部74が配置されている。ばね部73の上端は、押さえ部74に当接している。ばね部73の下端は、接触部76に当接している。接触部76は、ばね部73の伸縮に伴って上下方向に移動可能である。一方、押さえ部74は、上下方向に移動不能である。
【0033】
接触部76は、二箇所のガイド筒部72のうちの一方に収容された第1ボール部77と、二箇所のガイド筒部72のうちの他方に収容された第2ボール部78とを有している。第1ボール部77と第2ボール部78とは、球形状を有している。第1ボール部77と第2ボール部78とは、同じ径を有している。第1ボール部77と第2ボール部78とは、同一の形状を有している。
【0034】
回転動作部70の下方に、ベース部80が設けられている。ダイヤル本体61とベース部80との間に、回転動作部70が配置されている。接触部76は、ベース部80の上面に接触している。ばね部73は、接触部76に対して、下向きの付勢力を作用している。ばね部73は、接触部76をベース部80に接触させる向きの付勢力を、接触部76に作用している。ばね部73は、実施形態の付勢部に相当する。
【0035】
ベース部80は、ダイヤル本体61および回転動作部70とは異なり、コンソール51に対して相対回転不能に構成されている。オペレータがダイヤル本体61を操作することにより、ダイヤル本体61および回転動作部70はコンソール51に対して相対回転し、このとき接触部76はベース部80に対して相対移動する。接触部76は、ベース部80への接触を維持したまま、ベース部80に対して相対的にこすれながら摺り動く。オペレータが操作するダイヤル本体61と、ダイヤル本体61および回転動作部70の回転中心軸となる軸部71とは、入力操作を受け付けることで接触部76をベース部80に対して相対移動させる、実施形態の操作部材を構成している。
【0036】
ベース部80には、挿通孔81が形成されている。挿通孔81は、ベース部80を厚み方向に貫通している。軸部71は、挿通孔81に挿通されている。軸部71は、挿通孔81を貫通して配置されている。
【0037】
ベース部80の下面に、ポテンショメータ90が取り付けられている。ポテンショメータ90には、軸穴91が形成されている。軸穴91は、ベース部80の挿通孔81と連通している。ポテンショメータ90は、軸穴91と挿通孔81とが同心となるように、ベース部80に対して位置決めがされている。軸部71は、軸穴91内に挿入されている。軸部71の下端部は、軸穴91の内部に配置されている。
【0038】
ポテンショメータ90は、軸部71の相対変位量を電気信号に変換する。ポテンショメータ90は、軸部71の回転角、すなわちダイヤル本体61および回転動作部70の回転角を、電気信号に変換する。ポテンショメータ90は、ダイヤル本体61および回転動作部70の回転角を検出して、回転角に対応する電圧を出力する。
【0039】
ポテンショメータ90は、入力操作を受け付けて、ベース部80に対するダイヤル本体61および回転動作部70の相対位置の変更に伴い操作指令である回転角に対応する電圧を出力する。入力操作を受け付けない場合には、ベース部80に対するダイヤル本体61および回転動作部70の相対位置は維持される。この場合には、ポテンショメータ90は、ベース部80に対するダイヤル本体61および回転動作部70の相対位置は変更しないため操作指令である回転角に対応する電圧を変更しない。
【0040】
ポテンショメータ90に、ケーブル92の一端が接続されている。ケーブル92の他端は、端子94に接続されている。ポテンショメータ90と端子94とは、ケーブル92によって電気的に接続されている。ポテンショメータ90で検出された回転角に対応する電気信号は、端子94を介して、外部に出力される。
【0041】
なお、ベース部80は、本発明のベース部材に対応し、ポテンショメータ90は、本発明の操作入力部に対応し、回転動作部70は、本発明の操作力付与部に対応する。
【0042】
なお、本例においては、操作入力部に関して、ダイヤル操作を例に挙げて説明したが、特にダイヤル操作に限られず、例えばスライド操作するスライドスイッチについても同様に適用可能である。
【0043】
[ベース部80の構成]
図5は、ベース部80の平面図である。ベース部80には、図4を参照して説明した挿通孔81に加えて、第1の孔部83と、第2の孔部84とが形成されている。
【0044】
第1の孔部83と第2の孔部84とは、平面視において円形状に形成されている。第2の孔部84の径は、第1の孔部83の径と異なっている。第2の孔部84は、第1の孔部83よりも大きい径を有している。第2の孔部84は、第1の孔部83よりも大径に形成されている。第2の孔部84は、第1の孔部83の寸法と異なる寸法を有している。
【0045】
第1の孔部83は、複数形成されている。図5に示される例では、18個の第1の孔部83がベース部80に形成されている。第2の孔部84は、複数形成されている。図5に示される例では、5個の第2の孔部84がベース部80に形成されている。第1の孔部83は、第2の孔部84よりも多数形成されている。
【0046】
複数の第1の孔部83は、並んで配置されている。複数の第2の孔部84は、第1の孔部83とは異なる位置で、並んで配置されている。第1の孔部83と第2の孔部84とは、挿通孔81を間に挟んで配置されている。
【0047】
図5に示される中心Cは、挿通孔81の中心を示している。複数の第1の孔部83は、中心Cを中心とする円弧状に並んで配置されている。複数の第2の孔部84は、中心Cを中心とする円弧状に並んで配置されている。複数の第1の孔部83と、複数の第2の孔部84とは、中心Cを中心とする同一の円上に並んで配置されている。
【0048】
複数の第1の孔部83は、等間隔に配置されている。複数の第2の孔部84は、不均等な間隔に配置されている。隣り合う2つの第1の孔部83の配置間隔と、隣り合う2つの第2の孔部84の配置間隔とが、異なっている。複数の第1の孔部83は、その中心間の距離が、すべて等しくなっている。複数の第2の孔部84は、その中心間の距離がすべて等しくなく、中心間の距離が異なる第2の孔部84を少なくとも1つ含んでいる。
【0049】
図5に示される5本の一点鎖線は、5つの第2の孔部84の各々の中心と、挿通孔81の中心である中心Cとを通る直線を示している。第2の孔部84Aの中心を通る一点鎖線は、第1の孔部83Aの中心を通っている。第2の孔部84Bの中心を通る一点鎖線は、第1の孔部83Bの中心を通っている。第2の孔部84Cの中心を通る一点鎖線は、第1の孔部83Cの中心を通っている。第2の孔部84Dの中心を通る一点鎖線は、第1の孔部83Dの中心を通っている。第2の孔部84Eの中心を通る一点鎖線は、第1の孔部83Eの中心を通っている。
【0050】
第1の孔部83Aと第1の孔部83Bとの間に、4つの第1の孔部83が形成されている。第1の孔部83Bと第1の孔部83Cとの間に、2つの第1の孔部83が形成されている。第1の孔部83Cと第1の孔部83Dとの間に、3つの第1の孔部83が形成されている。第1の孔部83Dと第1の孔部83Eとの間に、4つの第1の孔部83が形成されている。
【0051】
そのため、第2の孔部84Aと第2の孔部84Bとの間隔は、第2の孔部84Bと第2の孔部84Cとの間隔よりも、大きくなっている。第2の孔部84Cと第2の孔部84Dとの間隔は、第2の孔部84Aと第2の孔部84Bとの間隔よりも小さく、第2の孔部84Bと第2の孔部84Cとの間隔よりも大きくなっている。第2の孔部84Dと第2の孔部84Eとの間隔は、第2の孔部84Aと第2の孔部84Bとの間隔と、等しくなっている。このように、第2の孔部84は、不均等な間隔に配置されている。
【0052】
図6は、第1の孔部83への第1ボール部77の係合を示す模式図である。図7は、第2の孔部84への第2ボール部78の係合を示す模式図である。第1ボール部77は、複数の第1の孔部83のうちのいずれか1つに選択的に係合可能である。第2ボール部78は、複数の第2の孔部84のうちのいずれか1つに選択的に係合可能である。第1の孔部83は、実施形態の第1係合部に相当する。第2の孔部84は、実施形態の第2係合部に相当する。
【0053】
図6に示される径D1は、第1の孔部83の径を示している。図7に示される径D2は、第2の孔部84の径を示している。径D1は、実施形態の第1の寸法に相当する。径D2は、実施形態の第2の寸法に相当する。
【0054】
第2の孔部84の径D2は、第1の孔部83の径D1よりも大きい。第1ボール部77が第1の孔部83に係合するときに第1ボール部77が第1の孔部83内に入り込む深さよりも、第2ボール部78が第2の孔部84に係合するときに第2ボール部78が第2の孔部84内に入り込む深さの方が、大きくなっている。第1ボール部77を第1の孔部83から抜け出させて第1ボール部77の第1の孔部83との係合を外すために必要な力よりも、第2ボール部78を第2の孔部84から抜け出させて第2ボール部78の第2の孔部84との係合を外すために必要な力の方が、大きくなっている。
【0055】
図4を参照して説明した通り、二箇所のガイド筒部72は、ダイヤル本体61の回転中心を対称軸とする点対称となる位置に形成されている。二箇所のガイド筒部72のうちの一方に収容された第1ボール部77と、二箇所のガイド筒部72のうちの他方に収容された第2ボール部78とは、ダイヤル本体61の回転中心を対称軸とする点対称となる位置に配置されている。
【0056】
図5を併せて参照して、第1ボール部77および第2ボール部78がベース部80に対して中心Cを中心に相対回転移動する際に、第1ボール部77が第1の孔部83に係合しかつ第2ボール部78が第2の孔部84に係合する場合と、第1ボール部77が第1の孔部83に係合するが第2ボール部78は第2の孔部84に係合しない場合とがある。たとえば、第1ボール部77が第1の孔部83Aに係合するとき、第2ボール部78は第2の孔部84Aに係合する。第1ボール部77が移動して第1の孔部83Aの隣の第1の孔部83に係合するとき、第2ボール部78は第2の孔部84Aと第2の孔部84Bとの間にあり、第2ボール部78はいずれの第2の孔部84とも係合しない。
【0057】
第2ボール部78が第2の孔部84と係合していない場合、ダイヤル本体61を回転させるために必要なトルクは、第1ボール部77を第1の孔部83から抜け出させるだけの大きさがあればよい。一方、第2ボール部78が第2の孔部84と係合している場合、ダイヤル本体61を回転させるために必要なトルクは、第2ボール部78を第2の孔部84から抜け出させる大きさが要求される。
【0058】
第2ボール部78が第2の孔部84に嵌まるときに生じる、比較的大きいクリック感によって、ダイヤル本体61を操作するオペレータは、第2ボール部78が第2の孔部84のいずれかに係合していることを認識できる。第2ボール部78の第2の孔部84との係合を外すために比較的大きい操作力が必要とされることによっても、オペレータは、第2ボール部78が第2の孔部84のいずれかに係合していることを認識できる。一方、クリック感が比較的小さいこと、および、比較的小さい操作力でダイヤル本体61を回転できることによって、オペレータは、第2ボール部78が第2の孔部84に係合しておらず第1ボール部77が第1の孔部83に係合している状態であることを認識できる。
【0059】
このように、第1ボール部77が第1の孔部83に係合しているが第2ボール部78は第2の孔部84に係合していないときと、第1ボール部77が第1の孔部83に係合しかつ第2ボール部78が第2の孔部84に係合しているときとで、ダイヤル本体61を操作するオペレータに対し、異なる複数の操作感を与えることができる。したがって、ダイヤル装置57を操作したときの間隔を、オペレータに適切に与えることができる。オペレータは、ダイヤル装置57を目視することなく、第2の孔部84に第2ボール部78が係合しているか否かを、指先の感覚で知覚することができる。
【0060】
寸法の異なる第1の孔部83と第2の孔部84とを一つの列に並べて並び順を混在させると、2つの第1の孔部83が隣り合う箇所と、第1の孔部83と第2の孔部84とが隣り合う箇所とで、孔の縁間の距離が異なることになる。実施形態のベース部80では、第1の孔部83と第2の孔部84とが異なる位置に配置されているので、複数の第1の孔部83を等間隔に形成することができる。これにより、機械加工の精度限界を考慮して、第1の孔部83の間隔をより小さくすることができる。
【0061】
複数の第1の孔部83と、複数の第2の孔部84とが、挿通孔81を間に挟んで配置されているので、第1の孔部83と第2の孔部84とが形成されたベース部80のバランスを向上することができる。
【0062】
第1の孔部83と第2の孔部84とが、中心Cを中心とする円弧状に並んで配置されているので、ダイヤル本体61の操作に伴って円弧状の軌跡を描いて移動する接触部76を、複数の第1の孔部83および複数の第2の孔部84のうちのいずれか1つに、確実に選択的に係合させることができる。
【0063】
図8は、抵抗付与部の構成を示す断面図である。図8には、ポテンショメータ90と、ポテンショメータ90の軸穴91に挿通されている軸部71との断面が図示されている。図8に示されるように、ポテンショメータ90と軸部71との間に、板ばね96が挿入されている。板ばね96は、多角形に折り曲げられた弾性金属薄板により形成されている。板ばね96は、その各折り曲げ辺の中心が軸部71の外周面により径方向外側に押圧されて撓んだ状態で、保持されている。
【0064】
軸部71をポテンショメータ90に対し相対回転しようとするときに、板ばね96が軸部71との間に摩擦力を生じる。この摩擦力が、軸部71の回転に対する抵抗を増加させている。板ばね96は、実施形態の抵抗付与部に相当する。
【0065】
このような抵抗付与部を備える構成とすることにより、第1ボール部77が第1の孔部83に係合していないときの、第1ボール部77の滑りによるベース部80に対する相対移動が抑制される。これにより、オペレータによるダイヤル本体61の回転操作によって、第1ボール部77が隣の第1の孔部83へ移動しようとするときに、第1ボール部77が勢いで隣の第1の孔部83を乗り越えて移動することが、抑制される。第1ボール部77が第1の孔部83に入り込んだ状態を安定させられることにより、第1ボール部77を複数の第1の孔部83のいずれか1つにより確実に係合させることができる。
【0066】
これまでの実施形態の説明においては、操作装置として、車速制限ダイヤルを例として説明した。車速制限ダイヤルに限られず、トルクの制限値を指令するダイヤル、またはエンジン回転数を設定する燃料ダイヤルなどの、他の種類のダイヤル装置に本開示の操作装置を適用してもよい。
【0067】
実施形態の第1係合部および第2係合部は、ベース部80に形成された第1の孔部83および第2の孔部84によって構成されているが、第1係合部および第2係合部は、孔に限られない。ベース部80の上面に形成された突起部が、第1係合部および第2係合部を構成してもよい。
【0068】
操作装置は、ダイヤルに限られない。たとえば操作装置は、スライド操作可能な操作入力部を備えていてもよい。この場合、第1係合部および第2係合部は、円弧状ではなく直線上に並んで配置されることによって、スライド移動する接触部が第1係合部および第2係合部のうちのいずれか1つに相対的に係合可能な構成を実現することができる。
【0069】
第1係合部の並びの列と、第2係合部の並びの列とは、平行に延びていてもよい。第1係合部の並びの列と第2係合部の並びの列とが、同一の線上にあってもよい。第1係合部の並びの列中に、第2係合部が含まれていてもよい。
【0070】
図9は、実施形態に基づく走行制御装置を含む作業機械の制御システムの構成を説明する図である。
【0071】
図9には、走行制御装置の一例として、いわゆるHST(Hydraulic Static Transmission)と称される油圧駆動装置を用いた場合が示されている。HST110は、ホイールローダやブルドーザ等、建設機械として使用される車両に搭載されるもので、閉回路となる油圧供給管路110a,110bによって接続された油圧ポンプPおよび油圧モータM1,M2を備えている。ここで、油圧供給管路110a,110bは、その途中でそれぞれ分岐部および合流部を有し、1つの油圧ポンプPには、2つの油圧モータM1,M2が並列接続される。
【0072】
油圧ポンプPは、車両のエンジン101によって駆動されるものであり、PTO軸101cによって接続される。実施形態では、斜板の傾転角を変更することによって容量を変更することのできる可変容量型のHSTポンプを適用している。
【0073】
油圧モータM1,M2は、油圧ポンプPから吐出した圧油によって駆動されるものである。この実施の形態1では、斜軸の傾転角を変更することによって容量を変更することのできる可変容量型のHSTモータを適用している。
【0074】
油圧モータM1,M2の出力モータ軸113,114には、変速機構115が接続され、この変速機構115の出力軸116およびデフ117さらには車軸118を介して車両の駆動輪119a,119bに接続され、この駆動輪を回転駆動することで、車両を走行させることができる。油圧モータM1,M2の回転方向は、油圧ポンプPからの圧油の供給方向に応じて切り替えることが可能であり、車両を前進、もしくは後進させることができる。たとえば、油圧ポンプPから吐出した圧油が油圧供給管路110aより、油圧モータM1,M2に供給された場合に車両が前進し、油圧ポンプPから吐出した圧油が油圧供給管路110bより、油圧モータM1,M2に供給された場合に車両が後進する。
【0075】
油圧モータM1の出力モータ軸113には、変速機構115の1つとして遊星歯車機構が設けられ、太陽歯車を入力とし、遊星キャリアを出力とするが、クラッチM1-1によって外輪歯車を固定(オン)と自由(オフ)とに切り換えることによって変速比を変えるようにしている。この遊星キャリアは出力軸116に歯合し、トルクを伝達する。なお、変速比とは、油圧モータM1,M2の回転数に対して出力軸116の回転数を少なくすることをいう。ここで、出力モータ軸113には、出力モータ軸と遊星キャリアとの連結するクラッチM1-2を有する。したがって、クラッチM1-1がオンでクラッチM1-2をオフとすることによって、遊星歯車(出力モータ軸113)を入力とし、遊星キャリア出力となる変速出力、たとえば第1の変速比の出力が得られる。クラッチM1-1がオフでクラッチM1-2をオンとすることによって、外輪歯車は自由となり、遊星歯車機構が機能せずに、出力モータ軸113と遊星キャリアとが連結して、たとえば第2の変速比の出力が得られる。一方、油圧モータM2の出力モータ軸114は、出力軸116に歯合する歯車と出力モータ軸114とを連結するクラッチM2-1を介して接続される。たとえば、クラッチM2-1がオン状態のとき、第3の変速比で変速されてトルク伝達する。
【0076】
ここで、エンジン101は、電気ペダル角度センサ124からの信号をコントローラCTに入力し、コントローラCTからの信号により、電子ガバナ101aが、エンジン101に対する燃料噴射量を制御することによってエンジン回転数が一定となるように制御する。エンジン101の回転数は、エンジン回転センサ101bによって検出され、コントローラCTに入力される。
【0077】
また、油圧ポンプPは、コントローラCTの制御のもと、電磁弁を駆動する電子駆動部102によって斜板の角度が制御されることによって容量を制御する。この際、斜板の角度は、斜板センサPaによって検出される。同様に、油圧モータM1,M2も、電磁弁を駆動する電子駆動部111,112によって各油圧モータM1,M2の斜板の角度を制御することによって容量を制御する。なお、各油圧供給管路110a,110bのメイン油圧は、油圧センサ109a,109bによって検出され、コントローラCTによってエンジン停止防止や過負荷防止の制御がなされる。
【0078】
また、キャブ30内には、ダイヤル装置57、電気ペダル角度センサ124、およびFRレバー125を有する。
【0079】
電気ペダル角度センサ124は、電気ペダルの角度を検出し、この角度に応じた値をコントローラCTに出力し、エンジン101の回転数を制御する。FRレバー125は、その操作によって、車両の前進、ニュートラル、後進を示すディレクション信号をコントローラCTに出力する。
【0080】
ダイヤル装置57は、作業時における最大車速点を設定するダイヤルである。
コントローラCTには、ダイヤル装置57から最高速度点を示す速度調整のためのダイヤル信号S12、車速センサ118aの検出信号である車速センサ信号S14、油圧センサ109a,109bによって検出されたメイン油圧の値を示すメイン油圧信号S15、電気ペダルの角度を示す電気ペダル角度センサ信号S16、FRレバー125から出力されるディレクション信号、斜板センサPaによって検出された斜板角度を示す斜板センサ信号、およびエンジン回転センサ101bが検出したエンジン回転数を示すエンジン回転センサ信号S19が入力される。
【0081】
一方、コントローラCTからは、油圧モータM1,M2の斜板角度を制御する電子駆動部111,112に対しそれぞれモータ容量制御信号S20,S23、クラッチM1-1,M1-2,M2-1のオンオフをそれぞれ制御するクラッチ切換信号S21,S22,S24、油圧ポンプPの斜板角度を制御する電子駆動部102に対してポンプ容量制御信号S25、および電子ガバナ101aに対してガバナ制御信号S26が出力される。
【0082】
コントローラCTは、走行速度に応じて油圧モータM1,M2が最も効率的なトルク伝達を行うことができるようにクラッチ切換制御および容量制御等を行う。
【0083】
コントローラCTは、走行速度設定部C1、変速指令出力部C2を有する。
走行速度設定部C1は、ダイヤル装置57からのダイヤル信号である操作指令信号に従い速度テーブルに基づいて駆動輪119a,119bの走行速度を設定する。
【0084】
変速指令出力部C2は、走行速度設定部C1により設定した走行速度に基づいて、駆動輪119a,119bに接続される出力軸116の制限回転数を調整する指令を出力する。
【0085】
具体的には、変速指令出力部C2は、変速機構115におけるクラッチM1-1,M1-2,M2-1のクラッチ切換制御、および油圧ポンプPと油圧モータM1,M2との容量制御を行う。クラッチ切換制御および容量制御は、走行速度に依存した所定の切換パターンおよび容量制御パターンに基づいて行われる。
【0086】
なお、変速機構115、油圧ポンプP、油圧モータM1,M2および電子駆動部102,111,112は、本発明の「変速部」の一例である。走行速度設定部C1および変速指令出力部C2は、本発明の「走行速度設定部」および「変速指令出力部」の一例である。
【0087】
図10は、実施形態に従うダイヤル操作の操作指令信号に対応する走行速度を設定する速度テーブルを説明する図である。
【0088】
図10を参照して、横軸は、ダイヤル操作の操作位置に対応する操作指令信号を示す。縦軸は、走行速度を示す。
【0089】
ダイヤル装置57は、ダイヤル操作の第1~第18の操作位置にそれぞれ対応して操作指令信号P1~P18を出力する。操作位置の変化に対して操作指令信号の変化も一定である。
【0090】
走行速度設定部C1は、当該速度テーブルに基づいて操作指令信号P1~P18にそれぞれ対応する走行速度V1~V18を設定する。
【0091】
大別すると走行速度の領域は、4つの速度段に分けられている。一例として4速度段のうち1速度段および2速度段は走行速度の遅い領域の速度段、3速度段および4速度段は走行速度の速い領域の速度段である。
【0092】
走行速度が速い領域では、走行速度が遅い領域よりも、操作位置の変更量に対する走行速度の変化量が大きくなるように設定している。したがって、3速度段および4速度段における操作位置の変更量に対する走行速度の変化量は、1速度段および2速度段における操作位置の変更量に対する走行速度の変化量よりも大きい。
【0093】
各速度段は、段階的に複数の速度区分に分けられる。各速度区分における走行速度は一定である。具体的には、1速度段は、6個の速度区分に分けられる。1速度段において、走行速度設定部C1は、操作指令信号P1~P6に従って6個の速度区分である走行速度V1~V6にそれぞれ設定する。2速度段は、3個の速度区分に分けられる。2速度段において、走行速度設定部C1は、操作指令信号P7~P9に従って3個の速度区分である走行速度V7~V9にそれぞれ設定する。3速度段は、4個の速度区分に分けられる。3速度段において、走行速度設定部C1は、操作指令信号P10~P13に従って4個の速度区分である走行速度V10~V13にそれぞれ設定する。4速度段は、5個の速度区分に分けられる。走行速度設定部C1は、操作指令信号P14~P18に従って5個の速度区分である走行速度V14~V18にそれぞれ設定する。
【0094】
走行速度設定部C1は、当該速度テーブルに従って18個の走行区分に分けられており、18段階の走行速度の設定が可能である。各走行区分における走行速度は一定である。したがって、操作指令信号の変化に対して一定の区間の走行速度は変化しない。
【0095】
次に、ダイヤル装置57の操作位置と走行速度の設定との関係について説明する。
ダイヤル装置57は、18のダイヤル操作位置を有しており、ダイヤル本体61の操作を行なう際に第1ボール部77が第1の孔部83に係合して操作感が得られる位置に対応する。
【0096】
操作指令信号P1~P18は、図5に示されるベース部80に設けられた18個の第1の孔部83が形成されている位置に関連付けられている。
【0097】
図10の速度テーブル中の菱形のプロットは、図5に示される18個の第1の孔部83が、第1~第18までの各操作位置に形成されていることを示す。白抜き矩形のプロットは、5個の第2の孔部84が各操作位置に形成されていることを示す。第2の孔部84は、第1~第18の操作位置のうち、第1、第6、第9、第13および第18の操作位置に形成されている。第1、第6、第9、第13および第18の操作位置は、ダイヤル本体61の操作を行なう際に第2ボール部78が第2の孔部84に係合して異なる操作感が得られる位置に対応する。
【0098】
本例においては、コントローラCTは、第2の孔部84が形成されている操作位置に対応する操作指令信号に従って速度段を変更するクラッチ切換制御を実行する。具体的には、第6、第9、第13および第18の操作位置にそれぞれ対応して速度段が変更される。
【0099】
オペレータは、ダイヤル装置57を目視することなく、車速制限ダイヤルに従った最大車速の設定が、第1速度段、第2速度段、第3速度段または第4速度段のどの設定であるのかを、指先の感覚で知覚することができる。加えて、第1ボール部77をどの第1の孔部83に係合させるかの設定を変更することによって、各速度段において最大車速をさらに細かく設定することができる。第1速度段の各速度区分の設定において、第1~6の操作位置に対応する、6段階の車速設定が可能である。したがって、ホイールローダ10が泥濘地を走行している場合、またはホイールローダ10が除雪作業中の場合など、最大車速が小さく規定されるときの車速を精密に設定することができる。
【0100】
したがって、ダイヤル装置57に対する入力操作に対して、第1速度段から第2速度段、第2速度段から第3速度段、第3速度段から第4速度段に設定する際の比較的大きな変更量の操作感と、格段の細かな車速に設定する際の比較的小さな変更量の操作感とは異なるため簡易に走行速度を設定することが可能である。
【0101】
次に、ダイヤル装置57の操作位置と変速機構115との関係について説明する。
走行速度設定部C1は、ダイヤル操作による第6の操作位置に従う操作指令信号P6を受け付けて、走行速度V6に設定する。変速指令出力部C2は、走行速度設定部C1による走行速度V6の設定に従い1速度段に設定する。変速指令出力部C2は、クラッチM1-1をオン、クラッチM1-2をオフ、クラッチM2-1をオン状態にして1速度段に設定する。
【0102】
変速指令出力部C2は、油圧ポンプPと油圧モータM1,M2との容量制御により、第1~第6の操作位置に対応して走行速度設定部C1により設定された走行速度V1~V6となるように駆動輪119a,119bに接続される出力軸116の制限回転数を調整する指令を出力する。
【0103】
走行速度設定部C1は、ダイヤル操作による第9の操作位置に従う操作指令信号P9を受け付けて、走行速度V9に設定する。変速指令出力部C2は、走行速度設定部C1による走行速度V9の設定に従い2速度段に設定する。変速指令出力部C2は、クラッチM1-1をオフ、クラッチM1-2をオフ、クラッチM2-2をオン状態にして2速度段に設定する。
【0104】
変速指令出力部C2は、油圧ポンプPと油圧モータM1,M2との容量制御により、第7~第9の操作位置に対応して走行速度設定部C1により設定された走行速度V7~V9となるように駆動輪119a,119bに接続される出力軸116の制限回転数を調整する指令を出力する。
【0105】
走行速度設定部C1は、ダイヤル操作による第13の操作位置に従う操作指令信号P13を受け付けて、走行速度V13に設定する。変速指令出力部C2は、走行速度設定部C1による走行速度V13の設定に従い3速度段に設定する。変速指令出力部C2は、3速度段では、クラッチM1-1をオフ、クラッチM1-2をオン、クラッチM2-1をオフ状態にして3速度段に設定する。
【0106】
変速指令出力部C2は、油圧ポンプPと油圧モータM1,M2との容量制御により、第10~第13の操作位置に対応して走行速度設定部C1により設定された走行速度V10~V13となるように、駆動輪119a,119bに接続される出力軸116の制限回転数を調整する指令を出力する。
【0107】
走行速度設定部C1は、ダイヤル操作による第18の操作位置に従う操作指令信号P18を受け付けて、走行速度V18に設定する。変速指令出力部C2は、走行速度設定部C1による走行速度V18の設定に従い4速度段に設定する。変速指令出力部C2は、4速度段では、クラッチM1-1をオン、クラッチM1-2をオフ、クラッチM2-1をオフ状態にする。
【0108】
変速指令出力部C2は、油圧ポンプPと油圧モータM1,M2との容量制御により、第14~第18の操作位置に対応して走行速度設定部C1により設定された走行速度V14~V18となるように、駆動輪119a,119bに接続される出力軸116の制限回転数を調整する指令を出力する。
【0109】
走行速度設定部C1は、ダイヤル操作に従って複数の第2の孔部84のうちの隣接する第2の孔部84に対する相対位置の変更に従う操作指令に従い、段階的に設けられた複数の速度段(一例として4速度段)のうちの次の速度段の走行速度に設定する。変速指令出力部C2は、走行速度設定部C1により設定された速度段に従ってクラッチ切換制御を実行する。
【0110】
走行速度設定部C1は、ダイヤル操作に従って複数の第1の孔部83のうちの隣接する第1の孔部83に対する相対位置の変更に従う操作指令に従い、各速度段のうちの分割された複数の速度区分のうちの次の速度区分の走行速度に設定する。変速指令出力部C2は、走行速度設定部C1により設定された走行速度に従って、油圧ポンプPと油圧モータM1,M2との容量制御を実行する。
【0111】
このようにして、クラッチ切換制御と、油圧モータおよび油圧ポンプの容量制御とによって車速に応じた効率のよい油圧モータ制御を行うようにしている。
【0112】
なお、本例においては、4速のクラッチ切換制御を実行する場合について説明するが、当該クラッチ切換制御は一例であり、他の切換を実行することも可能であるし、4速に限られず、任意の変速段に設定することが可能である。
【0113】
本例においては、1速度段においては走行速度V1~V6までの間に5段階の速度区分を有しており、2速度段においては、走行速度V6~V9までの間に3段階の速度区分を有しており、3速度段においては、走行速度V9~V13までの間に4段階の速度区分を有しており、4速度段においては、走行速度V13~V18までの間に5段階の速度区分を有している。当該各速度段における複数の速度区分は、ダイヤル操作の変更に従い隣接する第2の孔部84に第2ボール部78を係合する際の第1ボール部77と第1の孔部83との係合回数に対応している。
【0114】
ダイヤル操作の変更に従い第2ボール部78と第2の孔部84Aとの係合を隣接する第2の孔部84Bとの係合に変更した場合には、第1ボール部77は、5個の第1の孔部83と係合する。ダイヤル操作の変更に従い第2ボール部78と第2の孔部84Bとの係合を隣接する第2の孔部84Cとの係合に変更した場合には、第1ボール部77は、3個の第1の孔部83と係合する。ダイヤル操作の変更に従い第2ボール部78と第2の孔部84Cとの係合を隣接する第2の孔部84Dとの係合に変更した場合には、第1ボール部77は、4個の第1の孔部83と係合する。ダイヤル操作の変更に従い第2ボール部78と第2の孔部84Dとの係合を隣接する第2の孔部84Eとの係合に変更した場合には、第1ボール部77は、5個の第1の孔部83と係合する。
【0115】
したがって、ベース部80に設けられた隣接する第2の孔部84の互いの間隔を変更(第2の孔部84B、84C、84Dの位置を変更)することにより、ダイヤル操作の変更に従い隣接する第2の孔部84に第2ボール部78が係合する際における第1ボール部77と第1の孔部83との係合回数を変更して、各速度段における複数の速度区分の個数を任意の数にカスタマイズすることも可能である。
【0116】
なお、本例においては、走行制御装置の一例として、HSTの構成について説明したが、特にHSTの構成に限られず、HMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、EMT(electro mechanical transmission)等を含むCVT(Continuously Variable Transmission)全般に本実施形態を適用することが可能である。
【0117】
本実施形態においては、第1ボール部77と第1の孔部83および第2ボール部78と第2の孔部84との係合動作の組み合わせによりダイヤル本体61を操作する際の操作力を機械的に変更する場合について説明したが、特にこれに限られず、操作力を電気的に変更することも可能である。具体的には、コントローラからの電気信号に従ってダイヤル本体61を操作する操作抵抗を調整するようにしてもよい。
【0118】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
10 ホイールローダ、12 フロントフレーム、14 リアフレーム、16 作業機、17 エンジンフード、21 ブーム、22 ベルクランク、23 リンク、24 バケット、25 ブームシリンダ、26 バケットシリンダ、27 前輪、28 後輪、30 キャブ、32 ドア、41 運転席、42 シートバック、43 シートクッション、46 アームレスト、47,53 上面、51 コンソール、52 筐体部、54 操作部、55,56 操作レバー、57 ダイヤル装置、61 ダイヤル本体、62 操作ノブ、63 基準マーク、65 取付環部、70 回転動作部、71 軸部、72 ガイド筒部、73 ばね部、74 押さえ部、76 接触部、77 第1ボール部、78 第2ボール部、80 ベース部、81 挿通孔、83 第1の孔部、84 第2の孔部、90 ポテンショメータ、91 軸穴、92 ケーブル、94 端子、96 板ばね、101 エンジン、101b エンジン回転センサ、101c PTO軸、102,111,112 電子駆動部、109a,109b 油圧センサ、110a,110b 油圧供給管路、113,114 出力モータ軸、115 変速機構、116 出力軸、117 デフ、118 車軸、118a 車速センサ、119a,119b 駆動輪、124 電気ペダル角度センサ、125 FRレバー、C1 走行速度設定部、C2 変速指令出力部、CT コントローラ。
図1
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図10