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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】脈波測定装置および脈波測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/02 20060101AFI20221011BHJP
   A61B 5/0255 20060101ALI20221011BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
A61B5/0255 R
A61B5/0245 100T
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019029880
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020130742
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小池 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 智
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102518(JP,A)
【文献】特開2000-312668(JP,A)
【文献】特開2016-064125(JP,A)
【文献】特開2007-000357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/318-5/367
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から収集した生体情報から脈波形を抽出する抽出部と、
抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する算出部と、
算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行う解析部と、
前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する出力部と、を有し、
前記出力部は、
前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の少なくともいずれかと併せて、睡眠および/または行動を含む前記生体の状態に関する情報を出力する、脈波測定装置。
【請求項2】
生体から収集した生体情報から脈波形を抽出する抽出部と、
抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する算出部と、
算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行う解析部と、
前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する出力部と、を有し、
前記出力部は、
前記生体の睡眠状態に応じて、前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の各々について、出力/非出力を切り替える、脈波測定装置。
【請求項3】
生体から収集した生体情報から脈波形を抽出する抽出部と、
抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する算出部と、
算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行う解析部と、
前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する出力部と、を有し、
前記出力部は、
前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の各々について、前記生体の睡眠状態に応じて異なる色または濃淡で出力する、脈波測定装置。
【請求項4】
生体から収集した生体情報から脈波形を抽出する抽出部と、
抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する算出部と、
算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行う解析部と、
前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する出力部と、
前記生体の前記生体情報の収集に合せて収集した前記生体の動体情報を取得する取得部と、を有し、
前記抽出部は、
前記動体情報に基づいて、前記生体が激しい運動をしている期間に取得された脈波信号の脈波形は適切ではないと判断して、前記脈波形を除外する、脈波測定装置。
【請求項5】
前記出力部は、
前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを並べて出力する、請求項1~4のいずれか1項に記載の脈波測定装置。
【請求項6】
前記出力部は、
前記脈拍数に関する情報として、前記脈拍数の時間変化を表すパルスレートトレンドを出力する、請求項1~5のいずれか1項に記載の脈波測定装置。
【請求項7】
前記出力部は、
前記変動に関する情報として、複数の前記脈波の間隔に基づく脈波ローレンツプロットを出力する、請求項1~のいずれか1項に記載の脈波測定装置。
【請求項8】
前記出力部は、
前記脈波ローレンツプロットの原点から引いた45度線の両側に、当該45度線を中心とした正常領域と当該正常領域以外の異常領域とを区分する区分線を出力する、請求項に記載の脈波測定装置。
【請求項9】
前記出力部は、
前記脈波ローレンツプロットの分布が前記正常領域に収まっていない旨を報知する、請求項に記載の脈波測定装置。
【請求項10】
前記生体の前記生体情報の収集に合せて収集した前記生体の動体情報を取得する取得部と、
前記動体情報に基づいて、前記生体の状態を推定する状態推定部と、をさらに有する、請求項のいずれか1項に記載の脈波測定装置。
【請求項11】
生体から収集した生体情報から脈波形を抽出する手順(a)と、
抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する手順(b)と、
算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行う手順(c)と、
前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する手順(d)であって、前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の少なくともいずれかと併せて、睡眠および/または行動を含む前記生体の状態に関する情報を出力する手順(d)と、をコンピュータに実行させるための脈波測定プログラム。
【請求項12】
生体から収集した生体情報から脈波形を抽出する手順(a)と、
抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する手順(b)と、
算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行う手順(c)と、
前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する手順(d)であって前記生体の睡眠状態に応じて、前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の各々について、出力/非出力を切り替える手順(d)と、をコンピュータに実行させるための脈波測定プログラム。
【請求項13】
生体から収集した生体情報から脈波形を抽出する手順(a)と、
抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する手順(b)と、
算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行う手順(c)と、
前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する手順(d)であって前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の各々について、前記生体の睡眠状態に応じて異なる色または濃淡で出力する手順(d)と、をコンピュータに実行させるための脈波測定プログラム。
【請求項14】
生体の生体情報および動体情報を取得する手順(a)と、
前記生体から取得した生体情報から脈波形を抽出する手順(b)であって、前記動体情報に基づいて、前記生体が激しい運動をしている期間に取得された脈波信号の脈波形は適切ではないと判断して、前記脈波形を除外する手順(b)と、
抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する手順()と、
算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行う手順()と、
前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する手順()と、をコンピュータに実行させるための脈波測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波測定装置および脈波測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、医師が患者の心臓の状態を把握するために、心電計を使用した心電図測定が行われる。通常、心電図測定は、患者の症状から心疾患が疑われる場合等に行われる。心電計には、数分間程度の心電図を記録する通常の心電計の他に、長時間(例えば、1日)を通じて心電図を記録することが可能なホルター心電計がある(例えば、下記特許文献1を参照)。通常の心電図検査が病院等での短時間における心臓の状態を記録するのに対し、ホルター心電図検査は、睡眠時、運動時等の日常生活を通して長時間にわたり心電図を記録するために行われる。医師が、心疾患の診断を行う上で、心電図検査は必要不可欠な検査となっている。
【0003】
その一方で、心電図検査は、患者の体表に電極を装着するために、患者が衣服を脱ぎ着する必要があるので、時間や手間がかかる。さらに、ホルター心電図検査では、患者は、携帯用の心電計を長時間装着する必要があるため、身体的および心理的な負担が大きい。また、通常、心電図測定は、電極を患者の体表に装着し、測定結果の心電図波形を解釈する必要があるため、医師や看護士等の医療従事者の介入が必要となる。したがって、体温測定や血圧測定のように、一般家庭で心電図測定を手軽に行うことは難しい。
【0004】
このように、現状では、職場等の健康診断、あるいは患者が来院し、不調を訴える等しない限り、心電図検査を行う機会は少ない。このため、患者が来院しても、患者に自覚症状がない場合や症状が軽度である場合は、心電図検査が行われず、心疾患が見過ごされる可能性がある。また、来院する機会がない場合、心電図検査が行われることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-161324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものである。したがって、本発明の主たる目的は、心疾患の潜在的な患者に対して早期に心電図検査を受けることを促す脈波測定装置および脈波測定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記によって達成される。
【0008】
脈波測定装置は、抽出部、算出部、解析部、および出力部を有する。抽出部は、生体から収集した生体情報から脈波形を抽出する。算出部は、抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する。解析部は、算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行う。出力部は、前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する。
一態様では、前記出力部は、前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の少なくともいずれかと併せて、睡眠および/または行動を含む前記生体の状態に関する情報を出力する。
さらに、他の態様では、前記出力部は、前記生体の睡眠状態に応じて、前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の各々について、出力/非出力を切り替える。
さらに、他の態様では、前記出力部は、前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の各々について、前記生体の睡眠状態に応じて異なる色または濃淡で出力する。
さらに、他の態様では、前記生体の前記生体情報の収集に合せて収集した前記生体の動体情報を取得する取得部をさらに有し、前記抽出部は、前記動体情報に基づいて、前記生体が激しい運動をしている期間に取得された脈波信号の脈波形は適切ではないと判断して、前記脈波形を除外する。
【0009】
また、脈波測定プログラムは、以下の手順をコンピュータに実行させるように構成されている。生体から収集した生体情報から脈波形を抽出し、抽出された複数の前記脈波形から脈波の間隔および脈拍数を算出する。続いて、算出された複数の前記脈波の間隔に基づいて、前記脈波の間隔の変動に関する解析を行い、前記脈拍数に関する情報と前記変動に関する情報とを出力する。
一態様では、前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の少なくともいずれかと併せて、睡眠および/または行動を含む前記生体の状態に関する情報を出力する。
さらに、他の態様では、前記生体の睡眠状態に応じて、前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の各々について、出力/非出力を切り替える。
さらに、他の態様では、前記脈拍数に関する情報および前記変動に関する情報の各々について、前記生体の睡眠状態に応じて異なる色または濃淡で出力する。
さらに、他の態様では、生体の生体情報および動体情報を取得し、脈波形を抽出する際に、前記動体情報に基づいて、前記生体が激しい運動をしている期間に取得された脈波信号の脈波形は適切ではないと判断して、前記脈波形を除外する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脈波間隔の変動具合に応じて、被検者に心疾患の疑いがあるか否かを容易に切り分けることができるので、心疾患の潜在的な患者に対して早期の心電図検査を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る脈波測定システムのハードウェア構成を例示するブロック図である。
図2図1に示すCPUが脈波測定プログラムを実行することにより実現される脈波測定装置の主要な機能を例示する機能ブロック図である。
図3】一実施形態における脈波の測定方法の処理手順について説明するためのフローチャートである。
図4】抽出された脈波形を例示する模式図である。
図5】心拍と脈波との関係について例示する模式図である。
図6】健常者の脈波ローレンツプロットを例示するグラフである。
図7】心房細動の患者の脈波ローレンツプロットを例示するグラフである。
図8】心室性期外収縮の患者の脈波ローレンツプロットを例示するグラフである。
図9】脈波の測定結果の出力を例示する模式図である。
図10】脈波ローレンツプロットに閾値を設定する場合について例示するグラフである。
図11】パルスレートトレンドの代わりにパルスレートを出力する場合について例示する模式図である。
図12】脈波間隔の変動を表示する他の方法を例示するグラフである。
図13図12に示す方法の他の形態を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、図中、同一の部材には同一の符号を用いた。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
(一実施形態)
図1は、一実施形態に係る脈波測定システム100のハードウェア構成を例示するブロック図である。また、図2は、図1に示すCPU131が脈波測定プログラムを実行することにより実現される脈波測定装置130の主要な機能を例示する機能ブロック図である。
【0014】
本実施形態の脈波測定システム100は、被検者(生体)10の脈波を測定し、測定した脈波に基づいて、脈拍数に関する情報および脈波間隔の変動(またはバラツキとも表現される)に関する情報を生成して、ディスプレイやプリンタ等に出力する。
【0015】
本実施形態では、脈拍数に関する情報として、パルスレート(脈拍数)、または脈拍数の時間変化を表すパルスレートトレンドを例示して説明するが、これらに限定されない。また、脈波間隔の変動に関する情報は、例えば脈波ローレンツプロット、または脈波間隔の変動と測定時刻との関係を示すグラフを例示して説明するが、これらに限定されない。パルスレートトレンド、脈波ローレンツプロット等の詳細については後述する。
【0016】
医師をはじめとする医療従事者(以下、単に医師と記載する)は、脈波測定システム100から出力された脈拍数に関する情報および脈波間隔の変動に関する情報から被検者10の心臓の状態を推定できる。これにより、医師は、被検者10に心電図検査が必要であるか否かを判断することが可能となる。
【0017】
<脈波測定システム100>
脈波測定システム100は、生体情報検出センサ110、加速度センサ120、脈波測定装置130、および出力装置140を有する。
【0018】
生体情報検出センサ110は、被検者10の生体情報を取得するためのセンサである。生体情報検出センサ110は、例えば、動脈血酸素飽和度を測定するためのSpO2プローブであり、例えば被検者10の手の指や耳等に取り付けられる。
【0019】
生体情報検出センサ110は、赤色光または赤外光を所定の発光タイミングで被検者10に照射し、透過光を受光する。生体情報検出センサ110は、発光部および受光部を備え、脈波測定装置130に接続されている。
【0020】
発光部は、例えば、波長が660nm付近(赤色)または940nm付近(赤外)で発光する発光ダイオードを備え、被検者10の指先や耳等の生体表面に向けて発光する。受光部は、例えば、フォトダイオードを備え、血管および生体組織を透過した透過光を受光し、透過光に応じた電流信号に変換し、生体情報信号として、脈波測定装置130に出力する。
【0021】
なお、生体情報検出センサ110は、被検者10に赤色光または赤外光を照射し、血管および生体組織から反射された反射光を受光し、反射光に応じた電流信号を出力するように構成されてもよい。
【0022】
加速度センサ120は、被検者10の体に装着され、被検者10の動きに関する情報(以下、「動体情報」いう)を取得するためのセンサである。加速度センサ120によって収集された動体情報は、脈波測定装置130において、被検者10の生体情報と合せて保存され、被検者10の状態を推定するために用いられる。
【0023】
脈波測定装置130は、CPU(Central Processing Unit)131、ROM(Read Only Memory)132、RAM(Random Access Memory)133、HDD(Hard Disk Drive)134、および信号処理部135を有する。CPU131、ROM132、RAM133、およびHDD134は、コンピュータを構成する。
【0024】
CPU131は、ROM132またはHDD134に予め保存されているプログラムをRAM133にロードし、実行することにより、様々な機能を実現する。図2に示すように、CPU131は、脈波測定装置130を制御するためのプログラム(脈波測定プログラム)を実行することにより、抽出部201、算出部202、解析部203、出力部204、取得部205、および状態推定部206として機能する。これらの各機能部の詳細については後述する。
【0025】
ROM132は、不揮発性のメモリである。ROM132には、OS(Operating System)、脈波測定プログラム等のプログラムや、CPU131の演算処理に必要な各種のパラメーター等が保存されている。
【0026】
RAM133は、揮発性のメモリであり、CPU131による演算処理の結果や各種データを一時的に保存する。また、HDD134は、生体情報および動体情報のデータや、CPU131による演算処理の結果(例えば、脈波間隔等)を保存する。なお、HDD134は、脈波測定装置130の外側に配置された外付けのHDDでもよい。
【0027】
信号処理部135は、生体情報検出センサ110の受光部で生成された電流信号を電圧信号に変換したのち、生体情報検出センサ110の発光部における赤色光および赤外光の発光タイミングで、電圧信号を復調し、赤色光または赤外光の透過光または反射光信号を生成する。生成された透過光または反射光信号は、AD変換器によりディジタル信号に変換され、HDD134に時系列で保存される。
【0028】
生体情報検出センサ110が透過型のセンサである場合、発光部から被検者10に入射した赤色光または赤外光は、生体組織、静脈、および動脈を透過したのち受光部で受光される。被検者10の動脈の血液内には、酸化ヘモグロビンが存在しているため、心臓が収縮して動脈内の血液量が増加しているとき透過光信号は弱まる一方で、心臓が拡張して動脈内の血液量が減少しているとき透過光信号は強まる。したがって、透過光信号は、心臓の拍動による動脈内の血液量の変化に応じて変化する。
【0029】
また、信号処理部135は、加速度センサ120から受信した、被検者10の動体情報を、AD変換器によりディジタル信号に変換し、HDD134時系列で保存する。
【0030】
また、図示はされていないが、脈波測定装置130は、RTC(Real-Time Clock)を備えており、HDD134時系列で保存される各種のデータと測定時刻との対応関係を管理する。
【0031】
出力装置140は、脈拍数に関する情報と脈波間隔の変動に関する情報とを出力する。出力装置140は、例えばディスプレイを備え、脈拍数に関する情報と脈波間隔の変動に関する情報とをディスプレイの画面に表示する。病院などの医療現場においては、例えば、パーソナルコンピュータ用の大型のディスプレイが使用されうる。
【0032】
また、出力装置140は、例えばプリンタを備え、脈拍数に関する情報と脈波間隔の変動に関する情報とを用紙に印刷することもできる。さらに、出力装置140は、スピーカを備え、医師や被検者10に対して注意を喚起するために音(アラーム)または音声を出力することもできる。
【0033】
<脈波の測定方法>
図3図9を参照して、本実施形態における脈波の測定方法について説明する。図3は、本実施形態における脈波の測定方法の処理手順について説明するためのフローチャートである。図4は抽出された脈波形を例示する模式図であり、図5は心拍と脈波との関係について例示する模式図である。図6は、健常者の脈波ローレンツプロットを例示するグラフであり、図7は心房細動の患者の脈波ローレンツプロットを例示するグラフであり、図8は心室性期外収縮の患者の脈波ローレンツプロットを例示するグラフである。図6図8に示す脈波ローレンツプロットの縦軸および横軸の単位はミリ秒(ms)である。また、図9は、脈波の測定結果の出力を例示する模式図である。図9において、パルスレートトレンドの縦軸は拍数(回/分)であり、横軸は測定時刻(時)である。また、脈波ローレンツプロットの縦軸および横軸の単位は秒(s)であるが、後述の図6図8と同様にミリ秒(ms)でも構わない。
【0034】
図3に示すように、まず、脈波形を抽出する(ステップS101)。抽出部201は、被検者10の生体情報から脈波形を抽出する。被検者10の生体情報は、所定の収集期間(例えば、1日)に渡って収集され、被検者10の動体情報と紐付けられてHDD134に予め保存されている。
【0035】
また、抽出部201は、被検者10の動体情報に基づいて、生体情報を使用して抽出した脈波形の適否を判断し、脈波形として適さないものついては使用しないようにすることもできる。例えば、被検者10が激しい運動をしている期間に取得された脈波信号は、被検者10に対して心疾患が疑われるか否かを切り分ける上では、適切ではない可能性がある。このような場合、抽出部201は、脈波形として適さないと判断されたものについては除外することができる。さらに、抽出部201は、SpO2のSQI(Signal Quality Index)等の情報を使用し、脈波信号の質などを判断し、適さないものについては除外するように構成されてもよい。このように抽出部201を構成することにより、脈波ローレンツプロット等の精度を向上することができる。
【0036】
次に、脈波間隔および脈拍数を算出する(ステップS102)。図4に示すように、算出部202は、抽出された複数の脈波形から脈波間隔を算出する。脈波間隔は、各脈波のピークポイントを特定し、その時間間隔を計測することにより算出できる。ピークポイントの特定は、公知のピーク検出アルゴリズムより行われうる。図4には、脈波間隔として、5つの脈波の間隔PRn-1~PRn+3が算出された場合が例示されている。算出された脈波間隔は、時系列でHDD134に保存される。
【0037】
また、算出部202は、収集期間における一定の時間内(例えば1分間)の脈波の数(例えばピークポイントの数)をカウントすることにより脈拍数を算出する。算出部202は、上記一定の時間を含む所定時間における脈拍数の平均値、最大値、および最小値を算出し、HDD134に保存する。
【0038】
図3に戻り、脈波間隔の変動に関して解析する(ステップS103)。解析部203は、算出された脈波間隔PRn-1~PRn+3に基づいて、脈波間隔の変動に関する解析を行う。
【0039】
図5に示すように、脈波は、心臓から血液が送り出された結果、動脈に生じる拍動であるので、基本的に心拍(心電図のR波)と同期して発生する。健常者の心拍、すなわち心電図のR波の間隔(「RR間隔」とも呼ばれる)は、ほぼ一定のリズムで刻まれることが知られている。したがって、隣り合うR波同士の間隔の変動は少ない。
【0040】
これに対して、不整脈が発生した場合、RR間隔が短く、あるいは長くなることがある。図5に示す例では、後方拍と基準拍との間の間隔RRn+1は、前方拍と基準拍との間の間隔RRnよりも短くなっている。例えば、心室性期外収縮や上室性期外収縮が発生すると、RR間隔は急に縮小する場合がある。一方、例えば一時的に心拍が停止した場合、RR間隔は拡大する。
【0041】
また、不整脈によっては、心臓が不規則に拍動し、RR間隔が不定期になる場合がある。例えば、心房細動が発生した場合、RR間隔が不定期になることが知られている。
【0042】
上述のとおり、脈波は、基本的には心電図のR波と同期して発生するが、心室性期外収縮等の発生時は、心臓によって単位時間あたりに送り出される血液量である心拍出量が変化することにより、脈波が検出できない場合がある。
【0043】
その結果、健常者の脈波間隔は変動が小さいのに対し、不整脈がある患者の脈波間隔は、拡大または縮小したり、あるいは不定期となったりする等の特徴がある。
【0044】
図5に示すように、n番目の脈波とその1つ前の脈波との間の間隔をPRn、n番目の脈波とその1つ後の脈波との間の間隔をPRn+1とする。解析部203は、横軸(X軸)にPRnの値を、縦軸(Y軸)にPRn+1の値をとってプロットする処理を、nを1つずつ増加させながらN-1(N:データ数)まで繰り返すことにより、脈波ローレンツプロットを生成する。
【0045】
例えば、図6に例示する脈波ローレンツプロット210では、脈波間隔の変動が小さいため、脈波ローレンツプロット210の原点から引いた45度線上にプロットが集中している。健常者では、通常、プロットの分布212が概ね45度線211を中心にして狭い範囲に収まることが多い。
【0046】
また、脈波間隔が狭いほど脈拍数が高く、広いほど脈拍数が低くなるので、プロットが原点に近い領域に多く分布している場合は頻脈の傾向が強く、原点から離れた位置に多く分布している場合は除脈の傾向が強いことを表す。なお、健常者でも、運動時、安静時、および睡眠時のどの状態にあるかよって脈拍数は増減するため、45度線211上におけるプロットの分布の位置(原点からの距離)のみで頻脈/除脈の判定を行うことは難しい。しかし、プロットの分布の位置に明らかな偏りがある場合は、被検者10に心疾患がある可能性があるため、被検者10に心電図検査を受けることを促すように、脈波測定装置130を構成する。
【0047】
一方、図7に例示する脈波ローレンツプロット220では、45度線221を中心にしてプロットの分布222が概ねひとまとまりになっているものの、プロットの分布222は、45度線221から大きく広がっている。このようなプロットの分布222は、例えば心房細動の患者の脈波について見られる。
【0048】
また、図8に例示する脈波ローレンツプロット230では、プロットの分布232は、45度線231を中心にして原点に近い方から遠い方に向けて広がり、枝分かれする形態を有する。プロットの分布232は、45度線231から大きく広がっている。このようなプロットの分布232は、例えば心室性期外収縮の患者の脈波について見られる。
【0049】
このように、脈波ローレンツプロット210,220,230により、医師は、プロットの分布212,222,232の広がり具合および原点からの位置に基づいて、被検者10の心臓の状態を推測できる。
【0050】
再び図3に戻り、脈拍数に関する情報と脈波間隔の変動に関する情報とを出力する(ステップS104)。図9に示すように、出力部204は、脈拍数に関する情報として、縦軸および横軸にそれぞれ脈波数および測定時刻をとったパルスレートトレンド310を出力装置(例えば、ディスプレイ)140に出力する。出力部204は、脈拍数の最大値311、最小値312、および平均値313を出力する。
【0051】
なお、必要に応じて、脈拍数の最大値311、最小値312、および平均値313の少なくともいずれかを出力することが可能である。
【0052】
また、パルスレートトレンド310では、1日にわたって連続的(1分毎)に脈拍数のプロットを出力する場合について例示されている。しかし、本実施形態は、このような場合に限定されず、ウィンドウ300の大きさや、パルスレートトレンド310を確認する医師などの確認の都合に合わせて、脈拍数のプロットの出力間隔(例えば、5分毎など)を適宜変更することもできる。
【0053】
さらに、医師が脈拍数の大まかな傾向をつかむため、出力部204は、隣接するプロットを線分で結び、折れ線グラフとして出力することもできる。例えば、ウィンドウ300の大きさが限られている環境で、医師が1日のうちの朝、昼、夕、および晩の各時間帯における脈拍数を大まかに知ることができれば十分である場合などに有効である。
【0054】
パルスレートトレンド310は、心拍数の時間変化を示すハートレートトレンドと類似し、医師は、パルスレートトレンド310により、心臓の状態(例えば、頻脈や除脈等)を長期間(例えば、24時間)にわたり、時間の経過を追って確認できる。
【0055】
また、出力部204は、脈波間隔の変動に関する情報として、脈波ローレンツプロット320を出力装置140に出力する。図9に示す例では、パルスレートトレンド310および脈波ローレンツプロット320は、ディスプレイの画面のウィンドウ300内に上下に並べて表示されている。
【0056】
脈波ローレンツプロット320は、それぞれ全時間(例えば、24時間)、覚醒時、および睡眠時に対応する脈波ローレンツプロット321,322,323を有する。全時間は、覚醒時および睡眠時の合計時間である。
【0057】
このように、脈波ローレンツプロット320を用いて、脈波間隔の変動を表示することにより、医師は、被検者10に心疾患の疑いがあるか否かを容易に切り分けることができる。したがって、心疾患の潜在的な患者に対して早期の心電図検査を促すことができる。
【0058】
また、覚醒時の脈波ローレンツプロット322と睡眠時の脈波ローレンツプロット323とが別々に出力されるので、医師が、覚醒/睡眠と、心疾患との関連性を把握する上で有効である。
【0059】
また、パルスレートトレンド310と脈波ローレンツプロット320とを並べて(同時に)表示することにより、医師は、脈拍数を長期間にわたり確認できるので、頻脈や除脈等の有無を容易に推測できる。これにより、医師は、一時的な脈波間隔の変動による不整脈のみならず、心臓の全体的な動きを推測することも可能である。
【0060】
また、パルスオキシメータ、血圧計、睡眠時無呼吸症候群の検査装置等、通常、心電図を記録しない検査装置に脈波測定装置130を搭載することにより、医師は、心臓の状態を推定することが可能となる。
【0061】
したがって、医師は、被検者10に心疾患の疑いがある場合に、早期の心電図検査を促すことができる。
【0062】
(変形例)
以上のように、本実施形態の脈波測定装置130は、パルスレートトレンド310および脈波ローレンツプロット320を同時に出力することにより、医療現場において、医師が被検者10の心臓の動きを早期に確認することを可能にするものである。
【0063】
以下では、医師が被検者10の心臓の動きをより良く把握できるようにするため、パルスレートトレンド310および脈波ローレンツプロット320に補助的な情報を付加する場合について説明する。また、脈拍数に関する情報として、パルスレートトレンド310の代わりにパルスレートを表示する場合と、脈波間隔の変動に関する情報として、脈波ローレンツプロット320の代わりに、脈波間隔の変動と測定時刻との関係を示すグラフを出力する場合とについて説明する。
【0064】
図10は、脈波ローレンツプロットに閾値を設定する場合について例示するグラフである。図10に示す脈波ローレンツプロットの縦軸および横軸の単位はミリ秒(ms)である。また、図11は、パルスレートトレンドの代わりにパルスレートを出力する場合について例示する模式図である。図11に示す脈波ローレンツプロットの縦軸および横軸の単位は秒(s)である。
【0065】
脈拍数は、被検者10の状態(例えば、覚醒/睡眠、安静、運動等)に応じて変化しうる。そこで、例えばディスプレイに表示されている被検者10の脈拍数が、被検者10のどのような状態における場合のものであるのかについて医師に提示することにより、医師が被検者10の心臓の状態を把握する助けとなりうる。
【0066】
より具体的には、パルスレートトレンド310および脈波ローレンツプロット320の少なくともいずれかの表示に併せて、被検者10の状態に関する情報(覚醒/睡眠、安静、運動等)を出力するように出力部204を構成する。例えば、パルスレートトレンド310の表示に併せて、被検者10が覚醒/睡眠している時間帯や、行動している時間帯を示す状態表示領域330を配置することができる。被検者10の状態に関する情報が表示されることにより、医師は、被検者10の状態を加味して脈拍数の評価を行うことができる。
【0067】
状態表示領域330は、脈波測定装置130により自動的に生成することができる。取得部205は、被検者10の生体情報の収集に合せて収集した動体情報をHDD134から取得する。状態推定部206は、被検者10の動体情報に基づいて、生体情報の収集時における被検者10の状態を推定する。
【0068】
状態推定部206は、例えば、動体情報として、被検者10から検出された加速度の大きさ、方向、検出の継続時間等に応じて、被検者10が睡眠状態であるか、あるいは覚醒状態であるかを判断する。
【0069】
また、状態推定部206は、動体情報に基づいて、被検者10の行動を推定し、推定結果を状態表示領域330に示すように構成されうる。例えば、状態推定部206は、被検者10が覚醒状態であると判断された時間帯において、被検者10の加速度の変化のパターンが、人が歩行しているときの加速度の変化のパターンに対応する場合、被検者10が歩行中であると判断する。また、被検者10が睡眠状態であると判断された時間帯において、一時的に加速度が検出されている場合、加速度が検出されている継続時間から被検者10がトイレ等で一時的に目を覚ましていた状態であると判断する。
【0070】
なお、脈波測定装置130は、医師や看護士が手入力した、被検者10の起床時刻および就寝時刻に関する情報等に基づいて、被検者10の状態を推定し、状態表示領域330を生成することもできる。
【0071】
また、図9に示すように、脈波ローレンツプロット321,322,323のグラフには、それぞれ「全時間」、「覚醒時」、および「睡眠時」のタイトルが付加されうる。
【0072】
また、出力部204は、被検者10の状態に応じて、パルスレートトレンド310および脈波ローレンツプロット320の各々について、出力/非出力を切り替えることもできる。例えば、出力部204は、パルスレートトレンド310および脈波ローレンツプロット320の両方について、「睡眠時」のみ出力することができる。あるいは、出力部204は、脈波ローレンツプロット320については「覚醒時」のみ出力することもできる。これにより、医師は、被検者10に心疾患が疑われるか否かを判断する上で必要となる情報のみを選択的に取得できる。例えば、睡眠時無呼吸症候群との関連では、覚醒時よりも睡眠時の心臓の状態を重点的に確認する必要があり、医師は、睡眠時の心臓の状態を選択的に確認できる。
【0073】
また、出力部204は、パルスレートトレンド310および脈波ローレンツプロット320の各々について、被検者10の状態に応じて異なる形態で出力することもできる。例えば、出力部204は、覚醒時と睡眠時とで色または濃淡を変えて出力することができる。例えば、覚醒時と睡眠時とで異なる色または濃淡でパルスレートトレンド310および脈波ローレンツプロット320のプロットを出力することにより、両者の識別が容易になる。
【0074】
さらに、出力部204は、医師や被検者10に対するコメント340を出力することもできる。例えば、出力部204は、パルスレートトレンド310または脈波ローレンツプロット320の分布が全体として所定の範囲内に入っていない場合、「心電図検査を受けることをお勧めします。」のようなメッセージを出力できる。
【0075】
例えば、脈波ローレンツプロット320の分布に対して、上限および下限を設定し、脈波ローレンツプロットの分布が全体として上限から下限の範囲の領域(以下、「正常領域」という)に収まっているか否かを判定する。
【0076】
本実施形態では、例えば、プロットの全数に対する所定割合(例えば、90%)以上が正常領域内に入っている場合に、脈波ローレンツプロット320が全体として正常領域に収まっていると判定する。図10に示すように、閾値としての上限および下限は、脈波ローレンツプロットの原点から引いた45度線403の両側に出力された、正常領域と正常領域以外の異常領域とを区分する2本の区分線401,402にそれぞれ対応する。閾値を出力することにより、医師は、脈波ローレンツプロット320における正常領域および異常領域を明確に区別できる。
【0077】
また、出力部204は、脈波ローレンツプロット320の分布が正常領域に収まっていない場合、アラーム音や音声を出力装置140のスピーカに出力して医師や被検者10に注意を喚起することにより、異常を報知するように構成することもできる。
【0078】
このように、脈波測定装置130は、コメントやアラーム音により、被検者10に心電図検査を促す構成を有することにより、医療現場のみならず、家庭において使用することも可能である。
【0079】
より具体的には、脈波測定装置130は、脈波を測定する医療機器、例えば、家庭用のパルスオキシメータ、血圧計等に搭載することができる。パルスオキシメータに搭載される場合、上述のとおり、生体情報検出センサ110としてSpO2プローブが使用され、血圧計に搭載される場合、生体情報検出センサ110としてカフが使用される。
【0080】
また、出力装置140としては、パルスオキシメータ、血圧計等の小型のディスプレイが使用されうる。また、出力装置140として、遠隔地の病院などにある大型のディスプレイや、プリンタを使用してもよい。この場合、脈波測定装置130は、有線/無線の通信手段やネットワークを通じて、パルスレートトレンド310および脈波ローレンツプロット320等を含む画像データを、遠隔地の出力装置140に送信する。
【0081】
また、出力装置140として、家庭用のパルスオキシメータや血圧計に搭載されている小型のディスプレイを使用する場合、図11に示すように、ディスプレイの画面に表示される情報量の多いパルスレートトレンド310の代わりに、情報量の少ないパルスレート410を表示するように脈波測定装置130を構成してもよい。あるいは、表示領域のスクロールによって、パルスレートトレンド310を部分的に表示するように構成してもよい。
【0082】
脈波測定装置130は、家庭用の血圧計に搭載される場合、血圧測定時の脈拍数の集計時に、上述した脈波の測定方法に沿って脈波間隔の変動を算出し、例えばパルスレート410および脈波ローレンツプロット420を出力する。
【0083】
また、脈波間隔の変動の算出結果に基づいて、ユーザー(被検者10)の心疾患の可能性を推定する。一般家庭では、ユーザーがパルスレート410や脈波ローレンツプロット420から心臓の状態を読み取るのは困難である場合が多い。そのため、脈波測定装置130は、心疾患の可能性が推定された場合、上述のように、ユーザーに心電図検査を受けることを勧めるコメント(図11においては不図示)やアラーム音を出力する。
【0084】
また、脈波測定システム100が、病院など医療現場において使用される場合、脈波間隔の変動に関する情報として、脈波ローレンツプロットの代わりに、脈波間隔の変動を表示する他の方法を使用することもできる。
【0085】
図12は脈波間隔の変動を表示する他の方法を例示するグラフであり、図13図12に示すグラフの他の形態を例示するグラフである。図12および図13において、縦軸は脈波間隔(s)であり、横軸は測定時刻(時)である。
【0086】
図12に示すグラフ500では、測定時刻(例えば、1分毎)について所定の時間範囲(例えば、1分間)が設定され、各測定時刻に対して、時間範囲内の全ての脈波間隔の値について、対応する測定時刻の位置にプロットされている。
【0087】
例えば、15時00分から15時01分までの1分間における全ての脈波間隔のそれぞれの値について、横軸の15時00分に対応する位置にプロットされている。同様に、15時01分から15時02分までの1分間における全ての脈波間隔のそれぞれの値について、横軸15時01分に対応する位置にプロットされている。
【0088】
各時刻において、脈波間隔の変動が大きい場合、プロットは縦軸方向の広い範囲にわたって分布し、脈波間隔の変動が小さい場合、プロットは縦軸方向の狭い範囲に分布する。
【0089】
例えば、符号501で示される15時前頃から19時半頃までの時間帯では、脈波間隔の変動が大きく、符号502で示される19時半頃から翌日の14時半頃までの時間帯では、脈波間隔の変動が小さくなっている。
【0090】
このように、図12に示すグラフ500によれば、医師は、脈波間隔の変動と測定時刻との関係を容易に確認できる。
【0091】
なお、時間範囲は測定時刻に対して一定であるので、脈波間隔が狭い(脈拍数が大きい)ほど、時間範囲のプロット数は多くなり、脈波間隔が広い(脈拍数が小さい)ほど、時間範囲のプロット数は少なくなる。
【0092】
また、図13に示すように、縦軸の脈波間隔を所定の区分時間(例えば、10[ms])で区分し、各々の区分に該当する脈波間隔の数に応じて、プロットの表示色が異なるようにしてもよい。例えば、グラフ510では、区分内の脈波の数が5未満である場合は青色、5以上10未満である場合は水色、10以上20未満である場合は黄色、20以上の場合は赤色のように、プロットの表示色が異なる。
【0093】
図13に示すグラフ510によれば、医師は、図12のグラフ500の効果に加えて、どのくらいの長さの脈波間隔がどのくらいの数だけあるのかを一目で確認できる。
【0094】
以上のとおり、実施形態において、本発明の脈波測定装置および脈波測定プログラムを説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略できることはいうまでもない。
【0095】
たとえば、生体情報検出センサ110および加速度センサ120は、脈波測定装置130に接続するものとしたが、脈波測定装置130内に搭載されていてもよい。
【0096】
また、出力装置140は、脈波測定装置130に接続するものとしたが、脈波測定装置130内に搭載されていてもよい。
【0097】
また、上述の例では、生体が人(被検者10)である場合を想定して説明したが、生体は人である場合限定されることはなく、生体は、犬や猫等の動物であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
100 脈波測定システム、
110 生体情報検出センサ、
120 加速度センサ、
130 脈波測定装置、
131 CPU、
132 ROM、
133 RAM、
134 HDD、
135 信号処理部、
140 出力装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13