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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】静止誘導機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/38 20060101AFI20221011BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20221011BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H01F27/38
H01F30/10 K
H01F37/00 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019160271
(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公開番号】P2021040024
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中ノ上 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝平
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-182213(JP,A)
【文献】特開昭59-016317(JP,A)
【文献】特開2015-207659(JP,A)
【文献】国際公開第2005/041224(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/093419(WO,A1)
【文献】特開2019-004056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24-27/26
H01F 27/33-27/42
H01F 30/00-38/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鉄心と、当該主鉄心に巻き回した主巻線とを有する静止誘導機器であって、
装置の電源を生成する電源生成手段を備え、
前記電源生成手段は、電源用鉄心と、当該電源用鉄心に巻き回した電源用巻線を有し、
前記電源用鉄心は、磁性材料から成る板状部材であり、
前記電源用鉄心は、前記主鉄心の磁束の一部が流れるように設置されており、
板状部材である前記電源用鉄心を前記主鉄心の周りに重ね、固定用バンドで固定したことを特徴とする静止誘導機器。
【請求項2】
主鉄心と、当該主鉄心に巻き回した主巻線とを有する静止誘導機器であって、
装置の電源を生成する電源生成手段を備え、
前記電源生成手段は、電源用鉄心と、当該電源用鉄心に巻き回した電源用巻線を有し、
前記電源用鉄心は、磁性材料から成る板状部材であり、
前記電源用鉄心は、前記主鉄心の磁束の一部が流れるように設置されており、
板状部材である前記電源用鉄心は、前記主鉄心の周りの全周に渡って重ねられていることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の静止誘導機器において、
前記電源用鉄心と前記電源用巻線との間に絶縁物を挟んでいることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の静止誘導機器において、
前記電源用鉄心と前記主鉄心とは、絶縁されていることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の静止誘導機器において、
前記主鉄心は、1つの鉄心から構成され、
前記主巻線は、1つの主鉄心の2つの磁脚のそれぞれに巻き回されていることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項6】
請求項1または2に記載の静止誘導機器において、
前記主鉄心は、2つの内側鉄心と、2つの内側鉄心の周りの外側鉄心から構成され、
前記主巻線は、3つの磁脚のそれぞれに巻き回されていることを特徴とする静止誘導機器。
【請求項7】
請求項1または2に記載の静止誘導機器において、
前記静止誘導機器は、変圧器またはリアクトルであることを特徴とする静止誘導機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器、リアクトル等の静止誘導機器に関し、特に静止誘導機器から独立した電源が必要な、若しくは独立した電源を有する方が好ましい静止誘導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
静止誘導機器、例えば変圧器において、変圧器による電源供給以外にも付属装置などの他の装置用に独立した電源を必要とする場合がある。例えば特許文献1では、柱上変圧器が受電する系統電圧や、需要家に配電する電力量をセンサにより計測し、その信号を逐次有線、無線通信手段により送信し、電力系統の高精度な監視、維持を実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9263182号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静止誘導機器、例えば変圧器において、変圧器による電源供給以外にも付属装置などの他の装置用に独立した電源を必要とする場合がある。その場合、他機器や電源から電源供給する方法が考えられるが、近くに適当な機器や電源があるとは限らない。変圧器の二次側から直接電源を供給する方法が考えられるが、この電源は変圧器の二次側を直接利用しているため保護が困難であり、また、使用電力分だけ本来二次側から使用する電力容量が少なくなる。また、変圧器鉄心に三次巻線を設け、一次巻線、二次巻線から独立した電源を設けることは可能であるが、三次巻線を設けるために鉄心を専用に設計する必要がある。また、鉄心の断面積を変えず、鉄心、脚部、ヨーク部を長くした場合鉄心の磁路長が増大し、鉄損が増大する。
【0005】
特許文献1には、柱状変圧器にセンサ手段や通信手段を設けることが開示されているが、それらの具体的な電源の供給方法は記載されていない。
【0006】
本発明は、静止誘導機器の付属装置などの他の装置を動作させるための電源を、静止誘導機器の構成を大幅に変更することなく、静止誘導機器自体から低コストで安全に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明の「静止誘導機器」の一例を挙げるならば、
主鉄心と、当該主鉄心に巻き回した主巻線とを有する静止誘導機器であって、装置の電源を生成する電源生成手段を備え、前記電源生成手段は、電源用鉄心と、当該電源用鉄心に巻き回した電源用巻線を有し、前記電源用鉄心は、磁性材料から成る板状部材であり、前記電源用鉄心は、前記主鉄心の磁束の一部が流れるように設置されており、板状部材である前記電源用鉄心を前記主鉄心の周りに重ね、固定用バンドで固定したことを特徴とする。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれは、静止誘導機器の付属装置などの他の装置を動作させるための電源を、静止誘導機器の構成を大幅に変更することなく、静止誘導機器自体から低コストで安全に供給することができる。
【0009】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】単相変圧器を例とした本発明の概念図である。
図2】三相変圧器を例とした本発明の概念図である。
図3】実施例1の電源生成手段の一例を示す図である。
図4】実施例1の静止誘導機器の、電源生成手段取り付け前の取付説明図である。
図5】実施例1の静止誘導機器の、電源生成手段取り付け後の取付説明図である。
図6】実施例1の静止誘導機器の、電源生成手段固定後の取付説明図である。
図7】実施例2の静止誘導機器の取付構造例を示す図である。
図8】実施例3の静止誘導機器の取付構造例を示す図である。
図9】実施例4の静止誘導機器の取付構造例を示す図である。
図10】実施例5の静止誘導機器の取付構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および図2に、本発明の静止誘導機器の概念図を示す。図1は、単相変圧器を例とした本発明の概念図を、図2は、三相変圧器を例とした本発明の概念図を示す。本発明は、電源生成手段により、三次巻線を設けていない主鉄心に後付けで磁束の流れを作り、その新しく作った磁束を利用して三次巻線から独立した電源を供給する。磁束の流れを作る方法としては、主鉄心と同様のまたは異なる磁性材料から成る電源用鉄心を主鉄心に取り付ける。ただし、主鉄心、もしくは取り付ける電源用鉄心に絶縁被膜がないと、主鉄心と電源用鉄心間が絶縁されていない場合は、局所過熱により損失が発生する恐れがあるため、絶縁物を間に挟む。
【0012】
図1において、単相変圧器は矩形状の主鉄心1と、主鉄心1に巻き回した2つの主巻線2から構成されており、主鉄心1の一部に電源生成手段10が取り付けられている。電源生成手段10は、コ字状の電源用鉄心11と、それに巻き回した電源用巻線12から構成され、電源用鉄心11は主鉄心1の磁束の一部が流れるように主鉄心1に取り付けられる。
【0013】
図2において、三相変圧器は、主鉄心を構成する2つの矩形状の内側鉄心1aおよび内側鉄心を取り囲む外側鉄心1bと、内側鉄心1aと外側鉄心1bの3つの脚部に巻き回した3つの主巻線2aから構成されており、外側鉄心1bの一部に電源生成手段10が取り付けられている。電源生成手段10は、コ字状の電源用鉄心11と、それに巻き回した電源用巻線12から構成され、電源用鉄心11は外側鉄心1bの磁束の一部が流れるように取り付けられる。
【0014】
図1および図2において、電源用鉄心11に静止誘導機器の磁束の一部が流れることにより、電源用巻線12に電圧が発生する。
【0015】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1の変圧器を、図3から図6を用いて説明する。実施例1は、単相変圧器に係るものである。
【0017】
図3に実施例1の電源生成手段10を示す。電源生成手段10は、磁束を通すための電源用鉄心11に三次巻線となる電源用巻線12を巻いたものである。電源用鉄心11は、例えば電磁鋼板やアモルファス磁性合金から成る薄板状磁性材料を積層して構成される。電源用鉄心11は、変圧器の主鉄心1に流れている磁束を流す必要があるため、透磁率は主鉄心1の透磁率と同等以上の磁性材料であることが好ましい。また、電源用鉄心11に電源用巻線12を巻く際は、電源用鉄心11と電源用巻線12との間に絶縁紙13を入れる。これは、電源用鉄心11の端面部で電源用巻線12が傷付き短絡することを防止するためのものである。
【0018】
図4、5、6に、巻鉄心構造の静止誘導機器への電源生成手段の設置方法の一例を示す。図4は電源生成手段10取り付け前の状態を、図5は電源生成手段10取り付け後の状態を示す。また、図6は電源生成手段10の固定後の状態を示す。
【0019】
巻鉄心の主鉄心1を固定用バンドで固定する方法と同要領で、電源生成手段の電源用鉄心11に固定用バンド21を巻き付けて主鉄心1に固定する。この時、電源用巻線12を傷付けないように固定用バンド21と電源用巻線12間に絶縁物を入れる。電源用鉄心11と主鉄心1との間が絶縁されていない場合は、絶縁物により絶縁することで、局所加熱を押さえることができる。また、磁束を安定して電源用鉄心11に流すため電源用鉄心11の面と主鉄心1の面の重なりを大きくする。また、固定用バンド21での固定をより確実にするために主鉄心1のR部(肩部)まで重なる方が好ましい。
【0020】
図6に示すように、固定用バンド21での固定後は中身固定金具22で上下を覆い、電源用巻線12の電線は主鉄心のR部と中身固定金具22との間を通す。この時、中身固定金具22の内側には電源用巻線12の短絡防止ため、絶縁物を挟むことが好ましい。
【0021】
本実施例によれば、変圧器の鉄心-コイル中身構造を変更することなく、また、鉄心-コイル中身構造の幅、奥行き寸法が増大することなく、また、一次、二次巻線の結線作業を変更することなく、電源生成手段を変圧器に取り付けることが可能となる。また、既存の変圧器に後付けによって、電源生成手段を取り付けることも可能である。そして、変圧器の付属装置などの他の装置を動作させるための電源を、静止誘導機器自体から低コストで安全に供給することができる。
【0022】
更に、電源用鉄心を取り付けることにより、変圧器のヨーク部の鉄心断面積が増大するため、鉄損の増大を抑制、若しくは、鉄損を低減することができる。
【実施例2】
【0023】
図7に、本発明の実施例2の静止誘導機器を示す。図7は、電源生成手段10の取り付け途中を示す図である。実施例2は、実施例1において電源用鉄心11の長さを延長し、電源用鉄心11を変圧器鉄心1の最外周にほぼ全周に巻き付けるものである。これにより、電源用鉄心11が実施例1と比べてより安定して固定され、且つ、磁束が電源用鉄心11により確実に入り、且つ、鉄損低減効果が大きくなる。
【実施例3】
【0024】
図8に、本発明の実施例3の静止誘導機器を示す。実施例3は、三相三脚型変圧器に電源生成手段を取り付けたものである。
【0025】
三相三脚型変圧器は、2つの矩形状の内側鉄心1a、および2つの内側鉄心1aを取り囲む外側鉄心1bから成る三相主鉄心と、内側鉄心1aと外側鉄心1bの3つの脚部に巻き回した3つの主巻線2aから構成されている。電源用鉄心11と電源用巻線12から成る電源生成手段10は、外側鉄心1bの上下のR部(肩部)に渡って取り付けられている。外側鉄心1bを流れる磁束の一部が電源用鉄心11に流れることにより、電源用巻線12に電圧を発生する。
【0026】
本実施例によればは、三相三脚型静止誘導機器の鉄心-コイル中身構造を変更することなく、また、鉄心-コイル中身構造の高さ、奥行き寸法が増大することなく、また、一次、二次巻線の結線作業を変更することなく、電源生成手段を取り付けることが可能となる。また、既存の変圧器に後付けによって、電源生成手段を取り付けることも可能である。そして、変圧器の付属装置などの他の装置を動作させるための電源を、静止誘導機器自体から低コストで安全に供給することができる。
【0027】
更に、電源用鉄心を取り付けることにより、脚部の鉄心断面積が増大するため、鉄損の増大を抑制、若しくは、鉄損を低減することができる。
【実施例4】
【0028】
図9に、本発明の実施例4の静止誘導機器を示す。実施例4は、三相三脚型変圧器の鉄心ヨーク部の奥行方向の側部に電源生成手段10を取り付けた構造である。
【0029】
電源用鉄心11と電源用巻線12から成る電源生成手段10は、外側鉄心1bのヨーク部の側部に渡って取り付けられている。外側鉄心1bを流れる磁束の一部が電源用鉄心11に流れることにより、電源用巻線12に電圧を発生する。
【0030】
本実施例によれば、三相三脚型静止誘導機器の鉄心-コイル中身構造を変更することなく、また、鉄心-コイル中身構造の高さ、幅、奥行き寸法が増大することなく、電源生成手段を取り付けることが可能となる。そして、変圧器の付属装置などの他の装置を動作させるための電源を、静止誘導機器自体から低コストで安全に供給することができる。
【0031】
また、三相巻線2aの上部に電源生成手段10を配置することにより、実施例3に比べて、静止誘導機器の外形寸法が大きくなることが少ない。なお、電源生成手段10は三相巻線2aの下部に配置しても良い。
【実施例5】
【0032】
図10に、本発明の実施例5の静止誘導機器を示す。実施例5は、三相三脚型変圧器の鉄心R部(肩部)の横に電源生成手段10を取り付けた構造である。
【0033】
電源用鉄心11と電源用巻線12から成る電源生成手段10は、外側鉄心1bのR部(肩部)に取り付けられている。外側鉄心1bを流れる磁束の一部が電源用鉄心11に流れることにより、電源用巻線12に電圧を発生する。
【0034】
本実施例によれば、三相三脚型静止誘導機器の鉄心-コイル中身構造を変更することなく、また、鉄心-コイル中身構造の高さ、幅、奥行き寸法が増大することなく、また、一次、二次巻線の結線作業を変更することなく、電源生成手段を取り付けることが可能となる。そして、静止誘導機器の付属装置などの他の装置を動作させるための電源を、静止誘導機器自体から低コストで安全に供給することができる。
【0035】
なお、何れの実施例においても主鉄心1、若しくは取り付ける電源用鉄心11に絶縁被膜がなく、主鉄心1と電源用鉄心11間が絶縁されていない場合は、局所過熱により損失が発生する恐れがあるため、絶縁物を間に挟む。
【0036】
各実施例では、変圧器を例に説明したが、本発明はリアクトルを含む静止誘導機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1:単相主鉄心
1a:三相内側鉄心
1b:三相外側鉄心
2:単相主巻線
2a:三相主巻線
10:電源生成手段
11:電源用鉄心
12:電源用巻線
13:絶縁物
21:固定用バンド
22:固定金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10