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特許7155084有害な危険物の漏れ防止構造及び有害な危険物が収納された金属製の地下貯蔵タンクを撤去する方法
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  • 特許-有害な危険物の漏れ防止構造及び有害な危険物が収納された金属製の地下貯蔵タンクを撤去する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】有害な危険物の漏れ防止構造及び有害な危険物が収納された金属製の地下貯蔵タンクを撤去する方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/92 20060101AFI20221011BHJP
   B65D 88/76 20060101ALI20221011BHJP
   B65D 90/24 20060101ALI20221011BHJP
   E04H 7/18 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
E04B1/92
B65D88/76
B65D90/24
E04H7/18 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019167508
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021042639
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592141927
【氏名又は名称】JFE環境テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】梅本 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】大井 一彦
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-218086(JP,A)
【文献】特開2009-113859(JP,A)
【文献】特開2006-008235(JP,A)
【文献】特開2018-127842(JP,A)
【文献】米国特許第5833390(US,A)
【文献】米国特許第4787772(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/92
E04H 7/18
E04G 23/08
B65D 88/76
B65D 90/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害な危険物が収納される金属製の地下貯蔵タンクが、地盤面下のコンクリート製のタンク室の内部に設置され、
該コンクリート製のタンク室の壁面に沿って外殻筐体が設けられ、
前記金属製の地下貯蔵タンクと前記外殻筐体との間に、人間が入って作業できる空間が設けられることを特徴とする有害な危険物の漏れ防止構造。
【請求項2】
有害な危険物が、PCBであることを特徴とする請求項1記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
【請求項3】
前記タンク室の壁面と、前記外殻筐体との間に間隙を設け、該間隙に乾燥砂が充填されていることを特徴とする請求項1又は2記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
【請求項4】
内部に有害な危険物が収納された前記金属製の地下貯蔵タンクに、複数の配管が接続され、
該複数の配管の一つは、該金属製の地下貯蔵タンクに外部から有害な危険物を収納する配管であり、該複数の配管の他の一つは、該金属製の地下貯蔵タンクから有害な危険物を外部に排出する配管であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
【請求項5】
該金属製の地下貯蔵タンクに外部から有害な危険物を収納する配管、及び該金属製の地下貯蔵タンクから有害な危険物を外部に排出する配管は、コンクリート製の前記タンク室と前記外殻筐体に、各々設けられた貫通孔を介して、外部配管と接続しており、該各々の貫通孔の周囲は危険物の蒸気を漏洩しないようにシールされていることを特徴とする請求項記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
【請求項6】
前記金属製の地下貯蔵タンクと前記外殻筐体との間の空間は、吸引配管に接続され、該吸引配管は、該空間の外部に設置された吸引手段に接続され、前記空間内を負圧に維持することを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
【請求項7】
前記金属製の地下貯蔵タンクと前記外殻筐体との間の空間は、給気配管に接続され、該給気配管は、該空間の外部に設置された送風手段に接続されることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の有害な危険物の漏れ防止構造における有害な危険物が収納される金属製の地下貯蔵タンクを撤去する方法であって、
前記タンク室の上面及び前記外殻筐体の上面を撤去し、前記金属製の地下貯蔵タンクを上方から吊り上げて取り出すことを特徴とする有害な危険物が収納される金属製の地下貯蔵タンクを撤去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な危険物の漏れを高度に防止可能であり、漏れ箇所があっても容易に目視確認できる有害な危険物の漏れ防止構造、及び、有害な危険物が収納された金属製の地下貯蔵タンクを安全に撤去可能な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、地下貯蔵タンクに関しては、地盤面下のタンク室に設置するか、又は2重殻タンク構造、漏れ防止構造とすることが原則であると記載している。また非特許文献1は、地下貯蔵タンクとタンク室の間隔に関して、政令を引用し、鋼製の地下貯蔵タンクの外側に、コンクリート製のタンク室を設け、さらにその空間を乾燥砂で充填するようにすることが規定されている旨言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】東京法令出版、東京消防庁監修「危険物施設基準の早わかり」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来手法を示す図6に基づいて説明すると、70はコンクリート製のタンク室であり、タンク室70の内部に、有害な危険物を収納してなる地下貯蔵タンク71を設置している。タンク室70と地下貯蔵タンク71の空間には、乾燥砂72が充填されている。
【0005】
上記の従来手法では、砂の中に危険物漏洩検査管73が設けられているので、漏洩したか否かは判別できる。
【0006】
しかし、危険物が漏洩した場合に、砂の中に危険物が留まるだけでなく、タンク室70のコンクリート壁面まで到達してしまうことがある。
【0007】
コンクリート壁面まで到達した危険物は、コンクリート壁面から、コンクリート内部に浸透する。浸透した危険物は、外部に取り出すことは困難である。
【0008】
危険物がPCBである場合、コンクリートを削り汚染部を全部取り出さなければならない。コンクリート壁を破壊しても、PCBを含浸している限り、コンクリート破壊物を廃棄できないからである。
【0009】
PCB汚染部は、PCB自体が着色されているわけではないので、コンクリート壁の外部から容易に判別できないので、その汚染部が除去されずに残ってしまう問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、危険物が漏洩した場合にも、容易に汚染の実情を把握し、コンクリート壁面まで、PCBのような汚染物を到達させない有害な危険物の漏れ防止構造を提供することを課題とする。
【0011】
また、コンクリート壁面を有害な危険物の漏れによって汚染させないので、有害な危険物が収納された金属製の地下貯蔵タンクを安全に撤去できる方法を提供することを課題とする。
【0012】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題は、以下の各発明によって解決される。
【0014】
(請求項1)
有害な危険物が収納される金属製の地下貯蔵タンクが、地盤面下のコンクリート製のタンク室の内部に設置され、
該コンクリート製のタンク室の壁面に沿って外殻筐体が設けられ、
前記金属製の地下貯蔵タンクと前記外殻筐体との間に、人間が入って作業できる空間が設けられることを特徴とする有害な危険物の漏れ防止構造。
(請求項2)
有害な危険物が、PCBであることを特徴とする請求項1記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
(請求項3)
前記タンク室の壁面と、前記外殻筐体との間に間隙を設け、該間隙に乾燥砂が充填されていることを特徴とする請求項1又は2記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
(請求項4)
内部に有害な危険物が収納された前記金属製の地下貯蔵タンクに、複数の配管が接続され、
該複数の配管の一つは、該金属製の地下貯蔵タンクに外部から有害な危険物を収納する配管であり、該複数の配管の他の一つは、該金属製の地下貯蔵タンクから有害な危険物を外部に排出する配管であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
(請求項5)
該金属製の地下貯蔵タンクに外部から有害な危険物を収納する配管、及び該金属製の地下貯蔵タンクから有害な危険物を外部に排出する配管は、コンクリート製の前記タンク室と前記外殻筐体に、各々設けられた貫通孔を介して、外部配管と接続しており、該各々の貫通孔の周囲は危険物の蒸気を漏洩しないようにシールされていることを特徴とする請求項記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
(請求項6)
前記金属製の地下貯蔵タンクと前記外殻筐体との間の空間は、吸引配管に接続され、該吸引配管は、該空間の外部に設置された吸引手段に接続され、前記空間内を負圧に維持することを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
(請求項7)
前記金属製の地下貯蔵タンクと前記外殻筐体との間の空間は、給気配管に接続され、該給気配管は、該空間の外部に設置された送風手段に接続されることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の有害な危険物の漏れ防止構造。
(請求項8)
請求項1~7の何れかに記載の有害な危険物の漏れ防止構造における有害な危険物が収納される金属製の地下貯蔵タンクを撤去する方法であって、
前記タンク室の上面及び前記外殻筐体の上面を撤去し、前記金属製の地下貯蔵タンクを上方から吊り上げて取り出すことを特徴とする有害な危険物が収納される金属製の地下貯蔵タンクを撤去する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、危険物が漏洩した場合にも、容易に汚染の実情を把握し、コンクリート壁面まで、PCBのような汚染物を到達させない有害な危険物の漏れ防止構造を提供することができる。
【0016】
また本発明によれば、コンクリート壁面を有害な危険物の漏れによって汚染させないので、有害な危険物が収納された金属製の地下貯蔵タンクを安全に撤去できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】有害な危険物の漏れ防止構造の一例を示す縦断面図
図2図1の横断面図
図3】外殻筐体とタンク室とを分解した一例を示す斜視図であり、(a)は、外殻筐体が組み込まれる前のタンク室を示す図であり、(b)は、タンク室に組み込む前の外殻筐体を示す図である。
図4】有害な危険物が収納された金属製の地下貯蔵タンクを安全に撤去する方法の一例を示す断面図
図5】有害な危険物が収納された金属製の地下貯蔵タンクを安全に撤去する方法の一例を示す断面図
図6】従来例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、有害な危険物の漏れ防止構造の一例を示す断面図であり、1は有害な危険物を収納してなる地下貯蔵タンクである。
有害な危険物は、本発明では、PCBが挙げられ、かかるPCB100が有害な危険物として地下貯蔵タンク1に収納される。
PCBは、そのほとんどが抜油洗浄装置から発生する。この装置は、抜油装置と粗洗浄装置の二つの機能を備えている。
【0020】
抜油装置は、例えば老朽化してPCBが漏洩するおそれがあるトランスやコンデンサを受け入れる抜油装置、漏洩するおそれのない大型のトランスやコンデンサを受け入れる抜油装置、小型のトランスやコンデンサを受け入れる抜油装置などが挙げられる。かかる抜油装置は、大型抜油室、漏洩品抜油室、小型抜油室を備える。
【0021】
抜油を行うに際しては、例えばトランスなどのケーシングに開けた孔から内部のPCBやTCB含有絶縁油を抜取るのが一般的である。
【0022】
上記の抜油装置から排出された抜油は、PCBをたくさん含むので、それらを処理するために、まず貯槽に受け入れることが多い。かかる貯槽はPCB処理設備には大小様々あり、これらの貯槽が、本発明における地下貯蔵タンク1となる。すなわち地下貯蔵タンク1は、PCB処理過程で必要とされる種々の貯槽、トランス油受槽などとして機能する。
【0023】
また、上記の抜油を行った後、洗浄装置によって洗浄を行った際に、例えば洗浄溶剤でトランスやコンデンサの内部を洗浄することによって洗浄廃液が発生するが、かかる洗浄溶剤バッファ槽なども、PCBを含む廃液を受け入れるので、本発明でいう地下貯蔵タンク1として用いられる。
【0024】
2は、地盤面下に形成されるコンクリート製のタンク室であり、床面200、上面201及び4つの側壁202、203に囲まれた内部空間を有する。また、タンク室2の床面200には、図3(a)に示すように、後述する外殻筐体3を設置するための2条の基礎部204、204が設けられていることが好ましい。なお、側壁のうち手前の側壁と奥側の側壁は図示していない。このタンク室2は、建物の外殻の地盤面下に形成されることが好ましい。後述する地下貯蔵タンク1を廃棄する際に、廃棄を容易にするためである。
【0025】
3は、コンクリート製のタンク室2の壁面に沿って設けられた外殻筐体である。外殻筐体3は、図3(b)に示すように、天板300と底板301と、側板302、303、304、305によって筐体を構成している。側板302側と側板304側は、筐体要素に複数の水平補強リブを設けた構造となっている。また側板303と305は、各々平板に縦方向の補強リブが設けられた構造になっている。306は、天板300に形成された開口である。底板301の下面には支持部307、307(例えばH型鋼で形成される)が2条に形成されている。また、底板301の上面には、図1に示すように、下面に形成された支持部307、307に対応する位置に、地下貯蔵タンク1を固定するための固定台308、308が設けられている。
【0026】
地下貯蔵タンク1は、上記の外殻筐体3内に、予め設置されていることが好ましい。気密性を確保する作業を容易にするためである。
【0027】
上述の通り、タンク室2の床面200には、地下貯蔵タンク1を設置するための2条の基礎部204、204が設けられていることが好ましく、外殻筐体3内に設けられた固定台308、308に、地下貯蔵タンク1の下部に設けられた2条のタンク支持部101、101を固定し、底板301の上面の固定台308、308に対応する位置に設けられた下面の支持部307、307を、タンク室2の基礎部204、204上に位置するように固定することにより、地下貯蔵タンク1を固定した外殻筐体3を、タンク室2に固定することができる。
【0028】
タンク支持部101、101は、固定台308、308の上に着脱可能なように自重で載置固定されていることが好ましい。地下貯蔵タンク1を外部に持ち出す際に便利だからである。地下貯蔵タンク1の設置の手段は着脱可能であれば格別限定されず、例えば、自重で載置固定される場合は、嵌合固定されていてもよく、ボルト・ナットによって地下貯蔵タンク1と外殻筐体3とが固定されていてもよい。
【0029】
外殻筐体3の開口306に対応する位置に、タンク室2の上面201にも、開口205が設けられ、開口205には、開閉蓋206が設けられている。
【0030】
本発明においては、金属製の地下貯蔵タンク1と外殻筐体3との間に、空間4が設けられる。空間4が設けられることにより、上記開口306、205から、開閉蓋206を開き、梯子400により、空間内に人間が入ることができる。空間内に人間が入ることができることにより、空間4内を目視確認ができ、補修の必要性が生じた場合、その場で補修を行うことができる。本発明においては、当該空間4を設けることが非常に重要である。
【0031】
また、空間4に人間が入るので、換気を行うことができるように工夫されていることが好ましい。空間4には、吸引配管401が設けられていることが好ましく、吸引配管401は、空間4の外部に設置された吸引手段(図示せず)に接続され、空間4内を負圧に維持する。
【0032】
かかる吸引によって空間4にPCB蒸気が発生しても、外部に吸引して除去できるので、人間による検査業務を安全にすることができる。外部に吸引されたガスは、排ガス処理を行ってPCBの無害化処理を行うことが好ましい。排ガス処理としては、例えば活性炭吸着による処理が挙げられる。
【0033】
本発明の更なる好ましい態様は、空間4が給気配管402に接続され、給気配管402は、空間4の外部に設置された送風手段(図示せず)に接続されることである。外部から新鮮な空気を送り込むようにするためである。
【0034】
本実施形態において、タンク室2の壁面と、外殻筐体3との間に、間隙5を設け、その間隙5に乾燥砂500が充填されていることが好ましい。万が一、外殻筐体3からPCBのわずかな漏洩があった場合でも、当該乾燥砂500でわずかなPCBを捕捉できるからである。乾燥砂の含水率は格別限定されないが、50%以下であることが好ましい。乾燥砂500を充填する間隙5の幅は、平均100mm~300mmの範囲が好ましい。乾燥砂500には、危険物漏洩検査管を設置していてもよい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態としては、内部に有害なPCBが収納された金属製の地下貯蔵タンク1に、複数の配管が接続されていることである。
【0036】
複数の配管の一つとして金属製の地下貯蔵タンク1に外部から有害なPCBを収納する配管207を設けることが好ましい。
【0037】
また、複数の配管の他の一つとして、金属製の地下貯蔵タンク1から有害なPCBを外部に排出する配管208を設けることが好ましい。かかる配管207及び208を設けると、地下貯蔵タンク1と外部のPCB処理設備の間に、処理のループを形成できる。
【0038】
PCB処理設備でPCBの処理が進めば、地下貯蔵タンク1内のPCBの濃度は低くなるが、新たな抜油が地下貯蔵タンク1に入ってくれば、その高度濃のPCBを除去するように処理が続く。つまりPCB処理のループが続くことになる。
【0039】
高濃度PCBを含む抜油や洗浄廃液がなくなるまで、このPCB処理のループ続く。PCBがなくなったら、処理は終了するので、この有害なPCBの漏れ防止構造の地下貯蔵タンク1は分解され、廃棄される。
【0040】
金属製の地下貯蔵タンク1に外部から有害なPCBを収納する配管207、及び金属製の地下貯蔵タンク1から有害なPCBを外部に排出する配管208は、コンクリート製のタンク室2と外殻筐体3に、各々設けられた貫通孔(図示せず)を介して、外部配管(図示せず)と接続している。
【0041】
各々の貫通孔の周囲はPCBの蒸気が漏洩しないようにシールされていることが好ましく、完全に近い気密性を維持することはより好ましい。PCBの処理のために外部に排出する際に、貫通孔からPCB蒸気が排出されることがないようにするためである。
【0042】
次に、金属製の地下貯蔵タンクを撤去する方法の一例を図4図5に基づいて説明する。
【0043】
地下貯蔵タンク1内に、高濃度PCBを含む抜油や洗浄廃液がなくなった場合には、上記のPCB処理のループは停止する。PCBがなくなったら、処理は終了するので、この有害なPCBの漏れ防止構造の地下貯蔵タンク1は分解され、廃棄される。
【0044】
解体ないし廃棄の手法は、最初に、タンク室2の上面201及び外殻筐体3の天板300を撤去する。
【0045】
撤去に際しては、上面201及び301のX部分を切断して除去する。除去する手法は格別限定されない。除去して顕在化する開口部分の形状は、地下貯蔵タンク1を吊り上げて除去できる大きさであれば格別限定されない。
【0046】
次いで、図5に示すように、金属製の地下貯蔵タンク1に、クレーン6のフック600にワイヤ601を架けて、金属製の地下貯蔵タンク1を上方に吊り上げる。
この場合、地下貯蔵タンク1が外殻筐体3にボルト・ナット止めで固定されている場合は、外殻筐体3の固定台308、308と、地下貯蔵タンク1のタンク支持部101、101を固定したボルト・ナットをはずす事により、地下貯蔵タンク1が外殻筐体3に対して移動可能になるため、上述した地下貯蔵タンク1を上方に吊り上げることができる。
【0047】
クレーン6を駆動させて、タンク室2の上面201の開口部分から、金属製の地下貯蔵タンク1を外部に取り出す。
【0048】
上記金属製の地下貯蔵タンクを撤去する方法を用いることにより、地下貯蔵タンク1が多数ある場合、上面だけの除去により外殻筐体3内の地下貯蔵タンク1が取り出すことができる。これにより、壁や底部を解体する方法に比べ工事量が少なくなるため、連続して地下貯蔵タンク1を取り出す工事ができる。
【0049】
地下貯蔵タンク1を撤去する時期には、解体工事初期と終期の2種類が挙げられるが、解体工事開始の初期に撤去することが好ましい。解体工事初期に地下貯蔵タンクを撤去することにより、地下貯蔵タンクを撤去した空間を有効利用することができ、狭い敷地での安全かつ安心の解体工事が可能となる。また、工事の短縮化も図ることができ、費用も削減できる。
【0050】
また、地下貯蔵タンクを撤去後の空間を形成するコンクリートのタンク室2及び外殻筐体3に仮設で天井を設置することで、部屋空間を再設置することができる。この部屋空間により、狭い敷地での解体工事を可能にすることができる。解体工事以外にも、例えば、仮設受変電設備、仮設活性炭層付き換排気装置、作業員室、倉庫、解体物仮置き場等の空間に利用することができる。
【0051】
さらに、仮設で天井を設置することにより、建物外周を有効に利用でき、外壁の仮囲い方法の選択範囲を広げることができる。例えば、建物外壁を利用して足場を組んで、建物外周を仮囲いする方法や、建物全体を覆う建築物用グリーンハウスを設置することが挙げられる。この場合、周辺環境に影響が無いよう建物外周に保護シートを掛けて解体を行うことが好ましい。
【0052】
建物内部及び外殻筐体内を負圧にしながら地下貯蔵タンクを解体・取り出すことも好ましい。これにより、外部への有害ガスの漏えいを防止することができる。
【0053】
現在の気密性を保つため、地下貯蔵タンク取り出し時は、地下貯蔵タンク接続配管に存在する伸縮継手部に閉止板を取り付けて閉止する。残りの配管部は地下貯蔵タンク取り出し後、壁貫通部の不燃材を一時取り出し、貫通配管を撤去しPCB汚染物として処分する。その後壁部を不燃材にて復旧することにより、建物内部及び外殻筐体内の負圧を維持することができる。
【0054】
有害な危険物を保管・貯留する施設において、有害な危険物が付着した機器、床壁の建築材への付着が考えられ、有害なガスを含む汚染ガスが飛散する恐れがある。この汚染ガスが大気中に放出されると、環境汚染の一因になるので、有害ガスに起因する環境汚染を防止する方法が望まれる。
【0055】
建物内部及び外殻筐体内を負圧にしながら地下貯蔵タンクを解体・取り出すことにより、有害なガスを含む汚染ガスが建物外部へ飛散することを防止することできる。
【0056】
また、建物内部及び外殻筐体内の空気清浄を行うことも好ましい。これにより、外部への有害ガスの漏洩を防止することができる。
特に、有害ガスが汚染ガスである場合には、環境汚染を防止するため、建屋内の有害な危険物に汚染された空気を適切な処理を行ったうえで大気中に放出させる処置をとる必要がある。例えば、建屋内を負圧とするとともに、グリーンハウスで区画された場所の有害ガスを含む空気を換気ダクトに接続し排出するため、プレフィルター、HEPAフィルタ、活性炭フィルタ類、及び又は、適切な処理能力を有するブロワを設置し、排気を排出基準値以下にすることが挙げられる。
【符号の説明】
【0057】
1 :地下貯蔵タンク
100 :PCB
101 :タンク支持部
2 :タンク室
200 :床面
201 :上面
202 :側壁
203 :側壁
204 :基礎部
205 :開口
206 :開閉蓋
207 :配管
208 :配管
3 :外殻筐体
300 :天板
301 :底板
302 :側板
303 :側板
304 :側板
305 :側板
306 :開口
307 :支持部
308 :固定台
4 :空間
400 :梯子
401 :吸引配管
402 :給気配管
5 :間隙
500 :乾燥砂
6 :クレーン
600 :フック
601 :ワイヤ
70 :タンク室
71 :地下貯蔵タンク
72 :乾燥砂
73 :危険物漏洩検査管
図1
図2
図3
図4
図5
図6