(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】液体検知装置、それを備えた飲料ディスペンサ、及び飲料ディスペンサ管理システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/954 20060101AFI20221011BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20221011BHJP
B67D 1/08 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G01N21/954 Z
G01N21/27 A
B67D1/08 Z
(21)【出願番号】P 2019171856
(22)【出願日】2019-09-20
(62)【分割の表示】P 2018069251の分割
【原出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2017070796
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】長澤 公介
(72)【発明者】
【氏名】清水 康史
(72)【発明者】
【氏名】宮川 学
(72)【発明者】
【氏名】齊田 祐志
(72)【発明者】
【氏名】向 健児
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-300337(JP,A)
【文献】特開2015-129683(JP,A)
【文献】特開2003-192096(JP,A)
【文献】特開2014-019454(JP,A)
【文献】特開2008-180643(JP,A)
【文献】特開2011-126569(JP,A)
【文献】特開2016-133354(JP,A)
【文献】特開2010-280408(JP,A)
【文献】特開2011-084276(JP,A)
【文献】特開平10-019903(JP,A)
【文献】国際公開第2010/140641(WO,A1)
【文献】SIKORSKA EWA et al.,Monitoring beer during storage by fluorescence spectroscopy,Food Chemistry,ELSEVIER,2005年,Vol. 96,PP. 632-639,doi:10.1016/j.foodchem.2005.02.045
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
B67D 1/07-B67D 1/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビールと水が通る光透過性の管路に装着される液体検知装置であって、
前記管路に装着される本体ケースと、
前記管路に横から光を照射するように前記本体ケース内に配置された、白色LEDからなる発光素子を備える発光部と、
前記発光素子から照射された光を前記管路を介して受光するように前記発光素子に対向して前記本体ケース内に配置された青色センサからなる受光素子を備える受光部と、
を備えることを特徴とした液体検知装置。
【請求項2】
前記受光素子による受光強度のデータを無線通信により外部に送信する送信部をさらに備える、請求項1に記載の液体検知装置。
【請求項3】
前記受光強度のデータに基づいて液体の種類を識別するとともに、前記管路の汚れの有無を判定する判定部をさらに備える、
請求項2に記載の液体検知装置。
【請求項4】
前記判定部が識別する液体の種類は、水とビールである、請求項3に記載の液体検知装置。
【請求項5】
前記判定部は、所定の一つの評価時間間隔に含まれる複数の受光強度の中の最大値と最小値の複数の前記評価時間間隔にわたる変化に基づいて前記管路内の液体がビール、水、及び何も無いのいずれかであるかを判定する、請求項4に記載の液体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内の液体を識別する光学式の液体検知装置、それを備えた飲料ディスペンサ、及び飲料ディスペンサの管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店等に設置されて、ビールを供給するビールディスペンサ等の飲料ディスペンサが広く用いられている。そしてビールディスペンサについてはその管路の洗浄等の保守を的確に実施しないとそこから供給されるビールの品質の低下を招くことが知られている。通常は、飲料販売会社のサービスマンが数ヶ月に1回の頻度で飲食店を訪問し、ビールの品質、管路の洗浄等の保守状況をチェックしている。そのため、飲食店に飲料を販売する飲料販売会社にとっては、各飲食店等に設置されたビールディスペンサの洗浄等の保守情報がリアルタイムで入手できることが、自社が販売した飲料の品質保持という観点から望まれていた。
【0003】
一方、飲料ディスペンサに適用可能な液体検知センサが特許文献1に記載されている。その液体検知センサは、管路を流れる液体の種類あるいは状態を、赤外線を利用して光学的に検知するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の液体検知センサを使って、液体管路内における液体の有無、液体の種類、及び合成樹脂製の液体管路自体の劣化の有無等を検知することができる。ただし、特許文献1の液体検知センサによると、それをビールディスペンサに適用した場合に、洗浄に用いられる水とビールの識別や、ビール成分に起因する管路の淡褐色の汚れを検知することは困難であった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、より広範な種類の液体の検知及び管路の汚れの検知を可能にする液体検知装置を提供することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明は、上述の液体検知装置を備えた飲料ディスペンサ、及び飲料ディスペンサの管路を流れる液体等を遠隔モニタすることのできる飲料ディスペンサ管理システムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば、液体が通る光透過性の管路に装着される液体検知装置であって、管路に装着される本体ケースと、管路に横から光を照射するように本体ケース内に配置された、LEDからなる発光素子を備える発光部と、発光素子から照射された光を管路を介して受光するように発光素子に対向して本体ケース内に配置された、赤色、緑色、及び青色センサの少なくとも一つからなる受光素子を備える受光部と、を備える液体検知装置が提供される。
【0009】
さらに、本発明の第2の態様によれば、第1の態様による液体検知装置を備えた飲料ディスペンサが提供される。
【0010】
さらに、本発明の第3の態様によれば、第2の態様による飲料ディスペンサと、通信ネットワークを介して液体検知装置から受光強度のデータを受信する管理装置であって、受光強度のデータに基づいて液体の種類、及び管路の汚れの有無を判定する判定部を含む管理装置と、を備える飲料ディスペンサ管理システムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、LED発光素子と赤色、緑色、及び青色センサの少なくとも一つから成る受光素子との組合せにより、従来は識別ができなかった液体を識別することが可能になる。例えば、本発明によると、ビールディスペンサにおける、従来困難であった洗浄用の水とビールの識別及びビール成分に起因する管路の汚れの検知、さらにはビールの銘柄の識別も可能になる。そのため、例えば、飲食店に設置されたビールディスペンサの液体検知装置が飲料販売会社の飲料ディスペンサ管理装置に通信接続されているなら、その管理装置によってビールディスペンサの水洗浄の頻度や管路の汚れの有無や、あるいはビールディスペンサを流れるビールの銘柄を遠隔モニタすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態による液体検知装置が装着されたビールディスペンサの模式的斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による液体検知装置の内部を示す模式的正面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態による液体検知装置により検知された、清浄な管路中のビール等に関する受光強度を光源出力に対して示すグラフであって、青色LEDと緑色センサの組み合わせによるグラフである。
【
図4】
図3と同様のグラフであるが、ビール成分が付着して汚れた管路中のビール等に関する受光強度を光源出力に対して示すグラフであって、青色LEDと緑色センサの組み合わせによるグラフである。
【
図5】清浄な管路、及び緑色LEDと青色センサの組み合わせが用いられた場合の
図3と同様のグラフである。
【
図6】清浄な管路、及び青色LEDと赤色センサの組み合わせが用いられた場合の
図3と同様のグラフである。
【
図7】清浄な管路、及び緑色LEDと赤色センサの組み合わせが用いられた場合の
図3と同様のグラフである。
【
図8】本発明の第2の実施形態による液体検知装置により検知された水に関する受光強度の経時的変化を示すグラフである。
【
図9】本発明の第2の実施形態による液体検知装置により検知された銘柄Aのビールに関する受光強度の経時的変化を示すグラフである。
【
図10】本発明の第2の実施形態による液体検知装置により検知された銘柄Bのビールに関する受光強度の経時的変化を示すグラフである。
【
図11】本発明の第2の実施形態による液体検知装置により検知された銘柄Cの黒ビールに関する受光強度の経時的変化を示すグラフである。
【
図12】本発明の第2の実施形態による液体検知装置により検知された銘柄Dの第三のビールに関する受光強度の経時的変化を示すグラフである。
【
図13】本発明の第3及び第5の実施形態による飲料ディスペンサ管理システムの構成を示す図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態による飲料ディスペンサ管理システムの構成を示す図である。
【
図15】本発明の第5の実施形態による飲料ディスペンサ管理システムにおいて得られた光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図16】本発明の第5の実施形態による飲料ディスペンサ管理システムにおいて得られた光強度の時間変化を示すグラフである。
【
図17】本発明の第5の実施形態による飲料ディスペンサ管理システムにおいて得られた光強度の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。以下の説明及び図面においては、液体検知装置10の例としてビールディスペンサ20に装着されるものが示されている。ただし、液体検知装置10がビールディスペンサ20以外の飲料ディスペンサに装着されて、ビール以外の他の飲料、例えば発泡酒、麦芽以外の原料から作成されていて別のアルコール飲料が混入されたビール風味の発泡アルコール飲料(第三のビール)、ノンアルコールビール、チューハイ、ハイボール、炭酸飲料、ジュース、又は茶飲料を検知するものであってもよい。さらに、液体検知装置10が、飲料以外の液体の検知に適用されてよいことも明らかであろう。
【0014】
最初に、第1の実施形態による液体検知装置10が装着されるビールディスペンサ20について
図1を参照して説明する。
図1に示されるビールディスペンサ20は、別置きのビール樽23(
図13)及び炭酸ガスボンベ24(
図13)と組み合わされて機能するタイプのビールディスペンサ20である。ビールディスペンサ20の内部には、ビール樽23から供給されるビールを冷却するための冷却装置(図示せず)が備えられている。ビールディスペンサ20の筐体の側面にはビール樽23からのビールを導入する飲料導入管21が接続されている。飲料導入管21は、スチレン系エラストマーにポリエチレンの外装が被覆された半透明又は透明のチューブから形成されている。液体検知装置10はこの飲料導入管21に装着される。ビール樽23には炭酸ガスボンベ24から炭酸ガスが供給され、その炭酸ガスの圧力に基づいてビールがビール樽23から飲料導入管21を経由してビールディスペンサ20の飲料注出コック22まで送られる。そして、操作者が飲料注出コック22を操作すると、ビールが飲料注出コック22の口部から注出され、飲料注出コック22の下方に予め配置されたビールグラス等に供給される。
【0015】
ところで、ビールディスペンサ20は、そのビールが通る管路を定期的に、例えば毎日1回洗浄する必要がある。この洗浄は、通常は管路に水を通すことにより実施される。管路の洗浄を怠ると、管路にビール成分に起因する淡褐色の汚れが付着し、それがビールの異味あるいは異臭の原因となる。
【0016】
図2は本発明の第1の実施形態による液体検知装置10の、丁番式に開閉する本体ケース11が開いた状態を示す模式的な外形図である。
図2では、飲料導入管21が仮想線で示されている。
図2に示される液体検知装置10は、ビールディスペンサ20の飲料導入管21に装着可能に構成された本体ケース11と、飲料導入管21に横から可視光を照射するように本体ケース11内に配置された発光素子12を備える発光部13と、発光素子12が発する光を、導入管21を介して受光するように、導入管21を挟んで発光素子12に対向して本体ケース11内に配置された受光素子14を備える受光部15と、受光素子14による受光強度のデータを外部に無線送信する送信部16と、発光部13、受光部15、及び送信部16に電力を供給する電源部17とを有する。
【0017】
さらに、液体検知装置10は、本体ケース11の外側に隣接する飲料導入管21の部分を覆う図示されない遮光カバーも有する。遮光カバーは、外光が、本体ケース11の外側に隣接する飲料導入管21の部分を介して受光素子14に到達しないように設けられている。
【0018】
本体ケース11は、発光部側ケース11aと受光部側ケース11bが丁番式に開閉可能に連結されていて、それらが閉じられたとき飲料導入管21を挟んで発光素子12と受光素子14とが対向するように形成されている。また、本体ケース11は発光部側ケース11aと受光部側ケース11bが閉じられたとき互いに固定されるとともに飲料導入管21に固定されるようにも形成されている。
【0019】
第1の実施形態では、発光素子12は青色LEDであり、受光素子14はSiフォトダイオードからなる緑色センサである。この緑色センサは、480nm~600nmの感度波長範囲を有する。このように青色LEDと緑色センサの組み合わせを用いることにより、ビールが流れているときの受光強度と、管の洗浄に使用される水が流れているときの受光強度に識別可能な差が生じる。また、青色LEDと緑色センサの組み合わせを用いることにより、管の内面に付着する、ビール成分に起因する淡褐色の汚れによる受光強度の低下も検知することが可能になる。さらに、ビールの泡を検知すること、及び液体や泡が無い状態も検知することが可能になる。
【0020】
送信部16は、受光部15からの受光強度のデータを予め定められた制御周期で、例えば後述するネットワーク接続端末30に対して、Bluetooth(登録商標)規格に従った通信方式により送信できるように構成されている。送信部16の通信方式としては、Bluetooth(登録商標)やZigBee(登録商標)といった近距離無線通信だけでなく、例えばWifi(登録商標)などの無線LANや、LoRaWAN(登録商標)などの無線通信のような他の通信方式が採用されてもよい。さらに、送信部16が、無線ではなく有線で外部にデータを送信する実施形態も可能である。また、送信部16が、本体ケース11内ではなく、例えばビールディスペンサ20の筐体内に配置さてもよい。
【0021】
電源部17は、第1の実施形態では乾電池によるものである。ただし、電源部17が乾電池ではなくAC100ボルト入力のものである実施形態も可能である。その場合の電源部17は、本体ケース11ではなく、例えばビールディスペンサ20の筐体内に配置されてよい。
【0022】
図3は、第1の実施形態による液体検知装置10を使って、飲料導入管21にビール、水、あるいはビール泡を流したとき、あるいは何も流さなかったとき(以下、「空状態」という)の、光源出力(横軸)に対する受光強度(縦軸)の実測データのグラフである。横軸の数値は光源出力のPWM制御に関連する数値であり、その最大値は表示されないが255である。縦軸の数値は受光素子14の出力に基づくものであって受光強度に対応する数値である。また、飲料導入管21は汚れの全く付着していないものが測定に用いられた。
図3において、受光強度は、水>ビール>空状態>泡の順であり、水はビールに対して約14%増大し、空状態はビールに対して約40%低下し、泡はビールに対して約48%低下することが示される。なお、実際に液体検知装置10を使用するときには光源出力は特定の値に固定される。
【0023】
前述したとおり、第1の実施形態による液体検知装置10は、ビール成分による汚れも検出することができる。
図4は、ビール成分による汚れが付着した飲料導入管21にビール、あるいは水を流したとき、あるいは空状態のときの、
図3と同様の実測データのグラフである。
図4においても、受光強度は、水>ビール>空状態の順であり、水はビールに対して約15%増大し、空状態はビールに対して約38%低下することが示される。また、受光強度は、
図3の汚れのない管に比較すると、水、ビール、及び空状態に関してそれぞれ約15%、約16%、及び約12%低下している。
【0024】
第1の実施形態による液体検知装置10によると、このように、導入管21を流れる液体の空状態を含めた種類の違い、さらには管の汚れが受光強度の差として示される。そして、受光強度の差から被測定液体の種類や管の汚れの有無を判定することが可能になる。ただし、第1の実施形態では、液体検知装置10は判定機能を有さず、したがって、受光強度のデータは、送信部16によって、後述する管理装置40が備える判定部41に送られる。なお、第1の実施形態では、判定部41は液体検知装置10には含まれないが、判定部41が液体検知装置10に含まれる実施形態、あるいは判定部41が後述するネットワーク接続端末30もしくはビールディスペンサ20に含まれる実施形態も可能である。それらの場合、判定部41の判定結果のデータが送信部16によって管理装置40に送られる。
【0025】
前述の実施形態の液体検知装置10の発光素子12と受光素子14の組み合わせには青色LEDと緑色センサの組み合わせが用いられたが、他の色のLEDと単色センサの組み合わせによってもビールと水の識別等が可能である。
図5は、緑色LEDと青色センサの組み合わせ、また
図6は青色LEDと赤色センサの組み合わせ、また
図7は緑色LEDと赤色センサの組み合わせの場合の
図3と同様のグラフである。この場合の青色センサは400nm~540nmの感度波長範囲を有し、赤色センサは590nm~720nmの感度波長範囲を有するものである。
図5、
図6、及び
図7ともに、
図3の場合に比較して、特に水とビールの受光強度の差は小さいとはいえ識別可能である。
【0026】
以上、複数の識別されるべき液体がビールと水の場合に利用可能な単色LEDと単色センサとの組み合わせが例示され、またビールと水の場合には青色LEDと緑色センサの組み合わせが最適であることを示した。ただし、識別されるべき複数の液体が異なれば、それら液体の識別のための単色LEDと単色センサとの最適な組み合わせも前述の組み合わせとは異なるものになることは明らかであろう。
【0027】
第1の実施形態の変形例
前述の実施形態の液体検知装置10は、一対の発光素子12と受光素子14の組合せを有するものであるが、液体検知装置が複数対の発光素子12と受光素子14の異なる組み合わせを有する実施形態も可能である。その場合の液体検知装置は、例えば複数種類の異なる飲料を識別する場合等に好適であろう。
【0028】
次に、本発明の第2の実施形態による液体検知装置100について説明する。第2の実施形態による液体検知装置100は、発光素子12が白色LEDであること、及び受光素子14がカラーセンサからなることにおいて第1の実施形態による液体検知装置10とは異なっているが、その他の構成は第1の実施形態による液体検知装置10に同じであり、したがって
図2で示すことができる。第2の実施形態におけるカラーセンサはフォトダイオードである赤色、緑色、及び青色センサが単体の処理回路に統合されたシングルチップセンサとして形成されている。赤色、緑色、及び青色センサの感度のピークは、それぞれ650,550,450nmにあり、半値全幅は、それぞれ70,70,80nmである。
【0029】
第2の実施形態による液体検知装置100を利用することにより、水とビールとの識別、さらにはビールの銘柄の識別が可能になることが確認された。
図8~
図12は、液体検知装置100を使って、飲料導入管21に水あるいは4種類の銘柄のビール等を流したときの、照射したLED白色光に対する赤色、緑色、及び青色の各センサの受光強度(縦軸)の経時的変化を示す実測データのグラフである。縦軸の数値は受光素子14の出力に基づくものであって受光強度に対応する数値である。時間を示す横軸の数字の1が30秒に相当する。また、飲料導入管21は汚れの全く付着していないものが測定に用いられた。
【0030】
図8は水、
図9は銘柄Aのビール、
図10は銘柄Bのビール、
図11は銘柄Cの黒ビール、及び
図12は銘柄Dの第三のビールの場合のグラフである。
図8~
図12から、被測定液体が、水であるのか、あるいは銘柄A~Dのいずれかであるかの判定をすることが可能になることが明らかであろう。ただし、第2の実施形態の液体検知装置100は、第1の実施形態の液体検知装置10と同様に、判定機能を有しない。したがって、受光強度のデータは、送信部16によって、後述する管理装置40が備える判定部に送られ、そこで判定される。
【0031】
図8~
図12は、清浄な飲料導入管21の場合の実測データを示すものであるが、ビール成分による汚れが付着した飲料導入管21の場合のデータは、
図8~
図12に示される光強度よりも赤色、緑色、及び青色の少なくとも一つの光強度が低下し、その結果汚れの検知が第1の実施形態の場合と同様に可能になることが明らかに予想される。
【0032】
第1の実施形態による液体検知装置10は単色(青色)LEDと単色(緑色)センサとの組合せにより、また第2の実施形態による液体検知装置100は白色LEDとカラーセンサとの組合せにより液体を識別したが、それらの中間の例えば白色LEDと単色センサとの組合せ、あるいは白色LEDと二色センサとの組合せ等を有する液体検知装置の実施形態も本発明において可能である。
【0033】
次に、本発明の第3の実施形態による飲料ディスペンサ管理システム200について説明する。
図13に示される飲料ディスペンサ管理システム200は、飲食店(以下、「店舗」ということもある)に設置され、ビール樽23及び炭酸ガスボンベ24と共に使用されるビールディスペンサ20と、ビールディスペンサ20をインターネット5を介して遠方より管理する、例えば飲料販売会社の管理センターに設置される管理装置40と、ビールディスペンサ20の飲料導入管21に装着された液体検知装置10と、同じ店舗内に設置されてインターネット5に接続されたネットワーク接続端末30と、を主要構成要素として具備する。液体検知装置10は、第1の実施形態で説明したものが用いられてよい。
図13では、管理装置40が、1軒の店舗に配置された1つのビールディスペンサ20を管理するように示されているが、本実施形態における管理装置40は1台で多数の店舗の多数の同様のビールディスペンサ20を管理することができる。
【0034】
ネットワーク接続端末30は、液体検知装置10の送信部16から無線通信で受信した受光強度のデータをインターネット5を介して管理装置40に送るように構成されている。また、本実施形態においては、ネットワーク接続端末30は、管理装置40からのメッセージを受信して表示するようにも構成されており、そのため液晶画面等の表示部(図示せず)を備えている。
【0035】
本実施形態では、ネットワーク接続端末30はビールディスペンサ20とは別個の装置として店舗内に設置されるが、ネットワーク接続端末30がビールディスペンサ20の筐体内部に配設される実施形態も可能である。ネットワーク接続端末30が、前述した通信方式で送信部16からのデータを受信できるパソコン又はタブレット端末、あるいはスマートフォンをベースにして構成されてもよい。また、ネットワーク接続端末30とインターネット5との接続は本実施形態では3G又は4G(LTE)等Cellular回線を用いて行なわれるが、これが有線や無線通信で行われてもよい。
【0036】
管理装置40は、店舗から遠く離れた例えば飲料販売会社のサービスセンター等に配置されるものであり、インターネット5を介して各店舗のネットワーク接続端末30と双方向通信が可能に構成されている。管理装置40は、コンピュータあるいはサーバーから構成されている。また、管理装置40は、ネットワーク接続端末30から受信した受光強度データを蓄積して、その受光強度データから各ビールディスペンサ20の飲料導入管21内にある液体の種類を判定するとともに、受光強度の経時的な低下からビールディスペンサ20の飲料導入管21の汚れの有無を判定するように構成された判定部41を備えている。判定部41は、受信した未知の液体の受光強度を、既知の液体の受光強度と比較することにより被測定液体の泡や空状態を含めた種類を判定することができる。
【0037】
判定部41は、各ビールディスペンサ20毎に、水が検出された日時を記録するとともに、水が最後に検出された日から所定の期間が経過しても検出されなければ、管路の水洗浄を促すアラームを発するように構成されている。また、判定部41は、例えばビールと判定した液体の受光強度が、ビールの受光強度の過去の最大値あるいは初期値に対して所定の割合以上で低下しているなら、管路に付着した汚れが許容レベルを超えたと判断して、管路の洗浄及び/又は飲料導入管21の交換を促すアラームを発するようにも構成されている。前記アラームはメッセージとして、対象となるビールディスペンサ20が繋がるネットワーク接続端末30へ発信される。本実施形態では、前記メッセージは、飲料販売会社のサービスマン等が所持する携帯電話あるいはスマートフォンのような移動体通信端末50へも発信される。
【0038】
本発明の第1の実施形態による飲料ディスペンサ管理システム200は上述したように構成されて、ビールディスペンサ20の管路の洗浄が定期的に実施されているか否かを遠隔モニタし、もし実施されていなければアラームを発することができる。その結果、ビールディスペンサ20の管路の汚れによって生じる、例えば異味や異臭のような問題の発生を防止することが可能になる。
【0039】
管理装置40とネットワーク接続端末30との間の通信がインターネット5ではなく有線又は無線のLANのような通信ネットワークを介して行なわれる実施形態も可能である。
【0040】
次に、
図14に示される本発明の第4の実施形態による飲料ディスペンサ管理システム300について説明する。この飲料管理ディスペンサシステム300は、第3の実施形態による飲料ディスペンサ管理システム200とは、管理装置340が店舗内に配置されて、送信部16から受光強度等のデータを、ネットワーク接続端末30及びインターネット5を介することなく直接受信することにおいて異なっている。管理装置340は、前述した通信方式で送信部16からデータを受信できるパソコン又はタブレット端末、あるいはスマートフォンをベースにして構成されてもよい。
【0041】
第4の実施形態における管理装置340は、液体検知装置10から受信した受光強度のデータから液体の種類や管の汚れの有無等を判定する判定部41を図示しないが第3の実施形態における管理装置40と同様に有する。また管理装置340は、ビールディスペンサ20の管路の洗浄を促すメッセージを、管理装置340自身の表示装置(図示せず)に表示するか、あるいは飲料販売会社のサービスマン等が所持する携帯電話あるいはスマートフォンのような移動体通信端末50へ発信するように構成される。
【0042】
次に、第5の実施形態による飲料ディスペンサ管理システム400について、
図13、
図15、
図16、及び
図17を参照して以下に説明する。第5の飲料ディスペンサ管理システム400は、その液体検知装置として第2の実施形態による液体検知装置100に類似の液体検知装置410を含むことにおいて第3の実施形態による飲料ディスペンサ管理システム200とは構成が異なっているが、その他の点については、
図13に示されるように、同様である。
【0043】
液体検知装置410は、第2の実施形態による液体検知装置100と同様に、発光素子12として白色LEDを有するが、受光素子14として単色の青色センサを有する。ただし、液体検知装置410が、受光素子14としてカラーセンサを有するが、カラーセンサの中の青色センサから得られたデータだけが利用される第5の実施形態による飲料ディスペンサ管理システム400の変形例も可能である。
【0044】
液体検知装置410は、予め設定した測定時間間隔T1で受光強度を測定し、測定時間間隔T1よりも長い予め設定した評価時間間隔T2内における複数の受光強度の中の最大値と最小値を求め、評価時間間隔T2に等しいかそれより長い予め設定した送信時間間隔T3で前述の最大値と最小値をネットワーク接続端末30へ送信するように構成されている。
図15に例示されるグラフは、測定時間間隔T1が30秒、評価時間間隔T2が10分、送信時間間隔T3が10分に設定された場合の青色センサの受光強度の時間変化を示している。換言すると、
図15は、液体検知装置410が、30秒毎に得た青色センサの受光強度の複数の測定データの10分間におけるそれぞれの最大値と最小値を決定して、その最大値と最小値を10分毎にネットワーク接続端末30を介して管理装置40へ送信した結果のグラフである。
図15におけるグラフ線(1)は、各10分間における受光強度の前述の最大値を連ねたものであり、グラフ線(2)は最小値を連ねたものである。このように、測定時間間隔T1(30秒)毎に得られた青色光に関する多数の光強度のデータを評価時間間隔T2(10分)における最大値と最小値とで代表させることにより、管理装置40におけるデータ処理量及び管理装置40に送るデータ送信量の削減を実現することが可能になる。ただし、データ量の削減方法については前述した最大値と最小値を利用するもの以外の様々なものも本発明において可能であることは当業者には理解されよう。
【0045】
図15における区間Aはビールディスペンサ20が稼働モードにあることを示し、区間Bはビールディスペンサ20が待機モードにあることを示す。区間Aの大部分の時間帯においてはグラフ線(1)及び(2)は略一定の受光強度で従って略水平に延びている。これは、稼働モードにあるビールディスペンサ20の飲料導入管21の中がビールで満たされていることを示している。稼働モードでは、炭酸ガスボンベ24からの圧力に基づいて加圧されたビールが、流動しているか静止しているかにかかわらず飲料導入管21の中を満たしている。これに対して、待機モードでは、飲料導入管21からビールが抜かれ、したがって飲料導入管21が空気で満たされている。そのため、待機モードでは稼働モードに比較して受光強度は低下する。
【0046】
図15の区間Aにおけるグラフ線(2)の下向きのピークPminは、ビール樽23の交換が行われたことを示している。ビール樽23の交換中には、飲料導入管21からビールが抜かれて、それは空気で満たされるので受光強度は低下し、また交換後にはビールで満たされるので上昇し、その結果、下向きのピークPminが生じる。
【0047】
図15の区間Aにおけるグラフ線(1)の上向きのピークPmaxは、飲料導入管21の水洗浄が行われたことを示している。水洗浄中には、飲料導入管21を満たす流体はビールから水に代わるので受光強度が増大するが、
図15の例では、水洗浄後には待機モードに移行して飲料導入管21が空気で満たされるので受光強度は低下し、その結果、上向きのピークPmaxが生じる。
【0048】
このように、受光強度の急激な低下及び増大から、それぞれ樽交換と水洗浄が行われたことを知ることができる。第5の実施形態による飲料ディスペンサ管理システム400では、管理装置40は、
図15に示されるグラフを描画する機能を有し、またその判定部41は、受光強度の各評価時間間隔T2中の最大値及び最小値の変化の仕方から樽交換あるいは水洗浄が行われたことを判定するとともに、水洗浄が所定の期間実施されなかった場合にはアラームを発出するようにも構成されている。
【0049】
図16は、
図15と類似のグラフであるが、ある週の月曜から金曜までのより長い時間スパンでの青色光の受光強度の実測データの一例を示している。
図16は、測定時間間隔T1は30秒と変わりがないが、評価時間間隔T2及び送信時間間隔T3がそれぞれ60分に延長された場合のグラフである。
図16の場合、送信されるデータ量及び管理装置40で処理されるデータ量が
図15の場合に比較して1/6に減少するが、
図16からは、水洗浄が毎日、及び樽交換が3回実施されたことが十分判定可能である。
【0050】
図17は、
図16と同じ時間スパン及び同じ時間間隔T1、T2、及びT3での青色光の受光強度の実測データの一例を示している。
図17からは樽交換が7回実施されたこと及び水洗浄が1回も実施されていないことが判る。また、
図17からは、飲料ディスペンサ20が測定期間をとおして稼働モードに置かれていたこと、つまり飲料導入管21が樽交換時以外はビールで満たされていたことも判る。
【0051】
第5の実施形態による飲料ディスペンサ管理システム400においては、液体検知装置410が、所定の評価時間間隔T2における受光強度の最大値と最小値を求めるように構成されていたが、液体検知装置410ではなく、管理装置40あるいは判定部41が前述の最大値と最小値を求めるように構成された実施形態も本発明において可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 液体検知装置
11 本体ケース
12 発光素子
13 発光部
14 受光素子
15 受光部
16 送信部
17 電源部
20 ビールディスペンサ
21 飲料導入管
30 ネットワーク接続端末
41 判定部