(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】光走査装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/08 20060101AFI20221011BHJP
H02K 11/22 20160101ALI20221011BHJP
B81B 5/00 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
G02B26/08 E
H02K11/22
B81B5/00
(21)【出願番号】P 2019225574
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 雅春
(72)【発明者】
【氏名】北村 泰隆
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-43405(JP,A)
【文献】特開2003-241124(JP,A)
【文献】特開2004-20956(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183435(WO,A1)
【文献】特開2003-57570(JP,A)
【文献】実開平4-111281(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08
H02K 11/22
B81B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーが接続される軸部と、
前記軸部に固定された可動マグネットと、
ベースと、
前記軸部を前記ベースに回転自在に取り付けるための軸受けと、
コア及びコイルを有し前記可動マグネットを回転駆動するコアユニットと、
前記コアユニットにおいて前記可動マグネットに対向して設けられた磁性体であり、前記可動マグネットを基準位置に磁気吸引する位置保持部材と、
を備える光走査装置であって、
前記ベースは、前記軸受けを介して前記軸部が挿通される切欠穴が設けられた一対の壁部を有し、
前記一対の壁部のうちの一つの壁部の外面側には、前記コアユニットが配置され、
前記コアユニットと前記一つの壁部との間には、前記軸部の回転角度位置を検出する角度センサー部が配置されている、
光走査装置。
【請求項2】
前記角度センサー部は、光センサーと、コードホイールと、コネクターと、を有する、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記角度センサー部は、回路基板と、前記回路基板に実装された光センサー及びコネクターと、前記可動マグネットに固定されたコードホイールと、を有し、
前記回路基板は、前記一つの壁部の前記外面に形成された凹部に収まるように配置されている、
請求項1に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記角度センサー部は、前記角度センサー部から外部への光、及び又は、外部から前記角度センサー部への光が遮光されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記角度センサー部に設けられたコネクター、及び又は、回路基板に接続されたケーブルによって前記遮光が行われている、
請求項4に記載の光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーを往復回転駆動することで光を走査する光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミラーを往復回転駆動することで光を走査する光走査装置として、特許文献1や特許文献2で開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-333873号公報
【文献】特開2014-182167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光走査装置では、特許文献1にも記載されているように、ミラーに接続された回転軸の回転角度を検出する角度センサーが設けられる。
【0005】
ところで、光走査装置において、角度センサーの検出精度が悪いと、光走査時の角度制御の精度の悪化につながる。よって、角度センサーによって精度の良いセンシングが行われることが求められる。
【0006】
また、光走査装置は、一般に製品全体に占めるスペースの割合が大きいので、光走査装置を小型化できれば、製品全体も小型化できる。よって、光走査装置を小型化することが求められる。
【0007】
光走査装置を例えばライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)などに組み付ける場合、角度センサーが外部に露出していると角度センサーが周辺部品と接触して損傷するおそれがある。従って、角度センサーが外部に露出しないように配置することが好ましいが、このようにすると光走査装置が構造的に煩雑になり大型化を招くおそれがある。
【0008】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、コンパクトな構成でありながら、角度センサーによるセンシング精度が良くかつ角度センサー部の損傷を防止できる、光走査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光走査装置の一つの態様は、
ミラーが接続される軸部と、
前記軸部に固定された可動マグネットと、
ベースと、
前記軸部を前記ベースに回転自在に取り付けるための軸受けと、
コア及びコイルを有し前記可動マグネットを回転駆動するコアユニットと、
前記コアユニットにおいて前記可動マグネットに対向して設けられた磁性体であり、前記可動マグネットを基準位置に磁気吸引する位置保持部材と、
を備える光走査装置であって、
前記ベースは、前記軸受けを介して前記軸部が挿通される切欠穴が設けられた一対の壁部を有し、
前記一対の壁部のうちの一つの壁部の外面側には、前記コアユニットが配置され、
前記コアユニットと前記一つの壁部との間には、前記軸部の回転角度位置を検出する角度センサー部が配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コアユニットとベースの一つの壁部との間に角度センサー部を配置するようにしたので、コンパクトな構成でありながら、角度センサー部によるセンシング精度が良くかつ角度センサー部の損傷を防止できる、光走査装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】実施の形態による回転往復駆動動作の説明に供する図
【
図7】コネクターにケーブルが接続された様子を示す、光走査装置の外観斜視図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、実施の形態の光走査装置100の外観斜視図である。
図2及び
図3は、光走査装置100の分解斜視図である。なお、
図2及び
図3は共に分解斜視図であるが、
図3は
図2よりもさらに細かく分解した状態を示したものである。
図4は、角度センサー部130の近傍の様子を示す斜視図であり、
図5は、角度センサー部130の近傍の様子を示す断面図である。以下、これら
図1-
図5を用いて、光走査装置100の構成について説明する。
【0014】
光走査装置100は、例えばライダー装置に用いられる。なお、光走査装置100は、複合機、レーザービームプリンタ等にも適用可能である。
【0015】
光走査装置100は、大きく分けて、ベース部110と、ベース部110に回転自在に支持されるミラー部120と、ミラー部120を回転駆動するコアユニット200と、ミラー部120の回転角度位置を検出する角度センサー部130と、を有する。
【0016】
ミラー部120は、
図3から分かるように、基板122の一面に板状のミラー121が貼り付けられている。基板122の挿通孔122aには軸部141が挿通され、基板122と軸部141は固着される。
【0017】
ベース部110は、一対の壁部111a、111bを有する断面が略コ字状の部材でなる。一対の壁部111a、111bにはそれぞれ軸部141が挿通される挿通孔112が形成されている。さらに、一対の壁部111a、111bにはそれぞれ挿通孔112と壁部111a、111bの外縁とを連通する切欠穴113が形成されている。
【0018】
これにより、軸部141にミラー部120を固着させた状態で、軸部141を切欠穴113を介して挿通孔112の位置に配置させることができる。切欠穴113が無い場合には、一対の壁部111a、111bの間にミラー部120を配置させた状態で、軸部141を壁部111a、111bの挿通孔112及び基板122の挿通孔122aの両方に挿通し、さらに軸部141と基板122を固着させるといった煩雑な組立て作業が必要となる。これに対して、本実施の形態においては、切欠穴113を形成したので、予めミラー部120を固着させた軸部141を、簡単に挿通孔112に挿通させることができるようになる。
【0019】
軸部141の両端にはボールベアリング151が取り付けられる。ボールベアリング151は、一対の壁部111a、111bの挿通孔112の位置に形成されたベアリング取付部114に取り付けられる。これにより、軸部141は、ボールベアリング151を介して回転自在にベース部110に取り付けられる。
【0020】
さらに、軸部141の一端には可動マグネット161が固着される。可動マグネット161は、コアユニット200内に配置され、コアユニット200により発生される磁束によって回転駆動される。
【0021】
コアユニット200は、
図3から分かるように、コア体210と、コイル体220と、を有する。コイル体220の内部にはコイルが巻回して設けられている。コイル体220は、コア体210の一部に差し込むようにして取り付けられる。これにより、コイル体220のコイルが通電されると、コア体210が励磁される。
【0022】
コア体210及びコイル体220は、固定プレート250に固定され、固定プレート250は、止着材251を介してベース110の壁部111aに固定される。
【0023】
因みに、本実施の形態の例では、コアユニット200は、さらに、架設コア230と、マグネット位置保持部材240と、を有する。架設コア230は、コア体210と同様の構成である。マグネット位置保持部材240は、マグネットにより構成されている。マグネット位置保持部材240の磁力によって可動マグネット161の位置が動作基準位置に磁気吸引される。このことについては、後で詳述する。
【0024】
本実施の形態の例では、コア体210及び架設コア230は、それぞれ積層コアであり、例えば、ケイ素鋼板を積層して構成されている。
【0025】
角度センサー部130は、回路基板131と、回路基板131に実装された光センサー132及びコネクター133と、コードホイール(エンコーダディスクと言ってもよい)134と、を有する。コードホイール134は、軸部141に固着され、可動マグネット161及びミラー部120と一体に回転する。光センサー132は、コードホイール134に光を出射しその反射光に基づいてコードホイール134の回転位置(角度)を検出する。これにより、光センサー132によって可動マグネット161及びミラー部120の回転位置を検出できる。
【0026】
本実施の形態の光走査装置100においては、コアユニット200と壁部111aとの間に、角度センサー部130が配置されている。
【0027】
これにより、角度センサー部130は、コアユニット200と壁部111aとの間にこれらによって内包されるように配置されるので、コアユニット200及び壁部111aによって保護される。よって、例えば光走査装置100の設置時の角度センサー部130の破損が防止される。
【0028】
また、角度センサー部130は、回転駆動源であるコアユニット200、及び、回転目的物であるミラー部120の両方の近傍において回転位置を検出することができるので、高精度の回転駆動制御の観点、及び、高精度の回転目標位置制御の観点において、好ましい位置検出を実現できる。
【0029】
回路基板131は、壁部111aのコアユニット200に対向する外面に形成された凹部115に収まるように配置される。実際には、
図2から分かるように、ベース部110の壁部111a、111bにミラー部120、軸部141及びボールベアリング151を取り付けた後に、光センサー132及びコネクター133が実装された回路基板131を凹部115内に配置させこれを止着材135で壁部111aに固定する。次に、軸部141にコードホイール134及び可動マグネット161を固着させる。次に、コアユニット200を止着材251によって壁部111aに固定する。
【0030】
図6は、本実施の形態による回転往復駆動動作の説明に供する図である。
【0031】
コイル体220内へのコイルへの非通電時において、可動マグネット161は、マグネット位置保持材240と可動マグネット161との磁気吸引力、つまり、磁気ばねにより、動作基準位置に制動される。
【0032】
コイル体220内へのコイルに通電されると、コア体210及び架設コア230が励磁され、電流の方向に応じて図中の矢印又はそれとは逆の磁束が生じ、これにより、可動マグネット161が往復回転駆動される。つまり、可動マグネット161が、動作基準位置を中心に、時計方向又は反時計方向の所望角度まで回転される。
【0033】
このとき、本実施の形態のコアユニット200は、マグネット位置保持材240を有することにより、可動マグネット161がマグネット位置保持材240によって中立位置(動作基準位置)に磁気吸引されるので、エネルギー効率が良くかつ応答性が良い往復回転駆動が実現される。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態の光走査装置100は、ミラー部120が接続される軸部141と、軸部141に固定された可動マグネット161と、ベース部110と、軸部141をベース部110に回転自在に取り付けるためのボールベアリング151と、コア体210及びコイル体220を有し可動マグネット161を回転駆動するコアユニット200と、コアユニット200において可動マグネット161に対向して設けられた磁性体であり可動マグネット161を基準位置に磁気吸引するマグネット位置保持部材240と、を有する。ベース部110は、切欠穴113が設けられた一対の壁部111a、111bを有する。一対の壁部111a、111bのうちの一つの壁部111aの外面側には、コアユニット200が配置される。
【0035】
このような構成において、本実施の形態によれば、コアユニット200と壁部111aとの間に角度センサー部130を配置したことにより、コンパクトな構成でありながら、角度センサーによるセンシング精度が良くかつ角度センサー部の損傷を防止できる、光走査装置100を実現できる。
【0036】
つまり、1つに、角度センサー部130を固定し保護するための追加の構造体が不要なので、部品点数を削減できるとともに装置全体を小型化できる。
【0037】
また、1つに、コアユニット200と壁部111aとの間に角度センサー部130を配置したことにより、角度センサー部130が、回転駆動源であるコアユニット200、及び、回転目的物であるミラー部120の両方の近傍において回転位置を検出できるので、高精度の回転駆動制御の観点、及び、高精度の回転目標位置制御の観点において、これらを両立できるような位置検出を実現できる。
【0038】
また、本実施の形態によれば、角度センサー部130は、光センサー132と、コードホイール134と、コネクター133と、を有する。これにより、光によって角度を検出するので、可動マグネット161近傍に配置したとしてもセンサー検出に悪影響が及ばない。よって、例えば、コードホイール134を可動マグネット161に近接させることが可能であり、小型化に寄与する。つまり、角度センサー部130として、磁気タイプのものを用いた場合には、可動マグネット161との磁気干渉が起こらないように、角度センサー部130と可動マグネット161の距離をある程度大きくする必要があり、この結果、光走査装置100のサイズが大きくなるといった欠点が生じる。本実施の形態の構成によれば、このような欠点を解消できる。また、コネクター133を有するので、センサー出力のためのケーブル(図示せず)を角度センサー部130から分離可能なので、角度センサー部130に一体となってケーブルが導出されている構成と比較して、組付け時や調整時に角度センサー部130からケーブルを分離できるので、作業性が向上する。
【0039】
また、本実施の形態によれば、角度センサー部130は、回路基板131と、回路基板131に実装された光センサー132及びコネクター133と、可動マグネット161に固定されたコードホイール134と、を有し、回路基板131は、壁部111aの外面に形成された凹部115に収まるように配置されている。これにより、角度センサー部130は、壁部111aに埋め込まれるように配置されるので、壁部111aの外面にコアユニット200を隙間なくあるいは小さな間隔で取り付けることができ、光走査装置100のサイズをより小さくできる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、角度センサー部130は、角度センサー部130から外部への光、及び又は、外部から角度センサー部130への光が遮光されている。これにより、光センサー132の発光と走査光とが干渉することで生じる光ノイズを抑制できる。また、日光や照明、走査光などの外部からの光が光センサー132に入射することによる角度検出精度の低下を抑制できる。この結果、高品質の光走査を行うことができる。
【0041】
なお、実際上、この遮光機能は、角度センサー部130が壁部111aとコアユニット200との間に隙間なくあるいは小さな間隔で取り付けられることで実現されている。また実施の形態の場合、コネクター133もこの遮光機能の一部を担っている。つまり、
図1から分かるように、コネクター133は、壁部111aとコアユニット200との間の隙間の一部を塞ぐように配置されるので、角度センサー部130から外部への光の一部及び外部から角度センサー部130への光の一部を遮光している。
【0042】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0043】
上述の実施の形態では、軸部141をベース部110に回転自在に取り付ける軸受けとして、ボールベアリング151を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限定されず、軸受けとしては、例えばエアー軸受けやオイル軸受けなどを用いてもよい。
【0044】
上述の実施の形態では、角度センサー部130に設けられたコネクター133によって、角度センサー部130から外部への光、及び又は、外部から角度センサー部130への光を遮光する場合について述べたが、この遮光は、コネクターのみに限らず、コネクターとそれに接続されるケーブルとの協働により行われてもよい。もしくは、この遮光は、ケーブルのみにより行われてもよい。
【0045】
図1との対応部分に同一符号を付した
図7に示されるように、コネクター133aにはケーブル133bが接続される。これにより、実際上、コネクター133a及びケーブル133bが壁部111aとコアユニット200との間の隙間の一部を塞ぐように配置されるので、コネクター133a及び又はケーブル133bによって、角度センサー部130から外部への光の一部及び外部から角度センサー部130への光の一部が遮光される。さらに、コネクター133(133a)を有さずに、回路基板131から直接ケーブルが導出されている角度センサー部130を用いる場合には、ケーブルを、壁部111aとコアユニット200との間の隙間の一部を塞ぐように配置すれば、ケーブルによって上記遮光が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えばライダー装置等に好適である。
【符号の説明】
【0047】
100 光走査装置
110 ベース部
111a、111b 壁部
112 挿通孔
113 切欠穴
114 ベアリング取付部
115 凹部
120 ミラー部
121 ミラー
122 基板
122a 挿通孔
130 角度センサー部
131 回路基板
132 光センサー
133、133a コネクター
133b ケーブル
134 コードホイール
135、251 止着材
141 軸部
151 ボールベアリング
161 可動マグネット
200 コアユニット
210 コア体
220 コイル体
230 架設コア
240 マグネット位置保持部材
250 固定プレート