(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】光ベースの皮膚処置装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/067 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A61N5/067
(21)【出願番号】P 2019505047
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2017070072
(87)【国際公開番号】W WO2018029194
(87)【国際公開日】2018-02-15
【審査請求日】2020-07-07
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルゲーゼ バブ
(72)【発明者】
【氏名】フェルハーヘン リエコ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531293(JP,A)
【文献】特開昭61-058673(JP,A)
【文献】特表2000-504234(JP,A)
【文献】特表2013-510657(JP,A)
【文献】米国特許第06325794(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06 - A61N 5/08
A61B 18/18 - A61B 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の組織においてレーザ誘起光学破壊を生成するよう構成された装置であって、
パルス光ビームを提供するよう構成された光源と、
走査パルス光ビームを提供するよう構成されたビームスキャナと、
前記哺乳類の組織における位置決めのため前記走査パルス光ビームを焦点に合焦させ、レーザ誘起光学破壊を引き起こすよう構成された、ビームフォーカスユニットと、
を有し、前記ビームスキャナは、前記パルス光ビームの走査の間、前記走査パルス光ビームと仮想面との交点が、前記仮想面内に存する弧状の経路に沿って移動するよう、前記走査パルス光ビームを提供するよう構成され、
前記ビームスキャナは、
第1のビーム軸を持つ前記パルス光ビームを受け、前記第1のビーム軸と一致しない第2のビーム軸を持つ変化させられたビームを出射するよう構成された、ビーム変化部と、
前記変化させられたビームが前記走査パルス光ビームを実装するよう、回転軸のまわりに前記ビーム変化部を回転させるよう構成された、回転機構と、
を有し、前記回転機構は、光路と平行で好適には光路と一致する軸のまわりに前記ビーム変化部を回転させ、
前記ビーム変化部は、前記光路に平行となり、前記光路に対して横方向にシフトされたものとされた、偏向された光路を提供するよう構成される、装置。
【請求項2】
前記ビームスキャナによる走査の間、前記弧状の経路に沿った前記パルス光ビームと同期して又はともに前記フォーカスユニットを動かすよう構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
哺乳類の組織においてレーザ誘起光学破壊を生成するよう構成された装置であって、
パルス光ビームを提供するよう構成された光源と、
走査パルス光ビームを提供するよう構成されたビームスキャナと、
前記哺乳類の組織における位置決めのため前記走査パルス光ビームを焦点に合焦させ、レーザ誘起光学破壊を引き起こすよう構成された、ビームフォーカスユニットと、
を有し
、
前記ビームスキャナは
、
第1のビーム軸を持つ前記パルス光ビームを受け、前記第1のビーム軸と一致しない第2のビーム軸を持つ変化させられたビームを出射するよう構成されたビーム変化部を有し、
前記パルス光ビームの走査の間、前記走査パルス光ビームと仮想面との交点が、前記仮想面内に存する弧状の経路に沿って移動するよう、前記走査パルス光ビームを提供するよう構成され、
前記ビームスキャナによる走査の間、前記弧状の経路に沿った前記パルス光ビームと同期して又はともに前記フォーカスユニットを動かすよう構成され、
前記ビームフォーカスユニットは、前記ビーム変化部とともに回転するよう前記ビーム変化部に結合され、
前記ビーム変化部は、変化させられた光路への光路の変化を実装するための1つ以上のプリズムを有する、装置。
【請求項4】
前記ビーム変化部は、変化させられた光路への光路の変化を実装するための1つ以上のミラーを有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記ビーム変化部は、変化させられた光路への光路の変化を実装するための1つ以上のプリズムを有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記1つ以上のプリズムは、菱形プリズム若しくはダブプリズムを有するか、又は菱形プリズム若しくはダブプリズムから成る、請求項3又は請求項5に記載の装置。
【請求項7】
哺乳類の組織においてレーザ誘起光学破壊を生成するよう構成された装置であって、
パルス光ビームを提供するよう構成された光源と、
走査パルス光ビームを提供するよう構成されたビームスキャナと、
前記哺乳類の組織における位置決めのため前記走査パルス光ビームを焦点に合焦させ、レーザ誘起光学破壊を引き起こすよう構成された、ビームフォーカスユニットと、
を有し、前記ビームスキャナは、前記パルス光ビームの走査の間、前記走査パルス光ビームと仮想面との交点が、前記仮想面内に存する弧状の経路に沿って移動するよう、前記走査パルス光ビームを提供するよう構成され、
前記ビームスキャナは、
第1のビーム軸を持つ前記パルス光ビームを受け、前記第1のビーム軸と一致しない第2のビーム軸を持つ変化させられたビームを出射するよう構成された、ビーム変化部と、
前記変化させられたビームが前記走査パルス光ビームを実装するよう、回転軸のまわりに前記ビーム変化部を回転させるよう構成された、回転機構と、
を有し、前記回転機構は、光路と平行で好適には光路と一致する軸のまわりに前記ビーム変化部を回転させ、
前記回転機構は、
前記ビーム変化部の360度の回転を実装し、
前記ビーム変化部の360度よりも小さい、前後に交番する回転を実装する
よう構成された、装置。
【請求項8】
哺乳類の組織においてレーザ誘起光学破壊を生成するよう構成された装置であって、
パルス光ビームを提供するよう構成された光源と、
走査パルス光ビームを提供するよう構成されたビームスキャナと、
前記哺乳類の組織における位置決めのため前記走査パルス光ビームを焦点に合焦させ、レーザ誘起光学破壊を引き起こすよう構成された、ビームフォーカスユニットと、
を有し、前記ビームスキャナは、前記パルス光ビームの走査の間、前記走査パルス光ビームと仮想面との交点が、前記仮想面内に存する弧状の経路に沿って移動するよう、前記走査パルス光ビームを提供するよう構成され、
前記ビームスキャナは、
第1のビーム軸を持つ前記パルス光ビームを受け、前記第1のビーム軸と一致しない第2のビーム軸を持つ変化させられたビームを出射するよう構成された、ビーム変化部と、
前記変化させられたビームが前記走査パルス光ビームを実装するよう、回転軸のまわりに前記ビーム変化部を回転させるよう構成された、回転機構と、
を有し、前記回転機構は、光路と平行で好適には光路と一致する軸のまわりに前記ビーム変化部を回転させ、
前記第1のビーム軸と前記第2のビーム軸とは、前記第1のビーム軸に垂直に測定される距離を定義し、前記距離を変化させるための更なる機構を有する、装置。
【請求項9】
前記更なる機構は、
少なくとも1つが前記第1のビーム軸に対して傾けられた、1つ以上のビーム屈折又は反射面、又は
間の距離が変化させられることができる、少なくとも2つのビーム屈折又は反射面
を含む、前記ビーム変化部を有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記フォーカス
ユニットは、
前記走査パルス光ビームの収束を増大させるための前フォーカスレンズと、
凸状の光入射面及び光出射面を持つフォーカスレンズと、
を有する、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記前フォーカスレンズと前記フォーカスレンズとの間の間隔を調節することにより、前記フォーカス
ユニットから
前記焦点までの距離を制御するためのフォーカスコントローラを有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ビームスキャナの前に配置されたビーム圧縮部と、
前記ビームスキャナの後のビーム拡大部と、
を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記フォーカス
ユニットにおける収差の補償を提供するための、前記ビーム
スキャナの前の光路に配置された、調節可能なレンズシステムを更に有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚組織のような哺乳類の組織においてレーザ誘起光学破壊を生成するための、人間又は動物の皮膚の(美容的)処置のために用いられることができる装置に関する。該装置は従って、皮膚処置装置であっても良いし、内視鏡又はカテーテルのような身体内処置装置であっても良い。該装置は、光源と、該装置の外部に位置する焦点に該光源の光入射ビームを合焦させるための光学系と、を有し、それにより、組織(例えば皮膚、臓器境界)の境界(表面)の下の組織に焦点が位置するようにし、該焦点における組織のレーザ誘起光学破壊を引き起こすことができる。
【背景技術】
【0002】
斯かる装置は例えば、しわ処置又はグルーミング(grooming)を含む皮膚活性化(rejuvenation)のような美容的処置のために利用されている。皮膚処置においては、該装置は、表皮には影響を略与えずに、処置されるべき皮膚の真皮において焦点を生成するために用いられる。レーザのパワー及びパルス継続時間、並びに焦点の寸法は、皮膚組織の再成長を促し、それによりしわを少なくするように、レーザ誘起光学破壊(LIOB)現象が皮膚に影響を及ぼすように選択される。斯かる装置の例は、国際特許出願公開WO2008/001284において開示されている。
【0003】
グルーミングにおいては、該装置は、光を毛の内部に合焦させ、LIOB現象が毛が切断されるようにするために用いられる。例えば、国際特許出願公開WO2005/011510は、所定のパルス時間の間にレーザビームを生成するためのレーザ光源と、レーザビームを焦点へと合焦させるための光学系と、目標位置に該焦点を位置決めするためのレーザビーム操作器と、を有する、毛を短くするための斯かる装置を記載している。該焦点の寸法、及び生成されるレーザビームのパワーは、該焦点において、レーザビームが、毛組織についての特徴的な閾値を超えるパワー密度を持つようなものとされ、該閾値の上では、所定のパルス時間の間、毛組織においてレーザ誘起光学破壊(LIOB)現象が生じる。
【0004】
一般に、レーザ誘起光学破壊(LIOB)は、焦点におけるレーザビームのパワー密度(W/cm2)が、特定の媒体に特徴的な閾値を超えたときに、パルス状の該レーザビームの波長に対して透明又は半透明な該媒体において生じる。該閾値の下では、当該媒体は、該レーザビームの波長に対して、比較的低い線形吸収特性を持つ。該閾値の上では、該媒体は、該レーザビームの波長に対して、大きな非線形吸収特性を持ち、このことは該媒体のイオン化及びプラズマの形成の結果である。当該LIOB現象は、キャビテーションや衝撃波の生成といった幾つかの力学的な影響に帰着し、LIOB現象の位置の周囲において該媒体を損傷させてしまう。LIOB現象は、全てのエネルギーが媒体の膨張のために用いられる、断熱膨張とみなされ得る。そのため、本発明の装置は、レーザ光による媒体の直接の加熱に基づく装置とは区別される必要がある。パワー密度及びレーザ条件は、一般に同等ではない。
【0005】
毛組織は、約500nmと2000nmとの間の波長に対し、透明又は半透明である。当該範囲内の波長の各値に対して、焦点におけるレーザビームのパワー密度(W/cm2)が、毛組織について特徴的な閾値を超えたときに、焦点の位置において毛組織においてLIOB現象が生じる。該閾値は、水性媒体及び組織について特徴的な閾値に近く、レーザビームのパルス時間に依存する。とりわけ、望ましいパワー密度の閾値は、パルス時間が増大すると減少する。
【0006】
有意な損傷即ち毛の初期破壊を引き起こすのに十分に効果的なLIOB現象の結果としての力学的効果を達成するためには、例えば10nsといったオーダーのパルス時間が十分であると考えられる。このパルス時間の値のためには、焦点におけるレーザビームのパワー密度の閾値は、2×1010W/cm2のオーダーとなる。上述したパルス時間、及び例えばかなり大きな開口数を持つレンズによって得られるかなり小さな焦点サイズに対して、当該閾値は、数十mJの総パルスエネルギーだけで得られることができる。同様のオーダーのパラメータ値は、国際特許出願公開WO2008/001284により詳細に記載されているように、皮膚組織におけるLIOB効果を生成するために用いられることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
皮膚活性化のための光学破壊の効果は、皮膚の光学的及び構造的な特性、焦点におけるレーザ強度、光学的結合等に依存する。
【0008】
処置は、組織の領域に亘るLIOB焦点の走査を必要とする。
【0009】
十分に大きな速度で大きな表面積を走査することに困難があり、領域毎の処置時間が一般に長くなる。
【0010】
本発明の目的は、これらの困難を少なくとも部分的に克服することにある。該目的は、独立請求項により定義される装置により達成される。従属請求項は、有利な実施例を定義する。有利な実施例は、従属請求項において定義される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様による例は、哺乳類の組織においてレーザ誘起光学破壊を生成するよう構成された装置であって、
パルス光ビームを提供するよう構成された光源と、
走査パルス光ビームを提供するよう構成されたビームスキャナと、
前記哺乳類の組織における位置決めのため前記走査パルス光ビームを焦点に合焦させ、レーザ誘起光学破壊を引き起こすよう構成された、ビームフォーカスユニットと、
を有し、前記ビームスキャナは、前記パルス光ビームの走査の間、前記走査パルス光ビームと仮想面との交点が、前記仮想面内に存する弧状の経路に沿って移動するよう、前記走査パルス光ビームを提供するよう構成された、装置を提供する。
【0012】
該システムにおける対物レンズの設計は、光(ビーム)の後対物走査及びことによると前対物走査を、不可能ではないまでも困難にする。それ故、意図される領域上の対物レンズ自体(即ち光学アセンブリ全体)を走査することが、十分な速度で大きな表面積に対処するための好適な解決策である。
【0013】
該システムは、経路に沿った光ビームの追跡を実装するため、回転する光学部品を用いる。このようにして、変化する線形走査方向の細かな動きのために組織表面に沿った(即ち皮膚上の)ビームの高い移動速度が可能となり、必要とされる加速及び減速が大きく低減されるか又は回避さえされる。本発明は、回転運動の反転よりも困難で多くの振動をもたらす並進運動の反転が回避されるという事実を利用することができる。
【0014】
更に、既知のシステムにおいては、動きの極端な部分において皮膚の暴露を避けるため、フォーカスシステムの走査方向の反転の間の加速及び減速の間、レーザはスイッチオフされる必要があるが、このことは本発明の設計を用いて回避されることができる。このことは、走査が略一定の速度での閉じたループに沿ったものであり、走査の動きの反転が必要とされる場合、特に成り立つ。
【0015】
本発明は斯くして、より効率の良い処置を実現する。本発明はまた、走査を含むハンドピース及びユーザにより利用されるべき及び光学部品が、より制御可能なものとなり、安価となり及び/又は小型になることを実現する。
【0016】
本発明は、人間又は動物の組織の処置のために用いられることができる。特に、組織の境界又は皮膚の境界の組織が処置されることができる。
【0017】
前記装置は、前記ビームスキャナによる走査の間、前記弧状の経路に沿った前記パルス光ビームと同期して又はともに前記フォーカスユニットを動かすよう構成されても良い。
【0018】
前記ビームスキャナは、
第1のビーム軸を持つ前記パルス光ビームを受け、前記第1のビーム軸と一致しない第2のビーム軸を持つ変化させられたビームを出射するよう構成された、ビーム変化部と、
前記変化させられたビームが前記走査パルス光ビームを実装するよう、回転軸のまわりに前記ビーム変化部を回転させるよう構成された、回転機構と、
を有しても良い。
【0019】
前記回転機構は、光路と平行で好適には光路と一致する軸のまわりに前記ビーム変化部を回転させるものであっても良い。
【0020】
前記ビーム変化部は、前記光路に平行となり、前記光路に対して横方向にシフトされたものとされた、偏向された光路を提供するよう構成されても良い。
【0021】
前記ビーム変化部は、ビーム偏向器若しくはビーム反射器であっても良く、又はビーム偏向器若しくはビーム反射器を有しても良い。
【0022】
前記ビームフォーカスユニットは、前記ビーム変化部とともに回転するよう前記ビーム変化部に結合されても良い。このことは、回転的な走査が実装される一方で、好適な光学的な結合を提供する。
【0023】
該ビーム変化部は、幾つかの方法で実装されることができる。該ビーム変化部は、パルス光ビームを屈折させる又は反射するための1つ以上の面を有しても良い。斯かる面を持つ装置は、変化させられた光路への光路の変化を実装するためのミラーであっても良い。これは軽量な方法である。複数の斯かる要素が用いられる場合には、別個のミラーが用いられても良い。これらミラーは、
図4のような実装においては独立して動かされても良い。
【0024】
前記ビーム変化部は、変化させられた光路への光路の変化を実装するための1つ以上のプリズムを有しても良い。該プリズムは、菱形プリズムを有しても良い。該プリズムは、2つの内部全反射を利用して、該プリズムを通したZ字型のビーム経路を提供し、これにより経路軸の横方向の(即ちビーム方向に垂直な)シフトを実装する。
【0025】
該プリズムは、ダブプリズムを有しても良い。該プリズムは、1つの反射と1つの内部全反射とを利用して、該プリズムを通したV字型のビーム経路(Vからの左右の入射及び出射)を提供し、これにより経路軸における横方向の(即ち左右のビーム方向に垂直な)シフトを実装する。
【0026】
これらの2つのプリズム設計は、内部全反射を利用し、高い損傷閾値及び非常に小さな損失をもたらす。また、該プリズムは、回転的なバランス及び堅固さ並びに小型さに対する好適な機会を与える走査を実装するために、1つの装置として回転させられることができる。
【0027】
該装置において、前記回転機構は、
前記ビーム変化部の360度の回転を実装するか、又は
前記ビーム変化部の360度よりも小さい、前後に交番する回転を実装する
よう構成されても良い。例えば、該方法は、プリズム/ミラーの360度の回転を実装しても良いし、又は該プリズム/ミラーの360度よりも小さい交番する回転を実装しても良い。該回転システムは、大きな表面積が十分に高い速度で走査されることを可能とする。該システムは、皮膚輪郭に追従し、皮膚の局所的な曲線に対応し、皮膚に圧力をかけることが可能である。該システムは、比較的高いアスペクト比を持ち、同時に輪郭追従に対する著しい性能を示すことが可能である。
【0028】
前記第1のビーム軸と前記第2のビーム軸とは、前記第1のビーム軸に垂直に測定される距離を定義し、前記距離を変化させるための更なる機構を有しても良い。
【0029】
ここで、調節可能な弧状の経路が実装されても良い。この調節可能性は、該装置の使用と使用との間、又は使用されている間、手動であっても良いし電動であっても良い。それ故、走査の領域は、ユーザによる必要に応じて設定されることができる。
【0030】
前記更なる機構は、
少なくとも1つが前記第1のビーム軸に対して傾けられた、1つ以上のビーム屈折又は反射面、又は
間の距離が変化させられることができる、少なくとも2つのビーム屈折又は反射面
を含む、前記ビーム変化部を有しても良い。
【0031】
ビーム軸の方向を変化させる面の傾斜は便利なものとなり得、弧状の経路の半径の変化を実装するための形状因子の小さな方法となり得る。例えば、ビーム軸32を軸34に変化させるために用いられる反射面は、距離36が増大するよう、軸34と軸32との間の角度を増大させるように傾けられ得る。この原理は、
図4の実装においても利用され得る。
【0032】
例えば、一方は軸42を軸44に変化させるために用いられ、他方は軸44を軸47に変化させるために用いられる、2つの反射面の間の方向42に沿った距離を増大させることは、距離46の増大に導く。この機構は、手動であっても電動であっても良い、軸42に沿ったユニットの滑動のみを必要とするものとなり得る。
【0033】
前記フォーカスシステムは、
前記走査パルス光ビームの収束を増大させるための前フォーカスレンズと、
凸状の光入射面及び光出射面を持つフォーカスレンズと、
を有しても良い。該フォーカスレンズは、表面接触レンズ(例えば組織表面レンズ)であっても良い。代替としては、フォーカスレンズがその背後に位置する、他の出射ウィンドウがあっても良い。
【0034】
この構成は、望ましい場合には使用の間であっても、制御可能な経路をもたらすフォーカスシステムを提供する。
【0035】
該前フォーカスレンズは、非球面レンズを有しても良い。
【0036】
該前フォーカスレンズは、
凸状の光入射面と、
平面状の光出射面、又は、前記光入射面の平均曲率半径よりも大きな平均曲率半径を持つ凸状の光出射面と、を有しても良い。
【0037】
皮膚接触レンズは、BK7ガラス又は溶融石英から形成されても良い。
【0038】
皮膚に接触するための皮膚接触レンズの外側面は、好適には反射防止コーティングを有する。このことは、皮膚からの反射光によるフォーカスシステム自体に対する損傷を防止し得る。
【0039】
一構成においては、前記装置は更に、前記フォーカスシステムにおける収差の補償を提供するため、前記ビーム走査システムの前に、電気的に調節可能なレンズシステムを有する。このことは、種々の焦点深さにおいて、LIOB効率が維持されることを可能とする。
【0040】
第1の例においては、該調節可能なレンズシステムは、電気的に調整可能な高分子レンズを有する。該調節可能なレンズシステムはこのとき、電気的に調整可能な高分子レンズの出射部において、発散レンズを更に有しても良い。当該発散レンズは、高分子レンズの初期形状の補償を提供する。
【0041】
第2の例においては、該調節可能なレンズシステムは、エレクトロウェッティングレンズを有する。
【0042】
前記装置は、前記前フォーカスレンズと前記フォーカスレンズとの間の間隔を調節することにより、前記フォーカスシステムからの距離を制御するためのフォーカスコントローラを有しても良い。
【0043】
前記装置は、
前記ビームスキャナの前に配置されたビーム圧縮部と、
前記ビームスキャナの後のビーム拡大部と、
を有しても良い。
【0044】
該ビーム圧縮部は、ビーム走査の前に備えられても良く、ビーム拡大を備えることは、ビーム走査の後に備えられても良い。
【0045】
該装置は更に、前記フォーカスシステムにおける収差の補償を提供するための、前記ビーム走査システムの前の光路に配置された、調節可能なレンズシステムを有しても良い。このことは、フォーカスシステムが調節可能な焦点深さを提供する場合に、特に有用である。最適な焦点品質を生成するため、各深さは、異なる収差補償を必要とし得る。
【0046】
本発明はまた、光ベースの皮膚処置方法であって、
毛又は皮膚組織のレーザ誘起光学破壊によって皮膚を処置するためのパルス入射光ビームを提供するステップと、
前記光ビームがプリズムに入射するときの入射軸のまわりに前記プリズムを回転させることにより、前記ビーム対する横方向のシフトを実装する前記プリズムを用いて、円形又は弧状の経路を定義するよう前記ビームを走査するステップと、
前記毛又は皮膚組織における焦点に前記入射光ビームを合焦させるステップであって、フォーカスシステムが前記プリズムとともに回転するステップと、
を有する方法を提供する。
【0047】
本方法は、非治療的方法、特に皮膚活性化又は脱毛のための美容的な方法である。該方法は、例えば色素、起伏(しわ低減)に関して、皮膚の外観を変化させるために用いられ得る。
【0048】
本発明の例は、添付する模式的な図面を参照しながら、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図2(A)】本発明により実装されるビームの走査により追従される弧状の経路の例を示す。
【
図2(B)】本発明により実装されるビームの走査により追従される弧状の経路の例を示す。
【
図2(C)】本発明により実装されるビームの走査により追従される弧状の経路の例を示す。
【
図2(D)】本発明により実装されるビームの走査により追従される弧状の経路の例を示す。
【
図3】弧状の経路のビーム走査の第1の実装を示す。
【
図4】弧状の経路のビーム走査の第2の実装を示す。
【
図5(A)】例えば
図4の実装により横方向のビームシフトを実装するためのプリズムを示し、ビーム拡大及び極端な焦点位置も示す。
【
図5(B)】例えば
図4の実装により横方向のビームシフトを実装するためのプリズムを示し、ビーム拡大及び極端な焦点位置も示す。
【
図5(C)】例えば
図4の実装により横方向のビームシフトを実装するためのプリズムを示し、ビーム拡大及び極端な焦点位置も示す。
【
図5(D)】例えば
図4の実装により横方向のビームシフトを実装するためのプリズムを示し、ビーム拡大及び極端な焦点位置も示す。
【
図6】種々の焦点深さ位置を実装するためのレンズカルーセルを示す。
【
図7(A)】レンズ距離の変化により調節可能なフォーカスを持つフォーカスシステムを示す。
【
図7(B)】レンズ距離の変化により調節可能なフォーカスを持つフォーカスシステムを示す。
【
図7(C)】レンズ距離の変化により調節可能なフォーカスを持つフォーカスシステムを示す。
【
図8】収差補償を提供するためのレンズシステムの第2の例を示す。
【
図9】ビーム圧縮、収差補償、走査、ビーム拡大及び合焦のシステムを通した光線経路を示す。
【
図10】収差補償のためのレンズシステムを含むよう変更された
図1のシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、組織におけるレーザ誘起光学破壊(LIOB)の生成のための装置に関する。該装置は例えば、人間又は動物のような哺乳類の皮膚の(美容的)処置のための皮膚処置装置であっても良い。該装置は、少なくとも光ビームが組織において合焦させられたときに、該組織においてLIOBを引き起こすのに適した強度を持つ光ビームを提供するための、光源(通常は及び好適にはレーザ)を有する。この目的のため、該システムは、フォーカスシステムの外部に位置する焦点を定義する、合焦させられた光ビームを生成するためのフォーカスシステムを含み、該フォーカスシステムを操作することにより、処置されるべき組織のなかに焦点が位置するようにさせられることができる。好適には、該焦点は斯くして、処置されるべき組織の表面よりも下に位置させられ得る。
【0051】
該装置はまた、処置されるべき組織の表面上の曲線の経路に沿って、合焦させられたビームを走査するよう構成された、ビーム走査システムを含む。該システム及び走査の種類は、組織の表面の下の及び該表面に沿った焦点の平滑な移動を確実にし、なおかつ所定の表面領域の十分な走査速度が実現されるようにする。
【0052】
該走査システムは、幾つかが以下に説明されるような、本発明による多くの方法で実装されることができる。しかしながら、本発明を詳細に説明する前に、皮膚の美容的処置のためのものである、本発明が関連する装置のタイプの一例の概略が示される。グルーミングの目的又はその他の組織の処置の目的のための装置は、極めて類似する方法で構築され得る。
【0053】
図1における装置1は、組織表面(例えば表皮の外側面)5を持つ組織(本例においては皮膚)3の処置のために配置されている。
【0054】
該装置は、本例においてはパルス状のレーザビーム11を生成するためのレーザである光源9と、レーザビーム11を操作して焦点15において合焦させられる合焦レーザビーム11'へと合焦させるための光学系13と、を有する。
【0055】
哺乳類(例えば人間)の皮膚3は、異なる光学的特性を持つ複数の層を有する。表皮は、最も外側の層から成り、防水保護障壁を形成する。表皮の下には真皮が位置しており、真皮は装置1を用いた皮膚処置の目標であるコラーゲン繊維を有する。本発明の皮膚処置及び装置の目的は、表皮に大きく影響を与えないままとしつつ、微視的な病変を生成するために、真皮のコラーゲンにパルスレーザビーム11の焦点15を生成することである。該病変は、新たなコラーゲン形成に帰着し得、それに伴い例えばしわ低減のような皮膚活性化が達成され得る。
【0056】
従って、装置1の光学系及びフォーカスシステムは、焦点15が、表面5の下の皮膚3内の目標位置に位置することができるよう設計される。それ故、該フォーカスシステムは、焦点が、該フォーカスシステムの外であり、該システムの出射ウィンドウ/レンズから特定の距離に位置するよう、設計される。焦点15の寸法及び生成されるレーザビームのパワーは、焦点15において、レーザビーム11が、皮膚組織についての特徴的な閾値を超えるパワー密度を持つようなものとされ、該閾値の上では、所定のパルス時間の間、レーザ誘起光学破壊(LIOB)現象が生じることができる。フォーカスシステムはまた、LIOBを引き起こすことが可能な光エネルギーを用いる場合であっても、表皮が大きく影響を受けないままとなるよう設計される。
【0057】
該光源は、該光源からの光に対して、皮膚表面が少なくとも部分的に、好適には略透明で非散乱性となるような、波長又は波長範囲を持つレーザビームを提供するよう構成される。このことは、例えば3mmに達する皮膚への光の適切な浸透深さを可能とする。該光源はまた、焦点における組織においてLIOB現象を引き起こすのに十分なパルス毎のエネルギーを提供するよう構成される。1064nmの波長のレーザが好適なレーザタイプであるが、他のタイプが用いられても良い。従って、本例においては、該光源は、約1064nmの波長の、約5乃至10nsのパルス継続時間を持つレーザパルスを発する、QスイッチNd:YAGレーザを有する。しかしながら、上述したように、例えばNd:Cr:Yag3-レベルレーザ及び/又はダイオードレーザのような、本分野において知られた他のレーザが用いられても良い。
【0058】
光学系13の例は、レーザビーム11を操作するための更なる光学要素を有するが、これらは必ずしも全てが、以下に説明されるように、本発明を実装するために必須なものであるわけではない。斯くして、装置1はまた、ビーム反射システム17、ビーム成形システム19、フォーカスシステム23を含み、これらシステムは、レーザビーム11の光を操作するための、1つ以上のミラー、プリズム、ビームスプリッタ、偏光板、光ファイバ、レンズ、開口、シャッタ等を有しても良い。
【0059】
本例におけるビーム反射システム17は、ダイクロイックビームスプリッタであるが、他のものが利用されても良い。ビーム反射及びビーム成形は、ビームの拡張又は収縮をもたらし、必要に応じてビームに対する付加的な収束又は発散を導入する。
【0060】
本例におけるフォーカスシステムは、1つ以上のレンズを持つ高いNAのレンズシステムである。レーザビーム合焦パラメータは、例えばフォーカスシステムの開口数の調節によって、ビーム成形及び/又はフォーカスシステムの適切な設定により決定されても良い。フォーカスシステムの開口数NAについての適切な値は、0.05<NA<nmの範囲から選択されても良く、ここでnmは動作の間のレーザ波長についての媒体の屈折率である。
【0061】
光学系13及び/又はレーザビーム11のビーム経路の少なくとも一部は、例えば目の安全のため、例えば不透明な管及び/又は1本以上の光ファイバを有する、光遮蔽包囲部のなかに囲まれても良い。
【0062】
該光学系はまた、ビーム11を操作して、装置1の使用の間に皮膚の領域を処置するために、合焦させられたビーム11'及び焦点15が、皮膚3の表面5に亘って走査されるように設計された、ビーム走査システム21を含む。走査システム21は、この目的のため、走査プリズムを有しても良い。
【0063】
先行技術の走査システムは、線形の軌道に沿った前後の走査のために設計されていた。この設計及び走査の方法は、以下に説明されるように、装置の使用の間の困難を引き起こす。
【0064】
例えば、光源9は、所定のパルス継続時間(本例においては約5乃至10ns)と、例えば1000Hzのパルス反復速度(パルス反復周波数)を持つ、所定の数のレーザパルスを発するよう構成される。典型的なLIOB病変の直径は200マイクロメートル以下のオーダーとなり得るため、処置の間の病変の重複を防止するためには、少なくとも200μmのオーダーの典型的な病変のピッチが必要とされ得る。斯くして、皮膚の100%よりも小さい領域の処置を利用する処置方式(方法)は、既に200mm/sの走査速度を必要とし得る。
【0065】
これら走査速度を手で適用した場合には制御を失うため、当該走査速度はいずれの手動走査のみの選択肢を排除する。更に、いずれの開始-停止型の走査システムも、短距離の加速で当該走査速度に到達することは困難となるため、機械的な振動及び光源(例えばレーザ)の容量の不十分な使用に導く。更に、斯かるシステムにおいては、皮膚の暴露を避けるため、フォーカスシステムの加速及び減速の間、レーザはスイッチオフされる必要がある。他方、より容易に制御される低速な走査速度(より低いレーザパルス反復速度とあわせて)は、典型的に処置される表面領域に対して望ましくない著しく増大した処置時間に導く。
【0066】
これを克服するため、本発明は、急速な転回又は線形の動きの反転を回避する、曲線状の経路又は軌道に沿った連続的な動きの走査を利用する。該装置、特にフォーカスシステムと組み合わせた走査システムは、斯かる走査を実装するよう構成される。斯かる平滑な軌道の走査により、振動及びレーザ容量の非効率な利用を伴わずに、増大した走査速度が得られる。該増大した走査は次いで、改善した制御を伴う低速な手動の操作を可能としつつ、処置されるべき領域について許容可能な処置時間を提供する。
【0067】
図2A及び2Bは、本発明による使用に適したレーザパルスが提供される閉ループ経路又は軌道の幾つかの好適な例を示す。
図2A及び2Bは、それぞれ円形の経路20及び楕円の経路21を示す。しかしながら、螺旋状の経路(増大する又は減少する半径を持つ円)のような他の経路が用いられても良い。軌道に沿った焦点の移動の速度及びレーザ反復速度に依存して、軌道20又は21に沿った所定の相互距離において、複数のLIOB事象(星印によって表される)が生じる。斯くして、軌道は生じるLIOB事象とともにサンプリングされる。相互の距離は、走査速度と組み合わせて、レーザパルス反復速度によって設定されることができる。
図2C及びDは、処置の領域をカバーするために、方向22及び23に沿った並進がどのように用いられるかを示す。この図においては、閉じたループの軌道が走査され、その後に走査の中心(例えばフォーカスシステムを動かすことによる)が並進されて、第2の走査を提供する等する。しかしながら実際には、並進及び走査は連続的であり、円又は楕円は
図2C及びDに類似した連続的な反復運動により置き換えられる。従って、軌道の形状は、並進の方向とあわせて、処置されるべき領域の形状を決定する。円の対称性のため、円形の軌道の場合には、斯かる領域形状(円の直径に等しい幅を持つ処置領域帯)は並進の方向22には依存しないが、このことは例えば楕円軌道の場合には当てはまらない。後者は、方向23における並進に比べて、方向22に並進する場合に、広い処置領域をもたらす。このことは、狭い領域及び広い領域が処置される必要がある場合に有利となり得る。同じ効果は、円の並進を用いても得られ得るが、この場合には、表面上で同じLIOB領域密度を保つためには、ことによると軌道に沿ったLIOB反復距離と組み合わせて、直径(円の半径)が調節される必要がある。
【0068】
斯くして、領域をカバーするために、好適に制御可能なあまり高速ではない並進とともに、高速な回転が用いられることができ、その一方で、パルス反復周波数は、比較的高く保たれることができ、該領域に亘る十分な病変密度を確実にする。勿論、半径の違いを補正するため、回転速度、回転の半径及び/又はパルス反復速度が調節されても良く、これにより、病変の密度(パルス毎に1つ)が、螺旋状の軌道に沿って均一に分布させられても良い。
【0069】
走査及び並進の表示の例として、以下が考察され得る。レーザのパルス反復速度及び生成される病変のサイズに関連して、最小の回転速度がある。例えば100マイクロメートルの病変サイズ及び1000Hzのレーザパルス速度を考慮する。このとき、走査軌道(先行技術においては直線状である)に沿った動きは、重なる病変を回避するため、少なくとも100mm/sとなるべきである。一例として、約0.75cmでのビーム(焦点)の円形の走査の場合の、1.5cmの断面積を持つ装置のヘッドを用いる場合、斯かる速度を達成するためには、毎秒約2回転以上の回転速度が必要となる。重なりを防ぐため、並進のための手動の動きの速度は、ここでもまた少なくとも0.2mm/sとなるべきである。このことは、100%のカバーを意味する(単一の処置については大きすぎる見込みが高い)。より見込みが高いものとして、レーザエネルギー及び処置深さに依存して、手動の動きがより速く(例えば2乃至5mm/s)、典型的な病変サイズはより小さく(例えば50マイクロメートル以上)となり得る。10%のカバーに到達するため(単一の経路で)、例えば毎秒約6回転の回転速度、及び約0.5乃至1.5mm/s、好適には0.6乃至1.2mm/sの手動の動きを用いることとなり得る。これらの数字は、レーザパルス周波数に対して線形のスケールとなる。斯かるパラメータを用いると、10%LIOB密度での100cm2の領域の処置は、約7.5分を要する。しかしながら、パルス周波数を減少させることは、単一の経路でのカバーを維持するためには、並進運動の減少を引き起こすことに留意されたい。それ故、領域の総処置時間は増大する。
【0070】
図2Aにおいては、閉ループ経路全体に沿ったLIOBイベントがある。しかしながら、
図2Cの走査によれば、このことは、並進により1つの点において二重のLIOB事象が生じ得ることを意味する。これを回避するため、例えば曲線の少なくとも一部について、シャッタを用いて光源が遮断又は遮蔽されても良い。
図2Bは、走査経路のうちの半分においてのみ生じるLIOB事象を示している。ここでは、方向22における走査は、LIOB事象の重なりを生じない。
【0071】
本発明によれば、走査システムは、領域に亘る焦点の平滑な走査を実装するため、ビーム走査又は操作を提供するよう構成される。例えば
図1の装置のビーム走査システムは、本発明によるシステムと置き換えられても良い。以下に、種々の実装が説明される。
【0072】
図3は、本実装を提供するための走査システムの第1の設計を示す。ビーム走査システム30は、光学素子31であって、光源から来て第1の方向32に沿って該光学装置に入るパルス光ビーム11を受けて操作するための光学素子31を含む。光学素子31は、向きを変えられたパルス光ビーム11' 'が光学素子31から出るよう、第1の方向32を第1の方向とは異なる第2の方向34へと変化させるように構成される。向きを変えられたパルス光ビーム11' 'は、焦点15を持つ合焦ビーム11'
へとフォーカスシステム23によって合焦させられる。以上に説明されたように、使用の間、焦点15は、組織表面5の下において、組織3に位置させられる。本例においては、光学素子31は、軸33のまわりに、フォーカスシステム23とともに(同期して)回転する。その結果、合焦させられたビーム11'及び焦点15もまた、該軸のまわりに回転し、それにより表面5上での回転する軌道を実装する(例えば
図2A乃至2D参照)。焦点は、該軸のまわりに半径36で回転する。当該半径は、
図2に関連して上述した装置ヘッドの0.75cmに対応し得る。回転の間、該半径は一定であり
図2Aにおけるような軌道を実装するが、代替として、該半径は例えば以上の
図2Bのような軌道を実装するよう極限値の間で変化しても良い。該表面上の並進軸の位置の手動の又機械的な並進はここでは、
図2に関して説明されたように、領域の処置を好適な制御でカバーするために用いられ得る。
【0073】
本例においては、レンズシステム23は、傾けられた方向34(方向32に対して傾けられた)を実現するよう、僅かに傾けられる。このことは常に成り立つ必要はないが、最も効率の良い合焦のために好適である。
【0074】
ビーム11は平行ビームとして描かれているが、このことは本発明の実施例のために成り立つ必要はない。後に好適な合焦が実現されることができる限り、収束又は発散ビームが好適な効果を伴って、向きを変化させられ得る。
【0075】
光学素子31は、パルスビーム11の向きを変えるための1つ以上のミラーを有しても良いし、又は斯かるミラーから成っても良い。代替として、又はこれに加えて、1つ以上のプリズム(例えば三角プリズム)が用いられても良い。好適には、光の損失に帰着しない要素、即ち全ての光が最終的に方向34に向けられるよう全反射(内部反射)に基づいて動作する要素が用いられる。プリズムは、この目的のために用いられ得る。
【0076】
図3の例においては、フォーカスシステム23は、走査システムと同期して回転する。該フォーカスシステムは、光学素子31の回転と同期して駆動される独立した回転子の上に載置されても良い。しかしながら、該フォーカスシステムを、光学素子31の回転機構に固定するほうが容易である。このことは、高いエネルギーが用いられ焦点深さ制御が正確である必要があるために重要である、フォーカスシステムと走査システムとの間の好適で安定した光学的な整合の簡単な方法を提供する。しかしながら、このことは、皮膚の表面上を掃引するフォーカスシステムがあることを意味する。斯かる掃引を防止する代替は、フォーカスシステムが、2つよりも多い、好適にはより大きな複数のレンズを、合焦ビーム11'回転軌道に沿って有することである。
図2Aを参照すると、回転運動が引き出されることができるよう、例えば所望の量のLIOB事象(星印)に等しいレンズの量が選択されても良い。このとき、最少で3つのレンズが用いられるべきである。これらのレンズは、ビームの回転及びパルス反復速度が、次のレーザビームが到来するたびに、走査システムがこれらレンズのうちの1つ、好適には次の又は後のレンズと直線上に並ぶよう選択される限り、走査システムとともに回転する必要はない。このことは、例えばレンズの数の倍数によって除算されたパルス周波数である回転周波数を必要とし得る。整合を補正するために、フィードバックシステムが用いられても良い。しかしながら、走査システムとともに回転するフォーカスシステムが好適である。
【0077】
好適な焦点深さ制御が実現されながらも、平坦ではない場合がある表面上の平滑な動きを与えるため、フォーカスシステム、特にその出射レンズが、レンズ軸が表面に対して垂直に(傾けられずに)配置されることが好適となり得る。
図4は、これを実装するための走査システムを示す。斯くして、ビーム走査システム40は、第1の方向42に沿って光学素子に入るパルス光ビーム11を受けて操作するための、光学素子41を含む。光学素子41は、第1の方向42を、該第1の方向とは異なる第2の方向44に変化させるよう構成される。しかしながら、光学素子41から出る前に、第2の方向44を持つビームは、もう一度第3の方向47へと向きを変えられ、該方向47は本例においては光方向42と平行であり、これにより、光学素子41に入るビーム11に対して横方向に移動させられた又はシフトされたパルス光ビーム11' 'が、光学素子41を出ることとなる。該シフトは、回転軸43及びビーム11の第1の方向42に垂直であり得る方向48に沿って生じる。シフトされたパルス光ビーム11' 'は続いて、フォーカスシステム23により焦点15を持つ合焦ビーム11'へと合焦させられる。
【0078】
以上に説明されたように、当該走査システムを持つ装置の使用の間、焦点15は、組織表面5の下において、組織3に位置させられる。本例においては、光学素子41は、軸43のまわりに、フォーカスシステム23とともに(同期して)回転する。その結果、合焦させられたビーム11'及び焦点15もまた、該軸のまわりに回転し、それにより表面5上での回転する軌道を実装する(例えば
図2A乃至2D参照)。焦点は、軸43のまわりに半径46で回転する。該表面上の並進軸の位置の手動の又機械的な並進はここでは、
図2に関して説明されたように、領域の処置を好適な制御でカバーするために用いられ得る。走査システムの使用は、
図3の例に関して説明されたものと同様であり得る。
【0079】
図3の走査システムと比べて、
図4のものは、フォーカスシステムの出射レンズのレンズ軸が、表面と垂直になることに帰着する。このことは、光ビーム11' 'の第3の方向47が、ビーム11がビーム11' 'と平行になるが、少なくとも部分的に一致しないよう、光学素子が設計されるためであり得る。しかしながら、
図4においては、本発明が実装されるためには、ビームが平行となる必要はなく、表面5に対する垂直に対して傾けられても良い。このことは、ここでもまた
図3のような状況に導く。
【0080】
図3又は4のビームが傾けられた場合、皮膚が押し付けられる凸状の接触ウィンドウが用いられても良く、その内側においてレンズが回転しても良い。
【0081】
図4の光学素子においては、ビームの方向を変えるためにミラーが用いられても良い。代替として、プリズムが用いられても良い。ここでもまた、内部全反射素子が好適である。
【0082】
走査システム30及び40は、使用セッション間に又は継続的に回転半径36又は46の変化を可能とするよう構成されても良い。このことを行うための一方法は、例えば光学素子31又は41の枢動により方向34又は37が傾くよう傾き39又は49を実現する機構を実装することである。代替としては、好適にはビーム47が種々の半径46について同じ方向に保たれるべきである場合、光学素子41は、横方向の並進48の変化を可能とするよう構成されても良い。このことは例えば、第1の方向変化のための要素と第2の方向変化のための要素との間の方向42に沿って測定される距離を増大させて、ビーム11が方向44に沿って長い距離を進むようにすることにより、為されても良い。このために、相互にシフト可能なミラー又はプリズムが用いられても良い。斯かる距離の操作は、手動であっても良いし、又は例えば例を実装するソフトウェアを介してモータ制御されても良い。半径の適合性を失うことなく、他の変更も利用され得る。
【0083】
図5Aは、光学素子の一部として菱形プリズム50に基づいた、
図4による第1の設計を示す。2つの対向する平行な端面50a及び50bは、内部全反射面として機能する。これらの面は、パルス光ビーム11の第1の方向42と一致する光方向に対して45度をなしている。該プリズムにおける2つの内部反射は、入射ビーム11の横方向のシフトをもたらし、それにより出射ビーム11' 'が、入射ビームに対して平行であるが横方向にシフトされたものとなる。該横方向のシフト方向に垂直であり、それ故入射ビーム方向に平行な軸のまわりに、該プリズムを回転させることにより、出射ビーム11' 'によって円形の経路が掃引される。該回転は、入射ビーム11の軸のまわりのものである。該円形の掃引の半径は、菱形の長さである。菱形プリズムは、必要に応じて、面に反射防止コーティングを持つよう製造されても良い。
【0084】
図5Bは、第2のプリズム設計を示す。該設計は、ダブ(dove)プリズム52を有する。2つの端面52a、52bが屈折界面として機能し、底面52cが内部全反射面として機能する。これら端面は、入射光に対して45度をなす。該プリズムにおける2回の屈折及び1回の内部全反射が、ここでもまた入射ビームの横方向のシフトをもたらし、それにより出射ビームが、入射ビームとは平行であるが横方向にシフトされる。横方向のシフト方向に垂直な、それ故入射ビームの方向に平行な軸のまわりにプリズムを回転させることにより、円形の経路が出射ビームによって掃引される。該回転は、入射ビームの軸のまわりのものである。ビームの平行移動の量は、該ダブプリズムの入射面52aに対する入射ビームの位置、及び該プリズムのサイズに依存する。該プリズムは、主入射光線のまわりに回転させられる。ここでもまた、反射による損失を低減させるため、角度のついた面に反射防止コーティングが追加されても良い。
【0085】
図5の実施例におけるような回転するプリズムの使用は、整合の問題を回避し、光学的な損傷のリスクを低減させ、コーティングされたミラーに基づく反射と関連する安定性に関連する問題を低減させる。
【0086】
利用されることができる他の多くのプリズム設計がある。しかしながら、以上に説明された2つの設計は、内部全反射を利用するため、特に有用である。特に、LIOBが高いエネルギー密度の光ビームを必要とする本例においては、内部全反射並びにそれに関連する高い損傷閾値及び非常に低い損失を利用することが有益であり、これらの設計を高いエネルギー密度の光が利用される本発明に対して特に有用なものとする。
【0087】
菱形プリズムは、菱形の全開口に等しい最小のビーム変位を持つ。しかしながら、ダブプリズムは実質的に、入射ビーム及び出射ビームと重なり得、菱形よりも小さな走査半径を実現し、更に、該プリズムが製造された後でさえも、ダブプリズム形状に対する入射光ビームの位置を選択することによって、実際のビーム変位の量が調節可能である。
【0088】
菱形の利点は、内部前反射面における偏光の乱れに加えて、ガラスの厚い板により光学的に表され、収束及び発散ビームにおける収差に対するプリズムの影響を低減させることである。更に、ダブプリズムの長さは一般に、開口の断面の約4倍である必要があるため、所与の量のビーム変位及び開口に対して、菱形はより小さな最小重量を持つ。
【0089】
該プリズムは、例えば回転の間にバランスをとる目的のため、最小に保たれるべき、関連する重量を持つ。この目的のため、ビームは、あわせて2.5倍のビーム拡大に帰着する拡大レンズ40を形成する、平凹レンズ(例えばf=12.0mm)と平凸レンズ(例えばf=30mm)との組み合わせを用いるプリズムにより、方向変化の直後に拡大される。このようにして、該プリズムを通過するビーム径は、比較的小さく保たれ、小さなサイズのプリズムを可能とする。
【0090】
以上に述べたように、ミラーが利用されても良いが、当該高い強度の光とともにミラーを用いることは、ミラーのための特殊な高反射コーティング及び基板を必要とする一方で、菱形プリズムは、単に内部全反射のみに依存し、ことによると該プリズムの入射面及び出射面において単に反射防止コーティングを必要とするのみとなり得る。ビームを偏向させるための他の装置は、音響/電子光学素子、液晶等であるが、これらは高価となり、損失が多く、及び/又はレーザ損傷に弱い傾向がある。
【0091】
該走査システム又は回転プリズムのような該走査システムの回転部分は、振動を回避するよう機械的にバランスをとられる。この目的のため、該回転部分は、付加的な重量バランスを伴って又は伴わずに、回転の軸が該回転部分の慣性の軸と一致するよう構成及び/又は配置されても良い。必要な部分を回転させるための載置部は、転がり軸受上に懸架され、モータの回転子に直接に接続し、それにより、合焦させられた光の有効な開口数に対する収差補正設定の影響を最小化させる。しかしながら、他のタイプのバランスが用いられても良く、例えば磁気軸受又は流体軸受のような平滑な動きを支援する他の方法が用いられても良い。
【0092】
図5Aは、菱形プリズム50を通過し、発散ビーム拡大レンズ56(例えば2.5倍)及びフォーカスシステム23を通る、光線の経路を示す。
図4(b)は、ダブプリズム52を通過し、発散ビーム拡大レンズ56及びフォーカスシステム23を通る、光線の経路を示す。フォーカスシステム23は、レンズの対を有するものとして示されていることに留意されたい。この二重のレンズ設計は、それ自体が本発明が動作するために必要なものではないが、好適な合焦を与え得る。
【0093】
小さな領域の走査を実現するため、回転走査が交番する態様で実装されても良く、処置速度が、該走査の瞬間速度に自動的に適合させられる。斯くして、連続的な一方向の回転がこのとき、該装置の全体の回転の一部のみに亘って、前後の回転に切り換えられる。代替としては、該回転は連続的に保たれても良いが、走査曲線の所定の小さな部分に沿ってのみ皮膚にパルスを提供するよう、シャッタ又は膜を用いて、レーザがスイッチオフ又は遮断される。例えば、
図2Bに示されたように、走査が閉じたループに亘って継続するが、LIOBパルスは該ループの半分の間にしか提供されない。他の定義されたループ部分は、処置されるべき領域により必要とされるように設定されても良い。斯くして、本発明の斯かる実施例においては、該装置は更に、曲線経路に沿った、前後の走査を実行することが可能である。前後の回転運動に関連する振動は、線形の前後の運動により引き起こされる振動よりも、かなり小さい。
【0094】
交番する走査手法は、加速の短い距離で必要とされる走査速度に到達し、処置速度(小さな処置ウィンドウのサイズにより定義される)が自動的に適合される、いずれかの開始-停止型の走査システムに基づくものであっても良い。実装のひとつは、ステッパモータ駆動を用いたレンズの機械的な走査を用いいる分割光学手法を持つCD/DVD光学系の設計に基づく。
【0095】
図6は、保持部に装着されたレンズ61及び62を備えたフォーカスシステムを用いて焦点深さ調節を実装する方法を示す。本例においては、2つのレンズが示されているが、2つよりも多いレンズが用いられても良い。これらレンズのそれぞれは、異なる焦点深さをもたらす。装着部60及びこれらレンズは、本例においては、走査の間に軸43のまわりにスキャナとともに回転する。レンズ61がレンズ62と交換される必要があるときには、装着部60が装置41に対して回転させられる。これらレンズは斯くして、円形の経路のまわりに配置され、切り欠きシステムが走査システム21に対する位置決めを提供する。装置を用いた走査の間にレンズを固定しつつ、レンズの交換の間に回転するため、他のクランプ機構が利用されても良い。該経路におけるレンズの調節可能な固定の他の方法が用いられても良い。該調節は手動であっても良いが、電動化され例えばコントローラ25を用いて制御されても良い。
【0096】
フォーカスシステム又はそのレンズ部分及び/又は走査システムは好適には、該装置が用いられているときに回転走査及び/又は並進の間に輪郭追従を提供するため、出射ウィンドウ、レンズ又はこれらの複数がともに又は別個にばね付勢されることを可能とする、表面輪郭追従サスペンションシステムにより保持される。特に該装置の接触モード走査の場合、このことは、適所における接触を保ちつつ、皮膚のような凹凸のある表面を走査し不快感を最小化する点で有利である。
【0097】
本発明の走査と組み合わせて複数の深さの合焦を実装する代替の方法は、
図7A乃至7Cに関して説明され、ここではフォーカスシステム23が、一対のレンズとして示されている。例えば、
図5C及び5Dは、走査システムのプリズムに関して、斯かるフォーカスシステム23の位置を示している。二重のレンズシステムは、焦点位置が調節されることを可能とし、更に最適な皮膚結合を提供する。二重のレンズシステムは走査システムとともに回転することができ、
図6の多焦点の複数のレンズが回避されることができる。
図7A乃至Cのシステムもまた、連続的に制御された焦点深さを提供することができる。
【0098】
複数のレンズを持つフォーカスシステムの詳細な設計は、欧州特許出願16183299.3(整理番号2016P00580EP)に記載されており(参照により本明細に組み込まれたものとする)、この理由のため該システムは以下に簡単にのみ説明される。
【0099】
斯くして、該フォーカスシステムは、出射レンズ70と前フォーカスレンズ72との組み合わせを有する。
【0100】
レンズ70は、50乃至85の範囲内のアッベ数を持つような、光学的なガラスから製造される。例えば、BK7として知られるホウケイ酸クラウンガラスが用いられても良い。代替としては、溶融石英が用いられても良い。他のものが利用されても良いが、これらのものが好適に動作する。材質は、高い損傷閾値で、透過されるべき波長(例えばNd:YAG光源の1064nmの光)に対して全体的に透明である。レンズ70は両凸レンズを有し、例えば1064nmの高パワーレーザに適した反射防止コーティング71をレンズの出射部の両側に持つ溶融石英の両凸レンズを有する。
【0101】
該構造の各側におけるレンズは、同じ曲率及び設計を持つ。
【0102】
レンズ72は、レーザ強度を維持することが可能な市販されている非球面レンズを有する。レンズ72の目的は、近収束光(
図1参照)を所望の収束角度に変換することである。
【0103】
適切な非球面レンズは、レーザダイオード、光ダイオード、及びファイバ結合システムにおける使用について、及び光データ記録の分野において、知られている。例として、適切なレンズは、LightPath Technologies Inc.社により製造される。
【0104】
レンズ72は、凸状の光入射面74と、平坦な光出射面76、又は光入射面の曲率半径よりも大きなレンズ面を備えた凸状の光入射面36と、を持つ。
【0105】
2つのレンズ70、72間の間隔は、焦点深さを変化させるよう調節可能である。従って、
図1に示されるように、本発明による装置のコントローラ25とフォーカスシステム23との間に制御経路がある。調節は
図7B及び7Cに示される。レンズ間の動きは例えば、固定された焦点深さのセット間で制御されても良いし、又は手動で若しくはフィードバックに基づいて連続的に制御されても良い。
【0106】
図7Bは、例えば約750μmの最大焦点深さに対応する、2つのレンズ間の第1のゼロ間隔を示す。
図7Cは、例えば約200μmの最小焦点深さに対応する、2つのレンズ間の最大間隔を示す。
【0107】
これら2つのレンズの組み合わせは、ユーザの規定に対する幾つかの制限をもたらす。このことは、非球面レンズ72の制限された自由動作距離に関連し、レンズ70の最小の実現可能な厚さに対する制限とも組み合わせられる。
【0108】
例えば、真皮内の最大の達成可能な処置深さは、上述したように約750マイクロメートルに制限され得る。
【0109】
その結果、レンズ72に入射する光の収束は、この効果のために補正される必要があり得、即ち僅かに収束する入射が必要とされる。
【0110】
複数の深さの処置のための可変の合焦機能は、何らかの収差補正手段が、補償のために導入される必要があることを意味し、即ち、これら2つのレンズ間の距離における相対的なシフトは、何らかの収差補正手段が、補償のために導入される必要があることを意味する。この収差補正をどのように実装するかの例は、以下に議論される。収差補正をどのように実装するかの詳細な議論は、欧州特許出願16183299.3(整理番号2016P00580EP)に記載されており(参照により本明細に組み込まれたものとする)、この理由のため該システムは以下に簡単にのみ説明される。
【0111】
斯くして、当該収差補正は、例えばビーム成形(ビーム成形システム19による)の前又は後のような、該システムにおける種々の点で実装されても良い。更に、ビーム成形システム19は、単にビーム反射システム17と走査システム21との間に収差補正がされるよう、フォーカスシステム23により実装されても良い。
【0112】
皮膚内の異なる深さにおいて合焦させるときに予測される球面収差を補正するため、走査システム21の走査プリズムに入射するビームの発散が調節可能とされても良い。最も単純な方法は、ユーザが1つ以上のレンズ位置を操作することによりビームの発散を調節することを可能とすることであり得る。しかしながら、これらレンズの配置は極めて重要であり、システムはレーザ光学の背景知識を持たないユーザによっても操作される必要があるため、選択された焦点深さに依存して、又は例えば観察されたLIOBフラッシュ強度に依存してのように動作中に、レンズの位置又は強度を調節する、何らかの形の自動化された補正を実装することが好適となり得る。本発明の第2の態様は、収差補正に関する。
【0113】
電動のフォーカスは一般に多くの空間を消費し、機械的に複雑であり、一般に動的な変化に追従するには低速過ぎるため、適合型の光学素子が好適である。適切な適合型の光学素子の2つの例は、ボイスコイルモータ装置により制御された電気的に調整可能な低分散高分子レンズ及び液体フォーカスレンズである。斯かるレンズの詳細については、例えば欧州特許出願16183301.1を参照されたい。
【0114】
図8は、制御ユニット80(ボイスコイル)、高分子レンズ82及び付加的な発散レンズ84を含む、高分子レンズに基づく可変レンズ設計を示す。発散レンズ84は、収束高分子レンズ焦点長さの全体を補償し、2つのレンズを通過した後も光11が依然として略収束光となるようにする。付加的な発散レンズ84は、ビームが、収束と僅かに発散との間の適切な範囲内で調節可能となるようにする。高分子レンズは、ボイスコイル及び関連する機構を保持する筐体と、外部の影響から感度の高い凸状の高分子表面を保護するための幾つかのウィンドウと、を有する。
【0115】
調節の目的は、光学系全体により引き起こされる収差を補償することである。フォーカスシステムは実際には、幾つかのレンズ及び皮膚自体を有する。該システムは、以下の幾つかの理由により変化し得る。
(i)ユーザ又は操作者が、皮膚のなかにおける処置深さを変化させるためフォーカスレンズの異なるセットを選択すること。
(ii)例えば動作温度の変化により、入射レーザビームが変化すること。
(iii)異なる水分レベル等による、処置されている皮膚における屈折率プロファイルの変化。
【0116】
該調節は、対物レンズに入射するビームの発散を僅かに変化させ得(ビームの直径は略変化させないままである)、焦点品質に対する上述した効果の影響を低減させるために利用され得る。更に、光学的なシミュレーションが、これらの種類のツールを用いることにより、より高次の収差(特に3次の球面収差)が効果的に低減させられることができることを示している。
【0117】
該調節は、更なる収束又は発散を導入することにより、収差を補償することによって、焦点深さを制御する。
【0118】
可変レンズ設計は、フォーカスシステム23の非球面レンズ72の前に配置される。
【0119】
フォーカスシステム23の非球面レンズ72に入射するビームの直径に対する可変の発散の影響を制限するため、収差補正要素が可能な限り走査システム21に対する入射部の近くに配置され、機械的な要素及び走査モータの配置に利用可能な空間の量を効果的に制限する。該補正システムは斯くして、該装置のハンドピースの一部であり得る。
【0120】
図9は、収差補正のために用いられるエレクトロウェッティングレンズ90の光線追跡を示す。該レンズは、非常に小さな量の収束をもたらす。当該レンズのためには、初期曲率の追加的な補償は必要とされない。該レンズは、その代わりに、小さな量の発散をもたらすことが必要とされ得る。入射ビームは収束ビームに近く、必要とされる補正は典型的に小さい。
【0121】
図10は、全ての光学素子の完全なアセンブリの光線追跡を示す。これらは、3倍ビーム圧縮ユニット100と、ビームサイズをあわせて低減させる発散レンズ102と、を含み、より小さなプリズムが利用されることができるが、もしある場合にはレーザ光源にハンドピースを接続する関節アームにおいて利用されるビーム拡大を反転させる。入射ビームは例えば、6mmの半径を持つ。収差補正ユニット(
図8の部分80、82、84を含む)が示され、ダブプリズム52(スキャナにおける他のタイプの光学素子であっても良い)、ビーム拡大部104及び調節可能なフォーカスシステム23がある。
【0122】
図11は、フォーカスシステム23の収差補正のための調節可能なレンズシステム100を含むよう変更された、
図1のシステムを示す。調整可能なレンズシステム100は、フォーカスシステム23の焦点深さ設定の調節と同期してコントローラ25により制御され、収差補正がフォーカスシステム23の設定に合致するようされる。調整可能なレンズシステム100は、走査システム21の入射部に備えられる。それ故、該走査システムとともに回転する必要はない。
【0123】
斯くして、嵩張り重いものとなり得る、滑動電気部品等の必要性のため、及び動きが調整可能なレンズ自体に振動を引き起こし得るため、高速で連続的な動きによる走査を困難とする収差補正システムは、フォーカスシステム23(対物レンズ)によって走査される必要がなくなる。フォーカスシステム23を形成するフォーカスレンズ及び載置部は、数グラムの重さしかない。高分子調整可能レンズは例えば、関連する載置部及び平凸レンズを除いて、数十グラムの重さしかない。
【0124】
図1及び10のシステムは、レーザとフォーカスシステムとの間に光学要素の1つの特定のセットを持つ。しかしながら、当該構成は、限定することを意図したものではない。本発明のフォーカスシステムは、より多い数の又は少ない数の構成要素を持つ異なるシステム構成で用いられ得る。
【0125】
収差補正は特に、以上に説明されたような、電気的に調節可能なフォーカスシステムのために興味深いものである。しかしながら、収差補正はまた、
図2に示されたような機械的に調節可能なフォーカスシステムと組み合わせて用いられても良い。
【0126】
特に、全ての収差が調節の選択可能なセットにおいて制御されなくても良く、微調整が場合毎に又は動的な態様で望ましいものとなり得る。
【0127】
収差補正システムだけでは、焦点深さに大きく影響を与えるのに十分なパワーを持たない。
【0128】
本発明による装置によれば、フォーカスシステム並びに好適には走査システム及び/又はビーム操作システム19及びビーム反射システム17は、対象の処置の間にユーザにより保持されることができるハンドヘルド型装置又は部品の一部であっても良い。
【0129】
斯かる場合には、光源の光をハンドピースにガイドするため、レーザ光源9とビーム反射システム17との間に、関節アームがあっても良い。光源からの光をハンドピース又は走査システムに供給するための他の方法が利用されても良い。
【0130】
光源9は、任意のコントローラ25を用いて制御可能であっても良く、該コントローラは、該装置のパラメータを設定するための、及び/又は処置の間にユーザにフィードバックを提供するための、ユーザインタフェースを備えても良い。該ユーザインタフェースは、ボタン及びつまみを備えたハードウェア又はソフトウェアのものであっても良い。また、光学系13の1つ以上の部分が、任意のコントローラ(図示されていない)により制御可能であっても良く、該コントローラは、目標位置及び/又は焦点の1つ以上の特性を制御するため光源コントローラ25と一体化されていても良い。
【0131】
ビーム反射システム17は、レーザ光は反射するが可視波長の光は通過させる、ダイクロイックビームスプリッタを有しても良い。斯くして、皮膚3からの反射された可視波長の光は、光学系により捕捉され、手動又は自動でシステムを制御するために用いられることができるフィードバック信号25として供給される。斯かるフィードバックシステムは、本発明を実装するのに必須ではないが、必要である場合には焦点深さ制御等のために有利である。フォーカスシステム23により提供される焦点深さは、好適には調節可能である。このことは、フィードバック信号25により提供されるフィードバックに基づくものであっても良い。光に基づく他のタイプのフィードバックが、同様に用いられても良い。
【0132】
フィードバックは、或る時点においてどの領域が処置されたか及び処置されているかを観察するために用いられても良い。どの領域が処置されたかをマッピングするため、表面領域追跡器が利用されても良い。
【0133】
皮膚処置は、脱毛シェービング工程を有しても良い。使用の間、フォーカスシステム23は、シェービングされるべき皮膚表面上を動かされる。フォーカスシステムは、入射光ビームが該装置を出ることを可能とする出射ウィンドウを形成する。フォーカスシステムはこのとき、光学的な刃を形成する。
【0134】
皮膚処置は、通常の加齢過程の結果として人間の皮膚に生じ得るしわを低減させるための皮膚活性化装置を有しても良い。使用の間、フォーカス要素は、処置されるべき皮膚に押し付けられるか、又は該皮膚の近くに保たれる。フォーカスシステムにより形成される出射ウィンドウ(本例においては出射レンズの一部)は、皮膚と平行に保持され、入射光ビームが、該出射ウィンドウから出て、皮膚表面に対して略垂直な方向で皮膚に入る。
【0135】
表皮の最も外側の層は、角質層であり、粗さの微視的なばらつきのため、装置1と皮膚3との間の光の結合を妨げる。この理由のため、好適には、皮膚の屈折率及び/又はフォーカスシステムの出射レンズの屈折率に合致するための屈折率を持つ結合流体が、フォーカスシステム(出射レンズ又はウィンドウ)と皮膚との間に備えられる。好適には、フォーカスシステム23の皮膚接触レンズ及びLIOBが生じるべき皮膚又は毛の屈折率に近い屈折率を持つ、浸漬流体が用いられる。この目的のため、約1.4乃至約1.5の屈折率を持つ流体が適している。また、幾つかの装置及び用途については、1.33という幾分か低い屈折率を持つ水も、適切な浸漬流体となり得る。
【0136】
装置(例えばレンズのような出射ウィンドウ)からのレーザ光を皮膚に結合させる代替の方法は、国際特許出願公開WO2013/128380に記載されている。この場合、レーザ光に対して透明な光学的なフォイル(foil)(国際特許出願公開WO2013/128380の
図1における参照番号14)が用いられ、このときレンズ又は出射ウィンドウと透明なフォイルとの間の結合流体(国際特許出願公開WO2013/128380の
図1における参照番号13)、及び皮膚と光学的なフォイルとの間の結合流体(国際特許出願公開WO2013/128380の
図1における参照番号15)を用いる。流体13は、結合フォイル上の出射レンズの回転を依然として可能としつつ、該フォイルは幾分か皮膚に対して固定される。結合流体及び光学的なフォイルの詳細については、国際特許出願公開WO2013/128380を参照されたい(参照により本明細に組み込まれたものとする)。結合流体及び透明な光学的フォイルに関する少なくとも詳細は、本説明の一部であるが、簡単さのためここでは繰り返さない。
【0137】
上述の実施例は本発明を限定するものではなく説明するものであって、当業者は添付する請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替実施例を設計することが可能であろうことは留意されるべきである。請求項において、括弧に挟まれたいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。動詞「有する(comprise)」及びその語形変化の使用は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。要素に先行する冠詞「1つの(a又はan)」は、複数の斯かる要素の存在を除外するものではない。本発明は、幾つかの別個の要素を有するハードウェアによって、及び適切にプログラムされたコンピュータによって実装されても良い。幾つかの手段を列記した装置請求項において、これら手段の幾つかは同一のハードウェアのアイテムによって実施化されても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。