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特許7155107回路モジュール、ネットワークモジュール、及び車載電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】回路モジュール、ネットワークモジュール、及び車載電子機器
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
H03H7/01 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019505778
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2018004620
(87)【国際公開番号】W WO2018168282
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2019-05-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2017049275
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】樋口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】今西 由浩
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 康誌
(72)【発明者】
【氏名】高井 駿
(72)【発明者】
【氏名】野尻 みゆき
【合議体】
【審判長】角田 慎治
【審判官】赤穂 美香
【審判官】土居 仁士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0041044号明細書(US,A1)
【文献】国際公開第2006/098076号(WO,A1)
【文献】特開平7-086863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H1/00-H03H3/00
H03H5/00-H03H7/13
H05K1/00-H05K1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランドプレーン、信号ライン、内部導体と外部導体とを備える同軸ケーブルの外部導体に接続される導電パターンが設けられた配線基板と、
一方のコイルが前記グランドプレーンと前記導電パターンとを接続し、他方のコイルが前記信号ラインに挿入されるように前記配線基板に実装されているコモンモードチョークコイルと、
第1信号端子及び第2信号端子を備え、前記第1信号端子が前記信号ラインを介して前記コモンモードチョークコイルに接続され、前記第2信号端子が前記グランドプレーンに接続されている通信素子と、
前記コモンモードチョークコイルと前記第1信号端子との間の前記信号ラインに直列に挿入された第1キャパシタと
平面視において前記グランドプレーンと重なり、前記導電パターンに接続された他のグランドプレーンと
を有し、
前記第2信号端子と前記コモンモードチョークコイルとは、前記配線基板に設けられた信号ラインを介して接続されておらず、前記グランドプレーンを介して接続されている回路モジュール。
【請求項2】
さらに、前記第2信号端子と前記グランドプレーンとの間に接続された第2キャパシタを有する請求項1に記載の回路モジュール。
【請求項3】
前記第1キャパシタの静電容量と前記第2キャパシタの静電容量とが等しい請求項2に記載の回路モジュール。
【請求項4】
前記第1キャパシタの静電容量と前記第2キャパシタの静電容量とが異なっている請求項2に記載の回路モジュール。
【請求項5】
前記第2キャパシタの静電容量が前記第1キャパシタの静電容量より小さい請求項4に記載の回路モジュール。
【請求項6】
さらに、前記第2キャパシタに直列に接続された終端抵抗を有し、前記第2信号端子は、前記第2キャパシタと前記終端抵抗との直列回路を介して前記グランドプレーンに接続されている請求項2乃至5のいずれか1項に記載の回路モジュール。
【請求項7】
さらに、前記配線基板に実装された同軸ケーブル用のシェル導体と中心導体とを備えるレセプタクルを有し、
前記レセプタクルのシェル導体が前記導電パターンに接続され、前記レセプタクルの中心導体が前記信号ラインに接続されている請求項1乃至6のいずれか1項に記載の回路モジュール。
【請求項8】
前記配線基板に、さらに電源ラインが設けられており、
さらに、
前記コモンモードチョークコイルと前記第1キャパシタとの間の前記信号ラインを前記電源ラインに接続するインダクタを有する請求項1乃至のいずれか1項に記載の回路モジュール。
【請求項9】
請求項に記載の回路モジュールと同一構成のシリアライザ回路モジュール及びデシリアライザ回路モジュールと、
前記シリアライザ回路モジュールの前記信号ラインと前記デシリアライザ回路モジュールの前記信号ラインとを内部導体で接続し、前記シリアライザ回路モジュールの前記導電パターンと前記デシリアライザ回路モジュールの前記導電パターンとを外部導体で接続する同軸ケーブルと、
直流電源と
を有し、
前記シリアライザ回路モジュールの前記通信素子が、パラレル信号をシリアル信号に変換して前記信号ラインに送出するシリアライザであり、
前記デシリアライザ回路モジュールの前記通信素子が、前記信号ラインを通して受信したシリアル信号をパラレル信号に変換するデシリアライザであり、
前記直流電源は、前記デシリアライザ回路モジュールの前記電源ラインから前記同軸ケーブルを介して前記シリアライザ回路モジュールの前記電源ラインに電力を供給するネットワークモジュール。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の回路モジュールを用いた車載電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンモードチョークコイルを実装した回路モジュール、ネットワークモジュール、及び車載電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子制御による車両の機能向上が図られている。電子制御の対象は、車間距離制御システム、車線維持システム、衝突防止システム等の様々なシステムに及ぶ。この電子制御を行うために、車載用電子制御ユニット(車載用ECU)や複数の車載カメラが車両に搭載される。これら複数の車載カメラで取得された画像データが車載用ECUに集められ、車載用ECUが画像解析を行う。
【0003】
複数の車載カメラから車載用ECUに画像データを送信するために多くの通信ケーブルが必要になるため、通信ケーブルの低コスト化、軽量化が望まれている。車載カメラと車載用ECUとの間の種々の信号の送受信、及び車載カメラへの電力の供給を行い、かつ通信ケーブルの低コスト化、軽量化を図ることが可能な伝送方式として、SerDes伝送方式が提案されている。
【0004】
下記の非特許文献1は、シリアルデータとパラレルデータとを相互変換するSerDes回路モジュールの一つであるFPD-LinkIIIの評価ボードの説明書である。非特許文献1の第21頁にシリアライザの周辺回路が開示されており、第25頁にデシリアライザの周辺回路が開示されている。シリアライザから送信された信号は同軸ケーブルを通って伝送され、デシリアライザで受信される。周波数が10kHz以上50MHz以下程度の低速信号が、デシリアライザから送信されシリアライザで受信されることもある。また、シリアライザ回路モジュールを駆動するための電力が、デシリアライザ回路モジュールから同軸ケーブルを通してシリアライザ回路モジュールに供給される。
【0005】
電源ラインに、高周波カット用のインダクタ及びフェライトビーズが挿入され、信号ラインに、直流カット用のコンデンサが挿入されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】DS90UB913A-CXEVM & DS90UB914A-CXEVM User's Guide (http://www.tij.co.jp/jp/lit/ug/snlu135b/snlu135b.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリアライザ回路モジュールまたはデシリアライザ回路モジュールから同軸ケーブルにコモンモードノイズが漏洩すると、同軸ケーブルから電磁ノイズが放射される。また、同軸ケーブルが外部からノイズを拾い基板内の回路までコモンモードノイズが伝搬すると、回路の誤動作が生じる場合がある。ところが、現状では同軸ケーブルを用いたSerDes伝送方式において、コモンモードノイズ対策の手法が明らかになっていない。
【0008】
本発明の目的は、同軸ケーブルを用いた信号伝送において、電磁両立性(EMC)を高めることが可能な回路モジュール、ネットワークモジュール、及び車載電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によると、
グランドプレーン、信号ライン、内部導体と外部導体とを備える同軸ケーブルの外部導体に接続される導電パターンが設けられた配線基板と、
一方のコイルが前記グランドプレーンと前記導電パターンとを接続し、他方のコイルが前記信号ラインに挿入されるように前記配線基板に実装されているコモンモードチョークコイルと、
第1信号端子及び第2信号端子を備え、前記第1信号端子が前記信号ラインを介して前記コモンモードチョークコイルに接続され、前記第2信号端子が前記グランドプレーンに接続されている通信素子と、
前記コモンモードチョークコイルと前記第1信号端子との間の前記信号ラインに直列に挿入された第1キャパシタと
平面視において前記グランドプレーンと重なり、前記導電パターンに接続された他のグランドプレーンと
を有し、
前記第2信号端子と前記コモンモードチョークコイルとは、前記配線基板に設けられた信号ラインを介して接続されておらず、前記グランドプレーンを介して接続されている回路モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0010】
コモンモードチョークコイルを配置することにより、配線基板上の回路から同軸ケーブルへのコモンモードノイズの漏洩を低減することができる。さらに、同軸ケーブルが拾ったコモンモードノイズが配線基板上の回路まで伝搬されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施例によるシリアライザ回路モジュール、デシリアライザ回路モジュール、及び両者を接続する同軸ケーブルの等価回路図である。
図2図2は、第1実施例によるシリアライザ回路モジュール及びデシリアライザ回路モジュールの概略平面図である。
図3図3A及び図3Bは、それぞれ第1実施例によるシリアライザ回路モジュール及びデシリアライザ回路モジュールに用いられるコモンモードチョークコイルの正面図及び底面図である。
図4図4は、評価実験で採用した測定系の概略図である。
図5図5Aは、評価実験対象のシリアライザ回路モジュール及びデシリアライザ回路モジュールに実装したコモンモードチョークコイルの特性を示すグラフであり、図5Bは、評価実験の結果を示すグラフである。
図6図6Aは、第1キャパシタ及び第2キャパシタの好ましい静電容量について説明するための等価回路図であり、図6Bは、第1キャパシタ及び第2キャパシタの静電容量を変化させたときの透過係数S21の周波数依存性のシミュレーション結果を示すグラフである。
図7図7Aは、第2実施例による回路モジュールの概略等価回路図であり、図7Bは、ノーマルモードノイズフィルタの一例を示す等価回路図である。
図8図8Aは、評価実験に用いたシリアライザ回路モジュールに実装したノーマルモードノイズフィルタのフィルタ特性を示すグラフであり、図8Bは、評価実験の結果を示すグラフである。
図9図9Aは、第3実施例によるシリアライザ回路モジュールの平面図であり、図9Bは、図9Aの一点鎖線9B-9Bにおける断面図であり、図9Cは、シリアライザ回路モジュールがシャーシに取り付けられた状態での図9Aの一点鎖線9C-9Cにおける断面図である。
図10図10Aは、車両、及び車両に搭載された第4実施例による車載電子機器の概略図であり、図10Bは、車載電子機器としての電子制御ユニットと1つのカメラとの接続系統を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施例]
図1から図6Bまでの図面を参照して、第1実施例による回路モジュールについて説明する。
【0013】
図1は、第1実施例によるシリアライザ回路モジュール10、デシリアライザ回路モジュール30、及び両者を接続する同軸ケーブル50の概略等価回路図である。シリアライザ回路モジュール10には、信号の送信または受信を行う通信素子としてシリアライザ11が実装されており、さらに、シリアライザ11の周辺回路が実装されている。デシリアライザ回路モジュール30には、通信素子としてデシリアライザ31が実装されており、さらに、デシリアライザ31の周辺回路が実装されている。
【0014】
シリアライザ回路モジュール10とデシリアライザ回路モジュール30とは、実装されている通信素子がシリアライザ11かデシリアライザ31かの違いがあるが、基本的な回路構成は同一である。以下、シリアライザ回路モジュール10の構成について説明し、デシリアライザ回路モジュール30の構成については重複した説明を省略する。
【0015】
以下、シリアライザ回路モジュール10の構成について説明する。グランドプレーン20、信号ライン21、電源ライン22、及び導電パターン23が設けられた配線基板に、シリアライザ11、コモンモードチョークコイル12、及びその他の周辺回路部品が実装されている。シリアライザ11は、一対の信号端子である第1信号端子D1と第2信号端子D2とを有する。シリアライザ11は、入力されたパラレル信号をシリアル信号に変換して、一対の第1信号端子D1及び第2信号端子D2からシリアル信号を送出する。第1信号端子D1は、信号ライン21を介して同軸ケーブル50の内部導体51に接続される。コモンモードチョークコイル12と第1信号端子D1との間の信号ライン21には、第1キャパシタC1が直列に挿入されている。第2信号端子D2は、第2キャパシタC2と終端抵抗R1との直列回路を介してグランドプレーン20に接続されている。
【0016】
第1信号端子D1及び第2信号端子D2は、差動伝送用にも用いることができる。第1信号端子D1から送信された一方の差動信号は、信号ライン21を経由して同軸ケーブル50の内部導体51まで伝送される。第2信号端子D2は終端抵抗R1で終端されているため、第2信号端子D2から送信された他方の作動信号の反射はほとんどない。このため、第2信号端子D2を終端抵抗R1で終端した構成は、第1信号端子D1及び第2信号端子D2から差動出力を行うシリアライザ11を、より安定的に動作させるのに有効である。
【0017】
導電パターン23が同軸ケーブル50の外部導体52に接続される。コモンモードチョークコイル12の一方のコイル12Aが、グランドプレーン20と導電パターン23とを接続している。他方のコイル12Bが信号ライン21に挿入されている。第1キャパシタC1は、コモンモードチョークコイル12とシリアライザ11との間の信号ライン21に挿入されている。コモンモードチョークコイル12と第1キャパシタC1との間の信号ライン21がインダクタL1を介して電源ライン22に接続されている。電源ライン22からシリアライザ11に直流電源が供給される。
【0018】
第1キャパシタC1は直流をカットし、高周波信号を通過させる。インダクタL1は高周波信号をカットし、直流を通過させる。
【0019】
デシリアライザ回路モジュール30の電源ライン42に、直流電源55から電源が供給される。デシリアライザ回路モジュール30の電源ライン42は、コモンモードチョークコイル32、同軸ケーブル50の内部導体51、コモンモードチョークコイル12を介してシリアライザ回路モジュール10の電源ライン22に直流的に低インピーダンスで接続されている。デシリアライザ回路モジュール30のグランドプレーン40は、同軸ケーブル50の外部導体52を介してシリアライザ回路モジュール10のグランドプレーン20に直流的に低インピーダンスで接続されている。直流電源55からデシリアライザ回路モジュール30及び同軸ケーブル50を介して、シリアライザ回路モジュール10に電源が供給される。シリアライザ回路モジュール10、デシリアライザ回路モジュール30、同軸ケーブル50、及び直流電源55により、シリアル信号の送受信、及び直流電源の供給が可能なネットワークモジュールが構成される。
【0020】
図1に示した第1実施例では、シリアライザ回路モジュール10とデシリアライザ回路モジュール30とでグランドを共通化し、1本の伝送線路で信号を伝送するシングルエンド伝送方式が採用される。
【0021】
図2は、シリアライザ回路モジュール10及びデシリアライザ回路モジュール30の概略平面図である。シリアライザ回路モジュール10とデシリアライザ回路モジュール30とでは、各回路部品の配置、グランドプレーン、導電パターン、信号ライン、電源ライン等の形状や配置が異なる。ただし、等価回路図としては、シリアライザ回路モジュール10とデシリアライザ回路モジュール30とは、実装されている通信素子がシリアライザ11かデシリアライザ31かの違いがあるのみであり、その他の構成に差はない。従って、以下、シリアライザ回路モジュール10の構成について説明し、デシリアライザ回路モジュール30の構成については重複した説明を省略する。
【0022】
プリント配線基板25に、グランドプレーン20、信号ライン21、電源ライン22、及び導電パターン23が設けられている。信号ライン21及びグランドプレーン20は、それぞれプリント配線基板25の表側の面及び裏側の面に配置されている。信号ライン21とグランドプレーン20とでマイクロストリップ線路が構成される。プリント配線基板25に、シリアライザ11、コモンモードチョークコイル12、及び同軸ケーブル用のレセプタクル13が実装されている。レセプタクル13に同軸ケーブル50(図1)のプラグコネクタが接続されると、レセプタクル13のシェル導体14及び中心導体15が、それぞれ同軸ケーブル50の外部導体52及び内部導体51(図1)に接続される。
【0023】
シェル導体14は、はんだ等によって導電パターン23に機械的かつ電気的に接続されている。中心導体15は信号ライン21の端部に電気的に接続されている。導電パターン23はグランドプレーン20から独立している。言い換えると、導電パターン23は、プリント配線基板25内の配線等によってはグランドプレーン20に接続されておらず、グランドプレーン20から孤立している。
【0024】
コモンモードチョークコイル12の一方のコイル12Aが、導電パターン23とグランドプレーン20とを接続している。コモンモードチョークコイル12の他方のコイル12Bは信号ライン21に挿入されている。すなわち、信号ライン21が分断され、分断箇所の両側の信号ライン21がコイル12Bを介して接続されている。
【0025】
コモンモードチョークコイル12とシリアライザ11との間の信号ライン21に直列に第1キャパシタC1が実装されている。コモンモードチョークコイル12と第1キャパシタC1との間の信号ライン21から電源ライン22が分岐している。電源ライン22に直列にインダクタL1が実装されている。
【0026】
デシリアライザ回路モジュール30のプリント配線基板35に、電源端子36及びグランド端子37が設けられている。電源端子36は電源ライン42に接続されている。グランド端子37はグランドプレーン40に接続されている。直流電源55の正極及び負極が、それぞれ電源端子36及びグランド端子37に接続される。電源ライン42には、昇圧や降圧をするためのDC-DCコンバータが挿入されることもある。
【0027】
図3A及び図3Bは、それぞれコモンモードチョークコイル12(図1図2)の正面図及び底面図である。なお、コモンモードチョークコイル32(図1図2)も、コモンモードチョークコイル12と同一の構成を有する。
【0028】
コア70の両端に、それぞれ鍔部71、72が設けられている。一方の鍔部71の上面から他方の鍔部72の上面まで、天板73が架け渡されている。コア70に2本の導線が同一の巻き方向になるように巻かれている。一方の導線が一方のコイル12A(図1図2)を構成し、他方の導線が他方のコイル12B(図1図2)を構成する。
【0029】
一方の鍔部71の底面に外部電極74、76が設けられており、他方の鍔部72の底面に外部電極75、77が設けられている。4つの外部電極74、75、76、77は、平面視において長方形の頂点に対応する位置に配置される。外部電極74と外部電極75とが1つの辺の両端に位置し、外部電極76と77とが、その対辺の両端に位置する。一方のコイル12Aの両端が、それぞれ外部電極74、75に接続されており、他方のコイル12Bの両端が、それぞれ外部電極76、77に接続されている。
【0030】
コモンモードチョークコイル12をプリント配線基板25(図2)に実装する際には、外部電極74、75を、それぞれ導電パターン23及びグランドプレーン20に接続する。さらに、外部電極76、77を、それぞれレセプタクル13の中心導体15側の信号ライン21及びシリアライザ11側の信号ライン21に接続する。
【0031】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。シリアライザ11から送信されるノーマルモード信号がプリント配線基板25の内部でモード変換され、コモンモードノイズ成分が発生する場合がある。コモンモードノイズ成分は、信号ライン21と、コモンモードチョークコイル12のコイル12Aとを同位相で伝搬する。このため、コモンモードノイズ成分は、同軸ケーブル50に漏洩する前にコモンモードチョークコイル12によって抑制される。これにより、同軸ケーブル50からの放射ノイズを低減することができる。
【0032】
同様に、デシリアライザ回路モジュール30の電源ライン42に発生したコモンモードノイズ成分の同軸ケーブル50への漏洩を抑制することができる。
【0033】
さらに、第1実施例では、シリアライザ回路モジュール10と同軸ケーブル50との接続箇所、及びデシリアライザ回路モジュール30と同軸ケーブル50との接続箇所に、それぞれコモンモードチョークコイル12、32が挿入されている。コモンモードチョークコイル12がレセプタクル13(図2)の直近に配置されているため、同軸ケーブル50からの放射ノイズを効果的に抑制することができる。
【0034】
また、シリアライザ11からデシリアライザ31までの信号の伝送線路に、2つのコモンモードチョークコイル12、32が直列に挿入されることになるため、伝送線路がコモンモードノイズ成分に対してより高いインピーダンスを持つことになる。これにより、シリアライザ回路モジュール10とデシリアライザ回路モジュール30とが相互に及ぼし合うコモンモードノイズの影響を低減することができる。
【0035】
同軸ケーブル50(図1)にフェライトコアを適用することによりコモンモードノイズ成分を抑制することができるが、第1実施例では、この構成と比べて、フェライトコア等による重量の増大を抑制することができる。信号ライン及びグランドラインの両方にフェライトビーズを適用することによりコモンモードノイズ成分を抑制することができるが、第1実施例では、この構成と比べて信号の波形の品位に与える影響を少なくすることができる。
【0036】
次に、図4及び図5を参照して、第1実施例の優れた効果を確認するために行った評価実験について説明する。
【0037】
図4は、評価実験で採用した測定系の概略図である。この測定系は、CISPR25 Ed.3規格に準拠するものである。測定は、電波暗室60内で行った。床からの高さが90cmの位置にグランドプレーン61を配置した。グランドプレーン61の上に、厚さ5cmの絶縁板62を載せ、その上に、シリアライザ回路モジュール10、デシリアライザ回路モジュール30、及び両者を接続する同軸ケーブル50を配置した。同軸ケーブル50の長さは1.5mとした。
【0038】
5Vの直流電源55から電源インピーダンス安定化回路65、66を介してデシリアライザ回路モジュール30に電源を供給した。電源ケーブルには、フェライトコア63、64を適用した。
【0039】
同軸ケーブル50から1m離れた位置にアンテナ67を配置し、同軸ケーブル50からの放射ノイズレベルを測定した。周波数30MHz以上300MHz以下の周波数域の放射ノイズレベルの測定にはバイコニカルアンテナを用い、周波数300MHz以上1000MHz以下の周波数域の放射ノイズレベルの測定には対数周期アンテナを用いた。シリアライザ回路モジュール10からデシリアライザ回路モジュール30に、330MHz(660Mbps)の信号を伝送し、放射ノイズレベルを測定した。
【0040】
図5Aは、シリアライザ回路モジュール10及びデシリアライザ回路モジュール30に実装したコモンモードチョークコイル12、32(図1)の特性を示すグラフである。横軸は周波数を単位「MHz」で表し、縦軸は透過係数S21を単位「dB」で表す。図5Aのグラフ中の実線Sccはコモンモード成分の透過係数を示し、破線Sddはノーマルモード成分の透過係数を示す。ノーマルモード成分の透過係数はほぼ0dBである。コモンモード成分の透過係数は、周波数が高くなるにしたがって低下する。
【0041】
図5Bは、評価実験の結果を示すグラフである。横軸は周波数を単位「MHz」で表し、縦軸は放射ノイズレベルを単位「dBμV/m」で表す。図5Bのグラフ中の太い実線E0は第1実施例によるシリアライザ回路モジュール10とデシリアライザ回路モジュール30を用いたときの放射ノイズレベルの測定値を示している。細い実線E1は、コモンモードチョークコイル12、32を配置していない場合の放射ノイズレベルの測定値を示している。
【0042】
特に、周波数300MHz以上600MHz以下の範囲で、放射ノイズレベルの低減が確認された。
【0043】
シングルエンド伝送方式においてコモンモードノイズが発生するのは、送信側モジュールのグランドと、受信側モジュールのグランドとがダイポールアンテナとして働くことに起因すると考えられる。送信側モジュールのグランドと、受信側モジュールのグランドとがダイポールアンテナとして働くと、信号電流の一部が、信号線に近接したグランドを通らず浮遊静電容量を通じて迂回して流れる。このように、本来のルートからはずれて流れる信号電流が、コモンモードノイズの原因になる。
【0044】
信号電流の迂回を少なくするために、送信側及び受信側のモジュールのグランドを低インピーダンスで接続し、グランドを強化することが好ましいと考えられている。送信側モジュールのグランドと受信側モジュールのグランドとを接続する同軸ケーブルの外部導体に直列にコモンモードチョークコイルを挿入することは、グランド同士を低インピーダンスで接続するという考え方とは反するように思える。ところが、上記評価実験の結果によると、第1実施例のようにコモンモードチョークコイルを挿入することにより、300MHz以上600MHz以下の周波数の範囲において、ノイズ低減効果が得られていることが確認された。
【0045】
次に、図6A及び図6Bを参照して、第1実施例の第1変形例について説明する。第1変形例では、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2(図1)の好ましい静電容量について説明する。
【0046】
図6Aは、第1実施例によるシリアライザ回路モジュール10とデシリアライザ回路モジュール30との間の高周波信号の伝送経路を示す等価回路図である。シリアライザ11の第1信号端子D1から信号ライン21及び同軸ケーブル50の内部導体51を通ってデシリアライザ31の第1信号端子D1に高周波信号SSが伝送される。デシリアライザ31の第2信号端子D2からグランドプレーン40、同軸ケーブル50の外部導体52、及びグランドプレーン20をリターン信号SRが伝送される。
【0047】
理想的には、高周波信号SSとリターン信号SRとが同一レベルであることが望ましい。この場合、第1キャパシタC1の静電容量と第2キャパシタC2の静電容量とを等しくすることが理想である。
【0048】
SerDes伝送方式においては、数百kHz以上数十MHz以下の周波数帯の低周波信号と、数百MHz以上数十GHz以下の周波数帯の高周波信号との両方を送受信できるようにすることが望まれる。そのため、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2の静電容量は低周波信号を透過させるように決定することが好ましい。
【0049】
図6Bは、第1ポートの一方の端子と第2ポートの一方の端子との間にキャパシタを挿入した回路の透過係数S21の周波数依存性のシミュレーション結果を示すグラフである。横軸は周波数を単位「MHz」で表し、縦軸は透過係数S21を単位「dB」で表す。図6Bでは、キャパシタの静電容量が0.1nF、0.47nF、1nF、0.01μF、及び0.47μFのときの透過係数S21を示している。
【0050】
一例として、数百kHzの信号を透過させるためには、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2の静電容量を共に0.01μF以上にすることが好ましいことがわかる。ただし、静電容量を必要以上に大きくする必要はない。例えば、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2の静電容量は、0.47μF以下にすればよい。
【0051】
次に、第1実施例の第2変形例について説明する。第1変形例では、高周波信号SSとリターン信号SRとが同一レベルである場合を扱ったが、第2変形例では、両者が同一レベルではない場合を扱う。高周波に対するグランドプレーン20、40のインピーダンスが高く、グランドが不安定である場合、高周波のリターン信号SRによってグランド電位が変動する。グランド電位の変動は、同軸ケーブル50の外部導体52の電位変動を誘発する。外部導体52の電位変動により、同軸ケーブル50の内部導体51と外部導体52とを流れるコモンモードノイズが発生する。その結果、同軸ケーブル50がノイズ放射源となり、放射ノイズが増加する。
【0052】
放射ノイズを低減させるためには、グランドプレーン20、40にリターン信号SRが伝送されないようにすればよい。リターン信号SRをグランドプレーン20、40に流さないようにするためには、第2キャパシタC2とグランドプレーン20、40との間の終端抵抗R1を取り外してオープンにすればよい。ところが、終端抵抗R1の部分を完全にオープンにすると、シリアライザ11及びデシリアライザ31が正常に動作しなくなる場合がある。
【0053】
従って、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2の静電容量を調整してシリアライザ11及びデシリアライザ31を正常に動作せつつ、かつグランドプレーン20、40に流れるリターン信号SRをできるだけ少なくすることが望ましい。この状態を実現するために、第2キャパシタC2の静電容量を第1キャパシタC1の静電容量より小さくすることが好ましい。第2変形例においても、第1変形例と同様に、第1キャパシタC1及び第2キャパシタC2の静電容量を共に0.01μF以上0.47μF以下の範囲にすることが好ましい。
【0054】
次に、第1実施例の他の変形例について説明する。
【0055】
第1実施例では、シリアライザ11の第2信号端子D2とグランドプレーン20との間に第2キャパシタC2を挿入したが、第2信号端子D2に直流が流出入しない場合には、直流成分をカットする必要がないため、第2キャパシタC2が挿入されている箇所を短絡させてもよい。この場合、第2信号端子D2が終端抵抗R1を介してグランドプレーン20に接続されることになる。
【0056】
第1実施例では、図2に示したように同軸ケーブル用のレセプタクル13をシリアライザ回路モジュール10のプリント配線基板25に実装したが、レセプタクル13を筐体等に取付けてもよい。この場合には、筐体等に取り付けたレセプタクル13のシェル導体14及び中心導体15を、それぞれ導電パターン23及び信号ライン21にケーブル等で接続すればよい。
【0057】
また、第1実施例では、デシリアライザ回路モジュール30(図1)に直流電源55を接続し、デシリアライザ回路モジュール30から同軸ケーブル50を介してシリアライザ回路モジュール10に電源を供給した。その反対に、シリアライザ回路モジュール10に直流電源55を接続し、シリアライザ回路モジュール10から同軸ケーブル50を介してデシリアライザ回路モジュール30に電源を供給してもよい。また、シリアライザ回路モジュール10及びデシリアライザ回路モジュール30の両方に電源を接続してもよい。
【0058】
第1実施例では、シリアライザ回路モジュール10からデシリアライザ回路モジュール30にシリアル信号を送信する構成とした。第1実施例で開示した技術的思想は、同軸ケーブルを用いたシングルエンド伝送方式を採用するその他の装置に適用することが可能である。
【0059】
[第2実施例]
次に、図7Aから図8Bまでの図面を参照して、第2実施例による回路モジュールについて説明する。以下、第1実施例と共通の構成については説明を省略する。
【0060】
図7Aは、第2実施例による回路モジュールの概略等価回路図である。第2実施例においては、シリアライザ回路モジュール10の信号ライン21にノーマルモードノイズフィルタ24が挿入されている。ノーマルモードノイズフィルタ24は、電源ライン22と信号ライン21との接続点と、第1キャパシタC1との間の信号ライン21に挿入されている。
【0061】
図7Bは、ノーマルモードノイズフィルタ24の一例を示す等価回路図である。ノーマルモードノイズフィルタ24には、例えば信号ライン21に直列に挿入されたインダクタL3とフェライトビーズFB、及びシャントキャパシタC3からなるT型フィルタを用いることができる。なお、インダクタL3、フェライトビーズFB、及びシャントキャパシタC3のいずれか1つまたは2つを省略してもよい。
【0062】
第2実施例による回路モジュールのノイズ抑制効果を確認するために、評価実験を行った。以下、評価実験について説明する。
【0063】
図8Aは、評価実験に用いたシリアライザ回路モジュール10に実装したノーマルモードノイズフィルタ24のフィルタ特性を示すグラフである。横軸は周波数を単位「MHz」で表し、縦軸はノーマルモード信号に対する透過係数S21を単位「dB」で表す。周波数が高くなるに従って透過係数S21が低下していることがわかる。ただし、透過係数S21の低下の傾きは、図5Aに示したコモンモードチョークコイルのコモンモードノイズに対する透過係数S21の低下の傾きに比べて緩やかである。
【0064】
図8Bは、評価実験の結果を示すグラフである。横軸は周波数を単位「MHz」で表し、縦軸は放射ノイズレベルを単位「dBμV/m」で表す。放射ノイズレベルの測定に用いた装置は図4に示したものと同一であり、測定条件は、図5Bに示した放射ノイズレベルの測定条件と同一である。
【0065】
図8Bのグラフ中の細い実線E0が、第1実施例によるシリアライザ回路モジュール10及びデシリアライザ回路モジュール30を用いたときの放射ノイズの測定結果を示す。太い実線E2が、第2実施例によるシリアライザ回路モジュール10及びデシリアライザ回路モジュール30を用いたときの放射ノイズの測定結果を示す。シリアライザ回路モジュール10からデシリアライザ回路モジュール30に送信した信号の周波数は330MHz(660Mbps)である。
【0066】
ノーマルモードノイズフィルタ24を挿入することにより、800MHz以上1000MHz以下の周波数域において放射ノイズレベルの低減が確認された。このように、ノーマルモードノイズフィルタ24を挿入することにより、放射ノイズレベルをより低減させることができる。
【0067】
次に、第2実施例の変形例について説明する。第2実施例では、シリアライザ回路モジュール10にノーマルモードノイズフィルタ24を実装した。ノーマルモードノイズフィルタは、デシリアライザ回路モジュール30に実装してもよいし、シリアライザ回路モジュール10及びデシリアライザ回路モジュール30の両方に実装してもよい。
【0068】
第2実施例では、電源ライン22と信号ライン21との接続点と、第1キャパシタC1との間の信号ライン21にノーマルモードノイズフィルタ24を挿入したが、他の箇所に挿入してもよい。例えば、電源ライン22と信号ライン21との接続点と、コモンモードチョークコイル12との間の信号ライン21にノーマルモードノイズフィルタ24を挿入してもよい。
【0069】
また、第2実施例では、同軸ケーブル50へのノーマルモードノイズの漏洩を抑制するために、ノーマルモードノイズフィルタ24を信号ライン21に挿入した。その他の構成として、コモンモードチョークコイル12に、信号波形を維持する範囲でノーマルモード信号に対するインピーダンス(ノーマルモードインピーダンス)を持たせてもよい。例えば、コモンモード信号に対して図5Aに示した透過特性を持ち、ノーマルモード信号に対して図8Aに示した透過特性を持つコモンモードチョークコイルを用いるとよい。このようなコモンモードチョークコイルの一例が、特開2009-182055号公報に開示されている。
【0070】
このように、特定の周波数域においてコモンモードチョークコイルにノーマルモードインピーダンスを持たせることにより、ノーマルモードノイズフィルタ24(図7A)を挿入することなく、第2実施例と同様の効果を得ることができる。その結果、部品点数の削減を図ることが可能になる。
【0071】
[第3実施例]
次に、図9Aから図9Cまでの図面を参照して、第3実施例による回路モジュールとして、シリアライザ回路モジュール10を例に挙げて説明する。以下、第1実施例によるシリアライザ回路モジュール10(図1図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0072】
図9Aは、第3実施例によるシリアライザ回路モジュール10の平面図である。図9Bは、図9Aの一点鎖線9B-9Bにおける断面図である。第1実施例では、グランドプレーン20(図2)がプリント配線基板25の内層または裏側の面に配置されており、信号ライン21とグランドプレーン20とがマイクロストリップ線路を構成していた。第3実施例では、信号ライン21とグランドプレーン20とがプリント配線基板25の同一の面に配置されており、信号ライン21とグランドプレーン20とがコプレーナ線路を構成している。電源ライン22は、グランドプレーン20と重ならないように配置されている。
【0073】
プリント配線基板25の裏側の面に、他のグランドプレーン26が配置されている。グランドプレーン26は、ビア導体27を介して表側の導電パターン23に接続されている。表側のグランドプレーン20と裏側のグランドプレーン26とは、直接接続されておらず、コモンモードチョークコイル12を介して接続されている。平面視において、表側のグランドプレーン20と裏側のグランドプレーン26とが重なっている。
【0074】
プリント配線基板25に、シャーシに取り付けるための複数の貫通孔28が設けられている。
【0075】
図9Cは、図9Aの一点鎖線9C-9Cにおける断面図である。金属製のシャーシ58の貫通孔及びプリント配線基板25の貫通孔28を貫通するビス29により、プリント配線基板25がシャーシ58に固定されている。この状態で、グランドプレーン26がシャーシ58に接触することにより、グランドプレーン26がシャーシ58に短絡され、フレームグランドとして機能する。
【0076】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。第1実施例においては、導電パターン23(図2)が同軸ケーブル50側のグランドとして機能する。放射ノイズ低減のために、コモンモードチョークコイル12をレセプタクル13の直近に配置すると、導電パターン23を大きくすることが困難である。グランドとして機能する導電パターン23が小さいため、同軸ケーブル50のグランドが不安定になる。
【0077】
これに対し、第3実施例では、同軸ケーブル50の外部導体52に短絡されたグランドプレーン26(図9B)が同軸ケーブル50側のグランドとして機能する。グランドプレーン26は、プリント配線基板25の厚さ方向に関してグランドプレーン20と異なる位置に配置されるため、グランドプレーン26をグランドプレーン20に重ねて大きくすることが可能である。グランドプレーン26を大きくすることにより、第1実施例の構造に比べて、同軸ケーブル50のグランドを強化することができる。
【0078】
次に、第3実施例の変形例について説明する。第3実施例では、プリント配線基板25(図9C)を金属製のシャーシ58(図9C)に固定したが、金属製のシャーシ58に代えて、導電性の部材を備えた筐体を用いてもよい。例えば、銅箔を備えた樹脂製の筐体を用い、プリント配線基板25のグランドプレーン26(図9C)を銅箔に電気的に接続してもよい。なお、銅箔は、必ずしも樹脂部材に密着している必要はなく、銅箔と樹脂部材との間に空隙が存在してもよい。その他に、樹脂の表面に蒸着によって金属層を設けた筐体を用い、プリント配線基板25のグランドプレーン26(図9C)を金属層に電気的に接続してもよい。
【0079】
[第4実施例]
次に、図10A及び図10Bを参照して、第4実施例による車載電子機器について説明する。
図10Aは、車両80、及び車両80に搭載された車載電子機器の概略図である。車載電子機器として、電子制御ユニット(ECU)81、及び複数のカメラ82が車両80に搭載されている。電子制御ユニット81と複数のカメラ82の各々とが同軸ケーブル83で接続されており、両者の間で制御信号や画像信号の送受信が行われる。これらの信号の送受信には、SerDes伝送方式が適用される。
【0080】
図10Bは、電子制御ユニット81と1つのカメラ82との接続系統を示すブロック図である。カメラ82とシリアライザ回路モジュール10のシリアライザ11とが、パラレルインタフェースで接続されている。デシリアライザ回路モジュール30のデシリアライザ31と電子制御ユニット81とがパラレルインタフェースで接続されている。シリアライザ回路モジュール10及びデシリアライザ回路モジュール30として、第1実施例、第2実施例、及び第3実施例のいずれか1つの実施例によるシリアライザ回路モジュール10及びデシリアライザ回路モジュール30が用いられる。
【0081】
シリアライザ回路モジュール10のコモンモードチョークコイル12と、デシリアライザ回路モジュール30のコモンモードチョークコイル32とが、同軸ケーブル83で接続されている。直流電源55から電子制御ユニット81及びデシリアライザ31に直流電力が供給される。さらに、直流電源55から、コモンモードチョークコイル32、同軸ケーブル83、及びコモンモードチョークコイル12を介してシリアライザ11及びカメラ82に直流電力が供給される。
【0082】
カメラ82で取得された画像データがパラレルインタフェースを介してシリアライザ11に入力される。シリアライザ11は、カメラ82から入力されたパラレル信号をシリアル信号に変換し、変換されたシリアル信号を、同軸ケーブル83を介してデシリアライザ31に送信する。デシリアライザ31は、受信したシリアル信号をパラレル信号に変換する。変換されたパラレル信号が電子制御ユニット81に入力される。このようにして、カメラ82で取得された画像データを電子制御ユニット81に送信することができる。
【0083】
第4実施例では、第1実施例、第2実施例、及び第3実施例のいずれか1つの実施例によるシリアライザ回路モジュール10及びデシリアライザ回路モジュール30が用いられるため、同軸ケーブル83からの放射ノイズを低減することができる。
【0084】
上述の各実施例及び変形例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0085】
10 シリアライザ回路モジュール
11 シリアライザ
12 コモンモードチョークコイル
12A、12B コイル
13 同軸ケーブル用のレセプタクル
14 シェル導体
15 中心導体
20 グランドプレーン
21 信号ライン
22 電源ライン
23 導電パターン
24 ノーマルモードノイズフィルタ
25 プリント配線基板
26 グランドプレーン
27 ビア導体
28 貫通孔
29 ビス
30 デシリアライザ回路モジュール
31 デシリアライザ
32 デシリアライザ回路モジュールのコモンモードチョークコイル
35 デシリアライザ回路モジュールのプリント配線基板
36 電源端子
37 グランド端子
40 デシリアライザ回路モジュールのグランドプレーン
42 デシリアライザ回路モジュールの電源ライン
50 同軸ケーブル
51 内部導体
52 外部導体
55 直流電源
58 シャーシ
60 電波暗室
61 グランドプレーン
62 絶縁板
63、64 フェライトコア
65、66 電源インピーダンス安定化回路
67 アンテナ
70 コア
71、72 鍔部
73 天板
74、75、76、77 外部電極
80 車両
81 電子制御ユニット(ECU)
82 カメラ
83 同軸ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10