(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】接合要素をクリーニングし加工物上に接合するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/20 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
B23K9/20 A
B23K9/20 Z
(21)【出願番号】P 2019512875
(86)(22)【出願日】2017-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017072253
(87)【国際公開番号】W WO2018050494
(87)【国際公開日】2018-03-22
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】102016117177.8
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504075577
【氏名又は名称】ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】エイッサラ バー
(72)【発明者】
【氏名】メシュット ゲルソン
(72)【発明者】
【氏名】ライス クリスティアン
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0131319(US,A1)
【文献】特開2009-018346(JP,A)
【文献】特表2003-519575(JP,A)
【文献】特開2006-142382(JP,A)
【文献】特開平09-094666(JP,A)
【文献】特開昭63-235078(JP,A)
【文献】特表2015-523218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にスタッド溶接又はスタッド接着のための、接合要素(18)を加工物(20)の上に接合するための方法(50)であって、
前記接合要素(18)、及び前記接合要素(18)が接合される前記加工物(20)を準備するステップと、
前記加工物(20)及び/又は前記接合要素(18)の少なくとも1つの特性変数を検出するステップ(52)と、
前記少なくとも1つの特性変数を評価し、前記少なくとも1つの特性変数を第1及び第2の変数クラスの1つに分類するステップ(54)と、
前記少なくとも1つの特性変数が前記第1の変数クラスに分類されたとき、接合プロセス(58;64)を実行するステップと、
前記少なくとも1つの特性変数が前記第2の変数クラスに分類されたとき、前記加工物(20)及び/又は前記接合要素(18)上でクリーニング・プロセス(66)を実行するステップと、
前記クリーニング・プロセス(66)の後に前記接合プロセス(68)を実行するステップと、
を含み、
前記クリーニング・プロセス(66)は、前記接合プロセスとは独立して実行され、
前記クリーニング・プロセス(66)は、クリーニング媒体(R)を用いて実行され、
かつ
前記検出ステップ(52)は、蛍光測定を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記クリーニング媒体(R)は、ガスを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クリーニング媒体(R)は、アイスジェットを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
個々の接合プロセス(58;64;68)は、標準接合パラメータ、又は前記標準接合パラメータに関して修正された接合パラメータを用いて実行され、
前記接合プロセス(68)は、前記クリーニング・プロセス(66)の後に前記標準接合パラメータを用いて実行されることを特徴とする、請求項1~請求項
3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
個々の接合プロセス(58;64;68)は、標準接合パラメータ、又は前記標準接合パラメータに関して修正された接合パラメータを用いて実行され、
-前記接合要素(18)、及び前記接合要素(18)が接合される前記加工物(20)を準備するステップと、
-前記加工物(20)及び/又は前記接合要素(18)の少なくとも1つの特性変数を検出するステップと、
-前記少なくとも1つの特性変数を評価するステップ(54)と、
-前記少なくとも1つの特性変数が第1の値範囲内にある場合、前記標準接合パラメータを用いて前記接合プロセス(58)を実行するステップ(58)、又は前記少なくとも1つの特性変数が第2の値範囲内にある場合、前記修正された接合パラメータを用いて前記接合プロセス(64)を実行するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1~請求項
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記クリーニング・プロセス(66)は、0.1秒から5秒までの範囲にわたる期間(TR)にわたり実行されることを特徴とする、請求項1~請求項
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記クリーニング・プロセス(66)の後、前記少なくとも1つの特性変数を再度検出し、その後、前記接合プロセス(58;64;68)を実行する前に、前記少なくとも1つの特性変数の評価を再度実行することを特徴とする、請求項1~請求項
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記接合プロセス(58;64;68)の後、補足的クリーニング・プロセス(70)を実行することを特徴とする、請求項1~請求項
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
特に請求項1~請求項
8の1項に記載の方法を実行するための、接合要素(18)を加工物(20)に接合する接合装置(10)であって、
-前記接合要素(18)のための保持装置(24)を有し、これにより前記接合要素(18)は前記加工物(20)に対して接合軸(22)に沿って移動可能である、接合ヘッド(12)と、
-前記加工物(20)及び/又は前記接合要素(18)の少なくとも1つの特性変数を検出するための検出装置(32)と、
-前記少なくとも1つの特性変数を評価するための評価装置(40)と、
-前記加工物(20)及び/又は前記接合要素(18)上でクリーニング・プロセス(R)を実行するためのクリーニング装置(36)と、
を含むことを特徴とする、接合装置。
【請求項10】
前記クリーニング装置(36)は前記接合ヘッド(12)に固定され、前記クリーニング装置(36)は、前記接合軸(22)に対して10°と45°との間の範囲の角度(β)で配向されることを特徴とする、請求項
9に記載の接合装置。
【請求項11】
前記検出装置(32)は前記接合ヘッド(12)に固定されることを特徴とする、請求項
9~請求項
10のいずれかに記載の接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合要素を加工物上に接合するための方法、特にスタッド溶接又はスタッド接着のための方法に関する。
本発明はさらに、接合要素を加工物上に接合するための接合装置、特に上述の方法を実施するための接合装置に関し、この接合装置は、接合要素のための保持装置を備える接合ヘッドを含み、これにより接合要素が、加工物に対して接合軸に沿って移動可能にされる。
【背景技術】
【0002】
このタイプの接合方法及び関連した接合装置は、例えば、いわゆるスタッド溶接又は接着の分野において広く知られている。
【0003】
ここでは、スタッドは、スタッドが加工物の表面に対して垂直方向に突出する状態で、金属板のような加工物の上に接合される。このように接合された構成部品は、例えば、プラスチック製クリップをスタッドに締結するために用いることができる。例として、クリップは、例えば燃料ライン又はブレーキラインにおけるように、加工物に対して管又はケーブルを固定する働きをすることができる。従って、一般的なタイプでは、この接合方法は、特に、自動車用の車体製造の分野において用いられる。
【0004】
スタッド溶接においては、接合要素と加工物との間に電流の流れが確立され、接合要素が加工物に対して持ち上げられ、その結果、これらの間にアークが発生する。アークは、加工物及び接合要素の対向する面の溶融(又は融解)をもたらす。その後、接合要素は、加工物の上に降下され、その結果、接合電流が短絡する。融解生成物全体が堅くなり、接合プロセスは終了する。
【0005】
スタッド接着においては、一般に、接合要素には、接合面上に活性化可能な接着剤が事前に付与される。次に、接着剤の活性化により、スタッド接着が実現される。その後で、接合要素及び加工物が互いに対して押し付けられ、最終的に接着剤が硬化される。これは、種々の外部要因を利用して、特に熱により行うことができる。
【0006】
この種の接合部の品質に関わるものとしては、原因となる実際の接合プロセスだけではない。ここで重要でないとは言えない役割を果たすものとして、加工物の材質及び表面品質があり、場合によっては、接合要素の材質及び表面品質も挙げられる。これは、加工物及び接合要素が鋼で作成されるときにも当てはまる。特に、加工物及び接合要素がそれぞれアルミニウム合金で作成されるとき、これらの問題が生じる。
【0007】
アルミニウム合金に基づいた接合部では、加工物の特性の変化が特に顕著である。こうした特性は、アルミニウム合金が再利用材料で構成されているかどうかにも依存する。さらに、正確に言うと特に押出成形材料の場合には、上部層が最大1mmまでの深さに達することがあり、この上部層上の粒径が一様でないと、問題が生じることがある。
こうした一様でない粒径により、導電率が不均一になる。従って、この不均一な導電率は、アークを通る電流の流れに影響を与えることになる。
【0008】
さらに、多くの加工物は、鋳造プロセスで生成される。この鋳造プロセスは、ろう、油、ポリシロキサン、炭化水素、ポリマー等により構成される剥離剤で表面が被覆されるという問題をもたらす。特に、こうした剥離剤による被覆が場所によって一様でない場合、接合パラメータを適切に適合させることが困難である。炭素での被覆の場合、これは、溶接接合部内に細孔又は収縮孔をもたらすことがあり、従って、全体的に空隙率の高い溶接接合部をもたらし、そのことは溶接接合部の強度に悪影響を与えることがある。
さらに、合金要素は、溶接性に影響を与えることもある。
【0009】
一般的に言うと、規定の表面仕様を有する材料が要求されているが、その後に接合プロセスが行われ、その場合には、特に接合パラメータに関して調整がなされることになり、これらの表面仕様が、必ずしも適切に満たされるとは限られないことが経験により分かっている。
【0010】
スタッド溶接の分野においては、実際のスタッド溶接プロセスの前に、アーク・クリーニング・プロセス(「クリーン・フラッシュ」)を行うことが知られている。このプロセスにおいては、実際の溶接プロセスの前に、交番極性を有するアークが形成され、それに基づき、不純物がイオン化されて加工物表面から剥離される。このプロセスに関連する問題は、こうした不純物が、後で他の接合面上でスタッドに付着し、その結果、この場合も均一な接合部という観点から問題が生じる。
【発明の概要】
【0011】
この背景に対して、本発明の目的は、接合要素を加工物に接合するための改善された方法、及びこの目的のための改善された接合装置を定義することである。
【0012】
一側面では、上記の目的は、特にスタッド溶接又はスタッド接着のための、接合要素を加工物上に接合するための方法であって、接合要素、及び該接合要素が接合される加工物を準備するステップと、加工物及び/又は接合要素の少なくとも1つの特性変数を検出するステップと、少なくとも1つの特性変数を評価し該少なくとも1つの特性変数を第1及び第2の変数クラスの1つに分類するステップと、該少なくとも1つの特性変数が第1の変数クラスに分類されたとき、接合プロセスを実行し、少なくとも1つの特性変数が第2の変数クラスに分類されたとき、加工物及び/又は接合要素上でクリーニング・プロセスを実行し、該クリーニング・プロセスの後で接合プロセスを実行するステップと、により特徴付けられる方法によって達成される。
【0013】
さらに、上記の目的は、接合要素を加工物に接合するための接合装置であって、接合要素のための保持装置を有し、これにより接合要素は加工物に対して接合軸に沿って移動可能である、接合ヘッドと、加工物及び/又は接合要素の少なくとも1つの特性変数を検出するための検出装置と、少なくとも1つの特性変数を評価するための評価装置と、加工物及び/又は接合要素上でクリーニング・プロセスを実行するためのクリーニング装置とを含む、接合装置によって達成される。
【0014】
本発明による方法において、最初に、加工物及び/又は接合要素の少なくとも1つの特性変数を検出することにより、加工物又はその表面を分類することが可能である。この文脈において、好ましくは、接合要素が接合される加工物の表面部分の少なくとも1つの特性変数が検出されることは明らかである。
【0015】
さらに、本発明による方法において、加工物を分類し(及び加工物の幾つかの領域を分類し)、次に、クリーニングを(必要に応じて)実行することが可能であり、加工物全体又は加工物の少なくとも一部がクリーニングされたとき、1つ又は幾つかの接合ステップを実行する。
【0016】
特性変数は、ここでは、材料、表面品質、表面仕上、表面上の炭素被覆、純度に関連し、鋳造加工物の場合には剥離剤に関連し、さらに、例えば接合要素材料に関連する加工物材料などの相対量も含み得る。
【0017】
以下に、加工物の少なくとも1つの特性変数だけが検出される好ましい形態に焦点を当てて説明する。しかしながら、他に特に明記していない限り、加工物の変数の検出及び評価についての以下の言及は、同様に、接合要素の変数の検出又は評価にmediaお関連する。
【0018】
少なくとも1つの特性変数の検出は、好ましくは自動化手段によって、正確に言えば、好ましくは適切な検出装置によって実現される。この又はこれらの検出装置は適切なセンサを含むことができ、このセンサは、純粋に受動的に動作するものであるか、又は加工物に物理的プロセスを能動的に施し、その後、センサにより該物理的プロセスに対する反応が検出されるものとすることができる。
【0019】
検出ステップは、後の評価ステップにおいて加工物を分類することを可能にする。この場合において、第1の変数クラスと第2の変数クラスを区別する。検出ステップは、加工物の1つの又は複数の特性変数を結合して1つの変数量にすることを含むものとすることができる。その後、例えば、この変数の量が第1の数値範囲に入るか又は第2の数値範囲に入るかを判別し、次に、それを用いて、少なくとも1つの特性変数の評価及び第1又は第2の変数クラスへの分類をすることができる。
【0020】
第1の変数クラスに分類がなされる場合には、これは、本質的に、加工物又はその表面が、クリーニング・プロセスを事前に実行する必要なしに接合するのに適していることを意味することを意味する。例えば、接合要素が加工物の比較的汚れていない表面部分の上に接合される場合、第1の変数クラスに分類することができ、その分類後に、事前のクリーニング・プロセスなしに、接合プロセスが実行される。第1の変数クラスへの分類は、ここでは、後の接合プロセスが、標準接合パラメータを用いて実行されるか又は修正された接合パラメータを用いて実行されるかを意味するものであり、それは以下でさらに詳細に考査される。
【0021】
少なくとも1つの特性変数が、評価ステップにおいて第2の変数クラスに分類される場合には、これは、事前にクリーニング・プロセスを実行することなしには、接合プロセスが実行されないことを意味する。従って、この場合、最初に、クリーニング・プロセスが加工物上及び/又は接合要素上で実行され、この後で初めて接合プロセスが実行される。
【0022】
クリーニング・プロセスは、ここではアーク・クリーニング・プロセスではなく、接合プロセスとは関係なく実行されるクリーニング・プロセスである。
【0023】
クリーニング・プロセスは、接合要素が既に接合ヘッドの保持装置内に配置され、加工物上の特定の位置(接合部位)に割り当てられた段階で実行されることが好ましい。これは特に、クリーニング・プロセスを実行するためのクリーニング装置が接合ヘッド上に配置される場合に有利である。
【0024】
代替的に、例えば複数の接合要素が1つの加工物上に取付けられる場合などにおいては、加工物上で、適切な接合位置をそれぞれ事前に評価し、必要に応じて、これらの位置においてクリーニング・プロセスをそれぞれ順次に実行することが可能であり、このクリーニング・プロセスは、接合要素が接合ヘッドの保持装置内に給送される前でも実行することができる。従って、例えば、クリーニング・プロセスを加工物上でまとめて行って、その後、全ての接合要素を加工物に締結することができ、その場合には、接合プロセスと接合プロセスとの間において、さらなるクリーニング・プロセスはもはや必要でない、という好ましい結果が得られる。
従って、目的は完全に達成される。
【0025】
好ましい実施形態によると、クリーニング・プロセスは、クリーニング媒体を用いて実行される。
【0026】
クリーニング媒体は、ガス、液体、又は固体とすることができる。好ましくは、加工物へのクリーニング媒体の適用は、クリーニング媒体を接合面の上に、特に加工物の接合部位の上に指向させる別個のクリーニング装置によって実現される。クリーニング媒体は、ここでは電気クリーニング媒体ではなく、特に電気アークではない。
クリーニング媒体を適用するために用いられるクリーニング装置は、好ましくは、接合プロセスを実行するためのシステムとは別個であり、これらと独立しているものとする。
【0027】
特に好ましい実施形態によると、クリーニング媒体は、例えば、プラズマガス、特にTIGプラズマガスのようなガスを含む。
更に別の好ましい実施形態によると、クリーニング媒体は、例えばCO2スノージェットのようなアイスジェットを有するものである。
【0028】
さらに、検出ステップが、以下の検出プロセス、すなわち、接触抵抗測定、導電性の測定、及び蛍光測定のうちの少なくとも1つを含むことが有利である。
さらに、それぞれの接合プロセスが、標準接合パラメータを用いて、又は標準接合パラメータに関して修正された接合パラメータを用いて実行されることが、全体的に有利であり、クリーニング・プロセス後に実行される接合プロセスは、標準接合パラメータを用いて実行されることが好ましい。
【0029】
接合プロセスの標準接合パラメータは、加工物の表面が最適な状態にあると想定した場合のパラメータである。従って、接合は、標準接合パラメータを用いて実現することができる。
接合パラメータは、例えば、溶接電流、接合プロセスの実行中の加工物より上方の接合要素の高さ(アークの長さ)、アークが維持される期間等とすることができる。
【0030】
請求項1の前提部を備え、本発明の基本を構成する更に別の好ましい実施形態によると、それぞれの接合プロセスは、標準接合パラメータを用いて、又は標準接合パラメータに関して修正された接合パラメータを用いて実行され、この方法は、次のステップ、すなわち、接合要素と該接合要素が接合される加工物とを準備するステップと、加工物及び/又は接合要素の少なくとも1つの特性変数を検出するステップと、該少なくとも1つの特性変数を評価するステップと、該少なくとも1つの特性変数が第1の値範囲内にあるとき、標準接合パラメータを用いて接合プロセスを実行し、少なくとも1つの特性変数が第2の値範囲内にあるとき、修正された接合パラメータを用いて接合プロセスを実行するステップと、を有する。
【0031】
この実施形態において、少なくとも1つの特性変数は、第1の数値範囲又は第2の数値範囲に分類される。2つの数値範囲は、第1の変数クラス内にあることが好ましい。言い換えれば、一般に、ひとたび事前のクリーニング・プロセスを実行する必要なしに、接合プロセスを実行できると判別されたとき、少なくとも1つの変数の評価及び第1の値範囲又は第2の値範囲への分類が実行される。
【0032】
言い換えれば、本発明のこの態様においては、好ましくは、加工物が、事前のクリーニング・プロセスなしに、接合プロセスを行うことについて一般的な適合性を有すると判別した後に、接合プロセスが標準接合パラメータを用いて実行されるか、又は修正された接合パラメータを用いて実行されるか、ということの判断が、少なくとも1つの特性変数の評価により行われる。
修正された接合パラメータは、少なくとも1つの特性変数に応じて適合され、従って、少なくとも1つの特性変数の関数として修正されることが好ましい。
【0033】
従って、少なくとも1つの特性変数が第2の数値範囲内にある場合には、少なくとも1つの特性変数が第1の数値範囲から離れた第2の数値範囲の端にあるとき、第2の数値範囲内の少なくとも1つの特性変数が第1の数値範囲のより近くにあるとき、例えば、別の修正された接合パラメータの組を用いることができる。
【0034】
全体的に、本発明による方法においては、0.1秒から5秒までの範囲の期間、クリーニング・プロセスが実行されることが、さらに有利である。
クリーニング・プロセスの持続時間は、2秒未満であることが好ましい。ここではクリーニング・プロセスは、この期間連続的に実行することができ、又は例えば期間内に2乃至20パルスを有するように、この期間の間パルス化することができる。
【0035】
クリーニング・プロセスの持続時間は、接合プロセスの期間より短く、或いは、これと等しくして、本発明の方法により、サイクル時間が長くならないようにすることが好ましい。
【0036】
更に別の全体的な好ましい実施形態によると、クリーニング・プロセスの後、少なくとも1つの特性変数を再検出し、その後、接合プロセスが実行される前に、少なくとも1つの特性変数の評価を再実行する。
【0037】
これにより、クリーニング・プロセスの実行後に、特性変数が依然として第1の変数クラス内にない場合、必要に応じて、幾つかのクリーニング・プロセスを次々と実行することが可能になる。さらに、必要に応じて、後の接合プロセスが、標準接合プロセスを用いて実行されるか、又は修正された接合プロセスを用いて実行されるかを判断することが可能であるが、クリーニング・プロセスの後、一般に標準接合パラメータを用いて接合が実現されるようにすることが有利である。
【0038】
最後に、接合プロセスの後、補足的クリーニング・プロセスが実行されるようにすることも有利である。
補足的クリーニング・プロセスは、特に、接合プロセス中に生じる煙残留物を除去する働きをし、それにより、加工物及びこれに接合される接合要素を含むきれいな構成部品を提供することができる。
【0039】
さらに、接合プロセスが、標準接合パラメータを用いて実行されるか、又は修正された接合パラメータを用いて実行されるようにすることが有利であり、ここで、接合パラメータは、接合プロセスが事前のアーク・クリーニング・プロセスを含むかどうかについての情報を含むものとする。
【0040】
言い換えれば、別個のクリーニング装置を用いたクリーニング・プロセスの後、例えば、少なくとも1つの特性変数が第2の数値範囲に分類されるとき、必要に応じて、アーク・クリーニング・プロセス(「クリーン・フラッシュ」)を実行することができる。
【0041】
本発明による接合装置において、クリーニング装置が接合ヘッドに固定されることが好ましく、その場合、クリーニング装置が、接合軸に対して10°と45°との間の範囲の角度で配向されることが好ましい。
【0042】
このことは、接合ヘッドが既に接合要素を受け入れ、これを保持装置内に保持している場合、従って、実際の接合プロセスの実行のすぐ前に、その表面領域が接合要素の下方に配置される加工物の表面領域をクリーニングすることを可能にする。
【0043】
更に別の好ましい実施形態においては、検出装置が接合ヘッドに固定される。
これは、特に、検出装置が受動検出装置であるときに有利となる可能性がある。しかしながら、一般に、検出装置は、ひとたび接合ヘッドに固定されると、検出装置が能動構成部品を含む場合でも、後で測定できる物理量を加工物に与えることができる。
【0044】
接合要素を加工物に接合するための方法は、一般的な用語で上述されている。しかしながら、本発明による方法は、加工物上で実行される他の接合プロセスにも適しており、例えば2つの加工物が例えば溶接シームを介して互いに接合される場合にも適用できる。
【0045】
この場合も、この加工物及び/又は他の加工物の特性変数を事前に検出し、これらを第1及び第2のクラスに分類し、次にその後、少なくとも1つの特性変数が第1の変数クラスに入る場合には、接合プロセスを直ちに実行し、或いは、アーク若しくは他の接合のための物理量と無関係にクリーニング・プロセスを事前に実行することが可能である。
【0046】
従って、本発明による方法は、互いに接続される第1及び第2の加工物を準備することに焦点を置くこともでき、その後、加工物の1つの、好ましくは両方の加工物の少なくとも1つの特性変数を検出し、その後これらを評価するために適用することができる。
【0047】
上述の特徴及びさらに以下に説明される特徴は、それぞれの場合に与えられる組み合わせのみならず、本発明の枠組みから逸脱することなく、他の組み合わせで、又はそれら自体に基づいて用い得ることは明らかである。
本発明の例示的な実施形態は、図面に示されかつ以下の説明においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明による、接合装置の実施形態の概略図を示す。
【
図2】本発明による、例示的な接合方法の時間経過図を示す。
【
図3】本発明による、例示的な方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1において、接合装置が概略的な形で表され、全体を10で示される。
接合装置10は、接合ヘッド12又は接合ガンを含み、そこでは、接合ヘッド12は、好ましくは、ロボット16のアーム14に固定され、従って、空間において3次元で移動可能である。
【0050】
接合装置は、接合要素18を加工物20の上に接合する働きをする。接合要素は、具体的には、スタッドとすることができる。加工物20は、特に、金属板とすることができる。接合装置10は、好ましくは、自動車の車体製造の分野で使用される。
加工物20及び接合要素18の材料は、それぞれ、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。
【0051】
接合プロセスを実行するため、接合要素18が、接合ヘッド12の保持装置24内に保持され、好ましくは、加工物20の表面に対して垂直方向の接合軸22において配向される。
保持装置24は、好ましくは電源26に接続され、接合電流iを接続要素18に送るように構成される。
図1に示されるように、加工物20は、例えば、アース(又は地表源)に接続される。
【0052】
図1には、接合装置10が供給装置28を備え得ることがさらに示され、この供給装置28により、接合要素(
図1にTで示される)を自動化手段によって保持装置24に駆動させることができる。
【0053】
一貫した接合結果を得るために、接合装置10は、例えば、表面品質、表面特性などの加工物20の少なくとも1つの特性変数を検出するように構成された検出装置32を含む。品質表面及び表面特性とは、表面の汚染だけでなく、構造体のあらゆる特性を意味する。粒径、表面品質又は粗度のような材料構造を考慮に入れることができる。
図1に示されるように、検出装置32は、接合ヘッド12とは分離して設けることができるが、接合ヘッド12に固定することもできる。この場合、検出装置32は、接合軸22に対して角度αをなす検出軸34に沿って配向されることが好ましい。この角度αは、例えば10°から45°までの範囲に及ぶことができる。
【0054】
接合装置10は、クリーニング装置36をさらに含む。クリーニング装置36は、クリーニング媒体Rを加工物20の表面に適用するように設計される。クリーニング装置36は、接合ヘッド12とは分離して構成することができる。しかしながら、
図1に概略的に示されるように、例えば、クリーニング装置36は、接合ヘッド12に固定される。この場合、クリーニング装置36が、接合軸22に対して角度βで配向されるクリーニング軸38に沿って配向されることが好ましい。角度βの値は、例えば、同様に10°から45°までの範囲に及ぶことができる。
【0055】
接合装置10は、加工物20の、検出装置32により検出される特性変数を評価するように設計された評価装置40をさらに含む。評価装置40は、接合ヘッド12とは分離して配置することができ、さらに、接合ヘッド12内又は電源26内に統合することもできる。
【0056】
図2には、検出プロセスE、クリーニング・プロセスR、アーク・クリーニング・プロセスC及び接合プロセスFを示す、時間経過
図44が概略的に示される。
本発明による方法の実施において、
図2にEで示されるように、最初に、期間TEにおいて、加工物の少なくとも1つの特性変数が検出される。
【0057】
この後、少なくとも1つの特性変数が評価されるが、これは
図2に示されていない。少なくとも特性変数が第1の変数クラスに分類される場合、このすぐ後に、随意的にアーク・クリーニング・プロセスCの実行を介して、接合プロセスFを実行することができる。
接合プロセスFを表すために、
図2は、接合プロセスの実行中の加工物20の表面に対する接合要素18の高さh、並びに、保持装置、従って接合要素18に送られる電流iの量を示す。
【0058】
接合要素18が加工物20の表面の上に降下された後(h=0)、接合プロセスFが開始される。この後、電流iがオンにされ、パイロット・アークが発生する(i=iP)。次に、接合要素18が、加工物20から持ち上げられる。この後、電流iをiPから溶接電流iSまで増大させ、互いの接合面を溶融することができる。この後、再び加工物を、正確に言えば、好ましくは、加工物20の表面の下方に降下させ、その結果、短絡が形成され、電流iは0まで下げられる。これにより、接合プロセスFが終了する。
【0059】
随意的に、前に実行されるアーク・クリーニング・プロセスCが、少なくとも一度、逆極性を有するアークを生成し、それにより、加工物20の表面上のイオン化成分が接合要素18の方向に進む。
検出プロセスE及びその後の評価の後、少なくとも1つの特性変数が第1の変数に入るか又は第2の変数に入るかを判別する。第1の変数クラスに分類されると、既述のように、
図2に表される後のクリーニング・プロセスRを省くことができ、時間TFで行われ、必要であれば、時間TCで空間において先行するアーク・クリーニングを伴って接合プロセスFに直接進むことが可能である。
【0060】
少なくとも1つの特性変数が第2の変数クラスに入る場合には、クリーニング・プロセスRは、正確に言うと、クリーニング装置36及びクリーニング媒体を用いて、すなわち、好ましくは0.1秒から5秒までの範囲、さらに好ましくは3秒未満、特に2秒未満にわたる期間TRにわたり、実行される。
この後、次に接合プロセスFが、必要であれば、アーク・クリーニング・プロセスを伴って実行される。
【0061】
図3には、ブロック
図50の形態の本発明による方法の例示的な実施形態が表される。
この方法50は、開始後、検出ステップ52において、加工物20の少なくとも1つの特性変数を検出することを含む。
【0062】
後の評価ステップ54において、少なくとも1つの特性変数を評価し、第1又は第2の変数クラスに分類する。第1の変数クラスに分類される場合には、該少なくとも1つの変数が第1の数値範囲に入るか、又は第1の変数クラス内の第2の数値範囲に入るかどうかをさらに評価する。
【0063】
加工物20の少なくとも1つの特性変数が第1の変数クラスの第1の数値範囲に入る場合、問い合わせステップ56において、後の接合プロセスFが、標準接合パラメータを用いて実行可能であると判断され、58に示されるように、この接合プロセスが後で実行される。その後、方法は終了する。
【0064】
少なくとも1つの特性変数が第1の数値範囲に入らない限り、後の問い合わせステップ60において、少なくとも1つの特性変数が、第1の変数クラス内の第2の数値範囲に入るかどうかが尋ねられる。この場合には、ステップ62において、接合パラメータの適合が行われ、後の接合プロセス64が、修正された接合パラメータを用いて実行される。ここで、接合パラメータの適合は、少なくとも1つの特性変数の関数として行われることが好ましい。
【0065】
ステップ60において、少なくとも1つの特性変数が第2の変数クラスに入ると判別された場合には、これに続いて、ステップ66において、最初にクリーニング・プロセスが実行される。
【0066】
この後、接合プロセス68が、正確に言うと、好ましくは標準接合パラメータを用いて行われる。
接合プロセス58、64、68の後、通常は、方法を、それぞれ終了する。必要に応じて、後の補足的クリーニング・プロセス70を実行することもできるが、そこで、例えば、溶接作業に起因する煙残留物の跡が除去される。この補足的クリーニング・プロセスは、例えば、クリーニング・プロセス66と同じクリーニング媒体を用いて実現することができる。
【0067】
図3では、クリーニング・プロセス66の実行後、随意的にループバックが行われることがさらに示され、少なくとも1つの特性変数の検出が52で行われ、この後、少なくとも1つの特性変数の評価に応じて、同様に次のステップが行われる。
【0068】
更に別の実施形態において、最初に加工物を分類する(又は、加工物の幾つかの領域を分類する)ことが可能であり、次に(必要な場合は)クリーニングを実行し、加工物全体又は加工物の少なくとも部分がクリーニングされた後、1つ又は幾つかの接合ステップを実行する。従って、特性変数の評価、及び該特性変数の第1の変数クラスへの分類後、幾つかの接合プロセスを実行することができる。
【0069】
特性変数の評価及び該特性変数の第2の変数クラスへの分類後、幾つかのクリーニング・プロセスを実行することもできる。クリーニング・プロセスの後、幾つかの接合プロセスを実行する。
【0070】
本発明によると、評価及び判定により、値を結果として得られる変数にグループ化し、次に、正しい接合パラメータの組を選択することが可能になる。
【符号の説明】
【0071】
10:接合装置
12:接合ヘッド
14:アーム
16:ロボット
18:接合要素
20:加工物
22:接合軸
24:保持装置
26:電源
28:供給装置
32:検出装置
34:検出軸
36:クリーニング装置
40:評価装置
50:方法
R:クリーニング媒体