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特許7155118酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20221011BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20221011BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 69/15 20060101ALI20221011BHJP
   C07C 67/055 20060101ALI20221011BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221011BHJP
【FI】
B01J37/02 101E
B01J37/18
B01J35/08 Z
C07C69/15
C07C67/055
C07B61/00 300
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019525503
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2018022668
(87)【国際公開番号】W WO2018235705
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2017123030
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017123182
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮治 孝行
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 隼人
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-513788(JP,A)
【文献】特表2010-512985(JP,A)
【文献】国際公開第2016/198561(WO,A1)
【文献】特表平08-510685(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104549517(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 67/055
C07C 69/15
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物からなる球状多孔質成型担体に、
触媒活性種としてのパラジウム前駆体と助触媒成分としての金前駆体を含む混合水溶液を含浸させた後、
アルカリ水溶液を含浸処理することで、前記パラジウム前駆体と金前駆体を球状多孔質成型担体中で水に不溶化してパラジウム-金固定化球状多孔質成型担体を得る工程と、
その後、パラジウム-金固定化球状多孔質成型担体の含水率を、パラジウム-金固定化球状多孔質成型担体重量に対して4wt%以上に調整する工程と、
前記含水率を調整されたパラジウム-金固定化球状多孔質成型担体の含水率を4wt%以上に維持したまま、熟成させる熟成工程を含むことを特徴とする酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒の製造方法。
【請求項2】
球状多孔質成型担体が、
・直径:3~7mm
・比表面積値:10~1000m/g
・球状多孔質成型担体における飽和吸水率:0.2~2g/g
である請求項1に記載のパラジウム-金担持触媒の製造方法。
【請求項3】
熟成工程を40~120℃で72時間以上行うものである請求項1に記載の酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸、エチレンおよび酸素を原料として酢酸ビニルを合成する際に使用する酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸ビニルは、酢酸ビニル樹脂の原料、ポリビニルアルコールの原料、さらにエチレン、スチレン、アクリレート、メタクリレート等との共重合用モノマーとして、塗料、接着剤、繊維処理剤等の広い分野に用いられている重要な工業材料である。
【0003】
酢酸、エチレンおよび酸素を原料とする酢酸ビニルの製造用として、パラジウム、金を多孔質成型担体の表層にスキン付け(表層偏在担持)させ、必要に応じて酢酸カリウムなどを用いて更にアルカリ金属を担持させた触媒が古くから知られており(非特許文献1、2)、現在でも盛んに検討されている(特許文献1、2)。本発明では酢酸ビニルを単に「VAM」ということがあり、VAMを合成するための触媒を以下単に「VAM触媒」ということがある。
【0004】
VAM触媒における金は、活性点であるパラジウムのシンタリングの抑制や、酢酸ビニルの合成においてはその選択率を向上させる役割がある。また、カリウムは助触媒、活性化剤としての役割があることが知られている(特許文献2、3)。しかし、従来の製法で得られた触媒においては最適なパラジウムと金の分布位置について詳細な検討が行われることは無かった。
【0005】
前記のようなパラジウムと金の作用を踏まえると、VAM触媒はパラジウムや金が担体の表面においてその分布位置が一致していることが好ましく、そのような分布位置を実現する手法として、特許文献2ではパラジウムや金の固定化のためのアルカリ水溶液を担体に含浸させた後、パラジウム塩溶液、金溶液を含浸させることでシェル型触媒を形成する方法が提案され高い性能が実現されている。
【0006】
このようにパラジウムと共に金を担持することで触媒としての性能が向上することは、触媒としては活性の低い金の性質からすると一見矛盾するように思われる。しかし、金は活性が低い分、反応系においても安定に存在し、パラジウムと共に存在することで、シンタリングなど反応系におけるパラジウムの変質を抑制して触媒としての寿命を延ばす効果がある。また、シンタリングが抑制されるということは、担体中のパラジウムの分散を高い状態で維持することでもあり、分散状態が高く維持されることで触媒としての活性も高い状態で維持することができる。すなわち、酢酸ビニルの製造用の触媒における金は、パラジウムが担持された担体のシェル層(スキン層)において、一致した状態で担持される状態であることが望ましいといえる。
【0007】
その一方で、VAM触媒におけるパラジウムによる高い活性は一方で意図せぬ副反応が懸念される。産業用途のVAMの製造条件は当業者によって異なりその条件は様々である。そのような条件の例としては、酸素分圧が高かったり、対触媒体積あたりの反応物の流速が低い場合等が挙げられ、反応が過剰に促進してしまう事が懸念される。そのため、触媒においては副反応が抑制された触媒も求められている。このような副反応を抑制可能な触媒としては、特許文献4(請求項25)のように、金の分布位置と濃度を調整することが考えられる。例えば、パラジウムと金が担持された担体において、担体の外側には金の濃度を高く設定し、内側では金の濃度を低く設定する。これにより、担体の表面側、すなわち酸素分圧の高い部分(活性を高め易い部分)では副反応を抑制すると共に、パラジウムの高活性の影響によるシンタリングを抑制できる。そして、担体の内側、すなわち酸素分圧の低い部分(活性を高め難いが副反応がおき難い部分)ではパラジウム濃度を高くして高い転化率を実現することができる。このように触媒を設計することが出来れば、触媒粒子全体として、高い転化率と選択率を実現できる。しかし、特許文献4(請求項12)のような例では、触媒製造の工程が複雑であり、産業上有利な製造方法とは言い難い。
【0008】
また、近年のグリーンケミストリーへの傾向からVAM触媒の活性、すなわちその収率や選択性に対しても、市場の要求は更なる向上を求めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特表2010-527778号公報
【文献】特表平08-510685号公報
【文献】特公昭60-9864号公報
【文献】特開2002-45706号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】「酢酸ビニル製法の過去,現在,そして将来」有機合成化学 第45巻 第7号(1987)691-700
【文献】「酢酸ビニル製造技術の変遷」有機合成化学 第34巻 第12号(1976)969-979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、VAM触媒における金とパラジウムの担持位置を容易に調整できる技術を提供し、市場の要求にこたえることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、無機酸化物からなる球状多孔質成型担体に、触媒活性種としてのパラジウム前駆体と助触媒成分としての金前駆体を含む混合水溶液を含浸させた後、アルカリ水溶液を含浸処理することで、前記パラジウム前駆体と金前駆体を球状多孔質成型担体中で水に不溶化してパラジウム-金固定化球状多孔質成型担体を得た後に、パラジウム-金固定化球状多孔質成型担体の含水率を調整することにより、VAM触媒における金とパラジウムの担持位置を容易に調整できることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、
無機酸化物からなる球状多孔質成型担体に、
触媒活性種としてのパラジウム前駆体と助触媒成分としての金前駆体を含む混合水溶液を含浸させた後、
アルカリ水溶液を含浸処理することで、前記パラジウム前駆体と金前駆体を球状多孔質成型担体中で水に不溶化してパラジウム-金固定化球状多孔質成型担体を得る工程と、
その後、パラジウム-金固定化球状多孔質成型担体の含水率を調整する工程を含むことを特徴とする酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒の製造方法である。
【0014】
また、本発明は、
無機酸化物からなる球状多孔質成型担体に、
触媒活性種としてのパラジウム前駆体と助触媒成分としての金前駆体を含む混合水溶液を含浸させた後、
アルカリ水溶液を含浸処理することで、前記パラジウム前駆体と金前駆体を球状多孔質成型担体中で水に不溶化してパラジウム-金固定化球状多孔質成型担体を得る工程と、
その後、パラジウム-金固定化球状多孔質成型担体の含水率を調整する工程を含むことを特徴とする酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒における、パラジウム-金の担持位置調整方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、VAM触媒における金とパラジウムの担持位置を、特別な装置や複雑な工程を用いることなく、容易に調整できる。
【0016】
そして、本発明により、金とパラジウムの担持位置を球状多孔質成型担体の外殻側に一致させたVAM触媒を製造すれば、そのVAM触媒は金の使用による触媒性能の向上が見込まれる。
【0017】
また、本発明により、パラジウムを球状多孔質成型担体の外殻側に偏在担持させたパラジウム担持領域において、その領域の表面側では金の濃度を高くし、その領域の内側では金の濃度を低くしたVAM触媒を製造すれば、そのVAM触媒は金を効果的に配置することで高転化率、高選択率となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1比較例1の触媒におけるパラジウム分布のEPMA(電子線マイクロアナライザ:Electron Probe Micro Analyzer)による線分析の結果であり、触媒表面からのパラジウムの強度分布を表した図面である。
図2比較例1の触媒における金分布のEPMAによる線分析の結果であり、触媒表面からの金の強度分布を表した図面である。
図3比較例1の熟成工程を施さずに得られた触媒についてEPMA(電子線マイクロアナライザ:Electron Probe Micro Analyzer)による線分析の結果であり、パラジウムと金の分布が一致できていないことを表した図面である。
図4】実施例で得られた触媒についてEPMAによる線分析の結果であり、触媒表面からのパラジウムの強度分布を表した図面である。
図5】実施例で得られた触媒についてEPMAによる線分析の結果であり、触媒表面からの金の強度分布を表した図面である。
図6】実施例で得られた触媒についてEPMAによる線分析の結果であり、パラジウムと金の分布が一致していることを表した図面である。
図7比較の低含水率で得られた触媒についてEPMAによる線分析の結果であり、パラジウムと金の分布が一致できていないことを表した図面である。
図8】実施例で得られた触媒についてEPMAによる線分析の結果であり、パラジウムと金の分布が一致していることを表した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[球状多孔質成型担体]
本発明の酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒の製造方法(以下、「本発明製法」という)に使用される担体は球状多孔質成型担体であり、多孔質な無機酸化物からなる。多孔質であれば、担持されるパラジウムを高分散に担持することができるので高活性な触媒反応が期待できる。そして無機酸化物であることで触媒反応系における状態も安定である。また、その形状が球状であることで触媒成分やその前駆体の含浸深さの制御が容易である。パラジウムや金のような各触媒成分の担持幅が成分毎に一定な触媒は、触媒表面における反応活性も均一であり、産業上の利用においても反応条件の設定が容易である。
【0020】
このような球状多孔質成型担体は、その直径が3~7mmであることが好ましく、4~6mmであることがより好ましい。触媒用の球状多孔質成型担体としては更に小さなサイズの担体も存在するが、比較的大型の担体であれば反応装置に充填して使用した場合にも反応物が流通する充分な空間を確保することが可能であり、反応における圧力損失が少なく効率的な反応が促進される。しかし、このような触媒粒子間の空隙はただ大きければ良いというものではなく、あまりに空隙が大きくなるサイズの触媒、すなわち粒径が大きすぎる触媒では触媒における単位体積あたりの幾何学的な表面積(球体の表面積)が小さくなり、触媒として使用した場合に充分な活性が得られないことがある。
【0021】
また、本発明製法に使用される球状多孔質成型担体は多孔質なものであるが、その状態は比表面積値(BET値)としても表すことができ、具体的には10~1000m/gが好ましく、50~500m/gがより好ましく、100~300m/gが最も好ましい。このようなBET値の担体であれば、パラジウムや金を高分散な状態で担持することができ、本発明の方法によるパラジウムと金の各成分の作用を発揮させ易くなる。
【0022】
本発明製法において、触媒成分を含浸した球状多孔質成型担体における水分量は含水率として表すことができる。含水率は「JIS R 2205_1992 耐火れんがの見掛気孔率・吸水率・比重の測定方法」を参考にした方法で特定される。本発明においては球状多孔質成型担体を乾燥させ、その乾燥質量に対する水の含浸質量から求められる。なお、触媒成分を含浸していない球状多孔質成型担体における吸水率についても、担体の乾燥質量に対する水の含浸質量から同様に求められる。
【0023】
触媒成分を含浸した球状多孔質成型担体における含水質量の測定方法は特に限定されるものでは無いが、球状多孔質成型担体50gを、30分以上イオン交換水中に完全に浸漬した後、ペーパータオル上に取り出して担体を転がして担体表面の余剰な水分を除去した質量と、この含水担体を105℃条件下で8時間以上乾燥させて測定した質量の差を担体が含水可能な水分量として、これを基準として求めることができる。本発明における吸水率についても同様の手法により測定した値から求めることができる。このような吸水率について、完全に吸水した状態については飽和吸水率という。このような飽和吸水率は0.2~2[g/g]であることが好ましく、0.4~1[g/g]であることがより好ましい。
【0024】
[パラジウム]
本発明製法に使用されるパラジウム成分は水溶液の状態で球状多孔質成型担体に含浸させることから水溶性パラジウム塩を使用することが好ましい。このようなパラジウム塩は特に限定されるものではなく、後述する金化合物やパラジウム塩を水不溶化して固定化するために使用されるアルカリ溶液との組合せにより適宜選択されるものである。
【0025】
このようなパラジウム塩の例としては、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、塩化パラジウム酸ナトリウム、塩化パラジウム酸カリウム、酢酸パラジウムなどがあげられ。特に塩化パラジウム酸ナトリウムを水溶液として使用することが好ましい。このようなパラジウム化合物水溶液の濃度は特に限定されるものでは無いが、好ましくは1~50wt%、より好ましくは2~25wt%である。
【0026】
[金]
本発明製法に使用される金成分もパラジウム成分同様に水溶液の状態で球状多孔質成型担体に含浸されることから水溶性の金塩を使用することが好ましい。このような金塩も前述したパラジウム塩同様、金塩を水不溶化して固定化するために使用されるアルカリ溶液との組合せにより適宜選択されるものである。
【0027】
水溶性の金塩の例としては特に限定されるものではないが、塩化金酸や塩化金酸ナトリウム、塩化金酸カリウムなどが挙げられ、塩化金酸を水溶液として使用することが好ましい。このような金化合物水溶液の濃度についても前記のパラジウム化合物水溶液と同様、その濃度は特に限定されるものでは無いが、好ましくは1~50wt%、より好ましくは2~25wt%である。
【0028】
[アルカリ水溶液]
本発明製法に使用されるアルカリ水溶液は、前段の工程でパラジウムや金の塩溶液を、球状多孔質担体中の外殻側に非水溶化した状態で固定することが可能であれば特に限定されるもので無い。このような固定は担体表面側への沈殿と見る事もできる。
【0029】
このようなアルカリ水溶液の成分としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の重炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のケイ酸塩といったアルカリ性化合物の溶液が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムが用いられる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムが用いられる。好適には、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが用いられる。このようなアルカリ水溶液の成分量、すなわち固形分換算のアルカリ成分の使用量は、本発明におけるアルカリ水溶液の使用が前述のとおりパラジウム成分や金成分の固定(球状多孔質成型担体中での沈殿)を目的とすることから、アルカリ水溶液はパラジウムや金の塩を非水溶化する際に消費される量に対してはやや過剰になるように濃度を調整して使用することが好ましい。なお、過剰に含浸されたアルカリ水溶液の成分は、水による洗浄などの工程をもって球状多孔質成型担体から除去することが好ましい。
【0030】
[パラジウム塩水溶液、金塩水溶液の含浸]
本発明製法では球状多孔質成型担体にパラジウム塩水溶液、金塩水溶液を含浸させるが、ここにおける含浸はパラジウム塩水溶液と金塩水溶液を混合した混合水溶液を含浸させてもよい。
【0031】
本発明製法において アルカリ水溶液、またパラジウム塩の水溶液、金塩の水溶液を球状多孔質成型担体に含浸させる手法は特に限定されるものでは無く、回転する円筒形ドラム状容器に担体を入れて搖動させ、スプレーを持って噴霧して含浸させても良く、あらかじめ所定の濃度に調整された溶液中にメッシュなどの通水可能な容器に収められた球状多孔質成型担体を浸漬して含浸させても良い。スプレーをもって噴霧担持する手法ではその含浸量の制御が比較的正確に制御することが可能であり、浸漬する手法では操作の簡便性から大量生産に適している。また、このような含浸法は一方を選択しても良く、工程や生産設備に応じて組み合わせて使用しても良い。
【0032】
[パラジウム-金固定化球状多孔質成型担体の含水率を調整する工程]
本発明製法において、上記のようにして得られたパラジウム-金固定化球状多孔質成型担体の含水率を調整する方法は特に限定されないが、例えば、パラジウム-金固定化球状多孔質成型担体に水分の補給や乾燥を行って調整すればよい。なお、アルカリ水溶液、またパラジウム塩水溶液、金塩の水溶液は球状多孔質成型担体中に均一に含浸される事が好ましいことから、含水率の調整方法は、各成分の溶液は担体が吸液することが可能な液量相当を含浸させた後、乾燥工程を適用することが好ましい。以下、アルカリ水溶液、またパラジウム塩水溶液、金塩の水溶液が含浸された球状多孔質成型担体を、単に「含浸担体」ということがある。また、その際には、温度や時間を調整してもよい。少なくともこの含水率の調整を行うことにより、パラジウム-金固定化球状多孔質成型担体における、パラジウムと金の担持位置を調整することができる。
【0033】
[パラジウムと金の担持位置を一致させる条件]
本発明製法では、上記のようにして球状多孔質成型担体重量に対して4wt%以上、望ましくは5~50wt%の含水率として、以下に述べる熟成工程を施せば、パラジウムと金の分布をより一致させることができる。
【0034】
[熟成工程]
本発明製法において含浸担体に熟成工程を行う場合、温度は40~120℃、好ましくは50~80℃である。温度が低すぎると熟成の進行が著しく遅くなり産業的に利用可能な製造方法とは言い難い。また、温度が高すぎると含浸担体から水分が揮発し易くなり、熟成に必要な水分量を維持するのが難しくなったり、水分の揮発を抑制するために気密容器を使用する必要が生じる。気密容器による高温の熟成であると容器の破裂や気密状態からの解放時のミスト噴出の恐れが有る。
【0035】
上記のような温度、含水率のもと、含浸担体は72時間以上で熟成される。熟成時間が短すぎるとパラジウムと金の担持位置を一致させることが難しくなる。熟成時間については長くてもパラジウムと金の分布に影響を与える恐れは少ないが、長すぎても担体に含浸した水分量の維持が困難になったり、長時間の工程によって製造コストが高騰してしまう。このような理由により、熟成時間は168時間あればパラジウムと金の分布を一致させるのに充分である。
【0036】
[パラジウムと金の担持位置を偏在させる(一致させない)条件]
本発明製法においては、上記パラジウムと金の担持位置を一致させる条件にしなければパラジウムと金の担持位置を偏在させることができる。そのような条件としては、例えば、上記含水率にしなかったり、上記熟成工程を行わなかったりすればよい。より具体的には、含水率を4wt%未満にしたり、40℃未満に保ったり、72時間未満に次工程に移る等して熟成されないようにすればよい。
【0037】
[還元工程]
上記のようにして含水率を調整した後(必要によりさらに熟成をさせた後)は、還元処理を行うことが好ましい。これにより確実にVAM触媒中のパラジウムと金が還元される。
【0038】
本発明製法により得られたパラジウムと金を担持した球状多孔質成型担体を酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒とするには、アルカリ水溶液で非水溶化した後、熟成させることなく還元処理を施す。還元処理を施すことで、パラジウム成分が担持した層において、金成分の濃度が球状多孔質成型担体の外殻側で濃く、内側で薄い状態で金属の状態になり完全に固定される。このような金の分布はアルカリ水溶液で非水溶化した段階で既に実現しているが、還元前であると熟成により金成分が移動し、パラジウムと金の担持位置が一致してしまう。このようにして、パラジウムの分散状態を維持するために使用される金により、触媒中の酸素分圧を調整する働きが発揮される触媒が得られる。
【0039】
本発明製法における還元処理の手段は特に限定されるものではなく、触媒の製造において広く使用されている手法の中から適宜選択して使用すれば良いが、還元剤として液体を使用する場合はヒドラジンやギ酸、ホウ素化水素ナトリウム、各種アルコールを、気体を使用する場合には水素やエチレン等を用いることができる。
【0040】
本発明製法における還元手段としては、水素を還元成分とした気相還元法が好ましい。液相還元であると還元が溶媒中で進行することからその過程で貴金属成分の移動が容易であり、貴金属が凝集し易く、担持された貴金属粒子が肥大化し易い。ただし、VAMの製造条件によっては長年の使用で微小な貴金属粒子のシンタリングが懸念されることがあり、VAM触媒の使用初期の貴金属粒子径がある程度大きさである事で、VAM製造の初期とそれ以降で活性の変化がおき難く長期間一定の性能を求める場合には有利なこともある。対して気相還元法で、還元が迅速であり、溶媒の介在も無いことから還元過程における貴金属成分は移動し難く、貴金属粒子を高分散な状態で担持することができる。貴金属が高分散な状態であれば、貴金属粒子の単位質量あたりの表面積は大きくなり、活性面の大きな触媒を得る事ができる。
【0041】
このような貴金属粒子の担持状態は、貴金属の単位質量あたりの表面積[m/g](MSA:Metal Surface Area)や、触媒の単位質量あたりの一酸化炭素(CO)吸着量[ml/g(Cata.)]で表す事ができる。
【0042】
還元成分に水素を使用した気相還元法を用いる場合、その条件は特に限定されるものでは無く、還元ガスの組成、温度、時間を適宜調整して実施することができる。このうち、還元ガスは水素のみであっても良いが、水素と窒素の混合ガスを使用することが好ましく、その体積換算の組成で[H/(H+N)]=3/100~100/100が好ましく、5/100~30/100がより好ましく、10/100~20/100が最も好ましい。水素の量が少なすぎると還元が不充分になったり還元に要する時間が長くなることがある。なお、水素の組成量が多い場合、貴金属成分の還元そのものに重大な影響を及ぼす事は少ないが、コスト増につながり産業用の触媒の製法としては好ましいものではなくなる場合がある。
【0043】
また、気相還元における温度については100~500℃が好ましく、200~400℃が特に好ましい。温度が低すぎると還元が不充分になったり、還元に長時間かかることがあり、高すぎると貴金属のシンタリングが生じて活性な表面積が減少してしまう事がある。
【0044】
また、気相還元における時間は1~5時間が好ましく、2~4時間がより好ましい。還元時間が短すぎると還元が不充分になることもあるが、短い時間で充分な還元を行おうとすると温度を著しく高く設定する必要がある場合があり、貴金属がシンタリングを起してしまう事がある。還元時間が長すぎるとこの場合も貴金属のシンタリングが生じて活性な表面積が減少してしまう事がある。
【0045】
以上のようにして、酢酸ビニル合成用パラジウム-金担持触媒が得られる。この触媒におけるパラジウムと金の担持位置は、以下のようにして検証することができる。
【0046】
[パラジウム-金 同一幅担持の検証(一致の場合)]
本発明製法によってパラジウムと金が球状多孔質成型担体の外殻側に偏在した状態で、かつほぼ同一な担持幅で担持した球状のVAM触媒が得られる。このような同一な状態はパラジウムと金の一致状態ともいえ、その検証方法は特に限定されず、パラジウムの分布ピークと金の分布ピークの一致状態や、任意の担持幅におけるパラジウムと金の担持濃度や、担体における所定深さにおける任意の解析手法によるパラジウムの解析強度と金の解析強度の比較をもって検証することができる。このうち、解析強度による検証では、その状態は相関係数をもって表すことができる。
【0047】
このような相関係数はEPMAの元素分析の結果から解析することができる。すなわち、EPMA測定により得られたPdとAuの特性X線の強度値から、PdとAuの粒子内分布の相関係数Rを以下の式(1)により算出する。
【0048】
【数1】
【0049】
本発明製法により得られるVAM触媒におけるパラジウムと金の相関係数は、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8~1.0であることが最も好ましい。そして、このような球状多孔質成型担体におけるパラジウムと金は、その全重量の90wt%以上が、前記の例示した直径の球状多孔質成型担体の表面から1mm以内に存在することが好ましく、0.5mm以内に存在することがより好ましい。
【0050】
[パラジウム-金 の担持位置の検証(偏在の場合)]
本発明製法によってパラジウムと金が球状多孔質成型担体の外殻側に偏在した状態で、かつパラジウムの担持幅に対して金が触媒の表面側に高濃度、触媒の内側に低濃度で担持した球状のVAM触媒が得られる。このような状態はパラジウムに対する金の偏在担持ともいえ、その検証方法は特に限定されず、パラジウムの分布ピークと金の分布ピークの一致状態や、任意の担持幅におけるパラジウムと金の担持濃度や、担体における所定深さにおける任意の解析手法によるパラジウムの解析強度と金の解析強度の比較をもって検証することができる。このうち、解析強度による検証では、その状態はEPMAで解析した球状多孔質成型担体におけるパラジウムと金の強度分率をもって表すことができる。
【0051】
球状多孔質成型担体の粒をエポキシ樹脂で包埋した後、球状多孔質成型担体の粒がほぼ半分になるように研磨して触媒断面を露出させ、カーボン蒸着させてサンプルの前処理を行った。測定はJE0L社製の電子プローブマイクロアナライザJXA-8100を用いた。加速電圧15KV、照射電流0.03μA、ステップ幅1.5μmの条件で測定を行った。検出器には波長分散型検出器を用いた。
【0052】
電子線マイクロアナライザを用いて触媒粒中心を通るように線分析を行った。本発明において強度分率をもってパラジウムと金の担持位置を特定する場合、担体の外表面から中心までのパラジウム成分の強度の総和に対して、99.5%(これをパラジウム成分の強度分率と呼ぶ)以上が存在する深さ距離を担持層厚W(mm)とする。なお、パラジウムの存在しないブランクの測定点を除外するため、強度値が2以上の点を抽出した。なお、金は低強度のため測定点の除外はしなかった。
【0053】
このような解析の結果から、本発明製法により得られるVAM触媒は、球状多孔質成型担体の外表面からW×0.3(mm)の深さに存在する金成分の強度分率(Au0.3W)とパラジウム成分の強度分率(Pd0.3W)の比(Au0.3W/Pd0.3W)が1.1~5.0であることが好ましく、1.2~4.0であることがより好ましい。特に好ましいのは1.5~3.0である。
【0054】
[付加的工程]
本発明製法は上記のような工程の他、付加的な工程を加えても良い。そのような付加的な工程とは、アルカリ水溶液を含浸してパラジウムと金を球状多孔質成型担体の外殻側に固定した後や還元工程の後の洗浄処理、他の助触媒成分の含浸担持等が挙げられる。
【0055】
[付加的工程:酢酸カリウム含浸]
このような付加的な工程のうち、助触媒成分の含浸の例としてはVAMを得るための触媒反応において公知である酢酸カリウムの含浸が挙げられる。酢酸カリウムの含浸は、本発明においては前記の還元処理された球状多孔質成型担体に対して酢酸カリウムの水溶液を含浸することで行われるのが好ましい。このような酢酸カリウムの使用量は特に制限されるものでは無く、球状多孔質成型担体の単位体積あたりの担持量は25[g/L]以上であることが好ましく、30[g/L]以上であることがより好ましい。また、本発明に使用される酢酸カリウムも担体に対して均一に担持される事が好ましいことから、水溶液の状態で、球状多孔質成型担体における飽和吸水量の0.9~1質量倍の溶液を含浸乾燥することで担持させることが望ましい。なお、酢酸カリウムは酢酸ビニルの製造工程において流失してしまうことから、VAMの製造工程においても触媒に対して供給されるものである事が知られている(特許文献3、非特許文献2)。
【0056】
[触媒成分組成]
本発明製法で得られるVAM触媒にパラジウム、金、カリウムを担持させる場合、各元素の質量比[パラジウム:金:カリウム]はその担持される状況により適宜調整されるもので特に限定されるものではないが、[1:0.01~2:0.1~50]であることが好ましく、[1:0.3~0.8:0.5~20]であることがより好ましい。
【0057】
本発明製法により得られるVAM触媒は、担体の表面部分にパラジウムと金の大部分が担持されたシェル構造(エッグシェル構造ともいう)になっている。このようなシェルの構造はVAM触媒の使用環境に由来して要求される条件により異なるものの、本発明製法において前記の直径の担体を使用した場合、金が豊富な層、パラジウムが担持した層を併せてシェル部分の厚みは0.1~0.5mmの範囲であることで、優れた性能を発揮することができる。
【0058】
本発明製法により得られたVAM触媒は、酢酸ビニル合成に用いられる。このVAM触媒の使用条件は特に限定されず、従来から知られている条件の中から適宜調整すればよいが、例えば反応温度は140~190℃、反応圧力は6.5~8.7[気圧]、反応物の組成比はエチレン:酸素:酢酸(容量比)=63~73:7:20~30、空間速度1000~4000[/h]の条件が知られている(非特許文献1)。本発明のVAM触媒は触媒中の過剰な酸素を緩衝する作用を有することから、このような従来の条件の中でも酸素分圧が高い環境で使用されることが好ましい。
【実施例
【0059】
以下、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、その趣旨の範囲で実施可能である。
【0060】
比較例1>
VAM触媒の調製(1):
シリカ球担体(直径5.5[mm]、比表面積154[m/g]、充填時の密度559[g/L]、飽和吸水率0.61[g/g])を用い以下の手順で触媒を調製した。
【0061】
シリカ球担体1L当たり、金属パラジウムとして4.1g、金属金として2.1g含まれるNa2[PdCl4]水溶液、およびH[AuCl4]水溶液の混合液を用意し、予め調べておいたシリカ球担体の飽和吸水量となるように純水で希釈した。該希釈液を前記シリカ球担体1Lに吸水させて、前記パラジウム化合物および金化合物を担体に担持させた。36.3gのNaSiO・9HOを純水に溶解し、液量が460mLになるように調整した。この水溶液に、上記のパラジウム化合物および金化合物担持シリカ球担体を加えて、室温にて16時間以上浸漬し、パラジウム化合物、金化合物の沈殿(担体への固定化)を行った。
【0062】
その後、パラジウム化合物、金化合物の沈殿が完了したシリカ球担体を溶液から取出し、熟成することなく、ただちに大気雰囲気中100℃で乾燥した(含水率は7wt%)。乾燥後の含水率7wt%のシリカ球担体を室温で10時間以内に水素還元炉内に配置し、水素含有気流中において300℃にて3時間気相還元を行なった。このように還元処理が施されシリカ担体を取り出し、純水を用いて硝酸銀溶液の滴下により洗浄液が白濁しなくなるまで洗浄を行なった後、100℃で乾燥させて、PdとAuを担持したシリカ担体を得た。
【0063】
このようにして得られたVAM触媒について、触媒粒をエポキシ樹脂で包埋した後、触媒粒がほぼ半分になるように研磨して触媒断面を露出させた後、カーボン蒸着させてサンプルの前処理を行った。サンプル処理を行った触媒粒についてJE0L社製のEPMA(電子プローブマイクロアナライザJXA-8100)を使用し、加速電圧15KV、照射電流0.03μA、ステップ幅1.5μm、検出器には波長分散型検出器を用いて元素分析をおこなった。触媒の表層側から0.5mmの深さにおけるパラジウムの強度分布と強度分率を、図1にそれぞれ実線と破線で示す。なお強度分率とは、触媒表面側から見た各測定点におけるパラジウム量の総和に相当する。そして、パラジウムのEPMA分析と同様に金についても強度分布と強度分率を、図2にそれぞれ実線と破線で示す。図1図2の結果から、比較例1のVAM触媒におけるパラジウムの担持幅に対し、金はVAM触媒の表面側に偏って担持されていることが分かった。
【0064】
また、前記のようにパラジウムと金の強度分率の比(Au0.3W/Pd0.3W)を求めたところ、比較例1のVAM触媒では2.54であった。更に、元素分析による線分析の結果を図3に示す。ここで、前記式1で表される手法により相関係数を求めたところ、0.486であった。
【0065】
以上の結果から、VAM触媒におけるパラジウムと金の一致の程度は低いものであることが分かった。
【0066】
<実施例
VAM触媒の調製(2):
比較例1の還元処理の前に以下の熟成を施した他は同様にしてVAM触媒を得た。比較例1と同様にパラジウム化合物、金化合物の沈殿を行った後、パラジウム化合物、金化合物の沈殿が完了したシリカ球担体を溶液から取出し、含水率は7wt%になるよう大気中100℃で乾燥させた。この含水率7wt%のパラジウム化合物および金化合物担持シリカ球担体を密閉容器に入れ、60℃で7日間熟成を行った。図4図5比較例1と同様にパラジウムと金の強度分布と強度分率を示す。実施例のVAM触媒における金の担持状態はパラジウムの担持幅の担持状態と一致していることが分かった。
【0067】
実施例のVAM触媒についても実施例1と同様に強度分率を求めたところ、1.04でありパラジウムと金の一致の程度は高いものであった。また、元素分析による線分析の結果を図6に示す。ここで、前記式1で表される手法により相関係数を求めたところ、0.911であった。
【0068】
以上の結果から、VAM触媒におけるパラジウムと金の一致の程度は高いものであることが分かった。
【0069】
比較
VAM触媒の調製(3):
比較例1の還元処理の前に以下の熟成を施した他は同様にしてVAM触媒を得た。パラジウム化合物および金化合物の沈殿が完了したシリカ球担体を大気雰囲気中100℃で乾燥した後、一部試料を大気中105℃条件下で8時間乾燥させたところ、2wt%の重量減少があったため、該パラジウム化合物および金化合物担持シリカ球担体の含水率は2wt%であった。この含水率2wt%のパラジウム化合物および金化合物担持シリカ球担体を密閉容器に入れ、60℃で7日間熟成を行った。熟成後に大気中100℃で乾燥し、還元処理以降は比較例1と同じにしてVAM触媒を得た。
【0070】
得られた触媒を比較例1と同様の手法により元素分析をおこなった。線分析の結果を図7に示す。また、比較例1と同様に相関係数を求めたところ、0.535でありパラジウムと金の一致の程度は低いものであることが分かった。
【0071】
<実施例4>
VAM触媒の調製(4):
比較における含水率2wt%のパラジウム化合物および金化合物担持シリカ球担体に対して、さらに30wt%分の水分を噴霧供給して含水率32wt%のパラジウム化合物および金化合物担持シリカ球担体を得た。これを密閉容器に入れ、60℃で7日間熟成を行った以降は実施例と同じにしてVAM触媒を得た。
【0072】
得られた触媒を比較例1と同様の手法により元素分析をおこなった。線分析の結果を図8に示す。比較例1と同様に相関係数を求めたところ、0.864でありパラジウムと金の一致の程度は高いものであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、転化率と選択性に優れた酢酸ビニル製造用触媒を提供することができ、産業上有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8