(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】合成皮革
(51)【国際特許分類】
D06N 3/14 20060101AFI20221011BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20221011BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
D06N3/14
B32B27/12
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2019526921
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2018024135
(87)【国際公開番号】W WO2019004180
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017125599
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 道生
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/040230(WO,A1)
【文献】特開2002-371478(JP,A)
【文献】特開2013-234409(JP,A)
【文献】特開2007-247079(JP,A)
【文献】特開2005-194664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N1/00-7/06
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維質基材と、前記繊維質基材上に形成されたポリウレタン樹脂層とを備え、オモテ面に
凹凸模様であるシボ模様を有する合成皮革であって、
前記繊維質基材が両面編組織を有する丸編布からなり、前記繊維質基材の目付が350~600g/m
2
であり、前記繊維質基材に用いられる糸条の繊度が56~330dtexであり、
前記合成皮革のオモテ面の剛軟度が65~95mm、且つ、裏面の剛軟度が55~85mmである、合成皮革。
【請求項2】
前記シボ模様のシボの高さが50μm以上である、請求項1に記載の合成皮革。
【請求項3】
前記シボ模様のシボの幅が580μm以上である、請求項1または2に記載の合成皮革。
【請求項4】
前記シボ模様の屈曲時のシボの高さの変化の割合が100~550%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の合成皮革。
【請求項5】
前記繊維質基材
は片面または両面が起毛面であり、前記起毛面に前記ポリウレタン樹脂層が積層された、請求項1~4のいずれか1項に記載の合成皮革。
【請求項6】
前記繊維質基材はその一方面が他方面よりも単糸繊度の細い糸で形成され、前記一方面に前記ポリウレタン樹脂層が積層された、請求項1~5のいずれか1項に記載の合成皮革。
【請求項7】
前記ポリウレタン樹脂層は、着色層としての第1樹脂層と、接着層としての第2樹脂層とを含み、前記第1樹脂層が非発泡層であり、前記第2樹脂層が発泡層であり、前記繊維質基材上に前記第2樹脂層を介して前記第1樹脂層が積層された、請求項1~6のいずれか1項に記載の合成皮革。
【請求項8】
前記ポリウレタン樹脂層は、前記第1樹脂層上に当該第1樹脂層を保護するための保護層としての第3樹脂層を更に含み、前記第3樹脂層のオモテ面に前記シボ模様が形成され、前記第1樹脂層のオモテ面に前記第3樹脂層のオモテ面と同様のシボ模様が形成された、請求項7に記載の合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成皮革は天然皮革の代替品として、あるいは、天然皮革以上に良好な物性を備えた皮革素材として、様々な用途に用いられている。このような合成皮革は、天然皮革調の触感や風合を得るために、一般に、繊維質からなる基材(例えば、不織布、織物、編物など)にポリウレタン樹脂層を積層して形成される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウレタン系樹脂W/O型分散液が塗布または/および含浸されてなる繊維質基材に、表皮層が形成された合成皮革が開示されている。特許文献1では、これにより、乾式法と同様に単純な製造工程で得られたものでありながら、風合、皺入り、ボリューム感に優れた合成皮革が得られると記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、繊維基材として両面編み組織を有する緯編布を用い、且つ、繊維基材表面に、ポリウレタン接着層を介して、シリコーン変性無黄変型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂から形成されるポリウレタン樹脂表皮層を積層してなる合成皮革が開示されている。特許文献2では、これにより、天然皮革と同様な絞立ち、風合、皺入り、ボリューム感を有しており、耐光性、耐加水分解性、耐熱劣化性、耐摩耗性、耐オレイン酸性等に優れる共に、成形加工性や賦形性に優れると記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1および2の合成皮革では、天然皮革特有の皺入りやコシ感を十分に再現できたものではなく、皺入りやコシ感に改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開平6-294077号公報
【文献】日本国特許第3071383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態は、このような現状に鑑みてなされたものであり、天然皮革と同様の皺入りやコシ感を有する合成皮革を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る合成皮革は、繊維質基材と、前記繊維質基材上に形成されたポリウレタン樹脂層とを備え、オモテ面にシボ模様を有する合成皮革であって、前記合成皮革のオモテ面の剛軟度が65~95mm、且つ、裏面の剛軟度が55~85mmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、天然皮革と同様の皺入りやコシ感を有する合成皮革を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る合成皮革の概略断面図である。
【
図2】屈曲時のシボの高さを測定する際の合成皮革の屈曲方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る合成皮革は、繊維質基材上に、ポリウレタン樹脂層を積層してなるシボ模様を有する合成皮革である。すなわち、合成皮革は、繊維質基材と、繊維質基材上に形成されたポリウレタン樹脂層とを備え、オモテ面にシボ模様を有する。合成皮革のオモテ面の剛軟度は65~95mm、且つ、裏面の剛軟度は55~85mmである。
【0012】
合成皮革のオモテ面とは、合成皮革の表裏のうち、使用時に目に見える方の面(意匠面)をいう。すなわち、繊維質基材とポリウレタン樹脂層からなる合成皮革においてポリウレタン樹脂層側の面であり、シボ模様が付される面である。合成皮革の裏(ウラ)面とは、オモテ面とは反対側の面をいう。
【0013】
合成皮革のオモテ面の剛軟度が65~95mm、且つ、裏面の剛軟度が55~85mmであることにより、合成皮革の表裏の剛軟度のバランスが天然皮革と同様に良好なものとなる。そのため、天然皮革と同様の皺入りやコシ感を有する合成皮革とすることができる。なお、オモテ面の剛軟度は、裏面の剛軟度よりも大きくてもよく、小さくてもよい。
【0014】
合成皮革のオモテ面および裏面の剛軟度が下限値以上であることにより、天然皮革と同様のコシ感を有するものとすることができる。合成皮革のオモテ面および裏面の剛軟度が上限値以下であることにより、風合(柔軟さ)が良好なものとすることができる
【0015】
ここで、剛軟度は、JIS L1096 8.21.1A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した値を指し、その値が小さいほど柔軟性が高い。オモテ面の剛軟度とは、45°カンチレバー形試験機の水平台上に、試験片としての合成皮革を、そのオモテ面を上側に向けて載置した状態で測定した剛軟度であり、裏面の剛軟度とは、上記合成皮革を裏返し、その裏面を上側に向けて水平台上に載置した状態で測定した剛軟度である。
【0016】
図1は、一実施形態に係る合成皮革1の断面構造を摸式的に示したものである。この合成皮革1では、繊維質基材2の一方の面に、ポリウレタン樹脂層7が設けられており、ポリウレタン樹脂層7の表面がオモテ面8であり、該オモテ面8にシボ模様(即ち、凹凸模様)を有している。ポリウレタン樹脂層7は、この例では、第1樹脂層(着色層)4と第2樹脂層(接着層)3と、第3樹脂層(保護層)6とからなり、繊維質基材2上に、第2樹脂層(接着層)3を介して第1樹脂層(着色層)4および第3樹脂層(保護層)6が積層されている。
【0017】
なお、
図1に示す実施形態では、第3樹脂層(保護層)6のオモテ面だけでなく、その下の第1樹脂層(着色層)4のオモテ面にも同様のシボ模様が形成されている。また、図示した本実施形態では、第1樹脂層(着色層)4と第2樹脂層(接着層)3とをあわせて表皮層5という。
【0018】
合成皮革のオモテ面に形成されているシボ模様(凹凸模様)のシボの高さは、50μm以上であることが好ましく、より好ましくは90μm以上であり、さらに好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは110μm以上である。シボの高さが50μm以上であることにより、天然皮革と同様の皺入りを得やすくなる。シボの高さの上限は、特に限定されず、例えば200μm以下でもよく、150μm以下でもよい。
【0019】
ここで、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さは、凸部と凹部との高低差(
図1におけるH)の平均値であり、以下のように算出する。すなわち、合成皮革の垂直断面をマイクロスコープ(デジタルマイクロスコープKH-7700、株式会社ハイロックス製)で観察し、任意の10箇所について凸部頂点と合成皮革の最下部との高低差(距離)を測定した値の平均値から、任意の10箇所について凹部の底と合成皮革の最下部との高低差(距離)を測定した値の平均値を差し引いた値を、シボの高さとする。ここで、合成皮革の最下部とは、
図1において符号9で示す合成皮革の裏面(即ち、繊維質基材の裏面)である。
【0020】
合成皮革のオモテ面8に形成されているシボ模様(凹凸模様)のシボの幅は、580μm以上であることが好ましく、より好ましくは1000μm以上であり、さらに好ましくは1300μm以上であり、さらに好ましくは1400μm以上である。シボの幅が580μm以上であることにより、天然皮革と同様の皺入りを得やすくなる。シボの幅の上限は、特に限定されず、例えば1800μm以下でもよく、1600μm以下でもよい。
【0021】
ここで、シボ模様(凹凸模様)のシボの幅は、凸部の幅(
図1におけるW)の平均値であり、以下のように算出する。すなわち、合成皮革のオモテ面をマイクロスコープ(デジタルマイクロスコープKH-7700、株式会社ハイロックス製)で観察し、任意の5箇所について、1cm間(1cmの直線上)におけるシボ(凸部)の個数と各々の幅を測定し、これらの平均値をシボの幅とした。
【0022】
合成皮革のオモテ面8に形成されているシボ模様(凹凸模様)の屈曲時のシボの高さの変化の割合は、100~550%であることが好ましく、より好ましくは200~450%であり、200~440%でもよい。屈曲時のシボの高さの変化の割合が100%以上であることにより、天然皮革と同様の皺入りを得やすくなる。550%以下であることにより、繊維の粗い天然皮革を用いた場合に見られるような塗膜浮きやシボ浮きを抑制することができる。
【0023】
ここで、屈曲時のシボの高さの変化の割合は、以下のように算出する。すなわち、タテ1cm、ヨコ6cmの合成皮革において、
図2に示すようにヨコ方向の中央3cm部分でループを形成するように、ヨコ方向の両端から1.5cmの部分に印を付け、印の外側(ヨコ方向の端側)に両面テープを貼り、印部分が重なるようにオモテ面を内側にして端部同士を貼り合わせる。これによりループ状に屈曲させた合成皮革の垂直断面をマイクロスコープ(デジタルマイクロスコープKH-7700、株式会社ハイロックス製)で観察し、任意の10箇所について凸部頂点と合成皮革の最下部との高低差を測定した値の平均値から、任意の10箇所について凹部の底と合成皮革の最下部との高低差を測定した値の平均値を差し引いた値を、屈曲時のシボの高さとし、下記の式に従って算出した。
屈曲時のシボの高さの変化の割合(%)=
(屈曲時のシボの高さ-シボの高さ)÷(シボの高さ)×100
【0024】
<繊維質基材>
本実施形態の合成皮革に用いられる繊維質基材は、編物、織物、不織布などの布帛を挙げることができる。布帛には、従来公知の溶剤系、無溶剤系(水系を含む)の高分子化合物(好ましくは、ポリウレタン樹脂やその共重合体、あるいはポリウレタン樹脂を主成分とする混合物)を塗布または含浸し、乾式凝固または湿式凝固させたものを用いることもできる。なかでも、伸縮性の観点から編物であることが好ましい。編物としては特に限定されるものではなく、例えば、トリコット、ダブルラッセル、丸編等を挙げることができる。なかでも、伸縮性の観点から丸編が好ましい。
【0025】
丸編の編組織としては、従来公知の編組織を用いることができる。丸編の中でも、緻密で、重量感があり、伸縮性、弾力性に富み、まくれること(布帛の端がカールする)がなく安定しているという点から、両面編が好ましい。丸編の両面編組織としては、ブラッシュ、モックロディ、スムース(インターロック)、ポンチローマ、リップル、ミラノリブ、ジャガード等が挙げられる。これらのなかでも伸縮性の観点から、ブラッシュが好ましい。
【0026】
繊維質基材に用いられる繊維の種類は特に限定されるものでなく、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維など、従来公知の繊維を挙げることができ、これらが2種以上組み合わされていてもよい。なかでも強度や加工性の点から、合成繊維、特にポリエステル繊維が好ましく用いられる。
【0027】
繊維質基材に用いられる繊維の形状は特に限定されるものではなく、長繊維、短繊維のいずれであってもよい。また、繊維の断面形状も特に限定されるものでなく、通常の丸型だけでなく、扁平型、三角形、中空型、Y型、T型、U型などの異型であってもよい。
【0028】
繊維質基材に用いられる糸条の形態は特に限定されるものではなく、フィラメント糸(長繊維糸)、紡績糸(短繊維糸)のいずれであってもよく、さらには長繊維と短繊維を組み合わせた長短複合紡績糸であってもよい。フィラメント糸は、必要に応じて撚りをかけてもよいし、仮撚加工や流体撹乱処理などにより伸縮性や嵩高性を付与してもよい。
【0029】
繊維質基材に用いられる糸条の繊度は、特に限定されないが、56~330dtexであることが好ましく、より好ましくは100~250dtexである。繊度が56dtex以上であることにより、得られた合成皮革の剛軟度が小さくなることを防ぐことができ、天然皮革特有のコシ感を得やすい。繊度が330dtex以下であることにより、合成皮革の剛軟度が大きくなることを防ぐことができ、天然皮革特有の皺入りを得やすい。
【0030】
繊維質基材に用いられる糸条の単糸繊度は、特に限定されないが、繊維質基材とポリウレタン樹脂層の接着性向上の観点から0.1~20dtexが好ましい。
【0031】
繊維質基材の目付(単位面積当たりの質量)は、特に限定されないが、例えば、350~600g/m2であることが好ましく、より好ましくは400~550g/m2である。目付が350g/m2以上であることにより、得られた合成皮革の剛軟度が小さくなることを防ぐことができ、天然皮革特有のコシ感を得やすい。目付が600g/m2以下であることにより、合成皮革の剛軟度が大きくなることを防ぐことができ、天然皮革特有の皺入りを得やすい。
【0032】
繊維質基材の厚さは、特に限定されないが、0.9~1.2mmであることが好ましく、より好ましくは1.0~1.2mmである。厚さが0.9mm以上であることにより、得られた合成皮革の剛軟度が小さくなることを防ぐことができ、天然皮革特有のコシ感を得やすい。厚さが1.2mm以下であることにより、合成皮革の剛軟度が大きくなることを防ぐことができ、天然皮革特有の皺入りを得やすい。
【0033】
繊維質基材は片面または両面が起毛面であってもよい。片面または両面を起毛面とすることにより、繊維質基材の空隙率を調整することができ、得られる合成皮革の剛軟度を所望の値とすることができる。好ましくは、少なくともポリウレタン樹脂層を積層する面が起毛面であってもよい。例えば、繊維質基材は、両面編組織を有する丸編布であって片面または両面が起毛面であり、該起毛面にポリウレタン樹脂層が積層されてもよい。
【0034】
さらには、合成皮革のシボの形状に合わせて繊維質基材の空隙率を調整してもよい。例えば、小さいシボの場合は空隙率を小さくし、大きいシボの場合は空隙率を大きくすることにより、天然皮革特有の皺入りを形成することができる。すなわち小さいシボの場合は細かな皺入りを形成し、大きいシボの場合は粗い皺入りを形成することができる。
【0035】
本実施形態の繊維質基材は、伸縮性の観点から、高温・高圧での染色工程によって編物を収縮させた後、ヒートセッターなどの熱処理工程において、いわゆる幅だし及び/又は幅入れを行うことが好ましい。これらの工程によって、編物の密度や伸縮性を調整することにより、所望の剛軟度を得ることができる。
【0036】
<ポリウレタン樹脂層>
本実施形態に係る合成皮革は、上述した繊維質基材にポリウレタン樹脂層を積層してなる。ポリウレタン樹脂層は、繊維質基材上に形成されたポリウレタン樹脂からなる層の総称であり、少なくとも一層からなるが、同一または異なる組成の二層以上からなることができる。例えば、ポリウレタン樹脂層は、着色層としての第1樹脂層と、該第1樹脂層を繊維質基材に接着させるための接着層としての第2樹脂層とにより構成されてもよい(以下、第1樹脂層と第2樹脂層とをあわせて「表皮層」ということがある)。さらに、第1樹脂層および第2樹脂層と、該第1樹脂層を保護するための保護層としての第3樹脂層とにより構成されてもよい。ポリウレタン樹脂層は、表皮層と保護層とにより構成されることが好ましい。
【0037】
繊維質基材にポリウレタン樹脂層を積層する面は、特に限定されず、繊維質基材の表裏いずれの面でもよい。一実施形態において、繊維質基材の一方面が他方面よりも単糸繊度の細い糸で形成されている場合、皺入りの観点から、単糸繊度の細い糸を用いてなる上記一方面(以下、「細繊度面」という。)に、ポリウレタン樹脂層を積層することが好ましい。これにより、細かな毛羽により緻密で不規則な空隙ができるため、天然皮革特有の皺入りを得ることができる。
【0038】
表皮層と保護層を併せたポリウレタン樹脂層のドライ塗布量(単位面積当たりの乾燥質量)は、特に限定されないが、120~320g/m2であることが好ましく、より好ましくは200~270g/m2である。ドライ塗布量が120g/m2以上であることにより、合成皮革の剛軟度が小さくなることを防ぐことができ、天然皮革特有のコシ感を得やすい。また、合成皮革の耐摩耗性が損なわれることを防ぐことができる。ドライ塗布量が320g/m2以下であることにより、合成皮革の剛軟度が大きくなることを防ぐことができ、天然皮革特有の皺入りを得やすい。
【0039】
ポリウレタン樹脂層の厚さは、特に限定されないが、120~320μmであることが好ましく、より好ましくは167~270μmである。厚さが120μm以上であることにより、コシ感や耐摩耗性を向上することができる。厚さが320μm以下であることにより、皺入りを向上することができる。
【0040】
<表皮層>
表皮層は、上述した繊維質基材に積層したポリウレタン樹脂層の一部であり、少なくとも一層の樹脂層からなるが、同一または異なる組成の2層以上の樹脂層からなることができる。例えば、
図1では、表皮層5は、着色層としての第1樹脂層4と、該第1樹脂層4を繊維質基材2に接着させるための接着層としての第2樹脂層3とにより構成されている。
【0041】
表皮層に用いられるポリウレタン樹脂は、従来公知の合成皮革に用いられているポリウレタン樹脂と同様のものを用いることができる。ポリウレタン樹脂の種類や層構成は特に限定はされない。
【0042】
ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性の観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、ポリウレタン樹脂の形態は、無溶剤系(無溶媒系)、ホットメルト系、溶剤系、水系を問わず、さらには、一液型、二液硬化型、湿気硬化型を問わず使用可能であり、その目的と用途に応じて適宜選択すればよい。
【0043】
ポリウレタン樹脂には、必要に応じて、架橋剤、着色剤(顔料、染料)、平滑剤、増粘剤などの任意成分を、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、工程負荷の軽減や合成皮革の物性向上のために、架橋剤を用いることが好ましい。
【0044】
表皮層は、天然皮革特有の皺入りやコシ感を得るという観点から、発泡層を含むことが好ましい。また、耐摩耗性の観点から、第2樹脂層が発泡層であり、第1樹脂層は非発泡層であることがより好ましい。例えば、一実施形態として、ポリウレタン樹脂層は、着色層としての第1樹脂層と、接着層としての第2樹脂層とを含み、第1樹脂層が非発泡層であり、第2樹脂層が発泡層であり、繊維質基材上に第2樹脂層を介して第1樹脂層が積層されてもよい。
【0045】
第1樹脂層と第2樹脂層を併せた表皮層のドライ塗布量(単位面積当たりの乾燥質量)は、特に限定されないが、100~300g/m2であることが好ましく、より好ましくは150~250g/m2である。ドライ塗布量が100g/m2以上であることにより、合成皮革の剛軟度が小さくなることを防ぐことができ、天然皮革特有のコシ感を得やすい。また、合成皮革の耐摩耗性が損なわれることを防ぐことができる。ドライ塗布量が300g/m2以下であることにより、合成皮革の剛軟度が大きくなることを防ぐことができ、天然皮革特有の皺入りを得やすい。
【0046】
表皮層の厚さは、特に限定されないが、100~300μmであることが好ましく、より好ましくは150~255μmである。厚さが100μm以上であることにより、コシ感や耐摩耗性を向上することができる。厚さが300μm以下であることにより、皺入りを向上することができる。
【0047】
表皮層は、そのオモテ面にシボ模様(凹凸模様)を有してもよい。すなわち、シボ模様を持つ表皮層の表面上に、後述する保護層が形成されていることが好ましい。
【0048】
凹凸模様の形状は特に限定されず、所望のシボ模様となるよう、シボ模様のうねり曲線における平均長さ、算術平均高さ、最大断面高さ、最大高さ等を適宜設定すればよい。
【0049】
<保護層>
保護層は、上述した繊維質基材に積層したポリウレタン樹脂層の一部であり、繊維質基材に積層された表皮層を保護するために表皮層上に積層されたポリウレタン樹脂層である。なお、該保護層は、表皮層の表面に形成される樹脂層の総称をいい、少なくとも一層の樹脂層からなるが、同一または異なる組成の2層以上の樹脂層からなることができる。
【0050】
保護層に用いられるポリウレタン樹脂は、従来公知の合成皮革に用いられているポリウレタン樹脂と同様のものを用いることができる。ポリウレタン樹脂の種類や層構成は特に限定はされない。
【0051】
ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂などを挙げることができ、これらを1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐久性の観点から、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、ポリウレタン樹脂の形態は、無溶剤系(無溶媒系)、ホットメルト系、溶剤系、水系を問わず、さらには、一液型、二液硬化型、湿気硬化型を問わず使用可能であり、その目的と用途に応じて適宜選択すればよい。
【0052】
ポリウレタン樹脂には、必要に応じて、架橋剤、着色剤(顔料、染料)、平滑剤、増粘剤などの任意成分を、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、工程負荷の軽減や合成皮革の物性向上のために、架橋剤を用いることが好ましい。
【0053】
保護層は、そのオモテ面にシボ模様(凹凸模様)を有する。保護層のシボ模様は、表皮層のシボ模様により形成されるものであってもよい。例えば、一実施形態において、ポリウレタン樹脂層は、第1樹脂層上に当該第1樹脂層を保護するための保護層としての第3樹脂層を更に含み、第3樹脂層のオモテ面にシボ模様が形成され、第1樹脂層のオモテ面(即ち、第3樹脂層と接する面)に第3樹脂層のオモテ面と同様のシボ模様が形成されてもよい。
【0054】
一実施形態として、保護層は、透明(無色透明又は有色透明)な樹脂層であってもよい。
【0055】
保護層のドライ塗布量(単位面積当たりの乾燥質量)は、特に限定されないが、3~20g/m2が好ましく、より好ましくは4~15g/m2である。ドライ塗布量が3g/m2以上であることにより、合成皮革の耐摩耗性を向上することができる。ドライ塗布量が20g/m2以下であることにより、合成皮革の風合が粗硬になることを防ぐことができる。また、天然皮革特有の皺入りを得やすくなる。
【0056】
保護層の厚さは、特に限定されないが、3~20μmであることが好ましく、より好ましくは4~15μmである。厚さが3μm以上であることによりコシ感や耐摩耗性を向上することができる。厚さが20μm以下であることにより、皺入りを向上することができる。
【0057】
<製造方法>
本実施形態の合成皮革の製造方法は特に限定されるものでない。一実施形態として、繊維質基材である丸編布に、第1樹脂層及び第2樹脂層からなる表皮層と、第3樹脂層として保護層を備えた合成皮革の製造方法の一例を説明する。
【0058】
シボ模様(凹凸模様)を有する離型性基材に、ポリウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、必要により、熱処理、エージング処理して、表皮層の一部を構成する第1樹脂層を形成する。
【0059】
次いで、該第1樹脂層の表面に、第2樹脂層を形成する接着剤を塗布し、該接着剤が粘稠性を有する状態のうちに、繊維質基材である丸編布に貼り合わせる。その際、丸編布の表裏が単糸繊度の異なる糸で形成されている場合、上記細繊度面に、接着剤を塗布した面を貼り合せることが好ましい。
【0060】
その後、必要により、熱処理、エージング処理した後、離型性基材を剥離して、丸編布と表皮層との積層体を得る。
【0061】
次いで、積層体の表皮層表面に、ポリウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、必要により、熱処理、エージング処理して保護層を形成する。これにより、一実施形態に係る合成皮革が得られる。
【0062】
離型性基材は特に限定されるものでなく、ポリウレタン樹脂に対して離型性を有する基材、あるいは離型処理を施した基材であればよく、例えば、離型紙、離型処理布、撥水処理布、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂などからなるオレフィンシートまたはフィルム、フッ素樹脂シートまたはフィルム、離型紙付きプラスチックフィルムなどを挙げることができる。
【0063】
離型性基材のシボ模様(凹凸模様)の形状は特に限定されず、所望のシボ模様となるよう、うねり曲線における平均長さ、算術平均高さ、最大断面高さ、最大高さ等を適宜設定すればよい。
【0064】
本実施形態に係る合成皮革の用途としては、特に限定されず、例えば、衣料、鞄、靴、シート表皮材、インテリア資材、車両内装材など様々な用途に用いられる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の「部」は、特に断らない限り、質量基準であるものとする。また、得られた合成皮革の評価は、以下の方法に従った。
【0066】
[剛軟度]
JIS L1096 8.21.1A法(45°カンチレバー法)に準拠して測定した。その際、オモテ面の剛軟度については、45°カンチレバー形試験機の水平台上に、試験片としての合成皮革を、そのオモテ面を上側に向けて載置した状態で測定した。また、裏面の剛軟度は、上記合成皮革を裏返し、その裏面を上側に向けて水平台上に載置した状態で測定した。なお、オモテ面の剛軟度および裏面の剛軟度ともに、それぞれ、タテ・ヨコ各々5枚測定し、全測定値の平均値を剛軟度とした。
【0067】
[皺入り]
15cm角のサンプルをオモテ面を上にして手のひらにのせ、親指で押し込んだときに生じるシワの状態について、官能評価を行った。下記の基準に従って評価した。ここで、皺入り良好とは、シボの凹部で折れ曲がり、シボの凸部が通常よりも膨れ上がる状態をいう。塗膜浮きとは、何個か毎のシボの凹部で折れ曲がり、幾つかのシボの凹部と山部が膨れ上がり、元のシボと異なる皺が入る、または元のシボがぼやけて不自然な皺になる状態をいう。塗膜浮きがみられたものは、表中「(浮き)」と表記した。
A : シボに沿った良好なシワが入る(皺入り良好)
B : シボに沿ったシワは入るがやや不十分、または、ややシボ浮き(塗膜浮き)が生じる
C : シボに沿ったシワが入らない、または、シボ浮きが生じる
【0068】
[コシ感]
10cm角のサンプルを手のひらに置き、オモテ面および裏面をそれぞれ内側にして二つ折りにした状態での反発感について、官能評価を行った。下記の基準に従って評価した。
A : 表裏ともに反発感がある
B : 表裏ともにやや反発感がある
C : 表裏ともに反発感がない
【0069】
[実施例1]
<繊維質基材 a-1>
28ゲージのダブルニット丸編機を用いて、Y1としてポリエステルマルチフィラメント加工糸84dtex/288f、Y2としてポリエステルマルチフィラメント加工糸84dtex/12f、Y3としてポリエステルマルチフィラメント加工糸167dtex/48f、Y4としてポリエステルマルチフィラメント加工糸84dtex/288f、Y5としてポリエステルマルチフィラメント加工糸84dtex/12f、Y6としてポリエステルマルチフィラメント加工糸167dtex/48fを用い、
図3に示すブラッシュ編組織の丸編布を編成した。次いで、染色機にて、グレーの分散染料にて130℃で60分間染色を施した。次いで、丸編布の細繊度面(単糸繊度が細い糸で形成された面)に対して、セミカット起毛(起毛処理)を施した。起毛処理は、パイルローラー12本、カウンターパイルローラー12本を有する針布ロールを備える針布起毛機により、針布ローラートルク2.5MPa、布速12m/分にて、編終わり方向からと編始め方向からの起毛を交互に13回行うことにより実施した。次いで、ヒートセッターにより190℃で1分間熱処理して仕上げた。得られた丸編布(a-1)の目付は480g/m
2、厚みは1.0mm、密度は44ウエル/25.4mm、97コース/25.4mmであった。
【0070】
<処方1>
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂 100部
(クリスボンNY-328、固形分20質量%)
ジメチルホルムアミド(DMF) 40部
カーボンブラック顔料 15部
(DIALAC BLACK L-1770S、固形分20質量%)
架橋剤 2部
(バーノックDN9590、固形分50質量%)
原料は、DMFを除き全てDIC株式会社製である。
調製法:粘度を2,000mPa・s(BH型粘度計、ローター:No.3、10rpm、23℃)に調整した。
【0071】
<処方2>
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂 90部
(BAYDERM Finish 61UD 固形分35質量%)
ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂 10部
(HYDRHOLAC UD-2、固形分25質量%)
架橋剤 1部
(AQUADERM XL-50、固形分50質量%)
レベリング剤 1部
(AQUADERM Fluid H、固形分100質量%)
水 20部
原料は、水を除き全てランクセス株式会社製である。
調製法:粘度を200mPa・s(B型粘度計、ローター:No.1、12rpm、23℃)に調整した。
【0072】
上述の処方1に従い調製したポリウレタン樹脂組成物(固形分15質量%)を、皮革様のシボ模様(凹凸模様)を有する離型紙(AR-209、旭ロール株式会社製)に、コンマコーターにて塗布厚さ(ウェット)が147μmになるようにシート状に塗布し、乾燥機にて100℃で3分間熱処理して、表皮層の一部を構成する非発泡の第1樹脂層を形成した。第1樹脂層のドライ付着量は30g/m2であり、厚さは31μmであった。
【0073】
次いで、前記第1樹脂層上に第2樹脂層として、ウレタンポリイソシアネートプレポリマー(NH230、固形分100質量%、DIC株式会社製)を、コンマコーターにて塗布厚さ(ウェット)が210μmになるようにシート状に塗布し、該ウレタンポリイソシアネートプレポリマーが粘稠性を有する状態のうちに丸編布(a-1)の起毛面に貼り合わせ、マングルにて49N/m2の荷重で圧締した。次いで、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で3日間エージング処理した後、離型紙を剥離して、繊維質基材と表皮層の積層体を得た。第2樹脂層は発泡層であり、そのドライ付着量は210g/m2、厚さは210μmであった。第1樹脂層と第2樹脂層をあわせた表皮層のドライ付着量は240g/m2、厚さは241μmであった。
【0074】
次いで、得られた積層体の表皮層表面に、処方2に従い調整したポリウレタン樹脂組成物(固形分29質量%)を、ロールコーターにて、ウェット塗布量35g/m2に塗布し、乾燥機にて100℃で3分間熱処理して、保護層を形成し、実施例1に係る合成皮革を得た。保護層のドライ付着量は10g/m2、厚さ10μmであった。
【0075】
得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が77mm、裏面の剛軟度が75mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが105μm、シボの幅が1084μm、屈曲時のシボの高さが339μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は223%であった。皺入りの評価は「A」、コシ感の評価「A」であり、天然皮革と同様の良好な皺入りとコシ感であった。
【0076】
[実施例2]
皮革様のシボ模様(凹凸模様)を有する離型紙として、離型紙(R-385、リンテック株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が74mm、裏面の剛軟度が72mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが119μm、シボの幅が1408μm、屈曲時のシボの高さが358μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は201%であった。皺入りの評価は「A」、コシ感の評価は「A」であった。
【0077】
[実施例3]
皮革様のシボ模様(凹凸模様)を有する離型紙として、離型紙(Rockport、Sappi Limited製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が79mm、裏面の剛軟度が77mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが94μm、シボの幅が1143μm、屈曲時のシボの高さが347μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は269%であった。皺入りの評価は「A」、コシ感の評価は「A」であった。
【0078】
[実施例4]
皮革様のシボ模様(凹凸模様)を有する離型紙として、離型紙(LATTE、Sappi株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が76mm、裏面の剛軟度が77mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが66μm、シボの幅が1343μm、屈曲時のシボの高さが313μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は374%であった。皺入りの評価は「A」、コシ感の評価は「A」であった。
【0079】
[実施例5]
皮革様のシボ模様(凹凸模様)を有する離型紙として、離型紙(R-38、リンテック株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が74mm、裏面の剛軟度が76mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが59μm、シボの幅が1191μm、屈曲時のシボの高さが264μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は347%であった。皺入りの評価は「A」、コシ感の評価は「A」であった。
【0080】
[実施例6]
皮革様のシボ模様(凹凸模様)を有する離型紙として、離型紙(DE-43、大日本印刷株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が80mm、裏面の剛軟度が80mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが51μm、シボの幅が586μm、屈曲時のシボの高さが274μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は437%であった。皺入りの評価は「A」、コシ感の評価は「A」であった。
【0081】
[実施例7]
繊維質基材として、下記の丸編布(a-0)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が82mm、裏面の剛軟度が81mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが105μm、シボの幅が1084μm、屈曲時のシボの高さが258μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は146%であった。皺入りの評価は「B」、コシ感の評価は「A」であり、やや不十分であるもののシボに沿った天然皮革様の皺入りがあり、また良好なコシ感が得られた。
【0082】
<繊維質基材 a-0>
起毛処理を施さなかった以外は丸編布(a-1)と同様にして、丸編布(a-0)を得た。得られた丸編布(a-0)の目付は487g/m2、厚みは0.98mm、密度は84ウエル/25.4mm、80コース/25.4mmであった。
【0083】
[実施例8]
繊維質基材として、下記の丸編布(a-4)を用いた以外は、実施例3と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が79mm、裏面の剛軟度が78mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが94μm、シボの幅が1143μm、屈曲時のシボの高さが518μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は451%であった。皺入りの評価は「B」、コシ感の評価は「A」であり、やや不十分であるもののシボに沿った天然皮革様の皺入りがあり、また良好なコシ感が得られた。
【0084】
<繊維質基材 a-4>
上記丸編布(a-1)における起毛処理を1セットとして、該起毛処理を4セット施した以外は丸編布(a-1)と同様にして、丸編布(a-4)を得た。得られた丸編布(a-4)の目付は484g/m2、厚みは1.07mm、密度は84ウエル/25.4mm、80コース/25.4mmであった。
【0085】
[実施例9]
繊維質基材として、丸編布(a-0)を用いた以外は、実施例4と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が84mm、裏面の剛軟度が85mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが66μm、シボの幅が1343μm、屈曲時のシボの高さが119μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は80%であった。皺入りの評価は「B」、コシ感の評価は「A」であり、やや不十分であるもののシボに沿った天然皮革様の皺入りがあり、また良好なコシ感が得られた。
【0086】
[実施例10]
繊維質基材として、丸編布(a-4)を用いた以外は、実施例4と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が71mm、裏面の剛軟度が71mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが66μm、シボの幅が1343μm、屈曲時のシボの高さが464μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は603%であった。皺入りの評価は「B」、コシ感の評価は「A」であり、塗膜浮きがやや見られるものの概ね天然皮革の皺入りがあり、また良好なコシ感が得られた。
【0087】
[実施例11]
繊維質基材として、下記の丸編布(c-1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が67mm、裏面の剛軟度が58mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが105μm、シボの幅が1084μm、屈曲時のシボの高さが388μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は270%であった。皺入りの評価は「B」、コシ感の評価は「B」であり、やや不十分であるもののシボに沿った天然皮革様の皺入りがあり、またコシ感が得られた。
【0088】
<繊維質基材 c-1>
Y1、Y4としてポリエステルマルチフィラメント加工糸110dtex/24f、Y2、Y5としてポリエステルマルチフィラメント加工糸110dtex/36fを用いた以外は丸編布(a-1)と同様にして、丸編布(c-1)を得た。得られた丸編布(c-1)の目付は455g/m2、厚みは0.95mm、密度は39ウエル/25.4mm、41コース/25.4mmであった。
【0089】
[実施例12]
第2樹脂層のドライ付着量を260g/m2、厚さを260μmにした以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が93mm、裏面の剛軟度が84mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが105μm、シボの幅が1084μm、屈曲時のシボの高さが302μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は188%であった。皺入りの評価は「B」、コシ感の評価は「A」であり、やや不十分であるもののシボに沿った天然皮革様の皺入りがあり、また良好なコシ感が得られた。
【0090】
[比較例1]
繊維質基材として、下記の丸編布(b-0)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が52mm、裏面の剛軟度が52mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが105μm、シボの幅が1084μm、屈曲時のシボの高さが118μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は12%であった。皺入りの評価は「C」、コシ感の評価は「C」であり、皺入りおよびコシ感に劣っていた。
【0091】
<繊維質基材 b-0>
28ゲージのダブルニット丸編機を用いて、Y1~Y6としてポリエステルマルチフィラメント加工糸220dtex/72fを用い、
図4に示すモックロディ編組織の丸編布を編成した。次いで、染色機にて、グレーの分散染料にて130℃で60分間染色を施した。次いで、ヒートセッターにより190℃で1分間熱処理して仕上げた。得られた丸編布(b-0)の目付は320g/m
2、厚みは0.70mm、密度は35ウエル/25.4mm、43コース/25.4mmであった。
【0092】
[比較例2]
繊維質基材として、下記の丸編布(b-1)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が52mm、裏面の剛軟度が52mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが105μm、シボの幅が1084μm、屈曲時のシボの高さが506μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は382%であった。皺入りの評価は「B」、コシ感の評価は「C」であり、皺入りについてはやや塗膜浮きが見られ、またコシ感に劣っていた。
【0093】
<繊維質基材 b-1>
28ゲージのダブルニット丸編機を用いて、Y1~Y6としてポリエステルマルチフィラメント加工糸220dtex/72fを用い、
図4に示すモックロディ編組織の丸編布を編成した。次いで、染色機にて、グレーの分散染料にて130℃で60分間染色を施した。次いで、ヒートセッターにより190℃で1分間熱処理して仕上げた。次いで、丸編布の一方面に対してセミカット起毛(起毛処理)を施した。起毛処理は、パイルローラー12本、カウンターパイルローラー12本を有する針布ロールを備える針布起毛機により、針布ローラートルク2.5MPa、布速12m/分にて、編終わり方向からと編始め方向からの起毛を交互に13回行うことにより実施した。得られた丸編布(b-1)の目付は329g/m
2、厚みは0.72mm、密度は35ウエル/25.4mm、43コース/25.4mmであった。
【0094】
[比較例3]
繊維質基材として、下記の丸編布(b-4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が52mm、裏面の剛軟度が50mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが105μm、シボの幅が1084μm、屈曲時のシボの高さが613μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は484%であった。皺入りの評価は「C」、コシ感の評価は「C」であり、皺入りおよびコシ感に劣っていた。
【0095】
<繊維質基材 b-4>
上記丸編布(b-1)における起毛処理を1セットとして、該起毛処理を4セット施した以外は丸編布(b-1)と同様にして、丸編布(b-4)を得た。得られた丸編布(b-4)の目付は330g/m2、厚みは0.76mm、密度は35ウエル/25.4mm、43コース/25.4mmであった。
【0096】
[比較例4]
第2樹脂層のドライ付着量を300g/m2、厚さを300μmにした以外は、実施例1と同様にして、合成皮革を得た。得られた合成皮革の剛軟度は、オモテ面の剛軟度が100mm、裏面の剛軟度が92mmであった。また、シボ模様(凹凸模様)のシボの高さが105μm、シボの幅が1084μm、屈曲時のシボの高さが179μmであり、屈曲時のシボの高さの変化の割合は70%であった。皺入りの評価は「C」、コシ感の評価は「A」であり、コシ感は良好であったが、皺入りが劣っていた。
【0097】
上記実施例および比較例に関する合成皮革の構成および評価結果を下記表1および2に示す。
【0098】
【0099】
【符号の説明】
【0100】
1 合成皮革、2 繊維質基材、3 第2樹脂層(接着層)、4 第1樹脂層(着色層)、5 表皮層、6 第3樹脂層(保護層)、7 ポリウレタン樹脂層、8 オモテ面