(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】分散アンテナシステムにおけるデジタルデータ伝送
(51)【国際特許分類】
H04B 7/024 20170101AFI20221011BHJP
H04B 1/26 20060101ALI20221011BHJP
H04B 1/30 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H04B7/024
H04B1/26 Z
H04B1/30
(21)【出願番号】P 2019529839
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2017080840
(87)【国際公開番号】W WO2018099984
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-10-14
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519194423
【氏名又は名称】メイベン ワイヤレス スウェーデン アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ミーケル レビス
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0156284(US,A1)
【文献】特開2004-336703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/024
H04B 1/26
H04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散アンテナシステム(DAS)(100)においてデジタルデータを伝送する方法であり、
前記方法は、
少なくとも1つのデータソース(101、102、103、104)から
アナログ無線周波数(RF)データを受信する(S101)ことと、
受信された前記
アナログRFデータを処理する(S102)こと
であって、受信された前記アナログRFデータを処理することは、
前記アナログRFデータを中間周波数(IF)にミックスダウンすることと、
前記IFデータをサンプリング(S102b)し、複素デジタルベースバンドデータを作成するように処理することと、
前記複素デジタルベースバンドデータをアップサンプリング(S102c)することと、
正の周波数全体において、または負の周波数全体において位置するデータを得るために、アップサンプリングされた前記複素デジタルベースバンドデータの周波数をシフトする(S102d)ことと、
前記複素デジタルベースバンドデータを表すデジタル実数値パスバンドデータを作成するために、各周波数シフトされた複素デジタルベースバンドデータのサンプルの実部または虚部の成分の何れかを破棄する(S102e)ことと、
フィルタリングされたデータを生成するために少なくとも1つのデータソースにより提供されるチャネルであって、複合データとして受信され、かつ、前記フィルタリングの前にデジタル化されるチャネルをフィルタリングすることと、
各フィルタリングされたチャネルのフィルタリングされた前記データを、リサンプリングされるフィルタリングされた前記チャネルのフィルタリングされた前記データの最大帯域幅に適合されている削減されたサンプルレートでリサンプリングすることと、
を含む、処理することと、
処理された前記データを、前記DA
S内での更なる
処理のためのデジタル実数値パスバンドデータとして
伝送す
ることと、
を備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
削減された前記サンプルレートは、リサンプリングされるフィルタリングされた前記チャネルの前記最大帯域幅の信号の帯域幅の少なくとも2倍となるように選択されることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
受信された前記
アナログRFデータは、
前記I
Fに直交復調
されることを特徴とする請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
受信され
た前記アナログRFデータ
は、前記I
Fに非直交復調
されることを特徴とする請求項1
または2に記載の方法。
【請求項5】
受信された前記
アナログRFデータの前記処理(S102)は更に、
前記DAS内での更なる伝送のためのデジタル実数値パスバンドデータを作成するために
、前記IFデータをサンプリングする(S102b)ことを備えていることを特徴とする請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記デジタル実数値パスバンドデータを、直交復調器により、ゼロIFに復調する(S102b1)ことと、
少なくとも1つのデータソース(101、102、103、104)により提供される各チャネルに対して、直交復調された前記データをフィルタリングする(S102b’)ことと、
各チャネルの、フィルタリングされ
た直交復調された
前記データを、リサンプリングされる前記チャネルの直交復調された前記データの最大帯域幅に適合された、削減されたサンプルレートでリサンプリングする(S102b”)ことと、
実数値デジタルベースバンド信号を、前記DAS(100)内での更なる伝送のための実数値デジタルパスバンド信号に変換する(S103a)ことと、
を更に備えていることを特徴とする請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
受信された前記
RFデータは、
非直交復調アナログ
RFデータとして受信さ
れることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記データがダウンリンク方向で受信される場合、少なくとも1つの前記データソースは、1つまたは複数の無線基地局を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記データがアップリンク方向で受信される場合、少なくとも1つの前記データソースは、1つまたは複数の無線通信装置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
分散アンテナシステム(DAS)(100)においてデジタルデータを伝送するように構成要素されている装置(107、108)であり、処理ユニット(30)とメモリ(32)を備え、前記メモリは、前記処理ユニットにより実行可能な命令(31)を含んでおり、
前記命令の実行時に、前記装置(107、108)は、
少なくとも1つのデータソース(101、102、103、104)から
アナログ無線周波数(RF)データを受信し(S101)、
受信された前記
アナログRFデータを
処理する(S102)ことであって、
前記アナログRFデータを中間周波数(IF)までミックスダウンすることと、
前記IFデータをサンプリングし、複素デジタルベースバンドデータを作成するように処理することと、
前記複素デジタルベースバンドデータをアップサンプリングすることと、
正の周波数全体において、または負の周波数全体において位置するデータを得るために、アップサンプリングされた前記複素デジタルベースバンドデータの周波数をシフトすることと、
前記複素デジタルベースバンドデータを表すデジタル実数値パスバンドデータを作成するために、各周波数シフトされた複素デジタルベースバンドデータのサンプルの実部または虚部の成分の何れかを破棄することと、
フィルタリングされたデータを生成するために、少なくとも1つのデータソース(101、102、103、104)により提供されるチャネルであって、複合データとして受信され、かつ、前記フィルタリングの前にデジタル化されるチャネルをフィルタリングすることと、
各フィルタリングされたチャネルのフィルタリングされた前記データを、リサンプリングされるフィルタリングされた前記チャネルのフィルタリングされた前記データの最大帯域幅に適合されている削減されたサンプルレートでリサンプリング(S102b'')することと、
によって処理し(S102)、
処理された前記データを、前記DA
S内での更なる
処理のためのデジタル実数値パスバンドデータとして
伝送す
る、
ように
動作可能であることを特徴とする装
置。
【請求項11】
削減された前記サンプルレートは、リサンプリングされるフィルタリングされた前記チャネルの前記最大帯域幅の信号の帯域幅の少なくとも2倍となるように選択されることを特徴とする請求項10の装置。
【請求項12】
さらに、前記命令を実行すると、受信され
た前記RFデータを
前記IFに直交復調する
(S102a)ように
動作可能であることを特徴とする請求項
10に記載の装
置。
【請求項13】
さらに、前記命令を実行すると、受信された前記RFデータを前記IFに非直交復調するように動作可能であることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項14】
更に、
前記命令を実行すると、受信された前記
アナログRFデータを処理す
るときは、
前記DAS内での更なる伝送のためのデジタル
実数値パスバンドデータを作成するために
、前記IFデータをサンプリン
グする
ように動作可能であることを特徴とする請求項
13に記載の装
置。
【請求項15】
更に、
前記命令を実行すると、
前記デジタル実数値パスバンドデータを、直交復調器により、ゼロIFに復調し、
少なくとも1つのデータソースにより提供される各チャネルに対して、直交復調された前記データをフィルタリングし、
各チャネルの、フィルタリングされた直交復調された前記データを、リサンプリングされる前記チャネルの直交復調された前記データの最大帯域幅に適合された、削減されたサンプルレートでリサンプリングし、
実数値デジタルベースバンド信号を、前記DAS内での更なる伝送のための実数値デジタルパスバンド信号に変換する、
ように
動作可能であることを特徴とする請求
項13に記載の装
置。
【請求項16】
さらに、前記命令を実行すると、受信された前記データを非直交復調アナログRFデータとして受信するように動作可能であることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項17】
さらに、前記命令を実行すると、受信された前記データをアナログRFデータとして受信し、受信された前記データを処理するときに、
非直交復調器を用いて、前記アナログRFデータを復調するように動作可能であることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項18】
前記データがダウンリンク方向で受信される場合、少なくとも1つの前記データソースは、1つまたは複数の無線基地局を含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項19】
前記データがアップリンク方向で受信される場合、少なくとも1つの前記データソースは、1つまたは複数の無線通信装置を含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルパスバンドデータを伝送するアクティブ分散アンテナシステム(DAS)の実現に関する。
【背景技術】
【0002】
分散アンテナシステム(DAS)は、無線基地局から直接的にはサービスを受けることができない領域において無線サービスエリアを提供するための技術であり、単一のDASを多数の無線基地局が使用可能であるため、多くの無線サービスプロバイダがサービスエリアを提供する必要がある適用においては特に利点がある。
【0003】
最先端技術のDAS100は、
図1において示されているように、無線信号に対してデジタル伝送を使用する。簡潔性のために、信号経路の1方向のみが示されており、単一の帯域に対してのみ示してある。実際は、DASは双方向性であり、
図1に示されているように、ダウンリンク信号を無線基地局(RBS)101~104から、リモートアンテナ105、106により提供されるサービスエリアに搬送して、スマートフォンやタブレットのような無線通信装置(図示せず)にサービスを提供する。アップリンク信号は、無線通信装置からRBSに反対方向に搬送される。DASは通常、ダウンリンクとアップリンクの両方で、多くの周波数帯域をサポートする。
【0004】
一般的に、DAS100は1つ以上のソースユニット107、108から構成され、それぞれのソースユニットは、1つ以上の基地局101~104、および1つ以上のリモートユニット109、110にインタフェースで接続して、それぞれのサービスエリアにおいてアンテナ105、106を駆動する。ソースユニット107、108とリモートユニット109、110との間には、1つ以上の分離ユニットとしての、または、ソースおよびリモートユニットに統合されて、またはそれらのある組み合わせとしてのあるタイプのルーティングユニット111があってよい。
図1の例においては、単一のルーティングユニット111が示されている。
【0005】
図1の例としてのDASにおいては、アナログ供給があり、周波数帯域に対する基地局入力信号は各ソースユニットに対して、それぞれのアナログ/デジタル変換器112、113(ADC)において合成信号として提示されている。
【0006】
ADC112、113への信号の帯域幅は、注目帯域において基地局入力信号に対して許可される最小および最大周波数により定義される。例として、1,800MHzデジタルセルラーシステム(DCS)のセルラー帯域は、1805.2から1879.8MHzのダウンリンク周波数範囲を有している。これは典型的には、RBS101~104からの任意の個々の信号の帯域よりも非常に広く、ADCサンプルレートは、入力信号帯域全体をサンプリングするために十分なほど高くなくてはならない。例として、エイリアシング(折り返しエラー)を回避するためには、ADC112、113のサンプルレートは、総帯域幅の2倍を超えなくてはならず、つまり、この特別な例においては、2×(1879.8-1805.2)=149.2MHzを超えなくてはならない。
【0007】
多数のチャネルフィルタ114~117が、それぞれの基地局101~104の個々のチャネルを、独立したサンプルのストリームに分離する。RBSの各チャネル上で転送される信号に対応するこれら個々のサンプルのストリームは、光ファイバ接続を使用するCommon Public Radio Interface (CPRI)(共通公衆無線インタフェース))リンクのような、高速デジタルリンク122、123上の送信のために、スケジューラ118、119およびシリアライザ120、121によりスケジューリング且つシリアライズされる。結論可能なように、これは、ADC112、113は、高いサンプルレートで入信データをサンプリングしなければならならず、スケジューラ/シリアライザに大量のデジタルデータが到着する結果になるので、スケジューラ118、119およびシリアライザ120、121にとっては問題である。
【0008】
ルーティングユニット111においては、サンプルはデシリアライズされ124、125、サンプルは、要求される出力ポートにサンプルを転送するルーティング機能126に渡される。各出力ポートにおいては、そのポートを出力先とするサンプルのセットが、高速デジタルリンク131、132上の送信のために、スケジューラ127、128およびシリアライザ129、130により再びスケジューリング且つシリアライズされる。
【0009】
最終的に、各リモートユニット109、110においては、サンプルはデシリアライズされて133、134、伝送されている各チャネルに対して、元の無線信号を再作成するように構成されている送信フィルタリング機能135~138に渡される。周波数帯域に対するすべての送信フィルタリング機能135~138の出力は合計されて、それぞれのデジタル/アナログ変換器139、140(DAC)に渡されて、無線通信装置にサービスを提供するサービスエリアを提供するアンテナ105、106上で増幅および送信可能なアナログ信号が再作成される。
【0010】
ソースユニット107、108はまた、各基地局101~104への純粋なデジタルインタフェースを有するようにも設計可能であり、その場合は、送信される信号は、デジタルサンプルの形式で送信される。この場合、受信フィルタリング114~117の役割は、基地局101~104からのデジタルサンプルを、DAS100を通しての送信に適切な形式にフォーマットおよび変換することである。
【0011】
「現実」世界における信号は、それぞれの基地局101~104により送信される無線周波数(RF)信号のように、有限の範囲の周波数上に存在しており、サンプリングされると(例えば、アナログ/デジタル変換器112、113により)、デジタルサンプルのシーケンスで表現可能である。
【0012】
米国特許第8,929,288号は、ホストユニットと複数のリモートユニットを含んでいるDASを開示している。ホストユニットは、複数の基地トランシーバ局とスイッチを含んでいる。各基地トランシーバ局は、ダウンストリームベースバンドデジタル信号をスイッチに提供し、スイッチからアップストリームベースバンドデジタル信号を受信するように構成されており、各ダウンストリームベースバンドデジタル信号とアップストリームベースバンドデジタル信号は、それぞれの基地トランシーバ局のベースバンドにおける元の無線周波数チャネルのデジタル表現である。スイッチは、各ダウンストリームベースバンドデジタル信号を、リモートユニットのそれぞれのサブセットに、1つ以上のダウンストリームシリアルデータストリームとしてルーティングし、1つ以上のアップストリームシリアルデータストリームからの各アップストリームベースバンドデジタル信号を、基地トランシーバ局のそれぞれのサブセットにルーティングするように構成されている。
【0013】
更に、標準化されたCommon Public Radio Interface(CPRI(共通公衆無線インタフェース))インタフェース仕様「Common Public Radio Interface(CPRI)、Interface Specification」は、現在Version6.0であり、ベースバンドユニットと無線ヘッドとの間の高速デジタルリンク上のベースバンドデータのシリアライゼーションを提唱している。ベースバンドサンプルが、デジタルリンク上でシリアライズされる、米国特許第8,929,288号に記述されているシステムのような、Digital DAS(デジタルDAS)の実現がこのアプローチに追従した。
【0014】
DASにおいてベースバンドでデジタルデータを処理することは利点を有している。元の無線周波数信号のデジタルベースバンド表現が例示されている
図2を参照すると、そのようなデジタルベースバンド表現では、各データサンプルは、複素数(実部および虚部成分から構成される)として表現されるということが分かる。ベースバンド信号の実部および虚部成分は、実際は、0Hzから10kHz弱近くまでのような、より高い遮断周波数まで広がっていることに気付く。負の周波数は、対応する正の周波数成分の鏡像である。
【0015】
よく知られているナイキスト(Nyquist)の定理は、信号の占められている帯域幅が、サンプルレートFsの半分未満である限り、アナログ信号は、デジタルサンプルのストリームから完全に再構築可能であるということを教示している。
【0016】
図2の左側のパワースペクトル密度(PSD)のイラストから分かるように、合成された複素表現は、負の周波数成分が、正の周波数成分と異なることが可能な両側パワースペクトルを可能にし、サンプルレートF
sまでの総帯域幅を可能にする。
【0017】
信号処理の観点からは、そのような表現は普通、他の理由の中でも、右側の時間ドメインのイラストに示されているように、それが、実部および虚部成分が平行に処理されることを可能にするという理由で使用される。デジタルベースバンド信号は普通、IQデータと称され、つまり、同相および直交変調データの形式のユーザプレーン情報である。このIQ変調により、デジタルデータが、
図2の右側の時間ドメインのイラストに示されている実部および虚部成分により表現されることを可能にする。
【0018】
DASは、異なるセルラーオペレータとモバイル送信規格に対応する広い範囲の信号に対処する必要がある。これは、異なる信号帯域幅の広い範囲が、例えば、総ADC入力帯域幅内に提示され得ることを意味している。広帯域信号に対する最小サンプルレートは、狭帯域信号に対するサンプルレートよりも大きく、サポートされなければならない帯域幅の範囲は、デジタル相互接続の利用できる容量を効率よく利用するために、異なるサンプルレートの広い範囲をサポートする必要性に繋がる。これは、各シリアライザの前に位置するスケジューリングプロセスが難しい作業を有することを意味している。つまり、遅延の最小量を追加しながら、各チャネルに対してデータサンプルを送信するためのスケジュールを見つける必要がある。サンプルの異なる混合体を搬送する必要がある、DASを通しての各ステップ(例えば、各中間ルーティングステップ)においては、導入される余分なスケジューリング遅延を補償するために、更なるバッファリングを提供する必要がある。基地局を、DASを通しての遅延を補償するためにどの程度調整可能かについては限度があるので、総遅延はDASの性能に対して非常に重要であり得る。
【0019】
図1におけるDAS100のスケジューラ118、119の柔軟性は、送信されるデータの粒度により制限される。ベースバンドデータサンプルは、
図2において例示されたように2つのサンプル値から構成され、つまり、実部および虚部成分から構成されており、デジタルリンク122、123上で送信されるためには、両者はシリアライズされなければならない120、121。これは、スケジューラ118、119に対する最小粒度は、両成分を処理するために掛る時間から構成されることを意味している。
【0020】
上記に検討したデジタルベースバンド表現の欠点は、各時間ドメインデジタルデータ成分の処理に関連する遅延があるということである。
【発明の概要】
【0021】
本発明の目的は、この技術における問題を解決、または少なくとも軽減し、向上したDASおよびDASにおいてデジタルデータを伝送する方法を提供することである。
【0022】
この目的は、DASにおいてデジタルデータを伝送する方法により、本発明の第1態様において達成される。本方法は、少なくとも1つのデータソースからデータを受信することと、受信されたデータを処理することと、処理されたデータを、DAS内での更なる伝送のためのデジタル実数値パスバンドデータとして提供することを備えている。
【0023】
この目的は、DASにおいてデジタルデータを伝送するように構成されている装置により、本発明の第2態様において達成され、装置は、処理ユニットとメモリを備え、メモリは、処理ユニットにより実行可能な命令を含んでおり、それにより装置は、少なくとも1つのデータソースからデータ受信し、受信されたデータを処理し、処理されたデータを、DAS内での更なる伝送のためのデジタル実数値パスバンドデータとして提供するように機能する。
【0024】
前に検討されたように、複素デジタル信号の実部および虚部成分がDASにおいてスケジューリング且つシリアライズされるときは、処理遅延が、それぞれの信号成分の処理において起こる。
【0025】
そのため、実部および虚部信号成分の1つを処理するための遅延をDで表わすと、各サンプルの両成分を処理するための遅延は2×Dとなる。DASの高速リンク上の送信のためには、両成分を処理しなければならないということは回避不可である。
【0026】
この問題は、本発明に係る、パスバンド表現を使用して、DASにおいてデジタルデータを伝送する方法により都合よく克服される。ベースバンド表現とは対照的に、パスバンド表現は、独立した実部および虚部成分から構成されるのではなく、純粋な実数値信号のように、単一成分により表現可能である。
【0027】
ここにおいて記述される、実数値デジタルパスバンド信号を伝送する、本発明の実施形態で提案されるDASにおいては、高速データリンク上の各データサンプルの伝送を準備するためのスケジューラとシリアライザの処理遅延は50%削減され、そのため、実部および虚部成分から構成される各デジタルベースバンドデータサンプルに対する場合の2×Dの遅延と比較して、各デジタルパスバンドデータサンプルに対する処理遅延はDとなる。
【0028】
実施形態においては、受信された信号を処理することは、RXフィルタと称されるフィルタにおいて、基地局により提供される(または、アップリック通信の場合は、無線通信端末により提供される)各チャネルをフィルタリングすることを含んでいる。そのため、基地局の各チャネルは、対応する周波数選択性RXフィルタにより処理される。この状況においては、チャネルは、オペレータがDASを通して共に転送したいと所望する、周波数の範囲を占有している信号のセットとして解釈されるべきである。
【0029】
その後、フィルタリングされた各チャネルの信号は、信号の、それぞれのチャネル上で伝送される信号の帯域幅に適合されたサンプルレートFsを削減するために、それぞれのRXフィルタにおいて、リサンプリングまたは間引きが行われる。結論可能なように、RXフィルタにおいて適用されるサンプルレートFsは、フィルタリングされたチャネルの最大帯域幅信号の帯域幅の少なくとも2倍でなければならない。
【0030】
これは、DAS内での更なる伝送のための、各RXフィルタにより提供される実数値デジタルパスバンドデータの結果としてのサンプルレートFsは、ADC112、113に入信する信号の総帯域幅ではなく、フィルタリングされたチャネルの実際の帯域幅に適合されるので、非常に有利である。
【0031】
フィルタリングされた基地局信号は、より狭い帯域幅を有しており、基地局の入信複合信号をサンプリングするADCよりも、より低いサンプルレートで表現可能である。デジタルリンク上の効率よい転送のために、実施形態におけるチャネルフィルタリングはまたこのため、各基地局チャネルのサンプルレートを削減するために、間引きまたはリサンプリングの1つ以上の段階を含んでいる。
【0032】
結果として、それぞれのフィルタリングされた基地局チャネルの信号を、フィルタリングされたチャネルの帯域幅を考慮した必要なだけの高さのサンプルレートを使用して、より低いサンプルレートFsでリサンプリング/間引きを行うことにより、アンテナ上の送信のための、リモートユニットにおける元の信号の後続する再構築を依然として可能にしながら、スケジューラに提供されるデジタルパスバンドデータの量は大幅に削減される。これは、スケジューラ/シリアライザの処理負担を大幅に軽減する。
【0033】
本発明の更なる実施形態が、詳細な記述において検討される。
【0034】
一般的に、請求項において使用されるすべて用語は、ここにおいて他に明示的に定義されない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるべきである。「ある/該要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」に対する言及は、他に明示的に記述されない限り、該要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの例に言及していると率直に解釈されるものとする。ここにおいて開示されている任意の方法のステップは、明示的に記述されない限り、開示されている正確な順序で実行する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
ここで、付随する図面を参照して、例により本発明を記述する。
【
図1】本発明を実現できる、先行技術のDASシステムを例示している。
【
図2】周波数ドメインおよび時間ドメインにおけるデジタルベースバンドデータを例示している。
【
図3a】本発明の基本的着想に係る方法を記述しているフローチャートを例示している。
【
図3b】本発明の実施形態に係る方法を記述しているフローチャートを例示している。
【
図4】周波数ドメインおよび時間ドメインにおける実数値デジタルパスバンドデータを例示している。
【
図5】本発明に係る方法の更なる実施形態を記述しているフローチャートを例示している。
【
図6a】実施形態に係るDAS内での更なる伝送のための、デジタルベースバンドデータから実数値デジタルパスバンドデータへの変換を例示している。
【
図6b】実施形態に係るDAS内での更なる伝送のための、デジタルベースバンドデータから実数値デジタルパスバンドデータへの変換を例示している。
【
図6c】実施形態に係るDAS内での更なる伝送のための、デジタルベースバンドデータから実数値デジタルパスバンドデータへの変換を例示している。
【
図6d】実施形態に係るDAS内での更なる伝送のための、デジタルベースバンドデータから実数値デジタルパスバンドデータへの変換を例示している。
【
図7】本発明に係る方法の更なる実施形態を記述しているフローチャートを例示している。
【
図8】本発明に係る方法の更なる実施形態を記述しているフローチャートを例示している。
【
図9】本発明に係る方法の更なる別の実施形態を記述しているフローチャートを例示している。
【
図10】ここで開示される方法を実行する、本発明の実施形態に係る装置を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで、本発明のある実施形態が示されている付随する図面を参照して、本発明をより完全に以下に記述する。しかし本発明は、多くの異なる形式で具現化でき、ここにおいて記述される実施形態に制限されると解釈されるべきではなく、これらの実施形態は、この開示が完璧かつ完全であり、本発明の範囲を技量を有する当業者に完全に伝えるように例により提供される。記述を通して、類似の番号は類似の要素を指している。
【0037】
図1は、本発明を実現できる先行技術のDASを例示している。
図1のDAS100は、前に詳細に検討した。
【0038】
図2は、デジタルベースバンドデータの周波数ドメインおよび時間ドメイン表現を例示している。X
r(n)は、離散時間サンプルインデックスnでの時間ドメインにおけるデジタル信号の実部成分を示し、一方、X
i(n)は、離散時間サンプルインデックスnでの時間ドメインにおけるデジタル信号の虚部成分を示している。
【0039】
前に検討したように、デジタル信号のそれぞれの成分が、ソースユニット107、108のスケジューラ118、119およびシリアライザ120、121により、そして続いて、ルーティングユニット111のスケジューラ127、128およびシリアライザ129、130によりスケジューリング且つシリアライズされると、処理遅延が、それぞれの信号成分の処理において起こる。
【0040】
そのため、2つのデジタル信号成分の1つを処理するための遅延をDで表わすと、各デジタルサンプルの両成分を処理するための遅延は2×Dとなる。高速リンク122、123および131、132上の送信のためには、両成分を処理しなくてはならないということは回避不可である。
【0041】
この問題は、パスバンド表現を使用して、DASにおいてデジタルデータを伝送する方法により都合よく克服される。ベースバンド表現とは対照的に、パスバンド表現は、独立した実部および虚部成分から構成されるのではなく、純粋な実数値信号のように、単一成分により表現可能である。
【0042】
パスバンド信号は、正のみである(または、等価的に、負のみである)周波数の帯域を占める。負および正の周波数成分は互いに独立している必要はなく、従って、表現されるためには、信号は実部と虚部の両成分を必要としない。実数値デジタルパスバンド信号は、各サンプルが単一座標により表現される信号として定義される。これは、信号のサンプルに対して可能な値は、複素平面において直線にマップされることを意味している。この直線は典型的には、複素平面における実軸であるが、同様に虚軸であることも可能で、または、他の位置における直線であることも可能である。
【0043】
本発明の方法は、
図3aのフローチャートを参照すると、ステップS101において、少なくとも1つのデータソースからデータを受信することを備え、ここにおいて、データソースは無線基地局(RBS)101~104により具現化できるが、代替的に、RF信号を基地局から受信し、RF信号を、中間周波数(IF)のようなより低い周波数にミックスダウンする、および/または、アナログRBS信号をデジタル信号に変換する中間装置であることも可能である。
【0044】
下記においては、RF信号の、より低い周波数IF信号へのRF信号の如何なるミックスダウンも、ミキサ/復調器141、142により例示されているような、それぞれのRBS101~104とDAS100との間、またはDAS100内に位置しているRFミキサ/復調器により実行されるものとする。
【0045】
RF信号は典型的には、パスバンドアナログ信号であり、それはDASに(任意のミキサ装置を介して)供給されるときは、通常は、DASは単一のRBSからの信号を受信できるが、1つ以上のRBS101~104からの信号の複合物である。しかし、実際は、DASは典型的には、異なる周波数においてそれぞれ動作している種々のオペレータにより操作できる、多数の異なるRBSから信号を受信する。これらの異なるチャネルは、それぞれのチャネルRXフィルタ114~117により分離されなければならず、それに続いて、リモートユニット109、110において、それぞれのチャネルTXフィルタ135~138により再構築されなければならない。
【0046】
その後、受信されたデータはステップS102において、何れのタイプのデータを含んでいるか、つまり、アナログ、デジタル、RF、IF、ベースバンドなど何れのタイプのデータを含んでいるかに従って処理され、処理されたデータはステップS103において、DAS100内での更なる伝送のための実数値デジタルパスバンドデータとしてそれぞれのスケジューラ118、119に提供される。
【0047】
ダウンリンクにおいては、ステップS101~S103に例示されている処理は、実施形態においては、更なるダウンリンク伝送のために、RBS101~104の近くのソースユニット107、108において実行され、一方、アップリンクにおいては、ステップS101~S103の処理は、更なるアップリンク伝送のために、リモートユニット109、110において実行される。そのため、データが、アップリンクまたはダウンリンク方向の何れかにおいてDAS100に入ると、データは、DAS100内での更なる伝送のための実数値デジタルパスバンドデータとして提供可能なように処理される。
【0048】
図3bを参照すると、実施形態においては、
図3aの処理ステップS102は、各RXフィルタ114~117において、RBS101~104により提供される各チャネルをフィルタリングする更なるステップS102b’を含んでいる。そのため、RBS101~104のそれぞれのチャネルは、対応するRXフィルタ114~117により処理される。
【0049】
その後、ステップS102b”において、フィルタリングされた各チャネルの信号に対して、それぞれのチャネル上で伝送される信号の帯域幅に適合された、信号のサンプルレートFsを削減するために、それぞれのRXフィルタ114~117においてリサンプリングまたは間引きが行われる。結論可能なように、RXフィルタ114~117において適用されるサンプルレートFsは、フィルタリングされたチャネルの最大帯域幅信号の帯域幅の少なくとも2倍でなければならない。
【0050】
これは、DAS100内での更なる伝送のための、各RXフィルタ114~117により提供される実数値デジタルパスバンドデータの結果としてのサンプルレートFsが、ADC112、113に入信する信号の総帯域幅ではなく、フィルタリングされたチャネルの実際の帯域幅に適合されているので非常に有利である。
【0051】
フィルタリングされたRBS信号は、より狭い帯域幅を有しており、ADC112、113のサンプルレートより低いサンプルレートで表現可能である。デジタルリンク上の効率よい転送のため、実施形態におけるチャネルフィルタリングはまたこのため、各RBSチャネルのサンプルレートを削減するための、間引きまたはリサンプリングの1つ以上の段階を含んでいる。
【0052】
結果として、それぞれのフィルタリングされたRBSチャネルの信号に対して、フィルタリングされたチャネルの帯域幅を考慮した必要なだけの高さのサンプルレートを使用して、より低いサンプルレートFsでリサンプリング/間引きを行うことにより、アンテナ105、106上の送信のための、リモートユニット109、110における元の信号の後続する再構築を依然として可能にしながら、スケジューラ118、119に提供されるデジタルパスバンドデータの量は大幅に削減される。これは、スケジューラ/シリアライザの処理負担を大幅に軽減する。
【0053】
前述したように、各リモートユニット109、110においては、サンプルはデシリアライズされて133、134、送信フィルタリング機能135~138に渡される。送信フィルタリング機能135~138は、伝送される各チャネルに対して元の無線信号を生成するように構成されており、ADC入力周波数帯域に対応する出力周波数帯域全体を再作成可能なように、各信号のサンプルレートFsを、十分に高いサンプルレートに補間することを含んでいる。周波数帯域に対するすべての送信フィルタリング機能135~138の出力は合計されて、それぞれのデジタル/アナログ変換器139、140(DAC)に渡されて、無線通信装置にサービスを提供するサービスエリアを提供するアンテナ105、106上で増幅および送信可能なアナログ信号が再作成される。
【0054】
図4は、周波数ドメインと時間ドメインそれぞれにおける実数値デジタルパスバンド信号を例示している。デジタルパスバンド信号は、左側のイラストに示されているように、周波数ドメインにおいて正の周波数の特定の帯域を占めている。負の周波数におけるパワースペクトルは、正の周波数におけるものと同一の鏡像版である。
【0055】
右側の時間ドメインのイラストに示されているように、デジタル信号は、右側のイラストに示されているように、実数値サンプルのシーケンスにより表現可能である。Yr(2n)は、離散時間サンプルインデックス2nでの時間ドメインにおけるデジタル信号の実部成分を表わしている。
【0056】
再びナイキストの定理によると、サンプリングレートFsが、サンプリングされたアナログ信号の帯域幅の少なくとも2倍である限り、アナログ信号は、デジタルサンプルのストリームから完全に再構築可能である。サンプルインデックスに対するファクタ2は、パスバンド表現に対するサンプルレートは、同じ情報帯域幅のベースバンド表現の2倍でなければならないことを示している。
【0057】
図4の実数値デジタルパスバンド信号を、
図2に例示されているデジタルベースバンド信号と比較すると、デジタルベースバンド信号表現は、データサンプルの実部および虚部成分の平行処理を、同じ帯域幅を有するパスバンド信号のサンプリングレートF
sの半分で可能にすると結論可能である。
【0058】
しかし、ここで記述される、実数値デジタルパスバンド信号を伝送する、本発明の実施形態で提案されるDASにおいては、高速データリンク122、123上の各データサンプルの伝送を準備するための、スケジューラ118、119およびシリアライザ120、121の処理遅延は50%削減され、そのため、実部および虚部成分から構成される各デジタルベースバンドデータサンプルに対する場合の2×Dの遅延と比較して、各デジタルパスバンドデータサンプルの処理遅延はDとなる。
【0059】
本発明に係る、DASにおいてデジタルデータを伝送する方法の実施形態を、
図5のフローチャートと、
図6aから6dに例示されている信号を参照してここに記述する。
【0060】
実施形態によれば、実数値デジタルパスバンドデータは、シリアライザ120、121により伝送される。この特別な実施形態においては、
図5のフローチャートを参照すると、DAS100のソースユニット107、108への入力は、ステップS102aにおいて、直交ミキサ/復調器141、142により、ゼロ中間周波数のアナログベースバンド信号にミックスダウンされるRF信号である。この直交ミキサ/復調器は、ソースユニット107、108内またはその外側に位置できる。そのため、DAS100は、外部の直交ミキサ/復調器により既にミックスダウン且つ直交復調されたIF信号を受信すると考えることができ、このシナリオにおいては、DAS100はステップS102aを実行しない。
【0061】
直交ミキサ/復調器においては、同じ入力信号を、互いに90度オフセットしている局所発振器信号の異なるバージョンによりミックスする2つのミキサが利用され、複素表現として取り扱い可能な出力信号が生成される。
【0062】
このため、ADC112、113はステップS102bにおいて、アナログIF信号を複素ベースバンド信号としてサンプリングする。
【0063】
IF信号が一旦デジタル化されると、処理は、ステップS102b’において
図3bを参照して上記に検討したように、周波数選択性フィルタリングにより、複合入力信号を構成する異なる信号を分離することから構成される。そのため、各チャネルは、帯域幅がそれぞれの信号ソースの特性に適合されている、つまり、各フィルタは、対応するRBSの動作周波数に同調されている周波数選択性デジタルフィルタ114~117を有している。
【0064】
前述したように、信号帯域幅のこの適合は、フィルタリングされたチャネルの信号に対してリサンンプリングまたは間引きを行うことで実行され(
図3bのステップS102b”)、都合よく、より低いサンプルレートF
sという結果になる。このサンプルレートF
sは、すべてのRBSチャネル上で、DAS100に入信する信号の総帯域幅を収容する必要がある、ADC112、113により適用されるものよりも相当に低いということに留意すべきである。
【0065】
ここで、このフィルタリングの後、
図6aに例示されている(
図2を参照して前に検討した)ように、デジタルベースバンド信号は、各チャネルに対して得られており、サンプルレートF
sのデジタルベースバンド信号という結果になる(F
sは、エイリアシングのないフィルタリングされた信号を表現するために必要なサンプルレートによって、各チャネルに対して異なってよい)。
【0066】
このデジタルベースバンド信号は、この特別な実施形態においては、ステップS102cにおけるアップサンプリングを実行するステップから開始する、3ステップのアプローチを使用して、実数値デジタルパスバンド信号に変換される。このステップは、デジタルベースバンド信号が既に、信号に含まれる情報の帯域幅の少なくとも2倍のサンプルレートを有している場合は省略可能である。
【0067】
この例においては、アップサンプリングはファクタ2で実行され、つまり、デジタルベースバンド信号はファクタ2で内挿され、それにより、サンプルレート2倍にして、ナイキスト帯域幅を2×Fsに増大する。
【0068】
実際は、アップサンプリングを実行するときは、ゼロが元のサンプルの間に挿入されてサンプリングレートを増大し、これに、結果としてのアップサンプリングされたデジタル信号を平滑化するローパスフィルタリングが続き、それにより、挿入されたゼロ全体に渡って所望の信号が再構築される。
【0069】
図6bは、
図6aのデジタルベースバンド信号のアップサンプリングの結果であるデジタルベースバンド信号を示している。アップサンプリングは、所望しないスペクトル画像(破線で示されている)をサンプリングされた信号に追加し、そのスペクトル画像は、元のサンプリングレートの倍数上を中心とし、前述したローパスフィルタリングにより除去しなくてはならないということに留意すべきである。このため、アップサンプリングにより、信号を-F
sから+F
sの周波数範囲で表現することが可能となる。しかし、所望の信号は依然として-F
s/2から+F
s/2の元の周波数範囲にある。
【0070】
ステップS102cのアップサンプリングの後、
図6bの右側における時間ドメイン表現に例示されているように、
図6aの元のデジタルベースバンド信号と比較して、同じ量のデータが、アップサンプリングされたデジタルベースバンド信号に存在するが、サンプリングレートは2×F
sに増大している。
【0071】
その後、アップサンプリングされたデジタルベースバンド信号の周波数シフトがステップS102dにおいて(アップサンプリングされた周波数のうち、ADC112、113により適用される元のサンプルレートに対してF
s/2に対応する)周波数F
s/4で実行され、それにより、複素デジタルパスバンド信号を作成するために、信号のより低い端部を正の周波数に移動する。この操作の結果は、
図6cに例示されている。結果がパスバンド信号である(つまり、所望の信号すべてが正の周波数、またはすべてが負の周波数に位置している)限り、異なる周波数シフトを選択できる。
【0072】
最終的に、
図6cに例示されている複素デジタルパスバンド信号の虚部成分はステップS102eにおいて破棄され、
図6dを参照して例示される信号という結果に、つまり、
図4を参照して前に詳細に検討した実数値デジタルパスバンド信号が、ステップS103に例示されているように提供される。ゼロ周波数を中心とする、
図6aのデジタルベースバンド信号と比較すると、
図6dのデジタル信号はF
s/2を中心としており、何れの側においても正の周波数のパスバンドから構成されている。虚部成分がないので、負の周波数範囲は、正の周波数範囲の鏡像となっており、それは、周波数範囲0から+F
sにおいて、固有情報のみが搬送可能であることを意味している。しかし、所望の信号はその範囲にあることは既に確認されている。または、実部成分を破棄可能である。これは同じ効果を有する。信号帯域幅全体がスペクトルの正(または負)の半分に依然として位置しているように、十分なマージンがサンプルレートにある限り、F
s/2以外の中心周波数を使用できる。
【0073】
結果は、同じ平均データレートの信号であり、つまり、半分のデータ量であり、2倍の頻度であるが、各データサンプルは実数値であり、独立してスケジューリング且つルーティングが可能であるので、スケジューリング粒度は都合よく、ベースバンド表現の半分である。
【0074】
そのため、1つの実部成分と1つの虚部成分を、対応する遅延を伴って各データサンプルに対して連続して処理しなくてはならないデジタルベースバンド表現と比較すると、データサンプルをスケジューリング且つシリアライズするときの、実数値デジタルパスバンド信号の各データサンプルに対する処理遅延は50%削減される。
【0075】
リモートユニット109、110において、アンテナ105、106を介してRBS101~104から受信した元のRF信号を任意の無線通信装置に送信する前に、上記の3ステップのアプローチの逆のアプローチが、各チャネルTXフィルタ135~138において行われる。ベースバンド信号は、
図6dのパスバンド信号から、
(1) 周波数をベースバンドにシフトして戻し、
(2) 結果の複素信号をフィルタリングして、不要の画像を、シフトされた負の周波数成分から除去し、
(3) サンプルレートF
sをファクタ2だけダウンサンプリング(つまり、削減)することにより再作成可能である。
【0076】
最終的に、各チャネルのデジタル信号を、
図6aに示されているベースバンド表現に変換して戻した後、チャネルTXフィルタは、各チャネルの信号を、各リモートユニット109、110における直交ミキサ/復調器143、144を通過し、その後、RBS101~104により提供されるようなRF信号が再生成され(または、DAS100へのデジタルベースバンド供給の場合は初めて作成され)、アンテナ105、106を介して送信される前に、他のチャネルと合計可能であり、DAC139、140によりデジタル形式からアナログ形式に変換可能なように再構築する。
【0077】
実際の実現においては、ベースバンドデータ表現の使用が、内部処理に対して所望されるならば、変換ステップの幾つかまたはすべてを既存の信号処理回路に統合可能である(受信経路は典型的に、周波数シフトと間引きの段階を含み、送信経路においては反対のステップであるため)。または、実現は、全体を通してパスバンド表現を使用することを選択可能である。
【0078】
パスバンド表現への、そしてベースバンド表現に戻す一連の変換は、受信側において同一のベースバンド信号を提供しない(関連するフィルタリングステップは非理想的であり、プロセスは時間不変ではないため)。しかし、ナイキスト基準は守られるので、信号の重要な特質は保たれ、出力において、任意の高忠実度のRF信号を再作成可能である。
【0079】
図7のフローチャートを参照して記述される代替の実施形態においては、DAS100のソースユニット107、108への入力は、ゼロではなく、任意の他の適切な中間周波数であるIFにミックスダウンされたRF信号であるか、または、ステップS102aにおいて、直交ミキサ/復調器141、142によりDAS100内でミックスダウン且つ直交変調されるRF信号である。
【0080】
このため、ステップS102bにおいて、ADC112、113はアナログIF信号を、複素パスバンド信号としてサンプリングする。
【0081】
再び、IF信号が一旦デジタル化されると、処理は、RXフィルタ114~117において周波数選択性フィルタリングによる、複合入力信号を構成する異なる信号を分離することから構成される(
図3bのステップS102b’)。そのため、各チャネルは、帯域幅が、それぞれの信号ソースの特性に適合されている、つまり、各フィルタは、対応するRBSの動作周波数に同調されている、周波数選択性デジタルフィルタ114~117を有している。
【0082】
更に、フィルタリングされたチャネルの信号に対しては、
図3bのステップS102b”において前に検討されたように、削減されたサンプルレートF
s、つまり、フィルタリングされたチャネルの信号の実際の帯域幅を考慮したサンプルレートF
sでリサンプリング/間引きが行われる。
【0083】
ここで、このフィルタリングの後、
図6cに例示されているような、実部および虚部の両方の成分を備えている複素デジタル信号が、各チャネルに対して得られている。フィルタリングは、各チャネルが、独立したI/Q信号として処理可能なように、各チャネルをベースバンドにシフトできる。または、フィルタリングは、各チャネルをベースバンドにシフトすることなく、パスバンドにおいて実行できる。
【0084】
この複素デジタルパスバンド信号は、この特別な実施形態においては、ステップS102d’において、サンプルレートF
sの半分の周波数が中心となるように信号を周波数シフトして、ステップS102eにおいて、前に検討したように、
図6cに例示されている信号の虚部成分を破棄することにより、実数値デジタルパスバンド信号に変換され、ステップS103で例示されているように、DAS100内での更なる伝送のために提供される、
図6dを参照して例示されている実数値デジタルパスバンド信号という結果になる。
【0085】
再び、デジタルベースバンド表現と比較すると、結果は、同じ平均データレートの信号であり、つまり、半分のデータ量であり、2倍の頻度であるが、各データサンプルは実数値であり、独立してスケジューリング且つルーティングが可能であるので、スケジューリング粒度は都合よく、ベースバンド表現の半分である。
【0086】
そのため、1つの実部成分と1つの虚部成分を、対応する遅延を伴って各データサンプルに対して連続して処理しなくてはならないデジタルベースバンド表現と比較すると、データサンプルをスケジューリング且つシリアライズするときの、実数値デジタルパスバンド信号の各データサンプルに対する処理遅延は50%削減される。
【0087】
図8のフローチャートを参照して記述される更に他の実施形態においては、DAS100のソースユニット107、108への入力は、非直交ミキサ/復調器により、ゼロではなく適切なパスバンド周波数であるIFにミックスダウンされたRF信号である。再び、ミキシングと非直交復調を、ソースユニット107、108の外側に位置している、非直交ミキサ/復調器141、142により代替として実行できる。
【0088】
このため、ADC112、113はアナログIF信号を、実数値パスバンド信号としてサンプリングする。
【0089】
再び、IF信号が一旦デジタル化されると、処理は、
図3bのステップS102b’で示されるように、RXフィルタ114~117により適用される周波数選択性フィルタリングにより、複合入力信号を構成する異なる信号を分離することから構成される。そのため、各チャネルは、帯域幅が、それぞれの信号ソースの特性に適合されている、つまり、各フィルタは、対応するRBSの動作周波数に同調されている、周波数選択性デジタルフィルタ114~117を有している。
【0090】
その後、フィルタリングされたチャネルの信号は、
図3bのステップS102b”を参照して検討したように、フィルタリングされたチャネルの信号の帯域幅に適合するために、より低いサンプルレートF
sでリサンプリングまたは間引きが行われる。
【0091】
ここで、このフィルタリングの後、IF信号は、実部パスバンド信号としてサンプリングされるので、
図6dに例示されているような実数値デジタルパスバンド信号が、各チャネルに対して得られている。
【0092】
図9のフローチャートを参照して記述される代替の実施形態においては、再び、ステップS101においてRF信号が受信されて、ステップS102a’においてIFにミックスダウンされ、非直交復調される。ステップS102bにおいてIF信号が一旦デジタル化されると、処理は、複合入力信号を構成する異なる信号を分離することから構成される。
【0093】
ADC112、113の後で得られたデジタル実数値パスバンド信号は、ステップS102b1においてデジタル直交復調器により各チャネルに対して処理され(RXフィルタ114~117の一部として実現される)、受信されたサンプルに、チャネル中心周波数と等しい周波数を有し、実部および虚部成分が90度の位相差の複素フェーザーを掛けることにより、アナログ直交復調器における処理と同じ方法で、各チャネルに対する実数値パスバンド信号をゼロIFにシフトする。そして、周波数選択性RXフィルタ114~117は、所望のチャネルは0Hzが中心であるので、
図3bのステップS102b’を参照して詳細に記述したように、実部および虚部成分を、所望のチャネルの帯域幅に適合されたローパスフィルタによりフィルタリング可能である。その後、フィルタリングされたチャネルのデータは、フィルタリングされたチャネルのデータの帯域幅に適合された、より低いサンプルレートF
sで、ステップS102b”においてリサンプリングされ、スケジューラおよびシリアライザ上に渡されるデータ量を削減する。そして、光リンク上の送信のためにスケジューラとシリアライザに渡される前に、各チャネルに対する結果としてのベースバンド信号は、デジタルベースバンド信号に対する、前に記述した方法を使用して、ステップS103aにおいてパスバンド信号に変換される。
【0094】
更に別の実施形態においては、DAS100のソースユニット107、108への入力は、ミックスダウンされず、非直交復調器(図示せず)を通して渡されるだけのRF信号である。この復調器は、ソースユニット107、108の内側または外側に位置できる。
【0095】
このため、ADC112、113はアナログRF信号を、実数値パスバンド信号としてサンプリングする。
【0096】
再び、IF信号が一旦デジタル化されると、処理は、周波数選択性フィルタリングにより、複合入力信号を構成する異なる信号を分離することから構成される。そのため、各チャネルは、帯域幅が、それぞれの信号ソースの特性に適合されている、つまり、各フィルタは、対応するRBSの動作周波数に同調されている、周波数選択性デジタルフィルタ114~117を有している。
【0097】
ここで、このフィルタリングの後、RF信号は実部パスバンド信号としてサンプリングされるので、
図6dに例示されているような実数値デジタルパスバンド信号が各チャネルに対して得られている。
【0098】
更なる実施形態においては、DAS100のソースユニット107、108への入力は既にデジタル化されている信号であり、つまり、デジタルベースバンド信号である。
【0099】
そのようなシナリオにおいては、チャネルフィルタリングは依然として必要であるが、入力信号を復調またはデジタル化する必要はない。このため、ここにおいて上記に
図6a~6dを参照して既に記述した3ステップのアプローチが、受信されたデジタルベースバンド信号に対して実行される。更に、検討されたように、これは、デジタルリンクの効率的な利用のために、各基地局信号のサンプルレートを削減するために、入力信号のリサンプリングを含むことができる。
【0100】
前に検討したように、
図1に例示されているDAS100はダウンリンクパス、つまり、基地局から、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、ゲーミングコンソールなどの無線通信装置(図示せず)への送信パスを示している。アップリンク、つまり、受信パスにおいては、リモートユニットとソースユニットの機能は反対になる。
【0101】
図1のDAS100は、ADC112、113、RXフィルタ114~117、スケジューラ118、119、シリアライザ120、121などの異なる機能実体に分割されるが、現代のDASは典型的には、ここにおいて記述された機能を達成するためにコンピュータプログラムを実行する処理ユニットのシステムにより実現される。
【0102】
図10を参照すると、DAS100により、特にはソースユニット107、108により実行される方法のステップは、実際は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、またはハードディスクドライブなどのような、マイクロプロセッサと関連付けられている適切な格納媒体32にダウンロードされたコンピュータプログラム31を実行するように配置されている1つ以上のマイクロプロセッサの形式で具現化される処理ユニット30(または複数の処理ユニットのシステム)により実行される。処理ユニット30は、コンピュータ実行可能命令を備えている適切なコンピュータプログラム31が格納媒体32にダウンロードされ、処理ユニット30により実行されるときに、DAS100に、実施形態に係る方法を実行させるように配置されている。格納媒体32はまた、コンピュータプログラム31を備えているコンピュータプログラム製品であってよい。または、コンピュータプログラム31は、適切なコンピュータプログラム製品により、デジタル多目的ディスク(DVD)またはメモリスティックのような格納媒体32に転送されてよい。更なる代替として、コンピュータプログラム31は、ネットワークを介して格納媒体32にダウンロードされてよい。処理ユニット30は代替的に、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特殊用途用集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、複素プログラマブルロジックデバイス(CPLD)などの形式で具現化できる。
【0103】
本発明を、上記に幾つかの実施形態を参照して主に記述してきた。しかし、技量を有する当業者には容易に認識されるように、上記に開示した実施形態以外の他の実施形態は、添付される特許請求の範囲により定義されるように、本発明の範囲内であることが同様に可能である。