(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】イソシアネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 263/20 20060101AFI20221011BHJP
C07C 265/14 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C07C263/20
C07C265/14
(21)【出願番号】P 2019533536
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2017083379
(87)【国際公開番号】W WO2018114846
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-17
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティム、ロッデンケンパー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン、アラス
(72)【発明者】
【氏名】マルクス、ドゥガル
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-141456(JP,A)
【文献】特表2002-518369(JP,A)
【文献】特開昭50-088028(JP,A)
【文献】特表2015-514065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造しようとするイソシアネートに対応する第一級アミンをホスゲン化して製造しようとするイソシアネートを含む液状粗処理生成物を得ることによりイソシアネートを製造する方法であって、前記液状粗処理生成物を後処理して、
・製造しようとするイソシアネートと、
・任意で、低沸点溶剤であって、製造しようとするイソシアネートより低沸点を有する、または製造しようとするイソシアネートが異性体混合物の形態である場合には製造しようとするイソシアネートの最低沸点異性体より低い沸点を有する物質もしくは物質の共沸混合物である、低沸点溶剤と、
・蒸留残渣と、
からなる蒸留塔底流を得ることを含んでなり、
さらに、前記蒸留塔底流の後処理を含んでなり、該後処理は次の工程:
1)任意で、前記蒸留塔底流中に存在する製造しようとするイソシアネートを部分的に蒸発させることにより、エバポレーター内の前記蒸留塔底流を前濃縮して、製造しようとするイソシアネートが枯渇した前濃縮液体流を得る工程と、
2)前記蒸留塔底流または工程1)において得られた製造しようとするイソシアネートが枯渇した前濃縮液体流を、150℃~500℃の範囲の温度の、水平軸を備える加熱製品撹拌真空乾燥機、及び造粒スクリューからなる群から選択される乾燥装置の内部で乾燥し、製造しようとするイソシアネートを蒸発および回収して固形処理生成物を得る工程と、を含み、
前記乾燥装置へ供給された前記蒸留残渣の総質量に対するカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率が少なくとも15%の値に調整される、方法。
【請求項2】
前記ホスゲン化を、溶媒の存在下、液相中で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホスゲン化を気相中で行い、前記ホスゲン化が、製造しようとするイソシアネートを含む、生成した気体処理生成物を冷却する冷却工程を含み、製造しようとするイソシアネートが、溶媒、製造しようとするイソシアネートならびに製造しようとするイソシアネートおよび溶媒の混合物からなる群から選択されるクエンチ液と接触させることにより液化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クエンチ液が、溶媒ならびに製造しようとするイソシアネートおよび溶媒の混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項2及び4に記載の前記溶媒が、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンの異性体、トルエン、キシレンの異性体および前述した溶媒の混合物からなる群から選択される、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
低沸点溶剤が溶媒およびその他の成分からなり、前記蒸留塔底流の総質量に対する前記その他の成分の質量比率が0.10質量%以下である、請求項2、4および5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程1)を含み、前記前濃縮を、120℃~180℃の範囲の温度および20ミリバール(絶対圧力)~60ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧において行う、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
次の工程:
a)必要に応じて溶媒を使用して、製造しようとするイソシアネートに対応する第一級アミンをホスゲン化して、製造しようとするイソシアネートを含んでなる液状粗処理生成物および塩化水素を含んでなる気体粗処理生成物を得る工程と;
b)次の工程:
b.1)任意で、前記工程a)で得られた液状粗処理生成物から溶解されたホスゲンおよび溶解された塩化水素を分離して、ホスゲンも塩化水素も枯渇した液状処理生成物を得る工程と;
b.2)任意で、前記工程a)で得られた液状粗処理生成物または前記工程b)で得られたホスゲンも塩化水素も枯渇した液状処理生成物から溶媒を分離して、ホスゲンも塩化水素も溶媒も枯渇した液状処理生成物を得る工程と;
b.3)前記工程a)で得られた液状粗処理生成物または前記工程b.1)で得られたホスゲンも塩化水素も枯渇した液状処理生成物または前記工程b.2)で得られたホスゲンも塩化水素も溶媒も枯渇した液状処理生成物を蒸留して、製造しようとするイソシアネートの第一部分を含む蒸留物流ならびに蒸留残渣、製造しようとするイソシアネートの第二部分および必要に応じて低沸点溶
剤からなる蒸留物底流を得る工程と、を含む、前記工程a)で得られた液状粗処理生成物を後処理する工程と、
を含み、
前記工程b.3)で得られた蒸留塔底流が、工程2)または工程1)および工程2)で後処理しようとする蒸留塔底流である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥装置へ供給された前記蒸留残渣の総質量に対する、カルボジイミド基を含有する化合物の質量比率の調整が、次の手段:
A. 工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程1)におけるカルボジイミド基を含有する化合物の生成を促進する処理条件を設定すること;
B. 別の操作において製造しようとするイソシアネートからカルボジイミド基を含有する化合物を製造し、このように製造された前記カルボジイミド基を含有する化合物を工程2)の前記乾燥装置に供給すること;
C. 工程2)においてin situでカルボジイミド基を含有する化合物を製造すること、のうちの1つのみ、2つまたは全部によりもたらされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
手段Aを含み、前記工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程1)におけるカルボジイミド基を含有する化合物の生成に有利な処理条件の前記調整が、前記それぞれの工程における温度の上昇および/または前記それぞれの工程を通過する処理生成物の滞留時間の増加によりもたらされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
手段Bを含み、別の操作における製造しようとするイソシアネートからの前記カルボジイミド基を含有する化合物の製造が、次のこと:
200℃~270℃の範囲の温度において触媒の非存在下で、
または
50℃~150℃の範囲の温度においてホスホレンオキシドの触媒の存在下で、
請求項9に記載の製造方法から製造しようとするイソシアネートを含有する処理生成物を加熱すること、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
10ミリバール(絶対圧力)~250ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧において、工程2)を行う、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
手段Cを含み、前記工程2)における乾燥を、
最初に、>750ミリバール(絶対圧力)~1013ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧および200℃~270℃の範囲の温度での第一部分工程2.1)において、その後、10ミリバール(絶対圧力)~250ミリバール(絶対圧力)および200℃~270℃の範囲の温度での第二部分工程2.2)において、あるいは、
>250ミリバール(絶対圧力)~750ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧および200℃~270℃の範囲の温度で、行う、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
製造しようとするイソシアネートが、トリレンジイソシアネート、ナフチルジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびジイソシアナトジシクロヘキシルメタンからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
製造しようとするイソシアネートがトリレンジイソシアネートである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
イソシアネートの工業規模製造は、更なる後処理を必要とする蒸留塔底流をもたらす。これらの蒸留塔底流は、たとえあったとしても、かなり困難を伴ってのみ分解しないで蒸発可能な化合物からなる蒸留残渣(残渣と略す)だけでなく、所望の目標製品(すなわち、製造しようとするイソシアネート)の一部を含有する。本発明は、イソシアネート製造方法において生成された製造しようとするイソシアネートを含有する粗液状処理生成物の後処理で得られた蒸留塔底流中の製造しようとするイソシアネートのこの割合を、効率的に回収することを可能とする方法に関する。より詳細には、本発明は、製造しようとするイソシアネートを回収してこのイソシアネートを大部分から完全に含有しない固形物を生成させる乾燥工程に関する。この乾燥工程は、使用される乾燥装置へ供給された蒸留残渣の総質量に対して、15質量%、好ましくは20質量%、より好ましくは30質量%のカルボジイミド基を含有する化合物の極めて低い含有率を特徴とし、この極めて低い含有率は、in situでのカルボジイミド化により調整することもできる。
【背景技術】
【0002】
言及した蒸留残渣を含んでなるイソシアネート製造から得られる蒸留塔底流の処理に関する従来技術には様々な方法が記載されている。「残渣処理」と呼ばれるものの一般的目標は、イソシアネート収率の最大化、大部分から全くイソシアネートを含まない得られた残渣量の最小化、残渣処理の機能的に信頼ある構成およびもはやイソシアネート製造方法に利用できない残渣量の最良の安価かつ簡便な利用である。
【0003】
次の方法は原則として公知である:
原則的に、蒸留残渣を含んでなる蒸留物底流を、連続式またはバッチ式に燃焼することができる。方法は技術的に簡単であり、目的に適した熱利用工場がイソシアネート製造工場の近隣にある場合、パイプライン接続を経て廃棄を保証するために、方法を使用して有用な流れに高めることができる。しかしながら、この方法の大きなデメリットは、蒸留残渣を含んでなる蒸留塔底流は常に同様に燃やされる価値のあるイソシアネート製品もいくらか含有しているという事実に原因する収率の損失である。イソシアネートの蒸留を、蒸留塔底部から完全にまたは実質的に完全にイソシアネートが除去されるように行おうとする場合、残留するものは、かなり困難を伴ってのみ処理することができ、ほとんど排他的に残渣からなる固形蒸留塔底部相であろう。これを避けるために、蒸留塔からの底部生成物は通常液状のままであるように蒸留条件を選択するが、これは実質的な割合の製造しようとするイソシアネートをまだ含有する場合にのみ可能であり、したがって、同様に、必ず燃焼部へ送る。
【0004】
イソシアネート収率損失を最小限にするために、蒸留塔底流を、撹拌および加熱槽に移動し、残留中にまだ存在する遊離イソシアネートの最大量を蒸留して取り除くための蒸留条件下で不活性な高沸点炭化水素、好ましくはビチューメンと混合することができる(欧州特許出願公開第0548685(A2)号)。イソシアネートを大部分含有しない残留残渣を、易流動性固形物として排出し、焼却に送ることができる。この方法のデメリットとしては、方法とは無関係の物質(ビチューメン)の使用だけでなく、該方法が高温において高滞留時間を含むのでイソシアネートの重合による収率損失も挙げられる。
【0005】
欧州特許出願公開第0626368(A1)号に記載されている残渣処理の更なる方法は、水平軸を備えた加熱製品撹拌真空乾燥機(heated, product-agitating vacuum driers)の使用を特徴とする。例えば、ビチューメンの使用は、欧州特許出願公開第0548685(A2)号による方法の上記実施例のように、残留残渣は例えばセメント工事における燃料として使用することができる易流動性固形物として得られるという効果を有する。上記のものよりこの方法の優れた利点は収率の増加である。しかしながら、機械的可動部の使用は、速い摩耗および関連メンテナンス費用のリスクを抱える。このことは、後処理しようとする残渣が非常に高い粘性を有する場合に特に当てはまる。したがって、基本的に試用および試験であるにしても、機械的可動部を備えるこの種の乾燥装置の使用は必ずしも毎日の運転において挑戦的でないとは限らない。本発明は、とりわけ、このような挑戦に関する。
【0006】
本文献は、蒸留残渣を含んでなるイソシアネート蒸留塔底流は価値ある工業的に有用な物質を得るために化学的に転換される、例えば、トリレンジイソシアネートと、アルカノールアミン(米国特許第5,902,459号)またはジフェニルメタン系のイソシアネート類(独国特許出願公開第4211774(A1)号、米国特許第3,694,323号)との反応。
【0007】
特に、トリレンジイソシアネート(以後TDIと呼ぶ)の製造において、イソシアネート蒸留塔底流を、水を用いて加水分解して出発アミンを回収することは、既に長い間取り組まれてきた分野であり、米国特許第3,128,310号、米国特許第3,331,876号、英国特許出願公開第795,639号、独国特許出願公開第2703313(A1)号および欧州特許出願公開第1935877(A1)号に記載されている。これらの方法で不満足なことは、価値あるイソシアネート製品の一部は加水分解されて出発物質に戻り、再度ホスゲン化しなければならないことである。これは、蒸留塔底流中に存在するイソシアネートを、実行可能な物理的使用に出すが、蒸留塔底流からそれ自体としてイソシアネートを回収可能であることは望ましい。
【0008】
欧州特許出願公開第1413571(A1)号および欧州特許出願公開第1371633(A1)号は、とりわけ、底部製品中のTDI含有率低下をもたらす蒸留における分離壁型蒸留塔の使用によるTDIの後処理の最適化に関する。しかし、ここでもまた、イソシアネート含有蒸留塔底流が得られることを完全に防止することは可能でない。
【0009】
欧州特許出願公開第0017972(A1)号は、140~280℃の温度において流動床における蒸発濃縮によるトリレンジアミンのホスゲン化による、TDIおよび/またはTDI製造で生じる蒸留塔底流からの高沸点溶媒の分離方法を記載している。この方法では、導入デバイスによって流動床槽に導入された蒸留塔底流の液滴は最初に帯電された散布する粒子表面上に噴霧され、これは、価値ある製品の蒸発(TDIおよび/または溶媒)ならびに価値ある物質を含まない残渣の皿状ペレット形成をもたらす。このような造粒方法は、長いサイクル時間を有せず、特定の時間間隔後に中間洗浄の目的のために運転を停止しなければならない。これは、反応スペースの必要な不活化および高温のせいで、イソシアネート含有蒸留塔底流の後処理の本例にはデメリットであり、費用がかさむ問題である。
【0010】
国際公開第2014/009342(A1)号は、蒸留残渣含有塔底流からモノマーイソシアネート(すなわち、イソシアネート基を含有する望ましくない高分子量重合体とは対照的に、目標製品として望ましい製造しようとするイソシアネート)を得るための噴霧乾燥方法に関する。記載されている噴霧乾燥は、モノマーイソシアネートを大部分から完全に含まない乾燥残渣およびモノマーイソシアネートを含んでなる流れをもたらす。この方法を行うには専用反応器を必要とするので、概して、主要な修理なしで現存するイソシアネート製造工場に組込むことはできない。
【発明の概要】
【0011】
したがって、蒸留残渣だけでなく製造しようとするイソシアネートの一部を含んでなるイソシアネート蒸留塔底流の後処理の分野における更なる改良が望ましい。さらに詳細には、同様に工業的規模での連続式運転で、詳細には、残渣を含む蒸留塔底流の組成物を製造関連変法に付す場合に、収率損失およびメンテナンス費用を最小限にするために単純で機能的に安定であり経済的に、所望の目標製品、すなわち、製造しようとするイソシアネートを、蒸留塔底流から分離することが望ましい。このような改良された方法は、簡単に、従来技術の乾燥装置(例えば、言及された水平軸を備えた加熱製品撹拌真空乾燥機)を使用する既に現存する方法に組み込むことができることが望ましい。
【0012】
上記を考慮して、本発明は:
・製造しようとするイソシアネートと、
・任意で低沸点溶剤(特に溶媒)と、
・蒸留残渣と、
からなる蒸留塔底流の後処理であって、
前記蒸留塔底流は、製造しようとするイソシアネートを含んでなり、製造しようとするイソシアネートに対応する第一級アミンのホスゲン化により得られる液状粗処理生成物の後処理に由来し、蒸留塔底流の後処理は次の工程:
1)任意で、前記蒸留塔底流中に存在する製造しようとするイソシアネートを部分的に蒸発させることによりエバポレーター内の前記蒸留塔底流を前濃縮して製造しようとするイソシアネートが枯渇した前濃縮液体流を得る工程と、
2)前記蒸留塔底流または工程1)において得られた製造しようとするイソシアネートが枯渇した前濃縮液体流を、150℃~500℃の範囲、好ましくは185℃~300℃の範囲、より好ましくは200℃~270℃の範囲の温度において乾燥装置内で乾燥し、製造しようとするイソシアネートを蒸発および回収して固形処理生成物を得ることと、前記乾燥装置へ供給された前記蒸留残渣の総質量に対するカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率は少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%の値に調整する工程と、
を含む、後処理に関する。
【0013】
全く驚くべきことに、乾燥工程2)においてカルボジイミド基を含有する化合物の最小含有率を確立する本発明の手順は、-避けられない粘度上昇の結果として-蒸留残渣の徹底的乾燥と関連する乾燥装置からの機械的応力増加(例えば、軸を備えた乾燥装置におけるトルク上昇)を減らすまたは防止さえすることができ、これは、乾燥装置の運転安定性、したがって、方法全体の運転安定性に対する良好な効果を有する。
【発明の具体的説明】
【0014】
より詳細には、本発明は次の工程:
a)必要に応じて溶媒を使用して、製造しようとするイソシアネートに対応する第一級アミンをホスゲン化して製造しようとするイソシアネートを含んでなる液状粗処理生成物および塩化水素を含んでなるガス状粗処理生成物を得る工程と;
b)次の工程:
b.1)任意で、前記工程a)で得られた液状粗処理生成物から溶解されたホスゲンおよび溶解された塩化水素を分離して、ホスゲンも塩化水素も枯渇した液状処理生成物を得る工程と;
b.2)任意で、工程a)で得られた液状粗処理生成物または工程b)で得られたホスゲンも塩化水素も枯渇した液状処理生成物から溶媒を分離して、ホスゲンも塩化水素も溶媒も枯渇した液状処理生成物を得る工程と;
b.3)工程a)で得られた液状粗処理生成物または工程b.1)で得られたホスゲンも塩化水素も枯渇した液状処理生成物または工程b.2)で得られたホスゲンも塩化水素も溶媒も枯渇した液状処理生成物を蒸留して、製造しようとするイソシアネートの第一部分を含んでなる蒸留物流ならびに蒸留残渣、製造しようとするイソシアネートの第二部分および必要に応じて低沸点溶剤、特に溶媒からなる蒸留物底流を得る工程と、
を含み、前記工程a)で得られた液状粗処理生成物を後処理する工程と、
c)次の工程:
c.1)任意で、工程b)で得られた蒸留塔底流中に存在する製造しようとするイソシアネートの第二部分を部分的に蒸発させることによりエバポレーター内の工程b)で得られた蒸留塔底流を前濃縮して製造しようとするイソシアネートが枯渇した前濃縮液体流を得る工程と、
c.2)工程b)で得られた蒸留塔底流または工程c.1)で得られた製造しようとするイソシアネートの枯渇した前濃縮液体流を、150℃~500℃の範囲、好ましくは185℃~300℃の範囲、より好ましくは200℃~270℃の範囲の温度で乾燥装置内において乾燥する工程であって、製造しようとするイソシアネートを蒸発および回収して固形処理生成物を生成し、乾燥装置へ供給された蒸留残渣の総質量に対するカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率は少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%の値に調整される、工程と、
を含み、工程b.3)で得られた蒸留塔底流を後処理する工程と、
を含む、イソシアネートの製造方法を提供する。
【0015】
ここで、イソシアネートの製造方法の工程c)は、蒸留塔底流の上記後処理に相当し、イソシアネートの製造方法の工程c.1)およびc.2)は、蒸留塔底流の前記後処理の工程1)および2)に相当する。加えて、イソシアネートの製造方法の工程b)は、製造しようとするイソシアネートを含んでなり、蒸留塔底流が由来する、製造しようとするイソシアネートに対応する第一級アミンのホスゲン化により得られた液状粗処理生成物の後処理に相当する。
【0016】
以後、工程a)~c)を含む方法全体を参照して、より詳細に本発明は明らかになる。これは簡潔にするために行うのであって、これらの説明が方法全体に対して自動的に限定的意味を有するものと理解されるべきでない。
【0017】
本発明との関連で、「製造しようとするイソシアネートに対応する第一級アミン」は、存在する全NH2基をNCO基に変換した製造しようとするイソシアネートを与えるアミンを意味すると見なされる。
【0018】
本発明によれば、「蒸留塔底流」は、少なくとも製造しようとするイソシアネートおよび以後定義される蒸留残渣からなる。加えて、蒸留塔底流は、以後定義される低沸点溶剤も含んでなり得る。したがって、本発明によれば、蒸留塔底流は、2つの成分(製造しようとするイソシアネートおよび蒸留残渣)または3つの成分(製造しようとするイソシアネート、低沸点溶剤および蒸留残渣)からなる。
【0019】
本発明との関連で、「蒸留残渣」は、製造しようとするイソシアネートにも-仮にいずれか存在する場合-低沸点溶剤にもどちらにも割り当てることができない、工程b.3)の蒸留で得られた蒸留塔底流の比率を意味すると理解され、「低沸点溶剤」は、製造しようとするイソシアネートより低い、またはこのイソシアネートが異性体混合物の形態である場合(すなわち、TDI、2,6-TDIの場合)、製造しようとするイソシアネートの最も低い沸点の異性体より低い沸点を有する全物質もしくは共沸混合物を意味すると理解される。これとの関連で低沸点溶剤は、特に、工程a)から使用されるいずれかの溶媒である。底沸点第二成分の意味の低沸点溶剤は、概して、工程b.3)からの蒸留塔底流中に全く存在しないか、あるいは工程b.3)で得られた蒸留塔底流の総質量に対して、最大でも0.10質量%以下、好ましくは0.010質量%以下、より好ましくは0.0010質量%以下の微量含有率で存在する。蒸留残渣は、工程b.3)で選択された圧および温度条件下蒸発しないか、または全く分解することなく蒸発しない化合物を含有する。蒸留塔底流がその流動特性に関して良好な加工性を保持する(すなわち、あまり粘性にならず、堅くもならない)ために、製造しようとするイソシアネートは工程b.3)において完全に蒸留で取り除かれないので、その一部は蒸留塔底流に残留する。同様に、工程b.3)において(工程a)から)なお存在する溶媒を完全に蒸留で取り除くことはできず、工程b.3)で得られた蒸留塔底流の総質量に対して、10質量%以下、好ましくは1.0質量%以下の蒸留塔底流中の残留溶媒含有率を許す。蒸発し難い蒸留残渣中の化合物は、仮に、-これらが変化しないでホスゲン化過程を通過する使用された第一級アミン由来の不純物でない場合-高分子量のホスゲン化生成物であり、この構造はいまだに正確に知られていない。例えば、これらは、イソシアネート基による未重合アミン基の置換により使用されたアミンの重合生成物由来であり得る化合物であってよい。より高分子量のホスゲン化生成物は、工程b)において(更なる反応によっても)部分的に生成し得る。
【0020】
本発明によれば、これとの関連で、より高分子量のホスゲン化生成物は、蒸留塔底流において同様に蓄積し、本発明の用語では蒸留残渣の成分として見なされるべきである「カルボジイミド基を含有する化合物」を意味するとも考えられる。当業者に公知であるように、カルボジイミドは、構造特徴、式中RおよびR’が有機ラジカルである、R-N=C=N-R’を特徴とする有機化合物の物質群である。第一級アミンのホスゲン化は、二酸化炭素の脱離により製造しようとするイソシアネートからかかる化合物を生じさせることができる。ジアミンの場合、最も単純な考えられるカルボジイミドは、2つのジイソシアネート分子間の「N=C=N」架橋の形成により生成する。この場合、2つのRおよびR’ラジカルは、次に、遊離NCO官能基をなお含有する。これらが、製造しようとするイソシアネートまたは更なる遊離NCO官能基を有するカルボジイミドとさらに反応して、CO2を脱離する場合、複数の「N=C=N」架橋および高モル質量を有する構造物を生成する。
【0021】
したがって、工程c.2)における「乾燥装置へ供給された蒸留残渣の総質量に対するカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率」は3つまでの寄与率、すなわち、
(i)工程c.2)からの出発物質中に存在するカルボジイミド基を含有する化合物の質量(すなわち、工程b)で得られた蒸留塔底流または工程c.1)で得られた前濃縮液体流)、
(ii)カルボジイミド基を含有するいずれもの添加された化合物の質量、および
(iii)工程c.2)においてin situで生成されたカルボジイミド基を含有するいずれもの化合物の質量、
からの加算により求められる。
【0022】
本発明によれば、(i)、(ii)および(iii)の合計を工程c.2)の乾燥装置へ供給された蒸留残渣の総質量で割ったものは、少なくとも0.15、好ましくは少なくとも0.20、より好ましくは少なくとも0.30(少なくとも15質量%、好ましくは少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも30質量%に対応)であることに注意を払うべきである。連続式処理体制の場合、対応する毎時質量流量は基本となる。
【0023】
3つの成分(i)、(ii)および(iii)のたった1つが0でなく、本発明の要件を満たすのに充分に大きい場合には充分である。例えば、カルボジイミド基を含有する化合物の比率が処理連携(process bonds)(下記の更なる詳細参照)の適切な選択により0(またはほとんど0)において(i)および(iii)に起因するように、および外部供給源からカルボジイミド基を含有する化合物の添加によってのみ本発明の要件を満たすように維持することは可能である。しかし、(ii)に従ったかかる外部添加をなしで済ますこと、および(i)および/または(iii)に従って比率によってのみカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率に対する本発明の要件との適合性を満たすことも可能である。
【0024】
したがって、原則的に、下記のより詳細に明らかにされる3つの場合を区別することが可能である:
A. 工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程c.1)におけるカルボジイミド基を含有する化合物の生成を促進する処理条件を確立することと;
B. 別の操作(例えば、製造しようとするイソシアネートの熱的または触媒的に誘導されるカルボジイミド化により)において製造しようとするイソシアネートからカルボジイミド基を含有する化合物を製造し、このように製造されたカルボジイミド基を含有する化合物を工程c.2)の乾燥装置に供給することと;
C. 工程c.2)においてin situで(例えば、比較的高圧において実際の乾燥または乾燥の実施前に加熱により)カルボジイミド基を含有する化合物を生成することと。
【0025】
個別に、あるいは互いに関連して、ケースA、BおよびCは起こり得る。
【0026】
ケースAでは、出発物質による工程c.2)からこの工程に導入されたカルボジイミド基を含有する化合物の質量が蒸留残渣中の含有カルボジイミド基の最低質量比率に対する本発明の要件を満たすのに充分大きくなるように、工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程c.1)における処理条件を選択することは可能である。この場合、カルボジイミド基を含有する化合物の外部製造もin situ製造も必要ではない。
【0027】
同様に、場合Bでは、製造しようとするイソシアネートから別の操作でカルボジイミド基を含有する化合物を製造すること、および蒸留残渣中の含有カルボジイミド基の最低質量比率に対する本発明の要件を満たす量で、これらを工程c.2)へ供給することは可能である。この場合、ケースAに従った処理条件の確立もカルボジイミド基を含有する化合物のin situ製造も必要ではない。
【0028】
同様に、ケースCでは、工程C.2)においてin situで蒸留残渣中のカルボジイミド基を含有する化合物の最低質量比率に対する本発明の要件を満たすのに必要なカルボジイミド基を含有する化合物の全量を生成することは可能である。この場合、ケースAに従った処理条件の確立もカルボジイミド基を含有する化合物の外部製造も必要ではない。
【0029】
しかしながら、上述のケースA、BおよびCのうち2つまたは3つの組合せをもたらすことにより本発明により必要である蒸留残渣の総質量に対するカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率を確立することも可能である。
【0030】
ケースAのための適切な処理体制は、下記に詳細に明らかになる。工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程c.1)のために選択された条件が適切かどうかを検証するため、工程c.2)から乾燥しようとする出発物質中のカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率の決定が必要である。この目的のため、当業者は、様々な分析方法に精通しており、この全てを原則的に使用することができる。しかしながら、蒸留残渣中のカルボジイミド基を含有する化合物の最小質量比率に対する本発明の要件を満たすかどうかの評価に関する重要因子は、以後概要を述べられる手順である(「測定法IおよびII」)。
【0031】
まず第一に、工程c.2)へ送られる乾燥しようとする出発物質中のカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率を決定する。以後概要を述べられるように、IR分光法によってこれを行う(「測定法I」)。
【0032】
測定法I:
周囲温度まで冷却された工程c.2)からの検査しようとする出発物質の試料を、オルトジクロロベンゼン(以後ODBと呼ぶ)に溶解し(調製しようとするODB溶液の総質量に対する工程c.2)からの出発物質の試料の質量比率を20%に設定する)、1:1の比で分割する。溶解試料の一部を外界温度において15分間還流下沸騰させ(加熱温度190℃)、それから、水-氷浴中で間接的に冷却する。沸騰の結果、カルボジイミドが室温で存在する形態であるウレトンイミンが開裂し、カルボジイミドおよびイソシアネートに戻る。溶解試料の他の部分は変化ないままである。加熱処理試料をセル(セル内の試料の経路長150~200μm)に入れて、IR分光計の測定ビーム経路に置く。測定セルとして同じ層厚を有するセルに非加熱処理溶液を入れて、IR分光計の比較ビーム経路に置く。2600cm-1~1900cm-1の範囲のIRスペクトルを記録する。2140cm-1における吸光度(シグナルの高さ)を、2500cm-1~1900cm-1の範囲のベースラインに対して決定する。質量%のウレトンイミン含有率ω(UI)(製造しようとするイソシアネート2モルのカルボジイミド化により生成されるカルボジイミド1モルに対して製造しようとするイソシアネート1モルを添加することにより生成されるウレトンイミンのモル質量M(UI)[g/モル]を算出)を、次式:
ω(UI)=[E(2140cm-1)・M(UI)・100%]/[d・ε・a]
〔式中、M(UI)=上記定義通りウレトンイミンのモル質量g/モル(製造しようとするイソシアネートとしてTDIの場合、478);d=セル内の試料の経路長cm;ε=吸光度係数L/モル・cm;a=分析溶液濃度g/L〕
により算出する。
【0033】
ウレトンイミン1モルがカルボジイミド1モルおよび製造しようとするイソシアネート1モルから生成されるので、このように確認されたウレトンイミンの質量比率を、カルボジイミドの質量比率ω(CD)へ容易に換算することができる:
ω(CD)=ω(UI)・M(CD)/M(UI);
〔式中、M(CD)は製造しようとするイソシアネート2モルから生成されるカルボジイミドのモル質量g/モルに相当する(製造しようとするイソシアネートとしてTDIの場合、304)〕。
【0034】
このように確認されたω(CD)の値は、工程c.2)へ供給される出発物質中のカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率に相当する。本発明によれば、カルボジイミド基を含有する化合物の質量比率の定量化のための参照パラメーターは、工程c.2)の乾燥装置へ供給される蒸留残渣の総質量である。このように定義されたカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率を決定するため、工程c.2)へ供給される出発物質中の蒸留残渣の質量比率の定量化が必要である。この目的のための手順は次の通りである(「測定法II」):
【0035】
測定法II:
工程c.2)へ供給しようとする出発物質の試料の秤量した量を、先ず、液滴捕集装置(Reitmayer蒸留付属装置)を装備した実験室蒸留装置内に投入し、1.0ミリバール(mbar)の圧および250℃の加熱温度で蒸留する。30分後(圧および温度が前述の目標値に達した時点から測定)、加熱のスイッチを切り、装置を冷却する。得られた蒸留物および蒸留装置の投入フラスコ内に残っている試料の未蒸留部分を秤量する。本発明の用語では、試料の未蒸留部分は、本発明との関連で蒸留残渣であると見なされる。蒸留装置内に最初に投入された試料の既知質量と比較して、蒸留残渣の質量比率を、工程c.2)へ供給しようとする出発物質において定量的に決定する。この結果および測定法Iから得られたω(CD)の結果を用いて、蒸留残渣の総質量に対するカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率を算出することは容易に可能である。
【0036】
一旦、工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程c.1)のためにこのように適切な条件を固定したならば、連続式運転において工程c.2)からの出発物質の分析をなしで済ますことが原則的に可能である。しかしながら、一旦確認された結果を、時々、連続方式において特に少なくとも1×毎720時間、好ましくは少なくとも1×毎360時間、より好ましくは少なくとも1×毎180時間、最も好ましくは少なくとも1×毎90時間検証するようにコントロール試験を行うことが望ましい。
【0037】
ケースAが適用され、工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程c.1)における処理条件が、工程c.2)からの出発物質を経てこの工程に導入されたカルボジイミド基を含有する化合物の質量が蒸留残渣中の含有カルボジイミド基の最小質量比率に対して本発明の要件を満足するのに既に充分高い場合、工程c.2)におけるin situで更なるカルボジイミド基を含有する化合物を生成したかどうかは問われないので、(iii)由来のカルボジイミド基を含有する化合物の比率のいかなる測定もなしで済ますことが可能である(工程c.2)において化学的に期待されるカルボジイミド基を含有する化合物の比率の減少はない)。この場合、もちろん、(ii)に従ったカルボジイミド基を含有する化合物のいかなる添加もなしで済ますことができる。
【0038】
本発明によれば、この場合が適用されない場合、カルボジイミド基を含有する化合物が工程c.2)において充分な量で存在するいくつかの他の方法で保証されなければならない。
【0039】
ケースBでは、外部供給源からのカルボジイミド基を含有する化合物の添加によりこれを行うことができる。外部供給源からの添加物質中のカルボジイミド基を含有する化合物の重要な質量比率は、測定法Iにより決定されたものである。添加された物質の量およびその中のカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率に応じて、本発明の要求が満足されているかどうかは、蒸留残渣の定量化なしでさえ明白である(すなわち、蒸留塔底流が残渣から全体的になると想定しても、蒸留残渣の総質量に対する本発明により必要とされるカルボジイミド基を含有する化合物の最小質量比率を達成した場合)。もし蒸留残渣の定量化が必要であれば、測定法IIによる決定は重要である。
【0040】
同様に、適切な処理条件の選択により、カルボジイミド基を含有する化合物を工程c.2)においてin situで生成することを保証することは可能である。このケースCのための適切な処理体制は、下記に詳細に明らかになる。工程c.2)のために選択された条件がこの目的のために適しているかどうかを検証するため、工程c.2)からの乾燥のマスバランスを次の通りにモニターする(「測定法III」):
【0041】
測定法III:
工程c.2)の乾燥装置を、既知の質量比率(測定法IIにより決定)の蒸留残渣を含む乾燥しようとする出発物質と共に供給する。記載されている蒸留において測定法IIにより得られた蒸留物は、製造しようとするイソシアネートおよび必要に応じて低沸点溶剤(特に工程a)由来の溶媒)からなる。蒸留物の組成(製造しようとするイソシアネートに対する低沸点溶剤の比)は、ガスクロマトグラフィー(HP-5、30m*320μm*0.25μm、40~250℃、1~20℃/分、TCD検出器)により定量化する。
【0042】
カラム:アジレント社 19091J-413:1300.52926、HP-5、5%フェニルメチルシロキサン、325℃:30m×320m×0.25μm。
【0043】
加熱ランプ:開始温度40℃、それから1℃/分で45℃、それから20℃/分で250℃、250℃で5分間保持。
【0044】
溶出時間:20.25分。
【0045】
検出器:TCD(熱伝導度検出器)。
【0046】
この方法では、工程c.2)において乾燥しようとする出発物質からどれだけの製造しようとするイソシアネートが蒸発することができるかが確認される。工程c.2)において、製造しようとするイソシアネートは蒸発して固形処理生成物を生成し、回収される。製造しようとするイソシアネートの回収部分の質量(連続式処理体制における毎時質量流量)を確認し、上記の通り確認された出発物質により供給された製造しようとするイソシアネートの質量(連続式処理体制における毎時質量流量を含む)と比較する。本発明によれば、確認された質量差(連続式処理体制における毎時質量流量の差)はカルボジイミド基を含有する化合物形成に起因すると見なされ、この質量差を工程c.2)の乾燥装置へ供給された蒸留残渣の質量で割ったものは、該乾燥装置へ供給された蒸留残渣の総質量に対するカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率である本発明にとって絶対必要な値を与える。
【0047】
in situで生成されたカルボジイミド基を含有する化合物の量が蒸留残渣中の最小含有率に対して本発明の要件を満足するのに充分大きい場合、ケースAで記載されている測定法Iによる分析決定をなしで済ませることが可能である。一旦、工程c.2)のための適切な条件がこの方法で固定されたならば、工程c.2)において使用される乾燥装置の運転中in situで生成されるカルボジイミド基を含有する化合物の含有率の常時モニタリングをなしで済ませることは原則的に可能である。しかしながら、一旦確認された結果を、時々、連続方式において特に少なくとも1×毎720時間、好ましくは少なくとも1×毎360時間、より好ましくは少なくとも1×毎180時間、最も好ましくは少なくとも1×毎90時間検証するようにコントロール試験を行うことが望ましい。
【0048】
様々な可能性がある本発明の実施態様を、先ず以下に要約する:
【0049】
本発明の第一の実施態様では、溶媒の存在下で液相中ホスゲン化を行う。
【0050】
本発明の第二の実施態様では、気相中でホスゲン化を行い、該ホスゲン化は、製造しようとするイソシアネートを含んでなる生成されたガス状処理生成物を溶媒、製造しようとするイソシアネートならびに製造しようとするイソシアネートおよび溶媒の混合物からなる群から選択されるクエンチ液と接触させることにより冷却し、該製造しようとするイソシアネートを液状化するクエンチを含む。
【0051】
第二の実施態様の特定の構成である本発明の第三の実施態様では、クエンチ液は、溶媒ならびに製造しようとするイソシアネートおよび溶媒の混合物からなる群から選択される。
【0052】
溶媒の使用が想定される全実施態様の特定の構成である本発明の第四の実施態様では、この溶媒は、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンの異性体、トルエン、キシレンの異性体および前述した溶媒の混合物からなる群から選択される。
【0053】
同様に溶媒の使用が想定される全実施態様の特定の構成である本発明の第五の実施態様では、存在する低沸点溶剤は溶媒および第二成分からなり、蒸留塔底流の総質量に対する第二成分の質量比率は0.10質量%以下である。
【0054】
全ての他の実施態様と組合せることができる本発明の第六の実施態様は、工程1)を包含し、前濃縮を、120℃~180℃の範囲の温度および20ミリバール(絶対圧力)~60ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧において行う。
【0055】
全ての他の実施態様と組合せることができる本発明の第七の実施態様では、工程2)において使用される乾燥装置は、水平軸、回転管、円盤乾燥機、ベルト乾燥機および造粒スクリューを備える加熱製品撹拌真空乾燥機からなる群から選択される装置である。
【0056】
全ての他の実施態様と組合せることができる本発明の第八の実施態様では、本発明の方法は次の工程:
a)必要に応じて溶媒を使用して、製造しようとするイソシアネートに対応する第一級アミンをホスゲン化して製造しようとするイソシアネートを含んでなる液状粗処理生成物および塩化水素を含んでなるガス状粗処理生成物を得る工程と;
b)次の工程:
b.1)任意で、前記工程a)で得られた液状粗処理生成物から溶解されたホスゲンおよび溶解された塩化水素を分離して、ホスゲンも塩化水素も枯渇した液状処理生成物を得る工程と;
b.2)任意で、工程a)で得られた液状粗処理生成物または工程b)で得られたホスゲンも塩化水素も枯渇した液状処理生成物から溶媒を分離して、ホスゲンも塩化水素も溶媒も枯渇した液状処理生成物を得る工程と;
b.3)工程a)で得られた液状粗処理生成物または工程b.1)で得られたホスゲンも塩化水素も枯渇した液状処理生成物または工程b.2)で得られたホスゲンも塩化水素も溶媒も枯渇した液状処理生成物を蒸留して、製造しようとするイソシアネートの第一部分を含んでなる蒸留物流ならびに蒸留残渣、製造しようとするイソシアネートの第二部分および必要に応じて低沸点溶剤、特に溶媒からなる蒸留物底流を得る工程と、
を含み、工程a)で得られた液状粗処理生成物を後処理する工程と、
を含み、
前記工程b.3)で得られた蒸留塔底流は工程2)または工程1)および工程2)で後処理しようとする蒸留塔底流である。
【0057】
第八の実施態様の特定の構成から特に使用される本発明の第九の実施態様では、乾燥装置へ供給された蒸留残渣の総質量に対して、カルボジイミド基を含有する化合物の質量比率の調整は次の手段:
A. 工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程1)におけるカルボジイミド基を含有する化合物の生成を促進する処理条件を確立すること;
B. 別の操作において製造しようとするイソシアネートからカルボジイミド基を含有する化合物を製造し、このように製造された前記カルボジイミド基を含有する化合物を工程2)の前記乾燥装置に供給すること;
C. 工程2)においてin situでカルボジイミド基を含有する化合物を製造すること、
のうちの1つのみ、2つまたは全部によりもたらされる。
【0058】
第九の実施態様の特定の構成である本発明の第十の実施態様では、手段Aを含み、工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程1)におけるカルボジイミド基を含有する化合物の生成に有利な処理条件の調整は、それぞれの工程における温度の上昇および/またはそれぞれの工程を通過する処理生成物の滞留時間の増加によりもたらされる。
【0059】
同様に第九の実施態様の特定の構成であるが、第十の実施態様および/または下記に概説される第十四の実施態様と一緒に使用することもできる本発明の第十一の実施態様は、手段Bを含み、別の操作において製造しようとするイソシアネートからのカルボジイミド基を含有する化合物の製造は次のこと:
200℃~270℃の範囲の温度において触媒の非存在下で、
または
50℃~150℃の範囲の温度においてホスホレンオキシドの触媒の存在下で、
本発明の製造方法から製造しようとするイソシアネートを含有する処理生成物を加熱すること、を含む。
【0060】
第十および/または第十一の実施態様の特定の構成である第十二の実施態様では、特に手段C)をなしで済ませる場合、10ミリバール(絶対圧力)~250ミリバール(絶対圧力)の範囲、好ましくは20ミリバール(絶対圧力)~200ミリバール(絶対圧力)の範囲、より好ましくは30ミリバール(絶対圧力)~100ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧において、工程2)を行う。
【0061】
同様に第九の実施態様の特定の構成であるが、第十の実施態様および/または第十一の実施態様と一緒に使用することもできる第十三の実施態様は、手段Cを含み、工程2)の乾燥を、
最初に、>750ミリバール(絶対圧力)~1013ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧および200℃~270℃の範囲の温度での第一部分工程2.1)において、その後、10ミリバール(絶対圧力)~250ミリバール(絶対圧力)、好ましくは20ミリバール(絶対圧力)~200ミリバール(絶対圧力)、より好ましくは30ミリバール(絶対圧力)~100ミリバール(絶対圧力)および200℃~270℃の範囲の温度での第二部分工程2.2)において、
あるいは、
>250ミリバール(絶対圧力)~750ミリバール(絶対圧力)、好ましくは300ミリバール(絶対圧力)~650ミリバール(絶対圧力)、より好ましくは450ミリバール(絶対圧力)~550ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧および200℃~270℃の範囲の温度で、
行う。
【0062】
全ての他の実施態様と組合せることができる本発明の第十四の実施態様では、製造しようとするイソシアネートは、トリレンジイソシアネート、ナフチルジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびジイソシアナトジシクロヘキシルメタンからなる群から選択される。
【0063】
上記要約された実施態様および本発明の更なる可能性ある構成は、以後詳細に明らかになる。簡単にするために、工程a)~c)を含む方法全体(「本発明の第八の実施態様」)を参照するが、これは以後に要約される本発明の全ての可能性ある構成はこの第八の実施態様に制限されることを意味しないものとする。反対であることが文脈から当業者に明白でない限り、様々な実施態様は要望通りに互いに組合せることができる。
【0064】
工程a)では、先ず、製造しようとするイソシアネートを未精製の状態(すなわち、「製造しようとするイソシアネートを含んでなる液状粗処理生成物」として)で対応する第一級アミンのホスゲン化により得る。製造しようとするイソシアネートは、好ましくは、ジイソシアネート、より好ましくは、トリレンジイソシアネート(以後TDIと呼ぶ)、ナフチルジイソシアネート(以後NDIと呼ぶ)、ペンタン1,5-ジイソシアネート(以後PDIと呼ぶ)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(以後HDIと呼ぶ)、イソホロンジイソシアネート(以後IPDIと呼ぶ)、キシリレンジイソシアネート(以後XDIと呼ぶ)、およびジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(以後H12-MDIと呼ぶ)からなる群から選択されるジイソシアネートである。前述のイソシアネートに対応する第一級アミンは、トリレンジアミン(以後TDAと呼ぶ)、ナフチレンジアミン(以後NdAと呼ぶ)、ペンタン-1,5-ジアミン(以後PDAと呼ぶ)、ヘキサメチレン-1,6-ジアミン(以後HDAと呼ぶ)、イソホロンジアミン(以後IPDAと呼ぶ)、キシリレンジアミン(以後XDAと呼ぶ)およびジアミノジシクロヘキシルメタン(以後H12-MDAと呼ぶ)である。前述のアミンがその明示指定なしで異なる異性体で存在し得る場合、全ての異性体分布は本発明により包含される。対応する第一級アミンが様々な異性体の混合物として存在する場合、製造しようとするイソシアネートの異性体分布は、出発物質の異性体分布と本質的にまたは全体的に対応する。原則的に、概してこれは好ましくないが、前述のアミンの混合物を変換することも可能である。
【0065】
より好ましくは、本発明の方法を、TDAのホスゲン化によりTDIの製造のために使用する。いずれの場合にも存在し使用されるTDAの正確な異性体組成は本発明の方法にとって重要でない。典型的には、好ましく使用されるTDAは、2,4-および2,6-TDA異性体の総質量に対して、78.0質量%~82.0質量%の2,4-TDAおよび18.0質量%~22.0質量%の2,6-TDAを含んでなる。TDAの総質量に対して、2,4-および2,6-TDA異性体は、好ましくは、合計95.0質量%~100質量%、より好ましくは合計98.0質量%~100質量%を占める。
【0066】
対応するイソシアネートを与える第一級アミンのホスゲン化は原則的に公知であり、従来技術で公知の方法のいずれかにより行うことができる。例としては、次の参考文献に記載されている方法が挙げられる:Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 5th ed. Vol. A 19, S. 390 ff., VCH Verlagsgesellschaft mbH, Weinheim, 1991, G. Oertel (Ed.) Polyurethane Handbook, 2nd Edition, Hanser Verlag, Munich, 1993, p. 60 ff., G. Wegener et. al.、Applied Catalysis A: General 221 (2001), p. 303 to 335, Elsevier Science B.V., EP 1 369 412 A1,、欧州特許出願公開第1369412(A1)号、欧州特許第1754698(B1)号および欧州特許第0289840(B1)号。
【0067】
工程a)における第一級アミンおよびホスゲンの反応は、好ましくは次の通りに行う:
第一級アミンに対して化学量論的に過剰にホスゲンを使用する。液相中および気相中、特に気相中でホスゲン化を行うことができる。
【0068】
液相ホスゲン化の例は、独国特許第3744001(C1)号、欧州特許出願公開第0314985(A1)号、欧州特許出願公開第1369412(A1)号、独国特許出願公開第10260027号、独国特許出願公開第10260093号、独国特許出願公開第10310888号、独国特許出願公開第102006022448号、米国特許出願公開第2007/0299279号およびこれらのそれぞれの引用文献に記載されている。
【0069】
液相ホスゲン化として工程a)の好ましい実施態様では、手順は次の通りである:
第一級アミンおよびホスゲン共反応物を溶媒中に別々に溶解する。この目的に好ましい溶媒は、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンの異性体、トルエンおよび/またはキシレンの異性体である。特に好ましい溶媒は、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンであり;オルトジクロロベンゼンは、特に、製造しようとするイソシアネートとしてTDIとの組合せで非常に並外れて好ましい。第一級アミンを、好ましくは、溶液の総質量に対して、10質量%~40質量%、好ましくは10質量%~20質量%の濃度で使用する。ホスゲンを、好ましくは、溶液の総質量に対して、10質量%~40質量%、好ましくは25質量%~35質量%の濃度で使用する。
【0070】
第一級アミンおよびホスゲンの効率的な混合は、液相法において非常に重要である。この目的のため、静的混合機器(好ましくはノズル)および動的混合機器(機械的可動部を含む)を従来技術において使用する。混合後、混合された共反応物は反応ゾーンを通過して変換を完了する。混合機器および反応ゾーンを共通の反応器内に配置してもよい。ホスゲンを、好ましくは、4:1~1:1の範囲、より好ましくは3:1~1:1の範囲、最も好ましくは2:1~1:1の範囲の第一級アミノ基に対するホスゲンのモル比で、アミンの第一級アミノ基より化学量論的に過剰に使用する。
【0071】
液相ホスゲン化を、様々な温度および圧レベルで行うことができる。例えば、0℃~240℃、好ましくは20℃~240℃の範囲の温度、および1.0バール(bar)(絶対圧力)~70バール(絶対圧力)、好ましくは1.0バール(絶対圧力)~50バール(絶対圧力)の範囲の圧で液相ホスゲン化を行うことが可能である。
【0072】
反応の副産物として生成された塩化水素は、部分的に液相中に溶解し、部分的にガス放出する。気体の塩化水素と比較した溶解した塩化水素の比率の大きさは、選択された温度および圧レベルに依存する。いずれの場合にも、工程a)では、製造しようとするイソシアネートおよび溶媒を含んでなる液体流ならびに塩化水素およびいずれもの蒸発溶媒を含んでなる気体流を得る。化学量論量を超えてホスゲンを使用する場合、両方の流れは加えてホスゲンを含有する。両方の流れは、反応ゾーンから直接的に取り出すことができる。反応ゾーンから二相処理生成物(液相および気相を含んでなる)を取り出し、相分離のための装置に移動することもできる。この相分離を、気相および液雄の分離に適した当業者に公知の全ての装置で行うことができる。気液分離装置、例えば、サイクロン分離装置、偏向分離装置および/または静的分離補助のあるまたはない重力分離装置を使用するのが好ましい。同様に、塩化水素(および他のガス成分)のガス放出増量のせいで反応ゾーン内に存在する圧と比較して圧を低下させることにより相分離を支援することができる。この実施態様では、反応ゾーンから取り出された液体流または-存在する場合-相分離のための反応ゾーンの下流に連結された装置から取り出された液体流は、工程b)において実施しようとする後処理のための出発物質であり、本発明の用語では、この液体相は、「製造しようとするイソシアネートを含んでなる液状粗処理生成物」である。
【0073】
第一級アミンTDAの例を使用して、以後、液相ホスゲン化を詳細に概説する:
液相法では、必要に応じて上記規定された不活性溶媒中に既に溶解された、TDAを、-10℃~220℃、好ましくは0℃~200℃、より好ましくは20℃~180℃の範囲の温度で供給し、ホスゲンと混合する。ホスゲンを、-40℃~200℃、好ましくは-30℃~170℃、より好ましくは-20℃~150℃の範囲の温度において、溶媒なし、あるいは上記規定された溶媒の1つの溶媒中に溶解されたTDAとの混合部へ供給することができる。液相法において、必要に応じて上記規定された不活性溶媒の1つの溶媒中に既に溶解された、TDAおよびホスゲンの混合を、好ましくは、静的混合機または動的混合機によって行う。適切な静的混合機の例としては、例えば、独国特許出願公開第1792660号、米国特許第4,289,732号または米国特許第4,419,295号に記載されているようなノズルまたはノズル集成装置が挙げられる。適切な動的混合機の例としては、ポンプ様集成装置、例えば、遠心分離ポンプ(米国特許第3,713,833号参照)または特定のミキサー反応器(欧州特許出願公開第0291819号、欧州特許出願公開第0291820号、欧州特許出願公開第0830894号参照)が挙げられる。
【0074】
液相法において、下流反応ゾーンでの反応を、10秒~5時間、好ましくは30秒~4時間、より好ましくは60秒~3時間の範囲の反応ゾーンにおける反応混合物の平均滞留時間で、0℃~250℃、好ましくは20℃~200℃、より好ましくは20℃~180℃の範囲の温度、および100バール(絶対圧力)以下、好ましくは1.0バール(絶対圧力)~70バール(絶対圧力)の範囲、より好ましくは1.0バール(絶対圧力)~50バール(絶対圧力)の範囲の圧において行う。反応ゾーンにおける反応に関する、本発明により使用可能な処理体制の例は、例えば、米国特許出願公開第2007/0299279号(特に、7頁段落[0070]、[0071]、[0089])および独国特許出願公開第10310888号(特に5頁段落[0038]、[0039])ならびにそれぞれの引用文献に記載されている。
【0075】
気相ホスゲン化の例は、欧州特許出願公開第0570799(A1)号、欧州特許出願公開第1555258(A1)号、欧州特許出願公開第1526129(A1)号、および独国特許出願公開第10161384(A1)号、ならびに特に脂肪族イソシアネートに関して、欧州特許第0289840(B1)号、欧州特許第1754698(B1)号、欧州特許第1319655(B1)号および欧州特許第1362847(B1)号に記載されている。別の通例の液相ホスゲン化に対するこの方法の利点は、要求の厳しい溶媒およびホスゲン回路を最小限にすることによってもたらされる省エネルギーにある。
【0076】
気相ホスゲン化として工程a)の好ましい実施態様では、手順は次の通りである:
工程a.1)では、第一級アミンの気体流を提供する。この目的のために適した方法は、原則的に当業者に公知である。好ましい実施態様を以後に概説する。
【0077】
従来技術から公知の全ての蒸発装置、特に薄膜流下式蒸発装置で、第一級アミンを気相に変換することができる。高循環力を有する薄膜流下式蒸発装置全体にわたって少量の処理内容物を導くこれらの蒸発装置を使用することは好ましい。
【0078】
蒸発装置の正確な構成に関係なく、アミンに対する熱的応力を最小限にするため、N2、He、Arなどの不活性ガス(特にN2)または、脂肪族炭化水素[好ましくはデカヒドロナフタレン]、ハロゲン置換されていない芳香族炭化水素[好ましくはトルエンまたはキシレン、特にトルエン]、ハロゲン置換された芳香族炭化水素[好ましくはクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、クロロトルエンまたはクロロナフタレン、特にオルトジクロロベンゼン]、および前述の有機溶媒の混合物からなる群から好適に選択される不活性溶媒の蒸気を供給することにより、蒸発操作を支援することが好ましい。
【0079】
加えて、出発アミンの蒸発-および必要ならば過加熱(特に、200℃~430℃、好ましくは250℃~420℃、より好ましくは250℃~400℃の範囲の温度まで)を、好ましくは、気体アミン流中の未蒸発液滴を避けるために多段階で行う。液滴分離装置を蒸発および過加熱システム間に設置および/または蒸発装置が液滴分離装置の機能も果たす多段階蒸発および過加熱工程が特に好ましい。適切な液滴分離装置は当業者に公知である。
【0080】
工程a.2)では、気体ホスゲン流を提供する。好ましくは、1.1:1~20:1、より好ましくは1.2:1~5.0:1の第一級アミンに対するホスゲンのモル比を確立する。第一級アミンに関する上記のように、ホスゲンを、好ましくは、200℃~430℃、好ましくは250℃~420℃、より好ましくは250℃~400℃の範囲の温度まで加熱し、必要に応じて、N2、He、Arなどの不活性ガス(特にN2)または脂肪族炭化水素[好ましくはデカヒドロナフタレン]、ハロゲン置換されていない芳香族炭化水素[好ましくはトルエンまたはキシレン、特にトルエン]、ハロゲン置換された芳香族炭化水素[好ましくはクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、クロロトルエンまたはクロロナフタレン、特にオルトジクロロベンゼン]、および前述の有機溶媒の混合物からなる群から好適に選択される不活性溶媒の蒸気で希釈する。
【0081】
工程a.3)では、第一級アミンおよびホスゲン共反応物を混合ゾーンにおいて混合し、下流反応ゾーンにおいて変換する。別々に加熱したアミンおよびホスゲン共反応物を、ノズル集成装置により混合部および変換部に供給する。アミンおよびホスゲン反応物気体流の導入のためのノズル集成装置を、当業者に公知である様々な方法で構成してよく;例は、例えば、欧州特許第2199277(B1)号、段落[0017]~[0019]、欧州特許第1449826(B1)号、段落[0011]~[0012]、欧州特許第1362847(B1)号、段落[0011]~[0012]、欧州特許第1526129(B1)号、段落[0009]~[0011]および欧州特許第1555258(B1)号、段落[0008]~[0011]に見ることができる。
【0082】
第一級アミンの気体流および気体ホスゲン流を希釈する既に言及された選択肢と同様に、別の希釈用気体流(N2、He、Arなどの不活性ガス(特にN2)または脂肪族炭化水素[好ましくはデカヒドロナフタレン]、ハロゲン置換されていない芳香族炭化水素[好ましくはトルエンまたはキシレン、特にトルエン]、ハロゲン置換された芳香族炭化水素[好ましくはクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、クロロトルエンまたはクロロナフタレン、特にオルトジクロロベンゼン]、および前述の有機溶媒の混合物からなる群から好適に選択される不活性溶媒の蒸気を、工程a.3)の混合部に直接流すことも可能である。この場合、この希釈気体流を、好ましくは、100℃~500℃、好ましくは150℃~450℃、より好ましくは150℃~400℃の範囲の温度まで加熱する。
【0083】
混合ゾーン中で混合された第一級アミンおよびホスゲン共反応物の反応ゾーンにおける更なる変換を、好ましくは、断熱状態で行う。断熱変換は、熱搬送媒体により生成された反応熱の除去制御をなしで済ませることを意味する。したがって、-不可避的熱損失は別にしてー反応エンタルピーは、生成物気体流および反応物気体流の温度差に定量的に反映される。より詳細には、本発明は、工程a.3)を断熱的に行い、かつ、工程a.1)における第一級アミンの気体流および工程a.2)におけるホスゲン流の組成および温度は工程a.3)において250℃~450℃の範囲、好ましくは270℃~425℃の範囲、より好ましくは280℃~420℃の範囲の温度が混合ゾーンおよび反応ゾーンにおいて確立されるように各々選択する方法にも関する。これは、混合ゾーンおよび反応ゾーンにおいてどの点についても温度がこの範囲内であることを意味する。
【0084】
この場合、混合ゾーンおよび反応ゾーンを、好ましくは、化学反応を行うための通常の技術装置、反応器内に配置する。この集成装置では、混合ゾーンおよび反応ゾーンは、概して、-原理的にも可能である別の混合装置の使用の場合と同様に-2つの間の厳密な限界の可能性のない流体遷移を有する。反応物の混合後の反応ゾーンは、最大変換を保証するために遅延時間を提供する働きをする。適切なホスゲン化反応器の構成の詳細は当業者に公知である。
【0085】
反応ゾーンでは、好ましくは上記の通り断熱状態で、アミンおよびホスゲンを対応するイソシアネートに迅速に変換する。反応を、好ましくは、上記に詳細に記載されているクエンチゾーンに入る前にアミンが完全に変換されるように行う。
【0086】
工程a.4)では、製造しようとするイソシアネートを含んでなる生成された気体処理生成物の急冷および液状化(気相中の残る微量な内容物は別にして)(「クエンチ」)を、クエンチゾーンにおいてクエンチ液と接触させることにより行う。適切なクエンチ液は、(有機)溶媒、製造しようとするイソシアネートならびに製造しようとするイソシアネートおよび(有機)溶媒の混合物であり、特に溶媒ならびに製造しようとするイソシアネートおよび(有機)溶媒の混合物である。クエンチ用溶媒は、好ましくは、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンの異性体、トルエン、キシレンの異性体および前述した溶媒の混合物からなる群から選択される。特に好ましい溶媒は、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンであり;オルトジクロロベンゼンは、特に、製造しようとするイソシアネートとしてTDIとの組合せで非常に並外れて好ましい。接触を、好ましくは、クエンチ液を反応生成物混合物の気体流中に注入することにより行う。
【0087】
クエンチゾーンの構成および操作のための選択肢は、原則的に従来技術から公知である。従来技術の装置および方法を、本発明との関連で使用することもできる。クエンチゾーンの可能性のある構成は、例えば、欧州特許出願公開第1403248(A1)号および欧州特許出願公開第1935875(A1)号に開示されている。
【0088】
工程a.4)において使用されるクエンチ液の温度は、好ましくは、イソシアネートに対応する塩化カルバモイルをイソシアネートおよび塩化水素へ開裂するのに第一に充分に高いように選択される。(液相ホスゲン化から公知の塩化カルバモイル中間体が気相ホスゲン化においても生成されるかどうかは全く確かなものではない。しかしながら、液状化されたイソシアネートはクエンチ部に存在する塩化水素ガスと部分的に反応して塩化カルバモイルを得ることは独立的にあり得るので、クエンチ液の温度はこの反応を抑制するのに充分高くあるべきである。)一方、イソシアネートおよび気体アミン流および/または気体ホスゲン流において希釈剤として付加的に使用されるいずれかの溶媒は、非常に大幅に濃縮すべきか、または非常に大幅に溶媒に溶解すべきであるが、過剰なホスゲン、塩化水素および希釈剤として付加的に使用されるいずれかの不活性ガスは選択されたクエンチ液の温度も高くなりすぎないように非常に大幅に濃縮しないでかつ溶解しないでクエンチゾーンを通過する。気体反応混合物からイソシアネートを選択的に得るのに特に良好に適したクエンチ液は、50℃~200℃、好ましくは80℃~180℃の温度で維持されるものである。
【0089】
所与の温度、圧および組成において、どんな質量比率のイソシアネートがクエンチ部において濃縮し、どんな割合が濃縮しないで通過するかは、物理的データに基づいて当業者には容易である。同様に、どんな質量比率のホスゲン、塩化水素、いずれかの溶媒および希釈剤として使用されるいずれかの不活性ガスが濃縮しないでクエンチ部を通過し、どんな割合がクエンチ液に溶解するかを予測することは容易である。したがって、気相中でこのように得られた反応生成物混合物およびクエンチ液の混合物は、気体成分および液体成分を含有する、すなわち、二相である。
【0090】
工程a.5)では、工程a.4)において得られた反応生成物混合物およびクエンチ液の二相混合物を、相分離のために回収ゾーンに導く。
【0091】
好ましい実施態様では、混合ゾーン、反応ゾーン、クエンチゾーンおよび回収ゾーンは、直立、特に、円錐形もしくは円筒形または円錐-円筒形反応器において上部から下方に前記順番で配置される。この実施態様では、工程a.4)において得られた反応生成物混合物およびクエンチ液の混合物は、重力下(すなわち、「自動的に」)回収ゾーンに流れる。回収ゾーンの別の配置では、反応生成物混合物およびクエンチ液の混合物をポンプで回収ゾーンに送ることがいくつかの環境下必要となり得る。
【0092】
回収ゾーンでは、工程a.4)において得られた反応生成物混合物およびクエンチ液の混合物の、液状粗処理生成物および気体粗処理生成物への分離が行われる。液状粗処理生成物は、少なくとも製造しようとするイソシアネート(およびクエンチ液として使用されたいずれもの溶媒、いずれもの副産物または共反応物により導入された未反応不純物、化学量論的に過剰な量で使用された溶解ホスゲンおよび溶解塩化水素)を含んでなる。気体粗処理生成物は、少なくとも塩化水素副産物(および化学量論的に過剰な量で使用されたホスゲン、いずれもの蒸発溶媒、いずれもの不活性ガスおよびいずれもの非液状化した製造しようとするイソシアネート)を含んでなる。液相および気相は、好ましくは、回収ゾーンから連続的に引き出される。この実施態様では、このように得られる液相は、工程b)において行われようとする後処理からの出発物質であり、この液相は製造しようとするイソシアネートを含んでなる液状粗処理生成物であることを意味する。
【0093】
工程a)におけるホスゲン化後、工程b)では、製造しようとするイソシアネートを含んでなる得られた液状粗処理生成物を後処理する。粗イソシアネートを、通常の公知の方法により後処理することができる。例は、欧州特許出願公開第1413571号、米国特許出願公開第2003/0230476(A1)号(TDI)、および欧州特許第0289840(B1)号(HDI、IDPIおよびH12-MDI)に記載されている。
【0094】
任意で、分離工程b.1)では、溶解ホスゲンおよび溶解塩化水素を、先ず、工程a)で得られた液状粗処理生成物から分離する。この処理体制は、液相ホスゲン化で得られた液状粗処理生成物は気相ホスゲン化で得られたものより、著しく高い比率の溶解ホスゲンおよび溶解塩化水素を含有する傾向にあるので、工程a)におけるホスゲン化を液相中で行う場合に特に好ましい。工程b.1)を、原則的に、当業者に公知のいずれもの方法、特に、蒸留、吸収または2つの組合せにより行うことができる。可能性ある実施態様を、異なる変法を参照して下記に示す。
【0095】
工程b.1)または工程a)直後-特に、気相中工程a)を行う場合に-分離工程b.2)において溶媒を除去してよい。工程b.2)を、当業者に公知のいずれもの方法、特に、蒸留より行うことができる。可能性ある実施態様を、異なる変法を参照して下記に示す。
【0096】
本発明の方法の工程b.3)では、製造しようとするイソシアネートは蒸留により単離する。これは、原則的に、この目的のための当業者に公知のいずれもの方法で行うことができる。可能性ある実施態様を、異なる変法を参照して下記に示す。
【0097】
詳細な工程b)における後処理の構成のため、様々な実施態様が可能である。以後に、好ましい変法をTDIの例を使用して概説する:
【0098】
変法1
特に、工程a)が液相中で行われる場合に適した変法1は、原則的に、TDI/MDIのためのChem System’s PERP Report(Chem Systems, Process Evaluation Research Planning TDI/MDI 98/99 S8, Tarrytown, N.Y., USA: Chem Systems 1999, p. 27 to 32)に記載されている。この変法では、塩化水素およびホスゲンの蒸留除去完了(本発明の用語において工程b.1)に相当する)時の液体反応混合物は、この総質量に対して、>50質量%、好ましくは51質量%~85質量%、より好ましくは55質量%~65質量%の溶媒含有率をなお含有する。この混合物を溶媒除去に送り(本発明の用語において工程b.2)に相当する)、溶媒-TDI混合物を先ず予備エバポレーター中の溶媒蒸留塔中に蒸留する。溶媒蒸留塔では、溶媒を蒸留し、プロセスに送り戻す。この溶媒蒸留からの塔底流は、TDIと同様に塔底の総質量に対して、特に好ましくはこの塔底流の総質量に対して15質量%~25質量%の溶媒を含有する。この流れを、更なる溶媒が蒸留され、溶媒を取り除かれた塔底生成物がTDIの精製のために最終蒸留塔に送られる中間塔と呼ばれるところに導く。後者を減圧下で操作し、蒸留物流として精製された販売可能なイソシアネートTDIを得る(本発明の用語において工程b.3)に相当する)。TDIの部分は、この最終蒸留塔からの蒸留塔底流中に残る。中間塔およびTDI精製のための蒸留塔の機能は、米国特許出願公開第2003/0230476(A1)号に記載されているように、隔壁塔中に組み合わせてもよく、低沸点溶剤および溶媒の蒸気流、隔壁領域に抜き取られた蒸留物流としての精製TDIの分画、ならびに蒸留塔底流としてのTDIを含んでなる製品流およびより高沸点成分(蒸留残渣)を得る。TDI精製のための蒸留塔または中間塔およびTDI精製塔を組合せた隔壁塔からの蒸留塔底流を
後処理してTDIを回収する。この目的のため、前記PERP System Reportの
図II.A.5に示されているように、この流れをこの溶媒蒸留の予備エバポレーター中に導くことが可能である。それから、この予備エバポレーターからの塔底生成物を
後処理に導いてその中に存在するTDIを回収する。TDI/MDIのためのChem System’s PERP Report(Chem Systems, Process Evaluation Research Planning TDI/MDI 98/99 S8, Tarrytown, N.Y., USA: Chem Systems 1999, p. 27 to 32)中の
図II.A.6に示されている「TDI Residue Processing Facility」における特徴は、本発明の工程c)により置き換えることができる。この実施態様では、工程b.3)からの蒸留塔底流を工程b.2)から溶媒を除去するための予備エバポレーターへ供給した結果として、工程c)へ供給された出発物質が溶媒をなお含有する(すなわち、この出発物質の総質量に対して特に2.0質量%~10質量%の溶媒)ので、工程c.1)を行い、工程c.2)における乾燥前にその中のこの溶媒を分離して取り除くことが好ましい。工程b.3)からの蒸留塔底流を予備エバポレーターへ供給しないで済まし、代わりに、この蒸留塔底流を工程c)の
後処理に直接供給することも可能であると考えられるだろう。
【0099】
変法2
変法1とは対照的に、この実施態様では、塩化水素およびホスゲンの蒸留除去完了時、液体反応混合物は、その総質量に対して、≦50.0質量%の溶媒含有率しか含有しない。この混合物を予備エバポレーターに送り、ここから溶媒-TDI混合物を蒸留塔内で蒸留する。この変法では、TDIは既に後の蒸留塔内で溶媒を含まないので、この蒸留塔からの塔底流をTDI精製塔へ導くことができ;したがって、この変法では、変法1より少ない1つの塔がある。減圧下でTDI精製塔を運転し、蒸留物流として精製された販売可能なイソシアネートTDIを得る。TDI精製塔およびその蒸留塔上流の機能は、欧州特許出願公開第1413571(A1)号に記載されているように、隔壁塔中に組み合わせてもよく、低沸点溶剤および溶媒の蒸気流、隔壁領域に抜き取られた蒸留物流としての精製TDIの分画、ならびに蒸留塔底流としてのTDIを含んでなる製品流およびより高沸点成分(蒸留残渣)を得る。TDI精製塔からの蒸留塔底流またはTDI精製塔およびその蒸留塔上流を組合せた隔壁塔からの蒸留塔底流をTDI回収のために後処理する。同様に、変法2では、この後処理を、本発明の工程c)に従って行うことができる。この目的のため、この流れを上記予備エバポレーターへ導くことが可能である。それから、この予備エバポレーターからの塔底生成物を後処理に導いてその中に存在するTDIを回収する。この実施態様では、蒸留塔底流を、溶媒を除去するための予備エバポレーターへ供給した結果として、工程c)へ供給された出発物質が溶媒をなお含有する(すなわち、この出発物質の総質量に対して特に2.0質量%~10質量%の溶媒)ので、工程c.1)を行い、工程c.2)における乾燥前にその中のこの溶媒を分離して取り除くことが好ましい。工程b.3)からの蒸留塔底流を予備エバポレーターへ供給しないで済まし、代わりに、この蒸留塔底流を工程c)の後処理に直接供給することも可能であると考えられるだろう。
【0100】
変法3
変法3は、変法2および1で説明したが、いずれの場合も言及された予備エバポレーターを使用しない蒸留シーケンスを含み、工程c)における後処理から液体塔底排出物を供給される。この場合、記載されている蒸留シーケンスにおける蒸留残渣の一部は、それぞれの最終TDI精製塔に至るまでの液体質量流中に含まれる。同様にこの方法は原則的に公知である(欧州特許出願公開1717223(A2)号)。この場合、蒸留残渣の完全な排出を、最終蒸留塔の蒸留塔底流により行う(本発明の用語では工程b.3)とも呼ぶことができる)。同様に変法3では、この蒸留塔底流の後処理を本発明の工程c)に従って行うことができる。
【0101】
変法4
特に工程a)を気相で行う場合に、この変法を使用する。気相ホスゲン化で得られた液状粗処理生成物は溶解ホスゲンおよび溶解塩化水素を最大でも比較的(すなわち、液相ホスゲン化と比較して)少量含有するので、工程b.1)において塩化水素およびホスゲンの分離除去をしないで済ますことが可能である。液状粗処理生成物を、直接的に、蒸留オーバーヘッドにより溶媒および溶解塩化水素ならびに溶解ホスゲンを除去する溶媒除去(工程b.2)に相当)に直接送るか、あるいは-溶媒含有率が充分に低い場合-TDI精製塔へ直接送る。いずれにしても、TDI精製塔を、好ましくは、隔壁塔として構成する。低沸点溶剤(すなわち、TDIより底沸点副産物、なお存在する塩化水素およびホスゲン、いずれもの溶媒およびいずれもの不活性ガス)を蒸気オーバーヘッドとして抜き取る。隔壁の領域内で蒸留物流として精製TDIを取り出す。得られた蒸留塔底流は、蒸留残渣および蒸留塔底流を処理可能に保持するために蒸留していない所定量にTDI、ならびにおそらく微量の溶媒を含んでなる。隔壁塔よりむしろ、隔壁を備えない2系統を連結した蒸留塔を使用することももちろん可能である。
【0102】
この変法では、-行う場合-工程b.2)における溶媒除去を、好ましくは、160℃~200℃の範囲の温度および160ミリバール~220ミリバールで行い、両方の数値は、使用される蒸留塔からの塔底と関係している。この方法では、その総質量に対して、好ましくは9質量%~20質量%の溶媒、79質量%~90質量%のTDIおよび1質量%~5質量%のTDIより高沸点化合物を含有する塔底流を得る。
【0103】
工程b.3)において、特に隔壁塔において行う場合に、TDI精製を、好ましくは、160℃~200℃の範囲の温度および50ミリバール~100ミリバールの範囲の圧で行い、両方の数値は使用される蒸留塔からの塔底と関係している。この方法では、その総質量に対して、好ましくは0.00質量%~1.00質量%の溶媒、80.0質量%~95.0質量%のTDIおよび4.00質量%~20.0質量%のTDIより高沸点化合物を含有する蒸留塔底流を得る。
【0104】
工程b)の正確な構成と関係なく、工程b.3)では、全ての可能な処理体制において、製造しようとするイソシアネートの第一部分を含んでなる(少なくとも)1つの蒸留物流ならびに製造しようとするイソシアネートの第二部分および蒸留残渣を含んでなる(少なくとも)1つの蒸留塔底流を得る。蒸留塔底流の後処理は本発明の工程c)の主題であり、下記で詳細に明らかになる。変法1および2で明らかなように、工程c)に更なる塔底流と、工程b.3)からの蒸留塔底流を供給することも可能である。
【0105】
液状粗処理生成物と同様、この後処理を上記概説したが、工程a)では、気体粗処理生成物も得て、これは、好ましくは同様に、経済的に実行可能な利用に生成された塩化水素共生成物を送るために後処理される。気体粗処理生成物は、少なくとも塩化水素副産物(および化学量論的に過剰な量で使用されたホスゲン、いずれもの蒸発溶媒、いずれもの不活性ガスおよびいずれもの非液状化した製造しようとするイソシアネート)を含んでなる。この気体製品流を、好ましくは、塩化水素を精製する更なる後処理に送る。気体流中になお存在するホスゲンおよび溶媒成分を分離する。回収された塩化水素を、様々な可能な使用、例えば、エチレンを二塩化エチレンにオキシ塩素化する、またはイソシアネート処理に再利用して戻すことができる塩素を得る再利用方法に送ることができる。これらの再利用方法としては、例えば、ディーコン法、気体塩化水素の電気分解および塩化水素水溶液(塩酸)の電気分解による塩化水素の触媒酸化が挙げられる。回収されたホスゲンを、好ましくは、工程a)において再利用する。回収されたいずれもの溶媒を、好ましくは、同様に工程a)において再利用する(例えば、液相ホスゲン化または気相ホスゲン化のクエンチにおける第一級アミンおよびホスゲン共反応物のための溶媒として)。
【0106】
工程b.3)で得られた蒸留塔底流の後処理は、本発明の方法の工程c)(工程c.1)およびc.2))の主題である。この蒸留塔底流は、(可能な限り遠くで回収しようとする)製造しようとするイソシアネートの一部および溶媒の一部に加えて、蒸留残渣からなる。
【0107】
工程c.1)において第一に蒸留塔底流を前濃縮、すなわち、残留液体流の固化なしで蒸発することにより製造しようとするイソシアネートを既に部分的に分離することが好ましい。部分的蒸発によるこの前濃縮を、原則的に、当業者に公知のいずれものエバポレーターで行うことができる。より好ましくは、工程c.1)を、薄膜蒸発装置、上昇薄膜蒸発装置、薄膜流下式蒸発装置、長尺管蒸発装置、らせん管蒸発装置、強制循環型フラッシュエバポレーターおよびこれらの装置の組合せからなる群から選択される蒸発装置で行う。この中で、特に好ましいのは薄膜流下式蒸発装置である。複数の蒸発装置を直列に連結することも可能である。工程c.1)における前濃縮を、好ましくは、120℃~180℃の範囲の温度および20ミリバール(絶対圧力)~60ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧、より好ましくは130℃~175℃の範囲の温度および25ミリバール(絶対圧力)~45ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧で行う。工程c.1)を連続式でもバッチ式でも行うことができる。連続式処理体制が好ましい
【0108】
工程c.2)では、本発明によれば、製造しようとするイソシアネートの枯渇し、工程c.1)で得られる前濃縮液体流または-工程c.1)をなしで済ませる場合-工程b.3)で得られた蒸留塔底流を乾燥する。この乾燥を、乾燥装置内において、150℃~500℃の範囲、好ましくは185℃~300℃の範囲、より好ましくは200℃~270℃の範囲の温度で行う。工程c.2)に適した乾燥装置は、好ましくは、水平軸(好ましくは、混練機-乾燥機、パドル乾燥機、シャベル乾燥機;言及した乾燥機の各々はまさに一軸または多軸、特に二軸を有し得る)、回転管、円盤乾燥機、ベルト乾燥機および造粒スクリューを備える加熱製品撹拌真空乾燥機からなる群から選択される。乾燥では、製造しようとするイソシアネートを蒸発させ、回収する。残るものは、実質的に蒸留残渣のみからなり、最大でも微量(いずれの場合も工程c.2)で得られた固形物の総質量に対して、好ましくは1.0質量%以下の製造しようとするイソシアネート、より好ましくは0.1質量%以下の製造しようとするイソシアネート)の製造しようとするイソシアネートをなお含有する固形物である。固形物は、好ましくは乾燥装置から連続式で排出する。
【0109】
本発明によれば、工程c.2)において乾燥部に導入された蒸留残渣の総質量に対するカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率は、少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%の値に調整する。これを次の通り行うことができる:
【0110】
ケースA:工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程c.1)における処理条件は、カルボジイミド基を含有する化合物の生成を促進し、出発物質を経て工程c.2)からこの工程に導入されたカルボジイミド基を含有する化合物の質量が蒸留残渣中の含有するカルボジイミド基の最小質量比率に対する本発明の要求が満たされるのに充分に大きくなるように特に選択される。
【0111】
ケースAは、特に、工程a)におけるホスゲン化を液相で行う場合に好ましい。カルボジイミド基を含有する化合物の生成を、高温によって促進する。したがって、工程a)および/または工程b)および/または(実施される場合には)工程c.1)において、-各々、不充分なカルボジイミド生成を含む運転状態との比較によって-温度上昇および/または滞留時間の増加は、カルボジイミド基を含有する化合物の比率を増大し得る。温度上昇および/または滞留時間増加しなければならない程度を、簡単な予備試験によって当業者により容易に決定することができる。
【0112】
ケースB:カルボジイミド基を含有する化合物を、製造しようとするイソシアネートと別の方法で製造し、特に本発明の要求を満たす量で工程c.2)に送る。このケースは、特に、工程a)を気相で行う場合に好ましい。
【0113】
本発明の1つの実施態様では、高温、特に200℃~270℃の範囲の温度において、特に30分~10時間の時間、カルボジイミド基を含有する化合物を本発明の製造方法(特に、工程b.3)で得られた蒸留物流の部分または(実施される場合には)ホスゲンも、塩化水素も、工程b.2)で得られた溶媒も枯渇した液状処理生成物の一部)から製造しようとするイソシアネートを含有する処理生成物を加熱処理することにより製造する。純粋な熱処理よりむしろ、カルボジイミド化を触媒的に誘導することもできる。適した触媒は、特に、ホスホレンオキシド系の触媒である。本発明との関連で、ホスホレンオキシド系触媒は、リン原子上で置換された1-オキソホスファシクロペンテン類、シクロC4H6P(O)R、式中、Rは飽和または非飽和、必要に応じて置換、特にハロゲン置換、有機ラジカル、特にメチルまたはフェニルである、を意味すると理解される。ホスホレンオキシド系触媒は公知であり、例えば、欧州特許出願公開第0515933号および米国特許第6,120,699号に記載されている。これらの触媒の典型例は、特に、式:の従来技術から公知のホスホレンオキシドの混合物である:
【0114】
【0115】
いずれの場合も必要な触媒量は、予備試験で単純に当業者により確認することができる。触媒の存在下におけるカルボジイミド化を、好ましくは、50℃~150℃の範囲、好ましくは60℃~100℃の範囲の温度で行う。記載されているように、熱的または触媒的に誘導されたカルボジイミド化に付される、工程b.3)で得られた蒸留物流または(実施される場合には)ホスゲンも、塩化水素も、工程b.2)で得られた溶媒も枯渇した液状処理生成物の比率を、ルーチンな実験により当業者により容易に決定することができる。工程b.3)で得られた蒸留物流の残留部分を、通例の方法でさらに使用する(例えば、販売、ポリウレタンへの変換、プレポリマーへの変換、他のイソシアネートと配合して配合物を得るなど)。使用される、ホスゲンも、塩化水素も、工程b.2)で得られた溶媒も枯渇したいずれもの液状処理生成物の残留部分を、工程b.3)において蒸留する。カルボジイミド化が終わった後に得られた処理生成物を、工程c.1)で得られた前濃縮液体流または-工程C.1)をなしで済ました場合-工程c.2)からの乾燥装置へそれを供給する前に工程b.3)で得られた蒸留塔底流と混合するか、またはカルボジイミド化が終わった後に得られた処理生成物を別の入口スタブによりこの乾燥装置へ供給する。
【0116】
別の実施態様では、カルボジイミド化イソシアネートを、同じ製造しようとするイソシアネートのための別の製造方法から得る。例えば、工程b.3)からの蒸留塔底流もしくは製造条件がカルボジイミド基を含有する化合物の生成を全体的もしくは部分的に促進する製造工場からの工程c.1)からの前濃縮液体流を、製造条件がカルボジイミド基を含有する化合物の生成を阻害する別の製造工場からの対応する流れと混合、または後者の製造工場においてこれを工程c.2)に直接供給することが可能である。
【0117】
工程c.2)の乾燥をケースCについて以後に詳細に概説される2つの実施態様のうち1つに従って行わない場合、工程c.2)からの乾燥装置内の圧を、この工程の期間、10ミリバール(絶対圧力)~350ミリバール(絶対圧力)の範囲、より好ましくは20ミリバール(絶対圧力)~200ミリバール(絶対圧力)の範囲、最も好ましくは30ミリバール(絶対圧力)~100ミリバール(絶対圧力)の範囲内に維持することが好ましい。したがって、これは、ケースAおよびBの全ての考えられる組合せに当てはまる。
【0118】
ケースC:カルボジイミド基を含有する化合物を、特に、本発明の要件を満たすのに充分な量で、工程c.2)においてin situで生成する。これを2つの方法で行うことができる。2つの好ましい実施態様を以後に概説する。
【0119】
第一の実施態様では、工程c.2)における乾燥を、後の工程で(at a later juncture)、第二部分工程c.2.2)において圧が低下する前に比較的高圧において第一部分工程c.2.1)において先ず行う。この方法で可能であることは、「実際の」乾燥運転実行前に、カルボジイミド基を含有する化合物を低圧で第二部分工程において充分な量で生成することである。工程c.2)の連続的に実施する場合、部分工程c.2.2)を、好ましくは、部分工程c.2.1)のための装置の下流に連結された専用装置で行う。この実施態様の工程c.2)の第一部分工程を、好ましくは、>750ミリバール(絶対圧力)~1013ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧および200℃~270℃の範囲の温度において、特に30分~10時間の時間行う。その後、第二部分工程における圧を、10ミリバール(絶対圧力)~250ミリバール(絶対圧力)、好ましくは20ミリバール(絶対圧力)~200ミリバール(絶対圧力)、より好ましくは30ミリバール(絶対圧力)~100ミリバール(絶対圧力)の範囲の値まで低下させる。温度は、好ましくは、第一部分工程と同じ範囲(すなわち、200℃~270℃の範囲)であり、より好ましくは、第一部分工程における温度と比較して変わらない。第二部分工程を、好ましくは、30分~360分の時間行う。高圧相から低圧相への遷移は、圧のゆっくりとした低下で連続的であってもよい。
【0120】
第二の実施態様では、(全)工程c.2)にわたって、カルボジイミド基を含有する化合物の充分な生成および蒸留塔底流の乾燥の両方を可能とする圧を維持する。この実施態様では、工程c.2)は、好ましくは、>250ミリバール(絶対圧力)~750ミリバール(絶対圧力)、好ましくは300ミリバール(絶対圧力)~650ミリバール(絶対圧力)、より好ましくは450ミリバール(絶対圧力)~550ミリバール(絶対圧力)の範囲の圧である。言い回し「(全)工程c.2)にわたって」は、もちろん、所望の目標圧を言及した範囲内に直ぐには確立しないが、例えば、加熱相の後である実施態様も包含する。(全圧範囲に対する)温度は、好ましくは、200℃~270℃の範囲である。この実施態様では、工程c.2)を、好ましくは、30分~600分の時間行う。
【0121】
ケースC)では、in situでのカルボジイミド化による製造しようとするイソシアネートの特定の収率損失は避けられない。しかしながら、機能的に安定な乾燥を結果として達成することができる場合、このメリットは、この避けられないデメリットより上回る。
【0122】
好ましい実施態様では、工程c.2)において、粘着性のない乾燥残渣粒子の形成を促進するために、分離剤を添加する。ケースA、BまたはCであるかどうかに関わらずこれは当てはまる。かかる分離剤は、反応器の温度において粘着性でない、すなわち、くっつき合ってより大きなアグロメレートを形成せず、イソシアネートと反応せず、元の蒸留残渣のオリゴマー成分の重合反応を妨げない添加剤であってよい。好ましくは、分離剤は、ビチューメン、タルク、チョーク、無機顔料および完全に乾燥した残渣からなる群から選択される。無機顔料の中で、二酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウムおよび他の金属酸化物が特に好ましい。完全に乾燥した残渣は、工程c.2)からの乾燥装置で得られた固形処理生成物を意味する。これは、工程c.2)における乾燥により得られた固形物の一部を分離剤として乾燥処理に再利用することは、適切な方法で可能である。この再利用された一部も細かく微粉砕することができる。
【0123】
工程c.2)における乾燥を-ケースA、BまたはCであるかどうかに関わらず-バッチ式でも行ってもよく、連続式で行ってもよい。バッチ式では、いくつかの乾燥装置を、乾燥終了後に形成された固形処理生成物を取り出す必要がある結果として断続製造を避けるために、適切に同時運転する。特に工業的規模に適切な連続式処理体制では、生成された固形処理生成物は、適切な排出機器(例えば、スクリューコンベヤー、パドルコンベヤー、ウェヤーまたは重力輸送を超えたオーバーフロー)により、特に造粒された材料または粉末の形態で、乾燥装置から連続的に排出される。工程c.2)においてこの方法で得られた製造しようとするイソシアネートの一部を、好ましくは、部分的~完全に、好ましくは完全に、工程b)において蒸留物流として得られた製造しようとするイソシアネートの一部と合わせて、更なる使用に送る。同様に、方法の別の点、例えば、工程b)において、特に、供給または工程b.3)で使用された蒸留塔の蒸留塔底流に、工程c.2)で得られた製造しようとするイソシアネートの比率で供給することは可能である(好ましくは供給または最終蒸留塔の蒸留塔底流に直列で連結された複数の蒸留塔の場合)。工程c.1)で得られた製造しようとするイソシアネートのいずれかの比率で同様に進行することは可能である。好ましくは、工程c.1)および工程c.2)で得られた製造しようとするイソシアネートの一部を合わせる。
【実施例】
【0124】
次に続く実施例を、1977からのList乾燥装置(DTB6500)で行った。この機械は、6.5Lの容量を有する一軸混練機である。電気駆動は最大7.5kWの電力を有し;軸速度は可変である。混練機-乾燥機の処理スペースは外側シェルを備え、オイルを用いて加熱され;オイルの戻り温度を測定し、示す。乾燥中に生成された蒸気は、水冷熱交換器において濃縮されて、目盛付きレシーバーに回収される。膜ポンプによって真空を生成し、真空コントローラーにより調整する。乾燥工程(c.2)をバッチ式で行った。パーセンテージは、それぞれの処理生成物の総質量に対する質量%である。
【0125】
実施例1(比較):
ホスゲン化からの液状粗処理生成物の後処理のための最終蒸留塔の下流に連結された薄膜流下式蒸発装置で得られた前濃縮液体流を、この前濃縮液体流中に存在する蒸留残渣の質量に対して、2.8質量%のビチューメンと一緒に、235℃(オイル戻り温度)および40ミリバール(絶対圧力)において乾燥装置内で乾燥した。乾燥しようとする前濃縮液体流は、次の組成を有した:
【0126】
蒸留残渣:32.6%、
この蒸留残渣中のカルボジイミド含有率:2.8%。
【0127】
図1のグラフとして実験の進行を示す。乾燥の過程では、電力曲線の最大値および最大値の真下の大きな領域により認識することができる乾燥装置の軸トルクの著しい上昇があった。結果として導入されたエネルギーは、一時的にオイル戻り温度より高くさせ上昇する温度の原因であった。乾燥しようとする前濃縮液体流中に含有するTDIの98.7%を回収した。これを使用して、測定法IIIにより本発明との関連で蒸留残渣中のカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率を算出し、5.2%である。したがって、この実施例では、基本的に、in situカルボジイミド化があるが、ずっと小さすぎる程度であった。
【0128】
実施例2(本発明):
ホスゲン化からの液状粗処理生成物の後処理のための最終蒸留塔の下流に連結された薄膜流下式蒸発装置で得られた前濃縮液体流を、この前濃縮液体流中に存在する蒸留残渣の質量に対して、2.8質量%のビチューメンと一緒に、233℃(オイル戻り温度)および40ミリバール(絶対圧力)において乾燥装置内で乾燥した。乾燥しようとする前濃縮液体流は、次の組成を有した:
【0129】
蒸留残渣:30.0%、
この蒸留残渣中のカルボジイミド含有率:21.8%。
【0130】
図2のグラフとして実験の進行を示す。乾燥の過程では、電力曲線の水平進行により認識することができる乾燥装置の軸トルクの著しい上昇はなかった。さらに、機械的エネルギー入力は明確に減らしたので、オイル戻り温度より高い温度上昇はなかった;代わりに、温度は漸近的にオイル戻り温度に近づいた。乾燥しようとする前濃縮液体流中に含有するTDIの>99%を回収した。
【0131】
実施例3(本発明):
薄膜流下式蒸発装置からの前濃縮液体流を、添加ビチューメンを含む乾燥装置内に導入し、230℃および800ミリバール(絶対圧力)、3時間熱処理に付した以外は実施例1と同様に実験を行った。その後、乾燥機器内の圧を徐々に低下させて、前濃縮液体流を235℃(オイル戻り温度)および40ミリバール(絶対圧力)において乾燥装置内で乾燥した。
【0132】
図3のグラフとして実験の進行を示す。乾燥の過程では、乾燥装置の軸トルクの著しい上昇があったが、この上昇は非常に短時間であった。同時に、急勾配の温度上昇を観察したが、固相に成ることにより止まった。これは、機械的エネルギー入力を明確に減少させたが、オイル戻り温度より高い更なる温度上昇はなかった。乾燥しようとする前濃縮液体流中に含有するTDIの87.2%を回収した。これを使用して、測定法IIIにより本発明との関連で蒸留残渣中のカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率を算出し、25.9%である。
【0133】
実施例4(本発明):
220℃で12時間TDIの処理は、約15%の総質量に対するカルボジイミド含有率を有するTDI-カルボジイミド混合物を得た。この混合物から蒸留によりTDIを除去してカルボジイミド含有率をこのように46.5%まで増加させた。それから、この混合物を実施例1からの前濃縮液体流と混合し、前濃縮液体流中に存在する蒸留残渣の質量に対して2.6質量%のビチューメンと一緒に、234℃(オイル戻り温度)および40ミリバール(絶対圧力)において乾燥装置内で乾燥した。配合した、乾燥しようとする前濃縮液体流は、次の組成を有した:
【0134】
蒸留残渣:34.6%、
この蒸留残渣中のカルボジイミド含有率:20.0%。
【0135】
図4のグラフとして実験の進行を示す。乾燥では、乾燥装置の軸トルクの短い上昇があったが、これは実施例1よりずっと顕著でなかった。オイル戻り温度より高い温度の行き過ぎも観察されなかった。乾燥しようとする前濃縮液体流中に含有するTDIの>99%を回収した。
【0136】
実施例5(本発明):
220℃で12時間TDIの処理は、15%の総質量に対するカルボジイミド含有率を有するTDI-カルボジイミド混合物を得た。この混合物から蒸留によりTDIを除去してカルボジイミド含有率をこのように46.5%まで増加させた。それから、この混合物を実施例1からの前濃縮液体流と混合し、前濃縮液体流中に存在する蒸留残渣の質量に対して2.6質量%のビチューメンと一緒に、234℃(オイル戻り温度)および40ミリバール(絶対圧力)において乾燥装置内で乾燥した。配合した、乾燥しようとする前濃縮液体流は、次の組成を有した:
【0137】
蒸留残渣:35.7%、
この蒸留残渣中のカルボジイミド含有率:30.9%。
【0138】
図5のグラフとして実験の進行を示す。乾燥では、乾燥装置の軸トルクの短い上昇があったが、これは実施例4のときよりずっと顕著でなかった。オイル戻り温度より高い温度の行き過ぎも観察されなかった。乾燥しようとする前濃縮液体流中に含有するTDIの>99%を回収した。
【0139】
実施例6(本発明):
ホスゲン化からの液状粗処理生成物の後処理のための最終蒸留塔の下流に連結された薄膜流下式蒸発装置で得られた前濃縮液体流を、前濃縮液体流中に存在する蒸留残渣の質量に対して、2.8質量%のビチューメンと一緒に、258℃(オイル戻り温度)および460ミリバール(絶対圧力)において乾燥装置内で乾燥した。乾燥しようとする前濃縮液体流は、次の組成を有した:
【0140】
蒸留残渣:32.6%、
この蒸留残渣中のカルボジイミド含有率:2.8%。
【0141】
前濃縮液体流を258℃(オイル戻り温度)および460ミリバール(絶対圧力)において乾燥装置内で乾燥した以外は、実施例1のように実験を行った。
【0142】
乾燥しようとする前濃縮液体流を前加熱した乾燥装置に引き込んだ。乾燥装置内が220℃に達した時点で、真空を460ミリバール(絶対
圧力)の目標値まで調整した。
図6のグラフとして実験の進行を示す。乾燥の過程では、電力曲線の水平進行により認識することができる乾燥装置の軸トルクの著しい上昇はなかった。さらに、機械的エネルギー入力は明確に減らしたので、オイル戻り温度より高い温度上昇はなかった;代わりに、温度は漸近的にオイル戻り温度に近づいた。乾燥しようとする前濃縮液体流中に含有するTDIの64.6%を回収した。これを使用して、測定法IIIにより本発明との関連で蒸留残渣中のカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率を算出し、66.7%である。
【0143】
実施例7(本発明):
前濃縮液体流を258℃(オイル戻り温度)および300ミリバール(絶対圧力)において乾燥装置内で乾燥した以外は、実施例6のように実験を行った。乾燥装置内が230℃の温度に達した時点で、真空を300ミリバール(絶対圧力)の目標値まで調整した。
【0144】
図7のグラフとして実験の進行を示す。乾燥の過程では、電力曲線の水平進行により認識することができる乾燥装置の軸トルクの著しい上昇はなかった。さらに、機械的エネルギー入力は明確に減らしたので、オイル戻り温度より高い温度上昇はなかった;代わりに、温度は漸近的にオイル戻り温度に近づいた。乾燥しようとする前濃縮液体流中に含有するTDIの82.2%を回収した。これを使用して、測定法IIIにより本発明との関連で蒸留残渣中のカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率を算出し、34.9%である。
【0145】
実施例8(本発明):
278℃(オイル戻り温度)および300ミリバール(絶対圧力)において乾燥装置内で乾燥した以外は、実施例6のように実験を行った。乾燥装置内が250℃の温度に達した時点で、真空を300ミリバール(絶対圧力)の目標値まで調整した。
【0146】
図8のグラフとして実験の進行を示す。乾燥の過程では、電力曲線の水平進行により認識することができる乾燥装置の軸トルクの著しい上昇はなかった。さらに、機械的エネルギー入力は明確に減らしたので、オイル戻り温度より高い温度上昇はなかった;代わりに、温度は漸近的にオイル戻り温度に近づいた。乾燥しようとする前濃縮液体流中に含有するTDIの80.2%を回収した。これを使用して、測定法IIIにより本発明との関連で蒸留残渣中のカルボジイミド基を含有する化合物の質量比率を算出し、38.5%である。
【図面の簡単な説明】
【0147】