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特許7155142有機エレクトロルミネッセントデバイス用の材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセントデバイス用の材料
(51)【国際特許分類】
   C07D 409/04 20060101AFI20221011BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20221011BHJP
   C07D 498/16 20060101ALI20221011BHJP
   C07D 513/14 20060101ALI20221011BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20221011BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20221011BHJP
   C07D 407/14 20060101ALI20221011BHJP
   C07D 403/04 20060101ALI20221011BHJP
   C07D 407/04 20060101ALI20221011BHJP
   C07D 407/10 20060101ALI20221011BHJP
   C07D 409/14 20060101ALI20221011BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20221011BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
C07D409/04 CSP
C07D405/04
C07D498/16
C07D513/14
C07D403/14
C07D405/14
C07D407/14
C07D403/04
C07D407/04
C07D407/10
C07D409/14
C09K11/06 690
H05B33/14 B
H05B33/22 B
H05B33/22 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019550614
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2018055998
(87)【国際公開番号】W WO2018166934
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】17160998.5
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】パルハム、アミア
(72)【発明者】
【氏名】エベルレ、トマス
(72)【発明者】
【氏名】ヤトシュ、アンヤ
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン、トビアス
(72)【発明者】
【氏名】クロエベル、ヨナス・バレンティン
【審査官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/169412(WO,A1)
【文献】特表2016-534095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
(式中、使用した記号は、下記の通りである:
A、Aは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、CRまたはNであり、ここで、全てのAおよびAの中で、1環当たり2つ以下のAおよび/またはA基はNであり、Lが結合しているAはCであり;
は、O、S、NRまたはC(R)であり、ここで、Nに結合しているRラジカルはHでもDでもなく;
は、単結合、または5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
は、単結合、または5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
N’は、式(L-5)、(L-6)または(L-7)
【化2】
式中、点線で示される結合は、L に対する結合を表し)
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、C(R) 、C=O、O、S、S=O、SO 、Si(R) 、NRから選択され、ここで、Nに結合しているRラジカルは、HでもDでもない)
の基であり;
Arは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系である)
の基であり;
HetArは、式(2)、(3)または(4)
【化3】
(式中、点線で示される結合は、この基の結合を表し;
Xは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、CRまたはNであり、ただし、少なくとも1つのX記号はNである)
の基であり;
R、R、R、Rは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(Ar、N(R、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)(Ar、P(Ar、B(Ar、Si(Ar、Si(R、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、または3~20個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、または2~20個の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、RC=CR、Si(R、C=O、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRにより置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNOにより置きかえられていてもよい)、5~40個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系、5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、および5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアラルキルまたはヘテロアラルキル基からなる群から選択され;同時に、2つの隣接するR置換基、または2つの隣接するR置換基、または2つの隣接するR置換基、または2つの隣接するR置換基は、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成することが任意に可能であり;
Arは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上の非芳香族Rラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;同時に、同じ窒素原子、リン原子またはホウ素原子に結合している2つのArラジカルはまた、単結合またはN(R)、C(R、OおよびSから選択される架橋により互いに架橋していてもよく;
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、C(=O)R、Si(R、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、または3~20個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、または2~20個の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、RC=CR、Si(R、C=O、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRにより置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNOにより置きかえられていてもよい)、5~40個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系、5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、および5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアラルキルまたはヘテロアラルキル基からなる群から選択され;同時に、2つの隣接するR置換基は、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい脂肪族または芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成することが任意に可能であり;
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、CN、1~20個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビルラジカル、および1個以上の水素原子がD、F、Cl、Br、IまたはCNにより置きかえられていてもよく、それぞれ1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基により置換されていてもよい、5~30個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系からなる群から選択され;同時に、2つ以上の隣接するR置換基は一緒になって脂肪族環系を形成することが可能である)の化合物であって、
下記の化合物:
【化4】
を除く、化合物。
【請求項2】
式(1a)
【化5】
(式中、使用した記号は、先に示した定義を有し、oは、0、1、2または3であり、pは、0、1または2である)
の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1b)~(1d)
【化6】
(式中、使用した記号は、請求項1および2に示した定義を有する)
のうちの1つの化合物である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
式(2)、(3)および(4)の基が、式(2-1)~(2-10)、(3-1)および(4-1)
【化7】
(式中、点線で示される結合は、これらの基の結合を表し、Rは、請求項1に示した定義を有する)
の基から選択されることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Arが、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、6~18個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の化合物。
【請求項6】
N’基が、式(L-7)の基であることを特徴とする、請求項1~5に記載の化合物。
【請求項7】
が、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、C=O、O、S、S=O、SO、Si(R)、NRから選択され、ここで、Nに結合しているRラジカルは、HでもDでもないことを特徴とする、請求項に記載の化合物。
【請求項8】
が、OまたはSであることを特徴とする、請求項1~の何れか1項に記載の化合物。
【請求項9】
1-ハロジベンゾフランまたは1-ハロジベンゾチオフェンから開始される、請求項の何れか1項に記載の化合物を調製するための方法であって、
(1)ハロゲン基をボロン酸またはボロン酸誘導体へと任意に変換する工程;
(2)カップリング反応によりHetArまたはL-HetAr基を導入する工程;(3)ジベンゾフランまたはジベンゾチオフェンを8位でハロゲン化、とりわけ臭素化する工程;
(4)カップリング反応によりN’基を導入する工程
を特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1~の何れか1項に記載の化合物の少なくとも1種と、少なくとも1種の溶媒とを含む調合物。
【請求項11】
請求項1~の何れか1項に記載の化合物の、電子デバイスにおける使用。
【請求項12】
請求項1~の何れか1項に記載の化合物の少なくとも1種を含む電子デバイス。
【請求項13】
有機エレクトロルミネッセントデバイスであり、請求項1~の何れか1項による化合物を、蛍光またはリン光発光体用のマトリックス材料として、および/または電子輸送層に、および/または電子阻止もしくは励起子阻止層に、および/または正孔輸送層に使用することを特徴とする、請求項12に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ有機エレクトロルミネッセントデバイスにおいて三重項マトリックス材料として使用する、ジベンゾフランおよびジベンゾチオフェン誘導体に関する。本発明はさらに、本発明の化合物を調製するための方法、およびこれらの化合物を含む電子デバイスに関する。
【0002】
有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)に使用される発光材料は多くの場合、蛍光ではなくリン光を呈する有機金属錯体である。量子力学的理由から、有機金属化合物をリン光発光体として使用すると、最大4倍のエネルギー効率および電力効率が可能となる。一般論として、OLEDにおいて、とりわけ三重項発光(リン光)を呈するOLEDにおいて、たとえば効率、作動電圧および寿命に関して、改善の必要が依然として存在する。
【0003】
リン光OLEDの特性は、使用される三重項発光体によってのみ決まるとは限らない。より詳細には、使用する他の材料、たとえばマトリックス材料も、ここでは特に重要である。したがって、これらの材料に対する改善が、OLED特性の明らかな改善に繋がる可能性もある。
【0004】
先行技術によると、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体およびトリアジン誘導体を含む多数の異なるクラスの材料をリン光発光体用のマトリックス材料として使用することができる。
【0005】
一般論として、マトリックス材料として使用する材料の場合、特に寿命に関して、さらにはデバイスの効率および作動電圧に関して、改善の必要が依然として存在する。
【0006】
本発明の目的は、リン光または蛍光OLEDにおいて、とりわけマトリックス材料としての使用に適する化合物を提供することである。より詳細には、本発明の目的は、赤色、黄色および緑色リン光を発するOLEDに適し、場合によっては青色リン光を発するOLEDにも適し、長寿命、良好な効率および低作動電圧に繋がるマトリックス材料を提供することである。
【0007】
驚くべきことに、以下の式(1)の化合物を含有するエレクトロルミネッセントデバイスは、とりわけリン光ドーパント用のマトリックス材料として使用されると、先行技術に比べて改善を呈することが発見された。
【0008】
したがって、本発明は、下記式(1):
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、使用した記号は、下記の通りである:
A、Aは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、CRまたはNであり、ここで、全てのAおよびAの中で、1環当たり2つ以下のAおよび/またはA基はNであり、Lが結合しているAはCであり;
は、O、S、NRまたはC(R)であり、ここで、Nに結合しているRラジカルはHでもDでもなく;
は、単結合、または5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
は、単結合、または5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
N’は、式(L-1)
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、点線で示される結合は、Lに対する結合を表し;
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、単結合、C(R)、C=O、O、S、S=O、SO、Si(R)、NRから選択され、ここで、Nに結合しているRラジカルはHでもDでもなく;
nは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、0または1であり、ここで、少なくとも1つのYが単結合である場合、少なくとも2つのnは1であり;ここでのn=0は、対応するY基が存在しないことを意味し;
Arは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系である)
の基であり;
HetArは、式(2)、(3)または(4)
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、点線で示される結合は、この基の結合を表し;
Xは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、CRまたはNであり、ただし、少なくとも1つのX記号はNである)
の基であり;
R、R、R、Rは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(Ar、N(R、C(=O)Ar、C(=O)R、P(=O)(Ar、P(Ar、B(Ar、Si(Ar、Si(R、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、または3~20個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、または2~20個の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、RC=CR、Si(R、C=O、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRにより置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNOにより置きかえられていてもよい)、5~40個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系、5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、および5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアラルキルまたはヘテロアラルキル基からなる群から選択され;同時に、2つの隣接するR置換基、または2つの隣接するR置換基、または2つの隣接するR置換基、または2つの隣接するR置換基は、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい脂肪族、ヘテロ脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成することが任意に可能であり;
Arは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上の非芳香族Rラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;同時に、同じ窒素原子、リン原子またはホウ素原子に結合している2つのArラジカルはまた、単結合またはN(R)、C(R、OおよびSから選択される架橋により互いに架橋していてもよく;
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、NO、N(R、C(=O)R、Si(R、1~20個の炭素原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、または3~20個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルキル基、または2~20個の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、RC=CR、Si(R、C=O、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SまたはCONRにより置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNOにより置きかえられていてもよい)、5~40個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系、5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、および5~40個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアラルキルまたはヘテロアラルキル基からなる群から選択され;同時に、2つの隣接するR置換基は、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい脂肪族または芳香族またはヘテロ芳香族環系を形成することが任意に可能であり;
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、CN、1~20個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビルラジカル、および1個以上の水素原子がD、F、Cl、Br、IまたはCNにより置きかえられていてもよく、それぞれ1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基により置換されていてもよい、5~30個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系からなる群から選択され;同時に、2つ以上の隣接するR置換基は一緒になって脂肪族環系を形成することが可能である)
の化合物を提供し、
下記の化合物:
【0015】
【化4】
【0016】
は本発明から除外される。
【0017】
式(1)の化合物において、Lは常にA基ではなくA基に結合している。
【0018】
本発明の文脈における隣接する置換基は、互いに順番に直接結合している炭素原子に結合しているか、同じ炭素原子に結合している置換基である。
【0019】
本願の文脈における2つ以上のラジカルが一緒になって環を形成してもよいという表現は、とりわけ、2つのラジカルが化学結合によって互いに結合していることを意味すると当然に理解される。これを、下記のスキームによって例示する:
【0020】
【化5】
【0021】
加えて、上記表現は、2つのラジカルの一方が水素である場合、第2のラジカルが、水素原子が結合していた位置に結合し、環を形成することを意味するとも当然に理解される。
【0022】
本発明の文脈における縮合アリール基は、たとえばナフタレンの場合のように、2つ以上の芳香族基が共通の縁に沿って互いに縮合、即ち縮環した基である。これに対し、たとえばフルオレンは、フルオレン中の2つの芳香族基が共通の縁を持たないことから、本発明の文脈における縮合アリール基ではない。
【0023】
本発明の文脈における芳香族環系は、環系中に6~40個の炭素原子を含有する。本発明の文脈における芳香族環系は、必ずしもアリールまたはヘテロアリール基のみを含有するとは限らないが、2つ以上のアリールまたはヘテロアリール基が非芳香族単位(好ましくは、H以外の原子の10%未満)、たとえば炭素、窒素または酸素原子によって結合されることもあり得る系を意味するものと理解される。たとえば、系、たとえばフルオレン、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン、トリアリールアミンも、本発明の文脈における芳香族環系とみなされ、2つ以上のアリール基がたとえば短いアルキル基によって結合している系も同様である。加えて、単結合により互いに結合している芳香族環、即ちオリゴアリーレンまたはオリゴヘテロアリーレン、たとえばビフェニル、テルフェニルまたはクアテルフェニルも、本願の文脈における芳香族環系と称される。
【0024】
本発明の文脈において、1~40個の炭素原子を含有していてもよく、個々の水素原子またはCH基が上記の基により置換されていてもよい、脂肪族ヒドロカルビルラジカルまたはアルキル基またはアルケニルもしくはアルキニル基は、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、ネオへキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルラジカルを意味するものと理解される。1~40個の炭素原子を有するアルコキシ基は、好ましくはメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシまたは2,2,2-トリフルオロエトキシを意味するものと理解される。1~40個の炭素原子を有するチオアルキル基は、とりわけメチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチルチオ、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオ、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオまたはオクチニルチオを意味するものと理解される。一般に、本発明によるアルキル、アルコキシまたはチオアルキル基は、直鎖、分枝または環状であってもよく、ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、上記の基により置きかえられていてもよく;加えて、1個以上の水素原子が、D、F、Cl、Br、I、CNまたはNO、好ましくはF、ClまたはCN、さらに好ましくはFまたはCN、とりわけ好ましくはCNにより置きかえられていることも可能である。
【0025】
5~40個の芳香族環原子を有する芳香族またはヘテロ芳香族環系は、とりわけ、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、トリフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis-もしくはtrans-インデノフルオレン、cis-もしくはtrans-インデノカルバゾール、cis-もしくはtrans-インドロカルバゾール、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ヘキサアザトリフェニレン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5-ジアザアントラセン、2,7-ジアザピレン、2,3-ジアザピレン、1,6-ジアザピレン、1,8-ジアザピレン、4,5-ジアザピレン、4,5,9,10-テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,2,3-トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5-テトラジン、1,2,3,4-テトラジン、1,2,3,5-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールから誘導される基、またはこれらの系の組合せから誘導される基を意味するものと理解される。
【0026】
本発明の好ましい態様において、1環当たり1つ以下のAまたはA基はNであり、他のAまたはA基はCRである。より好ましくは、AおよびAはCRであり、そのため、式(1)の化合物は、下記式(1a):
【0027】
【化6】
【0028】
(式中、使用した記号は、先に示した定義を有し、oは、0、1、2または3であり、pは、0、1または2である)
の化合物である。
【0029】
本発明の好ましい態様において、式(1a)中の添え字pおよびoは同じであるかまたは異なり、0、1または2、より好ましくは0または1、最も好ましくは0である。
【0030】
式(L-1)の好ましい態様は、式(L-2)~(L-7)
【0031】
【化7】
【0032】
(式中、出現する記号は、先に示した定義を有し、加えて:
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、C(R)、C=O、O、S、S=O、SO、Si(R)およびNRから選択され、ここで、Nに結合しているRラジカルはHでもDでもない)
の構造である。
【0033】
式(L-2)において、好ましくは3つのY基全てが単結合とは限らない。
【0034】
本発明のさらなる態様において、式(L-5)におけるYは、2つのフェニル基が単結合を介して互いに結合しているC(Ph)ではない。
【0035】
本発明のさらなる態様において、Yは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、C=O、O、S、S=O、SO、Si(R)、NRから選択され、ここで、Nに結合しているRラジカルはHでもDでもない。
【0036】
さらなる態様において、Yは、C=O、O、S、S=O、SO、Si(R)およびNRから選択され、ここで、Nに結合しているRラジカルはHでもDでもなく、Yは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり単結合、C=O、O、S、S=O、SO、Si(R)およびNRから選択され、ここで、Nに結合しているRラジカルはHでもDでもない。
【0037】
さらなる態様において、Yは、OおよびSから選択され、Yは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、単結合、O、SおよびSiRから選択される。
【0038】
本発明の好ましい態様において、N’は、式(L-7)の基である。
【0039】
式(1a)の好ましい態様は、式(1b)~(1d):
【0040】
【化8】
【0041】
(式中、出現する記号および添え字は、上記の定義を有する)
の化合物である。
【0042】
特に好ましい態様は、式(1d)の化合物である。
【0043】
HetAr基の好ましい態様を、以下に記載する。
【0044】
式(2)、(3)および(4)の基の好ましい態様は、下記の式(2-1)~(2-10)、(3-1)および(4-1):
【0045】
【化9】
【0046】
(式中、点線で示される結合は、これらの基の結合を表し、Rは、先に示した定義を有する)
の基である。
【0047】
式(2-1)~(2-3)、(3-1)および(4-1)の基が好ましく、式(2-1)が特に好ましい。
【0048】
上記の基の好ましい態様は、下記式(2-1a)~(4-1a):
【0049】
【化10】
【0050】
(式中、点線で示される結合は、これらの基の結合を表し、Rは、水素以外の上記の定義による置換基を表す)
の基である。
【0051】
HetAr基上のR置換基は、好ましくはそれぞれの場合において同じであるかまたは異なり、Hまたは6~24個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系である。同時に、式(2-1a)~(4-1a)の基におけるRは、水素ではない。芳香族またはヘテロ芳香族環系は、好ましくは6~18個の芳香族環原子を有する。より好ましくは、6~12個の芳香族環原子を有する芳香族環系または6~13個の芳香族環原子を有するヘテロ芳香族環系であり、これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。好適なR基の例は、フェニル、ビフェニル、とりわけオルト、メタまたはパラビフェニル、テルフェニル、とりわけ分枝テルフェニル、クアテルフェニル、とりわけ分枝クアテルフェニル、1-、2-、3-または4-フルオレニル、1-、2-、3-または4-スピロビフルオレニル、ピリジル、ピリミジニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾフラニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾチエニル、および1-、2-、3-または4-カルバゾリルからなる群から選択され、これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。
【0052】
好適なR基の例は、以下に列挙する構造R-1~R-29:
【0053】
【化11-1】
【0054】
【化11-2】
【0055】
【化11-3】
【0056】
【化11-4】
【0057】
(式中、Rは、先に示した定義を有し、点線で示される結合は、ヘテロアリール基に対する結合を表し、rは、0、1、2、3または4であり、加えて:
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、C(R、C=O、O、S、S=O、SO、Si(R、NRから選択され、ここで、Nに結合しているRラジカルはHでもDでもない)
である。
【0058】
N’基の好ましい態様を、以下に記述する。上記のように、N’基は、式(L-1)、または好ましくは式(L-2)~(L-7)の基である。
【0059】
本発明の好ましい態様において、式(L-1)または好ましい態様の基におけるAr基は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、6~24個の芳香族環原子を有する、好ましくは6~18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、より好ましくは6~12個の芳香族環原子を有する芳香族環系または6~13個の芳香族環原子を有するヘテロ芳香族環系であり、これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。好適なAr基の例は、フェニル、ビフェニル、とりわけオルト、メタまたはパラビフェニル、テルフェニル、とりわけ分枝テルフェニル、クアテルフェニル、とりわけ分枝クアテルフェニル、1-、2-、3-または4-フルオレニル、1-、2-、3-または4-スピロビフルオレニル、ピリジル、ピリミジニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾフラニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾチエニル、および1-、2-、3-または4-カルバゾリルからなる群から選択され、これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。
【0060】
特に好ましいAr基は、下記の式(Ar-1)~(Ar-29):
【0061】
【化12-1】
【0062】
【化12-2】
【0063】
【化12-3】
【0064】
(式中、Rおよびrは、先に示した定義を有し、点線で示される結合は、窒素に対する結合を表し、必要な場合は、Rの代わりにL、YまたはYに対する結合が存在してもよく、加えて:
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、C(R、C=O、O、S、S=O、SO、Si(R、NRから選択され、ここで、Nに結合しているRラジカルはHでもDでもない)
の基である。
【0065】
本発明の好ましい態様において、窒素原子に結合していないRは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、または5~14個の芳香族環原子を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族環系である。より好ましくは、Rは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、Hまたは1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0066】
本発明のさらなる好ましい態様において、Yは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、OまたはS、より好ましくはOである。
【0067】
本発明のさらなる好ましい態様において、YおよびYは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、OまたはSである。
【0068】
またはY、YもしくはYがNR、またはNRもしくはNRである場合、このR、RまたはRラジカルは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、5~24個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRまたはRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系、より好ましくは6~18個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRまたはRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系であることが好ましい。好適なR、RまたはR置換基の例は、フェニル、ビフェニル、とりわけオルト、メタまたはパラビフェニル、テルフェニル、とりわけ分枝テルフェニル、クアテルフェニル、とりわけ分枝クアテルフェニル、1-、2-、3-または4-フルオレニル、1-、2-、3-または4-スピロビフルオレニル、ピリジル、ピリミジニル、1,3,5-トリアジニル、4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾフラニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾチエニル、および1-、2-、3-または4-カルバゾリルからなる群から選択され、ここで、カルバゾリル基は、窒素原子上でHまたはD以外のRまたはRラジカルにより置換されている。これらの基はそれぞれ、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。好適な構造R、RまたはRは、R-1~R-29に関して先に図示したものと同じ構造であり、ここで、Rの場合のRラジカルは、Rである。
【0069】
またはY、YもしくはYがC(R)、またはC(RもしくはC(Rである場合、これらのR、RまたはRラジカルは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、1~10個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、または3~10個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキル基、または2~10個の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRまたはRラジカルにより置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、Oにより置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、DまたはFにより置きかえられていてもよい)、または5~24個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRもしくはRラジカルにより任意に置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であることが好ましく;同時に、2つのR、RまたはR置換基は、1つ以上のRまたはRラジカルにより置換されていてもよい、単環または多環式の脂肪族、芳香族またはヘテロ芳香族環系を任意に形成していてもよい。2つのR、RまたはR置換基間の環形成は、R、RまたはR基がフェニル基である場合、スピロ系、たとえばスピロビフルオレンまたはスピロビフルオレンの誘導体を形成する。
【0070】
本発明のさらなる好ましい態様において、Lは、単結合または5~24個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系である。Lは、より好ましくは単結合、6~12個の芳香族環原子を有する芳香族環系または6~13個の芳香族環原子を有するヘテロ芳香族環系であり、これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。より好ましくは、Lは、単結合または6~12個の芳香族環原子を有する芳香族環系であり、とりわけ単結合である。好適な芳香族またはヘテロ芳香族環系Lの例は、フェニレン、ビフェニル、フルオレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンおよびカルバゾールからなる群から選択され、これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。
【0071】
本発明のさらなる好ましい態様において、Lは、単結合または5~24個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系である。Lは、より好ましくは単結合、6~12個の芳香族環原子を有する芳香族環系または6~13個の芳香族環原子を有するヘテロ芳香族環系であり、これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。最も好ましくは、Lは、単結合または6~12個の芳香族環原子を有する芳香族環系であり、とりわけ単結合である。好適な芳香族またはヘテロ芳香族環系Lの例は、フェニレン、ビフェニル、フルオレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンおよびカルバゾールからなる群から選択され、これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換であり、とりわけ、フェニレン、ビフェニル、フルオレン、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ジベンゾフランおよびジベンゾチオフェンからなる群から選択される。
【0072】
本発明の化合物がR、R、RまたはR置換基を有する場合、これらは、好ましくは、H、D、F、CN、N(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、1~10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、または3~10個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基、または2~10個の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、Oにより置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、DまたはFにより置きかえられていてもよい)、5~24個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または5~25個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアラルキルもしくはヘテロアラルキル基からなる群から選択され;同時に、隣接する炭素原子に結合している2つのR置換基、または2つのR置換基、または2つのR置換基、または2つのR置換基は、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい単環または多環式の脂肪族環系を形成することが任意に可能である。
【0073】
本発明の化合物がR置換基を有する場合、これらは、好ましくは、H、D、F、CN、N(R、C(=O)R、1~10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、または3~10個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基、または2~10個の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、Oにより置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、DまたはFにより置きかえられていてもよい)、5~24個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または5~25個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアラルキルもしくはヘテロアラルキル基からなる群から選択され;同時に、隣接する炭素原子に結合している2つのR置換基は、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい単環または多環式の脂肪族環系を形成することが任意に可能である。
【0074】
最も好ましくは、R、R、RまたはR置換基は、H、および6~18個の芳香族環原子、好ましくは6~13個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上の非芳香族Rラジカルにより置換されていてもよいが好ましくは無置換である芳香族またはヘテロ芳香族環系からなる群から選択される。好適なR、R、RまたはR置換基の例は、フェニル、ビフェニル、とりわけオルト、メタまたはパラビフェニル、テルフェニル、とりわけ分枝テルフェニル、クアテルフェニル、とりわけ分枝クアテルフェニル、1-、2-、3-または4-フルオレニル、1-、2-、3-または4-スピロビフルオレニル、ピリジル、ピリミジニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾフラニル、1-、2-、3-または4-ジベンゾチエニル、および1-、2-、3-または4-カルバゾリルからなる群から選択され、これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいが、好ましくは無置換である。ここでの好適な構造R、R、RまたはRは、R-1~R-29に関して先に図示したものと同じ構造である。
【0075】
本発明のさらなる好ましい態様において、Rは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、CN、1~10個の炭素原子を有し、好ましくは1、2、3または4個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロカルビルラジカル、または5~30個の芳香族環原子を有し、好ましくは5~13個の芳香族環原子を有し、それぞれ1~4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基により置換されていてもよいが、好ましくは無置換である芳香族もしくはヘテロ芳香族環系からなる群から選択される。
【0076】
本発明の化合物が芳香族またはヘテロ芳香族基により置換されている場合、これらが2つを超える互いに直接縮合した芳香族6員環を有するアリールまたはヘテロアリール基を有しないことが好ましい。より好ましくは、置換基は、互いに直接縮合した6員環を有するアリールまたはヘテロアリール基を全く有しない。この優先傾向の理由は、こうした構造の低い三重項エネルギーである。2つを超える互いに直接縮合した芳香族6員環を有するが、それにも関わらず本発明に従い好適な縮合アリール基は、フェナントレンおよびトリフェニレンであり、それは、これらが高い三重項準位も有するためである。
【0077】
上記の優先傾向は、別々に、または同時に起こる可能性がある。上記の優先傾向は、同時に起こることが好ましい。
【0078】
したがって、上記の式(1a)の化合物が好ましく、その場合:
は、単結合、または5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
は、単結合、または5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系であり;
N’は、式(L-5)、(L-6)または(L-7)の基であり;
HetArは、先に列挙した式(2-1)~(2-10)、(3-1)または(4-1)のうちの1つの基であり;
Arは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、5~30個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族環系であり;
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、OまたはSであり;
R、R、RまたはRは、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、CN、N(Ar、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、1~10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、または3~10個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基、または2~10個の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、Oにより置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、DまたはFにより置きかえられていてもよい)、5~24個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または5~25個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアラルキルもしくはヘテロアラルキル基からなる群から選択され;同時に、隣接する炭素原子に結合している2つのR置換基、または2つのR置換基、または2つのR置換基、または2つのR置換基は、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい単環または多環式の脂肪族環系を形成することが任意に可能であり;
は、それぞれの場合において同じであるかまたは異なり、H、D、F、CN、N(R、C(=O)R、1~10個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、または3~10個の炭素原子を有する分枝もしくは環状アルキルもしくはアルコキシ基、または2~10個の炭素原子を有するアルケニル基(これらのそれぞれは、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい)(ここで、1つ以上の隣接していないCH基は、Oにより置きかえられていてもよく、1個以上の水素原子は、DまたはFにより置きかえられていてもよい)、5~24個の芳香族環原子を有し、各場合において1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい芳香族もしくはヘテロ芳香族環系、または5~25個の芳香族環原子を有し、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよいアラルキルもしくはヘテロアラルキル基からなる群から選択され;同時に、隣接する炭素原子に結合している2つのR置換基は、1つ以上のRラジカルにより置換されていてもよい単環または多環式の脂肪族環系を形成することが任意に可能であり;
使用したさらなる記号は、先に示した定義を有する。
【0079】
本発明の好適な化合物の例は、以下に示す構造である。
【0080】
【化13-1】
【0081】
【化13-2】
【0082】
【化13-3】
【0083】
【化13-4】
【0084】
【化13-5】
【0085】
【化13-6】
【0086】
【化13-7】
【0087】
【化13-8】
【0088】
本発明の化合物は、当業者に公知の合成工程、たとえば臭素化、スズキカップリング、ウルマンカップリング、ハートウィッグ-ブッフバルトカップリングなどによって調製することができる。
【0089】
好適な合成方法を、一般論として、以下に続くスキーム1~5に示す。
【0090】
【化14】
【0091】
【化15】
【0092】
【化16】
【0093】
【化17】
【0094】
【化18】
【0095】
合成は、1-ハロジベンゾフランまたは-ジベンゾチオフェンから開始され、対応するボロン酸またはボロン酸誘導体へと変換される。次の工程において、スズキカップリングによりHetAr基を導入することができる。同様の方法で、L-HetAr基を導入することも可能である。たとえばNBSを用いたハロゲン化が、ジベンゾフランまたはジベンゾチオフェンの8位において、選択的に進行する。最終工程において、たとえばハートウィッグ-ブッフバルトカップリングまたはスズキカップリングにより、N’基をこの位置に導入することが可能である。
【0096】
スキーム4および5は、N’基を1位に導入できるようにするためにジベンゾフランを構築する代替的な合成方法を示す。
【0097】
示した本発明の化合物を合成する一般的方法は、例示である。当業者は、当技術分野における自身の一般的知識の範囲内で、代替的な合成経路を開発することができる。
【0098】
本発明はさらに、1-ハロジベンゾフランまたは1-ハロジベンゾチオフェンから開始される、本発明の化合物を合成するための方法を提供し、ここで、ハロゲンは好ましくは臭素であり、方法は、
(1)ハロゲン基をボロン酸またはボロン酸誘導体へと任意に変換する工程;
(2)カップリング反応、とりわけスズキカップリングによりHetArまたはL-HetAr基を導入する工程;
(3)ジベンゾフランまたはジベンゾチオフェンを8位でハロゲン化、とりわけ臭素化する工程;
(4)カップリング反応、とりわけハートウィッグ-ブッフバルトカップリングまたはスズキカップリングによりN’基を導入する工程
を特徴とする。
【0099】
本発明の化合物を、たとえばスピンコーティングまたは印刷法により、液相から加工するには、本発明の化合物の調合物が必要である。これらの調合物は、たとえば溶液、分散液またはエマルションであってもよい。この目的のため、2種以上の溶媒の混合物を使用することが好ましい場合がある。好適な好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、ベラトロール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサン、フェノキシトルエン、とりわけ3-フェノキシトルエン、(-)-フェンコン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルベンゾチアゾール、2-フェノキシエタノール、2-ピロリジノン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、アセトフェノン、α-テルピネオール、ベンゾチアゾール、安息香酸ブチル、クメン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、デカリン、ドデシルベンゼン、安息香酸エチル、インダン、NMP、p-シメン、フェネトール、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、2-イソプロピルナフタレン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、1,1-ビス(3,4-ジメチルフェニル)エタン、2-メチルビフェニル、3-メチルビフェニル、1-メチルナフタレン、1-エチルナフタレン、オクタン酸エチル、セバシン酸ジエチル、オクタン酸オクチル、ヘプチルベンゼン、イソ吉草酸メンチル、ヘキサン酸シクロヘキシル、またはこれらの溶媒の混合物である。
【0100】
したがって、本発明は、本発明の化合物と、少なくとも1種のさらなる化合物とを含む調合物をさらに提供する。さらなる化合物は、たとえば溶媒、とりわけ上記の溶媒の1種またはこれらの溶媒の混合物であってもよい。あるいは、さらなる化合物は、電子デバイスにおいて同様に使用される少なくとも1種のさらなる有機または無機化合物、たとえば発光化合物、とりわけリン光ドーパント、および/またはさらなるマトリックス材料であってもよい。好適な発光化合物およびさらなるマトリックス材料は、有機エレクトロルミネッセントデバイスに関連して後に列挙する。このさらなる化合物はまた、高分子であってもよい。
【0101】
本発明の化合物および混合物は、電子デバイスへの使用に適している。電子デバイスは、ここでは、少なくとも1種の有機化合物を含有する少なくとも1つの層を含有するデバイスを意味するものと理解される。ただし、構成要素は、無機材料または完全に無機材料から形成される他の層も含んでもよい。
【0102】
したがって、本発明は、本発明の化合物または混合物の電子デバイス、とりわけ有機エレクトロルミネッセントデバイスにおける使用をさらに提供する。
【0103】
本発明は、先に詳述した本発明の化合物または混合物の少なくとも1種を含む電子デバイスをなおさらに提供する。この場合、化合物に関して先に詳述した優先傾向は、電子デバイスにも当てはまる。
【0104】
電子デバイスは、好ましくは、有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED、PLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機ソーラーセル(O-SC)、有機色素増感ソーラーセル、有機光学検出器、有機光受容器、有機電場消光デバイス(O-FQD)、発光電気化学セル(LEC)、有機レーザーダイオード(O-レーザー)および有機プラズモン発光デバイスからなる群から選択され、好ましくは、有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED、PLED)、とりわけリン光OLEDである。
【0105】
有機エレクトロルミネッセントデバイスは、カソード、アノード、および少なくとも1つの発光層を含む。これらの層とは別に、さらなる層、たとえば各場合において1つ以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、励起子阻止層、電子阻止層および/または電荷発生層も含んでもよい。たとえば励起子阻止機能を有する中間層を2つの発光層の間に導入することも同様に可能である。しかし、指摘すべきことであるが、必ずしもこれらの層のそれぞれが存在する必要があるとは限らない。この場合、有機エレクトロルミネッセントデバイスが1つの発光層を含有する、または複数の発光層を含有することが可能である。複数の発光層が存在する場合、これらは、好ましくは全体として380nm乃至750nmに幾つかの発光極大を有し、全体として白色発光を生じるようになっている;換言すれば、蛍光またはリン光を発することができる様々な発光化合物が発光層に使用される。とりわけ好ましいのは、3つの発光層を有する系であり、ここで、3層は、青色、緑色およびオレンジ色または赤色発光を示す(基本的構造については、たとえばWO2005/011013を参照されたい)。タンデムOLEDがさらに好ましい。これらは、蛍光もしくはリン光発光層、または蛍光およびリン光発光層が互いに組み合わされた他のハイブリッド系であってもよい。
【0106】
先に詳述した態様による本発明の化合物は、正確な構造に応じて、異なる層に使用してもよい。式(1)の化合物または好ましい態様による化合物を、正確な置換に応じて、蛍光もしくはリン光発光体、またはTADF(熱活性化型遅延蛍光)を呈する発光体、とりわけリン光発光体用のマトリックス材料として、および/または電子輸送層に、および/または電子阻止もしくは励起子阻止層に、および/または正孔輸送層に含む有機エレクトロルミネッセントデバイスが好ましい。本文脈において、先に詳述した好ましい態様は、有機電子デバイスにおける材料の使用にも当てはまる。
【0107】
本発明の好ましい態様において、式(1)の化合物または好ましい態様による化合物は、蛍光またはリン光化合物、とりわけリン光化合物用のマトリックス材料として、発光層に使用される。この場合、有機エレクトロルミネッセントデバイスは、1つの発光層を含有しても、複数の発光層を含有してもよく、ここで、少なくとも1つの発光層は、少なくとも1種の本発明の化合物をマトリックス材料として含有する。ケトケトナート配位子を含有するリン光発光体を含む場合でも有利な特性を有することが、本発明の化合物の独特な特徴である。
【0108】
式(1)の化合物または好ましい態様による化合物は、発光化合物用のマトリックス材料として発光層に使用される場合、好ましくは1種以上のリン光材料(三重項発光体)と組み合わせて使用される。本発明の文脈におけるリン光は、1を超えるスピン多重度を有する励起状態からの、とりわけ励起三重項状態からの発光を意味するものと理解される。
【0109】
式(1)の化合物または好ましい態様による化合物と発光化合物との混合物は、発光体とマトリックス材料の全混合物を基準として、体積で99%乃至1%、好ましくは体積で98%乃至10%、より好ましくは体積で97%乃至60%、とりわけ体積で95%乃至80%の式(1)の化合物または好ましい態様による化合物を含有する。対応して、混合物は、発光体とマトリックス材料の全混合物を基準として、体積で1%乃至99%、好ましくは体積で2%乃至90%、より好ましくは体積で3%乃至40%、とりわけ体積で5%乃至20%の発光体を含有する。
【0110】
本発明のさらなる好ましい態様は、式(1)の化合物または好ましい態様による化合物の、さらなるマトリックス材料と組み合わせてのリン光発光体用のマトリックス材料としての使用である。式(1)の化合物または好ましい態様による化合物と組み合わせて使用できる特に好適なマトリックス材料は、たとえばWO2004/013080、WO2004/093207、WO2006/005627もしくはWO2010/006680による芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドまたは芳香族スルホキシドもしくはスルホン、WO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527もしくはWO2008/086851に開示されているトリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえばCBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)もしくはカルバゾール誘導体、たとえばWO2007/063754もしくはWO2008/056746によるインドロカルバゾール誘導体、たとえばWO2010/136109およびWO2011/000455によるインデノカルバゾール誘導体、たとえばEP1617710、EP1617711、EP1731584、JP2005/347160によるアザカルバゾール誘導体、たとえばWO2007/137725による双極性マトリックス材料、たとえばWO2005/111172によるシラン、たとえばWO2006/117052によるアザボロールもしくはボロン酸エステル、たとえばWO2010/015306、WO2007/063754もしくはWO2008/056746によるトリアジン誘導体、たとえばEP652273もしくはWO2009/062578による亜鉛錯体、たとえばWO2010/054729によるジアザシロールもしくはテトラアザシロール誘導体、たとえばWO2010/054730によるジアザホスホール誘導体、たとえばUS2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107、WO2011/088877もしくはWO2012/143080による架橋カルバゾール誘導体、たとえばWO2012/048781によるトリフェニレン誘導体、たとえばWO2017/148564もしくはWO2017/148565によるジベンゾフラン誘導体、またはたとえばWO2011/116865もしくはWO2011/137951によるラクタムである。実際の発光体よりも短い波長で発光するさらなるリン光発光体がコホストとして混合物中に存在することも同様に可能である。
【0111】
好ましいコホスト材料は、トリアリールアミン誘導体、とりわけモノアミン、ラクタム、カルバゾール誘導体およびインデノカルバゾール誘導体である。
【0112】
好適なリン光化合物(=三重項発光体)は、とりわけ、適切に励起されると、好ましくは可視領域で光を発し、原子番号が20より大きく、好ましくは38より大きく84より小さい、より好ましくは56より大きく80より小さい少なくとも1種の原子、とりわけこの原子番号を有する金属も含有する化合物である。使用される好ましいリン光発光体は、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含有する化合物、とりわけイリジウムまたは白金を含有する化合物である。本発明の文脈において、上記の金属を含有する発光化合物は全て、リン光化合物とみなされる。
【0113】
上記発光体の例は、出願WO00/70655、WO2001/41512、WO2002/02714、WO2002/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614、WO05/033244、WO05/019373、US2005/0258742、WO2009/146770、WO2010/015307、WO2010/031485、WO2010/054731、WO2010/054728、WO2010/086089、WO2010/099852、WO2010/102709、WO2011/032626、WO2011/066898、WO2011/157339、WO2012/007086、WO2014/008982、WO2014/023377、WO2014/094962、WO2014/094961、WO2014/094960、WO2015/036074、WO2015/104045、WO2015/117718、WO2016/015815、WO2016/124304、WO2017/032439、および未公開出願EP16179378.1に見出すことができる。一般に、先行技術によりリン光OLEDに使用され、有機エレクトロルミネッセンスの分野において当業者に公知であるようなリン光錯体は全て好適であり、当業者は、独創的な技術を用いることなくさらなるリン光錯体を使用することができる。
【0114】
本発明のさらなる態様において、本発明の有機エレクトロルミネッセントデバイスは、別個の正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔阻止層および/または電子輸送層を含有せず、それは、たとえばWO2005/053051に記載されているように、発光層が正孔注入層もしくはアノードに直接隣接すること、および/または発光層が電子輸送層もしくは電子注入層もしくはカソードに直接隣接することを意味する。加えて、たとえばWO2009/030981に記載されているように、発光層中の金属錯体と同一または類似の金属錯体を直接発光層に隣接させて正孔輸送または正孔注入材料として使用することも可能である。
【0115】
加えて、本発明の化合物を正孔阻止または電子輸送層に使用することが可能である。これらはまた、好ましくは1つ以上のさらなる電子輸送基、たとえばベンゾイミダゾール基により置換されていてもよい。
【0116】
本発明の有機エレクトロルミネッセントデバイスのさらなる層において、先行技術に従い典型的に使用されるような任意の材料を使用することが可能である。したがって、当業者は、独創的な技術を用いることなく、有機エレクトロルミネッセントデバイスに関して公知の任意の材料を、式(1)の本発明の化合物または好ましい態様による化合物と組み合わせて使用することができる。
【0117】
加えて好ましいのは、1つ以上の層が昇華プロセスにより適用されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイスである。この場合、材料は、真空昇華系において、10-5mbar未満、好ましくは10-6未満の初期圧力で蒸着により適用される。初期圧力をこれよりもさらに低いまたは高い圧力、たとえば10-7mbar未満とすることも可能である。
【0118】
同様に、1つ以上の層がOVPD(有機気相堆積)法により、または担体ガス昇華を援用して適用されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイスが好ましい。この場合、材料は、10-5mbar乃至1barの圧力で適用される。この方法の特殊なケースが、OVJP(有機蒸気ジェット印刷)法であり、この方法では、材料がノズルにより直接適用され、したがって構造化される。
【0119】
加えて、1つ以上の層が溶液から、たとえばスピンコーティングにより、または任意の印刷法、たとえばインクジェット印刷、LITI(光誘起熱イメージング、熱転写印刷)、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷もしくはノズル印刷により生成されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセントデバイスが好ましい。この目的のためには可溶性化合物が必要であり、これは、たとえば好適な置換によって得られる。
【0120】
加えて、ハイブリッド法が可能であり、この方法では、たとえば1つ以上の層が溶液から適用され、1つ以上のさらなる層が蒸着により適用される。たとえば、発光層を溶液から適用し、電子輸送層を蒸着により適用することが可能である。
【0121】
これらの方法は一般論として当業者に公知であり、当業者により独創的な技術を用いることなく本発明の化合物を含む有機エレクトロルミネッセントデバイスに適用することができる。
【0122】
本発明の化合物は一般に、有機エレクトロルミネッセントデバイスに使用すると非常に良好な特性を有する。とりわけ、本発明の化合物を有機エレクトロルミネッセントデバイスに使用した場合、先行技術による同様の化合物と比較して寿命が大幅に良好となる。同時に、有機エレクトロルミネッセントデバイスのさらなる特性、とりわけ効率および電圧も、同様に良好となるか、少なくとも同等となる。加えて、化合物は、高いガラス転移温度と、高い熱安定性を有する。
【0123】
本発明をここで以下に続く例によって詳細に説明するが、それによって本発明を限定する意図はない。
【0124】
[例]
合成例
以下に続く合成は、特に断らない限り、保護ガス雰囲気下、乾燥溶媒中で行われる。本発明の化合物は、当業者に公知の合成法よって調製することができる。
a)トリアジン合成:
2,4-ビス(ビフェニル-3-イル)-6-クロロ[1,3,5]トリアジン
【0125】
【化19】
【0126】
500ml四つ口フラスコ中の初期投入の5.2gのマグネシウム(0.215モル)に、50gの3-ブロモビフェニル(214mmol)を200mlのTHFに溶解させた溶液をゆっくりと滴加する。反応混合物を1.5時間加熱して沸騰させ、次いで、室温まで冷却する。第2のフラスコ中の150mlのTHF中の初期投入のシアヌル酸クロリド(17.2g、93mmol)を0℃に冷却する。この温度で、冷却したグリニャール試薬を滴加し、混合物を室温で12時間撹拌する。この時間の後、150mlのHClを反応混合物に添加し、水相をジクロロメタンで3回抽出する。合わせた有機相を水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濃縮する。残留物をEtOHから再結晶させる。収率は32.8g(78mmol、84%)である。
b)2-ビフェニル-3-イル-4,6-ジクロロ[1,3,5]トリアジン
【0127】
【化20】
【0128】
1l四つ口フラスコ中の初期投入の7.9g(330mmol、1.2当量)のマグネシウム削り片に、63g(270mmol、1.0当量)の3-ブロモビフェニル8a(CAS2113-57-7)のTHF溶液を、反応混合物の還流を維持するのに十分に遅い速度で添加する。添加が終了した後、混合物を還流下さらに2時間加熱する。
【0129】
2l四つ口フラスコ中、500mlのTHF中の50g(270mmol、1当量)の2,4,6-トリクロロ-[1,3,5]トリアジン7a(CAS108-77-0)を-10℃まで冷却する。この温度で、グリニャール溶液を温度が0℃を超えないように十分に遅い速度で滴加し、最後に混合物を室温で一晩撹拌する。後処理のため、270mlの1N塩酸を滴加し、混合物を1時間撹拌する。続いて、水相を取り出し、ジエチルエーテルで抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレータで除去する。56g(69%)の無色油状物9aが得られる。
【0130】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0131】
【化21】
【0132】
c)2-ビフェニル-3-イル-4-クロロ-6-(9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-2-イル)-[1,3,5]トリアジン
【0133】
【化22】
【0134】
変形A:
18g(50mmol、1当量)の9,9-スピロビフルオレン-2-イルボロン酸10a(CAS236389-21-2)を、15g(50mmol、1当量)の2-ビフェニル-3-イル-4,6-ジクロロ[1,3,5]-トリアジン9aおよび5.8g(55mmol、1.1当量)の炭酸ナトリウムと共に200mlのジオキサンと、200mlのトルエンと、70mlの水の混合物に溶解させ、混合物を30分間脱気する。続いて、580mg(0.50mmol、1mol%)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(CAS14221-01-3)を添加し、混合物を還流下一晩加熱する。
【0135】
反応混合物を冷却し、300mlの水を添加する。水相を酢酸エチルで3回抽出し、有機相を合わせ、溶媒をロータリーエバポレータで除去する。ヘプタン/トルエン4:1で高温抽出した後、15g(26mmol、51%)の無色固体が得られる。
【0136】
変形B:b)に類似
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0137】
【化23】
【0138】
d)6-ブロモ-2-フルオロ-2’-メトキシビフェニル
【0139】
【化24】
【0140】
200g(664mmol)の1-ブロモ-3-フルオロ-2-ヨードベンゼンおよび101g(664mmol)の2-メトキシフェニルボロン酸および137.5g(997mmol)の四ホウ酸ナトリウムを、1000mlのTHFと600mlの水に溶解させ、脱気する。9.3g(13.3mmol)の塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)と1g(20mmol)の水酸化ヒドラジニウムを添加する。次いで、反応混合物を保護ガス雰囲気下70℃で48時間撹拌する。冷却した溶液にトルエンを補充し、水で繰り返し洗浄し、乾燥させ、濃縮する。生成物をトルエン/ヘプタン(1:2)を用いてシリカゲル上でカラムクロマトグラフィーにより精製する。収率:155g(553mmol)、理論値の83%。
【0141】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0142】
【化25】
【0143】
e)6’-ブロモ-2’-フルオロビフェニル-2-オール
【0144】
【化26】
【0145】
112g(418mmol)の6-ブロモ-2-フルオロ-2’-メトキシビフェニルを2lのジクロロメタンに溶解させ、5℃に冷却する。41.01ml(431mmol)の三臭化ホウ素をこの溶液に90分以内に滴加し、混合物の撹拌を一晩継続する。水を混合物に徐々に添加し、有機相を水で3回洗浄し、NaSO上で乾燥させ、回転蒸発により濃縮し、クロマトグラフィーにより精製する。収率:104g(397mmol)、理論値の98%。
【0146】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0147】
【化27】
【0148】
f)1-ブロモジベンゾフラン
【0149】
【化28】
【0150】
111g(416mmol)の6’-ブロモ-2’-フルオロビフェニル-2-オールを2lのDMF(最大0.003%HO)SeccoSolv(登録商標)に溶解させ、5℃に冷却する。20g(449mmol)の水素化ナトリウム(パラフィンオイル中60%懸濁液)をこの溶液に少しずつ添加し、添加が終了したら混合物を20分間撹拌し、次いで、混合物を100℃に45分間加熱する。冷却後、500mlのエタノールを混合物に徐々に添加し、それを回転蒸発により完全に濃縮し、次いで、クロマトグラフィーにより精製する。収率:90g(367mmol)、理論値の88.5%。
【0151】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0152】
【化29】
【0153】
g)ジベンゾフラン-1-ボロン酸
【0154】
【化30】
【0155】
180g(728mmol)の1-ブロモジベンゾフランを1500mlの乾燥THFに溶解させ、-78℃に冷却する。この温度で、305ml(764mmol/ヘキサン中2.5M)のn-ブチルリチウムを約5分以内に添加し、次いで、混合物を-78℃でさらに2.5時間撹拌する。この温度で、151g(1456mmol)のホウ酸トリメチルを非常に急速に添加し、反応物を徐々に室温にさせる(約18時間)。反応液を水で洗浄し、沈殿した固体と有機相を、トルエンを用いた共沸乾燥に供する。粗生成物を撹拌しながら約40℃でトルエン/塩化メチレンから抽出し、吸引ろ過する。収率:146g(690mmol)、理論値の95%。
【0156】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0157】
【化31】
【0158】
h)2-ジベンゾフラン-1-イル-4,6-ジフェニル[1,3,5]トリアジン
【0159】
【化32】
【0160】
23g(110.0mmol)のジベンゾフラン-1-ボロン酸、29.5g(110.0mmol)の2-クロロ-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、および21g(210.0mmol)の炭酸ナトリウムを、500mlのエチレングリコールジアミンエーテルと500mlの水に懸濁させる。この懸濁液に913mg(3.0mmol)のトリ-o-トリルホスフィン、次いで、112mg(0.5mmol)の酢酸パラジウム(II)を添加し、反応混合物を還流下16時間加熱する。冷却後、有機相を取り出し、シリカゲルを通してろ過し、200mlの水で3回洗浄し、次いで、乾燥するまで濃縮する。残留物をトルエンから、およびジクロロメタン/ヘプタンから再結晶させる。収率は37g(94mmol)、理論値の87%である。
【0161】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0162】
【化33-1】
【0163】
【化33-2】
【0164】
i)2-(8-ブロモジベンゾフラン-1-イル)-4,6-ジフェニル[1,3,5]トリアジン
【0165】
【化34】
【0166】
70g(190.0mmol)の2-ジベンゾフラン-1-イル-4,6-ジフェニル[1,3,5]トリアジンを、2000mlの酢酸(100%)と2000mlの硫酸(95~98%)に懸濁させる。34g(190mmol)のNBSをこの懸濁液に少しずつ添加し、混合物を暗所で2時間撹拌する。その後、水/氷を添加し、固体を取り出し、エタノールで洗浄する。残留物をトルエンから再結晶させる。収率は80g(167mmol)、理論値の87%である。
【0167】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0168】
【化35】
【0169】
チオフェン誘導体の場合、硫酸ではなくニトロベンゼンを使用し、NBSに代えて元素状臭素を使用する。
【0170】
【化36】
【0171】
k)2,4-ジフェニル-6-[8-(4,4,5,5-テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ジベンゾフラン-1-イル][1,3,5]トリアジン
【0172】
【化37】
【0173】
500mlフラスコにおいて、保護ガス下、13.3g(28mmol)の2-(8-ブロモジベンゾフラン-1-イル)-4,6-ジフェニル[1,3,5]トリアジンと8.5g(34mmol、1.2当量)のビス(ピナコラト)ジボラン(CAS73183-34-3)を120mlの乾燥DMFに溶解させ、混合物を30分間脱気する。続いて、8.2g(84mmol、3.0当量)の酢酸カリウムと690mg(0.84mmol、3mol%)の[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)のジクロロメタンとの錯体(CAS95464-05-4)を添加し、混合物を90℃に一晩加熱する。反応終了後、混合物を300mlのトルエンで希釈し、水で抽出する。残留物をヘプタンから再結晶させる。収率は15g(24mmol)、理論値の88%である。
【0174】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0175】
【化38-1】
【0176】
【化38-2】
【0177】
l)2-[8-(4-クロロフェニル)ジベンゾチオフェン-1-イル]-4,6-ジフェニル[1,3,5]トリアジン
【0178】
【化39】
【0179】
17.6g(110.0mmol)の4-クロロフェニル-1-ボロン酸、54.3g(110.0mmol)の2-(8-ブロモジベンゾチオフェン-1-イル)-4,6-ジフェニル[1,3,5]トリアジン、および21g(210.0mmol)の炭酸ナトリウムを500mlのエチレングリコールジメチルエーテルと500mlの水に懸濁させる。この懸濁液に、913mg(3.0mmol)のトリ-o-トリルホスフィンを、次いで112mg(0.5mmol)の酢酸パラジウム(II)を添加し、反応混合物を還流下16時間加熱する。冷却後、有機相を取り出し、シリカゲルを通してろ過し、200mlの水で3回洗浄し、次いで、乾燥するまで濃縮する。残留物をトルエンから、およびジクロロメタン/ヘプタンから再結晶させる。収率は46g(87mmol)、理論値の81%である。
【0180】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0181】
【化40】
【0182】
m)ビフェニル-4-イル(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン
【0183】
【化41】
【0184】
24.0g(142mmol、1.2当量)の4-アミノビフェニル(CAS92-67-1)と32.0g(117mmol、1.0当量)の2-ブロモ-9,9’-ジメチルフルオレン(CAS28320-31-2)を最初に950mlのトルエンに投入し、アルゴンで30分間飽和させる。続いて、1.0g(1.8mmol、0.02当量)の1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(CAS12150-46-8)、350mg(1.6mmol、0.01当量)の酢酸パラジウム(II)(CAS3375-31-3)、および29g(300mmol、2.6当量)のナトリウムtert-ブトキシド(CAS865-48-5)を添加し、混合物を還流下一晩加熱する。反応終了後、混合物を300mlのトルエンで希釈し、水で抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒をロータリーエバポレータで除去する。50mlの酢酸エチルを褐色の油状物に添加し、それをヘプタン/酢酸エチル20:1の混合物に添加する。形成される固体を吸引ろ過し、ヘプタンで洗浄する。収率は29g(80mmol)、理論値の69%である。
【0185】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0186】
【化42-1】
【0187】
【化42-2】
【0188】
【化42-3】
【0189】
【化42-4】
【0190】
n)ビフェニル-4-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-{4-[9-(4,6-ジフェニル-[1,3,5]トリアジン-2-イル)ジベンゾフラン-2-イル]フェニル}アミン
【0191】
【化43】
【0192】
27.8g(80mmol、1.0当量)のビフェニル-4-イル(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミンと42g(80mmol、1.0当量)の2-[8-(4-クロロフェニル)ジベンゾフラン-1-イル]-4,6-ジフェニル[1,3,5]トリアジンを、600mlのトルエンに溶解させ、30分間脱気する。続いて、45g(240mmol、3.0当量)のナトリウムtert-ブトキシド、890mg(0.40mmol、0.050当量)の酢酸パラジウム(II)、および8ml(8.0mmol、0.10当量)の1Mトリ-tert-ブチルホスフィン溶液を添加する。混合物を還流下一晩加熱し、反応終了後、アルミナを通してトルエンと共に2回ろ過する。ロータリーエバポレータで溶媒を除去した後、油状物を少量のTHFに溶解させ、ヘプタンに導入する。残留物をトルエンから、およびヘプタン/トルエン1:1から再結晶させ、最後に高真空下で昇華させる(p=5×10-5mbar、T=350℃)。収率は50g(59mmol)、理論値の75%である。
【0193】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0194】
【化44-1】
【0195】
【化44-2】
【0196】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0197】
【化45-1】
【0198】
【化45-2】
【0199】
o)(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-イル)-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル){7-[9-(4,6-ジフェニル[1,3,5]トリアジン-2-イル)ジベンゾフラン-2-イル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル}アミン
【0200】
【化46】
【0201】
84g(125mmol、1.0当量)の(7-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-イル)-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミンと72g(125mmol、1.0当量)の2,4-ジフェニル-6-[8-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)ジベンゾフラン-1-イル][1,3,5]トリアジンを最初に400mlの水と、400mlのジオキサンと、400mlのトルエンの混合物に投入し、30分間脱気する。280mg(1.25mmol、1mol%)の酢酸パラジウム(II)と1.14g(3.75mmol、3mol%)のトリ-o-トリルホスフィンを添加した後、混合物を還流下一晩加熱し、反応終了後、少量の水を添加する。有機相を取り出し、水で2回抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、残留物をヘプタン/トルエンから再結晶させる。残留物をトルエンから、およびヘプタン/トルエン1:1から再結晶させ、最後に高真空下で昇華させる(p=5×10-5mbar、T=350℃)。96g(96mmol、80%)のベージュ色固体が得られる。
【0202】
同様の方法で、下記の化合物を得ることが可能である:
【0203】
【化47-1】
【0204】
【化47-2】
【0205】
【化47-3】
【0206】
OLEDの製造
以下に続く例I1~I12(表1参照)は、本発明の材料のOLEDにおける使用を提示する。
【0207】
例I1~I12に対する前処理:厚さ50nmの構造化されたITO(インジウムスズ酸化物)でコーティングしたガラスプラークを、コーティングの前に酸素プラズマで、その後アルゴンプラズマにより処理する。これらのプラズマ処理したガラスプラークが、OLEDが適用される基板を形成する。
【0208】
OLEDは基本的に、下記の層構造を有する:基板/正孔注入層(HIL)/正孔輸送層(HTL)/電子阻止層(EBL)/発光層(EML)/任意の正孔阻止層(HBL)/電子輸送層(ETL)/任意の電子注入層(EIL)、および最後にカソード。カソードは、厚さ100nmのアルミニウム層によって形成される。OLEDの正確な構造を、表1に見出すことができる。OLEDの製造に必要な材料を、表2に示す。
【0209】
材料は全て、真空チャンバにおいて熱蒸着により適用される。この場合、発光層は常に、少なくとも1種のマトリックス材料(ホスト材料)と、共蒸発により特定の体積割合でマトリックス材料(複数可)に添加される発光ドーパント(発光体)からなる。EG3:IC1:TEG1(59%:29%:12%)のような形式で与えられる詳細は、ここでは、層中に材料EG3が体積で59%の割合で、IC1が29%の割合で、TEG1が12%の割合で存在することを意味する。同様に、電子輸送層も、2種の材料の混合物からなっていてもよい。
【0210】
OLEDは、標準的な方法で特性決定される。この目的のため、エレクトロルミネッセンススペクトル、電流効率(cd/A単位で測定)、および外部量子効率(EQE、パーセント単位で測定)を、ランバート発光特性を仮定する電流-電圧-輝度特性(IUL特性)から計算される輝度の関数として判定する。電圧、電流効率および外部量子効率は、1000cd/mの輝度について報告される。エレクトロルミネッセンススペクトルは、1000cd/mの輝度で判定され、CIE1931xおよびy色座標がそれから計算される。
【0211】
寿命LT_L1は、一定電流での作動の過程で輝度が初期輝度から特定の割合L1に低下するまでの時間と定義される。したがって、LD_80は、作動時に輝度が初期値の80%に低下している時間である。以下に列挙する例では、40mA/cmの電流密度を作動条件として使用する。
本発明の材料のOLEDにおける使用
本発明の化合物EG1~EG12を、例I1~I12において発光層のマトリックス材料として使用する。これらの実験からのOLEDのエレクトロルミネッセンススペクトルの色座標は、CIEx=0.3およびCIEy=0.6である。したがって、材料は、リン光緑色OLEDの発光層への使用に適している。
【0212】
例I1における本発明OLEDでは、下記のデバイスデータが得られる:
電圧:3.2V
電流効率:62cd/A
EQE:17%
LD_80:160時間
例I2~I12における本発明のOLEDでは、匹敵するデバイスデータが得られる。
【0213】
【表1】
【0214】
【表2-1】
【0215】
【表2-2】
【0216】
【表2-3】