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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】吸引装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 51/02 20060101AFI20221011BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
F16K51/02 A
B25J15/06 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019550679
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2018058046
(87)【国際公開番号】W WO2018178221
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】102017106936.4
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517273548
【氏名又は名称】イョット.シュマルツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(73)【特許権者】
【識別番号】519328752
【氏名又は名称】トルンプ ベルクツォイクマシーネン ゲーエムベーハー + コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ホーエン、ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト、ヨナス
(72)【発明者】
【氏名】ダイス、マグヌス
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-539288(JP,A)
【文献】特開2016-050641(JP,A)
【文献】特表2017-503985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0238497(US,A1)
【文献】米国特許第03270771(US,A)
【文献】米国特許第05388615(US,A)
【文献】特開2013-193206(JP,A)
【文献】特開2008-202644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/02
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧による吸引によって物体を所定位置に保持するための吸引装置(12)であって、弁装置(10)を有し、前記弁装置(10)は、 弁ハウジング(18)と可撓性隔壁(28)を備え、
前記弁ハウジング(18)は、弁内部(20)を取り囲み、真空供給源に接続するための供給接続部(26)と、吸気側(21)とを有し、
前記可撓性隔壁(28)は、制御空間(30)が前記弁ハウジング(18)の内側で前記可撓性隔壁(28)の一方の側に延在し、前記吸気側(21)が前記可撓性隔壁(28)の他方の側に位置するように延び、
前記制御空間(30)は前記供給接続部(26)に接続され、前記制御空間(30)は絞り通路(38)を介して前記吸気側(21)に接続され、前記吸気側(21)が自由吸引の状態で自由流入が可能である場合、前記吸気側(21)から前記絞り通路(38)を介して前記制御空間(30)に流路(40)が設けられ、前記流路(40)は前記制御空間(30)から前記供給接続部(26)を通って続き、
前記絞り通路(38)は流れ抵抗が前記流路(40)に沿って形成されるように設けられ、 前記吸気側(21)が自由吸引の状態で自由流入が可能である場合に、前記吸気側(21)に対する負圧が流れ抵抗のために前記制御空間(30)内に生じ、
前記可撓性隔壁(28)は、前記自由吸引の状態で前記制御空間(30)内に生じる負圧によって変形可能であるように設計され、
前記制御空間(30)の内部に突出するシール突起(44)および関連するシール座(50)が前記制御空間(30)内に設けられ、
前記自由吸引の場合で前記可撓性隔壁(28)の変形時に、前記シール突起(44)が前記シール座(50)に当接されるように前記シール突起(44)および前記シール座(50)が配置され、前記シール突起(44)が前記シール座(50)に当接されたときに、前記絞り通路(38)を通って前記制御空間(30)に流入する前記流路(40)が前記制御空間(30)内で遮断されるように、前記シール突起(44)と前記シール座(50)とは、形成されており、
前記絞り通路(38)は、前記可撓性隔壁(28)を通って延び、出口開口(48)を介して前記制御空間(30)に開口する通路であり、前記シール突起(44)及び前記シール座(50)は、前記シール突起(44)が前記シール座(50)に当接したときに、前記出口開口(48)が前記制御空間(30)内で閉鎖されるように配置されている、吸引装置(12)。
【請求項2】
前記可撓性隔壁(28)は、前記制御空間(30)が前記可撓性隔壁(28)の一方の側に延在し、吸気側空間(32)が前記可撓性隔壁(28)の他方の側に延在するように前記弁ハウジング(18)の内部に延在し、前記吸気側空間(32)は前記絞り通路(38)によって前記制御空間(30)に接続されている、請求項1に記載の吸引装置(12)。
【請求項3】
吸引体(14)が、吸引される物体に適用するために設けられ、前記吸引体(14)が前記弁ハウジング(18)上に配置され、前記可撓性隔壁(28)が前記吸引体(14)内に延在する、請求項1に記載の吸引装置(12)。
【請求項4】
前記シール突起(44)は、前記制御空間(30)に向かって開口する凹部(46)を有し、前記シール突起(44)先細りの円錐形状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸引装置(12)。
【請求項5】
前記絞り通路(38)は、前記凹部(46)に開口している、請求項4に記載の吸引装置(12)。
【請求項6】
前記可撓性隔壁(28)を貫通する前記通路は、前記可撓性隔壁(28)の前記制御空間(30)に面する面で前記出口開口(48)に開口している、請求項1に記載の吸引装置(12)。
【請求項7】
前記シール突起(44)は、前記出口開口(48)を取り囲むビード(58)によって形成されている、請求項6に記載の吸引装置(12)。
【請求項8】
前記可撓性隔壁(28)は、取付領域(54,56)を有し、前記出口開口(48)は、前記取付領域(54,56)の間の中央に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の吸引装置(12)。
【請求項9】
前記可撓性隔壁(28)は、第1の構成および第2の構成に変位することができるように設計および配置され、前記シール突起(44)は前記可撓性隔壁(28)に配置され、前記第1の構成において、前記シール突起(44)は前記シール座(50)に当接され、前記第2の構成において、前記シール突起(44)は、前記シール座(50)から離間される、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸引装置(12)。
【請求項10】
前記制御空間(30)の容積が調整可能であるように、前記弁内部(20)内で前記可撓性隔壁(28)に向かい/離れるように変位可能な調整可能変位体(64)が設けられている、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸引装置(12)。
【請求項11】
前記シール座(50)は、前記弁ハウジング(18)の部分(52)として設計され、前記部分(52)は、前記制御空間(30)内に突出している、請求項1~10のいずれか1項に記載の吸引装置(12)。
【請求項12】
前記シール突起(44)は、前記可撓性隔壁(28)上に配置され、前記可撓性隔壁(28)と一体に形成される、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸引装置(12)。
【請求項13】
前記シール突起(44)は、前記弁ハウジング(18)上に配置され、前記制御空間(30)内に突出し、前記シール座(50)は、前記可撓性隔壁(28)上に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の吸引装置(12)。
【請求項14】
前記シール突起(44)は、前記シール突起(44)の前記シール座(50)までの距離(62)が調整可能であるように、調整可能な保持要素(60)によって前記弁ハウジング(18)上に配置される、請求項13に記載の吸引装置(12)。
【請求項15】
前記可撓性隔壁(28)は、前記シール突起(44)と前記シール座(50)とが、互いに離間した位置で予め張力をかけられるように、張力をかけられた態様で設計され、配置される、請求項1~14のいずれか一項に記載の吸引装置(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の吸引装置に関する。このような吸引装置は、負圧による吸引によって物体を所定位置に保持するために使用される。
【背景技術】
【0002】
これらの吸引装置は、自由吸引中に自動的に閉鎖する特別な機能を提供する弁装置を有する。本開示では、自由吸引とは、関連する吸引装置が、吸引される物体と係合せず、自由に吸引できることを意味する。
【0003】
前記弁装置の自動閉鎖により、吸引点が係合されていないときに、自由吸引によるエネルギーの散逸を回避することができる。前記弁装置は、特に、複数の吸引装置を有する大型のシステムにおいて使用され、全ての吸引点に係合しない物体を取り扱う際のエネルギーを節約し、真空供給の障害を回避する。
【0004】
従来技術では、弁を自動的に閉じることを実現するための様々な選択肢が知られており、様々な物理的動作原理を利用することができる。
【0005】
例えば、DE 34 29 444 A1は、フローバルブを示しており、このフローバルブでは、球形弁本体が流路内に配置されている。弁体は、流路を通る流れの流れパルスに運ばれ、流れが閾値を超えると、シール座に対して移動する。このような弁は、流れパルスによって開放されるので、流れの急上昇の場合には、比較的干渉を受けやすい。特に、吸引プロセスの開始時に、関連する強い流れパルスのために、弁の望ましくない閉鎖が生じる可能性がある。
【0006】
また、流れ抵抗を超える流れの場合に、流れの強さに依存する圧力差が生じるという事実を利用して弁を自動的に閉じることも知られている。
【0007】
例えば、DE 198 14 262 A1は、可撓性壁によって互いに分離された2つの圧力チャンバを有する弁を示している。両方のチャンバは、それぞれ、流れ接続部を介して真空供給部に接続されている。2つのチャンバのうちの1つは、真空供給部に絶えず接続されており、バルブの作動中に吸引流が流れない。他方のチャンバでは、負圧が発生し、その大きさは、バルブの吸引通路からバルブを通って真空供給への自由な流れが可能である範囲に依存する。この弁では、2つのチャンバの間の圧力差が、可撓性壁の変形と、シール座へのシール部分の変位と、弁の閉鎖とをもたらす。したがって、この弁では、真空供給源に並列に接続された2つの圧力チャンバが、弁ハウジング内に収容される。したがって、このタイプの自動的に閉鎖する弁は、特定の設計努力および増大する空間要件を必要とする。
【0008】
請求項1の前提部分の特徴を有する自動閉鎖弁を有する吸引装置は、WO 2015/062778 A1に記載されている。この場合、可撓性の壁が、制御空間を吸気側空間から分離し、制御空間の外側に位置する封止部が、可撓性の隔壁に移動可能に結合される。したがって、この弁は、閉鎖体を閉鎖位置に運ぶ流れパルスによって閉鎖されるのではなく、流れ抵抗のために2つの圧力室の間に圧力差が生じるために閉鎖される。
【0009】
前述の弁装置の場合、再現可能な切換え挙動が達成されることが特に重要である。さらに、弁装置は、それぞれの吸引装置に組み込まれるように設置されることがしばしば想定される。したがって、コンパクトな設計および単純な設計構成が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、吸引装置のための構造的に簡単で簡潔な方法で、再現性があり信頼性のある切り替え挙動を有し長持ちする、自動的に閉鎖する弁装置を提供するという問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1に記載の関連する弁装置を備えた吸引装置によって解決される。吸引装置は、負圧による吸引によって物体を定位置に保持するように設計される(例えば、真空把持装置または真空クランプ装置)。
【0012】
弁装置は、弁内部を画定する弁ハウジングを有する。弁ハウジングは、物体を吸引するための吸引装置(例えば、吸引開口または吸引体)の吸引点に接続される吸気側を有する。弁ハウジングはまた、真空供給源(例えば、真空ポンプ、エジェクタ)に接続するための供給接続部を有する。供給接続部は、弁内部に開口している。
【0013】
可撓性隔壁または膜が設けられ、可撓性隔壁または膜は、可撓性隔壁の一方の側に制御空間が画定され、取入れ側が可撓性隔壁の他方の側に位置するように、吸引装置内に延在する。制御空間は、弁ハウジング内に少なくとも部分的に延在する。制御空間は、供給接続部に接続される。また、制御空間は、絞り通路を介して吸気側に接続されている。
【0014】
吸気側と制御空間との接続は、(吸気点または吸気側が自由流入を可能にする状態で自由吸引の場合)吸気側から絞り通路を通って制御空間に入り、さらに制御空間から供給接続を通る流路が提供されるように設計される。特に、流路は、このように制御空間を通って延びる。
【0015】
絞り通路を通って吸気側から制御空間内に流れ、自由吸引の場合に、流れ抵抗によって吸気側に対して負圧が制御空間内に生じるように、流れ抵抗が画定されるよう絞り通路は形成される。
【0016】
可撓性隔壁は、制御空間内に自由吸引中に生じる負圧によって変形し、負圧の影響下で制御空間の容積が減少するように設計される。
【0017】
この点に関し、制御空間内の流路に沿って十分に大きな流れで、絞り通路内の流動抵抗によって吸気側に対して生じる負圧を利用して、可撓性隔壁を変形させる。本発明の吸引装置では、可撓性隔壁の変形を利用して弁装置を閉鎖する。これにより、自動閉鎖弁の所望の機能が達成される。
【0018】
この目的のために、制御空間の内部に突出するシール突起と、関連するシール座とが設けられる。また、シール座は、制御空間内に配置される。シール突起およびシール座は、可撓性隔壁の変形時に(自由吸引により、または制御空間内で結果として生じる負圧により)、シール突起がシール座に当接されるように、弁内部で互いに対して変位可能であるように配置される。
【0019】
この場合、シール突起およびシール座は、シール突起がシール座に対して当接されると、制御空間内への絞り通路を通る流路が遮断され、遮断が制御空間内で生じるように設計され、配置される。
【0020】
本文脈では、「自由吸引」は、吸引が、自由流入が可能である吸引側の状態で行われること、例えば、吸引装置の非係合吸引点の場合の自由吸引を意味する。その結果、流路に沿った流れが生じる。この流れは、供給接続部によって制御空間に接続された真空供給部によって駆動される。最初に、自由吸引の間、流路に沿って強い流れまたは高い流れ密度が存在し、その結果、絞り通路内の流れ抵抗のために、吸気側に対して制御空間内に負圧が発生する。負圧は、制御空間の圧縮および可撓性隔壁の変形をもたらす。その結果、シール突起がシール座に当接して配置され、弁装置が閉鎖される。負圧は、真空供給によって制御空間に印加され続けるので、吸気側に対して制御空間内に存在する負圧は維持され、弁装置は閉鎖されたままである。
【0021】
しかしながら、吸気側が係合状態での吸引の場合、例えば、関連する吸引装置の吸引開口部に物体が存在する場合、流路に沿って顕著な流れは生じない。その結果、流れ抵抗を介して吸気側に対して制御空間内に顕著な負圧が形成されることはない。その場合、シール突起はシール座に当接して配置されず、流路を開放する。
【0022】
絞り通路の流れ抵抗による、制御空間と吸気側との間の圧力差は、流路に沿った流れの強さに依存する。
【0023】
可撓性隔壁の構成、制御空間の設計、シール突起およびシール座により、流れ強度または流れ密度の閾値を形成することができ、前記閾値を超えると、制御空間と吸気側との間の圧力差が非常に大きくなり、シール突起がシール座に対して当接される。
【0024】
請求項に記載の弁では、吸気側と制御空間とは、流路に沿って前後に位置している。シール突起及び関連するシール座は、両方とも制御空間内に配置される。これは、特に、複数の圧力チャンバを真空供給側と並列に接続する必要がないので、比較的コンパクトな設計をもたらす。弁は、設計に応じて、シール突起、シール座、および可撓性隔壁を共通の構成要素として製造することができるので、構造的に簡単な方法で製造することができる(以下を参照)。有利には、弁の切換特性は、構造的に、例えば、制御空間の可撓性の隔壁、シール突起、およびシール座の設計によって調整することができる。
【0025】
シール突起およびシール座は、互いに対して、閉鎖構成(弁装置が閉鎖される)および解放構成(弁装置が開放される)をとることができる。特に、2つの部分は、シール突起およびシール座が、閉鎖構成と解放構成との間で互いに対して移動可能であるように配置される。閉鎖構成では、シール突起はシール座に対して当接される。解放構成では、シール突起およびシール座は、互いに間隔を置いて配置され、流路を開放する。
【0026】
弁ハウジングの吸気側は、弁ハウジングの開口部として設計することができる。例えば、弁ハウジングが、一方の側で開放し、吸気側に対して可撓性隔壁によって分離された弁内部を画定することが考えられる。しかし、可撓性隔壁は、弁内部の外側、例えば、吸引装置の吸引体内を延びることもでき、この場合、吸引体は、弁ハウジング上に配置される。
【0027】
吸気側は、弁内部を吸引装置の吸引点(例えば、吸引体または吸引開口部)に接続する吸込口を有するように設計することもできる。可撓性隔壁または膜は、特に弁内部に延在する。その結果、可撓性隔壁は、制御空間が可撓性隔壁の一方の側に画定され、吸気側空間が可撓性隔壁の他方の側に画定されるように設けられることが好ましい。この点に関して、可撓性隔壁は、好ましくは、弁内部に延在することができ、制御空間を吸気側空間から分離する。前記吸込口は、好ましくは、吸気側空間に開口している。吸気側空間は、絞り通路を介して制御空間に接続されている。この場合、流路は、特に吸込口から吸気側空間を通って流れ、絞り通路を通って制御空間へと続き、制御空間から供給接続部を通って外へと続く。
【0028】
絞り通路を通って制御空間に入る流路を確実に遮断できるようにするために、絞り通路は、出口開口を備えて制御空間に開口していることが好ましい。出口開口、シール突起、およびシール座は、特に、閉鎖構成が存在するとき、すなわちシール突起がシール座に対して当接されるとき、出口開口が閉鎖される、すなわち制御空間内にあるように配置される。出口開口は、特に、シール突起及び/又はシール座によって閉鎖される。解放構成の場合、出口開口は解放される。
【0029】
有利には、シール突起は、制御空間に向かって開放し、好ましくは漏斗状または円錐状の形状を有する凹部を有するように設計される。凹部を有するシール突起の設計は、多くの異なる構成を可能にし、それによって、閉鎖構成における信頼性のある封止が可能になり、再現可能な切り替え挙動を達成することができる。
【0030】
好ましくは、前記絞り通路は、前記シール突起の前記凹部に開口している。その結果、シール突起をシール座に確実に取り付けることができる。特に、凹部は凹部底部を有し、その上に上述の出口開口が配置される。
【0031】
絞り通路は、特に、可撓性隔壁を通って延びるチャネルとして設計することができる。チャネルは、特に、制御空間に面する隔壁の表面に開口する。特に、シール突起の凹部との相互作用によって、出口開口および凹部は、相互作用する対を形成し、したがって、閉鎖構成の場合、シール突起は、シール座に確実に取り付けられ、凹部は、出口開口を確実に覆う。チャネルが開口する表面は、可撓性隔壁の平面領域であってもよい。しかし、以下に説明するように、チャネルが表面の凹部形状の領域に開口している場合も有利である。
【0032】
信頼性のある閉鎖挙動は、シール突起が、出口開口を取り囲む隔壁のビードによって形成されることによって達成することができる。ビードは、特に、単純に閉じた構造、例えば、環状ビードである。可撓性隔壁とシール突起とのこの組み合わせは、簡潔な方法で製造することができる。
【0033】
可撓性隔壁は、好ましくは、吸引装置に取り付けられる周縁取り付け領域を有する。出口開口は、好ましくは、取付け領域の間の中央に配置される。その結果、閉鎖構成と解放構成との間の大きな切り替え経路を、可撓性隔壁の変形によって提供することができる。取り付け領域は、例えば、可撓性隔壁の連続縁部又はカラーによって形成される。しかしながら、弁の所望の切換挙動に応じて、出口開口が取付け領域の間に偏心して配置されることも有利である。有利な実施形態によれば、可撓性隔壁は、弁内部にまたがり、取り付け領域によって弁ハウジングに固定される。
【0034】
有利な構成では、シール突起は可撓性隔壁に配置されている。このように、隔壁の変形により、制御空間内に負圧が発生すると、シール突起がシール座の方向に移動する。
【0035】
シール突起及び隔壁の材料としては、弾性変形可能なプラスチックやゴムを用いることが好ましい。
【0036】
シール突起は、好ましくは、可撓性隔壁と一体である。特に、可撓性隔壁およびシール突起は、均質な材料を結合して構成される。例えば、シール突起と可撓性隔壁との複合体は、共通の製造ステップで造形または射出成形することができる。
【0037】
弁装置の信頼性のある切換え挙動は、特に、可撓性隔壁が第1の構成および第2の構成に双安定にスナップ式に嵌ることができるように、すなわち、これら2つの構成の間で双安定に前後に動くことができるように、可撓性隔壁が設計および配置されることによって達成することができる。この場合、特に、第1の構成では、シール突起が(上述の閉鎖構成に従って)シール座に対して当接され、第2の構成では、シール突起が(解放構成に従って)シール座から離間されることが規定される。この目的のために、可撓性隔壁は、特に双安定膜として設計される。この場合、双安定膜は、有利には、第2の構成において、シール座に対して機械的な力を及ぼすように設計することができる。これは、弁装置の改善された閉鎖挙動に寄与する。
【0038】
さらなる実施形態は、制御空間の容積が前記移動によって調節可能であるように、弁内部に出入りすることができる調節可能な変位体を提供する。特に、変位体は、制御空間内に、かつ制御空間外に移動させることができる。変位体は、好ましくは、弁ハウジング上に調整可能に配置され、例えば、制御空間の内部に挿入されるか、または制御空間の内部から後退することができる。簡単な設計は、制御空間にねじ込むことができる調整ねじを設けることによって達成することができ、したがって、容積を変更させることができる。制御空間の有効容積を調整することによって、自由吸引中に弁の応答性および応答速度に影響を及ぼすことができる。
【0039】
互いに対して移動可能なシール突起とシール座とから成る対は、例えば、シール座が制御空間内に突出する弁ハウジングの部分として設計されることによって実現され得る。この場合、シール座は、弁ハウジングに対して動かない。このような場合、シール突起は、好ましくは、可撓性隔壁上に配置され、可撓性隔壁の変形時に移動される。
【0040】
弁ハウジング内の供給接続部が、シール座に隣接して、すなわち、突出部を通らずに延び、絞り通路(可撓性隔壁を通って延びる)に対して横方向にオフセットされるように配置される場合、特に有利である。その結果、弁の閉鎖状態においても、可撓性の隔壁に対する大きな力の作用と、シール突起における良好な表面圧力との両方が達成される。
【0041】
しかしながら、シール突起が弁ハウジングに配置され、制御空間内に突出することも考えられる。この場合、関連するシール座は、特に可撓性の隔壁上に配置することができる。単純な設計は、可撓性隔壁自体の表面がシール座を形成することを提供する。この設計では、上述のように、シール突起が凹部を有する場合も有利である。この場合、絞り通路の出口開口部は、特に凹部に当接し、信頼性のあるシールを形成することができる。
【0042】
さらなる設計では、シール突起は、シール突起のシール座までの距離が保持要素を調整することによって調整され得るように、調整可能な保持要素によって弁ハウジング上に配置され得る。これにより、弁の切替点や応答感度を調整することができる。保持要素は、例えば、制御空間に挿入され、制御空間から引き出され得る調整ねじまたはボルトであり得る。調整可能な保持要素は、同時に、上述の意味で変位体を提供することができる。保持要素を挿入することによって、制御空間の有効容積は、減少する。その結果、弁は、自由吸引の間、より迅速かつより敏感に応答する。同時に、シール突起とシール座との間の距離は、保持要素の挿入によって減少され、これはまた、弁のより敏感な応答に寄与する。
【0043】
記載されたすべての実施形態において、可撓性隔壁は、好ましくは、シール突起およびシール座が、互いに離間した位置で予め張力をかけられるように、設計され、特に、張力をかけられた様式で配置される。この点で、シール突起をシール座に向かって移動させるために力が必要である。その結果、弁は、流路に沿って一定の流れ強度が生じるときにのみ閉鎖し、したがって、吸気側空間に対して制御空間内に一定の負圧を形成する。張力の強さにより、弁の切換感度を調整することができる。これは、シール突起が可撓性隔壁上に配置される実施形態、ならびにシール座がハウジングの側面上に配置される実施形態の両方にとって有利であり得る。
【0044】
流れ抵抗を達成するために、絞り通路は基本的に規定されたボトルネックを有することができる。しかし、流れ抵抗は、絞り通路が流路の残りの部分よりも小さい流れ断面を有することによっても提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
以下、図面を用いて本発明をより詳細に説明する。図面は次の通りである。
図1】概説された弁装置を有する本発明による吸引装置。
図2】密封突起に関する詳細を示す図1の拡大断面図である。
図3】本発明による吸引装置の別の実施形態を示し、解放構成が存在するときの、関連する概説された弁装置を示す。
図4】閉鎖構成が存在するときの図3による吸引装置を示す。
図5】本発明による吸引装置のさらなる実施形態を示し、第1の調整状態にある関連する弁装置を示す。
図6図5による吸引装置であって第2の調整状態を示す。
図7】本発明による吸引装置のさらなる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面および以下の説明では、同一または対応する特徴に対して、それぞれ同じ参照符号が使用される。
【0047】
図1は、吸引装置12に構造的に接続された弁装置10を示す。図示の例では、吸引装置12は、負圧によって物体を所定位置に保持するために物体(図示せず)に向けて適用される吸引点16を画定する吸引体14(例えば、ベローズ吸引カップ)を備える。吸引点16は、例えば、ベローズ吸引カップの吸引開口とすることができる。
【0048】
弁装置10は、弁内部20を取り囲む弁ハウジング18を有する。吸引体14は弁ハウジング18に配置されている。弁ハウジング18の一方の側は、吸引点16に連結された吸気側21を有する。好ましくは、弁ハウジング18は接続部22を有し、それによって弁装置を吸引装置(ここでは吸引体14)に接続することができる。図示の例では、接続部22は、吸引体14を引っ張ることができる接続片である。
【0049】
他方の側では、弁ハウジング18は、供給接続部26(図1参照)を有する。供給接続部26は、弁内部20を真空供給部(例えば、真空ポンプ、エジェクタ)に接続するために使用され、例えば、弁ハウジング18を通る吸引通路として設計される。
【0050】
弁内部20には、可撓性の隔壁28が架け渡されている。弁内部20において、可撓性の隔壁28は上部の制御空間30を分離する。吸気側21は、可撓性の隔壁38の、制御空間とは反対の側に位置している。
【0051】
吸気側21は、好ましくは、可撓性の隔壁28(図1参照)によって直接画定される吸気側空間32を備える。吸気側空間は、吸引入口24を介して吸引点16および吸引体14に接続されている。この点に関して、吸引は、吸引入口24を介して弁装置10内に行われる。好ましくは、吸引入口24は、接続部22(図1参照)を通って延びる。
【0052】
有利な設置は、弁ハウジング18が、互いに接続可能な上側ハウジング部分34と下側ハウジング部分36とを備えたツーピース設計を有することによって達成することができる。この場合、可撓性の隔壁28は、可撓性の隔壁28を上側ハウジング部分34と下側ハウジング部分36との間に配置することによって、例えば、それを2つのハウジング部分の間にクランプすることによって、弁内部20内に固定することができる。
【0053】
制御空間30は、供給接続部26を介して真空供給部に接続されている。絞り通路38を介して、制御空間30は付加的に吸気側21に、または場合によっては可撓性の隔壁28の他方の側に延びる吸気側空間32に接続されている。
【0054】
これにより、図3に例として示されている弁装置10を通る流路40が生じ、この流路40は、吸気側21から(吸引入口24から吸気側空間32を通って)絞り通路38を通って制御空間30に入り、少なくとも部分的に上部制御空間30を通って、最後に供給接続部26を通って制御空間30から出る。
【0055】
絞り通路38は、流路40(図1及び図2)に沿ってボトルネック42を形成する。その結果、絞り通路38は、吸気側空間32から制御空間30に流入するための流動抵抗を有している。
【0056】
可撓性の隔壁28は、制御空間30内に突出するシール突起44を有する。シール突起44は、好ましくは、図示の例では円錐形または漏斗形に設計された凹部46を有する。絞り通路38の出口開口48は、凹部46の凹部底部に開口している。図示の例では、絞り通路38は、可撓性の隔壁28を貫通する通路39として形成されている。
【0057】
これは、凹部46、出口開口48、および可撓性隔壁28を通るボトルネック42を有する通路39を含むその設計を示すために、密封突起44の拡大図を示す図2に詳細に示されている。
【0058】
制御空間30内には、シール座50も設けられており、可撓性隔壁28が変形すると、シール突起44を前記シール座50に当接させることができる。図示の例では、シール座50は、弁ハウジング18の制御空間30内に突出する部分52によって形成されている。
【0059】
自由吸引の場合、すなわち、非係合吸引点16において、比較的強い流れが、吸引点16から吸引側21へ、吸気側空間32を通り、絞り通路38を通って制御空間30へ、供給接続部に加えられる負圧のために生じる。流路40に沿った流れは、その後、供給接続部26を通って真空供給部へと続く。絞り通路38内の流れ抵抗により、制御空間30内には、吸気側21又は吸気側空間32に対して負圧が形成される。その結果、可撓性隔壁28は、制御空間30の容積が減少するように変形する。このように、シール突起44は、シール座50に向かって移動し、それに対して当接される。これにより、流路40が閉鎖される。制御空間30は、依然として供給接続部26を介して真空供給部に接続されているので、シール突起44は、シール座50に対して当接される位置(弁の閉鎖構成)に留まる。しかし、図1に示される解放構成が存在する場合、シール突起44は、シール座50から離間される。
【0060】
図1に示すように、可撓性隔壁は、好ましくは、シール突起44と一体で、例えば、均質で可撓性の材料(プラスチック又はゴム)から作られる。
【0061】
好ましくは、可撓性隔壁28は、縁部領域で連続するカラー54を有する。カラー54は、可撓性隔壁28を弁内部20に取り付けるための取り付け領域56の例示的な設計である。
【0062】
図3及び図4に示すように、可撓性隔壁28は、様々な方法で設計することができる。図3及び図4の場合、シール突起44は、出口開口48の周りに連続するビード58によって簡単に形成される。
【0063】
可撓性隔壁28は、例えば、2つの構成で双安定にスナップ移動することができる双安定膜として形成することができる。例として、図3は、可撓性隔壁28の第1の構成を示しており、この構成では、シール突起44がシール座50から離間している。自由吸引の場合に、上述のように、制御空間30内に負圧が形成されると、双安定膜28(可撓性隔壁)には、制御空間30の容積が減少する方向に力が作用する。その結果、双安定膜28は、図4に例として示される第2の構成にスナップ移動され、第2の構成では、シール突起44は、シール座50に対して当接される。
【0064】
図5および図6に示すように、シール突起44は、弁ハウジング側に配置され、制御空間30内に突出することもできる。次に、シール座50は、例えば、制御空間30に面する可撓性隔壁28の表面によって形成される(図5及び図6)。可撓性隔壁28が、制御空間30内の負圧のために、吸引側21に対して上方に膨らむと、シール座は、シール突起44に当接して配置される。特に、シール突起44の凹部46は、可撓性隔壁28を貫通する絞り通路38の出口開口48を覆っている。
【0065】
シール突起44は、好ましくは、調整可能な保持要素60によって弁ハウジング18上に配置される。保持要素60は、保持要素を調整することによってシール突起44をシール座50に向かう方向に前進させることができ、調整可能である。後退も可能である。その結果、シール突起44とシール座50との間の距離62は、解放構成が存在するときに調整可能である(図5)。図6は、保持要素60を調整することによって、シール突起44がシール座50に近づくように調整され、それによって距離62が短縮された状態を示す。この構成では、弁は、制御空間30内で発生する負圧に応じて、より敏感に応答する。
【0066】
さらなる設計のために、調整可能な変位体64が提供され、これは、規定された範囲まで制御空間30内に変位可能である。その結果、制御空間30の有効容積は調整可能である。図5の例では、変位体64は、別個の構成要素を必要とせずに、シール突起44のための保持要素60によって形成される。変位体64が制御空間30内に挿入され、これにより有効容積が減少すると、弁装置10は、自由吸引の場合には、制御空間30内に関連する負圧がより迅速に形成されるので、流れに対してより敏感に応答する。その結果、弁装置10は、より迅速に閉鎖状態に達する。
【0067】
可撓性隔壁28は、吸引体14内に配置することもできる。この点に関して、可撓性の隔壁28は、実際の(不動の)弁ハウジング18の外側に設けることもできる。例えば、図7に示すように、柔軟に設計された吸引体14を弁ハウジング18上に配置することができ、可撓性隔壁28は吸引体14の内部を通って延在する。好ましくは、可撓性隔壁28は、弁ハウジング18の開口部66に直接当接するか又は隣接するように配置される。その結果、弁内部20は、特に制御空間30を形成することができる。吸入側21は、吸入体14内の弁ハウジング18の開口部66に隣接する領域によって形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7