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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】医薬品を投与するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61J 7/04 20060101AFI20221011BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20221011BHJP
【FI】
A61J7/04 B
G16H20/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019550827
(86)(22)【出願日】2018-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2018052541
(87)【国際公開番号】W WO2018166702
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-01-25
(31)【優先権主張番号】62/471,380
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17164116.0
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アラン シュミトリン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ イオッビ
(72)【発明者】
【氏名】エーリッヒ シュトゥーダー
(72)【発明者】
【氏名】アンドルー ブライアント
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/168205(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/168206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/04
G16H 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬品を収容する容器(102)と無線通信装置(104;206;208)とリモートサーバー(120)とを含み、
前記容器(102)は、無線通信ユニット(112)とメモリ(116)とを含んでおり、前記メモリ(116)は、前記容器(102)に収容されている前記医薬品に特に適合した投与計画を格納し、前記投与計画は、患者に前記医薬品を投与する際に遵守されるべき少なくとも1つの投与関連パラメータを指定し、
前記無線通信装置(104;206;208)は、前記容器(102)の前記メモリ(116)から前記投与計画を読み取り、前記投与計画に基づいて、少なくとも1つの動作を実行するように構成されており、
前記無線通信装置(104;206;208)は、前記容器(102)の前記メモリ(116)に格納されているデータの少なくとも一部を前記リモートサーバー(120)と交換するように構成されており、
前記リモートサーバーは、前記無線通信装置に、前記容器を使用不可としてマーキングするデータを前記容器の前記メモリに書き込むように指示することができるように構成されている、
医薬品を投与するためのシステム(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの投与関連パラメータは、
前記医薬品の処方された投与量、
前記医薬品が投与されるべきである、処方された日付および/または時間、
前記医薬品が投与されるべきである、処方された頻度および/または間隔、
前記医薬品が投与されるべきである、処方された投与経路、
前記医薬品が投与されるべきである、処方された場所および/または地理的地域、
前記医薬品が投与されるべき前記患者の識別情報、
前記医薬品を投与するための投与装置(104;206;208)の識別情報、および
前記投与装置(104;206;208)に特有の機能をコントロールするための少なくとも1つのコントロールパラメータ
のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記容器(102)の前記無線通信ユニット(112)は、近距離無線通信(NFC)ユニットであり、前記無線通信装置(104;206;208)は、NFC(118)を介して前記容器(102)の前記メモリ(116)から前記投与計画を読み取るように構成されているNFC対応装置である、かつ/または、
前記容器(102)はラベル(110)を含んでおり、前記無線通信ユニット(112)と前記メモリ(116)は前記ラベル(110)に含まれている、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの動作を実行することは、前記医薬品を投与する前に、前記少なくとも1つの投与関連パラメータを確認するために、前記投与計画をユーザに出力することを含んでいる、請求項1から3までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記無線通信装置(104;206;208)は投与装置であり、前記少なくとも1つの動作を実行することは、前記少なくとも1つの投与関連パラメータに従って前記医薬品の投与を実行することを含んでおり、
前記投与装置(104;206;208)は注入装置であり、前記投与を実行することは、前記患者に前記医薬品を注入することを含んでいる、請求項1から4までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記容器(102)は、前記医薬品の使用のための複数の種類の医療装置(104;206;208)と相互作用するように構成されており、
前記投与計画は、前記複数の種類の医療装置(104;206;208)の各々に対して、各種類の医療装置(104;206;208)に特有の機能をコントロールするための少なくとも1つのコントロールパラメータを指定する、請求項1から5までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記容器(102)の前記メモリ(116)はさらに、前記容器(102)に収容されている前記医薬品に関する使用関連情報を格納しており、
前記使用関連情報は、
前記医薬品の最初の使用日、
前記医薬品の使用回数、および
前記容器(102)内の前記医薬品の残量
のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項1から6までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記容器(102)の前記メモリ(116)はさらに、前記容器(102)に収容されている前記医薬品に関する、投与に関連しない情報を格納しており、
前記投与に関連しない情報は、
前記医薬品の固有の識別情報、
前記医薬品の、正規のものであることの証明書、
前記医薬品の少なくとも1つの保管条件、
前記医薬品の有効期限、
前記医薬品の製造業者の識別情報、
前記医薬品を処方した医師の識別情報、
前記医薬品の流通業者の識別情報、および
前記医薬品が製造されたバッチの識別情報
のうちの少なくとも1つを含んでいる、請求項1から7までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
前記容器(102)の前記メモリ(116)はさらに、前記医薬品に関する追加の情報を含んでいる少なくとも1つのファイルおよび/または前記医薬品に関する追加の情報を提供するウェブサイトへのリンクを格納している、請求項1から8までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
前記投与計画は、アクセス保護されて、前記容器(102)の前記メモリ(116)に格納されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項11】
前記投与計画へのアクセスは、パスワードで保護されており、かつ/または
前記投与計画は、前記容器(102)の前記メモリ(116)内で暗号化されており、前記無線通信装置(104;206;208)は前記投与計画を解読するための解読キーを有している、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記無線通信装置(104;206;208)は、無線通信(122)を介して、前記リモートサーバー(120)と通信するように構成されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のシステム。
【請求項13】
前記リモートサーバー(120)は、前記無線通信装置(104;206;208)によってアクセス可能な補足の投与関連情報を提供し、かつ/または
前記リモートサーバー(120)は、前記投与計画に従って実行されるべき次回の投与をユーザに通知するように構成されており、かつ/または
前記リモートサーバー(120)は、ユーザの要求に応じて、前記容器(102)および/または前記無線通信装置(104;206;208)に関する状況を報告するように構成されている、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
容器(102)に収容されている医薬品を使用するための医療装置(104;206;208)であって、
前記容器は無線通信ユニット(112)とメモリ(116)とを含んでおり、前記メモリ(116)は、前記容器(102)に収容されている前記医薬品に特に適合した投与計画を格納し、前記投与計画は、患者に前記医薬品を投与する際に遵守されるべき少なくとも1つの投与関連パラメータを指定し、
前記医療装置(104;206;208)は、前記容器(102)の前記無線通信ユニット(112)と無線通信することが可能であり、
前記医療装置(104;206;208)は、前記容器(102)の前記メモリ(116)から前記投与計画を読み取り、前記少なくとも1つの投与関連パラメータに従って前記医薬品を使用するように構成され、
前記医療装置(104;206;208)は、前記容器(102)の前記メモリ(116)に格納されているデータの少なくとも一部をリモートサーバー(120)と交換するように構成されており、
前記医療装置は、前記リモートサーバーの指示にしたがって、前記容器を使用不可としてマーキングするデータを前記容器の前記メモリに書き込むことができるように構成されている、
医療装置(104;206;208)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に医療分野に関する。より具体的には、本開示は、医薬品を投与するためのシステム、このシステムで使用するための医薬品を収容する容器ならびに容器に収容されている医薬品を使用するための医療装置に関する。
【0002】
医療分野では、通常は、医薬品が販売されるパッケージ内に入れられている説明用小冊子の形態で、医薬品の使用のための説明を提供することがよく知られている。説明用小冊子には通常、医薬品に関する情報、例えば、医薬品の適用領域および医薬品の医学的効果ならびに患者に医薬品の正しい投与を示す投与量の指示が含まれている。典型的には、説明用小冊子は多くの患者に適用可能な一般的な形で構想されているので、特定の患者専用の特別な使用指示が、医師によって用意された別個の処方指示の形態で提供される必要がある。
【0003】
典型的には、患者に与えられる指示の遵守は患者自身の責任であり、したがって、医薬品の適切な投与は一般的に、信用および与えられた指示に厳格に従う患者の能力に関連する。患者の過失は一般的に、医薬品の不適切な投与につながる可能性があり、したがって、結果として、望まれている医学的効果が適切に得られないことがある。
【0004】
したがって、本開示の課題は、医薬品を患者に投与する際に、処方指示の遵守の改善を助ける技術を提供することである。
【0005】
第1の態様では、医薬品を投与するためのシステムが提供される。このシステムは医薬品を収容する容器を含んでいる。この容器は、無線通信ユニットと、容器に収容されている医薬品に特に適合した投与計画を格納するメモリを含んでいる。投与計画は、医薬品を患者に投与する際に遵守されるべき少なくとも1つの投与関連パラメータを特定する。このシステムはさらに、容器のメモリから投与計画を読み取り、その投与計画に基づいて少なくとも1つの動作を実行するように構成されている無線通信装置を含んでいる。
【0006】
少なくとも1つの投与関連パラメータは、患者への医薬品の適切な投与を確実にするように指図された処方指示に関連し得る。例えば、少なくとも1つの投与関連パラメータは、医薬品を使用する全ての患者に適用可能な医薬品の一般的な使用指示または特定の患者に対して医師によって処方された特別な使用指示に対応するパラメータであってよい。例えば、少なくとも1つの投与関連パラメータは、医薬品の処方された投与量、医薬品が投与されるべきである、処方された日付および/または時間、医薬品が投与されるべきである、処方された頻度および/または間隔、それに従って医薬品が投与されるべきである、処方された投与経路、医薬品が投与されるべきである、処方された場所および/または地理的地域、医薬品が投与されるべき患者の識別情報、それによって医薬品が投与されるべき投与装置の識別情報およびこの投与装置に特有の機能をコントロールするための少なくとも1つのコントロールパラメータのうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0007】
これらのパラメータのうち、例えば、処方された医薬品の投与量は、投与されるべき医薬品の量またはボリューム(例えば、ml、mg等の単位)を示してよく、処方された頻度および/または間隔は、適用されるべき投薬回数ならびにそれに従って医薬品が投与されるべき、対応する間隔(例えば、時間、日、週、月等)を示してよく、処方された投与経路は、それを通じて医薬品が患者の身体に投与されるべき経路(例えば、経口、直腸内、動脈内、筋肉内等)を示してよく、処方された場所は、医薬品が投与されるべき特定の治療センターに対応していてよい。少なくとも1つの投与関連パラメータは、医薬品の製造業者によって規定されてよく、医薬品および容器のライフサイクルの初期段階で容器のメモリに書き込まれてよい。少なくとも1つの投与関連パラメータが、医薬品のライフサイクルの後期段階で、例えば、容器が薬局で患者に渡されるとき等に、容器のメモリに書き込まれてもよい。
【0008】
少なくとも1つの投与関連パラメータは、無線通信装置(または無線通信装置のユーザ、例えば、患者または臨床医)によって、医薬品が正しい患者に、正しい時間、正しい投与量および/または正しい場所で投与されることを確認するために使用されてよく、したがって、与えられた処方指示が厳格に遵守されることを保証するのを助ける。無線通信装置が投与装置である場合、投与装置の識別情報は、正しい装置または正しい種類の装置(例えば、注射器、自動注入装置、パッチ式ポンプ装置等)を用いて、医薬品が投与されることを確認するために使用されてよい。言い換えれば、投与装置の識別情報は、投与装置と容器のペアリングを許可/禁止するためのパラメータとして使用されてよい。投与装置の特定の機能をコントロールするための少なくとも1つのコントロールパラメータは、投与装置が自身の動作を設定することを可能にしてよい。自動注入装置の場合、少なくとも1つのコントロールパラメータは、例えば、容器からの医薬品の注入速度を設定するために注入装置によって使用されてよい。
【0009】
容器の無線通信ユニットは、受動的な無線通信ユニットであってよい。1つの変形形態では、無線通信ユニットは、近距離無線通信(NFC)ユニットであってよく、例えば、RFIDタグを含んでいてよい。容器がラベルを含んでいる場合、無線通信ユニットおよび/またはメモリはラベル内に含まれていてよい。無線通信装置は、NFCを介して容器のメモリから投与計画を読み取るように構成されているNFC対応装置であってよい。同じ目的に対して、他の種類の無線通信技術が使用可能であるということが理解されよう。対応する電力供給が提供されているとすれば、無線通信ユニットが能動的なユニットであるということも考えられる。無線通信装置が、容器のメモリから読み取るだけでなく、例えば、メモリに格納されている投与計画の投与関連パラメータを設定または更新するために、容器のメモリに書き込むこともできる、ということも理解されよう。
【0010】
単純な例では、無線通信装置は、容器のメモリから投与計画を読み取るためにユーザ(例えば、患者または臨床医)によって使用され得るNFC機能を有するスマートフォンであってよい。スマートフォンに必要な機能を提供するために、医薬品の製造業者によって提供される専用のアプリケーションがスマートフォンにインストールされてよい。このような場合、無線通信装置によって実行される少なくとも1つの動作は、医薬品を投与する前に少なくとも1つの投与関連パラメータを確認するために投与計画をユーザに出力することを含んでいてよい。投与計画の出力は、1つの変形形態では、投与計画をユーザに(例えば、テキスト形式で)表示することを含んでいてよいが、聴覚的出力(例えば、ナレーションによる出力または信号音)または(例えば、無線通信装置に設けられたLED等の視覚的インジケータを使用した)視覚的表示等の他の種類の出力も含んでいてよい。
【0011】
別の例では、無線通信装置は投与装置であってよく、この投与装置によって、医薬品が容器から患者に投与されてよく、これは例えば、容器を収容することができ、かつ内部に収容されている医薬品を患者に注入するために使用され得る注射器である。ある変形形態では、投与装置は自動投与装置、すなわち容器が投与装置に収容されているかまたはそうでなければ投与装置に接続されたときに、(例えば、作動されると)医薬品を患者に自動的に投与するように構成されている投与装置であってよい。このような場合、無線通信装置によって実行される少なくとも1つの動作は、少なくとも1つの投与関連パラメータに従って医薬品の投与を実行することを含んでいてよい。自動投与装置は、医薬品を患者に投与する前に少なくとも1つの投与関連パラメータを確認してもよい。少なくとも1つの投与関連パラメータの確認に失敗した場合(例えば、正しい患者、正しい時間、正しい投与量、正しい場所および/または正しい装置が確認できなかった場合)、投与装置は投与の実行を拒否してよく、対応する表示をユーザに出力してよい。1つの特定の例では、無線通信装置は(例えば、自動化された)注入装置であってよく、ここでは投与の実行は、患者に医薬品を注入することを含んでいてよい。このような場合、容器は、例えば、注入カートリッジであってよい。
【0012】
上述したように、投与計画のパラメータとして指定された投与装置の識別情報は、医薬品が正しい装置または正しい種類の装置を使用して投与されることを確認するために使用されてよい。そのような変形形態の改良において、容器は、容器から医薬品を投与するための複数の種類の投与装置と相互作用するように構成されていてよい。言い換えれば、容器は、異なる種類の投与装置(例えば、注射器、自動注入装置、パッチ式ポンプ装置等)と組み合わせて使用することができる汎用容器であってよい。この目的のために、少なくとも1つの投与関連パラメータは、それによって医薬品を容器から投与することができる各種類の投与装置の識別情報を含んでいてよい。各種類の投与装置との完全な互換性のために、投与計画は、複数の種類の投与装置の各々に対して、各種類の投与装置に特有の機能をコントロールするための少なくとも1つのコントロールパラメータを指定してよい。容器が各投与装置の各々にぴったり合って収容される(または投与装置に接続される)ように、容器および各投与装置の両方が形状コーディングされていてよい。
【0013】
投与装置に関して本明細書で述べたことは、特に投与装置だけではなく、容器に収容されている医薬品の使用のために構成されている他の医療装置にも適用できるということが理解されよう。したがって、例えば、より一般的に言えば、無線通信装置は医療装置であってよく、少なくとも1つの動作を実行することは、少なくとも1つの投与関連パラメータに従って医薬品を使用することを含んでいてよい。また、より一般的に言えば、容器は、医薬品の使用のための複数の種類の医療装置と相互作用するように構成されていてよく、ここで投与計画は、複数の種類の医療装置の各々に対して、各種類の医療装置に特有の機能をコントロールするための少なくとも1つのコントロールパラメータを指定する。そのような医療装置は、例えば、後続の投与のために液体または凍結乾燥溶液を調製するために使用される再構成装置であってよい。
【0014】
医薬品(または医薬品の一部)が患者に投与されると、実行された投与を追跡するために、使用関連情報が容器のメモリに格納されてよい。したがって、容器のメモリはさらに、容器に収容されている医薬品に関する使用関連情報を格納してよく、ここで使用関連情報は、医薬品の最初の使用日、医薬品の使用回数および容器内の医薬品の残量のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。無線通信装置は、この目的のために、対応するデータを容器のメモリに書き込むように構成されていてよい。無線通信装置が投与装置である場合、使用関連情報は、投与動作が完了したときに容器のメモリに書き込まれてよい。例えば、自動投与装置が、容器から患者への医薬品の一部の投与を完了した場合、容器内に残っている医薬品の残量が容器のメモリに書き込まれてよく、これによって容器には、自身の充填量に関する最新情報が絶えず提供される。容器がこの投与装置(または別の投与装置)と共に次回、使用されるとき、各投与装置は、例えば、投与計画によって指定された、処方された投与量を満たすのに十分な量が容器内で利用可能かを確認してよい。
【0015】
容器のメモリはさらに、容器に収容されている医薬品に関する、投与に関連しない情報を格納してよい。医薬品に関する、投与に関連しない情報は、医薬品に対する、処方された使用指示に特に関連していないが、製品自体に関する情報を提供する情報であってよい。例えば、医薬品に関する、投与に関連しない情報は、医薬品の固有の識別情報、医薬品が正規のものであることの証明書、医薬品の少なくとも1つの保管条件、医薬品の有効期限、医薬品の製造業者の識別情報、医薬品を処方した医師の識別情報、医薬品の流通業者の識別情報および医薬品が製造されたバッチの識別情報のうちの少なくとも1つを含んでいてよい。
【0016】
この情報のうち、医薬品の固有の識別情報は、製品名または医薬品を固有に識別する別の識別子を含んでいてよい。正規のものであることの証明書は、無線通信装置(または無線通信装置のユーザ、例えば、患者または臨床医)によって医薬品の真偽を確認するために使用されてよい。これは例えば、医薬品に関する詐欺、改ざんまたは偽造の防止に寄与する。医薬品の少なくとも1つの保管条件は、医薬品が保管されるべき温度(例えば、最低温度/最高温度)および/または湿度(例えば、最低湿度/最高湿度)に関する指示を含んでいてよい。製造業者の識別情報、医師の識別情報、流通業者(例えば、薬局または薬剤師)の識別情報および医薬品のバッチの識別情報は、容器のライフサイクルを追跡するために使用されてよく、無線通信装置(または無線通信装置のユーザ、例えば、患者または臨床医)によって、容器に収容されている医薬品についての詳細を確認するために使用されてよい。無線通信装置はさらに、少なくとも1つの保管条件が満たされていることを確認するために、1つまたは複数のセンサを含んでいてよい(または1つまたは複数の遠隔センサと通信するように構成されていてよい)。容器を追跡することを可能にするために、容器のメモリはさらに、容器のための固有の識別子を格納していてよい。
【0017】
容器のメモリは、医薬品に関する追加の情報を含んでいる少なくとも1つのファイルおよび/または医薬品に関する追加の情報を提供するウェブサイトへのリンクも格納していてもよい。少なくとも1つのファイルは、例えば、文書(例えば、PDF文書)またはマルチメディアファイル(例えば、動画ファイル)を含んでいてよい。ウェブサイトは、容器のメモリ自体に格納されていない(またはメモリの制限のために格納することができない)、医薬品に関する情報を含んでいてよい。例えば、少なくとも1つのファイルおよび/またはウェブサイトは、より詳細な製品説明、例えば、製品の、実例となる画像、より詳細な使用法および(例えば、実例となる動画を使用した)処方指示、製造業者に関する詳細な情報等を提供してよい。
【0018】
改善されたデータセキュリティを提供するために、投与計画はアクセス保護されて、容器のメモリに格納されていてよい。そのような1つの変形形態では、投与計画へのアクセスはパスワードで保護されていてよい。したがって、ユーザ(例えば、患者または臨床医)が容器のメモリから投与計画を読み取ることを望む場合、ユーザは無線通信装置でパスワードを入力するように促されてよい。付加的または択一的に、投与計画は容器のメモリ内で暗号化されていてよく、無線通信装置は投与計画を解読するための解読キーを有していてよい。例えば、無線通信装置がスマートフォンである場合、必要な解読キーを保持する、(例えば、医薬品の製造業者によって提供される)専用のアプリケーションがスマートフォンにインストールされてよい。別の変形形態では、投与計画の選択された部分だけがアクセス保護されてよい。アクセス保護は、読み取り操作と書き込み操作では異なって規定されていてよい。容器のメモリに格納されている使用関連情報および投与に関連しない情報に対しても同等のアクセス保護が提供されていてもよい、ということが理解されよう。
【0019】
システムの改良において、システムはさらにリモートサーバーを含んでいてよい。無線通信装置は、無線通信、有利にはWLANまたはBluetooth(登録商標)通信を介してリモートサーバーと通信するように構成されていてよい。リモートサーバーは、例えば、クラウドコンピューティング環境に存在していてよく、インターネットを介して無線通信装置によってアクセス可能であってよい。無線通信装置とリモートサーバーとの間の通信は、例えば、SSL、TLS等のセキュリティプロトコルを使用して保護されていてよい。
【0020】
リモートサーバーは、医薬品の投与に関連する様々な補足サービスを実行するために使用されてよい。そのような1つの変形形態では、リモートサーバーは、無線通信装置によってアクセス可能な補足の投与関連情報を提供してよい。例えば、リモートサーバーは、容器のメモリ自体に格納されていない(またはメモリ制限のために格納することができない)追加の投与関連パラメータを格納していてよい。無線通信装置が投与装置である場合、投与装置は、リモートサーバーから1つまたは複数の追加の投与関連パラメータをダウンロードし、それに応じて医薬品の投与を実行するときにこれらのパラメータを適用してよい。
【0021】
さらに、無線通信装置は、容器のメモリに格納されているデータの少なくとも一部をリモートサーバーと交換するように構成されていてよい。1つの変形形態では、無線通信装置は、容器のメモリに格納されているデータ(またはデータの一部)を、リモートサーバー上に複製してよい。交換されたデータは、追加のサービスをユーザ(例えば、患者または臨床医)に提供するためにリモートサーバーによって使用されてよい。例えば、リモートサーバーは、リモートサーバーに格納されているデータの分析に基づいて、投与計画に従って実行されるべき次の投与をユーザに通知するように構成されていてよい。そのような通知は、ユーザのポケットベルまたはスマートフォン等のユーザのエンド装置にリマインダまたはアラームの形態で送信されてよい。別の例では、リモートサーバーは、ユーザの要求に応じて、容器および/または無線通信装置に関する状況を報告するように構成されていてよい。そのような報告は、例えば、ユーザが進行中の投与の状況をチェックすること、完了した投与の結果をチェックすること、治療セッションを追跡すること、または遵守履歴全体を追跡することを可能にし得る。リモートサーバーに格納されているデータは、集約され、介護者または医療供給者(HCP)と共有されてもよい。別の例では、リモートサーバー内のデータは電子患者記録に格納されてよい。電子患者記録には、例えば、この患者に処方された他の薬等のさらなる患者関連情報が格納されてよい。電子患者記録に格納されている情報に基づいて、分析を実行して、例えば、患者に処方された1つまたは複数の薬が相容れない場合、警告を生成することが一般的に考えられる。
【0022】
さらなる変形形態では、無線通信装置は、例えば、投与計画の少なくとも1つの投与関連パラメータを更新するために、または容器のメモリに格納されている他のデータを更新するために、容器のメモリにデータを書き込むようにリモートサーバーによって指示されてよい。一例として、医薬品が製造されたバッチが製造不良のために回収されたことに遭遇した場合、リモートサーバーは無線通信装置に、データを容器のメモリに書き込み、容器のさらなる使用を防ぐために容器を使用不可としてマーキングすることを指示してよい。容器を回収するための要件は、容器のメモリまたはリモートサーバーにそれぞれ格納されているバッチ識別情報を通じて識別されてよい。無線通信装置が投与装置である場合、投与装置は、容器が使用不可としてマークされているか否かを確認し、それに応じて容器からの医薬品のあらゆる投与を遮断するように構成されていてよい。
【0023】
第2の態様では、医薬品を収容する容器が提供される。容器は、無線通信ユニットと、容器に収容されている医薬品に特に適合した投与計画を格納するメモリとを含んでいる。投与計画は、医薬品を患者に投与する際に遵守されるべき少なくとも1つの投与関連パラメータを指定する。
【0024】
第3の態様では、容器に収容されている医薬品を使用するための医療装置が提供される。容器は、無線通信ユニットと、容器に収容されている医薬品に特に適合した投与計画を格納するメモリとを含んでいる。投与計画は、医薬品を患者に投与する際に遵守されるべき少なくとも1つの投与関連パラメータを指定する。医療装置は、容器の無線通信ユニットと無線通信することが可能である。医療装置はさらに、容器のメモリから投与計画を読み取り、少なくとも1つの投与関連パラメータに従って医薬品を使用するように構成されている。
【0025】
第2の態様による容器および第3の態様による医療装置の両方は、第1の態様によるシステムに関して上述した容器および医療装置、特に投与装置に対応し得る。容器および医療装置、特に投与装置について上述した全ての特徴を、第2の態様による容器および第3の態様による医療装置にも適用することができる。したがって、不要な繰り返しは省略されている。
【0026】
以降で、本開示は、図面に示された例示的な実施形態を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示による医薬品を収容する容器と、対応する投与装置と、リモートサーバーとを含んでいる例示的なシステムを示す図である。
図2図1の容器が複数の種類の投与装置と相互作用することができることを示す図である。
図3図1の容器のメモリの例示的なメモリ構造を概略的に示す図である。
図4】製造から廃棄までの図1の容器の例示的なライフサイクルを示す図である。
【0028】
以降の説明では、限定ではなく説明を目的として、本開示の完全な理解を提供するために、具体的な詳細が述べられる。本開示がこれらの具体的な詳細から逸脱する他の実施形態で実施され得ることが、当業者に明らかであろう。
【0029】
図1は、本開示に従って患者に医薬品を投与するための例示的なシステム100を示している。システム100は、医薬品を収容する容器102と、容器102に収容されている医薬品を患者に投与するための投与装置104とを含んでいる。図示の例では、投与装置104は自動注入装置として提供されており、容器102は液体形態の医薬品を収容し、かつ投与装置104のスライドインモジュール106内に、ぴったり合って配置されるように形状コーディングされた円筒形を有する注入カートリッジとして提供されている。容器102がスライドインモジュール106内に配置され、(図1に示されているように)投与装置104内にスライドされると、投与装置104は、容器102から医薬品を自動的に投薬してよく、それによって医薬品を患者に投与する。投与装置104は、注入針を装置の外側(例えば、図示されていない投与装置104の底面)に延ばすように構成されていてよい駆動機構を、この目的のために含んでいてよく、これを通じて、医薬品が患者の体内に注入されてよい。例えば、投与装置104の底面が患者の体に対して平らに位置しているときに、投与装置104のボタン108を押すことによって、この駆動機構が作動されてよい。
【0030】
容器102は、容器102の外周に貼り付けられ、容器102内に収容されている医薬品に関する情報(例えば、製品名、バッチ番号、有効期限等)を示す印刷ラベル110を含んでいる。図1は、例示目的のために、例示的なラベル110を、付加的に、貼り付けられておらず、かつ巻き付けられていない形態で、容器102の下方に示している。ラベル110は、近距離無線通信(NFC)ユニット112を含んでおり、これは外側から見えないように、ラベル110のシート内に統合されているRFIDアンテナ114を有している。例示目的のために、NFCユニット112は、図1においてラベル110の下方に、分離した形態で示されている。NFCユニット112は、容器102内に収容されている医薬品に特に適合した投与計画が格納されているメモリ116を含んでいる。上述したように、投与計画は、医薬品を患者に投与する際に遵守されるべき少なくとも1つの投与関連パラメータを指定してよい。
【0031】
投与装置104は、NFC対応インターフェースを含んでおり、NFC(参照番号118によって示されている)を使用して、NFCユニット112と通信することが可能である。容器102が投与装置104内に挿入されると、投与装置104は、NFCを介してメモリ116から投与計画を読み取り、投与計画によって指定された少なくとも1つの投与関連パラメータを、患者への医薬品の自動的な投与のために考慮に入れてよい。例えば、投与装置104のボタン108が押されると、投与装置104は、患者の識別情報、処方された日付/時間、処方された場所および/または投与計画によって指定された投与装置の識別情報をチェックしてよい。これは医薬品が正しい患者に、正しい時間に、正しい場所で、かつ/または正しい装置を使用して投与されることを確認するためである。確認が成功した場合、投与装置104は、投与計画によって指定された、さらなる投与関連パラメータ、例えば処方された投与量および/または投与装置特有のコントロールパラメータによって示される注入速度に従って医薬品の投与を実行してよい。他方で、確認が成功しなかった場合、投与装置104は医薬品の投与の実行を拒否してよく、対応する表示を患者に出力してよい。
【0032】
医薬品(または医薬品の一部)が患者に投与されると、投与装置104は、実行された投与を追跡するために、容器102のメモリ116に使用関連情報を書き込んでよい。例えば、容器102が初めて使用される場合、投与装置104はメモリ116に最初の使用日をセットしてよい。他には、投与装置104は、メモリ116内の医薬品の使用回数を更新してよい。投与装置104は、容器102内の医薬品の残りの充填量も更新してよく、容器102がこの投与装置104(または別の投与装置)と共に次回、使用されるとき、各投与装置は、次の投与を実行する前に、投与計画によって指定された、処方された投与量を満たすのに十分な充填量が容器102内で利用可能か否かを確認してよい。さらに、使用関連情報は、実行された投与を追跡するために使用されるだけでなく、この情報は一般的に、容器102が使用されてしまったことを示すので、投与が実行される前に、完全に満たされた容器が既に使用されてしまったか(しまったらしいか)否かを投与装置104によってチェックすることによって、違法な容器補充を防止するために使用されてもよい。別の例では、いくつかの容器を使用した部分投与をサポートするために、使用関連情報が、投与装置104のメモリ自体に格納されてもよい。例えば、容器102内の医薬品の残りの充填量が、投与計画に従って処方された投与量を満たすのに十分でない場合、残りの充填量が、第1の投与ステップにおいて、容器102から投与されてよく、処方された投与量を満たすために投与されるべき残りの必要量を示す値が、投与装置104に格納されてよい。この場合にはこの容器102が、新たな(例えば、完全に満たされた)容器によって置き換えられてよく、その後、残りの必要量が、ここから、第2の投与ステップにおいて、投与装置104によって投与されてよい。
【0033】
上述したように、投与計画および医薬品に関する使用関連情報に加えて、容器102のメモリ116はさらに、医薬品に関する、投与に関連しない情報および/またはファイルまたは医薬品に関する追加の情報を提供するウェブサイトへのリンクを格納していてよい。
【0034】
図1に見られるように、システム100は、図1のパーソナル/ラップトップコンピュータによって例示的に示されているリモートサーバー120も含んでいる。リモートサーバー120には、他の任意の種類のコンピューティングシステムが使用されてよいということが理解されよう。これは例えば、クラウドコンピューティング環境に存在し得る物理的または仮想サーバコンピュータ、またはスマートフォンでもある。NFC対応インターフェースの他に、投与装置104は無線通信インターフェースも含んでおり、したがって無線通信(参照番号122で示されている)、有利にはWLANまたはBluetooth(登録商標)を用いてリモートサーバー120と通信することが可能である。投与装置104は、インターネットを通じてリモートサーバー120にアクセスしてよい。投与装置104とリモートサーバー120との間の通信は、例えば、SSL、TLS等のセキュリティプロトコルを使用して保護されていてよい。また、投与装置104が、中間装置を介してリモートサーバー120と通信してよいということが理解されよう。例えば、中間装置は、一方では投与装置104と通信することができ、他方ではリモートサーバー120(例えば、クラウドコンピューティング環境に存在するサーバー)と通信することができる、(例えば、臨床医または患者の)パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータまたはスマートフォンであってよい。
【0035】
リモートサーバー120は、医薬品の投与に関連する様々な補足サービスを実行するために使用されてよい。例えば、リモートサーバーは、投与装置104によってアクセス可能な補足の投与関連情報を提供してよい。これは、容器102のメモリ116に格納されていない(またはメモリ制限のために格納することができない)追加の投与関連パラメータ等である。投与装置は、リモートサーバー120から追加の投与関連パラメータをダウンロードし、それに応じて医薬品の投与を実行するときにこれらのパラメータを適用してよい。投与装置104は、メモリ116に格納されているデータの少なくとも一部をリモートサーバー120と交換してもよい。例えば、投与装置104は、メモリ116に格納されているデータ(またはデータの一部)を、リモートサーバー120上に複製してよい。交換されたデータは、追加のサービスをユーザ(例えば、患者または臨床医)に提供するためにリモートサーバー120によって使用されてよい。例えば、リモートサーバー120は、交換または複製されたデータの分析に基づいて、投与計画に従って実行されるべき次回の投与をユーザに通知してよい。そのような通知は、例えば、ユーザのポケットベルまたはスマートフォンにリマインダまたはアラームの形態で送信されてよい。別の例では、リモートサーバー120は、ユーザの要求に応じて、容器102および/または投与装置104に関する状況を報告してよい。そのような報告は、例えば、ユーザが進行中の投与の状況をチェックすること、完了した投与の結果をチェックすること、治療セッションを追跡すること、または遵守履歴全体を追跡することを可能にし得る。リモートサーバー120に格納されているデータは、集約され、介護者または医療供給者(HCP)と共有されてもよい。別の例では、リモートサーバー120内のデータは電子患者記録に格納されてよい。電子患者記録には、例えば、この患者に処方された他の薬等のさらなる患者関連情報が格納されてよい。電子患者記録に格納されている情報に基づいて、分析を実行して、例えば、患者に処方された1つまたは複数の薬が相容れない場合、警告を生成することが一般的に考えられる。
【0036】
リモートサーバー120はさらに、例えば、投与計画の少なくとも1つの投与関連パラメータを更新するために、または他のデータをメモリ116に書き込むために、メモリ116にデータを書き込むように投与装置104に指示してよい。一例として、医薬品が製造されたバッチの製造不良のための回収に遭遇した場合、リモートサーバー120は投与装置104に、データを容器102のメモリ116に書き込み、容器102のさらなる使用を防ぐために容器102を使用不可としてマーキングすることを指示してよい。容器102を回収するための要件は、メモリ116またはリモートサーバー120にそれぞれ格納されているバッチ識別情報を通じて識別されてよい。医薬品の投与を実行する前に、投与装置104は、容器102が使用不可としてマークされているか否かを確認し、それに応じて容器102からの医薬品のあらゆる投与を遮断してよい。
【0037】
システム100の上記の説明は単なる例示であり、本開示による様々な他の実施形態が考えられる、ということが理解されよう。例えば、医薬品は必ずしも液体形態で提供される必要はなく、容器は必ずしも円筒形注入カートリッジである必要はない。本開示の原理が、例えば、他の種類の適切なパッケージで提供される錠剤等、任意の他の適切な形態の医薬品および対応する容器を用いて実践されてよい、ということが理解されよう。容器のNFCユニットが必ずしも容器に貼り付けられたラベルを備える必要はないが、例えば、容器自体に一体化されてよい、ということが理解されよう。当業者にはさらに、投与装置と容器との間の通信を実現するために、他の種類の受動的な無線通信技術(すなわち、NFC以外の無線通信技術)が使用されてよい、ということが明らかであろう。対応する電源が利用可能であれば、容器の無線通信ユニットは能動的なユニットとして提供されてもよい。
【0038】
さらに、他の種類の無線通信装置(すなわち自動注入装置104以外の装置)が、容器のメモリからデータを読み取り、容器のメモリにデータを書き込むために使用されてよい、ということが理解されよう。例えば、無線通信装置は、容器の無線通信ユニットと通信し、メモリからデータを読み取りかつ/またはメモリにデータを書き込むために必要な機能(例えば、NFC機能)を有するスマートフォンであってよい。スマートフォンは、必要な機能を提供するためにインストールされた(例えば、医薬品の製造業者によって提供された)専用のアプリケーションを有していてよい。スマートフォンは、ユーザ(例えば、患者または臨床医)による確認のために容器から投与計画を読み取るため、または医薬品の真偽を確認するために、医薬品の、正規のものであることの証明書のような、投与に関連しない情報等の他のデータを容器のメモリから読み取るために使用されてよい。
【0039】
別の例では、無線通信装置は、手動で操作可能な注射器等の自動化されていない投与装置であってよい。自動投与装置104と同様に、自動化されていない投与装置は、例えば、医薬品が正しい患者に、正しい時間に、正しい場所で、かつ/または正しい装置を使用して投与されることを確認してよい。自動化されていない投与装置は、例えば、ディスプレイ上のテキスト形式を介して、聴覚的出力を通じて、または装置のハウジングに設けられたLED等の視覚的インジケータを通じて、確認の結果に対応する表示を出力してよい。
【0040】
さらに、リモートサーバー120と同様に、投与装置104(または別の種類の投与装置)が、無線通信122を介して、ユーザのラップトップまたはスマートフォン等のエンドユーザ装置と通信するように構成されていてよい、ということが理解されよう。これらの装置は、例えば、ユーザが各投与装置の状況を設定または閲覧することを可能にする、(例えば、投与装置の製造業者によって提供された)インストールされた、専用のアプリケーションを有していてよい。
【0041】
図2は、容器102が複数の種類の投与装置と相互作用するように構成されていてよい、ということを示す説明図である。したがって、容器102は、異なる種類の投与装置と組み合わせて使用されてよい、汎用容器であってよい。図2の例に示されているように、容器102は、自動注入装置104と共に使用されるだけでなく、自動のパッチ式ポンプ装置208と同様に手動で操作可能な(すなわち、自動化されていない)注射器206と組み合わせて使用されてもよい。これらの装置の各々との完全な互換性のために、容器102のメモリ116に格納されている投与計画は、各装置の識別情報を含んでいてよく、容器102が各装置に挿入されると、各装置は、容器102が正しい装置に挿入されていることを確認してよい。各装置はそれに応じて確認の結果を出力してよく、確認が否定的である場合には容器102からの医薬品の投与を遮断してよい。自動投与装置の場合、メモリ116に格納されている投与計画はさらにコントロールパラメータを含んでいてよく、これは、これらの装置に特有の機能をコントロールする。例えば、自動注入装置104の場合、投与計画において指定されているコントロールパラメータを使用して、容器102からの医薬品の注入速度を設定することができる。投与装置104、206および208の各々は、容器102を受容する受容部分を有していてよい。容器102および各受容部分は、容器102が受容部分にぴったり合って収容されるように形状コーディングされていてよい。容器102は、図2に示された種類の投与装置とだけ相互作用するように構成されているのではなく、例えば、再構成装置等の他の種類の医療装置とも相互作用するように構成されている、ということが理解されよう。再構成装置は、例えば、後続の投与のために液体または凍結乾燥溶液を調製するために使用されてよい。
【0042】
図3は、容器102のメモリ116の例示的なメモリ構造を概略的に示している。示されているように、メモリ116は、5つの異なる種類のメモリ領域、すなわち静的情報領域302、製造業者情報領域304、可変データ領域306、処方および使用領域308、および初期化ベクトル領域310を含んでいてよい。これらの種類の中で、静的情報領域302は、製造中に書き込まれてもよく、その後書き込み保護されてよい変更不可能な情報を格納するために使用されてよい。この情報は、例えば、医薬品のバッチ識別情報、有効期限または保管条件(例えば、保管温度/湿度)を含んでいてよい。製造業者情報領域304は、NFC対応スマートフォン等の既製のNFC対応装置によって読み取り可能な情報を格納するために使用されてよく、これによってユーザは、専有の読み取り機器を使用する必要なく、製造業者および医薬品に関する情報を識別することができる。製造業者情報領域304に格納されている情報は、例えば、製造業者の識別情報、固有の製品識別情報またはファイルまたは医薬品に関する追加の情報を提供するウェブサイトへのリンクを含んでいてよい。この領域の情報は、既製の装置によるその読みやすさを保証するためにASCIIフォーマットで格納されていてよい。可変データ領域306は、容器102に収容されている医薬品に応じて異なっていてよい雑多な情報を格納するために使用されてよい。この領域に格納されている情報は、所定のフォーマットおよび固定の位置または長さを有していなくてよい。この領域に格納されている情報は、投与装置の識別情報または投与装置に特有の機能をコントロールするためのコントロールパラメータを含んでいてよい。処方および使用領域308は、医薬品の処方および使用に関する情報を格納するために使用されてよい。そのような情報は、例えば、処方された投与量、処方された日付および/または時間、患者の識別情報、容器102の使用回数または残りの充填量を含んでいてよい。最後に、初期化ベクトル領域310は、暗号化および解読に使用される情報を含んでいてよい。
【0043】
所望のアクセス保護を実行するために、各メモリ領域に専用の読み取りレベルおよび/または書き込みアクセスが割り当てられていてよい。例えば、静的情報領域302および製造業者情報領域304は、自由に読み取り可能であってよいが、医薬品の製造業者によってのみ書き込み可能であってよい。他方で、可変データ領域306、処方および使用領域308および初期化ベクトル領域310は、医師または薬局によって書き込み可能であってよいが、それらの可読性は一般的に制限されていてよい。読み取り保護は、例えば、パスワード保護によって実現されていてよい。付加的または択一的に、必要な解読キーを保持する無線通信装置だけが各メモリ領域から読み取りを行うことができるように、各メモリ領域に格納されている情報を暗号化することによって読み取り保護が実現されていてよい。
【0044】
図4は、容器102の例示的なライフサイクルを示している。図4において、用語「Eラベル」、「薬」および「クラウド」は、上述した用語「ラベル」、「医薬品」および「リモートサーバー」にそれぞれ対応する。ライフサイクルは、製造、流通、薬局、使用および廃棄の段階を含んでいてよい。
【0045】
製造段階において、医薬品に関する初期情報は、医薬品の製造業者によってラベル110のメモリ116に(例えば、上述したように静的情報領域302および製造業者情報領域304に)書き込まれてよい。次に、ラベル110が、医薬品が予め充填されている容器102に貼り付けられてよい。ラベル110のNFC機能性に関するテストが、貼り付けの前および後に実行されてよい。ラベル110のテストが成功すると、固有のラベル識別子(例えば、NFCユニット112の固有のシリアルナンバー)ならびに医薬品に関する情報がリモートサーバー120にアップロードされてよく、これによって容器102および医薬品のトレーサビリティが保証される。次いで、流通および販売のために、容器102が他の容器とともに、カートン内に集められてよい。流通段階では、カートンが箱内に入れられて出荷されてよい。
【0046】
後続の段階では、薬局(または他の流通センター)が容器102を受け取り、容器102のさらなるトレーサビリティのためにラベル110のメモリ116に流通業者識別情報(例えば、薬局ID)を書き込んでよい。ラベル110のメモリ116に格納されている、正規のものであることの証明書をチェックすることによって、薬局が医薬品の真偽を確認してよい。確認が失敗した場合、対応するデータをラベル110のメモリ116に書き込むことによって、容器102が使用不可としてマークされてよい。さらに、薬局は医師から患者特有の処方を受け取り、対応する処方指示をラベル110のメモリ116に書き込んでよく、これによって、ラベル110のメモリ116に格納されている投与計画が、受け取った処方指示を適切に反映する。メモリ116に書き込まれたデータが再び、リモートサーバー120にアップロードされてよく、容器102がその後、例えば、患者または臨床医に渡されてよい。
【0047】
使用段階は、容器102から患者に医薬品を投与するため使用される投与装置の種類に関連して異なっていてよい。無線通信に対応していない手動の注射器が使用される場合、例えば、医薬品が正しい患者に、正しい時間かつ/または正しい場所で投与されることを確認するために、容器102のラベル110がNFC対応装置によって(例えば、製造業者によって提供されたアプリケーションを有するスマートフォンによって)スキャンされてよい。注射器を用いた注入が完了すると、NFC対応装置を使用して、ラベル110のメモリ116に使用関連情報が書き込まれる。他方で、(自動注入装置104等の)自動注入装置が使用される場合、容器102は装置内に配置されてよく、装置は(例えば、作動されると)、患者に投与する前に、医薬品の自動確認を実行してよい。確認が成功した場合、装置は医薬品の自動投与を実行してよく、完了時に装置は使用関連情報をラベル110のメモリ116に書き込む。容器102の使用を追跡するために、使用関連情報が、リモートサーバー120にアップロードされてもよい。最後に、医薬品が部分的にまたは完全に投薬され、容器102がもはや使用できなくなった場合、容器102が廃棄されてよい。
【0048】
本明細書に提示された技術の利点は前述の説明から完全に理解されると思われ、本開示の範囲から逸脱することなく、またはその全ての有利な効果を犠牲にすることなく、その例示的な態様の形態、構成および配置において様々な変更がなされ得ることが明らかである。本明細書において提示された技術は多くの方法で変えることができるので、本開示が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきであることが明らかであろう。
図1
図2
図3
図4