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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】半導体装置、及び半導体装置の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20221011BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221011BHJP
   H01L 21/8242 20060101ALI20221011BHJP
   H01L 27/108 20060101ALI20221011BHJP
   H01L 21/8239 20060101ALI20221011BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20221011BHJP
【FI】
H01L29/78 617K
H01L29/78 618B
H01L29/78 618E
H01L29/78 618F
H01L29/78 627A
H01L29/78 616M
H01L29/78 617S
H01L27/108 321
H01L27/108 671Z
H01L27/105 441
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019571124
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 IB2019050802
(87)【国際公開番号】W WO2019155329
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2018021908
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】栃林 克明
(72)【発明者】
【氏名】吉住 健輔
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-063192(JP,A)
【文献】特開2016-213468(JP,A)
【文献】特開2016-174143(JP,A)
【文献】特開2017-120896(JP,A)
【文献】特開2016-167584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/8242
H01L 27/108
H01L 21/8239
H01L 27/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属酸化物層と、第2の金属酸化物層と、第1の絶縁層と、第2の絶縁層と、第3の絶縁層と、第4の絶縁層と、第5の絶縁層と、第1の導電層と、を有し、
前記第1の金属酸化物層は、第1の領域と、前記第1の領域を挟む第2の領域及び第3の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域との間に第4の領域と、前記第1の領域と前記第3の領域との間に第5の領域と、を有し、
前記第1の導電層は、前記第1の領域と重畳する部分を有し、
前記第1の絶縁層は、前記第1の導電層の側面及び下面を覆い、
前記第2の金属酸化物層は、前記第1の絶縁層の側面及び下面を覆い、且つ、前記第1の領域の上面と接し、
前記第2の絶縁層は、前記第2の領域の上面と接する部分、及び前記第3の領域の上面と接する部分を有し、且つ、前記第2の金属酸化物層の側面と接する部分を有し、
前記第3の絶縁層は、前記第2の絶縁層上に位置し、且つ、前記第2の金属酸化物層の側面と接する部分を有し、
前記第4の絶縁層は、前記第3の絶縁層上に位置し、且つ、前記第2の金属酸化物層の側面と接する部分を有し、
前記第5の絶縁層は、前記第1の導電層の上面、前記第1の絶縁層の上面、前記第2の金属酸化物層の上面、及び前記第4の絶縁層の上面に接し、
前記第2の領域、及び前記第3の領域は、第1の元素を含み、
前記第4の領域及び前記第5の領域は、前記第1の元素を含み、
前記第2の領域及び前記第3の領域は、前記第4の領域または前記第5の領域よりも、前記第1の元素を多く含み、
前記第1の元素は、リン、ホウ素、アルミニウム、またはマグネシウムである、半導体装置。
【請求項2】
請求項において、
前記第2の絶縁層は、前記第3の絶縁層よりも前記第1の導電層側に突出する部分を有する、半導体装置。
【請求項3】
第1の金属酸化物層を覆って第1の絶縁膜を形成し、
前記第1の絶縁膜上に、前記第1の金属酸化物層と重畳する第1の層を形成し、
前記第1の金属酸化物層の、前記第1の層に覆われていない部分に、前記第1の層をマスクとして前記第1の絶縁膜を介して第1の注入処理を行ない、
前記第1の層の側面及び上面、並びに前記第1の絶縁膜の上面を覆う、第2の絶縁膜を形成し、
前記第2の絶縁膜の前記第1の層の側面を覆う部分、及び前記第1の層をマスクとして、前記第2の絶縁膜と前記第1の絶縁膜を介して第2の注入処理を行ない、
前記第1の層の上面を露出させるように、平坦化処理を行ない、
前記第1の層を除去する、工程を有し、
前記第1の注入処理及び前記第2の注入処理は、イオン注入法により第1の元素を注入する処理であり、
前記第2の注入処理は、前記第1の金属酸化物層に前記第1の注入処理よりも多くの前記第1の元素を注入する条件で行われ、
前記第1の元素は、リン、ホウ素、アルミニウム、またはマグネシウムである、半導体装置の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、ならびに半導体装置の作製方法に関する。または、本発明の一態様は、半導体ウエハ、モジュール、および電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能し得る装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶装置は、半導体装置の一態様である。表示装置(液晶表示装置、発光表示装置など)、投影装置、照明装置、電気光学装置、蓄電装置、記憶装置、半導体回路、撮像装置、および電子機器などは、半導体装置を有すると言える場合がある。
【背景技術】
【0003】
トランジスタに適用可能な半導体薄膜として、シリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。酸化物半導体としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛などの一元系金属の酸化物のみでなく、多元系金属の酸化物も知られている。多元系金属の酸化物の中でも、特に、In-Ga-Zn酸化物(以下、IGZOとも呼ぶ。)に関する研究が盛んに行われている。
【0004】
IGZOに関する研究により、酸化物半導体において、単結晶でも非晶質でもない、CAAC(c-axis aligned crystalline)構造およびnc(nanocrystalline)構造が見出された(非特許文献1乃至非特許文献3参照。)。非特許文献1および非特許文献2では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いてトランジスタを作製する技術も開示されている。さらに、CAAC構造およびnc構造よりも結晶性の低い酸化物半導体でさえも、微小な結晶を有することが、非特許文献4および非特許文献5に示されている。
【0005】
さらに、IGZOを活性層として用いたトランジスタは極めて低いオフ電流を持ち(非特許文献6参照。)、その特性を利用したLSIおよびディスプレイが報告されている(非特許文献7および非特許文献8参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】S.Yamazaki et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2012,volume 43,issue 1,p.183-186
【文献】S.Yamazaki et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2014,volume 53,Number 4S,p.04ED18-1-04ED18-10
【文献】S.Ito et al.,“The Proceedings of AM-FPD’13 Digest of Technical Papers”,2013,p.151-154
【文献】S.Yamazaki et al.,“ECS Journal of Solid State Science and Technology”,2014,volume 3,issue 9,p.Q3012-Q3022
【文献】S.Yamazaki,“ECS Transactions”,2014,volume 64,issue 10,p.155-164
【文献】K.Kato et al.,“Japanese Journal of Applied Physics”,2012,volume 51,p.021201-1-021201-7
【文献】S.Matsuda et al.,“2015 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers”,2015,p.T216-T217
【文献】S.Amano et al.,“SID Symposium Digest of Technical Papers”,2010,volume 41,issue 1,p.626-629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、オン電流が大きい半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、信頼性が良好な半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、生産性の高い半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0008】
本発明の一態様は、長期間においてデータの保持が可能な半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、情報の書き込み速度が速い半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、設計自由度が高い半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、新規な半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、第1の金属酸化物層と、第2の金属酸化物層と、第1乃至第5の絶縁層と、第1の導電層と、を有する半導体装置である。第1の金属酸化物層は、第1の領域と、当該第1の領域を挟む第2の領域及び第3の領域と、を有する。第1の導電層は、第1の領域と重畳する部分を有する。第1の絶縁層は、第1の導電層の側面及び下面を覆う。第2の金属酸化物層は、第1の絶縁層の側面及び下面を覆い、且つ、第1の領域の上面と接する。第2の絶縁層は、第2の領域の上面と接する部分、及び第3の領域の上面と接する部分を有し、且つ、第2の金属酸化物層の側面と接する部分を有する。第3の絶縁層は、第2の絶縁層上に位置し、且つ、第2の金属酸化物層の側面と接する部分を有する。第4の絶縁層は、第3の絶縁層上に位置し、且つ、第2の金属酸化物層の側面と接する部分を有する。第5の絶縁層は、第1の導電層の上面、第1の絶縁層の上面、第2の金属酸化物層の上面、及び第4の絶縁層の上面に接する。また、第2の領域、及び第3の領域は、第1の元素を含み、当該第1の元素は、リン、ホウ素、アルミニウム、またはマグネシウムである。
【0011】
また、上記において、第1の金属酸化物層は、第1の領域と第2の領域との間に第4の領域と、第1の領域と第3の領域との間に第5の領域と、を有することが好ましい。このとき、第4の領域及び第5の領域は、第1の元素を含み、第2の領域及び第3の領域は、第4の領域または第5の領域よりも、第1の元素を多く含むことが好ましい。
【0012】
また、上記において、第2の絶縁層は、第3の絶縁層よりも第1の導電層側に突出する部分を有することが好ましい。
【0013】
また、上記において、第1の絶縁層の底部、及び第1の導電層の底部は、それぞれ丸みを帯びた形状を有することが好ましい。
【0014】
また、上記において、さらに第2の導電層と、第3の導電層とを有することが好ましい。第2の導電層は、第2の絶縁層、第3の絶縁層、第4の絶縁層、及び第5の絶縁層に設けられた第1の開口の内部に位置し、且つ、第1の開口の底部において、第2の領域と接することが好ましい。また、第3の導電層は、第2の絶縁層、第3の絶縁層、第4の絶縁層、及び第5の絶縁層に設けられた第2の開口の内部に位置し、且つ、第2の開口の底部において、第3の領域と接することが好ましい。
【0015】
また、上記において、さらに第4の導電層と、第6の絶縁層と、を有することが好ましい。このとき、第4の導電層は、第1の領域を挟んで第1の導電層と重畳する部分を有し、第6の絶縁層は、第4の導電層と、第1の領域との間に位置する部分を有することが好ましい。
【0016】
また、上記において、さらに第3の金属酸化物層を有することが好ましい。このとき、第1の金属酸化物層は、第3の金属酸化物層上に位置することが好ましい。
【0017】
また、本発明の他の一態様は、半導体装置の作製方法であって、第1の金属酸化物層を覆って第1の絶縁膜を形成し、第1の絶縁膜上に、第1の金属酸化物層と重畳する第1の層を形成し、第1の金属酸化物層の、第1の層に覆われていない部分に、第1の層をマスクとして第1の絶縁膜を介して第1の注入処理を行ない、第1の層の側面及び上面、並びに第1の絶縁膜の上面を覆う、第2の絶縁膜を形成し、第2の絶縁膜の第1の層の側面を覆う部分、及び第1の層をマスクとして、第2の絶縁膜と第1の絶縁膜を介して第2の注入処理を行ない、第1の層の上面を露出させるように、平坦化処理を行ない、第1の層を除去する、工程を有する。ここで、第1の注入処理及び第2の注入処理は、イオン注入法により第1の元素を注入する処理である。また、第2の注入処理は、第1の金属酸化物層に第1の注入処理よりも多くの第1の元素を注入する条件で行われる。また第1の元素は、リン、ホウ素、アルミニウム、またはマグネシウムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、オン電流が大きい半導体装置を提供できる。または、高い周波数特性を有する半導体装置を提供できる。または、信頼性が良好な半導体装置を提供できる。または、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供できる。または、良好な電気特性を有する半導体装置を提供できる。または、生産性の高い半導体装置を提供できる。
【0019】
または、長期間においてデータの保持が可能な半導体装置を提供できる。または、データの書き込み速度が速い半導体装置を提供できる。または、設計自由度が高い半導体装置を提供できる。または、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供できる。または、新規な半導体装置を提供できる。
【0020】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】半導体装置の構成例。
図2】半導体装置の構成例。
図3】半導体装置の構成例。
図4】半導体装置の構成例。
図5】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図6】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図7】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図8】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図9】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図10】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図11】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図12】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図13】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図14】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図15】半導体装置の作製方法例を説明する図。
図16】記憶装置の断面図。
図17】記憶装置の断面図。
図18】記憶装置のブロック図。
図19】記憶装置の回路図。
図20】半導体装置の模式図。
図21】記憶装置の模式図。
図22】電子機器を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお、図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状または値などに限定されない。例えば、実際の製造工程において、エッチングなどの処理により層やレジストマスクなどが意図せずに目減りすることがあるが、理解を容易とするために省略することがある。また、図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0024】
また、特に上面図(「平面図」ともいう。)や斜視図などにおいて、発明の理解を容易とするため、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
【0025】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明できる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0026】
また、本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。したがって、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0027】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができる場合がある。
【0028】
なお、本明細書等において、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャネル幅(以下、「実効的なチャネル幅」ともいう。)と、トランジスタの上面図において示されるチャネル幅(以下、「見かけ上のチャネル幅」ともいう。)と、が異なる場合がある。例えば、ゲート電極が半導体の側面を覆う場合、実効的なチャネル幅が、見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくなる場合がある。例えば、微細かつゲート電極が半導体の側面を覆うトランジスタでは、半導体の側面に形成されるチャネル形成領域の割合が大きくなる場合がある。その場合は、見かけ上のチャネル幅よりも、実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0029】
本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、見かけ上のチャネル幅、または実効的なチャネル幅を指す場合がある。なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅などは、断面TEM像などを解析することなどによって、値を決定できる。
【0030】
なお、半導体の不純物とは、例えば、半導体を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物と言える。不純物が含まれることにより、例えば、半導体のDOS(Density of States)が高くなることや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、および酸化物半導体の主成分以外の遷移金属などがあり、例えば、水素、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、水も不純物として機能する場合がある。また、酸化物半導体の場合、例えば不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコンである場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
【0031】
なお、本明細書等において、酸化窒化シリコンとは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものである。また、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものである。
【0032】
また、本明細書等において、「絶縁体」という用語を、絶縁膜または絶縁層と言い換えることができる。また、「導電体」という用語を、導電膜または導電層と言い換えることができる。また、「半導体」という用語を、半導体膜または半導体層と言い換えることができる。
【0033】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10度以上10度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5度以上5度以下の場合も含まれる。また、「概略平行」とは、二つの直線が-30度以上30度以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80度以上100度以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85度以上95度以下の場合も含まれる。また、「概略垂直」とは、二つの直線が60度以上120度以下の角度で配置されている状態をいう。
【0034】
なお、本明細書において、バリア膜とは、水、水素などの不純物または酸素の透過を抑制する機能を有する膜のことであり、当該バリア膜に導電性を有する場合は、導電性バリア膜と呼ぶことがある。
【0035】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む。)、酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう。)などに分類される。例えば、OS FETあるいはOSトランジスタと記載する場合、半導体層に酸化物または酸化物半導体を有するトランジスタと換言できる。
【0036】
また、本明細書等において、ノーマリーオフとは、ゲートに電位を印加しない、またはゲートに接地電位を与えたときに、トランジスタに流れるチャネル幅1μmあたりの電流が、室温において1×10-20A以下、85℃において1×10-18A以下、または125℃において1×10-16A以下であることをいう。
【0037】
(実施の形態1)
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の具体的な構成の一例について、図面を参照して説明する。
【0038】
<半導体装置の構成例>
図1(A)、図1(B)、および図1(C)は、本発明の一態様に係るトランジスタ200、およびトランジスタ200周辺の上面図および断面図である。
【0039】
図1(A)は、トランジスタ200を有する半導体装置の上面図である。また、図1(B)、および図1(C)は、当該半導体装置の断面図である。ここで、図1(B)は、図1(A)にA1-A2の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、図1(C)は、図1(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位の断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。なお、図1(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。また、図2は、図1(B)における半導体層230bおよびその近傍の拡大図である。
【0040】
図1及び図2に示すように、トランジスタ200は、基板(図示しない)の上に配置された半導体層230aと、半導体層230aの上に配置された半導体層230bと、半導体層230b中に、互いに離間して形成された領域252a及び領域252bと、半導体層230bの上面の一部に接し、領域252aと領域252bの間の領域に重畳する開口が形成された絶縁層226と、絶縁層226の上に配置され、領域252aと領域252bの間の領域に重畳する開口が形成された絶縁層228と、半導体層230b上に配置され、領域252aと領域252bの間の領域に重畳する開口が形成された絶縁層280と、絶縁層280等の開口の中に配置された導電層260と、当該開口の中に配置され、導電層260の下面及び側面に接する絶縁層250と、絶縁層250の下面及び側面に接し、且つ、半導体層230bの上面に接する半導体層230cと、絶縁層228と絶縁層280の間に位置し、一部が半導体層230cの側面に接する絶縁層244と、を有する。
【0041】
ここで、図1(B)、(C)に示すように、導電層260の上面は、絶縁層250、絶縁層244、半導体層230c、および絶縁層280の上面と略一致することが好ましい。また、領域252aの、半導体層230cと接しない領域に領域253aが形成されることが好ましい。また、領域252bの、半導体層230cと接しない領域に領域253bが形成されることが好ましい。
【0042】
なお、以下において、半導体層230a、半導体層230b、および半導体層230cをまとめて半導体層230という場合がある。また、領域252aおよび領域252bをまとめて領域252という場合がある。また、領域253aおよび領域253bをまとめて領域253という場合がある。
【0043】
なお、トランジスタ200では、チャネルが形成される領域(以下、チャネル形成領域ともいう。)と、その近傍において、半導体層230a、半導体層230b、および半導体層230cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、半導体層230bと半導体層230cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、半導体層230a、半導体層230b、および半導体層230cのそれぞれが2層以上の積層構造を有していてもよい。
【0044】
例えば、半導体層230cが第1の酸化物層と、第1の酸化物層上の第2の酸化物層からなる積層構造を有する場合、第1の酸化物層は、半導体層230bと同様の組成を有し、第2の酸化物層は、半導体層230aと同様の組成を有することが好ましい。
【0045】
ここで、導電層260は、トランジスタのゲート電極として機能し、領域252aおよび領域253a、ならびに領域252bおよび領域253bは、それぞれソース領域またはドレイン領域として機能する。上記のように、導電層260は、絶縁層280の開口、および領域252aと領域252bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。ここで、導電層260、領域252aおよび領域252bの配置は、絶縁層280の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ200において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電層260を位置合わせのマージンを設けることなく形成できるので、トランジスタ200の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0046】
また、図1に示すように、導電層260は、絶縁層250の内側に設けられた導電層260aと、導電層260aの内側に埋め込まれるように設けられた導電層260bと、を有することが好ましい。なお図1では、導電層260を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電層260が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0047】
また、トランジスタ200は、基板(図示しない。)の上に配置された絶縁層214と、絶縁層214の上に配置された絶縁層216と、絶縁層216に埋め込まれるように配置された導電層205と、絶縁層216と導電層205の上に配置された絶縁層222と、絶縁層222の上に配置された絶縁層224と、を有することが好ましい。絶縁層224の上に半導体層230aが配置されることが好ましい。
【0048】
また、トランジスタ200の上に、層間膜として機能する絶縁層274、および絶縁層281が配置されることが好ましい。ここで、絶縁層274は、導電層260、絶縁層250、絶縁層244、半導体層230c、および絶縁層280の上面に接して配置されることが好ましい。
【0049】
絶縁層222、絶縁層244、および絶縁層274は、水素(例えば、水素原子、水素分子など)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁層222、絶縁層244、および絶縁層274は、絶縁層224、絶縁層250、および絶縁層280より水素透過性が低いことが好ましい。また、絶縁層222、および絶縁層244は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁層222、および絶縁層244は、絶縁層224、絶縁層250、および絶縁層280より酸素透過性が低いことが好ましい。
【0050】
ここで、絶縁層224、半導体層230、および絶縁層250は、絶縁層280および絶縁層281から、絶縁層244および絶縁層274によって離隔されている。ゆえに、絶縁層280および絶縁層281に含まれる水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁層224、半導体層230、および絶縁層250に、混入することを抑制できる。
【0051】
また、トランジスタ200と電気的に接続し、プラグとして機能する導電層240(導電層240a、および導電層240b)が設けられることが好ましい。なお、プラグとして機能する導電層240の側面に接して絶縁層241(絶縁層241a、および絶縁層241b)が設けられる。つまり、絶縁層226、絶縁層228、絶縁層244、絶縁層280、絶縁層274、および絶縁層281の開口の内壁に接して絶縁層241が設けられる。また、絶縁層241の側面に接して導電層240の第1の導電層が設けられ、さらに内側に導電層240の第2の導電層が設けられる構成にしてもよい。ここで、導電層240の上面の高さと、絶縁層281の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200では、導電層240の第1の導電層および導電層240の第2の導電層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電層240を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。構造体が積層構造を有する場合、形成順に序数を付与し、区別する場合がある。
【0052】
また、トランジスタ200は、チャネル形成領域を含む半導体層230(半導体層230a、半導体層230b、および半導体層230c)に、酸化物半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。例えば、半導体層230のチャネル形成領域となる金属酸化物としては、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタの非導通状態におけるリーク電流(オフ電流)を極めて小さくすることができる。このようなトランジスタを用いることで、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0053】
例えば、半導体層230として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。また、半導体層230として、酸化インジウム、酸化亜鉛、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、または酸化ガリウムを用いてもよい。
【0054】
ここで、半導体層230は、酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素を添加されることで、キャリア濃度が増大し、低抵抗化する場合がある。このような元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。また、希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。また、半導体層230は、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどの金属元素の中から選ばれるいずれか一つまたは複数の金属元素を添加してもよい。上述した中でも、添加される元素は、ホウ素、及びリンが好ましい。ホウ素およびリンの添加には、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用できるため、設備投資を抑制できる。上記元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
【0055】
特に、半導体層230中に添加する元素として、酸化物を形成しやすい元素を用いることが好ましい。このような元素としては、代表的にはホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム等がある。半導体層230中に添加された当該元素は、半導体層230中の酸素を奪って酸化物を形成しうる。その結果、半導体層230中には多くの酸素欠損が生じる。当該酸素欠損と、半導体層230中の水素とが結合することでキャリアが生じ、極めて低抵抗な領域が形成される。さらに、半導体層230中に添加された元素は安定な酸化物の状態で半導体層230中に存在するため、その後の工程で高い温度を要する処理が行われたとしても、半導体層230から脱離しにくい。すなわち、半導体層230に添加する元素として、酸化物を形成しやすい元素を用いることで、半導体層230中に高温のプロセスを経ても高抵抗化しにくい領域を形成できる。
【0056】
領域252は、半導体層230に上記の元素が添加されて形成された領域である。図1(B)および図2に示すように、領域252aと領域252bとは、導電層260と重畳する領域を挟んで対向して形成されている。領域252aと領域252bの上面は、絶縁層226または半導体層230cと接することが好ましい。平面視において、領域252aおよび領域252bの一部が導電層260と重畳することが好ましい。ここで、領域252の上記元素の濃度は、半導体層230の領域252および領域253が形成されていない部分の上記元素の濃度よりも高い。また、領域252に含まれる酸素欠損の量は、半導体層230の領域252および領域253が形成されていない部分の酸素欠損の量よりも多いことが好ましい。これにより、領域252は、半導体層230の領域252および領域253が形成されていない部分と比較して、キャリア濃度が高く、抵抗が低くなる。
【0057】
領域253は、領域252の一部にさらに上記の元素が多く添加されて形成された領域である。図1(B)および図2に示すように、領域253は上面が絶縁層226と接することが好ましい。ここで、領域253の上記元素の濃度は、領域252の上記元素の濃度よりも高いことが好ましい。また、領域253に含まれる酸素欠損の量は、領域252に含まれる酸素欠損の量よりも多いことが好ましい。これにより、領域253は、領域252と比較して、キャリア濃度が高く、抵抗が低くなる。または、領域253に含まれる上記元素の濃度が領域252と同等、またはこれよりも低い場合であっても、領域253の上記元素が含まれる深さが、領域252の上記元素が含まれる深さよりも深ければよい。
【0058】
例えば、半導体層230中にホウ素を含む場合、ホウ素は酸素と結合した状態で存在しうる。このことは、例えばX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析において、B結合に起因するスペクトルピークが観測されることにより確認できる。
【0059】
また、図1(B)及び図2では、領域252及び領域253が半導体層230b中にのみ形成されているように示しているが、領域252及び領域253は、それぞれ半導体層230aにも形成されていてもよい。
【0060】
図2に示すように、半導体層230において、一対の領域252に挟まれる領域を領域234とする。領域234は、チャネル形成領域に相当する。また、領域252a、領域252bが設けられる領域を、それぞれ領域232a、領域232b(まとめて領域232と呼ぶ)とする。また、領域253a、領域253bが設けられる領域を、それぞれ領域231a、領域231b(まとめて領域231と呼ぶ)とする。図2に示すように、領域234は、領域231aと領域231bの間に位置し、領域232aは領域231aと領域234の間に位置し、領域232bは領域231bと領域234の間に位置する。ここで、領域231は、領域234と比較して、キャリア濃度が高く、低抵抗な領域である。また、領域232は、領域234と比較して、キャリア濃度が高く、低抵抗な領域であり、領域231と比較して、キャリア濃度が低く、高抵抗な領域である。よって、領域234はトランジスタ200のチャネル形成領域として機能し、領域231はソース領域またはドレイン領域として機能し、領域232は接合領域として機能する。接合領域である領域232の一部は、導電層260と重畳する。
【0061】
このような構成にすることで、半導体層230のチャネル形成領域とソース領域またはドレイン領域との間に、高抵抗なオフセット領域が形成されることを防ぎ、実効的なチャネル長が導電層260の幅より大きくなることを抑制できる。これにより、トランジスタ200はオン電流が大きく、またサブスレッショルド特性が良好となるため、高い周波数特性を実現できる。
【0062】
半導体層230にソース領域またはドレイン領域として機能する領域231を形成することで、金属で形成されたソース電極およびドレイン電極を設けることなく、領域231にプラグとして機能する導電層240を接続できる。半導体層230に接して金属で形成されたソース電極およびドレイン電極を設けると、トランジスタ200の作製工程または後工程において、高温の熱処理を行った場合、金属で形成されたソース電極およびドレイン電極が酸化し、トランジスタ200のオン電流、サブスレッショルド特性、および周波数特性が劣化する場合がある。しかしながら、本実施の形態に示す半導体装置では、金属で形成されたソース電極およびドレイン電極を設ける必要がない。よって、トランジスタ200の作製工程または後工程において、高温の熱処理を行っても、良好なオン電流、サブスレッショルド特性、および周波数特性を示す半導体装置を提供できる。例えば、本実施の形態に示す半導体装置では、トランジスタ200の作製後に、450℃以上800℃以下、代表的には600℃以上750℃以下の高温がかかるプロセスを行うことができる。
【0063】
また、上記のように、領域252および領域253に酸素欠損を形成する元素を添加して、熱処理を行うことで、チャネル形成領域として機能する領域234に含まれる水素を、領域252および領域253に含まれる酸素欠損で捕獲できる場合がある。これにより、トランジスタ200に安定な電気特性を与え、信頼性の向上を図ることができる。
【0064】
なお、図2では、領域252が、半導体層230bの膜厚方向において、半導体層230bと絶縁層226の界面近傍に形成されているが、これに限られない。例えば、領域252は、半導体層230bの膜厚と概略同じ厚さを有していてもよいし、半導体層230aにも、形成されていてもよい。
【0065】
また、半導体層230において、各領域の境界を明確に検出することが困難な場合がある。各領域内で検出される金属元素、ならびに水素、および窒素などの不純物元素の濃度は、領域ごとの段階的な変化に限らず、各領域内でも連続的に変化(グラデーションともいう。)していてもよい。つまり、チャネル形成領域に近い領域であるほど、金属元素、ならびに水素、および窒素などの不純物元素の濃度が減少していればよい。
【0066】
ここで、絶縁層226は、半導体層230上に位置する部分において、絶縁層228の端部(端面、側面、または先端)よりも導電層260側に突出する部分(以下、突出部とも呼ぶ)を有している。また、絶縁層226の突出部は、丸みを帯びている。これにより、開口部に埋め込まれる半導体層230c、絶縁層250、及び導電層260を形成する際の、当該開口部の底部に対する被覆性が向上する。また、絶縁層250や導電層260の底部の形状を、丸みを帯びた形状、すなわち曲面を有する形状とすることができる。導電層260や絶縁層250の底部が丸みを帯びることで、ゲート電極として機能する導電層260に電位を与える際に、電界集中を起こりにくくすることができる。これにより、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0067】
図2では、絶縁層226の突出部の表面が凸状の曲面である例を示しているが、これに限られず、絶縁層250や導電層260の底部が丸みを帯びる形状を実現可能な形状であればよい。
【0068】
図3は、絶縁層226の突出部の表面が、凹状の曲面形状を有している例を示している。さらに図3では、絶縁層228の半導体層230cと接する面が、絶縁層226の表面と連続する凹状の曲面形状を有している。このような構成により、導電層260及び絶縁層250の底部の形状をより良好な形状とすることができる。
【0069】
なお、半導体層230cが被覆性の高い成膜方法で形成できる場合には、図4に示すように、絶縁層226に突出部を設けない構成とすることもできる。図4では、絶縁層226の端面と、絶縁層228の端面とが、平面視において概略一致する場合の例を示している。このとき、領域252a及び領域252bの上面に接して、半導体層230cが設けられる。また、図4に示すように、開口内の半導体層230cの上面が凹曲面となるように形成することで、絶縁層250や導電層260の底面を丸みを帯びた形状とすることができる。
【0070】
以上より、オン電流が大きいトランジスタを有する半導体装置を提供できる。または、高い周波数特性を有するトランジスタを有する半導体装置を提供できる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有するとともに、信頼性を向上させた半導体装置を提供できる。または、オフ電流が小さいトランジスタを有する半導体装置を提供できる。
【0071】
以下では、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置の詳細な構成について説明する。
【0072】
導電層205は、半導体層230、および導電層260と、重なるように配置する。また、導電層205は、絶縁層216に埋め込まれて設けることが好ましい。ここで、導電層205の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電層205上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電層205の上に形成される、絶縁層224の平坦性を良好にし、半導体層230a、半導体層230bおよび半導体層230cの結晶性の向上を図ることができる。
【0073】
ここで、導電層260は、第1のゲート(トップゲートともいう。)電極として機能し、導電層205は、第2のゲート(ボトムゲートともいう。)電極として機能する。その場合、導電層205に印加する電位を、導電層260に印加する電位と連動させずに独立して変化させることで、トランジスタ200のしきい値電圧(Vth)を制御できる。特に、導電層205に負の電位を印加することにより、トランジスタ200のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。
【0074】
また、導電層205は、半導体層230におけるチャネル形成領域を重畳するように設けることが好ましい。特に、図1(C)に示すように、チャネル幅方向において、半導体層230の外側に導電層205が延伸していることが好ましい。すなわち、半導体層230の外側において、導電層205と導電層260とが絶縁層を介して重畳していることが好ましい。
【0075】
上記構成を有することで、第1のゲート電極としての機能を有する導電層260の電界と、第2のゲート電極としての機能を有する導電層205の電界によって、半導体層230のチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。
【0076】
また、導電層205の一部を配線として用いることができる。また導電層205の下に、配線として機能する導電層を設ける構成としてもよい。また導電層205は、複数のトランジスタで共有する構成としてもよい。
【0077】
導電層205は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。なお、導電層205を単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0078】
また、導電層205の下に水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物が拡散しにくい導電層を設けてもよい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)が拡散しにくい導電層を用いることが好ましい。
【0079】
導電層205の下に、酸素が拡散しにくい導電層を用いることにより、導電層205が酸化して導電率が低下することを抑制できる。例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウムまたは酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。したがって、導電層205の下部に位置する導電層としては、上記導電性材料を単層または積層とすればよい。
【0080】
絶縁層214は、水または水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200に混入することを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁層214は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子、銅原子などの不純物が拡散しにくい絶縁性材料を用いることが好ましい。また、酸素が拡散しにくい絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0081】
例えば、絶縁層214として、酸化アルミニウムまたは窒化シリコンなどを用いることが好ましい。これにより、水または水素などの不純物が絶縁層214よりも基板側からトランジスタ200側に拡散することを抑制できる。または、絶縁層224などに含まれる酸素が、絶縁層214よりも基板側に拡散することを抑制できる。
【0082】
また、層間膜として機能する絶縁層216、絶縁層280、および絶縁層281は、絶縁層214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。例えば、絶縁層216、絶縁層280、および絶縁層281として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを適宜用いればよい。
【0083】
また、絶縁層216を積層構造にしてもよい。例えば、導電層205の側面と接して、絶縁層214と同様の絶縁層を設け、上記酸化シリコンなどと導電層205とが接しない構成とすることが好ましい。これにより、絶縁層216に含まれる酸素が導電層205に拡散することを防ぐことができ、導電層205の酸化を抑制できる。
【0084】
絶縁層222および絶縁層224は、ゲート絶縁層としての機能を有する。
【0085】
ここで、半導体層230と接する絶縁層224は、加熱により酸素を脱離することが好ましい。本明細書では、加熱により離脱する酸素を過剰酸素と呼ぶことがある。絶縁層224としては、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを用いることができる。酸素を含む絶縁層を半導体層230に接して設けることにより、半導体層230中の酸素欠損を低減し、トランジスタ200の信頼性を向上させることができる。
【0086】
具体的には、絶縁層224として、加熱により一部の酸素を脱離する酸化物膜を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物膜とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm以上、または3.0×1020atoms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0087】
また、図1(C)に示すように、絶縁層224は、半導体層230bと重ならない領域の膜厚が、それ以外の領域の膜厚より薄くなることが好ましい。このような構成にすることで、導電層260の下端部をより下側に位置させることができるので、第1のゲート電極として機能する導電層260の電界を、半導体層230の側面に作用させやすくなる。よって、トランジスタ200のオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。また、絶縁層224を、半導体層230bおよび半導体層230aと重畳させて、島状に設ける構成にしてもよい。
【0088】
絶縁層222は、絶縁層214などと同様に、水または水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。さらに、絶縁層222は、酸素が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。絶縁層222、絶縁層244、および絶縁層274によって、絶縁層224、半導体層230、および絶縁層250などを囲むことにより、外方から水または水素などの不純物がトランジスタ200に侵入することを抑制できる。また絶縁層222により、半導体層230が有する酸素が、基板側へ拡散することを低減できる。
【0089】
特に、絶縁層222としては、例えば酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いることで、半導体層230からの酸素の放出や、トランジスタ200の周辺部から半導体層230への水素等の不純物の混入を抑制できる。
【0090】
また、絶縁層222として、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁膜を単層または積層で用いてもよい。これにより、トランジスタの微細化、および高集積化によりゲート絶縁層を薄膜化した場合であっても、物理膜厚を厚くしてリーク電流の増大を抑制しつつ、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0091】
なお、絶縁層222、および絶縁層224が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。例えば、絶縁層222の下に絶縁層224と同様の絶縁層を設ける構成にしてもよい。
【0092】
半導体層230は、半導体層230aと、半導体層230a上の半導体層230bと、半導体層230b上の半導体層230cと、を有する。半導体層230bの下に半導体層230aを有することで、半導体層230aよりも下方に形成された構造物から半導体層230bへの、不純物の拡散を抑制できる。また、半導体層230b上に半導体層230cを有することで、半導体層230cよりも上方に形成された構造物から半導体層230bへの、不純物の拡散を抑制できる。
【0093】
なお、半導体層230は、各金属原子の原子数比が異なる金属酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、半導体層230aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、半導体層230bに用いる金属酸化物における構成元素中の元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、半導体層230aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、半導体層230bに用いる金属酸化物におけるInに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、半導体層230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、半導体層230aに用いる金属酸化物における元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、半導体層230cは、半導体層230aまたは半導体層230bに用いることができる金属酸化物を用いることができる。
【0094】
半導体層230a、半導体層230bおよび半導体層230cは、結晶性を有することが好ましく、特に、CAAC-OSを用いることが好ましい。CAAC-OSなどの結晶性を有する酸化物は、不純物や欠陥(酸素欠損など)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。このような半導体層230を有することで、トランジスタ200は、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定になる。
【0095】
また、半導体層230aおよび半導体層230cの伝導帯下端のエネルギーが、半導体層230bの伝導帯下端のエネルギーより高いことが好ましい。また、言い換えると、半導体層230aおよび半導体層230cの電子親和力が、半導体層230bの電子親和力より小さいことが好ましい。この場合、半導体層230cは、半導体層230aに用いることができる金属酸化物を用いることが好ましい。具体的には、半導体層230cに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、半導体層230bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、半導体層230cに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、半導体層230bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、半導体層230bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、半導体層230cに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0096】
ここで、半導体層230a、半導体層230b、および半導体層230cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、半導体層230a、半導体層230b、および半導体層230cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、半導体層230aと半導体層230bとの界面、および半導体層230bと半導体層230cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0097】
具体的には、半導体層230aと半導体層230b、半導体層230bと半導体層230cが、酸素以外に共通の元素を主成分として有することで、欠陥準位密度が低い混合層を形成できる。例えば、半導体層230bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、半導体層230aおよび半導体層230cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いてもよい。また、半導体層230cを積層構造としてもよい。例えば、In-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上のGa-Zn酸化物との積層構造、またはIn-Ga-Zn酸化物と、当該In-Ga-Zn酸化物上の酸化ガリウムとの積層構造を用いることができる。別言すると、In-Ga-Zn酸化物と、Inを含まない酸化物との積層構造を、半導体層230cとして用いてもよい。
【0098】
具体的には、半導体層230aとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、または1:1:0.5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、半導体層230bとして、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、またはIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、半導体層230cとして、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いればよい。また、半導体層230cを積層構造とする場合の具体例としては、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の金属酸化物と、Ga:Zn=2:1[原子数比]の金属酸化物との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の金属酸化物と、Ga:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物との積層構造、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の金属酸化物と、酸化ガリウムとの積層構造などが挙げられる。
【0099】
このとき、キャリアの主たる経路は半導体層230bとなる。半導体層230a、半導体層230cを上述の構成とすることで、半導体層230aと半導体層230bとの界面、および半導体層230bと半導体層230cとの界面における欠陥準位密度を低くできる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ200は高いオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。なお、半導体層230cを積層構造とした場合、上述の半導体層230bと、半導体層230cとの界面における欠陥準位密度を低くする効果に加え、半導体層230cが有する構成元素が、絶縁層250側に拡散することを抑制することが期待される。より具体的には、半導体層230cを積層構造とし、積層構造の上方にInを含まない金属酸化物膜を位置させるため、絶縁層250側に拡散しうるInを抑制できる。絶縁層250は、ゲート絶縁層として機能するため、Inが拡散した場合、トランジスタの特性不良となる。したがって、半導体層230cを積層構造とすることで、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能となる。
【0100】
領域252aと領域252bの間の領域(領域234)は、絶縁層280の開口に重畳して形成される。これにより、領域252aと領域252bの間に導電層260を自己整合的に配置できる。
【0101】
絶縁層250は、ゲート絶縁層として機能する。絶縁層250は、半導体層230cの上面に接して配置することが好ましい。絶縁層250は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0102】
絶縁層224と同様に、絶縁層250中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁層250の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0103】
また、絶縁層250と導電層260との間に金属酸化物層を設けてもよい。当該金属酸化物層は、絶縁層250から導電層260への酸素拡散を抑制することが好ましい。これにより、絶縁層250の酸素による導電層260の酸化を抑制できる。
【0104】
また、当該金属酸化物層は、ゲート絶縁層の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁層250に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、当該金属酸化物層は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。ゲート絶縁層を、絶縁層250と当該金属酸化物層との積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、ゲート絶縁層の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁層として機能する絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0105】
具体的には、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、または、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネートなどを用いることが好ましい。
【0106】
導電層260は、図1では2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0107】
導電層260aは、上述の、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物が拡散しにくい導電膜を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)が拡散しにくい導電性材料を用いることが好ましい。これにより、導電層260bの酸化を抑制できる。酸素が拡散しにくい導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどが挙げられる。
【0108】
また、導電層260bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電層260は、配線としても機能するため、導電性が高い導電膜を用いることが好ましい。また、導電層260bは積層構造としてもよく、例えば、チタンや、窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0109】
また、絶縁層250と導電層260aの間に、半導体層230として用いることができる金属酸化物層を設けてもよい。このとき、該金属酸化物層は、導電層260と同様にゲート電極として機能する。金属酸化物層を設けることにより、絶縁層250、および半導体層230の少なくとも一方に酸素を供給することができ、好ましい。また、該金属酸化物層として、酸素が拡散しにくい金属酸化物を用いることにより、絶縁層250、または絶縁層280に含まれる酸素により、導電層260が酸化することを抑制できる。
【0110】
絶縁層226は、半導体層230bの上面、及び半導体層230aの側面に接して設けられる。絶縁層226は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0111】
絶縁層250等と同様に、絶縁層226中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁層226の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0112】
ここで、絶縁層226及び絶縁層228は、領域252や領域253に添加される元素と同一の元素を含むことが好ましい。特に、上述したホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム等の酸化物を形成しやすい元素を含むことが好ましい。
【0113】
特に、半導体層230aと接する絶縁層226に、酸化物を含む絶縁膜を用いた場合には、上述したホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム等の酸化物を形成しやすい元素は、膜中に含まれる酸素と結合して酸化物として存在しうる。特に絶縁層226が過剰酸素を含む場合、当該過剰酸素と上記元素とが結合することで、半導体層230aに供給しうる酸素の量を低減させることができる。これにより、工程中に高い温度を要する処理を行なった場合でも、半導体層230a内の領域252や領域253が高抵抗化することを防ぐことができる。
【0114】
例えば、絶縁層226中にホウ素を含む場合、ホウ素は酸素と結合した状態で存在しうる。このことは、例えばXPS分析において、B結合に起因するスペクトルピークが観測されることにより確認できる。
【0115】
また、上述した元素を添加することで、酸化物を含む絶縁層226に、酸素を透過しにくいといった性質を付与できる。これにより、絶縁層226よりも上側に位置する層から絶縁層226を介して領域252や領域253に酸素が供給されることを防ぐことができる。
【0116】
絶縁層228及び絶縁層244は、絶縁層214などと同様に、水または水素などの不純物が、絶縁層280側からトランジスタ200に混入することを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。例えば、絶縁層228及び絶縁層244に、絶縁層224より水素透過性が低い材料を用いることができる。さらに、図1(B)(C)に示すように、絶縁層228は、絶縁層226の上面に接して設けられる。さらに絶縁層244は、絶縁層228の上面、および半導体層230cの側面に接して設けられる。このような構成にすることで、絶縁層280に含まれる水素が、半導体層230a、半導体層230b、半導体層230cおよび絶縁層226の上面または側面から侵入することを抑制できる。
【0117】
さらに、絶縁層228及び絶縁層244には、酸素が透過しにくい材料を用いることが好ましい。例えば、絶縁層228及び絶縁層244は、絶縁層280または絶縁層224よりも酸素透過性が低いことが好ましい。
【0118】
絶縁層228は、スパッタリング法を用いて成膜されることが好ましい。絶縁層228を、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法を用いて成膜することで、絶縁層226の絶縁層228と接する領域近傍に酸素を添加できる。これにより、当該領域から、絶縁層226を介して半導体層230中に酸素を供給できる。これにより、半導体層230の酸素欠損を低減し、トランジスタのノーマリーオン化を抑制できる。
【0119】
絶縁層228及び絶縁層244としては、例えば、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁膜を成膜するとよい。例えば酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネートなどを用いることが好ましい。
【0120】
特に絶縁層244としては、例えば、窒化アルミニウムを含む絶縁膜を用いることもできる。例えば組成式がAlN(xは0より大きく2以下の実数、好ましくは、xは0.5より大きく1.5以下の実数)を満たす窒化物絶縁膜を用いることが好ましい。これにより、絶縁性に優れ、且つ熱伝導性に優れた膜とすることができるため、トランジスタ200を駆動したときに生じる熱の放熱性を高めることができる。また、絶縁層244として、窒化アルミニウムチタン、窒化チタンなどを用いることもできる。この場合、スパッタリング法を用いて成膜することで、成膜ガスに酸素またはオゾンなどの酸化性の強いガスを用いずに成膜できるので、好ましい。また、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどを用いることもできる。
【0121】
また、絶縁層244は、ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて成膜されることが好ましい。ALD法は、被覆性が良好な成膜法であるため、被形成面が凹凸形状を有する場合であっても、均一な厚さで成膜できる。
【0122】
絶縁層280は、絶縁層244、絶縁層228および絶縁層226を介して、絶縁層224、および半導体層230上に設けられる。例えば、絶縁層280として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、または空孔を有する酸化シリコンなどを有することが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどの材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成できるため好ましい。
【0123】
絶縁層280中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。また、絶縁層280の上面は、平坦化されていることが好ましい。
【0124】
絶縁層274は、絶縁層214などと同様に、水または水素などの不純物が、上方から絶縁層280に混入することを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁層274としては、例えば、絶縁層214、絶縁層244等に用いることができる絶縁膜を用いればよい。
【0125】
また、絶縁層274の上に、層間膜として機能する絶縁層281を設けることが好ましい。絶縁層281は、絶縁層224などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0126】
また、絶縁層281、絶縁層274、絶縁層280、絶縁層244、絶縁層228、及び絶縁層226に形成された開口に、導電層240aおよび導電層240bを配置する。導電層240aおよび導電層240bは、導電層260を挟んで対向して設ける。なお、導電層240aおよび導電層240bの上面は、絶縁層281の上面と同一平面を成すように平坦化されていることが好ましい。
【0127】
なお、絶縁層281、絶縁層274、絶縁層280、絶縁層244、絶縁層228、及び絶縁層226の開口の内壁に接して、絶縁層241aまたは絶縁層241bが設けられ、その側面に接して導電層240aまたは導電層240bの第1の導電層が形成されている。当該開口の底部の少なくとも一部には領域253aまたは領域253bが位置しており、導電層240aまたは導電層240bが領域253aまたは領域253bと接する。
【0128】
導電層240aおよび導電層240bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電層240aおよび導電層240bは積層構造としてもよい。
【0129】
また、導電層240を積層構造とする場合、半導体層230a、半導体層230b、絶縁層281、絶縁層274、絶縁層280、絶縁層244、絶縁層228、及び絶縁層226側に位置する導電層には、上述の、水または水素などの不純物が拡散しにくい導電膜を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。当該導電性材料を用いることで、絶縁層280に添加された酸素が導電層240aおよび導電層240bに吸収されること、また、絶縁層281より上層から水または水素などの不純物が、導電層240aおよび導電層240bを通じて半導体層230に混入することを抑制できる。
【0130】
絶縁層241aおよび絶縁層241bとしては、絶縁層214等に用いることができる絶縁膜、例えば、酸化アルミニウムまたは窒化シリコンなどを用いることができる。絶縁層241aおよび絶縁層241bは、絶縁層228および絶縁層244に接して設けられるため、絶縁層280などから水または水素などの不純物が、導電層240aおよび導電層240bを通じて半導体層230に混入することや、絶縁層280に含まれる酸素が導電層240aおよび導電層240bに吸収されることを防ぐことができる。
【0131】
絶縁層241aおよび絶縁層241bの形成には、ALD法や化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。
【0132】
また、図示しないが、導電層240aの上面、および導電層240bの上面に接して配線として機能する導電層を配置してもよい。配線として機能する導電層は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、当該導電層は、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。当該導電層は、絶縁層に設けられた開口に埋め込むように形成してもよい。
【0133】
また、図示しないが、当該導電層を覆うように、抵抗率が1.0×1013Ωcm以上1.0×1015Ωcm以下、好ましくは5.0×1013Ωcm以上5.0×1014Ωcm以下の絶縁層を設けることが好ましい。当該導電層上に上記のような抵抗率を有する絶縁層を設けることで、当該絶縁層は、絶縁性を維持しつつ、トランジスタ200、当該導電層等の配線間に蓄積される電荷を分散し、該電荷によるトランジスタや、該トランジスタを有する電子機器の特性不良や静電破壊を抑制することができ、好ましい。
【0134】
<半導体装置の構成材料>
以下では、半導体装置に用いることができる構成材料について説明する。
【0135】
<<基板>>
トランジスタ200を形成する基板としては、例えば、絶縁基板、半導体基板、または導電基板を用いればよい。絶縁基板としては、例えば、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、安定化ジルコニア基板(イットリア安定化ジルコニア基板など)、樹脂基板などがある。また、半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体基板、または炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムからなる化合物半導体基板などがある。さらには、前述の半導体基板内部に絶縁領域を有する半導体基板、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板などがある。導電基板としては、黒鉛基板、金属基板、合金基板、導電性樹脂基板などがある。または、金属の窒化物を有する基板、金属の酸化物を有する基板などがある。さらには、絶縁基板に導電層または半導体が設けられた基板、半導体基板に導電層または絶縁層が設けられた基板、導電基板に半導体または絶縁層が設けられた基板などがある。または、これらの基板に素子が設けられたものを用いてもよい。基板に設けられる素子としては、容量素子、抵抗素子、スイッチ素子、発光素子、記憶素子などがある。
【0136】
<<絶縁層>>
絶縁層としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などを用いることができる。
【0137】
例えば、トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁層の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁層として機能する絶縁層に、high-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時の低電圧化が可能となる。一方、層間膜として機能する絶縁層には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減できる。したがって、絶縁層の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0138】
また、比誘電率の高い絶縁性材料としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物、またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0139】
また、比誘電率が低い絶縁性材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などがある。
【0140】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層(絶縁層214、絶縁層222、絶縁層228、絶縁層244、および絶縁層274など)で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にできる。水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウム、またはタンタルを含む絶縁層を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、または酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどの金属窒化物を用いることができる。
【0141】
また、ゲート絶縁層として機能する絶縁層は、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する絶縁層であることが好ましい。例えば、加熱により脱離する酸素を含む領域を有する酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを半導体層230と接する構造とすることで、半導体層230が有する酸素欠損を補償できる。
【0142】
<<導電層>>
導電層としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0143】
また、上記の材料で形成される導電層を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0144】
なお、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物を用いる場合において、ゲート電極として機能する導電層には、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いることが好ましい。この場合は、酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料をチャネル形成領域側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素がチャネル形成領域に供給されやすくなる。
【0145】
特に、ゲート電極として機能する導電層として、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる金属元素および酸素を含む導電性材料を用いることが好ましい。また、前述した金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。このような材料を用いることで、チャネルが形成される金属酸化物に含まれる水素を捕獲できる場合がある。または、外方の絶縁層などから混入する水素を捕獲できる場合がある。
【0146】
<<金属酸化物>>
半導体層230として、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。以下では、本発明に係る半導体層230に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0147】
酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0148】
ここでは、酸化物半導体がインジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物である場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせてもよい。
【0149】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称することもできる。
【0150】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、多結晶酸化物半導体、および非晶質酸化物半導体などが知られている。
【0151】
トランジスタの半導体に用いる酸化物半導体として、結晶性の高い薄膜を用いることが好ましい。該薄膜を用いることで、トランジスタの安定性または信頼性を向上させることができる。該薄膜として、例えば、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜が挙げられる。しかしながら、単結晶酸化物半導体の薄膜または多結晶酸化物半導体の薄膜を基板上に形成するには、高温またはレーザー加熱の工程が必要とされる。よって、製造工程のコストが増加し、さらに、スループットも低下してしまう。
【0152】
2009年に、CAAC構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(CAAC-IGZOと呼ぶ。)が発見されたことが、非特許文献1および非特許文献2で報告されている。ここでは、CAAC-IGZOは、c軸配向性を有する、結晶粒界が明確に確認されない、低温で基板上に形成可能である、ことが報告されている。さらに、CAAC-IGZOを用いたトランジスタは、優れた電気特性および信頼性を有することが報告されている。
【0153】
また、2013年には、nc構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(nc-IGZOと呼ぶ。)が発見された(非特許文献3参照。)。ここでは、nc-IGZOは、微小な領域(例えば、1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有し、異なる該領域間で結晶方位に規則性が見られないことが報告されている。
【0154】
非特許文献4および非特許文献5では、上記のCAAC-IGZO、nc-IGZO、および結晶性の低いIGZOのそれぞれの薄膜に対する電子線の照射による平均結晶サイズの推移が示されている。結晶性の低いIGZOの薄膜において、電子線が照射される前でさえ、1nm程度の結晶性IGZOが観察されている。よって、ここでは、IGZOにおいて、完全な非晶質構造(completely amorphous structure)の存在を確認できなかった、と報告されている。さらに、結晶性の低いIGZOの薄膜と比べて、CAAC-IGZOの薄膜およびnc-IGZOの薄膜は電子線照射に対する安定性が高いことが示されている。よって、トランジスタの半導体として、CAAC-IGZOの薄膜またはnc-IGZOの薄膜を用いることが好ましい。
【0155】
酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さい、具体的には、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電流がyA/μm(10-24A/μm)オーダである、ことが非特許文献6に示されている。例えば、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用した低消費電力のCPU(Central Processing Unit)などが開示されている(非特許文献7参照。)。
【0156】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置への応用が報告されている(非特許文献8参照。)。表示装置では、表示される画像が1秒間に数十回切り換っている。1秒間あたりの画像の切り換え回数はリフレッシュレートと呼ばれている。また、リフレッシュレートを駆動周波数と呼ぶこともある。このような人の目で知覚が困難である高速の画面の切り換えが、目の疲労の原因として考えられている。そこで、表示装置のリフレッシュレートを低下させて、画像の書き換え回数を減らすことが提案されている。また、リフレッシュレートを低下させた駆動により、表示装置の消費電力を低減することが可能である。このような駆動方法を、アイドリング・ストップ(IDS)駆動と呼ぶ。
【0157】
CAAC構造およびnc構造の発見は、CAAC構造またはnc構造を有する酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性および信頼性の向上、ならびに、製造工程のコスト低下およびスループットの向上に貢献している。また、該トランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置およびLSIへの応用研究が進められている。
【0158】
[金属酸化物の構成]
以下では、本発明の一態様で開示されるトランジスタに用いることができるCAC(Cloud-Aligned Composite)-OSの構成について説明する。
【0159】
なお、本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、または材料の構成の一例を表す。
【0160】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与できる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0161】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0162】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0163】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0164】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0165】
[金属酸化物の構造]
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0166】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0167】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容できるためと考えられる。
【0168】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0169】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
【0170】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0171】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0172】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0173】
[酸化物半導体を有するトランジスタ]
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0174】
なお、上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現できる。また、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0175】
また、トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。例えば、酸化物半導体は、キャリア濃度が8×1011/cm未満、好ましくは1×1011/cm未満、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm以上とすればよい。
【0176】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0177】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0178】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0179】
[不純物]
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0180】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0181】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0182】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0183】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0184】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与できる。
【0185】
<半導体装置の作製方法>
次に、図1に示す、本発明の一態様に係るトランジスタ200を有する半導体装置について、作製方法を図5乃至図15を用いて説明する。また、図5(A)乃至図15(A)は上面図を示す。また、図5(B)乃至図15(B)は、図5(A)乃至図15(A)に示すA1-A2の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル長方向の断面図でもある。また、図5(C)乃至図15(C)は、図5(A)乃至図15(A)にA3-A4の一点鎖線で示す部位に対応する断面図であり、トランジスタ200のチャネル幅方向の断面図でもある。なお、図5(A)乃至図15(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0186】
まず、基板(図示しない。)を準備し、当該基板上に絶縁層214を成膜する。絶縁層214の成膜は、スパッタリング法、CVD法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0187】
なお、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
【0188】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。また、熱CVD法は、プラズマを用いないため、被処理物へのプラズマダメージを小さくすることが可能な成膜方法である。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない熱CVD法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くできる。また、熱CVD法では、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0189】
また、ALD法は、原子の性質である自己制御性を利用し、一層ずつ原子を堆積できるので、極薄の成膜が可能、アスペクト比の高い構造への成膜が可能、ピンホールなどの欠陥の少ない成膜が可能、被覆性に優れた成膜が可能、および低温での成膜が可能、などの効果がある。また、ALD法には、プラズマを利用した成膜方法PEALD(Plasma Enhanced ALD)法も含まれる。プラズマを利用することで、より低温での成膜が可能となる。なお、ALD法で用いるプリカーサには炭素などの不純物を含むものがあるため、ALD法により設けられた膜は、他の成膜法により設けられた膜と比較して、炭素などの不純物を多く含む場合がある。不純物の定量は、XPS分析を用いて行うことができる。
【0190】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ALD法は比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることもできる。
【0191】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御できる。例えば、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜できる。また、例えば、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜できる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間を要さない分、成膜に掛かる時間を短くすることができ、生産性を高めることができる。
【0192】
本実施の形態では、絶縁層214として、スパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜する。また、絶縁層214は、多層構造としてもよい。例えば、スパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜し、当該酸化アルミニウム上に、ALD法によって酸化アルミニウムを成膜する構造としてもよい。または、ALD法によって酸化アルミニウムを成膜し、当該酸化アルミニウム上に、スパッタリング法によって酸化アルミニウムを成膜する構造としてもよい。
【0193】
次に絶縁層214上に、導電層205となる導電膜を成膜する。導電層205となる導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。また、導電層205となる導電膜は、多層膜とすることができる。本実施の形態では、導電層205となる導電膜としてタングステンを成膜する。
【0194】
次に、リソグラフィー法を用いて、導電層205となる導電膜を加工し、導電層205を形成する。
【0195】
なお、リソグラフィー法では、例えば、レジストマスクの露光に、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、EUV(Extreme Ultraviolet)光などを用いることができる。また、基板と投影レンズとの間に液体(例えば水)を満たして露光する、液浸技術を用いてもよい。また、前述した光に代えて、電子ビームやイオンビームを用いてもよい。なお、電子ビームやイオンビームを用いる場合には、マスクは不要となる。なお、レジストマスクの除去には、アッシングなどのドライエッチング処理、ウェットエッチング処理、またはこれらを組み合わせて行うことができる。
【0196】
また、レジストマスクの代わりに絶縁膜や導電膜からなるハードマスクを用いてもよい。ハードマスクを用いる場合、導電層205となる導電膜上にハードマスク材料となる絶縁膜や導電膜を形成し、その上にレジストマスクを形成し、ハードマスク材料をエッチングすることで所望の形状のハードマスクを形成できる。導電層205となる導電膜のエッチングは、レジストマスクを除去してから行っても良いし、レジストマスクを残したまま行っても良い。後者の場合、エッチング中にレジストマスクが消失することがある。導電層205となる導電膜のエッチング後にハードマスクをエッチングにより除去しても良い。一方、ハードマスクの材料が後工程に影響が無い、あるいは後工程で利用できる場合、必ずしもハードマスクを除去する必要は無い。
【0197】
ドライエッチング装置としては、平行平板型電極を有する容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)エッチング装置を用いることができる。平行平板型電極を有する容量結合型プラズマエッチング装置は、一方の電極に高周波電源を印加する構成でもよい。または一方の電極に複数の異なった高周波電源を印加する構成でもよい。または電極それぞれに同じ周波数の高周波電源を印加する構成でもよい。または電極それぞれに周波数の異なる高周波電源を印加する構成でもよい。または高密度プラズマ源を有するドライエッチング装置を用いることができる。例えば、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング装置などを用いることができる。
【0198】
次に、絶縁層214上、導電層205上に絶縁層216となる絶縁膜を成膜する。該絶縁膜は、導電層205の上面、および側面と接するように形成する。絶縁層216となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。本実施の形態では、絶縁層216となる絶縁膜として、CVD法によって酸化シリコンを成膜する。
【0199】
ここで、絶縁層216となる絶縁膜の膜厚は、導電層205の膜厚以上とすることが好ましい。例えば、導電層205の膜厚を1とすると、絶縁層216となる絶縁膜の膜厚は、1以上3以下とする。
【0200】
次に、絶縁層216となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁層216となる絶縁膜の一部を除去し、導電層205の表面を露出させる。これにより、上面が平坦な、導電層205と、導電層205の側面と接する絶縁層216を形成できる(図5参照。)。絶縁層216と導電層205の上面の平坦性を向上させることにより、半導体層230a、半導体層230b、半導体層230cを形成するCAAC-OSの結晶性を向上させることができる。
【0201】
なお、絶縁層216および導電層205の作製方法は上記に限られるものではない。例えば、絶縁層214の上に絶縁層216となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜に開口を設け、当該開口に埋め込むように導電層205を形成してもよい。
【0202】
次に、絶縁層216、および導電層205上に絶縁層222を成膜する。絶縁層222の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0203】
次に、絶縁層222上に絶縁層224を成膜する。絶縁層224の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0204】
続いて、加熱処理を行うと好ましい。加熱処理は、250℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下、さらに好ましくは320℃以上450℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素または不活性ガス雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素または不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0205】
本実施の形態では、加熱処理として、絶縁層224の成膜後に窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。当該加熱処理によって、絶縁層224に含まれる水、水素などの不純物を除去することなどができる。また、加熱処理は、絶縁層222の成膜後などのタイミングで行うこともできる。
【0206】
ここで、絶縁層224に過剰酸素領域を形成するために、減圧状態で酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。酸素を含むプラズマ処理は、例えばマイクロ波を用いた高密度プラズマを発生させる電源を有する装置を用いることが好ましい。または、基板側にRF(Radio Frequency)を印加する電源を有してもよい。高密度プラズマを用いることより、高密度の酸素ラジカルを生成することができ、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを効率よく絶縁層224内に導くことができる。または、この装置を用いて不活性ガスを含むプラズマ処理を行った後に、脱離した酸素を補うために酸素を含むプラズマ処理を行ってもよい。なお、当該プラズマ処理の条件を適宜選択することにより、絶縁層224に含まれる水、水素などの不純物を除去できる。その場合、加熱処理は行わなくてもよい。
【0207】
次に、絶縁層224上に、半導体層230aとなる金属酸化物膜230A、および半導体層230bとなる金属酸化物膜230Bを順に成膜する(図5参照。)。なお、上記金属酸化物膜は、大気環境にさらさずに連続して成膜することが好ましい。大気開放せずに成膜することで、金属酸化物膜230A、および金属酸化物膜230B上に大気環境からの不純物または水分が付着することを防ぐことができ、金属酸化物膜230Aと金属酸化物膜230Bとの界面近傍を清浄に保つことができる。
【0208】
金属酸化物膜230A、および金属酸化物膜230Bの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0209】
例えば、金属酸化物膜230A、および金属酸化物膜230Bをスパッタリング法によって成膜する場合は、スパッタリングガスとして酸素、または、酸素と希ガスの混合ガスを用いる。スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を高めることで、成膜される金属酸化物膜中の過剰酸素を増やすことができる。また、上記の金属酸化物膜をスパッタリング法によって成膜する場合は、上記のIn-M-Zn酸化物ターゲットなどを用いることができる。また、ターゲットには、直流(DC)電源または、高周波(RF)電源などの交流(AC)電源が接続され、ターゲットの電気伝導度に応じて、必要な電力を印加できる。
【0210】
特に、金属酸化物膜230Aの成膜時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が絶縁層224に供給される場合がある。したがって、金属酸化物膜230Aのスパッタリングガスに含まれる酸素の割合は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%とすればよい。
【0211】
また、金属酸化物膜230Bをスパッタリング法で形成する場合、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を1%以上30%以下、好ましくは5%以上20%以下として成膜すると、酸素欠乏型の酸化物半導体が形成される。酸素欠乏型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られる。また、基板を加熱しながら成膜を行うことによって、当該金属酸化物膜の結晶性を向上させることができる。ただし、本発明の一態様はこれに限定されない。半導体層230bとなる金属酸化物膜230Bをスパッタリング法で形成する場合、スパッタリングガスに含まれる酸素の割合を、30%を超えて100%以下、好ましくは70%以上100%以下として成膜すると、酸素過剰型の酸化物半導体が形成される。酸素過剰型の酸化物半導体をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、比較的高い信頼性が得られる。
【0212】
本実施の形態では、金属酸化物膜230Aとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=2:2:1[原子数比]、あるいは1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。また、金属酸化物膜230Bとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。なお、各金属酸化物膜は、成膜条件、および原子数比を適宜選択することで、半導体層230に求める特性に合わせて形成するとよい。
【0213】
ここで、絶縁層222、絶縁層224、金属酸化物膜230A、および金属酸化物膜230Bを、大気に暴露することなく成膜することが好ましい。例えば、マルチチャンバー方式の成膜装置を用いればよい。
【0214】
次に、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、上述した加熱処理条件を用いることができる。加熱処理によって、金属酸化物膜230A、および金属酸化物膜230B中の水、水素などの不純物を除去することなどができる。本実施の形態では、窒素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行った後に、連続して酸素雰囲気にて400℃の温度で1時間の処理を行う。
【0215】
次に、金属酸化物膜230A、および金属酸化物膜230Bを島状に加工して、半導体層230a、および半導体層230bを形成する。なお、当該工程において、絶縁層224の半導体層230aと重ならない領域の膜厚が薄くなることがある(図6参照。)。
【0216】
ここで、半導体層230a、および半導体層230bは、少なくとも一部が導電層205と重なるように形成する。また、半導体層230a、および半導体層230bの側面がテーパー形状である構成にしてもよい。その場合、半導体層230a、および半導体層230bの側面と絶縁層222の上面のなす角は60°以上70°未満が好ましい。この様な形状とすることで、これより後の工程において、絶縁層226などの被覆性が向上し、鬆などの欠陥を低減できる。または、半導体層230bの側面は、絶縁層222の上面に対し、概略垂直にしてもよい。半導体層230a、および半導体層230bの側面が、絶縁層222の上面に対し、概略垂直であることで、複数のトランジスタ200を設ける際に、小面積化、高密度化が可能となる。
【0217】
また、半導体層230bの側面と半導体層230bの上面との間に、湾曲面を有する。つまり、側面の端部と上面の端部は、湾曲していることが好ましい(ラウンド状ともいう)。湾曲面は、例えば、半導体層230bの端部において、曲率半径が、3nm以上10nm以下、好ましくは、5nm以上6nm以下とする。端部に角を有さないことで、以降の成膜工程における膜の被覆性が向上する。
【0218】
なお、金属酸化物膜230A、および金属酸化物膜230Bの加工はリソグラフィー法を用いて行えばよい。また、当該加工はドライエッチング法やウェットエッチング法を用いることができる。ドライエッチング法は微細加工に適している。
【0219】
また、ドライエッチングなどの処理を行うことによって、エッチングガスなどに起因した不純物が半導体層230a、および半導体層230bなどの表面または内部に付着または拡散することがある。不純物としては、例えば、フッ素または塩素などがある。当該不純物などを除去するために、洗浄を行うことが好ましい。洗浄方法としては、洗浄液など用いたウェット洗浄、プラズマを用いたプラズマ処理、または熱処理による洗浄などがあり、上記洗浄を適宜組み合わせて行ってもよい。ウェット洗浄としては、シュウ酸、リン酸、またはフッ化水素酸などを炭酸水または純水で希釈した水溶液を用いて洗浄処理を行ってもよい。または、純水または炭酸水を用いた超音波洗浄を行ってもよい。本実施の形態では、純水または炭酸水を用いた超音波洗浄を行う。
【0220】
続いて、加熱処理を行ってもよい。加熱処理の条件は、前述の加熱処理の条件を用いることができる。
【0221】
続いて、半導体層230a、半導体層230b、及び絶縁層224を覆って絶縁層226を成膜する(図7参照)。絶縁層226の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。絶縁層226は、絶縁層224と同様の方法により成膜できる。
【0222】
絶縁層226の厚さは、後の元素の注入処理の条件に応じて適宜設定することができる。例えば絶縁層224として酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜を用いた場合には、絶縁層226の厚さを3nm以上20nm以下の厚さとすることができる。
【0223】
次に、絶縁層224、半導体層230a、および半導体層230bの上に、ダミーゲート層262Aとなるダミーゲート膜を成膜する。
【0224】
ダミーゲート層262Aとなるダミーゲート膜は、加工してダミーゲートとして使用する。ダミーゲートとは、仮のゲート電極のことである。つまり、ダミーゲート層262Aとなるダミーゲート膜を加工することで、ダミーゲートを形成し、後の工程において該ダミーゲートを除去し、代わりに導電膜等によるゲート電極を形成する。従って、ダミーゲート層262Aとなるダミーゲート膜は微細加工が容易であり、かつ、除去も容易な膜を用いることが好ましい。
【0225】
ダミーゲート層262Aとなるダミーゲート膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。例えば、絶縁性材料、半導体材料、または導電性材料を用いることができる。具体的には、ポリシリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン、アルミニウム、チタン、タングステンなどの金属膜などを用いればよい。または、塗布法を用いて、炭素を含む膜、SOG(Spin On Glass)、樹脂膜などを形成してもよい。例えば、フォトレジスト、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。SOG、樹脂膜を塗布法によって形成することで、ダミーゲート膜の表面を平坦にすることができる。このように、ダミーゲート膜の表面を平坦にすることで、微細加工が容易となり、さらに、除去も容易である。
【0226】
また、ダミーゲート層262Aとなるダミーゲート膜は、異なる膜種を用いて多層膜とすることもできる。例えば、ダミーゲート層262Aとなるダミーゲート膜を導電膜と該導電膜上の樹脂膜の2層構造の膜とすることができる。ダミーゲート膜をこのような構造とすることで、例えば、後のCMP工程において、該導電膜がCMP処理のストッパ膜として機能する場合がある。または、CMP処理の終点検出が可能となる場合があり、加工ばらつきの低減が可能となる場合がある。
【0227】
次に、リソグラフィー法によって、ダミーゲート層262Aとなるダミーゲート膜をエッチングし、ダミーゲート層262Aを形成する(図8参照。)。ダミーゲート層262Aは、少なくとも一部が、導電層205および半導体層230と重なるように形成する。
【0228】
次に、第1の注入処理を行なう(図8参照)。第1の注入処理は、ダミーゲート層262Aをマスクとして、半導体層230bにドーパント256を注入(添加)する処理である。これにより、半導体層230bのダミーゲート層262Aと重畳していない領域に、ドーパント256を含む、領域252aおよび領域252bが形成される。このように、ダミーゲート層262Aのチャネル長方向の長さによって、領域252aと領域252bの間の距離、つまりチャネル長を制御することができる。
【0229】
ドーパント256の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。質量分離を行う場合、添加するイオン種およびその濃度を厳密に制御することができる。一方、質量分離を行わない場合、短時間で高濃度のイオンを添加することができる。また、原子または分子のクラスターを生成してイオン化するイオンドーピング法を用いてもよい。なお、ドーパントを、イオン、ドナー、アクセプター、不純物または元素などと言い換えてもよい。
【0230】
ドーパント256としては、上述の酸素欠損を形成する元素、または酸素欠損と結合する元素などを用いればよい。このような元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。また、希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。また、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンなどの金属元素の中から選ばれるいずれか一つまたは複数の金属元素を添加してもよい。上述した中でもドーパント256としては、ホウ素、及びリンが好ましい。ホウ素、リンをドーパント256として用いる場合、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、設備投資を抑制することができる。
【0231】
特に、ドーパント256として、酸化物を形成しやすい元素を用いることが好ましい。このような元素としては、代表的にはホウ素、リン、アルミニウム、マグネシウム等がある。
【0232】
ドーパント256を注入する際に用いる原料ガスとしては、上記不純物元素を含むガスを用いることができる。ホウ素を供給する場合、代表的にはBガスやBFガスなどを用いることができる。またリンを供給する場合には、代表的にはPHガスを用いることができる。また、これらの原料ガスを希ガスで希釈した混合ガスを用いてもよい。
【0233】
その他、原料ガスとして、CH、N、NH、AlH、AlCl、SiH、Si、F、HF、H及び希ガス等を用いることができる。また、イオン源はガスに限られず、液体または固体を気化させたものをイオン源としてもよい。
【0234】
ドーパント256の添加は、絶縁層226及び半導体層230の組成や密度、厚さなどを考慮して、加速電圧やドーズ量などの条件を設定することで制御することができる。
【0235】
なお、ドーパント256の供給方法としてはこれに限られず、例えばプラズマ処理や、加熱による熱拡散を利用した処理などを用いてもよい。プラズマ処理法の場合、添加する不純物元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、プラズマ処理を行うことによって、不純物元素を添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置、アッシング装置、プラズマCVD装置、高密度プラズマCVD装置等を用いることができる。
【0236】
なお、図8では、ドーパント256を絶縁層214の上面に略垂直に添加しているが、これに限られず、ドーパント256の添加を絶縁層214の上面に対して傾斜させて行ってもよい。絶縁層214の上面に対して傾斜させてドーパントを添加させることにより、ダミーゲート層262Aと重畳する領域の一部にも領域252aおよび領域252bを形成することができる。
【0237】
続いて、絶縁層226及びダミーゲート層262Aを覆って、絶縁層228を成膜する(図9参照)。絶縁層228の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。絶縁層228は、絶縁層222と同様の方法により成膜できる。
【0238】
絶縁層228は、水素などの不純物や、酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウム膜、を成膜することが好ましい。スパッタリング法によって、酸素を含むガスを用いて酸化アルミニウム膜を成膜することによって、絶縁層226中へ酸素を注入することができる。つまり、絶縁層226は過剰酸素を有することができる。
【0239】
また、絶縁層228として、高温で基板加熱を行いながら、酸化アルミニウムを成膜してもよい。絶縁層228の成膜時の基板加熱温度は、200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは350℃以上にすればよい。このとき、絶縁層228を成膜する前に、ALD法を用いて酸化アルミニウムを成膜しておくことにより、上記の温度で絶縁層228を成膜したときに、ダミーゲート層262Aが変形することを防ぐことができる。
【0240】
次に、第2の注入処理を行なう(図9参照)。第2の注入処理は、ダミーゲート層262Aおよび絶縁層228のダミーゲート層262Aの側面に接する部分をマスクとして、半導体層230bにドーパント257を注入(添加)する処理である。これにより、半導体層230bの該マスクと重畳していない領域に、ドーパント257を含む、領域253aおよび領域253bが形成される。このように、ダミーゲート層262Aの側面を覆う絶縁層228の厚さによって、領域252の中で領域253が形成されていない部分(図2に示す領域232aおよび領域232bに相当する。)のチャネル長方向の長さを制御することができる。
【0241】
ドーパント257の添加方法は、上記のドーパント256の添加方法と同様の方法を用いることができる。このとき、ドーパント257が、絶縁層228のダミーゲート層262Aと接していない部分、及び絶縁層226を貫通できるように、ドーパント257に十分なエネルギーを与えることが好ましい。また、ドーパント257としては、ドーパント256と同様の元素を用いることができる。
【0242】
ドーパント257は、ドーパント256よりも高い濃度で注入することが好ましい。これにより、領域252aよりも高濃度に元素が注入された領域252bを形成することができる。また、ドーパント257の注入は、ドーパント256よりも高い加速電圧で行うことが好ましい。これにより、領域252aよりも深くまで元素が分布した領域252bを形成することができる。
【0243】
また、図9では、ドーパント257を絶縁層214の上面に略垂直に添加しているが、これに限られず、ドーパント257の添加を絶縁層214の上面に対して傾斜させて行ってもよい。絶縁層214の上面に対して傾斜させてドーパントを添加させることにより、絶縁層228のダミーゲート層262Aと接する部分と重畳する領域の一部にも領域253aおよび領域253bを形成することができる場合がある。
【0244】
また、本実施の形態では、ドーパント257は、絶縁層228及び絶縁層226を介して半導体層230に添加される。このとき、絶縁層228及び絶縁層226にもドーパント257が添加される。すなわち、半導体層230、絶縁層228及び絶縁層226は、ドーパント257に含まれる元素を有する。また、絶縁層226が過剰酸素を有する場合、ドーパント257によって、外部への過剰酸素の拡散を抑制できる。
【0245】
なお、本実施の形態においては、ドーパント257の添加を絶縁層228の成膜後に行ったが、これに限られるものではない。例えば、後述する絶縁膜244Aの成膜後にドーパント257の添加を行ってもよい。これにより、半導体層230bのダミーゲート層262A、絶縁層228の基板垂直方向に延伸する部分、および絶縁膜244Aの基板垂直方向に延伸する部分と重畳していない領域に、ドーパント257を含む、領域253aおよび領域253bが形成される。
【0246】
以上のように、領域252および領域253を形成することにより、後の工程で形成する導電層260を、領域252aおよび領域253aと、領域252bおよび領域253bと、の間に自己整合的に配置することができる。
【0247】
次に、絶縁層228の上に絶縁膜244Aを成膜する(図10参照)。絶縁膜244Aの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。
【0248】
絶縁膜244Aは、絶縁層228と同様に、水素などの不純物や、酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、ALD法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することが好ましい。被覆性に優れたALD法を用いることで、ダミーゲート層262Aなどにより形成された段差部においても、均一な厚さを有する絶縁膜244Aを形成することができる。また、ALD法を用いることで、緻密な薄膜を成膜することができる。このように被覆性に優れ、緻密な薄膜を成膜することが出来るので、例えば、絶縁層228にボイドやピンホールなどの欠陥が生じても、絶縁膜244Aによって覆うことができる。
【0249】
また、絶縁膜244Aとして、窒化アルミニウム、窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどを、成膜してもよい。例えば、絶縁膜244Aとして、アルミニウムターゲットを用いた反応性スパッタリングで、窒化アルミニウム膜を成膜する場合、成膜ガスの全流量に対する窒素ガスの流量を好ましくは30%以上100%以下、より好ましくは40%以上100%以下、さらに好ましくは50%以上100%以下とする。
【0250】
以上により、絶縁層224に含まれる過剰酸素が外方へ拡散することを防止し、また外方から水や水素のような不純物の絶縁層224への侵入を防止することができる。尚、絶縁膜244Aの成膜は省略することができる場合がある。
【0251】
次に、絶縁膜244A上に、絶縁層280となる絶縁膜を成膜する。絶縁層280となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0252】
次に、絶縁層280となる絶縁膜、ダミーゲート層262A、絶縁層228、および絶縁膜244Aの一部を、ダミーゲート層262Aの一部が露出するまで除去し、絶縁層280、ダミーゲート262、絶縁層228および絶縁層244を形成する(図11参照。)。絶縁層280、ダミーゲート262、絶縁層228および絶縁層244の形成にはCMP処理を用いることが好ましい。
【0253】
また、上述のようにダミーゲート層262Aを、例えば、導電膜と該導電膜上に樹脂膜を形成する2層構造の膜とすることで、CMP工程において、該導電膜がCMP処理のストッパ膜として機能する場合がある。または、該導電膜によりCMP処理の終点検出が可能となる場合があり、ダミーゲート262の高さのばらつきの低減が可能となる場合がある。図11(B)に示すように、ダミーゲート262の上面と、絶縁層228、絶縁層244および絶縁層280の上面が略一致する。
【0254】
次に、ダミーゲート262と、ダミーゲート262と重畳する絶縁層226の一部を除去し、開口263を形成する(図12参照。)。ダミーゲート262及び絶縁層226の除去は、ウェットエッチング、ドライエッチング、またはアッシングなどを用いて行うことができる。または、適宜、上記の処理を複数組み合わせて行ってもよい。例えば、アッシング処理の後に、ウェットエッチング処理を行うなどがある。ダミーゲート262及び絶縁層226の一部を除去することにより、開口263において半導体層230bの表面の一部が露出する。
【0255】
続いて、絶縁層228のダミーゲート262の側面に接していた部分をエッチングする(図13参照)。これにより、開口263の内部において、絶縁層244の側面が露出した状態となる。
【0256】
絶縁層228の一部のエッチングは、異方性のドライエッチング、等方性のドライエッチング、ウェットエッチング、または反応性ガスを用いたエッチングを用いることができる。またこのとき、絶縁層280、絶縁層244、半導体層230がエッチングされない条件でエッチングすることが好ましい。
【0257】
また、絶縁層228のエッチング時、または絶縁層228のエッチング後に、開口263内に位置する絶縁層226の突出した部分をわずかにエッチングすることにより、当該部分の表面が曲面となるように加工することができる。
【0258】
次に、金属酸化物膜230Cの成膜前に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、100℃以上400℃以下で行えばよく、例えば200℃で行えばよい。あるいは、金属酸化物膜230Cの成膜温度と同じ温度で行うことが好ましい。ここで、成膜温度とは、成膜中の基板温度に限らず、成膜装置の設定温度を含む。例えば、金属酸化物膜230Cを300℃で成膜する場合、当該加熱処理は300℃とすることが好ましい。当該加熱処理は、減圧下で行うことが好ましく、例えば、真空雰囲気で行ってもよい。真空雰囲気は、ターボ分子ポンプ等で排気を行うことで維持される。真空雰囲気では、処理室の圧力は、1×10-2Pa以下、好ましくは1×10-3Pa以下とすればよい。
【0259】
次に、開口263に埋め込むように、金属酸化物膜230Cを成膜する。また、上記加熱処理後、大気に暴露することなく、連続して金属酸化物膜230Cの成膜を行うことが好ましい。例えば、後述するマルチチャンバー方式の成膜装置などを用いて、加熱処理と成膜処理を異なるチャンバーで、連続して行うことが好ましい。このような処理を行うことによって、半導体層230aおよび半導体層230bの表面などに吸着している水分、水素、炭素などの不純物を除去し、さらに半導体層230aおよび半導体層230b中の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。当該加熱処理により除去される不純物には、水素と炭素の結合を有する不純物や、水素と酸素の結合を有する不純物なども含まれる。さらに、外気に曝さず連続で加熱処理と成膜を行うことで、水素などの不純物が半導体層230に再侵入することを防ぐことができる。
【0260】
金属酸化物膜230Cの成膜はスパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。金属酸化物膜230Cに求める特性に合わせて、金属酸化物膜230A、または金属酸化物膜230Bと同様の成膜方法を用いて、金属酸化物膜230Cとなる金属酸化物膜を成膜すればよい。金属酸化物膜230Cとして、In-Ga-Zn酸化物や、Inを含まない酸化物を用いることができる。Inを含まない酸化物として、Ga-Zn酸化物や、酸化ガリウムなどを用いることができる。また、金属酸化物膜230Cとして、In-Ga-Zn酸化物とInを含まない酸化物の積層構造を用いてもよい。金属酸化物膜230Cとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、あるいはGa:Zn=2:5[原子数比]のターゲットを用いて成膜する。本実施の形態では、金属酸化物膜230Cとして、スパッタリング法によって、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて半導体層230cとなる金属酸化物膜を成膜する。
【0261】
また、金属酸化物膜230Cは、第1の金属酸化物膜と、第1の金属酸化物膜上の第2の金属酸化物膜からなる積層構造を有していてもよく、金属酸化物膜230Bの形成に用いたターゲットと同様のターゲットを用いて第1の金属酸化物膜を形成し、金属酸化物膜230Aの形成に用いたターゲットと同様のターゲットを用いて第2の金属酸化物膜を形成してもよい。
【0262】
金属酸化物膜230Cの成膜は、基板を加熱しながら行うことが好ましい。このとき、基板温度を300℃以上にすることで、半導体層230a、半導体層230b、および金属酸化物膜230C中の酸素欠損を低減することができる。また、例えば、後述する絶縁膜250Aの成膜温度と同じ温度で成膜してもよい。また、このように基板を加熱しながら成膜することで、半導体層230a、半導体層230b、および金属酸化物膜230Cの結晶性の向上を図ることもできる。
【0263】
特に、金属酸化物膜230Cの成膜時に、スパッタリングガスに含まれる酸素の一部が半導体層230aおよび半導体層230bに供給される場合がある。したがって、金属酸化物膜230Cのスパッタリングガスに含まれる酸素の割合は70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは100%とすればよい。また、基板を加熱しながら成膜を行うことによって、当該金属酸化物膜の結晶性を向上させることができる。
【0264】
次に、絶縁膜250Aの成膜前に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、100℃以上400℃以下で行えばよく、例えば200℃で行えばよい。あるいは、絶縁膜250Aの成膜温度と同じ温度で行うことが好ましい。ここで、成膜温度とは、成膜中の基板温度に限らず、成膜装置の設定温度を含む。例えば、絶縁膜250Aを350℃で成膜する場合、当該加熱処理は350℃とすることが好ましい。当該加熱処理は、減圧下で行うことが好ましく、例えば、真空雰囲気で行ってもよい。真空雰囲気は、ターボ分子ポンプ等で排気を行うことで維持される。真空雰囲気では、処理室の圧力は、1×10-2Pa以下、好ましくは1×10-3Pa以下とすればよい。
【0265】
次に、絶縁膜250Aを成膜する。絶縁膜250Aは、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて成膜することができる。絶縁膜250Aとしては、ALD法を用いて、酸化シリコン、酸化ハフニウム、または酸化ガリウムなどを成膜することが好ましい。例えば、絶縁膜250Aとして、酸化シリコンと、酸化シリコン上の酸化ガリウムの積層膜を用いればよい。なお、絶縁膜250Aを成膜する際の成膜温度は、300℃以上450℃未満、好ましくは300℃以上400℃未満、特に350℃前後とすることが好ましい。例えば、絶縁膜250Aを、350℃で成膜することで、不純物が少ない絶縁膜を成膜することができる。
【0266】
なお、マイクロ波で酸素を励起し、高密度な酸素プラズマを発生させ、当該酸素プラズマに絶縁膜250Aを曝すことで、絶縁膜250Aへ酸素を導入することができる。
【0267】
また、加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、前述の加熱処理条件を用いることができる。当該加熱処理によって、絶縁膜250Aの水分濃度および水素濃度を低減させることができる。
【0268】
次に、導電膜260Aaおよび導電膜260Abを成膜する。導電膜260Aaおよび導電膜260Abの成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。例えば、CVD法を用いることが好ましい。本実施の形態では、ALD法を用いて、導電膜260Aaを成膜し、CVD法を用いて導電膜260Abを成膜する(図14参照。)。
【0269】
次に、CMP処理によって、金属酸化物膜230C、絶縁膜250A、導電膜260Aaおよび導電膜260Abを絶縁層280が露出するまで研磨することによって、半導体層230c、絶縁層250および導電層260(導電層260aおよび導電層260b)を形成する(図15参照。)。
【0270】
次に加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、前述の加熱処理条件を用いることができる。当該加熱処理によって、絶縁層280の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。または、絶縁層274となる絶縁膜の成膜前に加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、100℃以上400℃以下で行えばよく、例えば200℃で行えばよい。あるいは、該絶縁膜の成膜温度と同じ温度で行うことが好ましい。ここで、成膜温度とは、成膜中の基板温度に限らず、成膜装置の設定温度を含む。例えば、該絶縁膜を250℃で成膜する場合、当該加熱処理は250℃とすることが好ましい。当該加熱処理は、減圧下で行うことが好ましく、例えば、真空雰囲気で行ってもよい。真空雰囲気は、ターボ分子ポンプ等で排気を行うことで維持される。真空雰囲気では、処理室の圧力は、1×10-2Pa以下、好ましくは1×10-3Pa以下とすればよい。
【0271】
次に、絶縁層280上に、絶縁層274となる絶縁膜を形成する(図15参照。)。絶縁層274となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。絶縁層274となる絶縁膜としては、例えば、スパッタリング法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することが好ましい。スパッタリング法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することによって、絶縁層280が有する水素を半導体層230へ拡散することを抑制することができる場合がある。
【0272】
次に加熱処理を行ってもよい。加熱処理は、前述の加熱処理条件を用いることができる。当該加熱処理によって、絶縁層274の水分濃度および水素濃度を低減させることができる。
【0273】
次に絶縁層274上に、絶縁層281となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁層281となる絶縁膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる(図15参照。)。
【0274】
次に、絶縁層226、絶縁層228、絶縁層244、絶縁層280、絶縁層274および絶縁層281に、領域253aおよび領域253bに達する開口を形成する。当該開口の形成は、リソグラフィー法を用いて行えばよい。
【0275】
次に、絶縁層241となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜を異方性エッチングして絶縁層241を形成する。当該導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、またはALD法などを用いて行うことができる。絶縁層241となる絶縁膜としては、酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、ALD法によって、酸化アルミニウム膜を成膜することが好ましい。また、ALD法やCVD法を用いて、窒化シリコン膜を成膜してもよい。ALD法を用いて窒化シリコン膜を成膜する場合、シリコンおよびハロゲンを含むプリカーサや、アミノシラン類のプリカーサを用いることができる。シリコンおよびハロゲンを含むプリカーサとして、SiCl、SiHCl、SiCl、SiCl等を用いることができる。また、アミノシラン類のプリカーサとして、1価、2価、または3価のアミノシラン類を用いることができる。また、窒化ガスとしてアンモニアや、ヒドラジンを用いることができる。また、異方性エッチングは、例えばドライエッチング法などを行えばよい。開口の側壁部をこのような構成とすることで、外方からの酸素の透過を抑制し、次に形成する導電層240aおよび導電層240bの酸化を防止することができる。また、導電層240aおよび導電層240bから、水、水素などの不純物が外部に拡散することを防ぐことができる。
【0276】
次に、導電層240aおよび導電層240bとなる導電膜を成膜する。導電層240aおよび導電層240bとなる導電膜は、水、水素など不純物の拡散を抑制する機能を有する導電膜を含む積層構造とすることが望ましい。たとえば、窒化タンタル、窒化チタンなどと、タングステン、モリブデン、銅など、と、の積層とすることができる。導電層240となる導電膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法またはALD法などを用いて行うことができる。
【0277】
次に、CMP処理を行うことで、導電層240aおよび導電層240bとなる導電膜の一部を除去し、絶縁層281を露出する。その結果、上記開口のみに、当該導電膜が残存することで上面が平坦な導電層240aおよび導電層240bを形成することができる(図1参照)。なお、当該CMP処理により、絶縁層281の一部が除去される場合がある。
【0278】
以上により、図1に示すトランジスタ200を有する半導体装置を作製することができる。
【0279】
本発明の一態様により、オン電流の大きい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、高い周波数特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、オフ電流の小さい半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、生産性の高い半導体装置を提供することができる。
【0280】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0281】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置の一形態を、図16および図17を用いて説明する。
【0282】
[記憶装置1]
本発明の一態様である容量素子を使用した、半導体装置(記憶装置)の一例を図16に示す。図16に示す記憶装置は、トランジスタ200はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子100はトランジスタ300、およびトランジスタ200の上方に設けられている。なお、トランジスタ200として、先の実施の形態で説明したトランジスタ200などを用いることができる。
【0283】
トランジスタ200は、酸化物半導体を有する半導体層にチャネルが形成されるトランジスタである。トランジスタ200は、オフ電流が小さいため、これを記憶装置に用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、あるいは、リフレッシュ動作の頻度が極めて少ないため、記憶装置の消費電力を十分に低減することができる。
【0284】
図16に示す記憶装置において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200の第1のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200の第2のゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方(FG)と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。
【0285】
また、図16に示す記憶装置は、マトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。
【0286】
<トランジスタ300>
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、ゲート電極として機能する導電層316、ゲート絶縁層として機能する絶縁層315、基板311の一部からなる半導体領域313、およびソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0287】
ここで、図16に示すトランジスタ300はチャネルが形成される半導体領域313(基板311の一部)が凸形状を有する。また、半導体領域313の側面および上面を、絶縁層315を介して、導電層316が覆うように設けられている。なお、導電層316は仕事関数を調整する材料を用いてもよい。このようなトランジスタ300は半導体基板の凸部を利用していることからFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するためのマスクとして機能する絶縁層を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体膜を形成してもよい。
【0288】
なお、図16に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0289】
<容量素子100>
容量素子100は、トランジスタ200の上方に設けられる。容量素子100は、第1の電極として機能する導電層110と、第2の電極として機能する導電層120、および誘電体として機能する絶縁層130とを有する。
【0290】
また、例えば、導電層240上に設けた導電層112と、導電層110は、同時に形成することができる。なお、導電層112は、容量素子100、トランジスタ200、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。
【0291】
図16では、導電層112、および導電層110は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電層と導電性が高い導電層との間に、バリア性を有する導電層、および導電性が高い導電層に対して密着性が高い導電層を形成してもよい。
【0292】
また、絶縁層130は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
【0293】
例えば、絶縁層130には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料と、高誘電率(high-k)材料との積層構造を用いることが好ましい。当該構成により、容量素子100は、高誘電率(high-k)の絶縁層を有することで、十分な容量を確保でき、絶縁耐力が大きい絶縁層を有することで、絶縁耐力が向上し、容量素子100の静電破壊を抑制することができる。
【0294】
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁層としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などを用いることができる。
【0295】
一方、絶縁耐力が大きい材料(低い比誘電率の材料)としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などがある。
【0296】
<配線層>
各構造体の間には、層間膜、配線、およびプラグ等が設けられた配線層が設けられていてもよい。また、配線層は、設計に応じて複数層設けることができる。ここで、プラグまたは配線としての機能を有する導電層は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と電気的に接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電層の一部が配線として機能する場合、および導電層の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0297】
例えば、トランジスタ300上には、層間膜として、絶縁層320、絶縁層322、絶縁層324、および絶縁層326が順に積層して設けられている。また、絶縁層320、絶縁層322、絶縁層324、および絶縁層326には容量素子100、またはトランジスタ200と電気的に接続する導電層328、および導電層330等が埋め込まれている。なお、導電層328、および導電層330はプラグ、または配線として機能する。
【0298】
また、層間膜として機能する絶縁層は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。例えば、絶縁層322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0299】
絶縁層326、および導電層330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図16において、絶縁層350、絶縁層352、及び絶縁層354が順に積層して設けられている。また、絶縁層350、絶縁層352、及び絶縁層354には、導電層356が形成されている。導電層356は、プラグ、または配線として機能する。
【0300】
同様に、絶縁層210、絶縁層212、絶縁層214、および絶縁層216には、導電層218、及びトランジスタ200を構成する導電層(導電層205)等が埋め込まれている。なお、導電層218は、容量素子100、またはトランジスタ300と電気的に接続するプラグ、または配線としての機能を有する。さらに、導電層120、および絶縁層130上には、絶縁層150が設けられている。
【0301】
層間膜として用いることができる絶縁性材料としては、絶縁性を有する酸化物、窒化物、酸化窒化物、窒化酸化物、金属酸化物、金属酸化窒化物、金属窒化酸化物などがある。
【0302】
例えば、層間膜として機能する絶縁層には、比誘電率が低い材料を用いることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。したがって、絶縁層の機能に応じて、材料を選択するとよい。
【0303】
例えば、絶縁層150、絶縁層212、絶縁層352、および絶縁層354等には、比誘電率の低い絶縁層を用いることが好ましい。例えば、当該絶縁層は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンまたは樹脂などを有することが好ましい。または、当該絶縁層は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコンまたは空孔を有する酸化シリコンと、樹脂と、の積層構造を有することが好ましい。酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、樹脂と組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の低い積層構造とすることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリルなどがある。
【0304】
また、導電層112、または導電層120上に設けられる絶縁層130、および絶縁層150の一方、または両方を抵抗率が1.0×1012Ωcm以上1.0×1015Ωcm以下、好ましくは5.0×1012Ωcm以上1.0×1014Ωcm以下、より好ましくは1.0×1013Ωcm以上5.0×1013Ωcm以下の絶縁層とすることが好ましい。絶縁層130、および絶縁層150の一方、または両方を上記のような抵抗率を有する絶縁層とすることで、当該絶縁層は、絶縁性を維持しつつ、トランジスタ200、トランジスタ300、容量素子100、および導電層112や導電層120等の配線間に蓄積される電荷を分散し、該電荷によるトランジスタ、該トランジスタを有する記憶装置の特性不良や静電破壊を抑制することができ、好ましい。このような絶縁層として、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンを用いることができる。
【0305】
また、上記のような抵抗率を有する絶縁層として、絶縁層140を導電層112の下層に設けてもよい。この場合、絶縁層281上に絶縁層140を形成し、絶縁層140、絶縁層281、絶縁層274、絶縁層280、絶縁層244、絶縁層228、絶縁層226などに開口部を形成し、当該開口部内に絶縁層241の形成や、トランジスタ200、導電層218などと電気的に接続する導電層240の形成を行えばよい。絶縁層140は、絶縁層130、または絶縁層150と同様の材料を用いることができる。
【0306】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層で囲うことによって、トランジスタの電気特性を安定にすることができる。従って、絶縁層210、および絶縁層350等には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層を用いればよい。
【0307】
水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁層を、単層で、または積層で用いればよい。具体的には、水素などの不純物および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁層として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0308】
配線、プラグに用いることができる導電層としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0309】
例えば、導電層328、導電層330、導電層356、導電層218、および導電層112等としては、上記の材料で形成される金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0310】
<<酸化物半導体が設けられた層の配線、またはプラグ>>
なお、トランジスタ200に、酸化物半導体を用いる場合、酸化物半導体の近傍に過剰酸素領域を有する絶縁層を設けることがある。その場合、該過剰酸素領域を有する絶縁層と、該過剰酸素領域を有する絶縁層の開口に設ける導電層との間に、バリア性を有する絶縁層を設けることが好ましい。
【0311】
例えば、図16では、絶縁層224と、導電層240との間に、絶縁層241を設けるとよい。特に、絶縁層241は、過剰酸素領域を有する絶縁層224を挟む絶縁層222、絶縁層226、絶縁層228および絶縁層244と、接して設けられることが好ましい。絶縁層241と、絶縁層222、絶縁層226、絶縁層228および絶縁層244とが接して設けられることで、絶縁層224、およびトランジスタ200は、バリア性を有する絶縁層により、封止する構造とすることができる。さらに、絶縁層241は、絶縁層280、および絶縁層281の一部とも接することが好ましい。絶縁層241が、絶縁層280、および絶縁層281まで延在していることで、酸素や不純物の拡散を、より抑制することができる。
【0312】
つまり、絶縁層241を設けることで、絶縁層224が有する過剰酸素が、導電層240に吸収されることを抑制することができる。また、絶縁層241を有することで、不純物である水素が、導電層240を介して、トランジスタ200へ拡散することを抑制することができる。
【0313】
なお、絶縁層241としては、水または水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジムまたは酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなどを用いることができる。
【0314】
以上が構成例についての説明である。本構成を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを提供することができる。または、消費電力が低減された半導体装置を提供することができる。
【0315】
[記憶装置2]
本発明の一態様である半導体装置(記憶装置)の一例を図17に示す。図17に示す記憶装置は、図16で示したトランジスタ200、トランジスタ300、および容量素子100を有する記憶装置に、トランジスタ400を加えたものである。
【0316】
トランジスタ400は、トランジスタ200の第2のゲート電圧を制御することができる。例えば、トランジスタ400の第1のゲート及び第2のゲートをソースとダイオード接続し、トランジスタ400のソースと、トランジスタ200の第2のゲートを接続する構成とする。当該構成でトランジスタ200の第2のゲートの負電位を保持するとき、トランジスタ400の第1のゲート―ソース間の電圧および、第2のゲート―ソース間の電圧は、0Vになる。トランジスタ400において、第2のゲート電圧及び第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流が非常に小さいため、トランジスタ200およびトランジスタ400に電源供給をしなくても、トランジスタ200の第2のゲートの負電位を長時間保持することができる。これにより、トランジスタ200、およびトランジスタ400を有する記憶装置は、長期にわたり記憶内容を保持することが可能である。
【0317】
従って、図17において、配線1001はトランジスタ300のソースと電気的に接続され、配線1002はトランジスタ300のドレインと電気的に接続されている。また、配線1003はトランジスタ200のソースおよびドレインの一方と電気的に接続され、配線1004はトランジスタ200のゲートと電気的に接続され、配線1006はトランジスタ200のバックゲートと電気的に接続されている。そして、トランジスタ300のゲート、およびトランジスタ200のソースおよびドレインの他方は、容量素子100の電極の一方(FG)と電気的に接続され、配線1005は容量素子100の電極の他方と電気的に接続されている。配線1007はトランジスタ400のソースと電気的に接続され、配線1008はトランジスタ400のゲートと電気的に接続され、配線1009はトランジスタ400のバックゲートと電気的に接続され、配線1010はトランジスタ400のドレインと電気的に接続されている。ここで、配線1006、配線1007、配線1008、及び配線1009が電気的に接続されている。
【0318】
また、図17に示す記憶装置は、図16に示す記憶装置と同様に、マトリクス状に配置することで、メモリセルアレイを構成することができる。なお、1個のトランジスタ400は、複数のトランジスタ200の第2のゲート電圧を制御することができる。そのため、トランジスタ400は、トランジスタ200よりも、少ない個数を設けるとよい。
【0319】
<トランジスタ400>
トランジスタ400は、トランジスタ200と、同じ層に形成されており、並行して作製することができるトランジスタである。トランジスタ400は、第1のゲート電極として機能する導電層460(導電層460a、および導電層460b)と、第2のゲート電極として機能する導電層405(導電層405a、および導電層405b)と、ゲート絶縁層として機能する絶縁層222、絶縁層224、および絶縁層450と、チャネルが形成される領域を有する半導体層430cと、ソースまたはドレインの一方として機能する領域452aおよび領域453a、半導体層431a、および半導体層431bと、ソースまたはドレインの他方として機能する領域452bおよび領域453b、半導体層432a、および半導体層432bと、導電層440(導電層440a、および導電層440b)と、を有する。
【0320】
トランジスタ400において、導電層405は、導電層205と、同じ層である。半導体層431a、および半導体層432aは、半導体層230aと、同じ層であり、半導体層431b、および半導体層432bは、半導体層230bと、同じ層である。領域452は、領域252と、同じ工程で形成される領域である。領域453は、領域253と、同じ工程で形成される領域である。半導体層430cは、半導体層230cと、同じ層である。絶縁層450は、絶縁層250と、同じ層である。導電層460は、導電層260と、同じ層である。
【0321】
なお、同じ層に形成された構造体は、同時に形成することができる。例えば、半導体層430cは、半導体層230cとなる金属酸化物膜を加工することで、形成することができる。
【0322】
トランジスタ400の活性層として機能する半導体層430cは、半導体層230などと同様に、酸素欠損が低減され、水素または水などの不純物が低減されている。これにより、トランジスタ400のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減し、第2のゲート電圧及び第1のゲート電圧が0Vのときのドレイン電流を非常に小さくすることができる。
【0323】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0324】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図18および図19を用いて、本発明の一態様に係る、酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタと呼ぶ場合がある。)、および容量素子が適用されている記憶装置(以下、OSメモリ装置と呼ぶ場合がある。)について説明する。OSメモリ装置は、少なくとも容量素子と、容量素子の充放電を制御するOSトランジスタを有する記憶装置である。OSトランジスタのオフ電流は極めて小さいので、OSメモリ装置は優れた保持特性をもち、不揮発性メモリとして機能させることができる。
【0325】
<記憶装置の構成例>
図18(A)にOSメモリ装置の構成の一例を示す。記憶装置1400は、周辺回路1411、およびメモリセルアレイ1470を有する。周辺回路1411は、行回路1420、列回路1430、出力回路1440、コントロールロジック回路1460を有する。
【0326】
列回路1430は、例えば、列デコーダ、プリチャージ回路、センスアンプ、および書き込み回路等を有する。プリチャージ回路は、配線をプリチャージする機能を有する。センスアンプは、メモリセルから読み出されたデータ信号を増幅する機能を有する。なお、上記配線は、メモリセルアレイ1470が有するメモリセルに接続されている配線であり、詳しくは後述する。増幅されたデータ信号は、出力回路1440を介して、データ信号RDATAとして記憶装置1400の外部に出力される。また、行回路1420は、例えば、行デコーダ、ワード線ドライバ回路等を有し、アクセスする行を選択することができる。
【0327】
記憶装置1400には、外部から電源電圧として低電源電圧(VSS)、周辺回路1411用の高電源電圧(VDD)、メモリセルアレイ1470用の高電源電圧(VIL)が供給される。また、記憶装置1400には、制御信号(CE、WE、RE)、アドレス信号ADDR、データ信号WDATAが外部から入力される。アドレス信号ADDRは、行デコーダおよび列デコーダに入力され、WDATAは書き込み回路に入力される。
【0328】
コントロールロジック回路1460は、外部からの入力信号(CE、WE、RE)を処理して、行デコーダ、列デコーダの制御信号を生成する。CEは、チップイネーブル信号であり、WEは、書き込みイネーブル信号であり、REは、読み出しイネーブル信号である。コントロールロジック回路1460が処理する信号は、これに限定されるものではなく、必要に応じて、他の制御信号を入力すればよい。
【0329】
メモリセルアレイ1470は、行列状に配置された複数個のメモリセルMCと、複数の配線を有する。なお、メモリセルアレイ1470と行回路1420とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一列に有するメモリセルMCの数などによって決まる。また、メモリセルアレイ1470と列回路1430とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一行に有するメモリセルMCの数などによって決まる。
【0330】
なお、図18(A)において、周辺回路1411とメモリセルアレイ1470を同一平面上に形成する例について示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、図18(B)に示すように、周辺回路1411の一部の上に、メモリセルアレイ1470の一部が重なるように設けられてもよい。例えば、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にしてもよい。
【0331】
図19に上述のメモリセルMCに適用できるメモリセルの構成例について説明する。
【0332】
[DOSRAM]
図19(A)乃至(C)に、DRAMのメモリセルの回路構成例を示す。本明細書等において、1OSトランジスタ1容量素子型のメモリセルを用いたDRAMを、DOSRAM(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)と呼ぶ場合がある。図19(A)に示す、メモリセル1471は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。なお、トランジスタM1は、ゲート(フロントゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有する。
【0333】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM1のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。
【0334】
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、及び読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM1のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM1のしきい値電圧を増減することができる。
【0335】
また、メモリセルMCは、メモリセル1471に限定されず、回路構成の変更を行うことができる。例えば、メモリセルMCは、図19(B)に示すメモリセル1472のように、トランジスタM1のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図19(C)に示すメモリセル1473のように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM1で構成されたメモリセルとしてもよい。
【0336】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1471等に用いる場合、トランジスタM1としてトランジスタ200を用い、容量素子CAとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に低くすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュ動作の頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル1471、メモリセル1472、メモリセル1473に対して多値データ、又はアナログデータを保持することができる。
【0337】
また、DOSRAMにおいて、上記のように、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にすると、ビット線を短くすることができる。これにより、ビット線容量が小さくなり、メモリセルの保持容量を低減することができる。
【0338】
[NOSRAM]
図19(D)乃至(G)に、2トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの回路構成例を示す。図19(D)に示す、メモリセル1474は、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子CBと、を有する。なお、トランジスタM2は、ゲート(フロントゲートと呼ぶ場合もある。)、及びバックゲートを有する。本明細書等において、トランジスタM2にOSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置を、NOSRAM(Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM)と呼ぶ場合がある。
【0339】
トランジスタM2の第1端子は、容量素子CBの第1端子と接続され、トランジスタM2の第2端子は、配線WBLと接続され、トランジスタM2のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM2のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CBの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM3の第1端子は、配線RBLと接続され、トランジスタM3の第2端子は、配線SLと接続され、トランジスタM3のゲートは、容量素子CBの第1端子と接続されている。
【0340】
配線WBLは、書き込みビット線として機能し、配線RBLは、読み出しビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CBの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、データ保持の最中、データの読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM2のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM2のしきい値電圧を増減することができる。
【0341】
また、メモリセルMCは、メモリセル1474に限定されず、回路の構成を適宜変更することができる。例えば、メモリセルMCは、図19(E)に示すメモリセル1475のように、トランジスタM2のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図19(F)に示すメモリセル1476のように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM2で構成されたメモリセルとしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図19(G)に示すメモリセル1477のように、配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとしてまとめた構成であってもよい。
【0342】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1474等に用いる場合、トランジスタM2としてトランジスタ200を用い、トランジスタM3としてトランジスタ300を用い、容量素子CBとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM2としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM2のリーク電流を非常に低くすることができる。これにより、書き込んだデータをトランジスタM2によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュ動作の頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル1474に多値データ、又はアナログデータを保持することができる。メモリセル1475乃至1477も同様である。
【0343】
なお、トランジスタM3は、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタと呼ぶ場合がある)であってもよい。Siトランジスタの導電型は、nチャネル型としてもよいし、pチャネル型としてもよい。Siトランジスタは、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合がある。よって、読み出しトランジスタとして機能するトランジスタM3として、Siトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタM3にSiトランジスタを用いることで、トランジスタM3の上に積層してトランジスタM2を設けることができるので、メモリセルの占有面積を低減し、記憶装置の高集積化を図ることができる。
【0344】
また、トランジスタM3はOSトランジスタであってもよい。トランジスタM2、M3にOSトランジスタを用いた場合、メモリセルアレイ1470の回路をn型トランジスタのみを用いて構成することができる。
【0345】
また、図19(H)に3トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの一例を示す。図19(H)に示すメモリセル1478は、トランジスタM4乃至M6、および容量素子CCを有する。容量素子CCは適宜設けられる。メモリセル1478は、配線BIL、RWL、WWL、BGL、およびGNDLに電気的に接続されている。配線GNDLは低レベル電位を与える配線である。なお、メモリセル1478を、配線BILに代えて、配線RBL、WBLに電気的に接続してもよい。
【0346】
トランジスタM4は、バックゲートを有するOSトランジスタであり、パックゲートは配線BGLに電気的に接続されている。なお、トランジスタM4のバックゲートとゲートとを互いに電気的に接続してもよい。あるいは、トランジスタM4はバックゲートを有さなくてもよい。
【0347】
なお、トランジスタM5、M6はそれぞれ、nチャネル型Siトランジスタまたはpチャネル型Siトランジスタでもよい。或いは、トランジスタM4乃至M6がOSトランジスタでもよい、この場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
【0348】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1478に用いる場合、トランジスタM4としてトランジスタ200を用い、トランジスタM5、M6としてトランジスタ300を用い、容量素子CCとして容量素子100を用いることができる。トランジスタM4としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM4のリーク電流を非常に低くすることができる。
【0349】
なお、本実施の形態に示す、周辺回路1411、およびメモリセルアレイ1470等の構成は、上記に限定されるものではない。これらの回路、および当該回路に接続される配線、回路素子等の、配置または機能は、必要に応じて、変更、削除、または追加してもよい。
【0350】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態などに示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0351】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図20を用いて、本発明の半導体装置が実装されたチップ1200の一例を示す。チップ1200には、複数の回路(システム)が実装されている。このように、複数の回路(システム)を一つのチップに集積する技術を、システムオンチップ(System on Chip:SoC)技術と呼ぶ場合がある。
【0352】
図20(A)に示すように、チップ1200は、CPU1211、GPU(Graphics Processing Unit)1212、一または複数のアナログ演算部1213、一または複数のメモリコントローラ1214、一または複数のインターフェース1215、一または複数のネットワーク回路1216等を有する。
【0353】
チップ1200には、バンプ(図示しない)が設けられ、図20(B)に示すように、プリント基板(Printed Circuit Board:PCB)1201の第1の面と接続する。また、PCB1201の第1の面の裏面には、複数のバンプ1202が設けられており、マザーボード1203と接続する。
【0354】
マザーボード1203には、DRAM1221、フラッシュメモリ1222等の記憶装置が設けられていてもよい。例えば、DRAM1221に先の実施の形態に示すDOSRAMを用いることができる。また、例えば、フラッシュメモリ1222に先の実施の形態に示すNOSRAMを用いることができる。
【0355】
CPU1211は、複数のCPUコアを有することが好ましい。また、GPU1212は、複数のGPUコアを有することが好ましい。また、CPU1211、およびGPU1212は、それぞれ一時的にデータを格納するメモリを有していてもよい。または、CPU1211、およびGPU1212に共通のメモリが、チップ1200に設けられていてもよい。該メモリには、前述したNOSRAMや、DOSRAMを用いることができる。また、GPU1212は、多数のデータの並列計算に適しており、画像処理や積和演算に用いることができる。GPU1212に、本発明の酸化物半導体を用いた画像処理回路や、積和演算回路を設けることで、画像処理、および積和演算を低消費電力で実行することが可能になる。
【0356】
また、CPU1211、およびGPU1212が同一チップに設けられていることで、CPU1211およびGPU1212間の配線を短くすることができ、CPU1211からGPU1212へのデータ転送、CPU1211、およびGPU1212が有するメモリ間のデータ転送、およびGPU1212での演算後に、GPU1212からCPU1211への演算結果の転送を高速に行うことができる。
【0357】
アナログ演算部1213はA/D(アナログ/デジタル)変換回路、およびD/A(デジタル/アナログ)変換回路の一、または両方を有する。また、アナログ演算部1213に上記積和演算回路を設けてもよい。
【0358】
メモリコントローラ1214は、DRAM1221のコントローラとして機能する回路、およびフラッシュメモリ1222のインターフェースとして機能する回路を有する。
【0359】
インターフェース1215は、表示装置、スピーカー、マイクロフォン、カメラ、コントローラなどの外部接続機器とのインターフェース回路を有する。コントローラとは、マウス、キーボード、ゲーム用コントローラなどを含む。このようなインターフェースとして、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)などを用いることができる。
【0360】
ネットワーク回路1216は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク回路を有する。また、ネットワークセキュリティー用の回路を有してもよい。
【0361】
チップ1200には、上記回路(システム)を同一の製造プロセスで形成することが可能である。そのため、チップ1200に必要な回路(システム)の数が増えても、製造プロセスを増やす必要が無く、チップ1200を低コストで作製することができる。
【0362】
GPU1212を有するチップ1200が設けられたPCB1201、DRAM1221、およびフラッシュメモリ1222が設けられたマザーボード1203は、GPUモジュール1204と呼ぶことができる。
【0363】
GPUモジュール1204は、SoC技術を用いたチップ1200を有しているため、そのサイズを小さくすることができる。また、画像処理に優れていることから、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップPC、携帯型(持ち出し可能な)ゲーム機などの携帯型電子機器に用いることが好適である。また、GPU1212を用いた積和演算回路により、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、自己符号化器、深層ボルツマンマシン(DBM)、深層信念ネットワーク(DBN)などの演算を実行することができるため、チップ1200をAIチップ、またはGPUモジュール1204をAIシステムモジュールとして用いることができる。
【0364】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0365】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す半導体装置を用いた記憶装置の応用例について説明する。先の実施の形態に示す半導体装置は、例えば、各種電子機器(例えば、情報端末、コンピュータ、スマートフォン、電子書籍端末、デジタルカメラ(ビデオカメラも含む)、録画再生装置、ナビゲーションシステムなど)の記憶装置に適用できる。なお、ここで、コンピュータとは、タブレット型のコンピュータや、ノート型のコンピュータや、デスクトップ型のコンピュータの他、サーバシステムのような大型のコンピュータを含むものである。または、先の実施の形態に示す半導体装置は、メモリカード(例えば、SDカード)、USBメモリ、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の各種のリムーバブル記憶装置に適用される。図21にリムーバブル記憶装置の幾つかの構成例を模式的に示す。例えば、先の実施の形態に示す半導体装置は、パッケージングされたメモリチップに加工され、様々なストレージ装置、リムーバブルメモリに用いられる。
【0366】
図21(A)はUSBメモリの模式図である。USBメモリ1100は、筐体1101、キャップ1102、USBコネクタ1103および基板1104を有する。基板1104は、筐体1101に収納されている。例えば、基板1104には、メモリチップ1105、コントローラチップ1106が取り付けられている。基板1104のメモリチップ1105などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0367】
図21(B)はSDカードの外観の模式図であり、図21(C)は、SDカードの内部構造の模式図である。SDカード1110は、筐体1111、コネクタ1112および基板1113を有する。基板1113は筐体1111に収納されている。例えば、基板1113には、メモリチップ1114、コントローラチップ1115が取り付けられている。基板1113の裏面側にもメモリチップ1114を設けることで、SDカード1110の容量を増やすことができる。また、無線通信機能を備えた無線チップを基板1113に設けてもよい。これによって、ホスト装置とSDカード1110間の無線通信によって、メモリチップ1114のデータの読み出し、書き込みが可能となる。基板1113のメモリチップ1114などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0368】
図21(D)はSSDの外観の模式図であり、図21(E)は、SSDの内部構造の模式図である。SSD1150は、筐体1151、コネクタ1152および基板1153を有する。基板1153は筐体1151に収納されている。例えば、基板1153には、メモリチップ1154、メモリチップ1155、コントローラチップ1156が取り付けられている。メモリチップ1155はコントローラチップ1156のワークメモリであり、例えばDOSRAMチップを用いればよい。基板1153の裏面側にもメモリチップ1154を設けることで、SSD1150の容量を増やすことができる。基板1153のメモリチップ1154などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0369】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0370】
(実施の形態6)
本発明の一態様に係る半導体装置は、CPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップに用いることができる。図22に、本発明の一態様に係るCPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップを備えた電子機器の具体例を示す。
【0371】
<電子機器・システム>
本発明の一態様に係るGPU又はチップは、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。また、本発明の一態様に係る集積回路又はチップを電子機器に設けることにより、電子機器に人工知能を搭載することができる。
【0372】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0373】
本発明の一態様の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0374】
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。図22に、電子機器の例を示す。
【0375】
[携帯電話]
図22(A)には、情報端末の一種である携帯電話(スマートフォン)が図示されている。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
【0376】
情報端末5500は、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、会話を認識してその会話内容を表示部5511に表示するアプリケーション、表示部5511に備えるタッチパネルに対してユーザが入力した文字、図形などを認識して、表示部5511に表示するアプリケーション、指紋や声紋などの生体認証を行うアプリケーションなどが挙げられる。
【0377】
[情報端末]
図22(B)には、デスクトップ型情報端末5300が図示されている。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303と、を有する。
【0378】
デスクトップ型情報端末5300は、先述した情報端末5500と同様に、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、設計支援ソフトウェア、文章添削ソフトウェア、献立自動生成ソフトウェアなどが挙げられる。また、デスクトップ型情報端末5300を用いることで、新規の人工知能の開発を行うことができる。
【0379】
なお、上述では、電子機器としてスマートフォン、及びデスクトップ用情報端末を例として、それぞれ図22(A)、(B)に図示したが、スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末を適用することができる。スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末としては、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーションなどが挙げられる。
【0380】
[電化製品]
図22(C)は、電化製品の一例である電気冷凍冷蔵庫5800を示している。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
【0381】
電気冷凍冷蔵庫5800に本発明の一態様のチップを適用することによって、人工知能を有する電気冷凍冷蔵庫5800を実現することができる。人工知能を利用することによって電気冷凍冷蔵庫5800は、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材、その食材の消費期限などを基に献立を自動生成する機能や、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材に合わせた温度に自動的に調節する機能などを有することができる。
【0382】
本一例では、電化製品として電気冷凍冷蔵庫について説明したが、その他の電化製品としては、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器などが挙げられる。
【0383】
[ゲーム機]
図22(D)は、ゲーム機の一例である携帯ゲーム機5200を示している。携帯ゲーム機は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
【0384】
携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、低消費電力の携帯ゲーム機5200を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0385】
更に、携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、人工知能を有する携帯ゲーム機5200を実現することができる。
【0386】
本来、ゲームの進行、ゲーム上に登場する生物の言動、ゲーム上で発生する現象などの表現は、そのゲームが有するプログラムによって定められているが、携帯ゲーム機5200に人工知能を適用することにより、ゲームのプログラムに限定されない表現が可能になる。例えば、プレイヤーが問いかける内容、ゲームの進行状況、時刻、ゲーム上に登場する人物の言動が変化するといった表現が可能となる。
【0387】
また、携帯ゲーム機5200で複数のプレイヤーが必要なゲームを行う場合、人工知能によって擬人的にゲームプレイヤーを構成することができるため、対戦相手を人工知能によるゲームプレイヤーとすることによって、1人でもゲームを行うことができる。
【0388】
図22(D)では、ゲーム機の一例として携帯ゲーム機を図示しているが、本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機はこれに限定されない。本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機としては、例えば、家庭用の据え置き型ゲーム機、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどが挙げられる。
【0389】
[移動体]
本発明の一態様のGPU又はチップは、移動体である自動車、及び自動車の運転席周辺に適用することができる。
【0390】
図22(E1)は移動体の一例である自動車5700を示し、図22(E2)は、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を示す図である。図22(E2)では、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル5701、表示パネル5702、表示パネル5703の他、ピラーに取り付けられた表示パネル5704を図示している。
【0391】
表示パネル5701乃至表示パネル5703は、スピードメーターやタコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などを表示することで、様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される項目やレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることが可能である。表示パネル5701乃至表示パネル5703は、照明装置として用いることも可能である。
【0392】
表示パネル5704には、自動車5700に設けられた撮像装置(図示しない。)からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの映像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル5704は、照明装置として用いることもできる。
【0393】
本発明の一態様のGPU又はチップは人工知能の構成要素として適用できるため、例えば、当該チップを自動車5700の自動運転システムに用いることができる。また、当該チップを道路案内、危険予測などを行うシステムに用いることができる。表示パネル5701乃至表示パネル5704には、道路案内、危険予測などの情報を表示する構成としてもよい。
【0394】
なお、上述では、移動体の一例として自動車について説明しているが、移動体は自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体に本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用したシステムを付与することができる。
【0395】
[放送システム]
本発明の一態様のGPU又はチップは、放送システムに適用することができる。
【0396】
図22(F)は、放送システムにおけるデータ伝送を模式的に示している。具体的には、図22(F)は、放送局5680から送信された電波(放送信号)が、各家庭のテレビジョン受信装置(TV)5600に届くまでの経路を示している。TV5600は、受信装置を備え(図示しない。)、アンテナ5650で受信された放送信号は、当該受信装置を介して、TV5600に送信される。
【0397】
図22(F)では、アンテナ5650は、UHF(Ultra High Frequency)アンテナを図示しているが、アンテナ5650としては、BS・110°CSアンテナ、CSアンテナなども適用できる。
【0398】
電波5675A、電波5675Bは地上波放送用の放送信号であり、電波塔5670は受信した電波5675Aを増幅して、電波5675Bの送信を行う。各家庭では、アンテナ5650で電波5675Bを受信することで、TV5600で地上波TV放送を視聴することができる。なお、放送システムは、図22(F)に示す地上波放送に限定せず、人工衛星を用いた衛星放送、光回線によるデータ放送などとしてもよい。
【0399】
上述した放送システムは、本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用した放送システムとしてもよい。放送局5680から各家庭のTV5600に放送データを送信するとき、エンコーダによって放送データの圧縮が行われ、アンテナ5650が当該放送データを受信したとき、TV5600に含まれる受信装置のデコーダによって当該放送データの復元が行われる。人工知能を利用することによって、例えば、エンコーダの圧縮方法の一である動き補償予測において、表示画像に含まれる表示パターンの認識を行うことができる。また、人工知能を利用したフレーム内予測などを行うこともできる。また、例えば、解像度の低い放送データを受信して、解像度の高いTV5600で当該放送データの表示を行うとき、デコーダによる放送データの復元において、アップコンバートなどの画像の補間処理を行うことができる。
【0400】
上述した人工知能を利用した放送システムは、放送データの量が増大する超高精細度テレビジョン(UHDTV:4K、8K)放送に対して好適である。
【0401】
また、TV5600側における人工知能の応用として、例えば、TV5600に人工知能を有する録画装置を設けてもよい。このような構成にすることによって、当該録画装置にユーザの好みを人工知能に学習させることで、ユーザの好みにあった番組を自動的に録画することができる。
【0402】
本実施の形態で説明した電子機器、その電子機器の機能、人工知能の応用例、その効果などは、他の電子機器の記載と適宜組み合わせることができる。
【0403】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0404】
100:容量素子、200、300:トランジスタ、110、112、120、205、218:導電層、130、140、150、210、212、214、216:絶縁層、222、224、226、228:絶縁層、230、230a~c:半導体層、230A~C:金属酸化物膜、231、231a、b、232、232a、b、234:領域、240、240a、b、260、260a、b:導電層、241、241a、b、244、250、274、280、281:絶縁層、244A、250A:絶縁膜、252、252a、b、253、253a、b:領域、256、257:ドーパント、260Aa、Ab:導電膜、262:ダミーゲート、262A:ダミーゲート層、263:開口
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