(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】切屑形成配置構成を有する仕上げ旋削用ネガティブインサート
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
B23B27/14 C
(21)【出願番号】P 2019571980
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(86)【国際出願番号】 IL2018050723
(87)【国際公開番号】W WO2019026058
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バー ヘン メイア
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-053306(JP,U)
【文献】特表平06-505922(JP,A)
【文献】特開平08-052604(JP,A)
【文献】特開平08-052605(JP,A)
【文献】特開2007-185766(JP,A)
【文献】特開2012-045704(JP,A)
【文献】特開2015-000447(JP,A)
【文献】特開2017-080817(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0222974(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0283617(US,A1)
【文献】中国実用新案第201455319(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23B 51/00-51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋削用インサートであって、
対向する第1面及び第2面と、
前記第1面及び第2面に垂直に接続し延在する、周方向に延在する周面と、
前記周面と前記第1面との交差部分に形成される周縁部であって、コーナー半径を備える少なくとも1つのコーナーを有する周縁部と、
前記周縁部の少なくとも一部分に沿って形成され、前記コーナー半径に沿って、かつ前記コーナーの異なる側に接続されその異なる側から延在する第1及び第2の縁部に沿って延在する切れ刃と、
前記第1面及び第2面に垂直であり、前記コーナー半径を二等分する二等分面(P1)と、
前記切れ刃と前記二等分面との交差部分に画定される二等分点(P)と、
前記周面に垂直であり、前記二等分点と交わる水平面と、
前記水平面から前記第2面に向かって垂直に方向づけられた下向き方向と、
前記下向き方向と対向する上向き方向と、
前記二等分面と前記周面との交差部分から前記インサートへと方向づけられた内向き方向と、
前記第1面に前記切れ刃に隣接して形成され、上面図において前記コーナー半径の両側に延在する1つの連続するv字溝からなる切屑形成配置構成と、を備え、
前記v字溝は、
前記コーナー半径に隣接する湾曲した溝部分、及び前記湾曲した溝部分の
一方端及び他方端の両端にそれぞれ接続された2つの直線状の伸長部分と、
前記切れ刃から下向き内向き方向に前記v字溝の最低点まで直接延在する下降面と、
前記最低点から上向き内向き方向に最高点まで延在する上昇面と、を備え、
前記二等分面に沿って、
前記最低点は、前記二等分点から第1水平距離D1にあり、条件0.50mm≦D1≦1.20mmを満たし、
前記最低点は、前記水平面から下向きに第1高さ方向距離H1にあり、条件0.15mm≦H1≦0.30mmを満たし、
前記最高点は、前記二等分点から第2水平距離D2にあり、条件1.10mm≦D2≦1.70mmを満たす、旋削用インサート。
【請求項2】
前記第1水平距離D1が条件0.70mm≦D1≦1.10mmを満たす、請求項1に記載のインサート。
【請求項3】
前記第1高さ方向距離H1が条件0.20mm≦H1≦0.30mmを満たす、請求項1又は2に記載のインサート。
【請求項4】
前記第2水平距離D2が条件1.20mm≦D2≦1.60mmを満たす、請求項1~3のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項5】
前記切屑形成配置構成が前記二等分面に関して対称的である、請求項1~4のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項6】
前記上昇面が、前記二等分面に沿って、滑らかな凹面状に延在する、請求項1~5のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項7】
前記下降
面が、前記二等分面に沿って、直線状に延在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項8】
前記最高点が前記水平面の上向きに位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項9】
前記最高点が、前記最低点から第2高さ方向距離H2にあり、条件H2=H1±0.05mmを満たす、請求項
1に記載のインサート。
【請求項10】
前記最高点が前記水平面から0.1mm以内の距離にある、請求項
1に記載のインサート。
【請求項11】
前記第2水平距離D2が、前記二等分面以外の面に沿った比較距離と比べて最大距離である、請求項1~10のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項12】
前記v字溝が、前記二等分面(P1)に沿って最も幅広く、前記湾曲した溝部分から離れる方向に、前記v字溝の直線状の伸長部分の少なくとも一部分に沿って、漸進的に狭くなる、請求項11に記載のインサート。
【請求項13】
前記切れ刃が円形の半径を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項14】
前記第2面に形成され
て、前記切屑形成配置構成と同じ特徴を有する追加の切屑形成配置構成をさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項15】
前記第1面及び第2面の各コーナーに、前記切屑形成配置構成と同じ特徴を有する追加の切屑形成配置構成を備える、請求項1~14のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項16】
前記切屑形成配置構成に隣接する前記切れ刃が、前記水平面と平行に延在する、請求項1~15のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項17】
前記第1高さ方向距離H1が、前記二等分面以外の面に沿った比較距離と比べて最大距離である、請求項1~16のいずれか一項に記載のインサート。
【請求項18】
前記v字溝が、前記二等分面(P1)に沿って最深であり、前記湾曲した溝部分から離れる方向に、前記v字溝の直線状の伸長部分の少なくとも一部分に沿って、漸進的に浅くなる、請求項17に記載のインサート。
【請求項19】
前記v字溝が、前記二等分面(P1)に沿って最も幅広く、前記湾曲した溝部分から離れる方向に、前記v字溝の直線状の伸長部分の少なくとも一部分に沿って、漸進的に狭くなる、請求項18に記載のインサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の主題は、機械加工操作のためのインサート、特に、仕上げ深さ機械加工操作のための切屑形成配置構成を備える旋削用ネガティブインサートに関する。より具体的には、この切屑形成配置構成は、高い伝熱特性を有して機械加工しにくい材料を機械加工するために最適化されている。
【背景技術】
【0002】
この特定の出願は、ネガティブインサート、すなわち、すくい面(1又は複数)に垂直に延在する周面を有し、このすくい面に周面が接続されるインサートに関する。本願の全体的な焦点は切屑形成であり、当該技術分野で公知のとおり、ネガティブインサート及び非ネガティブインサートは、ワークピースに対して同じインサート角度を提示するように工具に装着された場合でも、異なる切屑を形成するということは理解されるであろう。ネガティブインサートは、当該技術分野で周知であり、ISO規格では文字「N」を用いて分類される。
【0003】
より具体的には、切屑形成配置構成は、仕上げ深さ(本明細書中、以降では単に「仕上げ」)機械加工のためのものであり、この仕上げ深さ機械加工は、本願の目的のためには、最大2.5mmの切削深さを有すると考えられる。より大きい深さでは、同じ切屑形成配置構成は、たとえ比例して拡大されたとしても、同じ有益な性能をもたらすとは予想されない。
【0004】
本願の切屑形成配置構成主題は、いくつかの他の設計に対して比較して試験され、この他の設計のうちのいくつかは、先行技術の切屑形成配置構成に基づいており、これらのことが、本明細書中、以降で詳細に論じられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
新しくかつ改善された切屑形成配置構成を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の主題に係る切屑形成配置構成は、インコネル(Inconel)及びチタンのワークピースの両方に対して機械加工するために最適に性能を発揮するという一般的でない目的のために開発された。とりわけ、インコネル及びチタンの両方は、類似した高い伝熱特性を有するとしても、それでも、機械加工されるときには、顕著に異なる特性を有する。詳しく説明すると、試験されたいくつかの設計のうちで、請求項に係る設計は、インコネルの機械加工に当たっては他の設計よりも性能は悪く、チタンの機械加工に当たっては上記設計のうちのいくつかよりも性能は悪かったが、両方の材料の機械加工に当たっては、(切屑形成、比較的小さい切削深さでの工具寿命、比較的大きい切削深さでの工具寿命というファクターを考慮に入れると)平均して上記の設計のすべてよりも良好な性能であった。
【0007】
本願の主題の第1の態様によれば、ただ1つのv字溝を備える切屑形成配置構成を備えるための旋削用インサートが提供される。この溝は、インコネル及びチタンの両方のワークピースの仕上げ深さ機械加工のために構成されている。
【0008】
より正確に言えば、当該インサートは、対向する第1面及び第2面と、この第1面及び第2面に垂直に接続し延在する、周方向に延在する周面と、この周面と上記第1面との交差部分に形成される周縁部であって、コーナー半径を備える少なくとも1つのコーナーを有する周縁部と、この周縁部の少なくとも一部分に沿って形成され、上記コーナー半径に沿って、かつ上記コーナーの異なる側に接続されその異なる側から延在する第1及び第2の縁部に沿って延在する切れ刃と、上記第1面及び第2面に垂直であり、上記コーナー半径を二等分する二等分面と、上記切れ刃と上記二等分面との交差部分に画定される二等分点と、上記周面に垂直であり、上記二等分点と交わる水平面と、上記水平面から上記第2面に向かって垂直に方向付けられた下向き方向と、上記下向き方向と対向する上向き方向と、上記二等分面と上記周面との交差部分から上記インサートへと方向づけられた内向き方向と、上記第1面に上記切れ刃に隣接して形成され、上面図において上記コーナー半径の両側に延在する1つの連続するv字溝からなる切屑形成配置構成とを備え、上記溝は、上記コーナー半径に隣接する湾曲した溝部分、及び上記湾曲した溝部分のいずれかの側に接続された2つの直線状の伸長部分、上記切れ刃から下向き内向き方向に上記溝の最低点まで直接延在する下降面、並びに上記最低点から上向き内向き方向に最高点まで延在する上昇面を備え、上記二等分面に沿って、上記最低点は、上記二等分点から第1水平距離D1にあり、条件、0.50mm≦D1≦1.20mm、を満たし、上記最低点は、上記水平面から下向きに第1高さ方向距離H1にあり、条件、0.15mm≦H1≦0.30mm、を満たし、上記最高点は、上記二等分点から第2水平距離D2にあり、条件、1.10mm≦D2≦1.70mm、を満たす。
【0009】
試験された他の設計を参照して以降に示されるように、類似の外観の切屑形成配置構成であっても、上記の要素の特定の位置が少量だけでも変わると、驚くべきことに異なった振る舞いを見せた。
【0010】
好ましくは、第1水平距離D1は条件、0.70mm≦D1≦1.10mm、を満たす。より好ましい値は、D1=0.85mmにより近い値である。
【0011】
好ましくは、高さ方向距離H1は条件、0.20mm≦H1≦0.30mm、を満たす。より好ましい値は、H1=0.25mmにより近い値である。
【0012】
好ましくは、第2水平距離D2は条件、1.20mm≦D2≦1.60mm、を満たす。より好ましい値は、D2=1.40mmにより近い値である。本明細書及び特許請求の範囲の目的のために、第2水平距離D2は、1つの上昇面の湾曲した部分及び直線状の部分を備えてもよく、この湾曲した部分及び直線状の部分は、仕上げ条件を用いた機械加工のあいだ切屑形成に関与する。本発明の設計の下降面及び上昇面は、仕上げ条件で機械加工するときに切屑形成に関与するただ2つの表面であるように構成されている。これは、異なる例示的な要素(ランド、水平方向に延在する切れ刃長さ、当接面への移行逃げ面)に関して以降で詳述されることになる。
【0013】
好ましくは、第2水平距離D2は、上記二等分面以外の面に沿った比較距離と比べて最大距離である。好ましくは、上記v字溝は、上記二等分面に沿って最も幅広く(すなわち、最大の水平距離D2を有する)、上記湾曲した溝部分から離れる方向に、上記溝の直線状の伸長部分の少なくとも一部分に沿って、漸進的に狭くなる。
【0014】
好ましくは、上記切屑形成配置構成は上記二等分面に関して対称的である。
【0015】
好ましくは、上記上昇面は、上記二等分面に沿って、滑らかな凹面状に延在する。
【0016】
好ましくは、上記下降面の大部分は、上記二等分面に沿って、直線状に(真っ直ぐに)延在する。
【0017】
好ましくは、上記最高点は上記水平面の上方向に位置する。
【0018】
好ましくは、上記最高点は、上記最低点から第2高さ方向距離H2にあり、H2がH1±0.05mmに等しい(H2=H1±0.05mm)という条件を満たす。
【0019】
好ましくは、上記最高点は上記水平面の0.1mm以内にある。
【0020】
好ましくは、上記最高点は、上記水平面の上方にある。
【0021】
好ましくは、上記切れ刃は円形の半径を有する。具体的には、好ましくは、E型のホーニング加工された形状である。換言すれば、切れ刃は、好ましくは円弧状であるようにホーニング加工されていてもよい。
【0022】
好ましくは、第1高さ方向距離H1は、上記二等分面以外の面に沿った比較距離と比べて最大距離であってもよい。好ましくは、上記v字溝は、上記二等分面に沿って最深である(すなわち、最大の第1高さ方向距離H1を有する)ことが可能であり、上記湾曲した溝部分から離れる方向に、上記溝の直線状の伸長部分の少なくとも一部分に沿って、漸進的に浅くなる。
【0023】
好ましくは、上記v字溝は、上記二等分面(P1)に沿って最も幅広く、上記湾曲した溝部分から離れる方向に、上記溝の直線状の伸長部分の少なくとも一部分に沿って、漸進的に狭くなる。
【0024】
好ましくは、上記切屑形成配置構成に隣接する切れ刃は、上記水平面と平行に延在する。この特徴は、上記の他の特徴と同様に、仕上げ深さインサートが作業する作業領域に関するだけであることは理解されよう。従って、より正確に言えば、上記切屑形成配置構成に隣接する切れ刃は、上記二等分点から2.5mmの水平距離の範囲内では上記水平面と平行に延在するということができる。詳しく説明すると、その距離よりも遠いところでは、上記切屑形成配置構成には関係しない。
【0025】
好ましくは、当該インサートは、異なる位置、例えば第2面に形成されていることを除き同じ特徴を有する1以上の追加の切屑形成配置構成を有する。例えば、上記第1面及び第2面の各コーナーに、上記の切屑形成配置構成と同じ特徴を有する切屑形成配置構成が形成されてもよい。
【0026】
「切れ刃から直接延在する下降面」という記載は、その下降面、又は換言すれば切屑形成配置構成、がランドを欠くことを意味すると理解されるべきであることは理解されよう。本明細書及び特許請求の範囲の目的のために、ランドは、ランドが少なくとも0.1mmの水平方向寸法を有するときに、ランドであると考えられるにすぎない。なぜなら、0.1mm未満の寸法は、切屑形成に顕著な悪影響を及ぼさないと予想されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本願の主題のより良い理解のために、及び本願の主題がどのように実際に実施されてもよいのかを示すために、以降、添付の比例尺の図面への参照がなされることになる。
【0028】
【
図1A】
図1Aは、本願の主題に係る切屑形成配置構成を備えるインサートの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
機械加工操作用の仕上げ旋削用インサート10を説明する
図1A及び
図1Bが参照される。インサート10は、通常、超硬質合金等の極めて硬く耐摩耗性の材料から作製される。
【0030】
インサート10は、対向する第1面及び第2面12、14と、第1面及び第2面12、14に接続された周方向に延在する周面16とを備えることができる。この非限定的な例における第1面及び第2面12、14は、同一であり、そのため第1面12だけを説明することにする。
【0031】
インサート10は、少なくとも1つのコーナー18A、18B、18C、18Dを備える。
【0032】
インサート10は、コーナー18A及び第1面12と関連する少なくとも1つの切屑形成配置構成20を備える。特段の記載がない限り、以下の説明は、1つの切屑形成配置構成(すなわち、数字「20」で示された配置構成)に向けられるだけであるが、しかしながら、第1面及び第2面12、14のいずれか又はその両方にあるインサート10の各コーナーが対応する切屑形成配置構成を有することができるということは理解されよう。
【0033】
いずれにせよ、本例では、インサート10は、その各コーナーに、及び各コーナーの第1面及び第2面12、14の両方に、対応する切屑形成配置構成を、すなわち8つのそのような配置構成を有する。第1面12(及び、示された例では第2面14)がすくい面であり、その上へ切削されたワークピース(図示せず)から切削される切屑(図示せず)が流れるということは理解されよう。
【0034】
周面16はインサート10の逃げ面を構成することは理解されよう。示されるように、周面16は、第1面及び第2面12、14に垂直に延在する。換言すれば、インサート10は、いわゆるネガティブインサートである。
【0035】
図1C及び
図1Dを参照して、コーナー18Aはコーナー半径Cを画定することができる。より正確に言えば、コーナー半径Cは、第1面12の上面図におけるコーナー18Aの内接円Iに沿う弧状部分である。
【0036】
図1A~
図1Dを参照して、周縁部21は、第1面12と周面16との間に形成される。切れ刃22は、周縁部21の少なくとも一部分に沿って形成され、第1及び第2の部分切れ刃22A、22B、及びコーナー18Aに沿って延在し第1及び第2の部分切れ刃22A、22Bに接続される第3の部分切れ刃22Cを備えることができる。
【0037】
第3の部分切れ刃22Cと第1及び第2の部分切れ刃22A、22Bとの第1及び第2の接続点24A、24B(
図4A)は、コーナー18Aの曲率が直線状の(真っ直ぐな)第1及び第2の部分切れ刃22A、22Bへ移行する場所に位置する。
【0038】
図1Cでは、線B-Bに沿って延在する二等分面P1が示されている。二等分面P1は、第1面及び第2面12、14に垂直であり、コーナー半径Cを二等分する(すなわち、理論上はコーナー18Aを等しい半分に分割する)。切屑形成配置構成20は、示されるように、好ましくは二等分面P1に関して対称的であることができる。
【0039】
二等分点Pは、理論的には、切れ刃と二等分面P1との交差部分にあると定義される。
【0040】
内向き方向DIは、二等分面Bと周面16との交差部分からインサート10に向けて画定される。
【0041】
水平面H(
図1D)は、周面16に垂直に延在し、二等分点Pと交わる。同じ図で、切れ刃22が水平面Hと平行に延在することが理解できる。
【0042】
下向き方向DDは、水平面Hから垂直に、第2面14に向けて画定される。上向き方向DUは、下向き方向DDとは反対に画定される。
【0043】
図1Cに最もよく示されるように、コーナー18Aで、切屑形成配置構成20は、コーナー半径Cの両側に延在するただ1つの、連続するv字溝28を備える。詳しく説明すると、上面図(
図1C)で見たときに、v字状は示される。切れ刃22と同様に、溝28は、隣接する第1及び第2の部分切れ刃22A、22Bに沿って延在する2つの直線状の(真っ直ぐな)伸長部分28A、28B、及び第3の部分切れ刃22Cに隣接した湾曲した溝部分28Cを備える。
【0044】
図2Aに見られるように、断面において、溝28は、切れ刃22から直接延在する下降面30、及び上昇面32を備える。
【0045】
図2Aを参照すると、下降面30は、下向き方向DD及び内向き方向DIの両方(下向き内向き方向とも呼ばれる)に、溝28の最低点34(すなわち、二等分点Pに最も近い最低点と考えられる)まで延在し、上昇面32は、最低点34から上向き方向DU及び内向き方向DI(上向き内向き方向とも呼ばれる)に最高点36まで延在することが示されている。最高点36は、当接面40と最高点36との間に移行部38が存在するとしても、切屑形成に関与する切屑形成配置構成20の最後の部分である。詳しく説明すると、移行部38は、切屑形成機能を有さず、それゆえ切屑形成配置構成20の説明のためには無視される。
【0046】
とりわけ、下降面30は、下向き内向き方向に直接延在し、最初は
図3F及び
図3G中の要素38A及び38Bによって例示されるような内向き方向DIには延在していない。換言すれば、本発明の切屑形成配置構成20はランドを欠く。とは言ったが、要素38A及び38Bも、本願の目的のためにはランドとは考えられない。なぜなら、それらは内向き方向DIに延在するとしても、それらは切屑形成に顕著に影響を及ぼすのに十分なサイズを欠くからであり、そのようなサイズは0.1mm又はそれ以上であると考えられる。換言すれば、本願の目的のために、切れ刃に隣接する構造は、それが少なくとも0.1mm又はそれ以上でないかぎり、「ランド」とは考えられえない。示されるように、最低点34の近傍まで、下降面30は直線状に(真っ直ぐに)延在する。
【0047】
最低点34は、二等分点Pから、二等分面P1に沿って第1水平距離D1にある。この好ましい実施形態では、条件D1は0.85mmである。
【0048】
最高点36は、二等分点Pから、二等分面P1に沿って第2水平距離D2にある。この好ましい実施形態では、第2水平距離D2=1.40mmである。とりわけ、
図2Bでは、比較距離D2’は0.94mmに等しい。同様に、すべての他の断面図で、D2は比較距離よりも大きいということも当てはまる。このように、第2水平距離D2は、比較距離と比べて最大距離である(D2’は例示された比較距離である)ことは理解されよう。言い換えると、v字溝28は、二等分面P1に沿って最も幅広い。さらには、v字溝28は、好ましくは、湾曲した溝部分2Cから離れる方向に、溝の直線状の伸長部分28A、28Bの少なくとも一部に沿って、漸進的に狭くなることができる。
【0049】
当接面40は、二等分点から第3水平距離D3にある。この好ましい実施形態では、D3=1.84mmである。
【0050】
最低点34は、水平面Hから下向きに第1高さ方向距離H1にある。この好ましい実施形態では、H1=0.25mmである。
【0051】
最高点36は、最低点34から第2高さ方向距離H2にある。この好ましい実施形態では、H2=0.30mmである。
【0052】
第3高さ方向距離H3は、水平面から上向きに当接面40まで画定される。この好ましい実施形態では、H3=0.10mmである。
【0053】
第4高さ方向距離H4は、水平面から上向きに(最高点36と当接面40との間に延在する)移行部38の最低点まで画定される。この好ましい実施形態では、H4=0.05mmである。とはいうものの、移行部38は任意選択的であることは理解されよう。
【0054】
完全を期すために、
図2B中の値は、D1’=0.47mm、D2’=0.94mm、D3’=1.32mm、H1’=0.2mm、H3’0.1=mm、H4’=0.04mm、及びH2’=H1’+H4’=0.24mmである。従って、第1高さ方向距離H1(=0.25mm)が比較距離と比べて最大距離である(H1’=0.20mmは例示された比較距離である)ことは理解されよう。
【0055】
上記の切屑形成配置構成20は、開発され、いくつかの比較の類似の設計に対して全体的には最良の性能を発揮した。そのいくつかの比較の類似の設計の二等分断面図は、
図3A~
図3Gに示されている。それらの比較の値は、下記表に示されている。
【0056】
【0057】
表に関する説明のための注釈は以下のとおりである。
【0058】
第2高さ方向距離H2は、すべての図面において示されていないが、第1高さ方向距離及び第3高さ方向距離H1、H3の和として算出される。なお、この算出は、
図2A及び
図3Cについては正確ではなく、従ってその距離が示され、与えられている。
【0059】
図3A及び
図3Dに示された例では、切屑は、両方の比較的浅い溝に沿った回転により形成されることになり、従って、第2水平距離D2は、示されている範囲まで延在する。対照的に、
図2A及び
図3Cでは、切屑形成は、最初の上昇面の端ですでに終わっており(従って、切屑形成配置構成の機能領域を終える)、従って第1高さ方向距離H1の位置は示されているとおりである。従って、
図2A及び
図3Cでは、第1高さ方向距離及び第3高さ方向距離H1、H3の和は、第2高さ方向距離H2に等しくはない。
【0060】
図3A及び
図3Dでは、両方の二重溝付きの配置構成はこのように請求項に係る概念とは異なるため、類推は困難であるが、寸法は第1溝から算出される。いずれにせよ、それらは、そのような設計が試験されたということを明らかにするために提供された。いずれにせよ、両方の例における第2溝の高さは、請求項に係る範囲の下限値である0.15mmよりも著しく小さい。
【0061】
インコネル及びチタンの両方に対する、切屑形成(又は切屑制御)、比較的小さい切削深さ及び大きい切削深さでの工具寿命というファクターを考慮した試験結果の比較が実施された。
【0062】
本発明の設計(
図2A)は、試験されたすべてのカテゴリーにおいて
図3Aの比較設計よりも顕著に有利であった。
【0063】
本発明の設計(
図2A)は、工具寿命(大きい切削深さでのインコネルの機械加工)及び切屑制御(チタンの機械加工)のカテゴリーにおいて
図3Bの比較設計よりも顕著に有利であった。
【0064】
本発明の設計(
図2A)は、工具寿命(大きい切削深さでのインコネルの機械加工)のカテゴリーにおいて
図3Cの比較設計よりも顕著に有利であった。
【0065】
本発明の設計(
図2A)は、工具寿命(大きい切削深さでのインコネルの機械加工)及び切屑制御(チタンの機械加工)のカテゴリーにおいて
図3Dの比較設計よりも顕著に有利であった。
【0066】
本発明の設計(
図2A)は、工具寿命(大きい切削深さでのインコネル及びチタンの機械加工)並びに切屑制御(チタンの機械加工)のカテゴリーにおいて
図3Eの比較設計よりも顕著に有利であった。
【0067】
本発明の設計(
図2A)は、工具寿命(小さい切削深さ及び大きい切削深さでのインコネルの機械加工)並びに切屑制御(チタンの機械加工)のカテゴリーにおいて
図3Fの比較設計よりも顕著に有利であった。
【0068】
本発明の設計(
図2A)は、工具寿命(大きい切削深さでのインコネルの機械加工、並びに小さい切削深さ及び大きい切削深さでのチタンの機械加工)並びに切屑制御(チタンの機械加工)のカテゴリーにおいて
図3Gの比較設計よりも顕著に有利であった。
【0069】
要約すれば、本発明の設計は、大きい切削深さでのインコネルの機械加工について、設計のすべての中で最良の性能を有しており、チタンの機械加工の切屑制御において1つを除き(わずかの差の2番目の性能)すべての他の設計を凌ぐ性能を示した。他の値は比較設計と等しいことが多く、又は時には劣っていたが、上述の基準のうちのすべてについての全体的な平均的結果は、本発明の設計が最も高かった。