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特許7155176活性剤の制御かつモニタされた経皮送出のためのデバイス及び方法及びその用法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】活性剤の制御かつモニタされた経皮送出のためのデバイス及び方法及びその用法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/30 20060101AFI20221011BHJP
   A61K 38/00 20060101ALN20221011BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALN20221011BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20221011BHJP
   A61K 31/713 20060101ALN20221011BHJP
   A61K 39/00 20060101ALN20221011BHJP
【FI】
A61N1/30
A61K38/00
A61K31/7105
A61K31/7088
A61K31/713
A61K39/00 H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019572100
(86)(22)【出願日】2018-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018066839
(87)【国際公開番号】W WO2019002154
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】17382407.3
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516375540
【氏名又は名称】フンダシオン テクナリア リサーチ アンド イノヴェイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ビイェリッチ ゴーラン
(72)【発明者】
【氏名】モンテーホ エステベス マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥルバック マティヤ
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-541935(JP,A)
【文献】特開2007-000336(JP,A)
【文献】特表平10-506293(JP,A)
【文献】特開2007-167309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0015697(US,A1)
【文献】米国特許第05281219(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/30- 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性剤の経皮送出のためのイオン導入パッチ(20)であって、
プリント回路基板(4)と、
電気接点(5)を介して前記プリント回路基板(4)に接続されると共に、それぞれの少なくとも2つのヒドロゲルリザーバ(9)と接触する少なくとも2つの電極(8)であって、前記ヒドロゲルリザーバ(9)が、前記イオン導入パッチ(20)の使用中に、ユーザの皮膚(24)上に配置されるように構成され、前記ヒドロゲルリザーバ(9)のうちの少なくとも1つが、前記ユーザの皮膚(24)の中に送出するために、内部に担持された少なくとも1つの活性剤を含む、前記電極(8)と、
前記イオン導入パッチ(20)の使用中に、前記少なくとも1つのヒドロゲルリザーバ(9)内の前記少なくとも1つの活性剤の量を継続的に測定するために、前記ヒドロゲルリザーバ(9)のうちの少なくとも1つに配置された少なくとも1つの光学感知システム(3,12)と、
前記皮膚上の複数の刺激場所に送出される複数の刺激パラメータを含む刺激パターンを発生させるように構成され、前記プリント回路基板(4)に埋め込まれた制御ユニット(11)であって、前記少なくとも2つの電極(8)が前記刺激パターンに従って起動/停止されるように構成されている、前記制御ユニット(11)と、
前記制御ユニット(11)によって発生された前記複数の刺激パラメータからパルスの時系列を発生させるように構成され、前記プリント回路基板(4)に埋め込まれた刺激ユニット(6)と、
前記刺激ユニット(6)によって発生された前記パルスの時系列からかつ前記制御ユニット(11)によって発生された前記刺激場所から、前記少なくとも2つの電極(8)のうちの少なくとも1つの電極に対して前記パルスの時系列に含まれる電気パルスの独立した空間-時間的分配を実行するように構成され、前記プリント回路基板(4)に埋め込まれた逆多重化ユニット(10)であって、前記少なくとも2つの電極(8)のそれぞれが、それぞれの電気接点(5)を介して前記逆多重化ユニット(10)に接続され、前記電気接点(5)のそれぞれが前記逆多重化ユニット(10)により独立して起動される、前記逆多重化ユニット(10)と、
前記少なくとも1つの活性剤の時間的な送出プロファイルを、前記少なくとも1つの光学感知システム(3,12)において測定された少なくとも1つの活性剤の量から推定するように構成され、前記プリント回路基板(4)に埋め込まれたフィードバックユニット(1)と、
を含み、
前記制御ユニット(11)は、前記フィードバックユニット(1)により与えられた推定された前記送出プロファイルを望ましい送出プロファイルと比較し、前記刺激ユニット(6)に与えられる前記複数の刺激パラメータのうちの少なくとも1つ及び/又は前記逆多重化ユニット(10)に与えられる前記刺激場所を変えることによって、発生された前記刺激パターンを継続的に修正するように更に構成される、
ことを特徴とするイオン導入パッチ(20)。
【請求項2】
前記少なくとも2つの電極(8)は同心であり、前記少なくとも2つの電極(8)が接触している前記少なくとも2つのヒドロゲルリザーバ(9)も同心であることを特徴とする請求項1に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの光学感知システム(3,12)は、少なくとも1つの発光手段(3)及び少なくとも1つの光検出手段(12)を含むことを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項4】
前記制御ユニット(11)は、刺激パターンの以下のパラメータ:極性、振幅、電圧/電流パルスの周波数、電圧/電流パルスの持続時間、及び前記少なくとも2つの電極(8)からの少なくとも1つの電極の起動のうちの1又は2以上を制御するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのヒドロゲルリザーバ(9)に含まれるヒドロゲルと活性剤との混合物が、作用する波長範囲において半透明であり、それにより、前記少なくとも1つの光学感知システム(3,12)による光学検出を可能にすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのヒドロゲルリザーバ(9)に含まれるヒドロゲルが、活性剤の調整可能な濃度勾配プロファイルと調整可能な導電率とを与えるように構成され、それにより、前記少なくとも1つのヒドロゲルリザーバ(9)内の活性剤の濃度及び前記ヒドロゲルリザーバ(9)の導電率を調整可能であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの電極(8)のうちの各電極が、前記少なくとも2つの電極(8)のうちの他の電極の電気接点から独立した電気接点を含み、それにより、電気刺激の独立した送出を可能にすることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項8】
電源手段(13)を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの活性剤は、前記皮膚に送出される生物活性剤であり、前記生物活性剤は、以下のリスト:薬品、プロドラッグ、組織増殖因子、及び生物医学的プローブのうちの1つであり、これらの物質は、化合物、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、リボザイム、dsRNA,RNAi、ワクチン、又はその組合せの形態にあることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項10】
前記制御ユニット(11)、前記刺激ユニット(6)、前記逆多重化ユニット(10)及び前記フィードバックユニット(1)は、前記プリント回路基板(4)に埋め込まれた単一チップに含まれることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項11】
前記制御ユニット(11)、前記刺激ユニット(6)、前記逆多重化ユニット(10)及び前記フィードバックユニット(1)は、それぞれ、前記プリント回路基板(4)に埋め込まれた異なるチップに実装されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項12】
前記制御ユニット(11)、前記刺激ユニット(6)、前記逆多重化ユニット(10)及び前記フィードバックユニット(1)は、前記プリント回路基板(4)に埋め込まれた複数のチップに実装されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの光学感知システム(3,12)は、0.1~100Hzの範囲を含むサンプリング周波数で、前記少なくとも1つのヒドロゲルリザーバ(9)内の前記少なくとも1つの活性剤の前記量を測定するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【請求項14】
前記フィードバックユニット(1)は、前記光学感知システム(3,12)で測定された光信号を濃度値に変換することによって、前記少なくとも1つの活性剤の前記皮膚への前記時間的な送出プロファイルを推定するように構成されることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のイオン導入パッチ(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品、プロドラッグ、組織増殖因子、ナノ粒子、バイオマーカ又はアレルゲンプローブのような生物医学的プローブのような生物活性物質及び活性剤の制御かつモニタされた経皮送出に関する。より具体的には、本発明は、そのような経皮送出のための製品及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷治癒から免疫調節及び薬品送出まで、多数の治療戦略は、皮膚接触電極を含む電子デバイスを用いた皮膚への及びそれを通した電界及び電流の印加に依存している。
【0003】
そのようなデバイスの主な用途は、現時点では、薬品の経口送出の代替を表して皮下注射の代替を提供する態勢も整っている経皮薬品送出である。現時点で経皮経路は、薬品送出において最も成功したかつ革新的な着目点の1つとなっており、薬品候補の約40%が、経皮系又は皮膚系に関連した臨床評価の下にある。皮膚を通した全身性循環への薬品の経皮送出は、様々な臨床徴候に対する便利な投与経路を提供する(Front Line Strategic Consultingインコーポレーテッド、2002年)。経皮薬品送出を使用する恩典は、第1代謝を迂回することで生じる全身性生体利用効率の改善を含む。pH、食物又は酵素の存在、及び通過時間のような経口投与に起因する変数は全て排除することができる。
【0004】
新しい経皮薬品送出デバイスの開発では、その目的は、最も多くの場合に、患者の血流内への薬品の制御された予測可能かつ再現可能な放出を得ることである。経皮デバイスは、薬品リザーバとして作用して薬品移送速度を制御する。経皮流束が皮膚ではなくデバイスによって制御される時に、デバイスからの薬品放出は皮膚の浸透性よりも正確に制御することができるので、薬品の送出はより再現性が高く、より小さい被験者間及び被験者内変動をもたらす(Guy他、1992年)。
【0005】
経皮送出に使用される可能な技術の1つは、イオン導入法と呼ばれる。皮膚にわたって一定の電流を維持してイオン化並びに非イオン化部分の送出を強化するのは、電位の印加である(Williams他、1992年)。皮膚内及びヒドロゲル内のイオン移動は、ネルンスト-プランク方程式によって定められるようにイオン濃度勾配と電界との複合効果によって支配される。一片の皮膚にわたって置かれた電極アレイの平面電極を直流電流が起動すると、アニオン、すなわち、負電荷を帯びたイオンが負電極から反発される。カチオン、すなわち、正に帯電したイオンは、正電極から同様に反発される。平面電極によって発生される電界の形状に起因して、イオン移動は、電位勾配の方向に皮膚を通って駆動される電流を形成する。電界に起因するイオンの移動が皮膚を通るイオンの受動拡散よりも支配的である時はいつでも、イオン導入法の正味の効果が明らかになる。電流密度と電流が皮膚を通って流れる時間量とが高いほど、皮膚の中に浸透するイオンの量は多い。イオン導入法は、経皮的に送出することができる化合物の範囲を広げることができる。肝臓薬初回通過効果の迂回とより高い患者服薬順守との利益と共に、イオン導入技術が提供する追加の利点は、以下のように要約することができる(Williams他、1992年、Williams他、1991年、Glikfeld他、1988年):イオン化及び非イオン化薬品の両方の送出、印加電流に応じて連続的又は脈動的薬品送出を可能にすること、薬品送出のより容易な終了を可能にすること、送出化合物の量が印加電流、印加電流の持続時間、及び電流に露出される皮膚の面積に依存するので送出薬品量に対するより良い制御を提供すること、重度の皮膚炎症を生じることなく皮膚障壁機能の回復/維持、極性分子並びに高分子量化合物の送出の改善、薬品の全身送出又は局部(局所)送出に使用される機能、薬品送出の速度が角質層特性よりも印加電流に大きく依存するという事実に鑑みて被験者間及び/又は被験者内変動の大幅な低減。
【0006】
体内に送出される薬品の投与量の制御は、多くの医療用途に関して非常に重要な課題である。予め定められた電流プロファイルを放出して送出薬品の限定制御をそれによって達成するUS2001/009983(A1)及びUS9327105(B2)によって提供されるもののような一部のソリューションが提案されている。
【0007】
そのような制限を克服するために、他の発明、一例として、US8428709(B1)、EP2949359(A1)、EP2810688(B1)、WO2008/131072(A1)、US2007/021711(A1)、及びUS6546282(B1)は、イオン導入デバイスによって送出される電流の測定に基づくこのデバイスのための制御システムを提供している。測定電流値は、体内に送出される推定薬品量に適合する予め定められた送出プロファイルに対して電流を調節するためにコントローラによって使用される。代替提案では、EP0616545(B1)は、移送された電荷を測定して体内に送出された薬品の推定累積量を表示する。
【0008】
どれだけ多くの薬品が体内に送出されるかを制御する別の代替手法は、例えば、コントローラがユーザ年齢、皮膚タイプのような外部パラメータ又は局所温度及び大気圧のような環境パラメータに応じて、又はグルコース濃度のような身体パラメータの測定値に応じて、又はデバイスに取り付けられた薬品リザーバに応じて薬品の放出を修正するUS2016/279434(A1)、EP0830175(B1)、及びUS2009/118710(A1)に提供されている。
【0009】
薬品が体内に放出される方法を制御する別の代替手法は、異なる設計のイオン導入デバイスによって提供される。一例として、US2004/193089(A1)は、電極のネットワークを使用して薬品の空間的放出を達成する。別の例として、EP1067985(B1)は、インピーダンスを測定して電界及び従って薬品が体内に送出される方法を制御する。
【0010】
明らかに、イオン導入ベースのデバイスの分野での多数の提案にも関わらず、投与量、空間的かつ時間的送出プロファイルの制御は、電流又は電圧の測定と結果として生じる送出薬品量の推定とに基づいている。この手法は、全てのイオン導入デバイスでは測定される電流が系内の全イオン移動を反映しており、主としてこの電流が電解質溶液の小さい可動イオンに由来し、かつ電流の小部分だけが薬品分子自体の移動及び電荷移送に帰することができるという事実に関連する1つの主要な欠点を有する。正味の電流と帯電薬品分子に本来由来する電流との相関を念頭に置いて比例関係を確立することはできるが、依然として被験者間の差と相まって多くの変動因子に依存する。
【0011】
従って、現在の困難の1つは、皮膚に送出される薬品の量をリアルタイムでモニタすることである。皮膚上又は皮膚内のこの薬品量を直接に測定することは、装着型又は単回使用デバイスに一体化することが非常に困難である非常に複合的な方法論に関わっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】US2001/009983(A1)
【文献】US9327105(B2)
【文献】US8428709号(B1)
【文献】EP2949359(A1)
【文献】EP2810688(B1)
【文献】WO2008/131072(A1)
【文献】US2007/021711(A1)
【文献】US6546282(B1)
【文献】EP0616545(B1)
【文献】US2016/279434(A1)
【文献】EP0830175(B1)
【文献】US2009/118710(A1)
【文献】US2004/193089(A1)
【文献】EP1067985(B1)
【非特許文献】
【0013】
【文献】Guy他、1992年
【文献】Williams他、1992年
【文献】Williams他、1992年
【文献】Williams他、1991年
【文献】Glikfeld他、1988年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、従来デバイスの限界を克服し、かつ依然として簡単で費用/利益効率的な革新的ソリューションを含む生物活性物質及び/又は活性剤のリアルタイムモニタ式かつ制御式経皮送出のためのイオン導入デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の開示は、電極の下に重なる皮膚及び下に重なる組織、筋肉、神経、又は骨の限定された要素/面積/体積での直接薬品濃度測定と活性剤の局所送出のリアルタイムモニタとを可能にし、送出されている活性剤の量の直接かつリアルタイム薬品濃度センサベース調整も同時に提供する。物質又は生物活性剤放出の時間的調整は、例えば、活性剤の濃度がある一定のレベルに対して維持されるべきである特定の疾患を治療するための薬品送出では特に重要である。ある一定の面積又は体積での物質又は生物活性剤の局所送出は、一般的に、物質又は薬品が何らかの理由で皮膚又はユーザの身体の特定部位に到達すべきでない時に特に重要である。
【0016】
本発明は、皮膚及び下に重なる組織、筋肉、神経、又は骨のようなユーザの身体の限定された部位での活性剤の経皮送出を空間的かつ時間的に制御することができるパッチを提供する。同時に、パッチは、送出された活物質の量をモニタして検出し、これを時間的及び空間的送出プロファイルの能動制御に使用することができる。パッチは、例えばマイクロプロセッサに基づいて一体化された制御手段を含む。パッチは、自律的である場合があり、かつ例えば単回使用バッテリの形態に一体化された電源手段を有する。これに代えて、パッチは、外部電源手段を必要とする場合がある。
【0017】
本発明の第1の態様により、少なくとも2つのヒドロゲルリザーバとそれぞれ接触している少なくとも2つの電極であって、ヒドロゲルリザーバの少なくとも1つが、少なくとも1つの活性剤を担持するようにかつイオン導入パッチの使用ではユーザの皮膚に配置されて少なくとも1つの活性剤をユーザの皮膚の中に送出するように構成される上述の少なくとも2つの電極と、皮膚上の複数の電気刺激場所に送出される複数の刺激パラメータを含む刺激パターンを発生させるように構成された制御ユニットと、制御ユニットによって発生された複数の刺激パラメータからパルスの時系列を発生させるように構成された刺激ユニットと、刺激ユニットによって発生されたパルスの時系列から及び制御ユニットによって発生された刺激場所から少なくとも2つの電極のうちの少なくとも1つの電極に対してパルスの時系列に含まれる電気パルスの独立した空間-時間的分配を実行するように構成された逆多重化ユニットと、少なくとも1つのヒドロゲルリザーバ内の少なくとも1つの活性剤の量を継続的に測定するためにヒドロゲルリザーバの少なくとも1つに配置された少なくとも1つの光学感知システムと、少なくとも1つの生物活性剤の測定量から少なくとも1つの活性剤の実際の送出プロファイルを推定するように構成されたフィードバックユニットとを含み、制御ユニットが刺激ユニットに与えられる複数の刺激パラメータのうちの少なくとも1つ及び/又は逆多重化ユニットに与えられる刺激場所を変えることによって刺激パターンを継続的に修正するように更に構成される生物活性剤の経皮送出のためのイオン導入デバイスを提供する。
【0018】
本発明の実施形態では、少なくとも2つの電極は同心であり、少なくとも2つの電極が接触している少なくとも2つのヒドロゲルリザーバも同心である。
【0019】
本発明の実施形態では、少なくとも1つの光学感知システムは、少なくとも1つの発光手段と少なくとも1つの光検出手段とを含む。
【0020】
本発明の実施形態では、制御ユニットは、刺激パターンの以下のパラメータ:極性、振幅、電圧/電流パルスの周波数、電圧/電流パルスの持続時間、及び少なくとも2つの電極からの少なくとも1つの電極の起動のうちの1又は2以上を制御するように構成される。
【0021】
本発明の実施形態では、少なくとも1つのヒドロゲルリザーバに含まれるヒドロゲルと活性剤との混合物は、作動波長範囲で半透明であり、すなわち、少なくとも1つの光学感知システムによる光学検出を可能にする。
【0022】
本発明の実施形態では、少なくとも1つのヒドロゲルリザーバに含まれるヒドロゲルは、活性剤の調整可能な濃度勾配プロファイルと調整可能な導電率とを提供するように、すなわち、少なくとも1つのヒドロゲルリザーバ内の濃度及び導電率を制御するように構成される。
【0023】
本発明の実施形態では、少なくとも2つの電極の各電極は、少なくとも2つの電極の他の電極の電気接点とは独立した電気接点を含み、すなわち、電気刺激の独立送出を可能にする。
【0024】
本発明の実施形態では、イオン導入パッチは、電源手段を更に含む。
【0025】
本発明の実施形態では、皮膚に送出される少なくとも1つの生物活性剤は、以下のリスト:薬品、プロドラッグ、組織増殖因子、又は生物医学的プローブのうちの1つであり、上述の物質は、化合物、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、リボザイム、dsRNAs,RNAi、ワクチン、又はその組合せの形態にある。
【0026】
本発明の別の態様により、イオン導入技術による生物活性剤の経皮送出に基づく治療での先に開示したイオン導入パッチの用法を提供する。
【0027】
本発明の別の態様により、イオン導入技術による生物活性物質の経皮送出に基づく少なくとも1つのアレルギを診断する方法での複数のアレルゲンプローブの同時送出のための先に開示したイオン導入パッチの用法を提供する。
【0028】
本発明の別の態様により、それぞれ少なくとも2つのヒドロゲルリザーバと接触している少なくとも2つの電極にユーザの皮膚と接触して刺激パターンを印加することによって初期プロファイルに従って少なくとも1つの活性剤を送出する段階であって、ヒドロゲルリザーバの少なくとも1つが活性剤を含み、刺激パターンが複数の刺激パラメータと電気刺激場所とを含む上述の送出する段階と、ヒドロゲルリザーバでの光学パラメータを測定することによって少なくとも1つのヒドロゲルリザーバ内の少なくとも1つの活性剤の量を推定する段階と、送出された活性剤の実際の量を初期プロファイルに対応するその量と比較することによって皮膚に送出された活性剤の実際の送出プロファイルを決定する段階と、実際の送出プロファイルが初期プロファイルと適合しない場合に、初期送出プロファイルを達成するために刺激パラメータ及び/又は刺激場所パターンを修正する段階とを含むイオン導入パッチからの少なくとも1つの活性剤の送出を制御する方法を提供する。この方法の段階は、望ましい送出プロファイルを達成するために継続的に繰り返される。
【0029】
本発明の追加の利点及び特徴は、以下の詳細説明から明らかになり、かつ添付の特許請求の範囲で特に指摘されることになる。
【0030】
説明を完全にするためにかつ本発明のより良い理解を提供するために、1組の図面を提供する。これらの図面は、説明の不可欠な部分を成して本発明の実施形態を示し、それは、本発明の範囲を限定するものとしてではなく、むしろ本発明を実施することができる方法の単なる例として解釈されなければならない。図面は以下の図を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】本発明の実施形態によるイオン導入パッチの正面図である。
図1B】本発明の実施形態によるイオン導入パッチの背面図である。
図1C】個人の腕上に適用されたイオン導入パッチを示す図である。
図2A】本発明の実施形態によるイオン導入パッチの断面図である。
図2B】電極の配置と電極-皮膚インタフェース層とを表す概略図である。
図3A】本発明の異なる実施形態に従って例としてパッチ内の電極構成の異なる描写を示す図である。
図3B】本発明の異なる実施形態に従って例としてパッチ内の電極構成の異なる描写を示す図である。
図3C】本発明の異なる実施形態に従って例としてパッチ内の電極構成の異なる描写を示す図である。
図4】本発明の実施形態によるパッチの機能的要素の機能図並びに機能的要素間の関係を示す図である。
図5】本発明の実施形態に従って電極に印加されるパルス信号の発生、多重化、及び送出と、結果として生じる空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図6図4に概略的に表すようなパッチによって実施される例示的制御ループの流れ図である。
図7A】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7B】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7C】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7D】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7E】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7F】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7G】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7H】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7I】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7J】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7K】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
図7L】本発明のパッチによって送出される電界及び電流のシミュレーションと結果として生じるユーザの皮膚での空間/時間的薬品送出プロファイルとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この文書では、用語「comprises」及びその派生語(「comprising」などのような)は、排除的な意味で理解すべきではなく、すなわち、これらの用語は、説明かつ定義されるものが更に別の要素、段階などを含む場合があるという可能性を排除するとして解釈すべきではない。
【0033】
本発明に関連して、用語「ほぼ」及びその族の用語(「約」などのような)は、前述の用語に付随するものに非常に近い値を示すものとして理解しなければならない。すなわち、正確な値からの合理的な限度内の偏差は、当業者は示された値からのそのような偏差が測定誤差などのために不可避であることを理解することになるので許容しなければならない。同じことは、用語「およそ」及び「大体」及び「実質的に」に適用される。
【0034】
以下の説明は、限定的な意味に取るべきではなく、むしろ本発明の幅広い原理を説明する目的でのみ与えられる。本発明の次の実施形態は、本発明による装置及び結果を示す上述の図面を参照して一例として以下に説明する
【0035】
本発明の関連では、表現「生物活性物質」は、化合物、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、リボザイム、dsRNAs,RNAi、ワクチンの形態又はいずれかの他の形態にある薬品、プロドラッグ、組織増殖因子、及び生物医学的プローブ、又は皮膚を通して投与することができるあらゆる他の物質を指す。
【0036】
本発明の関連では、表現「活性剤」、「生物活性剤」、及び「医薬活性剤」は、有意な又は有効な量で被験者に又は化学的、物理的、又は生物学的活性原則に対して投与される時に測定可能な指定の又は選択された生理学的活性を有する薬剤又は物質を指すために交換可能に使用される場合がある。用語「薬品」は、多くの薬品及びプロドラッグが特定の生理学的活性を有することは公知であるので、本発明の定義によって明示的に含まれることは理解されるものとする。本明細書に使用される場合に「プロドラッグ」は、薬品に転換されることになる分子を指す。プロドラッグ自体も、薬理学的に活性である可能性があり、従って、上述の「活性剤」の定義に同じく明示的に含まれる。
【0037】
本発明は、皮膚及び下に重なる組織、筋肉、神経、又は骨のようなユーザの身体の限定された部位での物質の経皮送出及び/又は薬品分子のような活性剤の送出を空間的かつ時間的に制御することができるデバイス(パッチ)を提供する。一体化制御手段は、例えば、マイクロプロセッサに基づくものである。
【0038】
図1A及び1Bは、本発明の実施形態によるイオン導入パッチ10の正面図と背面図をそれぞれ示している。パッチは、バッテリの観点及び薬品/化合物の追加投与量の観点の両方で使い捨て又は再充填式とすることができる。図1Cは、この例では個人の腕上に適用されたパッチ10の特定の用法を示している。
【0039】
図2Aは、本発明の実施形態によるイオン導入パッチ20の側面図である。図2Aでは、パッチの内側部分を示すために説明目的で外側層又は外側保護体18を部分的に取り除いている。同じ理由で、パッチ内に含まれる電極8及び関連の薬品リザーバ9を示すためにパッチ内に含まれる支持体又は台4(図では4として言及する誘電体基板又は層と少なくとも1つの導電ゾーン42とを含む)及び電極基板2も部分的に取り除いている。図2Bは、図2Aのイオン導入パッチ20の断面を示している。使用中に、パッチ20はユーザの皮膚24上に配置される。パッチ20の一般的な作動モードは以下の通りである:パッチ20内に含まれた、埋め込まれた、又は配置された電子放射手段(そのブロック図は、図4に関連して詳細に説明する)が、電気刺激パラメータによって形成される刺激パターンと電極起動構成とを発生させる段階と、その刺激パターンに従って電極8を起動する段階とを担う。電子放射手段は、他の要素の中でも、少なくとも1つの電極セット又は電極アレイ8を含む。少なくとも1つの電極セット又は電極アレイ8は、複数の電極を含む。少なくとも2つの電極8が存在する。図2A及び2Bに示す実施形態では、3つの同心電極8を使用している。言い換えれば、ある一定の形状を有する第1の電極と、第1の電極を少なくとも部分的に取り囲む第2の電極と、第2の電極を少なくとも部分的に取り囲む第3の電極とが存在する。図示の実施形態では、内側電極の形状は丸形又は長円形であるが、あらゆる他の形状を有することができる。外部電極に関して、一部の形状は、他の形状よりも好都合である。最も好都合な形状は、円形、長円形、又は8よりも多い角のような緩やかな角度を有する多角形のものである。図2A及び2Bでは、周囲の電極はリング形状のストリップで形成される。電極の幅及び隣接する電極間の距離は、パッチが設計される特定用途に応じて異なる場合がある。少なくとも2つの電極8の他の実施を具現化することができる。図3A~3Cは、パッチに具現化することができる異なる電極構成を示している。
【0040】
電極8は、電極基板2に対して組み立てられ、埋め込まれ、又は取り付けられる。電極基板2は、ポリエステル、ポリカーボネート、シリコンゴム、又は布地に編むことができ、又は薄い箔又は積層構造として加工することができ、又は薄い層を生成するためのあらゆる他の製造技術で可能なあらゆる他の薄い可撓性材料で製造することができる。電極8は、電極基板2に対してそれらの反対側では、ヒドロゲルリザーバ9(薬品リザーバとも呼ぶ)上に配置されるか又はそれに取り付けられ、そこから活性剤をユーザの皮膚24に送出することができる。図2A及び2Bに示す実施形態では、ヒドロゲルリザーバ9は、電極と同じ形状及び配置に従って、すなわち、3つの電極8がそれぞれ配置される3つの同心のリザーバ9を使用して実施される。同心リザーバ9の間の空間は、空気のような絶縁材料又は絶縁媒体15で満たされている。電極8毎に1つのヒドロゲルリザーバ9が存在することができる。
【0041】
パッチを使用して活物質をユーザの皮膚に送出する時にユーザの皮膚に適用される活物質を保持するヒドロゲルリザーバ9は、コーティングマトリクスとして実施することができる。このマトリクス又はリザーバ9を形成する材料はヒドロゲルである。活物質は、賦形剤の有無に関わらず、溶媒に溶解させる及び/又はポリマー内に分散させることができ、この混合物は、次に、溶媒蒸発及び/又はゲル化及び/又はあらゆる他の重合処理によりマトリクスを生成する。これに代えて、ヒドロゲルリザーバ9は、培養、分注、噴霧、又は注入処理を通して活物質が導入されるゲルパッドとして形成することができる。この材料は、通常の状態でイオン性薬品溶液のような物質又は薬品溶液のためのリザーバとして使用するのに適するか又は従って適切な親水性添加物をこの材料に充填するか又は付加する時に適する必要がある。
【0042】
マトリクス又はリザーバ9は、接着性ヒドロゲルを使用するか又は上述のように接着剤をリザーバに追加することにより、電極に接着して電極と皮膚との両方との機械的及び電気的な密着を維持しなければならない。マトリクスは、かなりの量の水又は他の溶媒と、内部マトリクス構造内で拡散して皮膚表面に到達する溶解物質とを閉じ込めて保持しなければならない。マトリクスは、溶媒又は可溶性物質が大量に漏れないようにしなければならない。これらの特性を提供する材料の非限定的な例は、メタクリレートベースのヒドロゲルポリマー又はPVA、PEO、PEG、PVP、CMCのような他のポリマー及びそれらの混合物、又は他の従来型ポリマー及びそれらの混合物であり、その場合に、重合処理、ポロゲン物質を使用する処理、及びポリマーの架橋を使用してその特性を調節する。布地、発泡体、焼結鉱物材料のような他の材料も、既に説明した要件を満たしていれば使用することができる。マトリクスからの活物質の漏出は、マトリクスの親水性と、例えば、マトリクスネットワーク孔隙径及びヒドロゲルポリマー架橋等級等々のような内部構造との物理的及び化学的なマトリクス特性に起因して防止される。
【0043】
ヒドロゲルリザーバ9は、皮膚24に経皮送出される少なくとも1つの活性剤を含む、閉じ込める、又は保持することができる。ヒドロゲルリザーバ9に保持することができる生物活性剤の非限定的な例は、化合物、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、リボザイム、dsRNAs,RNAi、ワクチンの形態又はあらゆる他の形態の薬品、プロドラッグ、組織増殖因子及び生物医学的プローブ、又は皮膚を通して投与することができるあらゆる他の物質である。送出される物質は、本発明の範囲外である。
【0044】
異なるタイプの生体適合性ヒドロゲルを使用することができ、合成でも天然でも、物理的に架橋していても化学的に架橋していてもよい。ヒドロゲルはポリマーとすることができ、又はポリマーを含むことができる。そのようなポリマーは、以下の例とそれらの混合物とを含むがこれらに限定されない:ポリエチレングリコールと誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、キトサンと誘導体、アクリル酸と誘導体、クリックケミストリによって調製されたヒドロゲル(例:チオール-エン反応)、アルギン酸塩と誘導体、絹フィブロインと誘導体など。ヒドロゲルは、組成が均一とすることができ、又はこれに代えて異なる化学的性質の少なくとも2つの結合した部分集合から構成される場合がある。ヒドロゲルはまた、等方性又は異方性を示す場合がある。パッチは、使い捨て又は充填式とすることができ、これは、例えば、必要に応じて薬品/化合物の追加投与量が再充填されることを意味する。この場合に、パッチを再利用する処理は、例えば、剥がして置換する手順を通して、使用済みのヒドロゲル(又は他の薬品担持のためのマトリクス)リザーバ9を活物質が充填された新しいヒドロゲルリザーバと交換することによって行われる。
【0045】
ヒドロゲルリザーバ9は導電性であり、かつ皮膚24に対して接着性であるものとすることができる。この場合に、追加の接着性要素を必要としない。これに代えて、パッチがその意図した機能を果たすのに十分な皮膚への密着度を与えない異なるタイプのヒドロゲルを使用することができ、その場合に、追加の接触強化要素が必要である。この要素は、パッチに一体化された接着構成要素であるか又は代わりにパッチを皮膚に密着した状態に機械的に維持する適切なデバイス(例えば、弾性ストラップ)とすることができる。
【0046】
ヒドロゲルは、活性剤の調整可能な濃度勾配プロファイルと調整可能な導電率とを提供するように構成することができる。これは、ヒドロゲルがリザーバ9内で活性剤のあらゆる望ましい濃度及び分布と共にリザーバ9のあらゆる望ましい導電率を制御して達成する機能を有することを意味する。この関連では、望ましい濃度、分布、又は導電率は、従来技術のパッチに開示されるような公知の濃度、分布、又は導電率を指す。用語「調整可能」は、濃度、分布、又は導電率の望ましい値を制御して達成する上述の機能を指す。
【0047】
電子放射手段はまた、刺激ユニット6、逆多重化ユニット10、制御ユニット11、及びフィードバックユニット1を含む。電子放射手段に含まれる構成要素は、以下に限定するものではないが、PCB(プリント回路基板)のような台又は支持体4に支持されるか又は埋め込まれる。典型的な台4は、誘電体基板層(例えば、プラスチック材料で作られ、図2Bでは参照4で識別される)と、台4の誘電体基板上に配置された構成要素との電気接触を可能にする導電層又はゾーン42とを含む。刺激ユニット6、逆多重化ユニット10、制御ユニット11、及びフィードバックユニット1は、台4の誘電体基板上に配置されるか又は埋め込まれる。これらの構成要素は、単一チップ又は複数のチップに物理的に含まれる場合がある。図2A及び2Bに示す実施では、各構成要素6、10、11、1が異なるチップに実施されている。
【0048】
電極8に接続した電気接点(リード又はワイヤとも呼ばれる)5は、台4の導電層又はゾーン42と電気接触するので、図4に関連して説明するように電極8と台4に取り付けられた逆多重化ユニット10との間で電気通信が可能になる。電極8は薄膜電極とすることができるが、代わりにあらゆる他のタイプの適切な電極を使用することができる。電極8は、起動/停止されるようにかつユーザの皮膚24に適用される刺激パターンに従って刺激パラメータを適用するように構成される。
【0049】
電子放射手段はまた、ヒドロゲルリザーバ9内の薬品濃度を直接測定するために及び従って電極8の下に重なる皮膚24及び下に重なる組織、筋肉、神経、又は骨の限定された要素/面積/体積における活性剤の少なくとも一時的送出をモニタするために光学感知システム3、12も含む。活性剤の少なくとも一時的送出のこのモニタは、以下のように行われる。光学感知システム3、12は、時間に沿ってヒドロゲルリザーバ9内に残っている活性剤の量を測定する。これは、ヒドロゲルリザーバ9内の活性剤の非残留量(ヒドロゲルリザーバ9に本来存在する活性剤の既知の総量に対して)が既に皮膚に送出されたことを意味する。リザーバ9内の活性剤の濃度の連続測定を行って、皮膚への活性剤の送出量を決定する。測定は、以下に限定するものではないが、0.1~100Hzのサンプリング周波数でのような予め定められた時間間隔で行われる。光学感知システム3、12で得られた測定値から、フィードバックユニット1は、皮膚への活性剤送出の時間的プロファイルを計算する。言い換えれば、光学感知手段で測定された光信号は、パッチによって実行される送出セッション全体を通して濃度値に移される(変換される)。フィードバックユニット1で得られ、制御ユニット11に提供される情報から、制御ユニット11は、どの電気刺激及びどの電極を次に起動する必要があるかを決定し、それにより、皮膚内部の電界を制御する及び従って皮膚内での活性剤の送出を制御する。これは、以下に限定するものではないが、0.1~100Hzのサンプリング周波数でのような特定の時間間隔で行われる。従って、皮膚24に送出される活性剤の量のリアルタイム制御(すなわち、時間的制御又は時間軸での制御)は、この光学感知システム3、12によって達成される。光学感知システム3、12は、複数の光学感知要素を含むことができる。この場合に、光学感知システム3、12は、ヒドロゲルリザーバ9の異なる場所で薬品濃度を測定する。従って、これは、電極8の下に重なる皮膚24及び下に重なる組織、筋肉、神経、又は骨の限定された要素/面積/体積における活性剤の時空的送出のモニタを可能にする。光学感知システム3、12に含まれる複数の要素で得られた測定値から、フィードバックユニット1は、皮膚への活性剤送出の空間-時間的プロファイルを計算する。次に、制御ユニット11は、次にどの電気刺激及びどの電極を起動する必要があるかを決定する。電気接点5は、導電材料で製造される。導電材料の非限定的な例は、銅、銀、金、炭素、又はあらゆる他の導電材料、又はその組合せである。例えば、図2B及び図3A~3Cに示して図4の観点から説明するように、各接点5は、逆多重化ユニット10を通して独立に起動することができる。望ましい刺激パターンを少なくとも2つの電気接点5に送出することができる。電気接点5は、電極基板2の対応する面へのスクリーン印刷、PVD又はCVD堆積のような従来の製造技術を使用して製造することができる。例えば、電極基板2の小穴に導電材料を充填し、それにより、電極8と接点5の間に電気接続(ビア接続)を確立することができる。
【0050】
パッチ20は自律的とすることができ、例えば、単回使用バッテリ13の形態の一体化された電源手段(DC電源手段)13を有することができる。図示のパッチ20では、電源手段13は、外側保護体18によって境界が定められた体積内に含まれる。単回使用バッテリを使用する場合に、パッチ20は使い捨てである。バッテリの非限定的な例は、ボタンバッテリ又は可撓性フィルムバッテリである。図2A及び2Bでは、電源手段13は台4上に配置される。これに代えて、パッチは外部電源手段を必要とする場合がある。パッチ20は、パッチ20がオン状態にある(作動している)時に発光し、パッチ20がオフ状態にある時に発光しないように構成された発光インジケータ(図2A~2Bには図示せず)を更に含むことができる。非限定的な例では、発光インジケータはLED(発光ダイオード)である。
【0051】
デバイス(パッチ)20は、電子回路を保護して絶縁し、パッチの機械的一体性を維持する外側保護体又は保護要素18を含む。ユーザの皮膚24と接触するように設計された保護要素18の一部又は側部は、接着剤で被覆することができ、それにより、パッチ20の位置と被験者の皮膚24との密着とを保証する。これは、ヒドロゲルリザーバ9がパッチ/皮膚インタフェースの位置決め及び完全性を保証するのに十分な接着性がない時に特に重要である。ヒドロゲルリザーバ9が十分に接着性である場合に、保護要素18は、パッチに収容された電子回路の環境からの絶縁及び保護のためだけに使用することができる。保護要素18は、可撓性で電気絶縁性の多孔質材料で製造することができる。そのような材料の非限定的な例は、薄膜に加工されたポリウレタンフォーム、ポリエステル、ナイロン又はセルロース、ポリマー強化セルロース、又はあらゆる他の適切な従来型材料である。
【0052】
パッチ20の電子放射手段は、活性剤の送出量をモニタして検出することができ、この検出された活性剤の量を使用して時間的及び空間的送出プロファイルを制御する。図4は、パッチ20の電子放射ブロック40の機能図を示している。図示の図では、電子放射ブロック40は、図2A及び2Bに関連して既に開示した主要な要素から構成される:電極8、ヒドロゲルリザーバ9(典型的に電極毎に1つだが、図4では単一ブロック9として図式的に表す)、光学感知システム3、12、フィードバックユニット1、制御ユニット11、刺激ユニット6、及び逆多重化ユニット10。電子放射手段は、電圧制御モードか電流制御モードのいずれかで電気刺激の送出を可能にする。
【0053】
各電極8に送られる入力電力(電流又は電圧)は個別に変調され、必要とされる/プログラムされたエネルギパルス又は電気刺激(刺激パターン)に変換されて電極8で受け入れられる。これは制御ユニット11によって行われ、制御ユニット11は、限定するものではないがプログラマブルマイクロプロセッサのような処理手段を含み、これが刺激ユニット6及び逆多重化ユニット10を制御する。次に、ヒドロゲルリザーバ9内に保持された物質が皮膚24に送出される。制御ユニット11は、異なる経皮薬品送出条件を処理する。その処理手段には、送出刺激の強度、シーケンス、周波数、速度、タイミング情報、送出刺激の場所、及び電極極性、及び物質送出を管理するために与えられるあらゆる他のパラメータを制御するように構成されたプログラマブルソフトウエアが設けられる。これは、電極8に印加される電流又は電圧を変えることによって達成される(1又は2以上の電極に個別に印加される電流又は電圧、すなわち、1つの電極に印加される電流又は電圧は、いずれの他の電極に印加される電流又は電圧とも関係がない)。制御ユニット11をプログラムして様々な物質送出プロファイルを提供することができる。送出の持続時間と頻度は、治療プロトコル(処方箋)に基づいて変わる。
【0054】
パッチ20(特にその電子放射手段40)の一般的な作動は、図4の機能図に示されている。刺激ユニット6は、パルス波形又はプレット(同じか又は異なる周波数及び/又は振幅の複数パルスの時系列)の形で電流又は電圧制御の刺激パルスを発生させる。刺激ユニット6がパルスシーケンスを発生させるように、刺激ユニット6は、制御ユニット11によって発生された刺激パラメータからプレットを発生させるように構成された単一チャネル電圧及び/又は電流発生器を含むことが好ましい。プレットの刺激パラメータは、制御ユニット11によって決定される。パルス波形の刺激パラメータは、次のパラメータの一部又は全てである:刺激振幅、DC、AC、周波数、パルス持続時間、パルス又はパルス刺激の不在持続時間。ここでは、送出されるパルスは、単相、2相、2相補償型、又はあらゆる他の従来型のパルス刺激とすることができる。プレット内の各パルスは、1又は2以上の電極に分配するか又は割り当てることができる。この割当ては、制御ユニット11の命令に従って逆多重化ユニット10によって実行され、それにより、逆多重化ユニット10に対して刺激場所(各パルスが送出される電極の選択)と電極に送出されるパルスの極性とが示される。言い換えれば、刺激ユニット6によって発生されたパルスで刺激されるアクティブ電極の適切な組合せは、制御ユニット11によって指示される。アクティブ電極のこの適切な組合せは、逆多重化ユニット10によって実行される。従って、活性剤の量及び浸透深さを含めてヒドロゲルリザーバ9からの活性剤の放出は、逆多重化ユニット10によって実行されるパルス分配(プレット)に続く電極起動シーケンスを通して制御ユニット11によって制御される。要するに、刺激ユニット6は、制御ユニット11によって選択/計算されたパラメータに従って複数パルスの時系列を発生し、制御ユニット11は、更に、各パルスをどの電極にかつどの極性で印加すべきかを選択/計算する。制御ユニット11は、極性、持続時間、振幅、周波数、又は専門家によって考えられるあらゆる他のパラメータのような各電極に対する異なる電気刺激パラメータを独立に制御するための手段を含む。刺激が印加されるいずれの時点でも、少なくとも1つの電極がアノードとして機能し、少なくとも1つの電極がカソードとして機能する。電極の極性は、刺激が印加されるいずれの時点でも制御ユニット11によって修正することができる。更に、2又は3以上の電極に送出されるいずれの電気刺激パラメータも、一定又は可変(時間的に変化する)とすることができる。これは全て、制御ユニット11に含まれるマイクロコントローラのようなプログラマブル回路によって達成され、制御ユニット11は、刺激プログラムを有する制御手段を含み、その実行は予め定義されるか、又はバイオフィードバックセンサ信号に依存する閉ループ制御システムアルゴリズムに基づく場合がある。刺激プログラムは、活物質及びマトリクス毎に及び特定の用途毎にカスタマイズすることができる。制御ユニット11はまた、刺激の前に内部較正を実行し、カプセル封入又は他の担体粒子を含めて様々なターゲット薬品及び製剤に対して投与量制御は適応可能である。電気刺激パラメータは、時間に依存する予め定められたプロトコルで望ましい電極構成に送出される。マイクロコントローラのようなプログラマブル回路も、電源からのエネルギ消費を制御するようにプログラムされる。
【0055】
上述のように、ヒドロゲルリザーバ9内の活性剤の量は、光学感知システム3、12によって測定される。リザーバ9内の活性剤の濃度の連続測定を行って、皮膚への活性剤の送出量が決定される。測定は、以下に限定するものではないが、0.1~100Hzのサンプリング周波数でのような予め定められた時間間隔で行われる。測定されたデータに基づいて、フィードバックユニット1は、実際の活性剤送出プロファイルを決定又は推定する。これは、次のように行うことができる:ヒドロゲルリザーバ9内の活性剤の初期濃度(t=t0)は既知であり、例えば、マイクロプロセッサと関連のメモリ手段に保存されている。ヒドロゲルリザーバ内の活性剤の濃度が測定される(t=t1)。放出された活性剤の量は、既知の初期濃度(t=t0)とt=t1で測定された濃度との差である。放出された活性剤の量に対する値は保存される(例えば、マイクロプロセッサに関連付けられたメモリ手段に)。この処理は、活性剤が経時的に皮膚内にどのように送出されているかを一連の時間的データ点が表すように連続的に繰り返される。制御ユニット11は、フィードバックユニット1により与えられた推定送出プロファイルを望ましい送出プロファイル、例えば、処方箋に従って確立された送出プロファイルと比較する。この比較結果に基づいて、制御ユニット11は、刺激パラメータ(刺激ユニット6を通して)及び/又は刺激場所及び/又は極性(逆多重化ユニット10を通して)を変えることによって刺激パターンを更新する。
【0056】
図5は、本発明の実施形態に従って電極アレイに印加することができるパルス波形(刺激プレット)の例を示している。パルス波形又はプレットは、パルス振幅、パルス周波数、パルス持続時間、パルス不在持続時間などのようなそのパラメータによって定められる。このパルス波形は、制御ユニット11の命令に従って刺激ユニット6によって発生されて逆多重化ユニット10に与えられ、逆多重化ユニット10は、場所(電極選択)及び極性に関して制御ユニット11によって与えられた命令に従って時点毎にパルス波形の各パルスを電極アレイ8の1又は2以上の電極(図5では、電極_1、電極_2、及び電極_3として言及する)に送る。例えば、パルス波形の最初のパルスが電極_1に印加され、パルス波形の第2のパルスは、極性を変えて電極_2に印加される。観察することができるように、パルス6とパルス7は、電極2と電極3に同時に(かつこの例では、極性を変えて)印加される。要するに、図5は、どのように刺激が発生されて分配され、それによって送出プロファイルを制御するかを示している。
【0057】
光学感知システム3、12は、ヒドロゲルリザーバ9に閉じ込められた活性剤の量又は濃度の相対的変化を測定して決定するように構成される。光学感知システムは、発光ダイオード(LED)のような少なくとも1つの発光手段3と、フォトダイオードのような少なくとも1つの光検出手段12とを含むことができる。図2A及び2Bは、発光手段3と光検出手段12を示している。当業者は、光学感知システムが電子構成要素のような他の図示しない構成要素を含む場合があることを理解するであろう。ヒドロゲルの光学特性は、活性剤がイオン導入パッチ20によって皮膚/体に送出される時に変化する。光学感知システムは、ヒドロゲルリザーバ9に含まれる(活性剤と混合した)ヒドロゲルの光学特性を測定し、その測定値を較正値と比較する。活性剤を含むヒドロゲルリザーバ毎に少なくとも1つの光学感知システムが存在することができる。図2A及び2Bに示す実施形態は、3つの独立したヒドロゲルリザーバを示しており、その各々は異なる電極(3つの同心電極)に関連付けられる。説明目的にただ1つの光学感知システム3、12をこの事例では最も内側の電極と関連のヒドロゲルリザーバとに示しているが、ヒドロゲルリザーバ毎に少なくとも1つの光学感知システム3、12が存在することができる。較正値は、活性剤の全濃度範囲について同じヒドロゲルを使用して及び/又は数値シミュレーションを使用して、すなわち、標準的な較正手順に従って予め得られた実験値である。ヒドロゲルリザーバと活性剤の組合せ毎に1組の較正値が得られる。そのような較正処理からの情報が送出処理のあらゆる瞬間における光学感知システム3、12の出力と比較された状態で、フィードバックユニット1は、推定される現在の活性剤放出プロファイルを制御ユニット11に送り、これが刺激パターン(刺激パラメータと電極の選択)を調節して皮膚に送出される薬品の量を制御する。言い換えれば、刺激パターンは、パルス刺激(振幅、持続時間、周波数)を定める全ての電気的パラメータと、刺激を送出するのに使用される電極のアドレスである送出場所とによって定められる。光学感知システム3、12は、1又は複数のヒドロゲルリザーバ9に閉じ込められた活物質の濃度を決定し、ある一定の時点で皮膚の特定領域に送出された量を推定することができる。ある一定の時間に皮膚に送出された活物質の推定量に基づいて、時間及び空間送出プロファイルが制御される。
【0058】
光学感知システム3、12は、活性剤が皮膚24に送出される時に混合物の透過/吸収特性が変化する場合があるという事実に起因して、活性剤を閉じ込めるヒドロゲルリザーバの透過/吸収特性(すなわち、ヒドロゲルと活性剤との混合物又は懸濁物の特性)の変化を測定するように構成することができる。この透過/吸収特性の測定は、少なくとも1つの発光手段3と少なくとも1つの光検出手段12とで行うことができる。決定された吸収パターン(又は決定された透過パターン)は、ヒドロゲル内の活物質の現在の濃度を取得するために、ヒドロゲルと混ざった異なる濃度の活性剤を分析する結果として得られた実験結果を含む基準パターンと比較される。皮膚に送出された薬品量の推定は、ヒドロゲルに最初に導入された薬品の量と、送出処理中のあらゆる時点で光学感知システムによって決定される現在の濃度との差を計算することによって行われる。すなわち、光の吸収/透過の相対的な差が測定され、この相対的な差は、リザーバ内の活性剤の濃度の変化と相関する。
【0059】
光学感知システム3、12は、これに代えて、屈折率の変化又は蛍光の変化のようなヒドロゲルと活性剤との混合物の他の光学特性の変化を測定するように構成することができる。言うまでもなく、活物質が作動波長で蛍光性である限り、蛍光の変化を測定することができる。
【0060】
光学検出を達成するために、上述のハドロゲルリザーバ9に含まれるヒドロゲルと活性剤との混合物は、作動波長の光が混合物を通過するように作動波長範囲で実質的に半透明でなければならない。言い換えれば、上述の混合物は透明又は半透明でなければならず、又は作動波長範囲で光学検出を可能にするある一定の閾値よりも低い吸光度値を有する必要がある。従って、光学的に透明又は半透明のヒドロゲルを使用することが好ましい。
【0061】
測定される光学特性は、ヒドロゲルリザーバ/活性剤の組合せに依存することになる。作動波長範囲と共に、発光手段及び光検出手段の数量及びタイプも、そのようなヒドロゲル/活性剤の組合せに応じて選択することができる。
【0062】
図6は、図4に具現化した電子放射手段40によって実施される制御ループの流れ図を示している。デバイス20をオンにすると(段階61)、電子放射手段40はアクティブモードに入り、処方箋に従って定められたプロファイルのような予め定められたプロファイルで薬品を送出する作動を開始する(段階62)。制御ユニット11は、予め定められた活性剤送出プロファイルに対応する刺激パラメータを発生させる(段階63-1)。刺激パラメータは、最初は一定速度で発生されるものとすることができる。パラメータは、例えば、DC、AC、又はパルス刺激(単相、2相、2相補償型、又はあらゆる他の従来型パルス刺激)、刺激振幅、周波数、及び持続時間である。これらのパラメータは刺激ユニット6に送られる。実質的に並行して、制御ユニット11はまた、刺激される電極に対応する刺激場所パターンと共に、各パルスで刺激される電極の極性を発生させる(段階63-2)。刺激場所パターンは逆多重化ユニット10に送出される。次に、刺激ユニット6は、制御ユニット11から受け入れた命令から刺激パルス(パルス波形)を発生させる(段階64)。この発生された刺激パルスは多重化ユニット6に送られる。次に、逆多重化ユニット6は、図4に関連して上述したように、(段階64で)受け入れた入力パルスを(段階63-2の)場所パターンに従って少なくとも1つの電極に対する独立した異なる信号に変換し(段階65)、刺激ユニット6によって発生された各パルスは、時点毎に、逆多重化ユニット6により、ヒドロゲルリザーバ9に取り付けられた電極アレイを形成する1又は2以上の電極8に送出される。このようにして、段階65で電界が発生され、ヒドロゲルリザーバ9に含まれた薬品分子(活性剤)は、作り出された電界に従ってリザーバ9から身体に移送され、かつ体内で搬送される。
【0063】
これに加えて、電子放射手段40がアクティブモードに入ると、制御ユニット11もフィードバックユニット1を起動して作動を開始する。フィードバックユニット1は、光学感知システム3、12を起動する。光学感知システム3、12は、ヒドロゲルリザーバ9内の薬品濃度の測定を開始し、この測定に関する信号をフィードバックユニット1に与える。作動の開始時に、光学感知システム3、12は、リザーバ9内の(又は一般的に1よりも多い、例えば、電極毎に1つ存在するとすれば各リザーバ内の)活性剤の初期濃度を測定する。制御ユニット11は、リザーバ9内の活物質の初期濃度を例えば内部メモリに記録する。複数のヒドロゲルリザーバ/活性剤の組合せに対する較正データも、制御ユニット11内の格納手段に保存される。保存された較正情報に基づいて、光学感知手段で測定された光信号は、パッチによって実行される送出セッション全体を通して濃度値に移される。フィードバックユニット1は、このようにしてリザーバ9内の活物質のその瞬間における濃度を決定する(段階66)。次に、濃度情報が制御ユニット11に送信される。フィードバックユニット1から得られたリザーバ9内の瞬間濃度(その瞬間の濃度)から、制御ユニット11は、例えば、内部メモリに保存された初期濃度の減算により、身体に送出された活物質の実際の量を決定することができる(段階67)。次に、制御ユニット11は、送出された活物質の実際の量を予め定められたプロファイルに従って送出されたはずの理論量と比較する(段階68)。実際の送出プロファイルが予め定められたプロファイルに等しい場合(段階69)、制御ユニット11は、前の段階63-1、63-2で行われたように刺激パラメータを発生し続ける。(光学感知システム3、12により測定された)実際の送出プロファイルが予め定められたプロファイルに等しくない場合(段階70)、制御ユニット11は、刺激パラメータ及び/又は刺激場所パターンを修正して望ましい送出プロファイルを達成する(段階71)。制御ユニット11は、更新されたプロファイルに従って刺激パラメータを発生し、刺激ユニット6に(段階63-1)及び逆多重化ユニット10に(段階63-2)対応する命令を送り続ける。言い換えれば、制御ユニット11は、新しい刺激パラメータを発生して制御ループ段階を継続する。
【0064】
図3Aから3Cは、イオン導入パッチの電極設計/構成の可能な実施形態を示している。これらの実施形態は、限定的なものではない。逆に、本発明の開示内で多くの代替を具現化することができる。図3Aは、本発明の可能な実施形態による同心多重リング電極システム441を示している。電極システム441は、6つの同心電極441A、441B、441C、441D、441E、441Fを含む。この設計では6つの電極は同心であるが、あらゆる他の配置を採用することができることに注意しなければならない。この実施形態では、それらは、Ag/AgClで作られる。図3Aはまた、電極基板417(図2Bの2)の電気接点416(図2Bの5)も示している。最も内側の電極441Aは、残りの電極441B、441C、441D、441E、441Fの極性と反対の極性を有することができる。残りの電極441B、441C、441D、441E、441Fは、等しいか又は等しくない電位を有することができる。等しくない電位は、物質の空間分布に寄与することに注意しなければならない。これについては、図7Aから7Jに関連して次に説明する。内部電極441Aは正極性(アノード)を有することができ、外部電極441B、441C、441D、441E、441Fは全て、負極性(カソード又は不関電極)を有することができる。これは、電極がパッチの電子放射手段を通して起動された状態で、存在する場合に物質の経皮送出の展開が時間的及び空間的に制御されることを意味する。
【0065】
電流/電圧が印加された状態で、異なる周囲電極に起因して、物質の経皮送出の空間的制御が達成され、すなわち、電極が最も内側の電極441Aに近いほど、物質は皮膚内よりも浅く移動する。それとは逆に、最も外部の電極441Fは、印加される電界の引力が小さく、その結果、物質は皮膚表面に平行に移動するよりもむしろ皮膚内により深く移動する。
【0066】
図3Bは、別の同心電極システム443を示す(左側に正面図と右側に背面図)。電極システム444は、2つの同心電極443A、443Bを含む。この実施形態では、電極はAg/AgClで作られる。電極基板417(図2Bの2)の電気接点416(図2Bの5)も示されている。この実施形態では、最も内側の電極443Aは円形形状を有するが、代わりにあらゆる他の形状を有することもできる。外側電極443Bは、第1の電極442Aを完全に取り囲む。電極セグメント間の相対的なサイズ及び距離の変動は、電極下の電界の形状を定めることになる。一般的に、皮膚の誘電的不均一性を考慮しない場合に、電極間の距離が大きいほど、生物学的に有意な大きさの電界が「より深く」なり、結果的にターゲット活性剤の浸透が深くなる。更に、活物質が中心電極の下に送出されるとすると、中心電極のサイズの増加により、より大きい物質充填マトリクスを収容することができ、及び従って送出される薬品の全体量を増すことができる。
【0067】
図3Cは、マトリックス電極444を示している。この実施形態では、単一電極基板417(図2Bの2)は複数の電極システムを有する。この特定の例では、3x4個の電極システムが存在する。各電極システムは、図3A及び3Cで説明したもののような特定の構成、又はあらゆる他の構成を有することができる。図3Cの例では、12個の電極システムが存在し、それらの各々は、例えば、Ag/AgClで作られた2つの同心電極を含む。この実施は、ある一定の用途で特に有用であり、例えば、アレルギ検査を行うためにパッチから皮膚(一般的には前腕上に限定されない)へ複数の制御された量のアレルゲン物質(プローブ)を同時に送出するのに役立つ。各電極セット又は電極アレイは、異なる物質の経皮送出に対して設計することができる。言い換えると、3x4個の2電極セグメントの各々は、単一アレルゲンプローブとして使用される。物質に応じて、電極アレイは、特定の構成(電極の数、電極(例えば、リング)を形成するストリップの幅、連続する電極間の間隔など)を有することができる。アレルゲン物質は、中心電極下のヒドロゲルリザーバ9に充填され、同心の周囲電極は接地電極として使用される(アレルゲン物質は充填されない)。アレイ内の1又は2以上の電極セットは、「ブランク」又は対照として使用することができ、その場合に、2つのセグメントのいずれにもアレルゲン物質は充填されない。この実施形態は、前の実施形態と類似の電子回路、電源手段、及び出力段を使用する。アレルゲン送出の空間的制御は、2セグメント要素の設計によって予め定められるが、時間的送出制御は、制御ユニット11により、2つの電極セグメントの各々に対して独立に定められた刺激パラメータを通してリアルタイムで修正することができる。
【0068】
図7A~7Jは、図3Aに示すような同心電極を有して図2Aに示すような断面を有するパッチにおいて、電流/電圧がパッチの電極に印加された場合に、電界及びイオン電流の流れがユーザの皮膚を通過する時のその挙動のシミュレーションモデルを示している。物質は皮膚内に浸透する。皮膚内の物質の浸透と空間分布は、電極によって発生される電界の分布を調節することによって制御することができ、この調節は、電極レイアウトと電極の起動の時空的パターンによって達成することができる。図は、極性が変化する2電極システムによる送出の時間推移を示している。
【0069】
図7A~7Jでは、簡単のために、3つの同心電極セグメント(1つの中心電極441Aと2つの周囲電極441B、441C)に関して3つの異なる印加電位シナリオで電界分布と得られる電流密度が模擬されている。
【0070】
図7Aでは、中心電極441Aと第1の周囲リング電極441Bの間の電位差は10Vであり、一方で中心電極441Aと第2のリング電極441Cの間の電位差は5Vである。その結果、図7Aの電界分布に対応する図7Bに示す電流密度プロファイルは、電界プロファイルによって誘導されるイオン電流が物質/活性剤の浸透に寄与する限定された皮膚要素(面積、体積)を示している。送出プロファイルは浅くて密度が高く、電極441Aと441Bの間だけに限定される。電位差の大きい電極441Bにより、電流/物質は電極441Bと441Cの間の電位差の低い領域に「逃げられない」ということが注目される。実際に、電極441Aのすぐ近くの正に帯電した粒子を考えると、10Vという441Aと441B間の正味の電位差によってその経路が決定されるために、粒子は441Aから反発され、441Bに引きつけられることになる。同様に、441Cの電位は0Vなので、441Bに対する電位差は-5Vであり、正帯電粒子は441Bの近傍から441Cに向けて移動することができず、その結果、441Aの近傍から送出される正帯電粒子は、441A-441B領域の内部に閉じ込められることになる。
【0071】
図7C~7Eは、図7Aの電極構成について薬品浸透プロファイルの時間推移(1200秒)を示している。図7Cは、浸透プロファイルの開始(0秒)を表している。図7Dは、600秒での浸透プロファイルを表している。図7Eは、1200秒での浸透プロファイルを表している。観察することができるように、薬品は明らかに浅く送出される。
【0072】
図7Fでは、中心電極441Aと第1の周囲リング電極441Bの間の電位差は5Vであり、一方で中心電極441Aと第2のリング電極441Cの間の電位差は10Vである。その結果、図7Fの電界分布に対応する図7Gに示す電流密度流れは、電界プロファイルによって誘導されるイオン電流が物質/活性剤の浸透に寄与する限定された皮膚要素(面積、体積)を示している。送出プロファイルは図7Bよりも深くて密度が低く、電極441Aと441Bの間に限定される。電位差の大きい電極リング間の間隔/距離の増加により、送出プロファイルの深さが増加し、電極441Aに対する電位差が小さい電極441Bに一部の電流が依然として「沈み込む」ということが注目される。
【0073】
図7H~7Jは、図7Fの電極構成について薬品浸透プロファイルの時間推移(1200秒)を示している。図7Hは、浸透プロファイルの開始(0秒)を表している。図7Iは、600秒での浸透プロファイルを表している。図7Jは、1200秒での浸透プロファイルを表している。観察することができるように、薬品は明らかに浅く送出される。図7C~7Eのプロファイルを図7H~7Jのプロファイルと比較すると、図7C~7Eでは、薬品は遥かに限定された皮膚体積に送出されるが、図7H~7Jでは、遥かに深くて大きい体積に送出される。
【0074】
図7Kでは、中心電極441Aと両方の周囲電極441B、441Cとの間の電位差は10Vである。その結果、図7Lの電界分布に対応する図7Lに示す電流密度流れは、電界プロファイルによって誘導されるイオン電流が物質/活性剤の浸透に寄与する限定された皮膚要素(面積、体積)を示している。送出プロファイル(図7L)は図7Bよりも深く、図7Gよりも密度が高いが、依然として電極441Aと441Cの間に限定される。
【0075】
上述の例から明らかなように、電極アレイに印加される電界の極性及び強度と共に他の刺激パラメータの時間に依存する変化を組み合わせると、限定された空間及び時間領域における物質送出の制御が可能である。送出される物質は、中心区域から第1の同心電極へ(図7B)、かつ第2の同心電極へ(図7G)横方向に移動する。この最後の事例では、物質は組織内により深く浸透する。物質/活性剤の空間的場所(面積/体積)への閉じ込めは、印加される電気刺激の横断方向及び横方向成分の能動制御で達成される。これは、例えば、電流密度ベクトルを示す図7A及び7Bで理解することができる。各ベクトルは、横断方向及び横方向の射影を有する。従って、電極の起動と各電極に送出される電位とを制御することにより、ベクトルの横断方向及び横方向の成分/射影が変化し、それによって送出プロファイルが変化する。皮膚内での物質/活性剤の場所を予想することができるので、用途に応じてパッチを設計して物質/活性剤を皮膚内でより深く又はより深くなく、又は予め決められた深さ内でより広く又はより広くなく、又はどのようにでも送出することができる。
【0076】
活性剤の浸透及び皮膚内の空間分布に関するパラメータは、電極の設計、隣接する電極間の距離、及び刺激パターンで定められる。電極システムは、各電極の独立した起動を可能にする。1又は2以上の電極を同期的又は非同期的に起動することができる。各電極について、パラメータの中でも特に電圧/電流パルスの極性、電位振幅、周波数、持続時間及びプロファイル、及び起動電極の構成は、制御手段に含まれるマイクロプロセッサを使用して独立に修正することができる。言い換えれば、制御手段は、全ての患者、治療、投与量、薬品/物質、薬品担体製剤及び薬品担体マトリックスの特定の必要性に適応するように電極構成及び刺激パラメータの変化を含めて異なるイオン導入セッションプロトコルをプログラムすることができる。
【0077】
要約すると、上述のパッチは、その異なる実施形態及び実施では、そのようなターゲット活物質の1つに関する皮膚内での皮膚3次元な分布又は閉じ込めを空間と時間で定められた送出プロファイルの形式で確立し、モニタし、制御することができるように、活物質の空間的かつ時間的送出制御とその経皮的放出とを提供する。これは、ヒドロゲル内の薬品濃度のリアルタイム光学検出により、及び制御ユニット11に含まれる処理手段によって達成され、その場合に、現在の薬品送出プロファイルは、実験及び数値シミュレーションに基づいて予め定められた送出プロファイルと比較される。予め定められた刺激パターンは、光学感知システムのフィードバックに基づいて調節される。言い換えれば、このデバイスは、制御された時間的送出パターンに従って皮膚及び下に重なる組織筋肉、神経、又は骨の特定面積/体積に物質/活性剤を局所的に送出することを可能にする。
【0078】
これは、印加された所与の電位に対して皮膚内部に発生される電界の形状を制御することによって達成される。この特性を使用して高度に局所化された薬品送出を達成すること、所与の皮膚表面にわたって活物質の濃度勾配を発生させること、皮膚内への活物質の浸透深さを制御することなどが可能である。言い換えれば、物質(すなわち、分子)は、イオン導入セッション中のあらゆる時点であらゆる望ましい方向に移動することができる。例えば、デバイスは、皮膚の血管形成部分に到達してはならない細胞増殖抑制剤又は麻酔剤のような物質の限局性局所送出に使用することができる。
【0079】
本明細書の内容から明らかなように、パッチは、皮膚及び下層組織の局所面積/体積に物質/活性剤を経皮送出する問題のソリューションを提供する。パッチは、望ましい送出プロファイルに従って薬品を送出するためにあらゆる時点で皮膚に送出される薬品の実際の量を実質的に制御する。投与量の制御は継続的に行われるので、身体に移送される活物質の望ましい量を得るために電気刺激がリアルタイムで調節される。パッチは、イオン導入技術による生物活性剤の経皮送出に基づく治療的又は非治療的処置に使用することができる。パッチはまた、少なくとも1つのアレルギを診断する診断方法において複数のアレルゲンプローブの同時送出に使用することができ、その診断方法は、イオン導入技術による生物活性物質の経皮送出に基づくものである。
【0080】
一方、本発明は、明らかに本明細書に説明する特定の実施形態に限定されるものではなく、むしろ特許請求の範囲に定められるような本発明の一般的な範囲内で当業者が考え得るあらゆる変形(例えば、材料、寸法、構成要素、構成などの選択に関して)も包含する。
【符号の説明】
【0081】
8 電極
9 ヒドロゲルリザーバ
10 逆多重化ユニット
20 イオン導入パッチ
24 皮膚
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図7K
図7L