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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-07
(45)【発行日】2022-10-18
(54)【発明の名称】天然心臓弁を置換するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20221011BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020028522
(22)【出願日】2020-02-21
(62)【分割の表示】P 2018016267の分割
【原出願日】2014-08-14
(65)【公開番号】P2020096925
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-02-26
(31)【優先権主張番号】61/942,300
(32)【優先日】2014-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/943,125
(32)【優先日】2014-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/865,657
(32)【優先日】2013-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514193188
【氏名又は名称】マイトラル・ヴァルヴ・テクノロジーズ・エス・アー・エール・エル
(73)【特許権者】
【識別番号】516045090
【氏名又は名称】ランドン・エイチ・トンプキンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ランドン・エイチ・トンプキンズ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・エー・スペンス
(72)【発明者】
【氏名】マーク・チャウ
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・シエゲル
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/114214(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0208329(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然心臓弁を置換するためのシステムであって、
心臓弁プロテーゼ(60)を支持するように構成された複数のコイル(22)として形成された拡張可能らせん状アンカー(12)であって、前記コイルのうちの少なくとも1つが、通常は第1の直径にあり、らせん状アンカー(12)内からの径方向外方力を印加されると、より大きな第2の直径に拡張可能である、拡張可能らせん状アンカー(12)と、
前記らせん状アンカー(12)内に送達され、前記複数のコイル(22)の内部で拡張されて前記少なくとも1つのコイルと係合することが可能であり、それにより前記第1の直径から前記第2の直径へと前記少なくとも1つのコイルを動かしつつ、前記らせん状アンカー(12)および前記心臓弁プロテーゼ(60)を共に固定する、拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)であって、血液流入端部および血液流出端部を含む、拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)と、
を含んでなる、システムにおいて、
前記らせん状アンカー(12)に係合するシール層(84、90)であって、前記らせん状アンカー(12)内への前記心臓弁プロテーゼ(60)の植込み後に前記心臓弁プロテーゼ(60)を通過する血液漏れを防止するように構成された、前記拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)上のシール(84、90)をさらに備え、
前記心臓弁プロテーゼ(60)の前記血液流出端部が、植込み後の心臓内の組織構造体に対する損傷を防止するための緩衝体(80)を備え、前記緩衝体(80)が、前記シール層(84、90)で覆われた内層(82)を含み、前記シール層(84、90)が、前記心臓弁プロテーゼ(60)の流出部分を覆っていることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記らせん状アンカー(12)は、前記心臓弁プロテーゼ(60)が前記複数のコイルの内部で拡張されることによって、より大きな直径からより小さな直径へと動く別のコイルを備えていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記シール(84、90)が、前記らせん状アンカー(12)を通るおよび前記心臓弁プロテーゼ(60)を通過する血液漏れを防止するために隣接し合うコイル(22)間に延在する部分を備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記らせん状アンカー(12)が形状記憶材料を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記らせん状アンカー(12)が、前記らせん状アンカー(12)内への前記心臓弁プロテーゼ(60)の植込み後に前記らせん状アンカー(12)の少なくとも2つのコイル間に延在する膜またはパネル(202)をさらに備えていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記血液流入端部および血液流出端部のうちの少なくとも一方が、非フレア状であり、ほぼ円筒形状であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記血液流出端部が、径方向に外方にフレア状をなしていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
隣接し合うコイル(22)のうちの少なくとも1つによる天然心臓弁との係合を防止するのに十分な間隙(91)が、前記隣接し合うコイル間に画定されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記間隙(91)が、前記らせん状アンカー(12)の隣接し合うコイル部分に対して非平行に延在する前記らせん状アンカー(12)のコイル部分によって形成されていることを特徴とする、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)が、本体(66)および弁葉(62、64)を含み、前記本体(66)が開ステント構造体を有していることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記内層(82)が発泡体で作製されていることを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記シール層(84)が、前記流出部分の内側および外側で上方に延在し、前記拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)を通過して前記らせん状アンカー(12)の前記複数のコイル(22)を通る血液漏れを防止していることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記シール層(84)が繊維で作製されていることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
繊維層(92)が、前記拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)の流入部分の内側を取り囲み、前記シール層(90)が、前記繊維層(92)まで、前記拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)の流出部分の内側を囲み、前記シール層(90)が生体材料を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記シール層(90)が心膜組織を含むことを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2013年8月14日に出願された(係属中)米国特許仮出願第61/865,657号、2014年2月20日に出願された(係属中)米国特許仮出願第61/942,300号、および2014年2月21日に出願された(係属中)米国特許仮出願第61/943,125号の優先権を主張するものである。これらの仮出願の開示は、ここに参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的には、置換技術および置換装置などの心臓弁に関する医療手技および医用デバイスに関する。より詳細には、本発明は、様々な奇形および機能障害を有する心臓弁の置換に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの心臓の左心房から左心室内への血流を制御する僧帽弁の合併症は、致命的な心不全を引き起こすことで知られている。先進国において、心臓弁膜症の最も一般的な形態の1つは、僧帽弁逆流としても知られている僧帽弁の漏れであり、これは左心室から僧帽弁を経由して左心房内に戻る血液の異常漏出により特徴づけられる。これは、最も一般的には、左心室が拡張する複数回の梗塞、特発性心筋症、および高血圧性心筋症の後に僧帽弁の弁葉同士が適切には接触しないまたは閉じない場合の虚血性心疾患に、ならびに変性疾患により引き起こされるものなどの弁葉および索の異常に起因して発生する。
【0004】
僧帽弁逆流に加えて、僧帽弁の狭窄すなわち狭窄症が、最も多くの場合においてリウマチ性疾患の結果によるものである。これは、先進国では事実上解消されているが、生活水準がそれほど高くない地域では依然として一般的である。
【0005】
僧帽弁の合併症と同様のものは、左心室から大動脈内への血流を制御する大動脈弁の合併症である。例えば、多数の老齢患者が、大動脈弁狭窄症に罹患する。歴史的に見て、従来の治療法は、大きな開心による直視下心臓手技による弁置換であった。この手技は、侵襲性がとても高いため、回復にかなりの時間量を必要とする。幸運なことに、この10年間で、この直視下心臓外科手技から、外科切開または心臓停止中に人工心肺装置により循環を支援する必要性を伴わずに迅速に実施され得るカテーテル手技への交代において大きな進歩があった。カテーテルを使用することにより、弁が、ステントまたはステント状構造物に取り付けられ、これらのステントまたはステント状構造物は、圧縮され、血管を通して心臓まで送達される。次いで、ステントは拡張され、弁が機能し始める。罹患した弁は、除去されないが、代わりに新しい弁を収容したステントによって押しつぶされるかまたは変形される。変形された組織は、新しい人工弁を固定するのを補助する役割を果たす。
【0006】
弁の送達は、患者内で容易にアクセスされ得る動脈から遂行され得る。最も一般的には、これは、大腿動脈および腸骨動脈にカニューレ挿入し得る鼠蹊部から行われる。肩領域もまた利用され、この場合には鎖骨下動脈および腋窩動脈にもアクセス可能となる。この手技からの回復は、著しく迅速である。
【0007】
全ての患者が、純然なカテーテル手技を施され得るわけではない。いくつかの場合では、動脈が、小さすぎることにより心臓までカテーテルを通すことが不可能であり、または動脈の罹患度合いもしくは蛇行度合いが過剰であることにより不可能となる。これらの場合には、外科医は、小さな胸部切開を施し(開胸術)、次いでこれらのカテーテルベースデバイスを心臓内に直接的に配置することが可能である。典型的には、巾着縫合が、左心室の尖部においてなされ、送達システムが、心臓の心尖を通して配置される。次いで、弁が、その最終位置へと送達される。また、これらの送達システムは、大動脈自体から大動脈弁にアクセスするためにも使用され得る。一部の外科医は、直視下手術時に大動脈内に直接的に大動脈弁送達システムを導入する。これらの弁は、非常に多様である。しばしばステントの形態である取付け構造体が存在する。人工弁葉は、取付けおよび保持構造体上のステントの内部にて搬送される。典型的には、これらの弁葉は、従来の外科弁において使用される生体材料から作製される。この弁は、動物からの実際の心臓弁組織であることが可能であり、またはより多くの場合では、弁葉は、ウシ、ブタ、もしくはウマからの心膜組織から作製される。これらの弁葉は、それらの免疫原性を低下させ、それらの耐久性を向上させるように処理される。多くの組織処理技術は、これを目的として展開されてきた。将来的には、生物工学処理された組織が使用され得るか、またはポリマーもしくは他の非生体材料が弁葉に使用され得る。これらの全てが、本開示で説明される本発明に組み込まれ得る。
【0008】
実際には、大動脈弁疾患患者よりも僧帽弁疾患患者の方が多く存在する。この10年間において、多数の企業がカテーテルまたは低侵襲性植込み可能大動脈弁の作製に成功してきたが、僧帽弁の植込みはより困難であり、今日まで良い解決策は存在しなかった。患者は、小切開を利用した外科手技によるデバイスの植込みによって、または鼠蹊部からなどのカテーテルの植込みによって恩恵を被ることになる。患者の観点からは、カテーテル手技は非常に魅力的である。現時点では、僧帽弁をカテーテル手技に置き換えるために利用可能な方法は市場に存在しない。僧帽弁置換を必要とする多くの患者は、高齢であり、直視下心臓手技は、痛みを伴い、リスクが高く、回復に時間がかかる。一部の患者は、高齢および脆弱さにより外科手術の対象にさえならない。したがって、遠隔的に配置される僧帽弁置換デバイスの必要性が特に存在する。
【0009】
以前は、弁修復ではなく僧帽弁置換が、僧帽弁疾患を患う患者にとって、よりマイナスとなる長期予後に結び付けられると考えられていたが、この考えに疑問符が付き始めた。今では、弁が修復されるか置換されるかにかかわらず、僧帽弁の漏れすなわち逆流を患う患者に対する結果は殆ど同じであると考えられている。さらに、僧帽弁外科修復の耐久性が今では疑問視されている。修復を受けた多くの患者は、数年間の間に漏れを進行させる。これらの多くが高齢者であるため、老齢患者における繰返しの介入は、患者または医師に歓迎されるものではない。
【0010】
カテーテル僧帽弁置換に対する最も突出した障害は、弁を定位置に保持することである。僧帽弁は、大きな周期的負荷を被る。左心室内の圧力は、収縮前にはゼロに近づき、次いで収縮期血圧(または大動脈狭窄症がある場合にはさらに高く)まで上昇し、これは、患者が収縮期高血圧を患う場合には非常に高くなり得る。弁に対する負荷は、しばしば150mmHgまたはそれ以上である。心臓は、それが拍動することにより動いているため、この動きおよび負荷が組み合わさって弁を変位させ得る。また、この動きおよび律動的負荷は、材料を疲労させて、材料の破損をもたらし得る。したがって、弁の固定に関連する大きな問題が存在する。
【0011】
カテーテル送達式僧帽弁置換を作成することの別の問題は、サイズである。インプラントは、強力な保持特徴および漏れ回避特徴を有さなければならず、弁を収容しなければならない。個別のプロテーゼが、始めにアンカーまたはドックを配置し次いで第2に弁を植え込むことによってこの問題を解消するために寄与し得る。しかしこの状況では、患者は、アンカーまたはドックの植込みと弁の植込みとの間で安定的に留まらなければならない。患者の天然僧帽弁が、アンカーまたはドックにより機能不全に陥ると、患者は、急速に不安定になり、施術者は、新たな弁を急いで植え込むか、または場合によってはアンカーもしくはドックを除去し手技を断念することによって患者を安定化させることを余儀なくさせられ得る。
【0012】
僧帽弁置換の別の問題は、弁周囲の漏れ、すなわち弁周囲漏れである。良好な封止が、弁の周囲に確立されない場合には、血液が、左心房内に漏れて戻り得る。これは、心臓に余分な負荷をかけ、血液が漏れ部位を通る噴流として移動することにより血液に損傷を与え得る。溶血すなわち赤血球の破壊は、これが生じた場合に頻発する合併症である。弁周囲漏れは、大動脈弁が初めにカテーテル上で植え込まれるときに一般的に直面する問題の1つであった。外科的置換の最中に、外科医は、弁縫合線の外部の間隙を視認可能であり、それを防止または修復することが可能であるため、弁の置換時に大きな利点を有する。カテーテル挿入では、これは不可能となる。さらに、大きな漏れにより、患者の生存率が低下し、可動性を制限し患者を不快にする症状(例えば呼吸困難、浮腫、疲労など)が引き起こされ得る。したがって、僧帽弁置換に関するデバイス、システム、および方法は、置換弁の周囲の漏れを防止および修復するための手段をさらに組み込むべきである。
【0013】
また、患者の僧帽弁輪は、非常に大きなものであり得る。企業が外科的置換弁を開発する場合に、この問題は、作製される実際の弁のサイズ数を制限し、次いで弁の縁の周囲により多くの繊維カフを追加して弁サイズを増大させることによって解消される。例えば、患者が、45mmの弁輪を有する場合がある。この場合には、実際の人工弁直径は、30mmであってもよく、この差は、人工弁の周囲に、より大きな繊維カフ材料バンドを追加することによって補われる。しかし、カテーテル手技では、人工弁により多くの材料を追加することは、この材料が小さな送達システムにより凝縮および保持されなければならないため、問題をもたらす。この方法は、しばしば非常に困難で実用的ではないため、代替的な解決策が必要である。
【0014】
多数の弁が、大動脈位置向けに開発されてきたため、弁開発を繰り返すことを回避し、既存の弁を活用することが望ましい。これらの弁は、開発し市場に送り出すのに非常に費用がかかるため、それらの用途を拡張することにより、かなりの時間量および金額を節減することが可能となる。この場合には、かかる弁のための僧帽弁アンカーまたはドッキングステーションを作製することが有用となる。大動脈位置向けに開発された既存の弁は、おそらく幾分かの変更を伴うことにより、ドッキングステーションに植込み可能である。エドワーズ・サピエン(Edwards Sapien)(商標)弁などの一部の以前に開発された弁は、変更を全く伴わずに良好に適合し得る。コアバルブ(Corevalve)(商標)などの他のものは、植込み可能であり得るが、アンカーとの最適な係合および心臓内部への適合のために幾分かの変更を必要とする。
【0015】
複数のさらなる合併症が、保持不良または位置決め不良の僧帽弁置換プロテーゼにより発生する場合がある。すなわち、弁が、心房または心室内に変位され得るため、これが患者にとって致命的なものとなる恐れがある。先行のプロテーゼアンカーは、組織を穿刺してプロテーゼを保持することによって変位リスクを低下させている。しかし、これは、リスクの高い方策である。なぜならば、穿刺は、遠く離れた位置から先鋭状物体によって遂行されなければならず、これは心臓の穿孔リスクおよび患者の負傷リスクをもたらすからである。
【0016】
また、僧帽弁プロテーゼの配向も重要である。弁は、心房から心室に血液を容易に流し得るものでなければならない。ある角度で進入するプロテーゼが、血流不良、心臓壁または弁葉による流れの閉塞、および血行動態不良の結果をもたらす場合がある。また、心室壁に対する収縮の繰返しが、心臓の後壁の裂開および患者の急死をもたらす恐れがある。
【0017】
外科的僧帽弁修復または僧帽弁置換では、時として、僧帽弁葉の前方弁葉が左心室流出エリアに押し込まれ、これにより左心室排血不良がもたらされる。この症候群は、左心室流出路閉塞として知られている。置換弁が大動脈弁の近くに位置する場合には、置換弁自体により左心室流出路閉塞が引き起こされ得る。
【0018】
置換僧帽弁を植え込む場合に直面するさらなる別の障害は、人工心肺装置が循環を支援する必要性を伴わずに患者が安定的に留まり得るように、患者の天然僧帽弁がプロテーゼの配置の最中に定期的に機能し続ける必要がある点である。
【0019】
さらに、様々な植込みアプローチで使用され得るデバイスおよび方法を提供することが望ましい。特定の患者の解剖学的構造および臨床的状況に応じて、医療専門家は、直視下手技(直視下心臓外科手術もしくは低侵襲性外科手術)において心臓内に直接的に置換弁を挿入する、または閉手技において静脈からおよび動脈を経由して置換弁を挿入するなど(カテーテルベース植込みなど)、最適な植込み方法に関する決定を下すことを求める場合がある。複数の植込みオプションの選択肢を医療専門家に与えることが好ましい。例えば、医療専門家は、僧帽弁の心室側からまたは心房側からのいずれかから置換弁を挿入することを求める場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際出願番号PCT/US2013/024114
【文献】国際出願番号PCT/US2014/050525
【文献】国際出願番号PCT/IB2013/000593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明は、当技術におけるこれらのおよび他の難点に対処するデバイスおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
例示の一実施形態では、本発明は、心臓弁プロテーゼを支持するように構成された複数のコイルとして形成された拡張可能らせん状アンカーを備える天然心臓弁を置換するためのシステムを提供する。コイルのうちの少なくとも1つが、通常は第1の直径にあり、らせん状アンカー内からの径方向外方力を印加されると、より大きな第2の直径に拡張可能である。隣接し合うコイルのうちの少なくとも1つによる天然心臓弁との係合を防止するのに十分な間隙が、隣接し合うコイル間に画定される。拡張可能心臓弁プロテーゼが、提供され、らせん状アンカー内に送達され、複数のコイルの内部で拡張されて少なくとも1つのコイルと係合するように構成される。これは、第1の直径から第2の直径へと少なくともそのコイルを動かしつつ、らせん状アンカーおよび心臓弁プロテーゼを共に固定する。このシステムは、らせん状アンカーに係合し、らせん状アンカー内への心臓弁プロテーゼの植込み後に心臓弁プロテーゼを通過する血液漏れを防止するように構成された、拡張可能心臓弁プロテーゼ上のシールをさらに備える。
【0023】
このシステムは、1つまたは複数のさらなる態様を備え得る。例えば、らせん状アンカーは、心臓弁プロテーゼが複数のコイルの内部で拡張されることによって、より大きな直径からより小さな直径へと動く別のコイルを備えてもよい。シールは、多数の代替的な形態をとり得る。例えば、シールは、らせん状アンカーを通るおよび心臓弁プロテーゼを通過する血液漏れを防止するために隣接し合うコイル間に延在する部分を備えることが可能である。シールは、多数の異なる代替的な材料から構成され得る。シールは、らせん状アンカー内への心臓弁プロテーゼの植込み後にらせん状アンカーの少なくとも2つのコイル間に延在する膜またはパネルをさらに備えてもよい。例えば、一例は、生体材料である。らせん状アンカーは、形状記憶材料をさらに含んでもよい。心臓弁プロテーゼは、血液流入端部および血液流出端部を備え、端部のうちの少なくとも一方が、非フレア状(unflared)であり、ほぼ円筒形状であってもよい。例示の一実施形態では、血液流出端部は、径方向に外方にフレア状(flared)をなし、植込み後の心臓内の組織構造体に対する損傷を防止するための緩衝体を備える。間隙は、らせん状アンカーの隣接し合うコイル部分に対して非平行に延在するらせん状アンカーのコイル部分によって形成されてもよい。
【0024】
別の例示の実施形態では、シールが、心臓弁プロテーゼ上に担持される代わりに、らせん状アンカー上に代替的にまたは追加的に担持される点を除いては、ほぼ上述のようなシステムが提供される。本明細書において説明されるまたは組み込まれるような任意の他の特徴が含まれてもよい。
【0025】
別の例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼをドッキングするためのシステムが、コイル部分が心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めされた状態で心臓弁プロテーゼを支持するように構成された複数のコイルとして形成されたらせん状アンカーを備える。外方可撓性らせん状チューブが、らせん状アンカーのコイルを有してアセンブリを形成する。らせん状送達ツールが、アセンブリを搬送し、天然心臓弁を通り定位置に回転されるように構成される。追加のまたはオプションの特徴が提供されてもよい。例えば、心臓弁プロテーゼは、複数のコイルの内部で拡張されてもよい。外方チューブは、天然心臓弁を通り定位置に回転した後に、らせん状アンカーの複数のコイルから外れるようになされた低摩擦材料から形成されてもよい。外方チューブは、縫合糸によりまたは任意の他の方法によりらせん状送達ツールに固定されてもよい。らせん状送達ツールは、複数のコイルと共に形成されてもよく、外方チューブは、遠位端部にさらに固定されてもよい。遠位端部は、送達を支援するためにブレット形状またはテーパ形状をさらに備えてもよい。遠位端部は、弾性要素をさらに備えることが可能であり、外方チューブおよびらせん状送達チューブの遠位端部は、弾性要素に固定される。
【0026】
別の例示の実施形態では、天然心臓弁を置換するためのシステムが、天然心臓弁にて心臓弁プロテーゼを支持するように構成された複数のコイルとして形成されたらせん状アンカーを備える。拡張可能心臓弁プロテーゼが、このシステムに設けられ、らせん状アンカー内に送達され、複数のコイルの内部で拡張されて少なくとも1つのコイルと係合することが可能であり、それによりらせん状アンカーおよび心臓弁プロテーゼを共に固定する。拡張可能心臓弁プロテーゼ上のガイド構造体が、らせん状アンカーがらせん状アンカー送達カテーテルから押し出される際に、らせん状アンカーを定位置に案内するように構成される。
【0027】
ガイド構造体は、例えばループ中の開口、チューブ、または単に拡張可能心臓弁プロテーゼのステント構造体中の開口などの、拡張可能心臓弁プロテーゼの一部分内に開口をさらに備えてもよい。開口は、植込み手順の最中にらせん状アンカーを搬送するらせん状アンカー送達カテーテルを受けるように構成され得る。開口は、拡張可能心臓弁プロテーゼのアーム上に配置されてもよく、プロテーゼは、天然心臓弁の下方に係合するように構成された複数のアームをさらに備えてもよい。ガイド構造体は、拡張可能心臓弁プロテーゼのチューブ状アームをさらに備えてもよい。
【0028】
別の例示の実施形態では、僧帽弁プロテーゼをドッキングし、天然僧帽弁を置換するためのシステムが、提供され、コイルガイドカテーテルと、コイルガイドカテーテル内に受けられコイルガイドカテーテルから送達されるように構成されたらせん状アンカーとを備える。らせん状アンカーは、コイルガイドカテーテルから送達された後にコイル状構成を有する、およびコイルガイドカテーテルから完全に送達され天然僧帽弁に植え込まれると僧帽弁プロテーゼを支持するように構成された、複数のコイルとして形成される。このシステムは、左心室内へのらせん状アンカーのより容易な送り込みを可能にするために天然腱索を囲み束ねるために展開されるように構成されたループ構造体を備える組織束ねカテーテルをさらに備える。
【0029】
別の例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼをドッキングするためのアンカーが、上方らせん状コイル部分と、下方らせん状コイル部分と、下方らせん状コイル部分に上方らせん状コイル部分を固定する固定具とを備える。
【0030】
別の例示の実施形態では、患者の心臓内に心臓弁プロテーゼを植え込む方法が、外方可撓性チューブ内に複数のコイルの形態のらせん状アンカーを保持するステップを含む。外方可撓性チューブおよびらせん状アンカーのアセンブリが、らせん状送達ツールに固定される。らせん状送達ツールは、患者の天然心臓弁に隣接して回転されて、天然心臓弁の一方または両方の側にアセンブリを位置決めする。アセンブリは、らせん状送達ツールから除去され、外方チューブは、らせん状アンカーから除去される。次いで、心臓弁プロテーゼは、らせん状アンカー内に植え込まれる。
【0031】
アセンブリを固定するステップは、らせん状送達ツールの隣接し合うコイルにほぼ沿ってアセンブリのコイルを位置決めするステップをさらに含んでもよい。外方チューブを除去するステップは、プッシャ要素によりらせん状アンカーを保持し、らせん状アンカーから外方チューブを引き離すステップをさらに含んでもよい。
【0032】
別の例示の実施形態では、患者の心臓内に拡張可能心臓弁プロテーゼを植え込む方法が、天然心臓弁の近傍に複数のコイルの形態の拡張可能らせん状アンカーを送達するステップを含む。拡張可能心臓弁プロテーゼは、拡張可能心臓弁プロテーゼおよび拡張可能らせん状アンカーが非拡張状態にある状態で、拡張可能らせん状アンカーの複数のコイル内に位置決めされる。拡張可能心臓弁プロテーゼは、拡張可能らせん状アンカーに対して拡張され、それにより拡張可能心臓弁プロテーゼを拡張しつつ、拡張可能らせん状アンカーに拡張可能心臓弁プロテーゼを固定する。シールが、らせん状アンカー上におよび/または心臓弁プロテーゼ上に担持され、らせん状アンカーを通るおよび心臓弁プロテーゼを通過する血液漏れを防止するために少なくとも2つの隣接し合うコイル間に延在する。
【0033】
別の例示の実施形態では、患者の天然心臓弁を置換するために拡張可能心臓弁プロテーゼを植え込む方法が、天然心臓弁の近傍に複数のコイルの形態のらせん状アンカーを送達するステップを含む。拡張可能心臓弁プロテーゼは、天然心臓弁の近傍に送達される。らせん状アンカーは、拡張可能心臓弁プロテーゼ上に担持されたガイド構造体を使用して拡張可能心臓弁プロテーゼの外周部のほぼ周囲に案内される。拡張可能心臓弁プロテーゼは、らせん状アンカーに対して拡張される。上記で論じたように、ガイド構造体は、多数の異なる形態をとり得る。
【0034】
別の例示の実施形態では、患者内に僧帽心臓弁プロテーゼをドッキングするためのらせん状アンカーを植え込む方法が、組織束ねカテーテルを使用して腱索を束ねるステップを含む。次いで、らせん状アンカーが、天然心臓弁の近傍におよび束ねられた腱索の周囲に複数のコイルの形態で送達される。
【0035】
別の例示の実施形態では、患者内に心臓弁プロテーゼをドッキングするためのらせん状アンカーを植え込む方法が、天然心臓弁の上方の位置に上方コイルから構成された上方らせん状アンカー部分を送達するステップと、天然心臓弁の下方の位置に下方コイルから構成された下方らせん状アンカー部分を送達するステップとを含む。上方らせん状アンカー部分および下方らせん状アンカー部分は、各らせん状アンカー部分の送達の前または後のいずれかに固定具を用いて共に固定される。
【0036】
別の例示の実施形態では、天然心臓弁を置換するためのシステムが、提供され、心臓弁プロテーゼを支持するように構成された複数のコイルとして形成された拡張可能らせん状アンカーを備える。コイルのうちの少なくとも1つが、通常は第1の直径にあり、らせん状アンカー内からの径方向外方力を印加されると、より大きな第2の直径に拡張可能である。隣接し合うコイルのうちの少なくとも1つによる天然心臓弁との係合を防止するのに十分な間隙が、隣接し合うコイル間に画定される。拡張可能心臓弁プロテーゼが、提供され、らせん状アンカー内に送達され、複数のコイルの内部で拡張されて少なくとも1つのコイルと係合することが可能である。このようにして、拡張可能コイルは、第1の直径から第2の直径へと動きつつ、らせん状アンカーおよび心臓弁プロテーゼを共に固定する。拡張可能心臓弁プロテーゼは、流入端部および流出端部を備える。流入端部は、非フレア状であり、ほぼ円筒状である一方で、流出端部は、径方向外方にフレア状である。
【0037】
様々なさらなる利点、方法、デバイス、システム、および特徴が、添付の図面と組み合わせて例示の実施形態の以下の詳細な説明を考察することにより、当業者にはより容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】天然僧帽弁の位置へのらせん状アンカーの導入を概略的に示す斜視図である。
図2A図1に示す、しかし偏向可能カテーテルの使用を伴う手技の初期部分を示す拡大断面図である。
図2B図2Aと同様の、しかし送達カテーテルの偏向および天然僧帽弁の下方へのらせん状アンカーの導入を示す心臓の断面図である。
図3A】送達カテーテルの遠位端部およびその偏向性を示す拡大立面図である。
図3B】送達カテーテルの遠位端部およびその偏向性を示す拡大立面図である。
図4A図3Aの斜視上面図である。
図4B図3Bの斜視上面図である。
図5A図3Bと同様の、しかし遠位端部の偏向または操縦のために使用される送達カテーテル内のワイヤの使用を示す側方立面図である。
図5B図5Aに示す送達カテーテルの上方断面図である。
図6A】らせん状アンカーと天然僧帽弁位置へのらせん状アンカーの送達を支援するために使用される外方チューブとの組合せを示す斜視図である。
図6B図6Aに示す外方チューブ内のらせん状アンカーの斜視図である。
図7A】天然僧帽弁位置に図6Bのアセンブリを送達するために使用されるらせん状送達ツールを示す立面図である。
図7B図7Aに示すらせん状送達ツールに対する図6Bに示すアセンブリの装着を示す斜視図である。
図8A】心臓の断面と図6Bのアセンブリを植え込むために使用されているらせん状送達ツールとを示す斜視図である。
図8B】植込み方法のさらなるステップを示す斜視図である。
図8C】植込み方法のさらなるステップを示す斜視図である。
図8D】植込み方法のさらなるステップを示す斜視図である。
図8E】植込み方法のさらなるステップを示す斜視図である。
図8F】植え込まれたらせん状アンカーを示す斜視図である。
図8G】植え込まれたらせん状アンカー内のステントが取り付けられた弁などの置換心臓弁を示す断面図である。
図9】らせん状アンカーを植え込むためのツールおよびアセンブリの別の例示の実施形態を示す斜視図である。
図10図9のアセンブリを示す部分断面上面図である。
図11A】らせん状アンカーおよび送達カテーテルの代替的な一実施形態の遠位端部の断面図である。
図11B】らせん状アンカーおよび送達カテーテルの別の実施形態の遠位端部の斜視図である。
図12】別の例示の実施形態による天然僧帽弁位置に植え込まれた置換ステントが取り付けられた弁およびらせん状アンカーの断面図である。
図13】ステントが取り付けられた置換心臓弁の別の例示の実施形態を示す拡大断面図である。
図13A図13に示す置換心臓弁の流出端部の非フレア状実施形態を示す拡大断面図である。
図14A】らせん状アンカー内に固定された置換心臓弁の別の例示の実施形態を示す断面図である。
図14B図14Aに示す置換弁の拡大断面図である。
図15A】心臓の断面と僧帽弁位置への送達カテーテルの初期導入とを示す概略図である。
図15B】らせん状アンカーと共にステントが取り付けられた置換心臓弁を導入する際のさらなるステップを示す心臓の拡大断面図である。
図15C図15Bと同様の、しかし天然僧帽弁位置にらせん状アンカーおよびステントが取り付けられた置換心臓弁を導入する方法におけるさらなる漸進的なステップを示す図である。
図15D図15Bと同様の、しかし天然僧帽弁位置にらせん状アンカーおよびステントが取り付けられた置換心臓弁を導入する方法におけるさらなる漸進的なステップを示す図である。
図15E図15Bと同様の、しかし天然僧帽弁位置にらせん状アンカーおよびステントが取り付けられた置換心臓弁を導入する方法におけるさらなる漸進的なステップを示す図である。
図15F図15Bと同様の、しかし天然僧帽弁位置にらせん状アンカーおよびステントが取り付けられた置換心臓弁を導入する方法におけるさらなる漸進的なステップを示す図である。
図16A】ステント弁上にループを有するアームを使用したステントが取り付けられた置換心臓弁およびらせん状アンカーの同時展開を示す概略立面図である。
図16B】ステント弁上にループを有するアームを使用したステントが取り付けられた置換心臓弁およびらせん状アンカーの同時展開を示す概略立面図である。
図17A図16Aと同様の、しかし別の実施形態を示す図である。
図17B図16Bと同様の、しかし別の実施形態を示す図である。
図18A図16Aおよび図16Bと同様の、しかしらせん状アンカーおよびステントが取り付けられた置換心臓弁を展開するための方法の別の実施形態を漸進的に示す図である。
図18B図16Aおよび図16Bと同様の、しかしらせん状アンカーおよびステントが取り付けられた置換心臓弁を展開するための方法の別の実施形態を漸進的に示す図である。
図18C図16Aおよび図16Bと同様の、しかしらせん状アンカーおよびステントが取り付けられた置換心臓弁を展開するための方法の別の実施形態を漸進的に示す図である。
図19A】別の例示の実施形態により作製されたらせん状アンカーの側方立面図である。
図19B図19Aの線19B-19Bに沿った断面図である。
図20】らせん状アンカーを送達するための別の代替的なシステムを示す概略斜視図である。
図21A】代替的ならせん状アンカーの初期送達を示す概略斜視図である。
図21B図21Aの完全に送達されたらせん状アンカーの概略斜視図である。
図22A】シールを備えるらせん状アンカーの別の例示的な実施形態を示す断面図である。
図22B図22Aと同様の、しかし天然僧帽弁の位置に植え込まれたらせん状アンカーとらせん状アンカー内に保持された拡張可能ステントが取り付けられた置換弁とを示す断面図である。
図23A】バルーンカテーテルにより拡張される前のらせん状アンカーの別の例示の実施形態を示す概略立面図である。
図23B図23Aと同様の、しかしバルーンカテーテルにより拡張される最中のらせん状アンカーを示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
同様の参照数字が、この詳細な説明および図面全体を通して構造体および機能の同様の要素を一般的に指すことが理解されよう。実施形態間の相違点は、図面からならびに/または各図面における異なる参照数字の説明および/もしくは使用から明らかになろう。明瞭化および簡明化のために、同様の要素の説明をこの説明内において繰り返すことはない。
【0040】
図2Aおよび図2Bと組み合わせて図1を始めに参照すると、参照により本明細書にその開示の全体が組み込まれる本出願人の特許文献1で先行して論じられるように、偏向可能カテーテル10が、らせん状アンカー12の植込みをはるかに容易にする。カテーテル10の偏向可能先端部10aは、図1に示すように、らせん状アンカー12が天然僧帽弁16の交連14に係合するのを支援する。カテーテル10の先端部10aは、僧帽弁16の天然弁葉18、20に向かって下方に曲がり得るように設計および構成され得る。カテーテル10の先端部10aが、図2Aに示すように交連14のほぼ上に配置されると、先端部すなわち遠位端部10aは、下方に曲げられ得るようになり、次いで図2Bに示すように遠位端部10aからおよび僧帽弁16を通り下方にらせん状アンカー12を押すまたは押し出すことが比較的容易になる。
【0041】
次に図3A図3B図4A図4B図5A、および図5Bを参照すると、変位可能カテーテルすなわちアンカー送達カテーテル10は、多数の異なる点または位置にて偏向可能であってもよい。送達カテーテル先端部10aの半径を拡大させるためにカテーテル先端部10aを外方に偏向させることは、遠位端部10aの偏向「前」の影響および偏向「後」の影響を示す図3A図3B図4A、および図4Bに示すように、非常に有用であり得る。このようにカテーテル10を偏向させることにより、より大きな直径で起始する巻線またはコイル22がらせん状アンカー12に与えられる。一例としては、らせん状アンカー12のこの巻線またはコイル22は、通常は25mmであり得るが、このようにカテーテル10の遠位端部10aを操作することにより、30mmまで直径を拡大させ得る。このようにらせん状アンカー12の第1の巻線またはコイル22を広げることは、図1ならびに図2Aおよび図2Bに関連して上記で大まかに論じたようにらせん状アンカー12が導入されるときに、らせん状アンカー12が全ての索24および弁葉18、20を捕捉するのを助ける。らせん状アンカー12が前進するにつれて、送達カテーテル10の遠位端部10aは、内方に偏向して、らせん状アンカー12が対向側の交連で索24の全てを捕捉するのを補助することもまた可能となる。らせん状アンカー12が天然僧帽弁16の中におよびそれを貫通して実質的にねじ込まれるまたは回転されるにつれて、送達カテーテル10の遠位端部10aを左右に移動させることは、巻線またはコイル22に送達カテーテル10を辿らせることと実質的に同様である。しかし、この場合には、送達カテーテル10は、先端部10aがコイル22と共に移動している場合にのみ定置される。任意の方向への遠位端部10aの偏向性は、送達カテーテル10の長さにわたり延在するワイヤ26を埋め込むことによって実現され得る。ワイヤ26が引っ張られると、送達カテーテル先端部10aは、この手順での所望に応じてまたは必要に応じて様々な形状へと偏向し変形する。
【0042】
次に、図6A図6B図7A図7B、および図8A図8Cに関連して、らせん状アンカー12を導入するまたは植え込むための手順を説明する。コイル31を備えるらせん状送達ツール30が、例えばゴアテックスまたはPTFEなどの他の低摩擦材料から形成された外方チューブ32内に収容されたらせん状アンカー12を送達するために使用される。縫合糸34は、らせん状送達ツール30のコイル31上の定位置に外方チューブ32およびらせん状アンカー12の組合せまたはアセンブリを固定するために使用される。溝(図示せず)が、縫合糸に固定シートを与えるためにらせん状ツール30に形成されてもよい。追加の縫合糸36が、らせん状送達ツール30の端部のループ38を通り外方チューブ32の前端部を結び付けるために使用される。らせん状送達ツール30および外方チューブ/らせん状アンカー組合せ体32、12は、心臓40内へと回転され図示するように僧帽弁16を通り、縫合糸34が、例えばメス42により切断される(図8B)。1組の鉗子44が、天然僧帽弁16に若干さらに通すように中へとツール30を回転させるために使用され、これにより、縫合糸36を破断させる(図8C)。次いで、らせん状ツール30は、逆方向に回転され、心臓40から除去されて、図示するように心臓40内に外方チューブ32と組み合わされたらせん状アンカー12を残す。カップ状端部52を有する押し棒50が、外方チューブ32の後端部内に挿入される(図8D)。次いで、外方チューブ32は、逆方向または後方に引っ張られて、らせん状アンカー12を定位置に残しつつ外方チューブ32を除去する。外方チューブ32の低摩擦材料により、外方チューブ32は、らせん状アンカー12から容易に外れる。図8Fおよび図8Gは、らせん状アンカー12と、らせん状アンカー12の中におよびそれに対してしっかりと取り付けられた置換心臓弁60とのこの実施形態の完全な植込みをそれぞれ示す。置換弁60は、弁葉62、64と、拡張可能ステント設計などの任意の適切な設計からなり得る本体66とを備える。
【0043】
図9および図10に示す別の実施形態では、ブレット形状ヘッド70が、らせん状ツール30に設けられる。ブレット形状ヘッド70には、ヘッド70に隣接するらせん形状ワイヤまたはコイル22に対して平行に延在するスリット72が存在する。ブレット形状ヘッド70は、例えば弾性のポリマーから形成され、スリット72は、この弾性により開閉する。やはり、外方チューブ32は、縫合糸(図示せず)によりらせん状送達ツール30に固定される。外方チューブ32の前端部32aは、例えば鉗子44によってブレット形状ヘッド70に挿入される。この実施形態では、ブレット形状ヘッド70は、そのテーパ形状によるより容易な挿入に対応する。
【0044】
図11Aおよび図11Bは、展開前の、内部にらせん状アンカー12を有する送達カテーテル10の組合せ体のさらなる例示の実施形態を示す。送達カテーテル10の遠位先端部10aは、図11Aに示すように漸進的にテーパ状になされ得る、または図11Bに示すようにより丸型になされ得るテーパ部を備える。いずれの場合でも、この遠位先端部10aの構成により、天然僧帽弁位置へのより平滑でより容易な送達が可能となり、心臓40内の天然組織などの組織構造体を貫通する移動が可能となる。例えば、送達カテーテル10の遠位端部10aは、僧帽弁16を通して送られ、部分的にまたは完全に索24を丸く囲む(図1)ことが必要である場合がある。図11Aに示すように、らせん状アンカー12は、内部ワイヤコイル12aと繊維などの外部カバーまたは外部コーティング12bとにより構成されてもよく、送達時の心臓組織に対する損傷を回避するためにおよびより容易な送達を可能にするために、ポリマーなどから形成された軟質先端部12cを備えてもよい。
【0045】
図12は、らせん状アンカー12内にドッキングされた天然僧帽弁16に位置する例示のステントが取り付けられた置換心臓弁すなわちプロテーゼ60を示す断面図である。この実施形態では、「緩衝体」構造体80が、弁60の流出端部の弁輪エッジに付加されている。この緩衝体構造体80は、例えば繊維または別の適切な材料もしくはコーティングなどの封止材料84によって覆われた発泡体82などから形成されてもよい。この封止層84は、弁60を通過するおよびらせん状アンカー12のコイル22を通る血液漏れを防止するために、弁60の開ステント構造体86を覆って上方に延在する。
【0046】
図13は、図12に示す弁と同様の、しかし径方向外方にフレア状をなす流入端部および流出端部を示す置換心臓弁60の拡大図である。
【0047】
図13Aは、径方向外方フレア状部を有さない、ほぼ円筒状の流出端部を示す拡大断面図である。
【0048】
図14Aおよび図14Bは、置換ステント弁60をドッキングするまたは取り付けるらせん状アンカー12を備える、ならびに内部発泡層82を覆うためと置換心臓弁60を囲む既存の繊維層92の位置まで開ステント構造体86を封止するおよび覆うためとの緩衝体80の両位置において使用される心膜組織または他の動物組織などの生体組織シール90を備える、本発明の別の例示の実施形態を示す。ステント弁60上の既存の繊維層92と、弁60の下方部分すなわち流出部分を囲むシール層90との組合せは、血流がステント構造体86を通り弁60を通過して漏れるのを防止する。代わりに、血液は、置換弁60の弁葉62、64をきちんと通過する。図14Aにさらに示すように、らせん状アンカー12は、好ましくは離間されたコイル22から形成されて、参照により本明細書にその開示の全体が組み込まれる特許文献2に関連して先行して論じられる任意の実施形態などで構成されるような、または別の方法での所望に応じて離間もしくは形成されるような間隙91を形成する。特許文献2にさらに記載されるように、らせん状アンカー12は、ステント弁60によって拡張可能である。
【0049】
図15A図15Cを参照すると、別の例示の実施形態における手順の初期部分が図示される。この図では、シース100および送達カテーテル101が、末梢静脈を通り心臓40の右心房102内へと、心房中隔104を横断して、左心房106まで前進されている。送達カテーテル101の遠位端部10aが、天然僧帽弁16を通して送られることによって左心室108内に位置決めされる。この送達カテーテル101は、天然僧帽弁16の位置に植え込まれることとなる自己拡張式のまたはステントが取り付けられた僧帽プロテーゼまたは置換弁60を収容する。典型的には、ニチノールなどの超弾性または形状記憶タイプの材料が、自己拡張式置換弁60のフレーム構造体または本体66を形成するために使用されるが、他の材料が代わりに使用されてもよい。フレームまたは本体66は、ウシまたはブタの心膜組織などの組織から典型的に形成される人工弁葉18、20を備える。代わりに、弁葉18、20は、例えば小腸粘膜由来の材料などの、合成または他の生体材料などの他の材料から形成され得る。以下でさらに説明されるように、送達カテーテル101は、らせん状アンカー12および送達システムをさらに収容する。らせん状アンカー12は、本明細書において説明される、または例えば特許文献2および特許文献3などにおいて先行して開示される形態を一般的にとり得る。また、特許文献3の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0050】
図15Bは、天然僧帽弁葉18、20の直下に遠位先端部10aが位置する状態における、左心室108の内部の送達カテーテル101を示す。この手順は、送達システムの収容物を露出させることにより開始されている。
【0051】
図15Cは、図15Bの後の手順の別の部分を示し、人工僧帽弁または置換僧帽弁60がカテーテル101の遠位端部10aを通り部分的に送達されているのを示す。左心室108内に位置決めされた置換弁60の端部は、天然僧帽弁葉18、20の周囲に巻きつき、天然僧帽弁葉18、20の縁に対してしっかりと置換弁60を固定する役割を果たすアーム110を有する。矢印112は、アーム110が送達カテーテル101から外方に押し出されたまたは展開された後に、アーム110が天然僧帽弁葉18、20の下方縁の周囲にどのように巻きついているかを示す。この置換弁60の構造は、上記で組み込まれた特許文献3に示されている。これらのアーム110は、置換弁60が完全に位置決めされたときに、アーム110が天然僧帽弁葉18、20のエッジの周囲に掛かることにより、置換弁60が左心房106内へと上方に外れるのを防止するのを助ける。複数のアーム110は、天然僧帽弁16に対する僧帽弁プロテーゼ60の装着下方面を与えるのに有用である。アーム110は、長さが、ならびに特徴および構造が多様であってもよい。複数のアーム110がこの実施形態と共に使用されるが、例示および簡略化のために2つのみのアーム110がこれらの図に示されることが理解されよう。アーム110のうちの1つは、らせん状アンカー12を収容したらせん状アンカー送達カテーテル10を送るまたは制御するためのループ120を備える。アンカー送達カテーテル10は、ループ120内に事前装填されており、その後にアセンブリが、送達シース100内に装填される。ループ120を有するアームは、他のアーム110よりも重い構造を有し得るため、他のアーム110と同様でなくてもよい。アーム110は、アンカーカテーテル10から外方に押し出されたまたは展開された場合に、天然僧帽弁葉18、20の周囲に巻きつくような形状記憶特性を有する。ループ120を有するアーム110は、天然僧帽弁葉18、20の周囲に巻きつき、装着されたらせん状アンカー送達カテーテル10は、索24および天然僧帽弁葉18、20がらせん状アンカー12の露出端部の内部に位置決めされるようにそのアーム110により運ばれる。
【0052】
らせん状アンカー12が、図15Cで初めに示すように前進されるまたは押し出されると、らせん状アンカー12は、全ての弁および索がらせん状アンカー12の内部に捕獲されるように腱索24を丸く囲むことになる。ループ120は、天然僧帽弁葉18、20の周囲におよび天然僧帽弁輪126の下方の好ましい位置内へと索24の上方にらせん状アンカー送達カテーテル10を方向転換する。ループ120を有するアーム110は、天然弁葉縁に弁60を装着する機能と、らせん状アンカー12の送達時に案内する機能との2つの機能を有し得る。ループ120は、システムが展開された場合にらせん状アンカー送達カテーテル10を枢動または旋回させ得るのに十分な大きさであってもよい。らせん状アンカー12が、天然僧帽弁16の下面に対して平行に近い面内に押し出されることが重要である。また、らせん状アンカー送達カテーテル10は、ループ120によりこの面に向けられるまたは配向される。実際に、ループ120は、図示するようなワイヤの代わりに短チューブ(図示せず)から構成されてもよい。チューブが、好ましい面および配向へとらせん状アンカー送達カテーテル10を付勢する。代替的には、らせん状アンカー送達カテーテル10は、操縦可能カテーテル技術を通じて知られている方法のうちの1つで操縦可能であることが可能である。
【0053】
他の僧帽弁プロテーゼまたは置換弁が、使用され、天然僧帽弁葉18、20の周囲に巻きつく多様な装着アームもしくは装着ウィングまたはステント構造体を有してもよい。かかるプロテーゼにおけるアームまたは他の同様の構造体はいずれも、直前で説明されたループ120と同様の機能を実現するために、ループ120に、またはチューブもしくは他の同様の案内構造体に嵌められ得る。この機能は、らせん状アンカー12の送達を誘導することに一般的に関する。さらに、ループ120はらせん状アンカーの送達を誘導することは必須ではない。例えば、置換弁ステント構造体86のセルまたは開口が、これらの図面に示され説明されるループ120と同一の機能を果たすことも可能である。また、フックまたはチューブが、図示するループ120の代わりに使用されてもよい。天然僧帽弁葉18、20の周囲にらせん状アンカー12を送る機能を果たすことが可能な任意の構造体が、人工心臓弁または置換心臓弁60に付加されてもよい。この構造体は、置換弁60の一部として恒久的に製造されてもよく、またはこの手順の最中にのみ使用される一時的な構造体であってもよい。例えば、縫合糸ループ(図示せず)が、付随する任意のらせん状アンカー送達カテーテル10を含むらせん状アンカー12の送達を誘導するために使用されてもよい。縫合糸の使用後に、縫合糸は患者から引き抜かれてもよい。
【0054】
これらの図面に示されるアーム110は、非常に細い。実際に、端部で溶着された対のまたは3本のワイヤから構成されるアームを有することが、より有用な場合がある。アーム110の細い終端部は、アーム110が、天然僧帽弁葉18、20の自由エッジとの縁にて腱索24同士の間を通過するのを助長して、アーム110が天然弁葉18、20の周囲に巻きつくのを可能にする。索24同士は、いくつかのエリアでは密に詰められ、細いアーム110により、アーム110は、これらの腱索24同士の間を通過することが可能となる。アーム110の細い部分が通過すると、アーム110のより太い部分は、索24同士を離間させることによって索24同士の間を移動し得る。したがって、細いまたは先端部が単一のワイヤもしくはワイヤ溶着体から構成される、および人工弁もしくは置換弁60の主要本体のより近くではより頑丈もしくはより太いアーム110が、望ましい構成であってもよい。また、ワイヤまたはアーム110は、これらの例示の図面に示されるものよりもはるかに短くてもよい。図示される方法では、らせん状アンカー12の送達は、任意の所望の位置にて、および必須ではないが天然僧帽弁16の交連14にて開始されてもよい。例えば、送達は、天然僧帽弁葉18または天然僧帽弁葉20の中間部分で開始してもよい。これは、外科医がこの手順を開始するために交連14を正確に位置特定する必要がなく、そのためこの手順が大幅に単純化される点で、外科医にとって有利である。
【0055】
図15Dは、らせん状アンカー12が天然僧帽弁葉18、20の下に送達されつつあるのを示す。矢印130は、らせん状アンカー12が天然僧帽弁16の下でらせん状アンカー送達カテーテル10から押し出されつつあるのを示す。らせん状アンカー12の任意の個数のコイルまたは巻線22が、この手順で使用されている特定の構成のらせん状アンカー12に応じて押し出され得る。好ましくは、らせん状アンカー12の内径は、置換僧帽弁60のしっかりした係合または固定を助長するために、完全に拡張した僧帽弁プロテーゼ60の外径をわずかに下回る。らせん状アンカー12は、むき出しのワイヤから構成されてもよく、または上記で組み込まれたPCT出願に記載されるものなどの様々な理由によりコーティングまたはカバーを有してもよい。部分的に送達された僧帽弁プロテーゼ60は、らせん状アンカー12の送達を調心する重要な機能を果たす。また、僧帽弁プロテーゼまたは置換弁60は、安定的なプラットフォームを提供する。
【0056】
図15Eは、らせん状アンカー12の3つの巻線22が天然僧帽弁16の下方に配置されているのを示す。これらの巻線またはコイル22は、らせん状アンカー12と拡張される寸前の構成で示された人工僧帽弁60との間に天然僧帽弁葉18、20を位置決めしている。置換弁60が拡張されると、これは、置換弁60を固定的に位置決めし、プロテーゼ60に天然僧帽弁葉18、20を封着することにより置換弁60の周囲の漏れを防止する。置換弁60用の送達シース101は、除去されており、自己拡張弁を使用する場合には、弁60は、送達シース101を除去するとばね式に開く。矢印132は、そのばね式の開きが発生する前のこのプロセスを示す。この図では、置換弁60は、依然として閉位置にあり、それにより天然僧帽弁16の下方のらせん状アンカー12の巻線またはコイル22の明確な視認が可能である。この構成では、天然僧帽弁16の下方に3つのらせん状アンカーコイル22が存在するが、任意の個数のコイル22が代わりに使用されてもよい。コイル22は、天然僧帽弁輪126および弁葉18、20の下面に対して上方に位置決めされて、らせん状アンカー12を定位置に固定する堅固な支えを提供し、強力な左心室108が収縮する際の左心房106内への移動を防止する。アーム110がらせん状アンカー12の周囲に巻きつくと、構造体またはアセンブリの全体が定位置に安定化される。この実施形態は、アンカー12が置換弁60と同時に送達され得ることにより、外科医または介入者にかなりの量の選択肢を与える。多数の形状記憶フレームを有する人工心臓弁60は、再度シース封入され得る。これは、手順の最中に、置換弁60がカテーテルまたはシース101から部分的に前進され、心臓40内における置換弁60の適合性を試され得ることを意味する。外科医または介入者が、置換弁60の最終解除前に置換弁60の位置決めに満足しない場合には、この弁60は、シースまたはカテーテル101内へと引き戻され得る。したがって、人工弁または置換弁60は、初めはらせん状アンカー12が定位置に位置しない状態で位置決めされ得る。後の固定が強力かつ安定的な様子であり、移動または漏れの兆候が存在しない場合には、弁60は解除され得る。他方で、外科医または介入者が満足しない場合には、弁60はシース101内に引き戻され得る。らせん状アンカー12は、初めに植え込まれ、次いで弁60は、送達シース101から押し出され得る。これにより、ユーザは天然僧帽弁16の下方におけるさらなる固定の臨床的必要性に関する決定を行うことが可能となる。
【0057】
図15Fは、適切な位置で示される完全に植え込まれた拡張可能置換弁60を示す。アーム110は、天然僧帽弁葉18、20の周囲に巻きついており、それにより置換弁60が左心房106内へと上方に移動するのを防止する。天然僧帽弁葉18、20は、アーム110の下で圧迫され、非常に硬質の機械的構造体およびアンカーが、望ましくない位置への置換弁60の移動を防止するために形成されている。また、らせん状アンカー12の巻線またはコイル22は、人工弁または置換弁60の本体66を圧迫して、置換弁60を位置決めし、配向し、その移動を防止する。したがって、らせん状アンカー12は、置換弁60の摩擦装着を実現し、らせん状アンカー12の周囲に巻きつくアーム110を固定する役割を果たす。天然僧帽弁16の上方部分が、左心房106の壁部に対する装着を助長するために左心房106の内部に載置されるより幅広のエリアを有するのが示される。しかし、左心房106から左心室108に向かって置換弁60を移動させる力は、低く、置換弁60のこの部分は、必須ではなくてもよく、臨床用プロテーゼから除去または削減され得る。らせん状アンカー12の巻線またはコイル22は、患者ごとの天然僧帽弁葉18、20の長さ、腱索24の長さ、および左心室108内の索24の付着点の多様なばらつきを克服することが可能であるため、重要である。らせん状アンカー12が天然弁葉18、20の下を丸く囲むことなく、天然僧帽弁葉18、20の周囲に巻きつくアーム110を有する置換弁60が使用される場合に、人工僧帽弁60の固定深度は、植え込まれる置換弁60の外周部の周囲において様々であってもよい。例えば、後方弁葉20の中間部に付着した腱索24が、よくある状況ではあるが非常に延びているまたは破断されている場合には、アーム110は、この位置にて天然弁葉20の周囲に巻きつき係合することができない場合があり得る。あるいは、より高い面に沿ってまたはその面において非常に限定された係合がなされる場合がある。置換弁60のこの部分は、より高く位置決めされるため、置換弁60の傾斜をもたらし、それにより置換弁60は、置換弁60を通る流入血液面に対してある角度で位置決めされることになる。心臓40が拍動することにより、置換弁60に対して大きな負荷がかかり、置換弁60は搖動および変位し始める場合がある。心臓40は1日当たり100,000万回弱拍動し、数日、数週間、または数カ月の後には、弁60は変位する、移動する、および/または外れる場合がある。また、弁葉18、20および/または索24が非常に延びている場合には、アーム110との接触点が存在しない場合がある。これは、結果として天然僧帽弁葉18、20との置換弁60の係合の欠如による多量の弁周囲漏れをもたらし得る。天然僧帽弁葉18、20の下方のアンカー12が、置換弁60に対して天然弁葉組織を圧迫し、この問題を防ぐことになる。らせん状アンカー12は、1つの面内に位置決めされ、患者の解剖学的構造体のばらつきに関する問題を防止する。
【0058】
臨床実践では、天然僧帽弁葉18、20のサイズ、天然僧帽弁葉18、20の特徴、索の長さおよび索24の付着、ならびに僧帽弁輪126の直径のばらつきは、事実上無限である。天然弁葉18、20の下方におけるらせん状アンカー12または他のアンカー構造体の使用により、アーム110の固定点がらせん状アンカー12の最下コイル22まで動かされ得るため、これらの変数の多くが相殺される。また、この位置は、らせん状アンカー12のコイル22の個数およびらせん状アンカー12のコイル22の太さを選択することにより置換弁60の最下位置にアーム110の巻点を合致させることによって予め決定されてもよい。したがって、天然僧帽弁輪126の下方に送達されるらせん状アンカー12の重要な特徴は、置換弁60のアーム110を固定するための共通の所定の面を形成し得る点である。索24のいくつかが伸張された上述の状況では、置換弁60のこの領域における装着は、らせん状アンカー12に対してのものであることが可能である。これは、置換弁60上の最下点に対して共通面を形成する。弁60がその外周全体にわたり共通最下面に固定されるのを確実にするために、追加のコイル22がらせん状アンカー12に付加されてもよく、またはコイル22の直径がより大きくなされてもよい。追加のオプションは、例えば波状部であり、または起伏部が、らせん状アンカー12の全高にわたって拡張するようにらせん状アンカー12のコイル22に付加されてもよい。したがって、らせん状アンカー12は、置換弁60のアームが周囲に巻きつくための固定点または固定位置を与えると共に、また同時にらせん状アンカー12がその長さに沿って置換弁60の外周部を捕獲し得ることによって、置換弁60の安定性を向上させる。これらの特徴の組合せは、置換弁60に安定性の向上をもたらし、また天然僧帽弁16に対して置換弁60を封着させて弁周囲における血流漏れを防止することが可能である。既述のように、患者の天然僧帽弁および心臓構造は、多数のばらつきおよび組合せとなる。製造業者が、種々の長さおよび深度の固定アーム110を作製することや、ユーザがいずれの場合も定位置へと最適にこれらの製品を送達することは、実際的ではない。むしろ、天然僧帽弁16の下方にらせん状アンカー12を配置し、これを使用してアンカー12が固定される最下面を形成することによって、これらのばらつきに対して調節を行うことがはるかに実際的である。らせん状アンカー12用の送達システムは、例えば上記で組み込まれたPCT出願に記載される任意の送達システムまたは展開システムであってもよい。かかる展開方法および装置は、アンカー12が本明細書において示すように天然僧帽弁16の下方にのみ位置決めされるように、らせん状アンカー12を送達するために使用され得る点が理解されよう。
【0059】
図16Aおよび図16Bは、らせん状アンカー送達カテーテル10を案内するループ120が置換弁60上のアーム110の端部に設けられた別の実施形態を示す。このループ120は、定位置に移動されることによって送達カテーテル10を旋回させ得る。この実施形態では、らせん状アンカー送達カテーテル10は、置換弁60を通り、すなわち換言すれば置換弁本体66内を進むが、図示とは異なる様式で送られてもよく、らせん状アンカー送達カテーテル10は、らせん状アンカー12の送達のために図16Aおよび図16Bに示されるよりもさらに先にループ120に通されて送られた後に操縦可能となることなどによって、その経路に沿った追加的な案内のために使用されてもよい。
【0060】
図17Aおよび図17Bは、らせん状アンカー送達チューブ140が先述のらせん状アンカー送達カテーテル10の代わりに置換弁60内に組み込まれている別の実施形態を示す。この実施形態では、置換弁60の1つのアームが、実際にはらせん状アンカー12を装填され、このらせん状アンカー12を搬送するチューブ140である。チューブ状アーム140は、天然僧帽弁葉(図示せず)の周囲に巻きつき、らせん状アンカー12は、送達のために正確な位置におよび正確な面に搬送される。置換弁60のアーム110のうちの1つの上の任意の構造体、または送達のためにらせん状アンカー12を案内し得る置換弁60の任意の部分が、代わりに使用されてもよい。図17Bでは、らせん状アンカー12は、ほぼ完全な1回転または1旋回にわたってチューブ状アーム140から押し出されている。先述のように、らせん状アンカー12の複数の巻線またはコイル22は、ほぼ上述のように天然僧帽弁16の位置に置換弁60を最終的に固定するためにこのように展開され得る。この実施形態の主な相違点は、らせん状アンカー送達カテーテル10が不要である点である。
【0061】
図18A図18Cは、置換弁およびらせん状アンカーの展開および植込みのための別の実施形態を示す。これに関して、らせん状アンカー送達カテーテル10および置換弁60は、実質的に横並びに送達される。図18Aは、置換弁60をやはり送達する送達シース101の外部のまたはそこから押し出されたらせん状アンカー送達カテーテル10を示す。らせん状アンカー送達カテーテル10は、置換弁60のアーム110のうちの1つのループ120を通過する。矢印150は、らせん状アンカー12がらせん状アンカー送達カテーテル10の端部から押し出される寸前にあるところを示す。図18Bに示すように、らせん状アンカー送達カテーテル10の端部がループ120内に依然として位置する状態で、らせん状アンカー12のほぼ完全な1回転分の巻線またはコイル22が、天然僧帽弁(図示せず)の下方に送達されている。図18Cは、植込みプロセス中のさらなる一時点を示し、らせん状アンカー12の約3つの巻線またはコイル22が、天然僧帽弁16の面152の下方に送達されている。この図では、置換弁60を送達するらせん状アンカー送達カテーテル10およびシース101は、除去されている。置換弁60が、自己拡張ステントと共に形成される場合には、弁60の本体66は、送達シース101が除去されるとばね式に開くことになる。明瞭化および例示のために、弁60は、単に明瞭化のために閉じられたまたは非拡張の状態で依然として図示される。しかし、一般的には、完全に植え込まれたシステムまたはアセンブリは、図15Fに示すものと同様になる。
【0062】
図19Aおよび図19Bは、らせん状アンカー12の別の実施形態を示す。この実施形態では、コイル22の間隔およびサイズに関するらせん状アンカー12の構成は、様々であってもよい。断面構造は、例えば0.008±0.002インチの厚さ、2.12±0.18オンス/ヤード(72±6グラム/m)の重量、40±5ウェール/インチ、90±10コース/インチを有するPETであり得る繊維カバー160を備える。発泡層162は、例えば2mm厚のポリウレタンシート材料であってもよい。この発泡体は、軽い直線状ステッチを有するPTFE縫合糸を使用して繊維160に装着され得る。繊維160および発泡体162は、次いでらせん状アンカー12のコイル22の中心ワイヤ部分22aの周囲に巻かれ、繊維縫合糸を使用してワイヤ部分22aにクロスステッチされる。
【0063】
図20は、上記に示したおよび/または上記で組み込まれたPCT出願におけるらせん状アンカー12の送達を含み得る別のシステムを示す。しかしこの実施形態によれば、追加の組織束ねデバイス170が、送達システムに含まれる。このデバイス170は、腱索24の束をより小さなエリアに寄せ集めるまたは囲むことが可能な一時的リングまたはループ172を送達する。これは、腱索24による交絡または妨害のないらせん状アンカー12のより容易な配置を助長し得る。また、この図面には、いずれも前述のものとほぼ同様の導入シース100、送達カテーテル101、および操縦可能らせん状アンカー送達カテーテル10が示される。
【0064】
図21Aおよび図21Bは、別のらせん状アンカーデバイスまたはアセンブリ12を示す。このアセンブリ12は、上方らせん状アンカー部分すなわち心房らせん状アンカー部分180と、下方らせん状アンカー部分すなわち心室らせん状アンカー部分182とから構成される。これらのらせん状アンカー部分180、182は、らせん状アンカー送達カテーテル10から外に押し出されることによって同時に送達される。下方アンカー部分182は、天然弁葉18、20間で僧帽弁16を通り送達される。上方アンカー部分180および下方アンカー部分182は、例えば圧着接合部184などにより共に結合され得る。上方アンカー部分180は、左心房106内で天然僧帽弁16の上方に展開される(図20)。上方アンカー部分180および下方アンカー部分182は、下方アンカー部分182が初めに交連14内におよび天然僧帽弁16を通して送られるようにずらされ得る。図示するように、上方らせん状アンカー部分180および下方らせん状アンカー部分182は、逆方向に巻きまたは回転し、次いで図示するように共に圧着されてもよく、またはカテーテル10の装填前に事前圧着されてももしくは他の方法で装着されてもよい。
【0065】
図22Aおよび図22Bは、上記で組み込まれた特許文献2に関連して論じられたものと同様のらせん状アンカーおよび置換弁システムの別の実施形態を示す。しかしこの実施形態では、らせん状アンカー12の構成は、少なくとも上方コイル22aと天然僧帽弁16との間に間隙200を有するのが示される。上記で組み込まれた特許文献2と同様に、らせん状アンカー12は、アンカー12を貫通してまたは別の方法でアンカー12の長さに沿って長さ方向に延在する任意の所望の構成の弁輪シール202を備える。この実施形態では、コイル22aのうちの1つから下方に延在し、ステント構造体86により他の場合では開くことになるステントが取り付けられた置換弁60の部分を覆うパネルまたは膜シール202が示される。したがって、シール202は、開いたステント構造体86を通り置換弁60を通過する血液漏れを防止する。図22Aおよび図22Bに示すようなアセンブリの全ての他の態様が、本明細書において説明されるようなものであり、本明細書においてまたは例えば上記で組み込まれたPCT出願などにおいてなど他で説明されるオプションまたは特徴の任意のものを備えてもよい。間隙200は、隣接するコイル部分22a、22cに対して非平行に延在するコイル部分22bによって形成される。
【0066】
図23Aおよび図23Bは、やはり上記で組み込まれた特許文献2と同様のらせん状アンカー12の別の実施形態を示す。この実施形態と上記で組み込まれたPCT出願に示す同様の実施形態との間の相違点は、間隙200が、アンカー12の2つの中央コイル22a、22cの間に形成されている点である。これらの2つの図面は、拡張可能アンカー12が例えばバルーンカテーテル210により拡張されることによりコイル22が移動または回転することになるらせん状アンカー12の特徴を示す。先述のように、隣接するコイル22a、22c間に形成される間隙200は、天然僧帽弁組織が隣接するコイル22a、22cにより捕獲または係合されないように確実にするために使用され得る。間隙200は、隣接するコイル部分22a、22cに対して非平行に延在するコイル部分22bにより形成される。
【0067】
本発明が、好ましい実施形態の説明により例示され、これらの実施形態が、幾分か詳細に説明されたが、かかる詳細に添付の特許請求の範囲を制限するまたはいかなる意味においても限定することは、本出願者の意図するところではない。さらなる利点および変更形態が、当業者には容易に明らかになろう。本発明の様々な特徴およびコンセプトは、実施者の必要および好みに応じて単独でまたは任意の組合せで使用されてもよい。これは、現時点で分かっているような本発明の好ましい実施方法に即した本発明の説明である。しかし、本発明自体は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。
【0068】
[第1項]
心臓弁プロテーゼ(60)をドッキングするためのシステムであって、
天然心臓弁(16)に移植されるように構成されたらせん状アンカー(12)であって、当該らせん状アンカー(12)のコイル部分が心臓弁輪の上方および/または下方に配置されるように調整された状態で前記心臓弁プロテーゼ(60)を支持するように構成された複数のコイル(22)を備えるように形成されたらせん状アンカー(12)と、
可撓性を有する外方チューブ(32)であって、前記らせん状アンカー(12)の複数の前記コイル(22)を当該外方チューブ(32)内に保持し、アセンブリを形成するように構成された外方チューブ(32)と、
前記アセンブリを搬送する送達ツール(30)であって、前記アセンブリを前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めするために天然心臓弁(16)の近くで回転可能な送達ツール(30)と、
を含んでなり、
前記アセンブリが前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めされた後に、前記外方チューブ(32)が、前記らせん状アンカー(12)の複数の前記コイル(22)から取り除かれるように構成され、
前記天然心臓弁に送達され得る拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)であって、前記天然心臓弁において複数の前記コイル(22)の内部で拡張され得る拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)をさらに含んでなることを特徴とするシステム。
[第2項]
前記アセンブリが前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めされた後に、前記外方チューブ(32)が、前記らせん状アンカー(12)の複数の前記コイル(22)からスライドして外れるように調整された低摩擦材料から形成されていることを特徴とする第1項に記載のシステム。
[第3項]
前記外方チューブ(32)が、縫合糸(34、36)により前記送達ツール(30)に固定されていることを特徴とする第1項に記載のシステム。
[第4項]
前記送達ツール(30)が複数のコイル(31)と共に形成され、当該システムが、前記送達ツール(30)の前記コイル(31)の遠位端部(38、70)をさらに含み、前記外方チューブ(32)が、前記遠位端部(38、70)にさらに固定されていることを特徴とする第1項に記載のシステム。
[第5項]
前記遠位端部(70)が、ブレット形状またはテーパ形状をさらに含むことを特徴とする第4項に記載のシステム。
[第6項]
前記遠位端部(70)が弾性要素をさらに含み、前記外方チューブ(32)および前記送達ツール(30)の遠位端部が前記弾性要素(70)に固定されていることを特徴とする第5項に記載のシステム。
[第7項]
前記心臓弁プロテーゼ(60)が、前記心臓弁プロテーゼ(60)の流出端部の端部エッジをカバーするシールを含むことを特徴とする第1項に記載のシステム。
[第8項]
プッシャ要素をさらに含み、前記アセンブリが前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めされた後に、前記プッシャ要素で前記アンカー(12)を定位置に保持し、前記外方チューブ(32)を前記アンカー(12)から引き離しつつ、前記外方チューブ(32)が、前記らせん状アンカー(12)の複数の前記コイル(22)から取り除かれるように構成されていることを特徴とする第1項に記載のシステム。
[第9項]
前記送達ツール(30)は、前記天然心臓弁の交連を貫通する前記アセンブリを、前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めされた前記アセンブリの位置内に送達するように適用されていることを特徴とする第1項に記載のシステム。
[第10項]
複数の前記コイル(22)が少なくとも3つのコイルを含むことを特徴とする第1項に記載のシステム。
[第11項]
複数の前記コイル(22)と前記心臓弁プロテーゼ(60)とが、前記天然心臓弁に移植された時、複数の前記コイル(22)と前記心臓弁プロテーゼ(60)との間で、前記天然心臓弁の弁葉を捕獲するように構成されていることを特徴とする第1項に記載のシステム。
[第12項]
システムであって、
天然心臓弁(16)に移植されるように構成されたアンカー(12)であって、当該アンカー(12)のコイル部分が心臓弁輪の上方および/または下方に配置されるように調整された状態で前記心臓弁プロテーゼ(60)を支持するように構成された複数のコイル(22)を備えるように形成されたアンカー(12)と、
可撓性を有する外方チューブ(32)であって、前記アンカー(12)の複数の前記コイル(22)を当該外方チューブ(32)内に保持し、アセンブリを形成するように構成された外方チューブ(32)と、
前記アセンブリを搬送する送達ツール(30)であって、前記アセンブリを前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めすることができる送達ツール(30)と、
プッシャ要素と、
を含んでなり、
前記アセンブリが前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めされた後に、前記プッシャ要素で前記アンカー(12)を定位置に保持し、前記外方チューブ(32)を前記アンカー(12)から引き離しつつ、前記外方チューブ(32)が、前記アンカー(12)の複数の前記コイル(22)から取り除かれるように構成されていることを特徴とするシステム。
[第13項]
前記天然心臓弁に送達され得る拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)であって、前記天然心臓弁において複数の前記コイル(22)の内部で拡張され得る拡張可能心臓弁プロテーゼ(60)をさらに含むことを特徴とする第12項に記載のシステム。
[第14項]
前記心臓弁プロテーゼ(60)が、前記心臓弁プロテーゼ(60)の流出端部の端部エッジをカバーするシールを含むことを特徴とする第13項に記載のシステム。
[第15項]
複数の前記コイル(22)と前記心臓弁プロテーゼ(60)とが、前記天然心臓弁に移植された時、複数の前記コイル(22)と前記心臓弁プロテーゼ(60)との間で、前記天然心臓弁の弁葉を捕獲するように構成されていることを特徴とする第13項に記載のシステム。
[第16項]
前記送達ツール(30)が、複数の巻線を含むことを特徴とする第12項に記載のシステム。
[第17項]
前記アセンブリが、縫合糸により前記送達ツールに固定されていることを特徴とする第12項に記載のシステム。
[第18項]
前記送達ツール(30)は、前記天然心臓弁の交連を貫通する前記アセンブリを、前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めされた前記アセンブリの位置内に送達するように適用されていることを特徴とする第12項に記載のシステム。
[第19項]
複数の前記コイル(22)が少なくとも3つのコイルを含むことを特徴とする第12項に記載のシステム。
[第20項]
複数の前記コイル(22)が少なくとも4つのコイルを含むことを特徴とする第12項に記載のシステム。
[第21項]
システムであって、
天然心臓弁(16)に移植されるように構成されたアンカー(12)であって、当該アンカー(12)のコイル部分が心臓弁輪の上方および/または下方に配置されるように調整された状態で前記心臓弁プロテーゼ(60)を支持するように構成された少なくとも3つのコイル(22)を備えるように形成されたアンカー(12)と、
可撓性を有する外方チューブ(32)であって、前記アンカー(12)の少なくとも3つの前記コイル(22)を当該外方チューブ(32)内に保持し、アセンブリを形成するように構成された外方チューブ(32)と、
前記アセンブリを搬送する送達ツール(30)であって、前記アセンブリを前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めすることができる送達ツール(30)と、
を含んでなり、
前記アセンブリが前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めされた後に、前記外方チューブ(32)が、前記アンカー(12)の少なくとも3つの前記コイル(22)から取り除かれるように構成されていることを特徴とするシステム。
[第22項]
前記天然心臓弁に送達され得る伸展性心臓弁プロテーゼ(60)であって、前記天然心臓弁において少なくとも3つの前記コイル(22)の内部で拡張され得る伸展性心臓弁プロテーゼ(60)をさらに含むことを特徴とする第21項に記載のシステム。
[第23項]
前記心臓弁プロテーゼ(60)が、前記心臓弁プロテーゼ(60)の流出端部の端部エッジをカバーするシールを含むことを特徴とする第22項に記載のシステム。
[第24項]
少なくとも3つの前記コイル(22)と前記心臓弁プロテーゼ(60)とが、前記天然心臓弁に移植された時、複数の前記コイル(22)と前記心臓弁プロテーゼ(60)との間で、前記天然心臓弁の弁葉を捕獲するように構成されていることを特徴とする第22項に記載のシステム。
[第25項]
プッシャ要素をさらに含み、前記アセンブリが前記心臓弁輪に位置決めされた後に、前記プッシャ要素で前記アンカー(12)を定位置に保持し、前記外方チューブ(32)を前記アンカー(12)から引き離しつつ、前記外方チューブ(32)が、前記らせん状アンカー(12)の少なくとも3つの前記コイル(22)から取り除かれるように構成されていることを特徴とする第21項に記載のシステム。
[第26項]
前記送達ツール(30)が、複数の巻線を含むことを特徴とする第21項に記載のシステム。
[第27項]
前記アセンブリが、縫合糸により前記送達ツールに固定されていることを特徴とする第21項に記載のシステム。
[第28項]
少なくとも3つの前記コイル(22)が少なくとも4つのコイルを含むことを特徴とする第21項に記載のシステム。
[第29項]
前記送達ツール(30)は、前記天然心臓弁の交連を貫通する前記アセンブリを、前記心臓弁輪の上方および/または下方に位置決めされた前記アセンブリの位置内に送達するように適用されていることを特徴とする第21項に記載のシステム。
【符号の説明】
【0069】
10 偏向可能カテーテル、送達カテーテル
10a 遠位先端部
12 らせん状アンカー
12a 内部ワイヤコイル
12b 外部コーティング
12c 軟質先端部
14 交連
16 天然僧帽弁
18 天然弁葉、人工弁葉
20 天然弁葉、人工弁葉
22 巻線またはコイル
24 索、腱索
26 ワイヤ
30 らせん状送達ツール
31 コイル
32 外方チューブ
34 縫合糸
36 縫合糸
38 ループ
40 心臓
42 メス
44 鉗子
50 押し棒
52 カップ状端部
60 置換心臓弁
62 弁葉
64 弁葉
66 本体
70 ブレット形状ヘッド
72 スリット
80 緩衝体構造体
82 発泡体
84 封止層
86 開ステント構造体
90 生体組織シール
91 間隙
92 繊維層
100 送達シース
101 送達シース、送達カテーテル
102 右心房
104 心房中隔
106 左心房
108 左心室
110 アーム
120 ループ
126 天然僧帽弁輪
140 らせん状アンカー送達チューブ、チューブ状アーム
152 面
160 繊維カバー
162 発泡層、発泡体
170 組織束ねデバイス
172 一時的リングまたはループ
180 上方らせん状アンカー部分、心房らせん状アンカー部分
182 下方らせん状アンカー部分、心室らせん状アンカー部分
184 圧着接合部
200 間隙
202 弁輪シール
210 バルーンカテーテル
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図13A
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B